08/12/26 19:22:58 AfwbF3dK
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こなたはオンラインゲームにログインすると、黒井にコンタクトを取ろうとした。
「まだログインしてないのか」
こなたはがっかりしたように独り言を漏らした。
パーティーメンバーリストの黒井の欄には、オフラインと表示されていた。
「オンライン状態のまま、放置しとくか」
他のメンバーとも話す気にはなれず、こなたはPCから離れるとベッドに身を投げた。
天井の木目を数えながら、こなたは再び溜息を吐いた。
散々な一日だった。今日、かがみ達と仲違いしてからの教室は、
こなたにとって針の筵と化してしまった。
周囲のクラスメイトの、冷え切った瞳が痛かった。
そしてまた、クラスメイトのつかさに対する態度もまた、
こなたに強烈な疎外感を与えていた。
『柊さん、負けないでね』
『私達、柊さんの味方だから』
『なぁ、柊さん。先生に相談した方がいいんじゃね?』
『虐めなんて、本当に許せないよね』
『貴方は一人じゃないよ。あまり思いつめないでね』
(何あれ。いつの間にか私が虐めっ子みたいになってるよ)
こなたは憤懣やるかたない表情で心中呟いたが、
すぐに別の考えが頭をもたげた。
(いや、実際虐めなのかな。虐めになっちゃうのかな。
私、本当は凄く悪いことしたのかな。
てか、気付かなかったとはいえつかさを傷つけちゃったのは確かだし。
いずれにせよ、明日改めて謝ろう。それで皆、許してくれるよ)
こなたは自嘲めいた笑みを浮かべ、自らのその思考を嘲った。
(皆許してくれる、か。つかさを傷つけたからじゃなくて、
皆に許してもらいたいから謝るってのが私の本心か。
かがみの言うとおり、反省してないのかもね。嫌な女だ)
こなたの表情が徐々に暗くなる。
こういう時は、誰かに話を聞いてもらいたい。
誰かと、現実逃避できるような話に興じていたい。
それが、こなたにとってはアニメやゲームの話だった。
(でも、黒井先生はまだオフラインか)
ひよりとは携帯電話の番号を交換していない。
そうじろうは執筆中だ。そうじろうは普段はいい父親で、こなたの良き理解者だが、
執筆作業中に話しかけると露骨に嫌な顔をされる。
集中力やその時の気分こそ執筆に一番大切な要素であり、
それを害されると執筆のテンポが狂うという信念をそうじろうは持っているらしい。
こうなると、黒井しか居ないのだが、生憎オフラインだ。
「ついてないな」
こなたはパソコンのディスプレイに目を走らせながら呟いた。
と、その目の色が変わった。
「あ、インしてる」
黒井の欄は、オフラインからオンラインへと表示が変わっていた。
こなたはパソコンまで走りよると、すぐに黒井に話しかけた。