08/11/22 00:15:06 qpRyhDwH
時間なかったんで、ここに立てました。
んでは、グレゴリーさんどうぞー
3:「人肉食」4
08/11/22 00:17:10 nV6hTcfI
のどかな山中にあるペンション。
裸のまま向き合った二人の男女がいた。
「そうくん。もっとずっと一緒に居たかった。ごめんね。
こんな形でしか、償うことはできないけど...」
医者から余命数ヶ月の宣告を受けた。かなたはそうじろうの究極の愛を受け入れようとしていた。
そうじろうは目の前に立つ愛しい妻の消え入りそうな姿を見つめ
頬を涙に濡らしながら準備に取り掛かった。
「かなた、俺は約束するよ。こなたを立派に育ててみせる。そして天国で再会しよう。
そのときが来るまで、俺は、今日のことを永遠に忘れない」
言いながら、かなたの両腕をロープで縛り、天井のフックに引っ掛ける。
両足は金具で固定する。
「生体的な反応で君の体は拒絶するかもしれない。でも、これで僕は君のすべてを受け入れることが
できるんだ」
麻酔を使うことを進めたが、かなたは拒否した。
手術台のようなものが傍らに置いてあり、その上にメスやらノコギリやら....
そうじろうはメスを手にとった。
「そうくん、ごめんね。ごめんね...」
かなたは目を閉じてひたすらつぶやいている。
横隔膜の部分にメスを入れたとき、かなたは「うっ」と小さな悲鳴を上げた。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
4:「人肉食」5
08/11/22 00:18:21 nV6hTcfI
こなたは気が付くと、両手と両足をロープで縛られて吊るされていた。
ここは父の書斎だ。そして服は剥ぎ取られ全裸だった。
眼下には手術で使うような台が置いてあり、その上に鋭利な刃物がいくつも置いてある。
こなたの顔から血の気がみるみる引いていった。これは夢なのか?
だが、目の前に全裸のそうじろうが現れた。
こなたは恐怖のまなざしで父の裸体を見つめた。筋肉は極度に興奮し盛り上がっている。
皮膚の下に浮き出た静脈が波打つ。こなたが知らない父の姿だった。
「俺は、あの後ペンションを焼き払った。ろうそくを持ち歩いていたかなたが発作を起こして
倒れこみ、近くを散歩していた俺は焼け落ちるペンションからかなたを助けられなかったという
ことになった」
「なに言ってるの?お父さん、やめてよ。これ、解いてよ」
こなたは青ざめた。
そうじろうは力なくうなだれつぶやく。
「こなた、天国でお母さんに会ってこいよ。俺は1人、地獄で永遠に苦しむことになるだろうから」
そうじろうは台からメスを取ってこなたに近づいていった。こなたは四肢を拘束されているので
抵抗すらできない。どうしようもない恐怖心が心を満たし、こなたはありったけの大声で
叫ぼうとした、と、そのとき.....
「本性を現したね。この、チンカス野朗」
背後から女の声が聞こえてきた。
そうじろうは振り向いた。こなたは驚きに目を見張った。
ライフルを構えたゆうちゃんが立っていたのだった。
「私がこの家に来た理由を知っているかい?私のお父さんから頼まれたんだよ。テメエを監視しろってな」
そうじろうとこなたはあまりの出来事に絶句する。
「テメエのどてっぱらに風穴開けてやるよこのウジ虫が」
ゆうちゃんのライフルが火を噴いた。
5:「人肉食」6
08/11/22 00:20:22 nV6hTcfI
そうじろうは横ざまにぶっ倒れた。いつの間にか背後に忍び寄っていたゆたかは、そうじろうのライフルを拾って
構えていたのだった。
こなたは救出された。
全裸のこなたをゆうちゃんは優しく抱きしめる。
「落ち着いて聞きなよ、おねえちゃん。そうじろうが証拠隠滅できたのは、当時、刑事だった私の父の協力のおかげなのさ」
「でも、父はそうじろうを信用していなかった。おねえちゃんが成長していって、かなたさんの面影に近づけば
そうじろうの人肉嗜好が再燃するんじゃないかって。だから、最初はゆい姉を頻繁に監視に行かせていたが、
確実にするために私をこの家に住まわせることにしたのさ」
こなたは何も言うことができずに、身体をゆうちゃんの抱擁に任せていた。
母親が父親に食べられていた...そして自分も食べられるところだった....
この事実を、これからどう、受け止めていけばいいのだろう。
だが、倒れたそうじろうがゆっくりとVAT69のボトルに手を伸ばしていることに2人は気がつかなかった。
バリーーーーン!!!
ゆうちゃんの頭の上でボトルが粉々に破裂する。頭から血を噴出しながらゆうちゃんは倒れた。
そうじろうは恐ろしい力でこなたを羽交い絞めにした。
こなたは目の前に転がっているライフルを手に取った。
だが、二人の体格差ゆえに、こなたはライフルを後方のそうじろうに向けることができなかった。
恐ろしい力はこなたの華奢な身体を締め付けていく。
こなたは最後の駆けに出ることにした。
3D戦争ゲームを長年やってきたこなたにとっては常識だった。
拳銃弾と違って、ライフル弾の貫通力はずば抜けて大きく、並んだ人間2,3人なら容易に貫通してしまう。
こなたは長いライフルの銃身を自分の右肩のほうに持って行く。手を伸ばして先端の銃床の付け根の引き金に
指をかけた。
こなたの右肩に押し付けられた銃口から弾丸が発射された。
そうじろうの肝臓は粉々に砕け散って、そして体外に吹っ飛んでいった。
そして、こなたの小さな身体は大口径で高威力のライフル弾に耐えることができなかった。
完
6:グレゴリー
08/11/22 00:22:49 nV6hTcfI
ども、スレ立ての節目に投稿してしまうという愚挙、ご迷惑を
おかけしました。スレを立てて下さった>>1氏に感謝します。
7:グレゴリー
08/11/22 00:32:47 nV6hTcfI
最低の作品やわ。寝ますノシ
8:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 00:45:12 0nuKqX51
\、
___>` ー---|`ー -- 、
,ィ´ ァ:.: : : : : : : :.:.:.:|: : : : : : : \
/ / : /:.: /: :.,イ: :./|:.!: \: .: : : : :<⌒ヽ
/:/: :/: :./___/ !: / .|:.|l: .:__ヽ: :.\:.:ヽ\ \
/イ: :/: :./´:./` |/ |:.||ヽ: :`ヽ: : :.ヽ: :} \{
/: :.': :.:i: :./ | Ⅵ \: :|: : : :.∨ /
.': : { : : |:./ /・\ /・\ ヽ!:.:: :.|:.:|ィ´
|: :/|: : :|イ  ̄ ̄  ̄ ̄ } : : ト、!:|
|;イ: ! :./`| (_人_) .ム : : |:/: |
|:|.:V:l`ri^i. \ | .rvィヘ : |: : :|
|:|: : :l: :〉、`ー-、..\_|-‐' /:.:.:V: : : |
|:|: : :l:/ `ァ 〉r‐┤ r‐':./}:!: : : :|
|:|: : :l{. / /:.:l ./| |: :/ |:l:.:. :.:.|
|:|: : :l| / ∧:.:|/:.l |:/ .!:l: : :.:.|
─┐||┌─┐ l ─ ‐┼‐ ‐┼‐ヽ l ノ │ .| | ‐┼‐ ‐┼‐
日 フ 口 メ __|__ フ |┬ | | ‐┼‐ d
(__ .六 ↑ .田 (___ (丿 ) ↑.ノ│ ノ ヽ__ノ (丿\ ノ
9:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 00:49:58 ZQxRcdTh
>>7
まあまあ
そう自虐しなくても…
10:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 00:50:53 ZQxRcdTh
おっと、>>1乙
/ / | ヽ / , ´
楽 楽 は 弋´ / ___| \ 〉-/_,. -‐ /
し し ぁ .> / /―-ヽ__Y^y /
い い は (_ / /-―- ./ / 爪 /
l !! っ (/ /´ // /`/ /://:::|`―< ヽ
よ は \ / //_∠__/ /://::::,' |l \〉 .ハ
l っ /⌒ 7 /ィ≠''''ニミヽ/:://::::/ /l l:| |∥ |
!! | //_イ/ / ', }}::::::〃::::/./:/ヽl:| | l| |
弋 //:::: / / / ::::/::::::/厶〈 ハ | | ∥
/⌒,/::::::: l /.::::::::::::::::/,イΞミ〈// 人_人||人_ノ
ヽ/⌒ヽ(⌒Y /:::::::::::ヽ _ー::::::::::::::::::::::::: / } |l<
| .|| | |l | ::::::::::::::::::::: / / / jj::::::} は は あ
ヽ|| | |l ∧ ト⌒\ ::::::::: し _〃:< は は っ
ヽ从ハ | ヽ | \ ` 、 ′ ヽ..::::::::::/ ) ぁ. は は
_ /ヘ| \ ヽ `ヽ、__フ :::::::/< l は は
| \ _)/ / / ヽ !! は は
l:::> __, -‐ ´ /_ノ は は
l:/ =ニ二三≠イ // `ヽ
11:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 01:04:06 Wk9MIgns
>>6
普通に悪くない作品だったと思います。
元々このスレはこういう感じのネタが多かった気がするしw
12:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 03:21:00 qpRyhDwH
>>6
乙
ゆーちゃんカッコヨス
13:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 04:41:42 jXGNC3vW
|
\ __ /
_ (m) _
|ミ|
/ .`´ \
∧_∧
<`∀´ ∩
(つ 丿
<__ ノ
レ
14:ガンガン福岡
08/11/22 16:53:44 YLAmUHYz
やっと元の軌道スレに戻ったか
>>1乙 >>6も乙
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
15:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 20:29:35 bbm0ijYN
ついにお星様に
16:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 23:28:02 hKBngwcs
ガンガン乙
17:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/22 23:50:58 Q5dC7TCd
>>6
グレゴリー氏ライフル自殺、人肉GJですw
>>14
ガンガン氏恒例のWIKI絵おつです!
18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 01:13:34 iPQGenRn
こなた本スレに迫る勢いですなw
19:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 04:33:05 B6RAXCsO
(U≡ω≡.)
20:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 15:44:32 NqmhJ/mR
こなたに
メラミ
21:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 20:09:55 MpOHlK+l
こなたに
メラミン
22:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 20:31:25 E9gp3xx6
こなたにメラニン
23:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/23 23:53:23 EAC3K6Wp
URLリンク(www2.imgup.org)
24:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 00:28:09 x6K9kf5+
(U≡ω≡.)
25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 00:39:42 fZR2rqul
見られない
26:JEDI_tkms1984
08/11/24 00:44:22 dVivOmPh
前スレの
>>691
オオハシカオル調のイラストが素敵です。
みさおが恰好いいですね。
前スレの
>>694
いじめは大人の世界にも子供の世界にもありますからね。
恐ろしい世の中です。
>>6
カニバリズムですね。
かなたはそうじろうの中に永劫、生き続けるのですね。
そういえばある国のある寒い地方では老衰間近の家族に1本の蝋燭を持たせて遠地に置き去りにするとか。
家族は遠くからその蝋燭の火が消えるのを待ち、消えたと同時に駆け寄ります。
するとそこには血まみれのクマが居て、家族はそのクマを狩猟して食べるそうです。
蝋燭を持たされた老人はもちろんクマに食べられています。
家族がそのクマを食べることで間接的に老人を食べることになります。
血族の命が血族の中に戻る、こういう供養をする文化がある。
……という話をかなり前に聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
27:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 01:36:23 bCgCyX64
シュールな絵を描く人、文章も書く人だったのか
28:グレゴリー
08/11/24 09:51:55 jpYOyPVB
JEDY氏よ。その話は知りませぬが、カニバリズムに対して深い造詣をお持ちのご様子。ぜひともカニバ作品にチャレンジを!ちなみに私はカニバリズムを行うことで人間性を失い人間であることを止めてしまうということを強調しております。
れっきとしたアンチカニバリズム作品として、小さな子供でも安心して読めるでしょう。また、カニバリストを目指すものにとっての抑止力となれば幸い
私はこの世に在るものは必ず消えてしまうという理に抗う人間の滑稽さ愚かさを愛情を込めて見つめて作品に投影していきたい。だが、人間性というものがいかに尊むべきプライドであるかということも
29:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 09:58:36 khPyvtfX
このままこなたスレぶち抜いてしまえよ
どうせあっちはスレの流れ死んでるしなwww
30:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 10:34:01 khPyvtfX
こなたスレより下がってるから上げといてやるよ
31:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 11:30:01 qu96YEdn
避難所2->>710>>714
ご近所さんがいたとは。
京王いいですよね。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
32:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 11:44:54 Tb58PeMz
乙
KOってwwwwwww
>>29
この勢いだとまず間違いなくぶち抜くだろうな
33:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/24 20:46:50 3UEnOK0O
>>31
サイリスタとはマニアックなwww
34:JEDI_tkms1984
08/11/24 20:54:41 dVivOmPh
>>28
僕にはまだカニバリズム作品は早いというか、そのレベルに達してません。
また僕自身がそれに対して特段の考えを持っていないので難しいかと。
ただ人間の愚かさを書く、という点は僕も意識しているところなので、そことカニバを
うまく融合させられれば鑑賞に堪えうる程度のSSは書けそうな気がします。
35:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/25 02:04:58 OURx+1U8
カニバル以前に、グレゴリーさんのは奔放なノリが堪らなく好きだ
ナードVSジョックスという階級闘争を、
その爽快感と諧謔溢れた文章で、
自虐交じえて鼻歌混じりに書いたものが読みたい
36:グレゴリー
08/11/25 22:25:09 U+hj2v5E
>>34
JEDY氏よ。冗談ですよ。私ごときが氏に対して何かを示唆するわけ
ないじゃないですか。あなたには私とは違う期待がかけられております。
どうぞ、ご自身の道を貫きたまへ
>>35
スクールカーストシリーズですな。私がとあるスレで投稿した一連の作品が
そうですが、皆の絶賛を期待していた私は見事に裏切られましたわい。
ですが、今、ここで、そのシリーズに対して賞賛してくださっていたお方の
存在を知りました。涙で目の前が曇ってキーボードもまともに打てないです。
久しぶりに酒屋でVAT69(誰も手をつけておらず、ホコリを被っていた)
を見つけて購入し、ベロンベロンでございます。
今、史上最低の作品を作成してますが、十八禁なのですが、性的な表現は
このスレでは許されるのですか?速ければ明日にも投稿できそうですが。
37:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/25 23:40:36 Ix2SrCEJ
__
_,,ィ=、 ,ィ=ニ―`-、
/' `ヽ、
,/ \
/ __ ィニ===-、 \
/:;;;;::::下 イ:::;ィニヽ:::::::ヽ
/:::(●) ! i !' ((●)) :i!
:::::`ー' , _,- ` ̄ !
`ー '" ヽ、__,,
ハ -、
〉 `
/
/~⌒ヽ クソスレ・・・・・
( r' ̄^ヽ、
く ̄ ̄ ̄`
` ー―-、
38:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/25 23:45:09 aw58dTQh
な、何だこの狂ったスレは……
39:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/25 23:47:02 X0N+QU8L
こんな基地外みたいなスレタイで28スレも続いてるなんて
40:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/25 23:54:12 FGFftBGh
何ですか?ここ…
41:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 00:18:13 rBckJyhe
またこなたスレにちょっかい出して来やがって。
自重しろよ。マジで。
42:グレゴリー
08/11/26 00:50:43 Pc1P21O1
お前ら、本当に狂っている男を見たことあるか?
ちなみにちゃんと自殺するラストなのでご安心を。
「いいグレゴリーは死んだグレゴリーだけだ」
43:楽しいお泊り1
08/11/26 00:52:43 Pc1P21O1
「それじゃあ、土日は泊まりで夜通し遊ぶか!
ん?そういえば遊ぶときはいつもうちだけど、こなたの家はダメなの?」
かがみの一言で、こなたの家に泊まることになった。
だが、こなたは念を押した。
「うちのお父さん、職業柄、家に居ることが多いし。だから..
だから、私も、責任を負いきれなくなると困るし...」
かがみとつかさは凍りついた。なんてことを言うのだ。
しかし、二人のこなたに対する信頼は郡を抜いていた。
なんだかんだ言っても3人は親友同士なのだ。
そうじろうは見た感じは悪くなかった。以外とハンサムでフランクなおじさんだった。
「家が神社で、巫女さんやってるんだってええ」
初対面でそのセリフかい!とかがみは心の中で突っ込んだが、あえて二人の緊張をほぐすために
フランクに振舞っているのかもしれない。
かがみとつかさはそうじろうに対しておおまかには好意を抱いていた。
こなたの部屋でマニアックなゲームをやったり、豊富なコミックを読んだりとかがみとつかさはそれなりに
楽しんだ。
こなたは内心、心配していた。父であるそうじろうのことだ。
そうじろうはマジだった。こなたは知っていた。自分の下着や衣類で時々、マスをかいているそうじろう。
女子高生モノのAVを隠し持っているそうじろう。
ネットで専門学校生を装って女子高生とチャットしているそうじろう。
あるときなど、そうじろうの居るチャットに忍び込んで都内の女子高生を装っていたら、
プライベートメッセージで非常に卑猥なメッセージを受け取った。
44:楽しいお泊り2
08/11/26 00:54:18 Pc1P21O1
だが、こなたは父を信頼していた。
こなたはいろいろ考えごとをしながら料理をしていた。今日は4人分の食事を作らなければならない。
いつも、かがみとつかさに見せるものとは違うこなたの顔だった。
かたわらで、つかさが目を輝かせながら見つめている。
料理に参加したいのがバレバレだ。
「ねえ、何か手伝おうか?」
つかさがついに口を開いた。
「んー、、じゃあ、サラダ盛り付けて」
こなたはつかさに料理のメインディナーを任せることにした。
ホスト役は常にゲストを立ててやらなければならない。
つかさは嬉々として、作業に取り掛かった。
4人の人間が食卓を囲む。いつも父と二人きりで夕食をとっているこなたにとって
それは喜ばしいことだった。こなたはかがみとつかさに感謝した。
こなたは父を愛している。だが、最近は父に対してなにか近寄りがたいものを感じている
ことは確かだ。
年を降るにつれ、そうじろうの身中に得体の知れないエネルギーがみなぎってきていた。
「いただきまーす」
食卓に4人の明るい声がこだまする。
「おいしーい」
「確かに!上出来じゃない!」
つかさとかがみが歓声を上げる。こなたは飛び上がるほどのうれしさを隠して
余裕を持って答えた。
「これくらいなら、いつも家事してたら出来るよ。かがみも家事したら少しは上達するかもよー」
「余計なお世話だ!」
期待していたどおりの突っ込みが返ってくる。
と、テーブルを通してかすかな振動が伝ってくる。そうじろうがプルプル震えているのだ。
3人はそうじろうを見つめる。
45:楽しいお泊り3
08/11/26 00:55:55 Pc1P21O1
「観てみろ、こなた。完璧だ。夢にまで見た光景が広がっているぞおおおおお」
そうじろうはいきなり立ち上がり、怒涛の涙を流し絶叫した。
「男1人に女子高生3人が食卓を囲んでいるなんて、ギャルゲーでは不自然によくあるシュチュエーションだもんね」
こなたは急いでフォローする。かがみはそうじろう流のフランクな対応だと思って
「ああ。そうですかい」と適当に相槌を打った。
だが、テーブルに力なく座りなおしたそうじろうの身体の震えは止まらない。
3人はいいかげんに不安になってきた。と、「う、うおお、うああ、あ」
そうじろうは情けない声をあげると、テーブルに液体を射出した。
テーブルの真ん中に置いてある、つかさの自信作、サラダの盛り合わせにその液体はジャストヒットした。
こなたはそうじろうの股間を見つめた。ズボンを突き破って、まるでヘラクラスのように威風堂々とした
ものが聳え立っていた。ヘラクレスはピクンピクンと派手に痙攣している。
そして、ヘラクレスから射出された液体は白く、ネバネバしていて、まるでフレンチソースのようだった。
「あああああ、私の作ったサラダがああ」
つかさが涙ぐみながら立ち上がった。見事に盛り付けられたサラダにかかったその液体はまるでソースのようだ。
こなたは必死でフォローした。
「だ、大丈夫だよ。丁度、フレンチソースを切らしていたところだし」
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
そういいながら、かがみとつかさの目のまえで、液体のかかったサラダを箸でつかみ、口に運んだ。
温かく、粘ついたそうじろうの精液はサラダの野菜にからみつき、独特の風味を与えていた。
「うん。おいしい。いい調味料だよ」 こなたは口をモグモグしながら、満足そうに振舞う。
こなたの行動を見つめていたつかさは、恐る恐る、そうじろうの精液のたっぷりかかったサラダを自分の皿にとって
味わってみる。
46:楽しいお泊り4
08/11/26 00:57:25 Pc1P21O1
「あ、本当だ!酸味があってなんだかフレンチソースみたい」
つかさがサラダを食べたのをみて、かがみもいやいやながら、サラダを食べた。
こうして、こなたの必死のフォローによってその場は丸くおさまった。
お風呂に入る時間になった。父親想いのこなたは、先にそうじろうを風呂に入れることにした。
なぜなら、つかさとかがみの入った後の残り湯を飲んでしまう可能性があったからだ。
身体に悪いことを自分の父親にすることはできない。こなたなりの思いやりだった。しかし、
風呂場からつかさの悲鳴が上がった。
急いで風呂場にかけつけたこなたとかがみが見たものは....
白いネバネバとした液体を体中から垂らしたつかさの姿だった。
「おねえちゃーーん、お風呂、入浴剤だと思ったんだけど,,,これって」
こなたは風呂桶を確認する。それは、風呂桶一杯に入ったそうじろうの精液だった。
風呂のお湯をも駆逐して、そうじろうの妄想は、風呂桶を自分の精液で満たしたのだった。
かがみと二人がかりで、つかさの身体からそうじろうのザー○ンを洗い流すのに30分くらい要した。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
「ほんと、男性のザー○ンってこんなにしつこいのね」
かがみはつかさの髪にからみついたゲル状の液体を必死に洗い流そうとしている。
「まあ、ザー○ンってほとんどがたんぱく質らしいから、お湯で凝固したんだと思うよ」
「こなちゃん、意外と物知りだね」
3人は同時に笑い出した。結局、箸が転げてもおかしいお年頃、友人3人がそろえばすべての現象を
笑いに転じることができる。
こなたはかがみとつかさに感謝した。
つづく
47:グレゴリー
08/11/26 00:58:52 Pc1P21O1
んじゃあ、寝ます。まあ、たまにはこういうのもいいんじゃない?
大作が連投されたことだし、息抜きということで。また、明日
続きを投稿しますわい。では、おやすみ
48:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 01:30:56 z14gaune
ドレッシングwww
絶対おいしくないwww
49:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 02:02:08 0EgFAMXX
サラダのくだりがとてもエロい
箸休め的な意味で、たまにはこういうのもいいね
50:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 02:26:58 D0PuQ2XD
笑った。大いに笑った。
下ネタ嫌いなはずなんだけど、こなた達のシュールともとれる無邪気な反応が最高に面白い。
つーかそうじろう人間辞めてやがる。
これが、本当に狂っている男ってやつか。
見させてもらいましたよ、アッパー系のマジキチ。
「いいグレゴリーはSSや絵をかいているグレゴリーだ」
51:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 02:28:33 D0PuQ2XD
つーか、
>>38-40
どっから誘導されて来たんだ?
52:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 04:05:21 CQb+qkss
萌え?何時の時代の話だよ。今は鬱の時代です。
その牽引役が僕らがグレゴリー様だ。
時代遅れの萌えを放逐し、オタワールドをグレゴリズムに染め上げろ。
byグレゴリスト
53:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 11:45:48 Dp821Kr+
一瞬ここが自殺スレであることを忘れてしまったwww
てかサラダ食うなよwwwww
54:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 20:19:23 SvaBm4jY
風呂桶いっぱいの精液…出し過ぎだろ
55:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 22:51:04 tAbgJG0v
どこに貯まってたんだろう。
56:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 23:06:03 lfsInK23
つーかグレゴリー氏のキャラ好きだw
俺が京王線沿線住みじゃなかったら、せめて九州北部住みだったらオフ行ったのに。
57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 23:12:25 v9kpcxX2
せめてって離れ杉だろw
58:グレゴリー
08/11/26 23:28:43 cGAu4fND
むむ、袋叩きに会うことを期待していたのですが
意外な好評ぶりに驚いております。
応えまして、続きは挿絵を充実させたいのでしばしお待ちください。
次こそは常人にはついて来れないようにがんばりますw
>>京王線ってどこです?
59:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 23:43:15 v9kpcxX2
青森県だったはず
60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 23:49:08 EGL6X/iN
>>58
URLリンク(www.keio.co.jp)
>>59
そりゃ津軽鉄道やw<青森
61:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/26 23:49:21 lfsInK23
東京多摩南部だよw
62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/27 01:59:21 lonkjiNg
どうでもいいよ出身地なんて
63:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/27 02:14:45 rr//3ddX
>>58
>応えまして、続きは挿絵を充実
期待してます。
64:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/27 02:24:06 qs5TXqJC
>>62
どうでもいいんなら黙っててくれ
青森県
65:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/27 04:00:05 iJmamPeU
京王の笹塚の塚の字って点が付くんだよね。
66:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/27 14:35:42 qs5TXqJC
>>65
本当だw
67:(≡ω≡.)
08/11/27 22:26:26 ioqazsAc
酷いスレタイですね…。
68:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/28 04:49:56 4InBL10M
その顔文字を見ると、こなたより先に神奈川思い出す俺はもう末期
69:JEDI_tkms1984
08/11/28 21:28:06 6paPU97H
みなさん、こんばんは。
明日夜より、おそらく今年最後の投稿をするかもしれませんが宜しいでしょうか。
70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/28 22:22:35 gZJHqY2K
お願いします
71:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/28 23:49:47 iMdCV4O9
URLリンク(vipmomizi.jog.buttobi.net)
72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 00:32:39 Q5gnsBiu
執筆ペース速すぎワロタw
俺は大・歓・迎です。
一足早いクリスマスプレゼントですな。
73:JEDI_tkms1984
08/11/29 01:18:46 zFbxN7wE
申し訳ないのですが、実は元々書き溜めておいた惨劇館の続きなのです。
タイミングを逃してしまったというか、思うところがあって控えてました。
続きといってもこなたはちゃんと自殺しますのでご安心ください。
74:JEDI_tkms1984
08/11/29 21:21:09 zFbxN7wE
みなさん、こんばんは。
ただいまより投稿いたします。
75:惨劇の後に……1
08/11/29 21:22:37 zFbxN7wE
”なんだか胸騒ぎがして……”
そう切り出したのはあやのだった。
みさおほど能天気に構えない彼女は、ちょっとした事にもいちいち反応する。
特に気に留めるようなことでもない。
何となく後味は悪いが、それでも人によってはさらりと流せる程度の話だった。
「なあ、あやの。ほんとに行くのか?」
何を今さら、という顔であやのが頷く。
「もうここまで来たんだから。何もなければそれでいいし、何かあったら―」
「何かあったら……どうすんだ?」
「…………」
みさおの問いにあやのは沈黙を返す。
「ああ、もう、分かったよ!」
自分と違い、いちいち不安げな顔をするあやのに向かって手をパン! と叩く。
その音に現実に引き戻されたように目を丸くする。
「行くって言ったのはあやのだし、私も止めないで一緒に来たんだ」
「う、うん……そうだけど……」
「さっさと行くぞ」
みさおが大股で歩き出し、あやのがその後に続いた。
・
・
・
・
・
連休を翌日に控えた放課後。
珍しい顔が珍しい場所に姿を現した。
教室の入り口から覗くように中を見回し、目的の人物を見つける。
「あ、あの―」
「高良ちゃん」
先に名前を呼ばれ、みゆきは少しだけ慌てたように顔に手を当てる。
「どうしたの? 私に何か用?」
奥ゆかしいみゆきは他のクラスに足を踏み入れることを躊躇っているのだろう。
そう察したあやのがみゆきの元へ小走りで向かう。
「すみません。用というほどでもないのですが……」
遠慮がちに、ゆっくりとみゆきが言葉を繋げていく。
「…………?」
「どした? って、あれ高良さん……だっけ」
みさおも寄ってくる。
親友のあやのとはまた違う、物腰優雅なみゆきに対してどう呼べばいいか思案しているようだ。
「柊ならもう帰ったぜ。いつも一緒に帰ってるんじゃないのか?」
一瞬だけ、みさおが怪訝な顔をした。
「いえ、今日はかがみさんではなく―」
みゆきは一呼吸置いてから続けた。
「お二人は明日からの連休に何かご予定はありますでしょうか?」
「…………?」
「…………?」
みゆきに問われた瞬間、2人は思わず無言のまま顔を見合わせた。
これは何かのお誘いなのだろうか。
確かにかがみを通して知り合いはしたが、まだそこまでは親しくはない。
「いや、私は別にないけど?」
「私も」
みさおに続き、あやのもかぶりを振った。
「そう……ですか……」
予定はない、と答えているのにみゆきは何故か表情を暗くする。
それが2人には分からなかった。
互いに顔を見合わせる。
「あの、本当に何もご予定はないのですか?」
再度の質問。
さすがにこうなると少し不気味だ。
76:惨劇の後に……2
08/11/29 21:23:33 zFbxN7wE
「ううん、何もないよ?」
あやのが念を押すように言い、みさおが頷く。
みゆきは困ったように視線を彷徨わせている。
「どうしたんだ?」
いまだ困惑した様子のみゆきに、堪らずみさおが声をかける。
彼女は視線を左右に動かして確かにかがみがいないことを確かめると、
「実は…………」
かがみさんにはくれぐれも黙っていて下さい、と前置きした上で彼女は話し始めた。
授業終了とともにいつものメンバーで帰ろうと、かがみがB組にやって来た。
しかしどうしても気になる事があるみゆきは、所用があるからと2人を先に下校させた。
ヘンに義理堅いこなたは終わるまで待つと言ったが、みゆきが頑なに拒んだ。
3人が教室を出て行くのを確認したみゆきは、みさおとあやののいるC組へ。
わざわざそんな回りくどい手を使ってまで2人と接触したみゆきが語ったのは。
次の連休にかがみの知り合いの別荘に遊びに行く、というものだった。
メンバーはかがみ、こなた、みゆき、ゆたか、みなみ、ひよりの6人。
「別荘?」
あやのが間抜けな顔で問うた。
「ええ、お知り合いに資産家の方がいらっしゃるそうで、私たちも招待されたのですが―」
そこでみゆきは言葉を切った。
ただの遊びの誘いならここまで疑念を抱くことはないのだが―。
「つかささんが亡くなってから、まだ日も経っていませんし……それに……」
「柊も寂しいんじゃないのか? みんなと一緒に過ごすほうが気も紛れるかもしれないし……」
「でしたらお二人を誘わない理由が説明できないのです。ましてや予定があるなどと―」
みさおが言い終わらないうちにみゆきが押し止めた。
大勢で遊びに行くのなら、みさおとあやのも誘ってはどうかとこなたが提案した。
それに対してかがみは、”2人とも予定があるから”と返している。
だが実際には2人に予定などない。
それどころか、かがみが小旅行を計画していることさえ知らされていない。
みゆきに今、こうしてこっそり教えられてようやく知った事実だ。
「私たちが来ちゃいけない理由でもあるのかしら?」
呟いてあやのは寂しさを覚えた。
「冷たいよなー。私たちはしょせん背景かよ~」
みさおが口を尖らせた。
おどけた仕草で寂しげなあやのを慰めるつもりだったが、この試みはうまくいかなかったようだ。
みゆきが続ける。
「もうひとつ気になるのはメンバーなんです」
「私たちが入ってないってこと?」
「いえ、それもありますが。招待を受けているのはあの……つかささんが……」
最後まで聞かずとも2人には分かった。
つかさの死に関してはみさおもあやのもかがみ自身から詳しく聞いている。
こなたとひよりに誘われて行ったゲームブランド主催のイベント。
そこでゆたかが倒れ、駆けつけた救急車に付き添いとして同乗したつかさ。
その帰りに車に撥ねられたこと。
別荘に誘われたのはそのイベントに参加したメンバーと同じだった。
みさおとあやのはそれには参加していない……。
「みんなで一緒にっていうのなら分かるけど、それだとちょっと違うかもな」
つかさが死んだ時のメンバーをわざわざ選んで旅行などするだろうか。
普通なら集まったその顔を見るだけでつかさを思い出し、余計に傷が深くなるのではないか。
「なんだか厭な予感がするんです。思い過ごしならよいのですが……」
そう言うみゆきの顔は心なしか青白い。
先ほどまで疎外感を味わっていたあやのも、今は別の意味で塞ぎ込んでいた。
つかさが亡くなってからそう時間は経っていない。
そこに本来ならあまり居合わせたくない顔ばかりを揃える……。
最愛の妹を喪った悲しみでおかしくなってしまったのだろうか?
あやのはそこまで考えた。
しかし普段のかがみを見る限り、そこまで思いつめたような様子はなかった。
「その別荘ってのはどこにあるんだ?」
77:惨劇の後に……3
08/11/29 21:24:39 zFbxN7wE
突然の、しかしある意味では当然の質問にみゆきはやや間をおいて、
「それが場所まではまだ……」
聞いていない、と尻すぼみに答える。
本州から離れた孤島とまでは言っていたが、具体的な位置は話題にのぼらなかった。
「すみません……私としたことが……」
みゆきは平謝りに謝った。
かがみを少しでも疑うならその程度の情報は仕入れていて当たり前だ。
「いいっていいって。教えてくれてサンキュ」
「いえ、お役に立てず申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げながら、みゆきは後味の悪さを感じた。
これでは悪戯に2人の不安を煽っただけではないか。
今さらながら自分の不手際が呪わしい。
「ねえ、高良ちゃん」
何か思いついたようにあやのが顔を上げた。
「今度、柊ちゃんに聞いてくれないかな」
それだけでみゆきは分かった。
「はい……えっと……」
「これ、私の携帯の番号」
あやのが向けたディスプレイを見て、手間取りながらもそれを登録する。
”登録№37 峰岸さん”
間違いなく記録されたことを確かめ、みゆきは携帯を閉じた。
「ごめんね、手を煩わせちゃって。でも私も気になったから……」
「場所が分かりましたら、こちらの番号におかけすればいいのですね?」
分かりきったことを訊ねる。
こくんと頷くあやのを見て、みゆきは不意に不安に駆られた。
あやのは―。
それを知ってどうするのだろう?
行き先によっては出発前に止めに入ったりするのだろうか?
分からない。
分からないが、あやのもみさおもかがみを心配しているのだ。
何となく胸に閊えるものがあったが、みゆきは彼女を信じることにした。
しかし、あやのの携帯にみゆきから電話がかかることはなかった。
ついに何の連絡もないまま当日。
あやのの心を蝕んでいた真っ黒な不安がどんどんと膨れ上がってくる。
(高良ちゃん……どうしたのかな……電話してくれるって言ったのに……)
ハッとなって顔を上げる。
そうじゃない。
かがみが心配なら。
少しでも気になる点があるなら。
自分から行動するべきなのだ。
それをみゆきに押し付け、自分は報告を待つだけ。
そんな安易な道を選んでいて友だちの心配をしているなんて言えたものではない。
携帯を取り出す。
「…………」
迂闊だった。
みゆきの携帯番号を聞いていない。
別荘の場所を知ることばかりを考えていて、自分からみゆきに連絡を取ることまで頭が回っていなかった。
完全にあやのの落ち度だ。
「どうしよう……」
こうなると不安は恐怖に変わってくる。
だんだんかがみの心配をしているのか、ただ自分が不安になっているだけなのか分からなくなってくる。
開いていた携帯を閉じ、またすぐに開いたあやのはアドレス帳からよく知っている名前を呼び出す。
ちょうど7コール目で、
『んあ? どした?』
失礼な第一声が聞こえた。
寝ていたらしい。
78:惨劇の後に……4
08/11/29 21:26:10 zFbxN7wE
そんな間抜けな親友の声に若干イライラしながら、
「高良ちゃんから何の連絡もなかったの! ねえ、どうしよう!?」
こちらは悲壮感たっぷりに、伝わらない激しい身振りもつけてみさおに泣きついた。
『ん~~……』
半分も聞いていないのか、みさおはくぐもった声を返す。
(もうっ!!)
こんな時に呑気に寝ている彼女を、本当に親友として見ていいものか。
あやのは大きく息を吸い込んだ。
「みさちゃん、聞いてるのッ!?」
受話器の向こうで何かが倒れる音がした。
『お、お~……ビックリさせんなよ。ちゃんと聞いてるって』
「ほんとに?」
『ほんとだってヴぁ。そんなに気になるなら直接柊に電話すりゃいいじゃん』
「あっ……」
小さく声を上げてあやのが顔を赤くする。
「み、みさちゃんは気にならないの?」
照れ隠しにやや強引に質問を投げかける。
う~ん、とうなり声を発してみさおは、
『気にならないって言ったら嘘になるかもな。でも柊も冷たいよなー、私らだけ誘ってくれないなんてさ』
不貞腐れるようにこぼした。
だからそれが気にならないのか、とあやのはもう一度訊こうとしたが、
「ちょっと電話してみるね」
返事を待たずにかがみにかけなおす。
みさおの言うように本人に訊ねてみればいい。
(納得のいく答えだったらいいし、そうでなくても柊ちゃんが無事なら……)
キーを操作するあやのの手が止まった。
(無事…………?)
引っかかっていたのはそこだった。
親しい間柄であるハズの自分たちをかがみが誘ってくれない理由。
陵桜に入ってからはつかさの教室に入り浸っていたから、まずそちらから声をかけるのは分かる。
問題は嘘をついてまで自分やみさおを呼ばなかったことだ。
「………………」
意を決してコールしたが……。
電源を切っているのか電波状態が悪いのか、一向に繋がる気配がない。
「お願い、出て―!」
空虚に向かって祈るも、結果は変わらなかった。
再びみさおにかけなおす。
先ほどは失礼な切り方をしたが、相手はあのみさおだ。
いちいち怒ってはいないだろう。
「もしもし、みさちゃん」
すぐにかがみと連絡が取れないことを伝える。
その声が切羽詰っていたのと、実際にかがみに繋がらないという事実が重なったからか、
『―分かった。すぐに行くから待ってろ』
みさおらしからない真剣な口調でそう言った。
2人は近くの公園で落ち合った。
着いたのは以外にもみさおの方が早かった。
「ごめんな、急に呼び出して」
肩で息をするあやのに詫びを入れる。
「ううん、私のほうこそ折角の休みなのに」
今さら遠慮しあう間柄でもないが、それでも互いに時間を割かせてしまったことには変わりない。
その辺りは親しき仲にも礼儀を弁えているらしい。
「でも、どうして急に―」
「ん? まあ、私も引っかかってたっていうかさ……妹があんな事になっただろ?
それで柊のことは見てたつもりだったけど、あいつ、なかなか本音とか話さないじゃん」
「う、うん……」
「私バカだからさ、柊になんて声かけたらいいか分からなかったんだ。
下手に慰めるのも違う気がしてな。だったら向こうから言ってくるまで待ってようって考えたんだ」
79:惨劇の後に……5
08/11/29 21:27:21 zFbxN7wE
妙にしんみりと、搾り出すようにみさおが言う。
「私たちを誘わなかったのも柊なりの考えがあるんじゃないかってさ。
正直言うとさ、眼鏡ちゃんが相談持ちかけてきた時はちょっとだけイラッときたんだ」
「……どうして?」
「それって柊が選んだメンバーじゃん? せっかく誘ってくれたのにそれを疑ってるみたいでさ。
ほんとは柊が一番つらいハズなのに、さらに追い討ちをかけてるみたいな気がしたんだ」
あやのは自分が恥ずかしくなった。
みさおは何も考えていなかったわけではない。
彼女は彼女なりのやり方でかがみを気遣っていたのだ。
必要以上に心配する自分に比し、さして気にも留めていないようなみさおだったが。
これが彼女の優しさなのだと漸く気付く。
「でも今は眼鏡ちゃんに感謝してるんだぜ。連絡がとれないって普通じゃないもんな」
携帯電話というものは早朝だろうが深夜だろうが、基本的に繋がるものとみさおは思っているらしい。
律儀なかがみが携帯を家に忘れてきたとも思えないし、何分経ってもかけ直してこないのも妙だ。
あやのとはまた違った不安をみさおも抱くようになった。
ただ自分たちがのけ者にされているだけなら、ここまでの恐れはなかった。
悔しいがこなたやみゆきとの方が楽しいのなら。
それがかがみにとって慰めになるなら甘んじて受け容れるつもりではいた。
しかし、みゆきから聞く話は少し違う。
かがみは敢えて自分たちを遠ざけた。
予定があるから行けない、と勝手に理由をつけてだ。
考えるまでもなく不自然な行動ではある。
だがそれでも、まだかがみを信じていたみさおは追及しようとは思わなかった。
詮索するのは嫌いだ。
だからあやのが何か言ってきても、軽くあしらうことにしていたのだが……。
どうも様子がおかしいらしい、とみさおも訝るようになってきた。
あるいはあやのの心配性に当てられたか。
「とりあえず柊ん家に行ってみようぜ」
こうなるとみさおは考えるよりもまず行動だ。
「うん、そうね」
今はその行動力が頼もしい。
『どちら様でしょうか?』
インターフォン越しにただおの声が聞こえる。
「こんにちは。あの、峰岸です」
『え―? 峰岸さん…………?』
名前を聞いた途端、ただおが訝るように声を落とした。
「はい。あの…かがみさんは……?」
あやのがおずおずと訊ねるが、向こうからは、”おかしいな”と小さく声が聞こえる。
ただおがドアを戸を開けて出てきた。
その姿を認めた2人がぺこりと会釈する。
ただおもそれに倣って頭を下げるが、やはり怪訝そうな表情だ。
「すみません、突然お邪魔して」
このあたりは礼儀正しいあやのが当然の口上を述べる。
「いや、それは構わないんだが。峰岸さんと日下部さんだよね? きみたち―」
キョトンとするあやのに対し、
「かがみと一緒じゃなかったのかい?」
首を傾げながらただおはそう言った。
みさおもあやのも、この言葉の意味を理解するのが恐ろしくなったのか、
「どういうことですか?」
質問に質問をかぶせることで時間を稼いだ。
「きみたちも別荘に行ったと思っていたんだが……」
「それ、柊……かがみさんが言ってたんですか?」
みさおが思わず身を乗り出した。
その様子にただならぬ雰囲気を感じ取ったらしいただおが、
「あ、ああ。かがみが友だちを連れて知人の別荘に遊びに行くと話していたからね。
その中にきみたち2人の名前もあったけど、中止にしたのかい?」
より詳しい状況を教えてくれた。
かがみは別荘に泊りがけで遊びに行くことをきちんと家族にも話していたらしい。
80:惨劇の後に……6
08/11/29 21:29:11 zFbxN7wE
いつ出かけ、いつ戻るのか。何人で行くのか、メンバーは誰なのか。
やはり律儀なかがみは詳しく述べていたという。
ただおはそのメンバーに、古くからの付き合いであるみさおとあやのの名前も聞いている。
「よかったら上がっていかないかい?」
玄関先で話すのも失礼だと思ったのか、ただおは2人を家内に招いた。
(どうする……?)
(せっかくだし)
わずか1秒、視線でやりとりをした2人。
「すみません、お邪魔します」
何か手がかりを得られるかもしれないと上がりこむ事にした。
居間に通された2人は、なぜか何度もお邪魔している家にもかかわらず正座してしまう。
いつもはかがみに誘われて遊びに来ているが、今日だけは違う。
ハッキリ言えばかがみがいない柊家に上がる理由はない。
しかも今は状況が状況だけに、肩や背中になぜか重みを感じてしまうのだ。
「いらっしゃい」
お茶を持ってまつりが入ってきた。
顔つきはつかさに似ているが性格はかがみに近い彼女と、2人は互いによく知っている。
かがみに呼ばれて部屋に遊びに行くと、こうしていつもお茶を持ってきてくれるのだ。
「ありがとうございます」
「いただきます」
澄んだ緑色のお茶を喉に流し込む。
「ねえ、2人とも今日はどうしたの?」
そのまま立ち去るかと思いきや、まつりが2人に向かい合うように腰をおろした。
「かがみと遊びに行ってると思ってたけど?」
ただおと同じ事を言う。
「そのことなんですけど―」
あやのが細かく説明した。
「ふうん。じゃあ、その高良さんって子が教えてくれなかったら、2人とも知らなかったってことね」
「そうなんですよ。それでちょっと気になるっていうか……」
みさおが腕を組んでうなった。
事実は見え始めてきたが、かがみの真意がまるで分からない。
「でも私たちは峰岸さんと日下部さんも誘ってるって聞いたよ? いのり姉さんも聞いてる。
気分転換にはいいかなってその時は流してたけど。たしかに気になるね」
まつりは小さく息を吐いて天井を見上げた。
かがみは意地っ張りで素直ではないが、嘘をつくような子ではない。
それに態度とは裏腹に思い遣りがあって優しい性格の持ち主だ。
みさおやあやのを騙す様が想像できない。
「でもそうなると、泉さんや高良さんを誘った理由は何なんだろう……」
つかさが亡くなった時、彼女が誰といたかをまつりは知らない。
かがみがそこまで話していなかったからだ。
家族にはただ、”友だちと遊びに行っていた”とだけ伝えてある。
「あの……つかささんに手を合わせてもいいですか?」
意外な言葉が意外な人物から出た。
あやのはビックリしたようにみさおを見る。
「うん……ありがとね……」
笑顔で返すまつりの瞳は潤んでいた。
不幸な事故で命を落としたが、こうして妹を慕ってくれる人がいる。
それが堪らなく嬉しかった。
つかさへの黙祷を捧げた後、ただおが別荘の場所を教えてくれた。
教えてくれたというより、みさおが執拗に食い下がって聞き出した恰好だ。
父親としてはやはり娘の意思を尊重したかったらしく、場所を知らせることに抵抗があったようだ。
そこに助け舟を出したのはまつりだった。
彼女にしてもかがみの真意が知りたかったようで、2人にその代役を委ねたのだ。
”船頭さんに頼めば送迎船を用意してくれると思う”
というただおの言葉を受けて、2人は港に向かった。
「まつりさんが協力的で助かったな」
またひとつ手がかりを得られたみさおは楽観的になって言った。
そうね、と相槌を打ってあやのは少し前のやりとりを思い出す。
81:惨劇の後に……7
08/11/29 21:30:38 zFbxN7wE
『この2人はかがみのこと心配してくれてるんだよ?』
渋るただおにまつりが強い口調で言ってくれた。
心配しているのは間違いなかったが、改めて言われるとむずがゆい気持ちになる。
「私たちって親友みたいね」
頬をほんのり朱に染めてあやのがぼそりと言った。
みさおが頭上に「?」マークを浮かべた。
「だってほら、普通ここまでしないし……」
ああ、と納得したようにみさおが手を打った。
「ま、柊がウチらのことどう思ってるかは知んねーけどな」
「ふふ、そうね……」
拗ねるようなみさおの変貌ぶりが可笑しく、あやのは小さく笑った。
港が見えてきた。
大小さまざまな漁船が繋留されている。
途端に磯の香りが鼻を衝く。
「頼んだら船出してくれるんだよな?」
漁師らしき人はあちこちにいるが、誰を見ても頑固で気が強そうだ。
こういう時はみさおの行動力に頼るに限る。
2人の間ではもう役割が決まっているようで、交渉はみさおが行うことにした。
「すみませーん!」
元気のいい声にさっそく何人かが注目する。
「この先の島まで行きたいんですけど、誰か船を出してくれませんか?」
かなり勝手な申し出だ。
ほとんどは漁師だから、海に出るのは魚を獲るためである。
それを送迎船代わりに出してくれというのだから、普通なら引き受け手はいないハズだった。
ところが、
「おーい、ガンさん! お呼びだぞー!!」
近くにいた漁師が小屋に向かって怒鳴った。
わけが分からず目を白黒させている2人の前に、体格のいい中年男が姿を現した。
「なんだなんだ?」
真っ黒に日焼けした顔をぐいっと近づけてくる。
「あ、あの……ここに連れて行ってほしいんですけど……」
ただおから受け取った地図を見せる。
それを覗き込んだ男は顎に手をあてて唸った。
「う~ん、またか……」
思わず口に出してしまったのか、
「あ、いやいや、すまん。今朝もここに連れて行ってくれってお客さんがいたもんでね」
2人は顔を見合わせた。
間違いない。かがみたちだ。
「何人だったか覚えてますか?」
あやのが訊いた。
「5人……いや、6人だったかな? そのうちの1人は何度か送迎したことがあるんだがね。
気分が悪いって横になってた子もいたから……6人だ、間違いない」
(6人……柊ちゃんも入れて全員が向かったことになるわね……でも……)
男の記憶に間違いがないという前提であやのは考えた。
(それだと高良ちゃんもいたハズよね。どうして連絡をくれなかったのかしら……)
また分からなくなる。
今となってはかがみだけでなく、みゆきも疑惑の対象だ。
「で、きみたちもそこに行きたいわけだな? きみたち、あの子らの友だちかい?」
「あ、はい、そうです」
急に問われ、みさおは思わず間抜けな声を出してしまう。
「うーん…………」
なぜか男は腕を組んで難しい顔をした。
「あの……あの、お金ならありますから。あんまり高いと払えないですけど」
みさおがポケットをまさぐる。
計画性のない彼女は、小遣いを貯めると言うことを知らない。
出てきたのはしわくちゃになった千円札が2枚だけだった。
「うん? いや、お金のことは気にしなくていいんだ。先に送った子からも取ってないしね。
しかしなあ……う~ん……」
男はまたしても難色を示す。
82:惨劇の後に……8
08/11/29 21:31:58 zFbxN7wE
「あの、なにかご都合の悪いことでもあるんでしょうか?」
泣きそうな顔であやのが訊ねる。
あまりに不安そうな顔に男は、
「天気がな、あまり良くないんだな。荒れる恐れがあるんだよ」
海の向こうを指差して言った。
からっと透き通った青い空がどこまでも続いている。
荒れるどころか小雨すら降りそうにない。
「それにいちおう約束もしてるからなぁ……」
遠い目をしながら男が気になることを言う。
「約束…ですか……?」
しっかり聞いていたあやのがすかさず割り込む。
男は困ったように頭を掻いた。
「うむ、うん……まあ、気にするようなことじゃないんだがね。今朝、送った子に言われたんだ。
もしかしたら自分の友だちが来るかもしれないが、船には乗せないでくれって」
十分気になることじゃないかと、みさおは突っ込みかけた。
「それって髪の長い子でしたか?」
レポーターみたいにあやのが身を乗り出して問いただす。
「ああ、眼鏡をかけてる子だな」
「えっ!?」
みさおもあやのも驚いたように男を見た。
てっきりかがみが自分たちを近づけさせない目的で言ったのかと思っていたが。
あの中で眼鏡をかけているのはみゆきしかいない。
「高良ちゃんが……」
あやのにはもう何も分からない。
連絡をよこさないどころか、自分たちを別荘に近づけさせないなんて考えられない行動だ。
「それでも行きたいんです。お願いできませんか?」
みさおの声にあやのはハッとなった。
肝心なことを忘れるところだった。
あの島に行かなければ意味がない。
連れて行くなと約束しているらしいが、何の強制力もない。
「お願いします」
あやのも深々と頭を下げる。
男は小さく息を吐いて腕時計を見た。
「もう6時だからなぁ。行って帰ってくるので精一杯なんだよ。どうだろう? 明日―」
「明日じゃ遅いんです! できるなら今すぐお願いします!」
「…………」
しばらく押し問答が続いたが、男がついに折れた。
「分かった分かった。そこまで言われちゃな。しかし何かあってもわしは責任はとれんぞ。
島に着いたらその子たちが言ってた別荘に泊まりなさい」
男は苦笑交じりに一銭の儲けにもならない送迎を買って出た。
・
・
・
・
・
島に着いた時にはすでに時刻は午後7時を過ぎていた。
無秩序に張り出した岩肌が黒く不気味だった。
近づいて見てみるとじっとりと濡れた跡がある。
ここだけではない。
注意深く観察すると砂浜にも無数の小さな穴が空いている。
どうやらスコールのような強い雨が降ったらしい。
「海の天気も変わりやすいんだな」
薄暗い空を仰いでみさおが言った。
「よく考えたら私たち、かなり無茶してね?」
言うまでもない事だ。
かがみの家に押しかけて別荘の場所を聞き出し、無料で船頭に送迎を頼む。
そのうえ誘われもしないのにやって来るとなれば、横暴以外の何物でもない。
「柊のやつ冷たいからなー。行ったはいいけど泊めてくれなかったらどうする?」
今さら何を不安に思うのか、みさおが大袈裟に嘆いてみせた。
83:惨劇の後に……10
08/11/29 21:33:41 zFbxN7wE
「大丈夫よ。柊ちゃんは優しいもの」
あやのは特に気にも留めていないらしい。
彼女が不安に思っているのは、自分たちが道具らしい道具を何一つ持っていないこと。
街灯も何もないこの島では、陽光だけが唯一の光源だ。
しかしその太陽もほとんど地平線の向こうに沈みかけている。
先を急いだばかりに2人はほとんど丸腰だった。
「ま、何とかなるよな」
これまでの危機を全て”何とか”してきたあやのが屈託なく笑った。
だが…………。
「あやの~~、どっち行けばいいんだ~~?」
道に迷ってしまった。
「ごめんね、みさちゃん。私にも分からないわ」
船を下りてすぐか、別荘まで一本道だと思っていた2人はあてもなく山道を歩く。
懐中電灯もないから、目先はほとんど闇に覆われている。
(ん……?)
あやのがみさおの手をぎゅっと握った。
ああ怖いのか、と彼女は瞬時に理解する。
弱音を吐くわけにはいかない。
「ん~、たぶんこっちだな」
と、適当なことを言ってどんどん歩き出す。
根拠はないが、あやのを不安にさせたくないみさおはその手を握り返し、草花を掻き分ける。
「あっ!!」
目を凝らして暗闇の向こうを覗き見たあやのが声をあげた。
生い茂っていた草木がなくなって視界が開け、広い空間に放り出されたような感覚。
こげ茶色の外壁が見えた。
「きっとこれよ」
先ほどまでの不安はすっかり霧散したらしいあやのが、小走りで無機質な外壁に近づいていく。
遅れてみさおもその横に立つ。
ハッキリとは見てとれないが、これが件の別荘であることには間違いなさそうだった。
外壁を左手になぞるように歩く。
「すげぇな」
全容を見てはいないが、外壁だけでもこれだけの大きさだ。
別荘というものがどれほどの大きさかはある程度想像がつく。
「あ、そうだッ!!」
耳元で突然みさおが叫んだため、あやのはビクンとなってしゃがみこんだ。
「これがあるじゃんか!」
みさおがポケットから携帯を取り出す。
指先でサイドキーをまさぐってぐいっと押し込む。
すると本体から小さいが強い光が真っ直ぐに伸びた。
「もう、ビックリさせないでよ!」
胸元に手を当ててあやのが怒鳴った。
「ごめんごめん。こういう機能があるの忘れてたよ」
あやのの携帯にはライトは付いていないらしい。
再びみさおが先頭に立って外壁をつたう。
今度は光源があるから歩調も速い。
ほどなくして外壁の切れ目、続いて鉄扉が見えてくる。
(…………?)
あやのが首をかしげた。
みさおは鉄扉を開けて、躊躇うことなく歩を進めていく。
じゃりっと靴底が砂を噛む音。
「おかしい……」
あやのがぐいっとみさおの腕を引いた。
「ん? どした?」
「暗すぎる……」
「あっ」
言われて気付く。
かがみたちが宿泊しているハズの別荘なのに、窓が仄かに照らされる程度の光しか見えない。
「もう寝てたりして」
みさおは笑ったが厭な予感がしていた。
84:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 22:06:19 AjQ4t4mU
支援
85:惨劇の後に……11
08/11/29 22:19:20 zFbxN7wE
背中にじっとりと不愉快な汗が流れる。
2人は寄り添うように門をくぐる。
ぐるりと携帯の光を周囲にばら撒いた時、
「――ッ!?」
みさおは思わず声を上げそうになった。
その変化を感じ取ったあやのが疑問を投げかける。
光の輪に浮かび上がった洋館。
その一瞬に見た窓をみさおは記憶から消し去ろうとした。
が、あやのが執拗に食い下がってきたために、
「見間違いだと思うけど」
前置きをしたうえで光輪を窓のほうに向ける。
「…………!」
間違いではなかった。
嵌め殺しの荘厳な窓が並ぶそのひとつだけが―。
ペンキを塗りたくったように赤黒く染まっていた。
どうする、という意味の視線を投げかけるみさお。
あやのは無言で頷く。
ここまで来て引き返すわけにもいかない。
それに船頭には明日、かがみたちを迎えに来るときに一緒に帰ると言ってある。
立ち止まる理由はない。
砂礫に躓かないように気をつけながら、一歩一歩と進む。
わずかな段差の先に頑丈そうな扉が見えた。
憚りながらノックする。
「おーい、柊ー!」
叫び声がわずかに遅れて返ってくる。
「開けるぞー!!」
自分を奮い立たせるようにそう言い、そっと手をかける。
扉は呆気なく開いた。
途端、生温かい風が内側から吹き込んでくる。
肌に纏わり付くような不愉快な空気だ。
今まで嗅いだことのない臭いが立ち込めている。
鼻腔を貫くような強い刺激臭。
さらに以上なのはこのロビー。
何がどうなったのか、高級そうなシャンデリアが無造作に投げ出されていた。
あやのは天井を見上げた。
ぷっつりと切られた支えがある。
もう一度下を見る。
バラバラになったガラス片は黒い染みの上で儚げに輝いている。
その染みが血液だと2人にはすぐに分かった。
扉を開けた瞬間から鼻を突く臭いの正体は血だ。
しかし彼女たちの経験した血の臭いとは違う。
体内の、体の奥深くを流れていた大量の血液。
体温とともにぶちまけられたそれらの臭いは、平凡な生活を送っている者には想像すらできない。
「な、なに……何なの……」
現実離れした様相にあやのが座り込んだ。
みさおはかろうじて踏み止まるが、内心はこの場から逃げ出したかった。
「柊たちは…………」
辺りを見回す。
すぐ近くに棺を思わせる大きな箱があった。
できるだけそちらを見ないようにと、みさおが顔を上げた。
「………………!!」
不気味なものを見た。
暖炉の上に置かれた5本の蝋燭。
その全てに火が灯っている。
左端の火が消え、続いて真ん中の火が消えた。
やや間隔を置いて残りの火が小さく揺らめき、右から2番目の火が消える。
だがしばらくすると消えたハズの火が灯り、今度は右端の火が消える。
「………………」
消えては灯り、揺らめいてはまた消えを繰り返す蝋燭を、みさおは魅入られたように見つめていた。
86:惨劇の後に……12
08/11/29 22:20:56 zFbxN7wE
「そ、それ……!!」
あやのも気付いたらしい。
床一面に広がる血溜まりよりは遥かにマシだが、この雰囲気から受ける恐怖の種類に差異はない。
「な、なんだよ……どうなってんだよ……」
みさおは冷や汗を拭って首に力を入れた。
魔法か何かをかけられたみたいに、視線が蝋燭に釘付けになっていたからだ。
無理やり視線を落とした先に、今度はオルゴールを見つけてしまう。
(なんでこんなとこに……)
ごく一般的な透明のプラスチックケースに収められたシリンダー・オルゴールだ。
普通なら手を出さずにおくべきところを、みさおは湧き上がる好奇心を抑えられずに手に取った。
どんな曲が流れるのだろうか。
これでももう十分に恐怖を堪能したというのに、ネジを回す指を止められない。
「みさちゃん……?」
その様子を訝しげにあやのが覗き込む。
突起のついたシリンダーがゆっくりと回転を始める。
無数の突起がコームを弾き、記録されていた旋律を物悲しげに奏でる。
単調で退屈な音楽だ。
突然あやのがそれを払いのけた。
「あ、何すんだよ」
みさおの手から滑り落ちたオルゴールが床を叩き、その衝撃でか演奏はぴたりと止まった。
「それ……葬送行進曲よ!」
あやのが青ざめた顔で言った。
ガタン、と物音がした。
「な、なんだ!?」
みさおが辺りを見回す。
ソファの後ろでがさがさと何かが動く気配がする。
「た―ッ!?」
ぬっと姿を現したそれを見て、あやのは気を失いそうになった。
みゆきだった。
頭部の左半分が陥没しており、鼻骨から顎にかけてが大きくひしゃげている。
華麗だった薄桃色の挑発も血と砂塵にまみれて黒く変色していた。
「みねぎしさん…………」
奇妙に歪んだ口が小さく動く。
「高良……ちゃん……?」
無意識に後ずさる。
立て続けに飛び込んでくる現実に理解が追いつかない。
「どうして来たんですか……」
「…………?」
「お2人が来ないように手を打ちましたのに……」
喋りにくいのか、みゆきの声は低くくぐもっている。
信じがたい光景だが、柔らかな口調は間違いなくみゆきのものだ。
とうてい直視できるものではないが、しかしあやのは少しだけ落ち着きを取り戻す。
「私こそ教えて。高良ちゃん、どうして連絡くれなかったの?」
ごく普通に話しかけるあやのを見て、みさおは妙に感心してしまった。
みゆきのこの姿を見ていながら。
逃げ出すどころか当たり前のように声をかけるなんて、とてもできない。
「厭な予感がしていたんです。漠然とですが、何か良くないことが起こるかもしれないと。
ですから敢えて知らせなかったのです。なのに……なのにどうしてですか…………」
ぐるんと白目を向いた瞳の隙間から土色の涙が流れた。
「島の場所も教えず、船頭さんにもお断りするよう伝えておきましたのに。
どうして来たんですか……どうして……どうして…………」
勝手に調べ上げて乗り込んできた2人を責めるようにみゆきが繰り返した。
「厭な予感って……高良ちゃん、何があったの!? 何が起こったの!? みんなは―」
「お、おい、あやの!!」
取り乱すあやのを押さえつける。
しかし自分も真相を知りたいみさおは、じっとみゆきの言葉を待った。
87:惨劇の後に……13
08/11/29 22:22:12 zFbxN7wE
「悪霊の……せいですよ―」
皮肉めいた笑みを浮かべてそれだけ言うと、みゆきはその場に倒れた。
「高良ちゃんッッ!!」
みさおの制止を振り切ってあやのが駆け寄る
すでに意識のないみゆきの肩を掴む。
抱き起こそうとしてその手が止まった。
間近に見てしまったのだ。
髪の生え際辺りがぐちゃぐちゃに潰れてしまったみゆきの頭部を―。
「で、電話!!」
飛び上がるようにしてみさおが、ロビーにあった電話に駆け寄る。
受話器を耳に当てて110番を押す。
「なんでだよ……」
駄目だった。
「携帯も圏外になってる」
みさおの行動を理解したあやのが歩み寄ってくる。
彼女の言葉通り、ディスプレイの上部に”圏外”と赤字で表示されていた。
みさおも自分の携帯を取り出すが、やはり状態は同じだった。
「あれ?」
ある事に気付き、みさおが情けない声を上げた。
「あやの、いま何時だ?」
「えっ? 何時って9時24分でしょ? みさちゃん、携帯持ってるじゃない」
何を言ってるんだ、という顔であやのが首を傾げる。
「本当か?」
「嘘ついてどうするのよ、ほら」
呆れ口調でみさおの携帯を覗き込む。
その顔が凍りついた。
『 22:11 』
自分の携帯をもう一度見る。
『 21:24 』
1時間以上ずれている。
2~3分の誤差はあったとしても、ここまでのずれはあり得ない。
(どういうこと……?)
寒気を感じてあやのが視線をそらした瞬間、柱にかけてある時計が目に入った。
年季の入った木製の時計は午後9時ちょうどを指していた。
「どうなってるの? 時間がバラバラ……」
あやのは頭を抱えた。
ここに来てからおかしな事ばかりだ。
「と、とにかく警察に電話しないと!」
かろうじて意識を保ったあやのが携帯を頭上に掲げた。
こうすれば電波を拾ってくれるかも知れないと期待していたが、
「あ~、無理っスよ」
間の抜けた声が聞こえ、あやうく落としそうになる。
声のした方を振り向いたあやのは、今度こそ気絶しそうになった。
「通報とかできないんスよ。何度か試してたみたいですけど」
両手で自分の首を抱えたひよりが東側の廊下から歩いてくる。
すでに凝固しているのか、切断面に黒色の血液がべっとりと付着している。
「あ、あ、あっ…………!!」
一瞬遅れてそちらを見たみさおも、驚愕と恐怖で倒れそうになる。
この顔には見覚えがある。
いつか学校内でこなたと喋っているのを見た。
88:惨劇の後に……14
08/11/29 22:24:10 zFbxN7wE
「でも先輩方も帰れなくなりましたね。せっかく高良先輩がよくしてくれたのに……」
首だけのひよりがため息をついた。
「な、何の話だよ……てか、何なんだよ!! どうなってんだよ!!」
蝋燭の火がひときわ強く揺らめいた。
それに合わせるようにひよりの体も左右にぶらぶらと揺れる。
「歩きづらいんスよ。頭って結構重くて……」
そんな事訊いてない、という言葉すら出ない。
常識を遥かに超越した光景に、みさおもあやのも凍りついたように動けなかった。
「峰岸……日下部…………?」
2階から呼ぶ声が聞こえ、それと同時にひよりが頭部を抱いたまま崩れ落ちた。
格調高い木製の階段をゆっくりと降りてくる。
「ひいら――!?」
かがみだった。
「…………ぎ……」
腹部をどす黒く変色させ、喘息混じりで。
喜ばしい再会ではないと一目で分かった。
すでに見たみゆきやひよりのように…………。
彼女もまた、現実では生きているハズのない姿で現れた。
「柊ちゃん……」
不思議と恐怖はない。
が、その痛々しい姿に思わず目をそむけてしまう。
「なんで来たのよ……」
苦悶の表情でかがみが吐いたのは、みゆきと全く同じ台詞だった。
「なんで来たの……」
「わ、私たちは柊のことが心配で……! 確かに呼ばれてないけどさ……でもさ!
何となくほっとけないだろ!? あやのだって―!!」
かがみは一歩、一歩とゆっくりと階段を降りてくる。
その顔に羞恥心を抱いた時特有の赤みがさす。
「バ、バカ……何言ってんのよ……」
ふらふらになりながら、それでもかがみは生前と同じ反応をした。
それが2人には堪らなく嬉しかった。
みゆきもひよりも。
そしてこのかがみも、恐らく死んでいるのだろう。
なぜか2人は冷静にその事実を受け容れ始めていた。
最初にみゆきを見た時は認め難かったが、ひよりを見て考えは変わった。
彼女はどう考えても生きているハズがないのだ。
普通なら発狂してしまいそうな現実の連続にもかかわらず、2人はどこか冷めていた。
それともただ理解が追いつかなかっただけなのか。
ともかくも、こうして冷静にかがみと話ができる点は好都合だった。
しかし当のかがみ自身は2人と会話する気はないらしい。
「2人とも、今すぐ帰るのよ」
真剣に、突き刺すような目でそう言い放つ。
「な、なに言ってんだよ! 帰るったって……」
送迎船は明日まで来ない。
かがみの様子を見に来たのだから、一応これで目的を果たしたことにはなるのだが……。
「ねえ、みんなどうなってるの? 高良ちゃんもさっきの子も……何がどうなってるの!?」
あやのが真相を聞きだそうと踏み出した時、
「来ちゃ駄目ッ!!」
かがみの怒声にびくんと竦みあがる。
「いいから帰って! 早く!」
「おい、柊……」
「早くしないとあんたたちまで数に入れられる……!!」
そう叫び、かがみは蝋燭を見た。
5つの火が激しく揺れている。
「なぁ、柊。いったい……いったい何なんだよ? 何がどうなってんだよ!?
なんでそんなケガしてんだ!? 誰にやられたんだよ!!」
みさおが近づく。
来るなと言われても向かう足は止められなかった。
89:惨劇の後に……15
08/11/29 22:26:22 zFbxN7wE
「来ちゃ駄目っつってんだろ!!」
顔を歪めてかがみが怒鳴る。
だが止まらない。
「バカッ!?」
みさおはかがみの両肩をしっかりと掴む。
その瞬間、生暖かい風がどこかから吹き抜けた。
「ひいらぎ…………?」
鬼のような形相で睥睨するかがみに、みさおは思わず後ずさる。
「来ないでって言ったでしょ……あんたたちは関係なかったのに…………。
さっさと…帰らないから……数に入っちゃったじゃない…………」
声も口調もかがみなのに、みさおには目の前の彼女が全くの別人に見えた。
ドサッ、と2階で何かが倒れる音がした。
反射的に2人は頭上を、かがみは蝋燭を見やる。
火がまたひとつ消えた。
……が、しばらくするとまた灯る。
「…………」
かがみはため息を一つつくと、みさおの脇をすり抜けて玄関扉に向かった。
無駄だと知りながらも取っ手を掴む。
「やっぱり…………」
押しても引いても開かない。
落魄した様子でかがみが振り返った時―。
今度は西側の廊下の奥で悲鳴が聞こえた。
「何よっ! 何なのよっっ!!」
突然、あやのが頭を抱えて蹲った。
駄々をこねる子供のように首を左右に振る。
「…………あやの」
みゆきとは違う意味で優雅なあやのが、理解できない現実を拒絶するように耳を塞いだ。
何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない。
「夢よっ! 夢なんだわ! 夢に決まってる。あり得ないあり得ないありえない―」
ぎゅっと目を閉じて、まるで呪文のようにぶつぶつと繰り返す。
取り乱したあやのを見て、みさおは逆に冷静になった。
ここで自分が慌てふためいても仕方がない。
「柊、さっき私たちは関係ないとか言ったよな? あれって何のことだ?」
「………………」
「教えてくれよ。せっかくここまで来たんだ。それに―」
「…………?」
「うちら、友だちじゃん?」
場違いな笑みを浮かべるみさお。
「日下部……」
こんな姿になってもなお、自分を友だちだと言ってくれる彼女に。
5年間も同じクラスでありながら、高校では蔑ろにしてきた彼女に。
かがみは申し訳なさでいっぱいだった。
「そんな顔すんなって。な?」
みさおはもう一度笑った。
90:惨劇の後に……16
08/11/29 22:29:27 zFbxN7wE
その後。
泣きじゃくるあやのを引きずるようにして3人はかがみの部屋に入った。
『多分、私の部屋なら大丈夫だと思う』
ロビーを離れる際、かがみがそう呟いたのをみさおは聞き逃さなかった。
「笑わないで聞いてくれる?」
2人は小さく頷く。
笑えるような状況ではない。
腹部を血液で染め上げたかがみを前に、誰が笑うものか。
普通なら何とかして警察か救急車を呼ぶべき状態なのに、みさおもあやのもそうしなかった。
今はそれよりもかがみの話を聞かなければならない。
この超常現象の真相を知りたい。
「あのね―」
かがみがゆっくりと口を開く。
・
・
・
・
・
「……まさか」
聞き終えた2人の第一声はそれだった。
つかさの死……それが動機であることは分かるが、悪霊という部分が理解できない。
いくら動機があるとはいえ、こなたたちを殺すことに躊躇いを感じないことにも。
「こ、こんな事して―」
その後はどうするつもりなの、という言葉をあやのは呑み込んだ。
しても意味のない質問だ。
「悪霊ってほんとにいるんだな」
顔面蒼白のあやのとは対照的に、場違いなほど呑気な声を出すのはみさおだ。
「2人とも疑わないんだな」
呆れるような顔でかがみが呟く。
「信じるしかないだろ。あんなの見た後なんだからさ」
みさおが口をとがらせた。
「みゆきは最期まで信じようとしなかったけどね」
今度は冷笑。
みゆきは頭が良すぎた。
だから自分が知っている常識の中でしかものを考えられなかった。
「でもそうすると柊は……もう死んでるってことなのか……?」
言ってからみさおは恐ろしくなった。
「そうなるわね……」
かがみが忌々しそうに頷いた。
「それで柊ちゃん……私たちまで数に入ったっていうのはつまり……」
「うん…………」
あやのの問いにかがみはすまなそうに頭を下げた。
「私たちもあんな風になるってこと……?」
「うん……」
「………………」
”関係ない”の意味がようやく分かった。
2人はつかさの死に直接絡んでいないのだ。
(…………)
みさおは今になってかがみが怖くなった。
もしあの場に自分たちがいたら……?
ゆたかを介抱する、救急車を呼ぶ等してしまっていたら……?
かがみはやはり、つかさが死んだ理由を自分たちにも転嫁しただろうか?
「でもそんな事させないから」
顔を上げたかがみが凛とした口調で言った。
「2人は関係ないから。悪霊に捧げるのは罪を犯した人間の命だけよ。
あんたたちには何も罪はないし、すぐにここから出れば大丈夫なハズ」
(罪……か……)
みさおが小さく息を吐いた。
(なあ、柊……その罪って妹を殺したって意味だよな? 今でもそう思ってるのか?
柊には悪いけど、聞いた限りじゃ事故だと思うぜ。そうは……考えられないのかよ……?)
91:惨劇の後に……17
08/11/29 22:30:34 zFbxN7wE
全ては事故だ。
偶然が折り重なって起こった不幸な事故。
かがみ以外の全員がそう思っている。
”あんたたちには罪はない”
そう言った。
つまり彼女は今でもこなたたちには罪があると思っている、ということになる。
「冗談じゃないわ!!」
突然、あやのが鬼のような形相で叫んだ。
「なんでそんな事に私たちが巻き込まれなくちゃいけないの!?」
「お、おい、あやの……どうしたんだよ?」
「悪霊だか何だか知らないけど、あんな目に遭うなんてごめんだわ!」
「ちょっ……!」
「私は死にたくないの! みさちゃんだってそうでしょっ!?」
ヒステリックにあやのが怒鳴る。
その剣幕にかがみもみさおもしばらく呆気にとられた。
「ま、待てよあやの。そんな言い方ねーだろ?」
それでも制止するのは自分の役目だと、我に返ったあやのが強い口調で言った。
「柊は私たちは関係ないって言ってるんだ。だから誘わなかったんだろ?
それなのに私たちが勝手に来たからこうなってんだ。そうだろ?」
みさおに反発されたことで彼女はさらに激昂する。
「押しかけた形になったのは柊ちゃんが心配だったからよ! 分かるでしょ!!
最初からこうするのが目的だって知ってたら、わざわざここまで来なかったわよ!」
勢いづいてまくし立てる彼女は、
「柊ちゃんが教えてくれてたらそれで済んだ話なのっ!!」
ついにそこまで吐き捨ててしまった。
「あ、あやの……!!」
額にじっとりと厭な汗を浮かべ、みさおが横目でかがみの様子を窺った。
(――!?)
だが視界にまず捉えたのは柊かがみではなく、その向こうにある時計だった。
棚の上にある小さな置時計だ。
黒い2本の針は9時22分を指している。
「わ、分かってる! だから私が何とかするって言ってるでしょ!」
「当たり前よ! さっさと私たちを帰して! こんな所、1秒だっていたくないわ!」
あやのが立ち上がった。
ドアノブに手をかけようと踵を返したところで、その動きがぴたりと止まる。
「……あやの?」
厭な予感がしていた。
温厚で面倒見のいいあやのの変貌ぶりが、みさおには怖かった。
いつものあやのではない。
強引にアプローチしてかがみの安否を確かめに来た、あの凛として優しい彼女は―。
「ひとつ、ふたつ、みつ…………」
再びゆっくりと振り返り、ドアを背にしてそんな事を呟き始めた。
「駄目! 駄目よ、峰岸っ!!」
かがみが立ち上がった。
それと同時にパキンとガラスが割れるような音がした。
みさおの眼前を何かがかすめた。
「よつ、いつ…つ……」
あやのの喉に黒い2本の針が突き刺さっていた。
それが時計の針だとみさおが理解するまで数秒。
「血の大河ながぜ……ぼねのやば…き…ずげ……」
どくどくと流れる血を見てみさおが悲鳴をあげた。
「ひ、柊……ッ!!」
裏返った声で助けを求める。
こっちも血まみれだ。
「遅かった…………」
かがみがうな垂れる。
「い、今のなんだよ! 時計……時計の針が!!」
「言ったでしょ。悪霊の仕業なのよ。このままじゃあんたも―」
言いかけて口を噤む。
それを防ぐのが自分の役目だと言い聞かせる。
92:惨劇の後に……18
08/11/29 22:33:10 zFbxN7wE
「日下部、これで分かったでしょ? ここにいたら殺される。あんたも数に入ってるの。
来てくれたのは嬉しいけど、私はこの通りだし、目的は果たしたでしょ?」
もうここにいる理由はないだろう、とかがみは言った。
しばらく逡巡した後、みさおは小さく頷いた。
かがみを見捨てるような形になったが、彼女自身が自分は死んでいるといっているのだ。
それにここに留まればあやのと同じ目に遭う。
「柊…あやのは……」
血溜まりの中に横たわるあやのに、みさおは短く黙祷を捧げた。
2人はロビーまで戻ってきた。
みさおが玄関扉に手をかける。
が、やはり押しても引いても扉は熔接されたみたいに動かない。
「無理か……」
入る時はすんなり開いた扉が、今ではビクともしない。
(これも悪霊がやってるのか……?)
思いながら、自分がおかしくなる。
かがみほど冷めてはいないが、18にもなって悪霊を信じている自分が滑稽だった。
「窓からなら出られるかも」
あやのが一歩踏み出した時、
「窓は駄目よ」
かがみが制した。
「なんでだよ。開かないんだぜ、これ。もう窓しかないだろ」
「日下部、ちょっと待って!」
なおも止めようとするかがみに、みさおは少しだけイラついた。
「柊先輩の言うとおりです……窓は…駄目です……」
不意に足元でそんな声がし、みさおが視線を下に向けた。
「あ、あ…………!?」
目が合った時はそれが何か分からなかった。
知らない顔だ。
寝起きのような目でじっとこちらを見上げている。
「こんな風になりますから……」
抑揚のない声で語りかけるそれは腰から下がなかった。
ズル…ズルッ……と、布擦れの音を響かせながら両腕で這い寄ってくる。
「こ、これもっ……!!」
悪霊の仕業なのか、と言いかけてみさおは口を噤む。
訊くまでもなくそうなのだ。
さらに言うなら、これこそかがみの望んだ結果なのだ。
「岩崎さん、日下部から離れて」
怯えるみさおを背後に庇うように、かがみが前に出た。
みなみはしばらく憎々しげにかがみを睨みつけていたが、やがてふいっと視線をそむけると、
「………………」
何か言いたげに口を開いてすぐに廊下の奥に消えた。
「なあ、柊……」
吐き気を堪えてみさおが呟いた。
「死なせ方も柊が決めたのか?」
口にしてから、なんと無意味で恐ろしい質問をしたんだと後悔する。
その問いにかがみは、
「違うわ。私はあいつらを連れてきただけ。後は悪霊が全部やったことよ」
淀みなく答える。
その言葉にみさおは安堵する。
もしそうだったとしたら、かがみほど残酷な人間はいない。
ほとんど逆恨み同然の理由で人を殺させる時点で心優しい人間とはいえないが、
それでもかがみが彼女たちに直接手を下していないことがせめてもの救いだった。
それに見方を変えれば、かがみはつかさに対してこれ以上ないほどの深い愛情を注いでいるのだ。
(良かった……って思っていいのかな……)
陰惨な現実に変わりはないのに、みさおは必死に光明を見つけようとする。
今はそんなことをしている場合ではない。
93:惨劇の後に……19
08/11/29 22:35:01 zFbxN7wE
早く館から出なければ、あやののように何時どこで殺されるか分からない。
ふいに柱の時計が目に留まる。
9時44分を指している。
(…………ッ!!)
何を思ったか、みさおは急に床に伏せた。
その姿勢のままソファにはりつく。
「……なにやってんだ?」
呆れ顔のかがみに、
「い、いや、あそこの時計の針が飛んでくるんじゃねーかと思って」
冷や汗を拭ってみさおが答える。
あやのの死を見ていた彼女からすれば、時計ひとつも恐ろしい殺人の道具だ。
この程度では悪霊の手からは逃れられない。
館を離れない限り、どんな方法を用いても死を免れることは不可能だ。
「そんなことしても無駄だって。何とかしてここから出ないと」
小さくなって怯えるみさおを尻目に、かがみは脱出の方法を考えた。
正面の扉は開かないし、窓を使えばみなみと同じ末路を辿るハメになる。
「日下部!」
突然、かがみが手を打った。
「ここから出られるぞ!」
「ほんとにいいのか?」
みさおがおずおずと訊いた。
「もうこれしかないのよ」
かがみの部屋に戻ってきた2人は、窓に向かった直立した。
みさおが傍にあった椅子を持ち上げる。
「だって人ん家だろ? 壊したら怒られないか?」
今さらになって惚けた発言のみさおに、かがみは呆れたように笑った。
これだけの惨状になっているのだから、もはや窓一枚などどうなっても変わらない。
持ち主には悪いが、これもみさおを助けるためなのだ。
「早く!」
かがみの怒声に急かされ、みさおは覚悟を決めてその椅子を―。
力いっぱい窓に叩きつけた。
耳を劈(つんざ)く音と手に伝わる衝撃。
窓ガラスが粉々に砕け散る。
「よっしゃっ!!」
吹き込む冷たい風に、内と外が繋がったことを実感する。
「まだよ、窓枠も全部壊して」
かがみは決して油断しない。
ガラスを粉砕しても、あの窓枠の開閉に体を挟まれたら終わりだ。
なかば自棄になってみさおが椅子を振り上げた時だった。
突然、外から何かが飛んできた。
「うわっ…………!!」
目では追いきれない速度で飛んでくるそれらが、みさおの頬や腕をかすめていく。
ひときわ大きな塊が右肩を食い破った。
直後に襲ってくる痛みにみさおが振り上げた椅子を落とす。
ガラス片だった。
砕け散ったガラスが館から出ようとするみさおを狙ったのだ。
それに手を貸したかがみもまた、同じ様に体を貫かれていた。
「日下部!!」
駆け寄ったかがみが見たのは、ぱっくりと割れた肩の傷口から溢れる血液。
もう飽きるほど見てきた赤黒い液体だ。
「ひ、柊ッ!!」
心配をかけまいと傷をかがみに見せないようにして、
「いま何時だ!?」
問いながら自分も時計を探した。
94:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 22:35:31 AjQ4t4mU
支 援
95:惨劇の後に……20
08/11/29 22:37:32 zFbxN7wE
「…………は?」
なぜここで時間を知りたがる?
かがみはつい情けない声を出してしまった。
「いま何時だッ!?」
だがみさおは真剣だ。
信じられないくらいに怖い顔をして部屋中を探っている。
「……10時前よ。そんなのどうだっていいじゃない」
血糊で表示窓が固まった腕時計を見てかがみが言った。
みさおの表情が凍りついた。
「じ、時間がないんだ! もうここから―!!」
窓のへりに手をついたみさおを、かがみがしがみつくようにして制止する。
「は、離せよっ! もう時間がないんだってヴぁ!!」
「何の時間よ!? 窓枠を壊さないと岩崎さんみたいになるだろ!」
かがみも必死だ。
手を拱いていては彼女の言うように、みさおも体を真っ二つに切断される。
「後で聞くから! それよりさ、柊! ちょっと支えてくれよ! 窓が高くて―」
かがみの制止を無視してみさおが上体を持ち上げる。
「おわっ!!」
開いていた窓枠が恐ろしい勢いで閉じた。
間一髪、持ち前の反射で難を逃れる。
みさおを引きずり降ろそうとしていたかがみもろとも、翻筋斗(もんどり)打って倒れた。
「だから言っただろ!」
みさおの下敷きになったかがみが怒鳴る。
が、その声すらも通り抜けてみさおは慌てて立ち上がる。
「早く……早くしないと―!!」
みさおはこの館に流れる時間と、携帯が指し示す時間の秘密に気付いていた。
あやのの死の直前、たまたま見た時計。
そこで知ってしまったのだ。
自分の携帯とあやのの携帯で示す時間が異なっていた理由。
あれは持ち主が死ぬ時間だ。
(もう時間が…………)
この推理はあやのの例、たったひとつしか判断する材料がないが間違いないとみさおは見ている。
「無駄だよ」
甘ったるい声がドアの方から聞こえ、振り向くとこなたがいた。
腹部が黒く変色しているが、もはやみさおは驚かない。
これでうろたえるようなら、みなみを見た時点でショック死している。
「こなた…………!!」
その姿を認めたかがみはすぐさま不愉快そうな顔をする。
「無駄だよ、みさきち。可哀想だとは思うけどもう逃げられないよ」
今度は抑揚のない声でそう言う。
「な、なんだよチビッ子……11分までまだあるぞ!」
「11分?」
問うたのはかがみの方だった。
「……!! 日下部、携帯貸して!!」
貸してと言いながら、かがみが強引に携帯を奪い取る。
焦る手で開いた待ち受けには、
『 22:11 』
と表示されている。
「これって……!」
かがみはすぐにみさおと同じ考えにたどり着く。
その様子をやや離れて見守るこなたは、全てを見通しているように笑んだ。
「その時間どおりに死ぬんだよね?」
「…………ッ!!」
みさおが驚いたようにこなたを見た。
「峰岸さんの時もそうだったんでしょ?」
まるで見ていたように言う。
「こなた!!」
怒りに目をつり上げて、かがみがみさおを押しのけるようにして前に出た。
96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 22:58:33 KvX2FpKK
sien
97:惨劇の後に……21
08/11/29 23:14:54 zFbxN7wE
「あんたと話してる暇はないわ。さっさとそこ…を…………」
生前の最期のシーンが繰り返された。
こなたの肩を掴んだかがみは瞬間、彼女が携えていた果物ナイフに腹部を貫かれた。
するりと刃先が滑り込んだのは、そこにすでに皮膚がないからだ。
「ひぃ、ひいらぎ―!!」
みさおがほとんど言葉にならない声を上げる。
崩れ落ちたかがみはピクリとも動かない。
「な、なんだよ! なんで柊を―!!」
もうすぐ自分が死ぬかもしれないという恐怖は、かがみが刺されたことで吹き飛んだ。
考えるまでもなくかがみはもう死んでいるから、厳密には今、こなたに殺されたことにならない。
しかしその点を差し引いても、こなたの行動はみさおに怒りを抱かせるに十分なものだった。
「かがみから聞いてるよね?」
「ああ」
「かがみはね、つかさが事故で死んだのを私たちのせいだと思ってるんだ」
「知ってる」
「じゃあこれは? 私たちをこんな目に遭わせたのは悪霊の―」
「それも聞いた」
怒気を露にしていたみさおが冷静に受け答えしているのは、こなたの様子が違うからだ。
自分が知っているこなたとはまるで異なる。
生死の差はあっても、かがみを見れば生前と死後では性格が変わらないことは確認済みだ。
「それで妹を生き返らせようってことだろ?」
「そうだよ。私たちが死んだらつかさは生き返るハズだったんだ」
その計画が失敗に終わったこともみさおは知っている。
もったいぶるように順序だてて説明するこなたに、彼女はイライラした。
どれも既にかがみから聞いている話だ。
未だ現実として受け止めきれない部分があるが、かがみを信じているからこの話も信じられた。
「でもね、失敗したんだ。つかさは確かに生き返ったんだけどね。ゆーちゃんやみなみちゃん……
って、みさきちは知らないかな。とにかく皆、かがみのことが許せなかったんだよ。
つかさが死んだのは事故だって。なのに、逆恨みされてこんな目に遭わされたんだから―」
「お前はどうなんだよ? やっぱり妹が死んだのは……」
「事故……だけど、私はそうは思わなかったよ。イベントに誘ったのは私だしね。責任は感じてた。
だからこれは償いなんだって―皆は巻き込まれた形になったけど、私は償いがしたかった」
「チビッ子……」
「ずっとそう思ってたから、私だけは自分から死んだんだ。その時は悪霊のことなんて知らなかったから、
もしかしたらかがみが死ぬかもしれない…そうなる前に償おうと思って」
「自分から……じさ……?」
「まぁ結論を言えば、何もしなくても私が死ぬことには変わりなかったんだけどね。
ただ悪霊に殺されるよりは自分から死んだほうが償いになると今でも思ってるよ」
こなたは”償い”という言葉を繰り返した。
それがつかさへの贖罪の念からなのか、かがみへの当て付けなのかは分からない。
「でも皆は納得しない。それでね、皆でかがみの邪魔をしたんだ。つかさに乗り移ってね。
つかさが生き返らないようにしたんだ。結果的にそれがかがみへの仕返しになるから」
みさおがかぶりを振った。
邪魔とか乗り移るとか、そういう理解できない話を淡々とするこなたが不気味だった。
「柊を刺したのもその為か?」
何とか精神を保って訊ねる。
そうでもしなければ本当におかしくなってしまいそうだ。
「あれは私の考えだよ。私は償いができればそれでいいと思ってたけど、皆は違うからね。
皆がかがみの邪魔をするのを止められなかった。人の念って結構怖いんだなって。
この場合はどっちが逆恨みなんだろうとか思ったよ」
「それで……?」
「5対1で皆の勝ち。つかさは生き返らなかった―っていうか、かがみの思い通りにはならなかった」
「なっ……どういうことだよ?」
「ほら」
こなたが自分の足元を見る。
奇妙なものが這いずってきた。
墳墓から掘り出された首のないミイラのような。
「そ、それ……!!」
かつて彼女が”妹”と呼んでいた人物を”それ”と指差してみさおが後ずさる。
98:惨劇の後に……22
08/11/29 23:16:25 zFbxN7wE
「つかさだよ。こうなったらもう”生き返る”なんて無理だもんね」
自分の体重を支えられないつかさは、こうしてみなみのように床を這っての移動しかできない。
「つかさはもう生き返らない。でもかがみはつかさと一緒にいたい。だから思ったんだ。
逆のことをすれば2人一緒にいられるんだろうなって」
「ぎゃ、逆って―柊が死んだら妹と一緒だってことか!?」
首のないつかさから視線をはずせない。
「うん。勝手な話だと思うだろうけど、かがみとつかさの為だから……」
こなたは寂しそうに顔を伏せた。
そんな事しなくても、かがみならつかさの後を追って自殺したかも知れない。
みさおは一瞬だけそう考えたが、すぐにその思考を頭の隅に追いやる。
「だけど悪霊の方はそれではすまなかったんだ。5人の命はもう捧げた後だったからね」
深夜アニメを野球中継の延長で潰された時のように、こなたは聞く者を陰鬱な気分にさせるため息をついた。
何となく。
何となくだが話が見えてきたみさおは、
「柊の計画が成就するまで繰り返すとかじゃないだろな?」
半分笑いながら訊いた。
もちろん冗談であって欲しいとの願いが込められた問いだったが、
「よく分かったね」
返ってきたのは一縷の望みをも粉々に打ち砕く辛辣な一言。
「かがみはそこまで話してなかったのかな。悪霊がやってること。
つかさが生き返るまで私たち、何度も何度も死に続けるんだよ」
死に続ける、という言葉にみさおは矛盾を感じたが、目の前で起こっているこれは紛れもなく真実だ。
こなたの言うように”死の繰り返し”が行われている証拠だ。
(ゴールのないレースってことかよ……)
みさおは身震いした。
「つかさはこんな状態だから……生き返るわけがない。だからずっとこれの繰り返しなんだよ」
”だから”の部分があまりに強引過ぎる気がしたが、そこでみさおはある疑問にぶちあたる。
「ちょっと待てよ。それじゃなんで私たちが数に入るんだよ?」
「それも聞いてないの? さっきも言ったけど、成就のためには私たちが死ぬことが条件なんだ。
でも、これもさっきも言ったけどつかさがこんな風だから絶対に叶わない。だからだよ。
みさきちと峰岸さんも巻き込んで、成就させようとしてるんだと思う。
人数が多いほうがたくさん死ぬし、それが悪霊の考え方なんじゃないかな」
「何言ってんだよ。10人いようが100人いようが一緒じゃねーか。
妹は助からないんだろ? いつまでもこんな事してたって無駄―」
「そう……よ……」
かがみがゆらりと立ち上がった。
「私のせいよ……私のせいであんたたちまで巻き込んで……ごめん、日下部―」
彼女もまた、死を繰り返しているのだと分かる。
「でも、どうしてもつかさを助けたかった。こいつらのせいでつかさは死んだんだから……」
涙こそ流れていないが、かがみは泣いているようだった。
その様子を見てみさおは同情しかけたが、ちょっと待てと自分の思考に歯止めをかける。
いくら妹想いだからといって、こんな理不尽なやり方で友人を殺すような人間に同情などできない。
「みさちゃん、もう時間よ」
こなたの後ろからひょいっとあやのが顔を出した。
「あっ……あやの…………!!」
彼女だけは死にたてだけあって、他の誰よりも血色がよい。
喉から流れる鮮血は凝固しかけていて、赤いネクタイをしているように見える。
「高良ちゃんにいろいろ教えてもらったわ。私たち、どうやっても死ぬみたいね」
すでに死んでいるあやのは、もちろん死に対する恐怖など持っていない。
それどころか、
「みさちゃんもこっちに来たら?」
気味の悪い笑みを浮かべてこんな事を言い出す。
「私たち、友だちじゃない。それにみさちゃんだって独りだけ生き残るなんて寂しいでしょ?」
「なに言ってんのよ!」
かがみが怒鳴った。
99:惨劇の後に……23
08/11/29 23:18:57 zFbxN7wE
「あんたたちは関係ないって言ってるでしょ!? 峰岸には本当に申し訳ないと思ってる!
でも日下部はまだ助かるのよ? 峰岸も手伝ってよ!」
「知らないわ。柊ちゃんのせいでこんな目に遭ったのに、手伝ってほしいなんて虫が良すぎるわよ」
あやのがすっと前に出てきた。
「ほら、もうすぐ11分」
かがみの腕を掴んで、巻かれていた時計をみさおに見せつける。
2本の針が指し示す時間にみさおは戦慄した。
「じょ、冗談じゃないぞ!!」
ほとんど涙目になったみさおが走り出した。
かがみを押しのけ、あやのの脇をすり抜け、こなたを突き飛ばした。
(窓が駄目なんだったら、やっぱり玄関しかない!!)
みさおは今までで一番速く走った。
時間がない。
シャンデリアを回り込んだ時、厭なものが視界に入った。
頭部と胴体が離れてしまったひよりだ。
最後に見た時と同じ恰好で床に伏せっている。
こんな風にはなりたくない。
みさおは玄関扉に飛びついた。
やはり押しても引いても微動だにしない。
「くそっ!! なんで開かねーんだよっ!!」
渾身の力を込めて取っ手を引っ張ってみたが、まるで手ごたえがない。
ならば、と数歩下がってタックルの要領で肩から扉にぶち当たった。
その瞬間、館内の全ての照明が消えた。
「な、なんだ!?」
暗闇にみさおが情けない声をあげる。
恐怖のためか彼女は玄関扉を背にして立った。
だがそれがまずかった。
ガシャン! と音を立てて何かが飛来する。
視覚を奪われたみさおは代わりに聴覚を鋭敏にして、周囲の変化を感じ取った。
しかし何が起こったのかまでは分からない。
「なん――!?」
みさおが喉に焼けるような痛みを感じたその時、ロビーに光が戻った。
魚の小骨が引っかかった時のように、喉の奥に奇妙な違和感があった。
「…………ッ!!」
反射的に唾液を飲み込もうとしたが、逆にごぼごぼと熱いものがこみ上げてくる。
そこでようやく自分があやのと同じ恰好をしていることに気付く。
少し違うのは刺さった針の大きさだ。
口の中に鉄の臭いが広がる。
たまらずそれを吐き出すと床は赤く染まった。
「やっぱり駄目だったんだね……」
がっかりした口調でそう言いながら、こなたがゆっくりと歩み寄ってくる。
「ごぼ……びいだぎ…………」
声を出そうとするが、みさおの口から出てくるのは腥(なまぐさ)い血液だけ。
すぐに全身から力が抜け、彼女はその場に崩れ落ちた。
その衝撃で刺さっていた針がさらに奥に押し込まれる。
(ひい…ら……)
最後の力を振りしぼってみさおが顔を上げたその先では―。
黒く変色した果物ナイフを振り上げては、何度も何度も自分の腹部を貫き続けるこなたの姿があった。
終
100:JEDI_tkms1984
08/11/29 23:23:00 zFbxN7wE
以上です。
一日のうちに全て投稿するのはこれが初めてです。
支援して下さった方、ありがとうございました。
101:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 23:25:11 AjQ4t4mU
乙でした
102:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/29 23:30:12 KvX2FpKK
>>100
こっちまで悶絶させられたよ
臨場感あるなあ
103:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 03:01:32 4yEiNm+1
>>100
久々に背筋が震えるほどのホラー物読んだ。
描写が凄くて鳥肌だった
104:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 03:17:49 Dlkdky6r
>>100
いてえ…
乙ですー
105:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 05:46:21 rS7T0rQR
>>100はうっ…気になって前作から読み始めたらこんな時間に……取り敢えず乙です。
106:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 06:33:26 14l3zRqQ
>>100
血が…乙です。
107:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 06:34:45 14l3zRqQ
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
108:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 08:22:46 x33249TF
>>100
おお、投下されている…
乙乙
109:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 23:43:48 zI9TnK2x
かがみ→妹の恨みを晴らした結果、つかさを永遠に失う+関係無い背景コンビまで巻き込んでしまう
他5人→かがみに仕返しをした結果、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムを食らったディアボロと化す
……人を呪わば、穴二つか
110:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/01 02:01:20 epkfSy/M
今年中に自殺させるように
111:JEDI_tkms1984
08/12/01 12:23:45 HgzNAH81
お読み下さりありがとうございます。
ホラー物など本来は夏にやるべきでしょうが、今年最後の投稿ということで年末の挨拶旁ご笑納ください。
いつも僕の拙いSSをwikiに上げてくださり、ありがとうございます。
この場を借りて御礼。
112:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/01 20:56:14 zNW45R5w
URLリンク(up2.viploader.net)
URLリンク(ranobe.com)
113:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/01 22:22:34 gdWaoT3l
>>112
それ俺の絵だ…
いまだに貼ってくれる人がいるってのがなんか嬉しい
描くか…
114:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 00:09:14 fGccQKVK
止めとけ異脳者
115:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 01:07:26 yHMZzy5d
俺は応援する
116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 01:24:40 fGccQKVK
自演乙
117:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 01:32:57 DRkmUFwz
監禁してレイプしまくれば誰でも自殺したくなる
118:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 01:45:22 1m+0uIpW
ぼっちスレみたく専用ロダ作りますのが良いですか?
119:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 01:46:42 euvA88UX
(≡ω≡.)あと何回自殺しなきゃいけない?
120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 06:48:05 6G9qDT5T
このスレが存続する限り、何度でも
121:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 09:10:03 fGccQKVK
お前等が死ぬネタに書き換えればいいのに。
122:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 15:19:25 NP5c943s
こなたの内臓丸見え画像くれ
123:グレゴリー
08/12/02 20:33:30 hFZ1CSXm
どもー今日の10時くらいから前作の続きを投稿します。
なお、文章、挿絵ともどもかなり18禁の表現がありますので
ご注意を
124:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/02 21:20:08 euvA88UX
>>100
要約するとミイラ取りがミイラになったのですね。乙です。
>>123
エロシーン歓迎。グロシーンはもう嫌。
125:グレゴリー
08/12/02 21:21:48 hFZ1CSXm
では、行きます。
126:楽しいお泊り5
08/12/02 21:22:57 hFZ1CSXm
そうじろうの様々な失態も、こなたの献身的なフォローによってなんとかカヴァーされた。
風呂桶の栓を抜き、そうじろうの精液を排水し、残ったゲル状のものはゴミ袋に入れて処理した。
3人がかりで風呂場を清掃して改めて入浴を済ませた。
ご機嫌なかがみとつかさは無邪気にも、互いの髪型を入れ替えたりして遊んでいる。そして、
みゆきとのメールによって宿題の存在を思い出したり、流れ星を見たり。
まさに、この時期、この3人にしか体験できない青春。
就寝時間が訪れた。こなたはかがみとつかさを前にして
いきなり二人の手を取った。「ん?どうしたこなた」
かがみが怪訝な表情をしている。こなたは少し弱気な笑顔で言った。
「ねえ、もしもさ。私たちがこの先、別々の道を歩もうと約束して欲しいんだ」
「こなちゃん...」
普段とは様子が違うこなたを気遣ってつかさは心配そうにこなたの顔を覗き込む。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
「かがみ、つかさ、約束して。この先、10年たっても20年たっても、今、この瞬間の気持ちを...」
「絶対に忘れないって」
普段のマイペースで飄々とした人柄とは違う一面を見せたこなたを前に、二人は戸惑っていた。
「オッケー、分かったよ。つかさ、ほら!」
かがみはつかさに手を差し伸べる。3人は手をつなぎあって輪になった。
こなたは目を閉じ、二人の手のぬくもりを感じる。だが、目を開いたこなたはふと、ベッドの真ん中に不自然に
聳え立った塔のようなものに気がついた。
ベッドのシーツを剥がしてみると、聳え立っている塔は、そうじろうの巨根だった。
3人がかりでベッドを裏返しにしてみる。そうじろうはベッドの裏に張り付いていた。
ベッドの真ん中に穴を開け、そこに巨根を通してずっと待ち構えていたのだった。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
127:楽しいお泊り6
08/12/02 21:24:43 hFZ1CSXm
こなたは恐怖した。かがみかつかさが犠牲になっていたかもしれない。
こなたの恐怖は怒りに変わった。大切な、大切な友人を父は欲望のはけ口にしようとした。
裏返したベッドを元通りにすると、真ん中に聳え立つ塔を乱暴につかんだ。
「お父さんを返せ!お父さんを返せ!!!」
こなたは大声で叫びつつ、つかんだ巨根を乱暴に握り締める。
いつの間にか目から涙があふれていた。だが、握り締めたそれは、ますます堅くなっていくばかりだった。
「こなた、落ち着きなさい!!!」「こなちゃん!!」
二人は、錯乱するこなたを落ち着かせる。ベッドから脱出し、トボトボと自分の部屋に向かうそうじろう。
こなたは肩を震わせ、1人、泣いていた。
すると、背後から二人の優しい抱擁がこなたを包んだ。
「お前らしくないぞ、こなた。私たちは大丈夫だって。」
「そうそう。こう見えても結構しっかりしてるんだから。自分の貞操は自分で守れるよ」
なんという姉妹だ!このような事態でも二人は自分に気をつかってくれている...
こなたの背にじんわりとした2人のあたたかみが染みこんできた。
こなたはこの一夜、絶対に2人を守ってみせる!と決意を固めた。
二人が就寝したのを確認し、こなたは携帯電話でゆい姉を呼び出した。
一族の恥は身内で解決しなければならない。絶対に他人を巻き添えには出来ない!
事態を把握したゆい姉は、すぐに車を飛ばして家に来てくれた。
意外なことにゆうちゃんも一緒だった....
こなたとゆい姉、そしてゆうちゃんはそうじろうの部屋にいた。
そうじろうは座布団をしっかりと抱きしめ、必死に顔を隠していた。
父に残された人間性ゆえに、わが身を恥じているのだろう。
128:楽しいお泊り7
08/12/02 21:29:35 hFZ1CSXm
だが、むき出しの下半身から突き出た武蔵棒弁慶はまるで、死してもなお、威風堂々と立ちはだかっていた
かつての英雄のように、自身を誇示している。
中学3年のゆうちゃんはそうじろうの弁慶をまじまじと見つめて驚きの声を上げた。
「ねえ、これって、一体なんなの?」
ゆい姉は慎重に答えた。
「これはね、男性が男性であるためにもっとも重要な体の器官なのよ。でもね、ゆうちゃん。
理解して欲しいの。
そうじろうおじさんみたいに温厚で優しい人でも、常に戦っているのよ。
こいつとね..。だから、時々、私たちが手助けをしてあげないといけないのよ」
まだ何もしらない純粋無垢なゆうちゃんはゆい姉の言葉をそのまま受け取った。
「手助け?そうじろうおじさんのためになら何でもするよ!私は何をしたらいい?」
こなたは心配になってゆい姉にこっそりとつぶやく
「ねえ、なんでゆうちゃんを連れてきたの?まだ、早すぎると思うんだけど」
警察官であるゆい姉は一種のシニカルな思考を持っている。
「こなたちゃん。人生で学ぶ瞬間ってのは貴重なものなのよ。それはあなたにも言えるわ。見てなさい!」
そう言うと、ゆい姉は服を脱ぎ始めた。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
成熟した力強い肉体を晒して、ゆい姉は慎重に、ゆっくりとそうじろうの武蔵棒弁慶に手を差し伸べる。
手で包みこんだそれを、ゆいはゆっくりと上下させる。
129:楽しいお泊り7
08/12/02 21:32:23 hFZ1CSXm
だが、むき出しの下半身から突き出た武蔵棒弁慶はまるで、死してもなお、威風堂々と立ちはだかっていた
かつての英雄のように、自身を誇示している。
中学3年のゆうちゃんはそうじろうの弁慶をまじまじと見つめて驚きの声を上げた。
「ねえ、これって、一体なんなの?」
ゆい姉は慎重に答えた。
「これはね、男性が男性であるためにもっとも重要な体の器官なのよ。でもね、ゆうちゃん。
理解して欲しいの。
そうじろうおじさんみたいに温厚で優しい人でも、常に戦っているのよ。
こいつとね..。だから、時々、私たちが手助けをしてあげないといけないのよ」
まだ何もしらない純粋無垢なゆうちゃんはゆい姉の言葉をそのまま受け取った。
「手助け?そうじろうおじさんのためになら何でもするよ!私は何をしたらいい?」
こなたは心配になってゆい姉にこっそりとつぶやく
「ねえ、なんでゆうちゃんを連れてきたの?まだ、早すぎると思うんだけど」
警察官であるゆい姉は一種のシニカルな思考を持っている。
「こなたちゃん。人生で学ぶ瞬間ってのは貴重なものなのよ。それはあなたにも言えるわ。見てなさい!」
そう言うと、ゆい姉は服を脱ぎ始めた。
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
成熟した力強い肉体を晒して、ゆい姉は慎重に、ゆっくりとそうじろうの武蔵棒弁慶に手を差し伸べる。
手で包みこんだそれを、ゆいはゆっくりと上下させる。
いつの間にか、ゆいの顔は熱気で赤く、妖しげに染まっていた。
こなたとゆうちゃんは息を飲んでその光景を眺めていた。
すると、ゆいは武蔵棒弁慶のほうに顔を近づけていき...
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
こなたはゆうちゃんにそっとつぶやいた。「これが例のへらひほって奴だね。結構腕が試されるらしいよ」
ゆうちゃんはなんだか分からない感じだったが、ゆいが先っぽに舌を這わせると、その滑らかな舌使いに感心したように
うなずいていたが、びっくりして言った。 「お、おねえちゃん、口の中に入れたよ!」
「あわわ、大変だよ。食べちゃうつもりなの?」
「いや、見てみなさいゆうちゃん。ゆい姉のリズミカルな頭の上下に反応して、お父さんが...」