08/09/15 01:08:40 hrRY5Chv
こなたは躊躇いがちにノックし、ゆっくりと病室に入る
そうじろうの姿を見て、こなたは息を呑んだ
痩せ細って骨だけのようになっている手足
ぽっこりと窪みを刻んでいる頬
顔色が全体的に青い
そうじろうの身長は、今や私の身長と大して変わらない程縮んでいた
そんなそうじろうが、空気が濁ったような声でこなたの名前を呼び続ける
「こなたさん、待ってましたよ」
そうじろうに付いていた医師は軽く頭を下げて病室を出た
こなたはそうじろうの隣にある椅子に座り、そうじろうの手を握る
そうじろうがこなたの姿を捉えた時、漸く声が消えた
こなたは、50%の期待を胸に話す
「お父さん…私、こなただよ…判る?」
「…こなた?」
「…うん」
しばらく沈黙が続き、そうじろうはゆっくり話す
「こなたの将来の夢は、何だ?」
こなたは一瞬呆けるが、慌てて答える
「えっ…いやぁ…まだ決めてない…」
「なあ、かなた。こなたは将来どんな大人になると思う?」
こなたは驚いたように辺りを見回すが、かなたは何処にも居ない
居るはずがない
「お父さん…」
「かなた…お前のお陰で幸せな人生を送れたよ
これから、こなたと二人で頑張るから…だから、安心してくれ…」
そうじろうの目から一筋の涙が零れた
「どうした?こなた
えっ…お母さんが何で居ないかって?
…お母さんは居るぞ?ほら、あの夜空の星になって俺達を見守ってくれてる」
そうじろうの一言一言がこなたの脳裏に鮮明に当時の景色を映し出す
覚えている筈が無いのに、こうも鮮明に景色が出てくるのは何故だろう
そうじろうは断片化された記憶の欠片をもがきながら辿っているのだ
「こなた、お前は将来立派な大人になって、お父さんを喜ばせてくれよ?
でも、結婚はしないでくれ…お父さん、独りぼっちになるからさ…」
ごめん…お父さん
私はすっかり汚れちゃったよ…
それは、衣服に着いた墨のように、洗っても決して綺麗にすることが出来ない
せっかく私の幸せを願って、男手一人で精一杯私を育ててくれたのに…
本当にごめんね、お父さん
こなたは大粒の涙を流して必死に謝った
「こなた…ちょっと俺の我儘、聞いてくれるか…?」
「…うん」