08/08/22 10:49:10 4/uficae
そうは言っても例えば……
交換留学で日本に滞在することになったパティ。
1ヶ月だけ僕と同じクラスで勉強をすることになった。
たまたま空いてた隣りの席になった縁からか僕が学校を案内し、授業中も何かと世話していた。
日本語がカタコトの彼女は度々僕に「コレはニホンゴでなんていうノ?」と聞いてきた。
上手く伝えられず身振り手振りで説明する僕の姿を見ては大笑いし「全然分からないよ」と言った。
少しずつお互いの考えていることが分かるようになったころには1ヶ月という時が過ぎていた。
パティが帰国する。僕にはそれが上手く理解できなかった。
彼女はみんなの見送りを断った。小さい頃から泣き虫で自分の泣き顔が大嫌いだったから
みんなにその顔を見せたくない、そんな理由で。だから帰国前日もまるで明日も登校するみたいに
普通にさよならだけを言って彼女は僕達のクラスから去っていった。涙は見せなかった。
鞄の中の手紙に気付いたのは帰宅した後だった。
「あす、3じのでんしゃでくうこうにむかいます。えきであえますか?」
眠れない夜を過ごして僕は駅に向かった。
「きてくれたんだ」
「もちろん」
「……アナタのおかげでニホンがもっとダイスキになったよ」
「そっか。よかった」
「……アナタのおかげでニホンゴもうまくなったよ」
「うん、ホント、上手くなったよ」
「……アナタのおかげでかえるのがツライよ」
「…………」
僕は訊いた。
「ねえ、Loveよりもっと好きは、英語で何て言うのかな」
「……こう、かな」
そう言って彼女は僕の唇に唇を重ねた。
僕は電車の姿が見えなくなってもそこを動かなかった。
彼女が最後に教えてくれた言葉が胸に染み込むまでずっと。
なんてことがあったら絶対に好きになっちゃうだろ。