10/05/25 20:26:08 RNzCKbi9
投下乙です。
ルイズパーティにモンモンが加わった!!
まあ、準レギュラーっぽい感じですけど。
魅惑の妖精亭との交流は、まだ続いてるんですかね。
>>268
自分は武器屋ルイズと、上の銃士のルイズの平民ルイズ組ですね。
こういうIFネタでは、原作とのギャップが好きなんで。
健やかに、というよりやたらパワフルに育ってるのが良し。
そこから更に突き抜けちゃったお仕事ルイズも好きだけど。
288:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:38:22 HAKp7AeD
>>268
>>287
さらに別方向の突き抜け方として「ルイズは悪友を呼ぶ」のヲタルイズを推したい。
いや、最近某所の「109回目」見てて思い出したんで。
289:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:41:02 tHtZVBKG
もしもデルフ売ってた武器屋の親父がジャパネットたかたの社長だったら
290:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:50:44 5djY4Tzm
もしもデルフ売ってた武器屋……の近くにあるピエモンの秘薬屋から、某サトミタダシ的な洗脳ソングがエンドレスで流れていたら。
ヒットポイント回復するなら~
291:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:55:12 xO6fV6ry
もしもデルフの声も釘宮だったら
292:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 22:59:07 fruRkLJ8
せめてデルフは田中天にしてあげて。多分ギャラ安いから。
293:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 23:06:10 JQ7M8T6s
一部の人にはそれご褒美すぎるだろう、デルフが中の人にのっとられそうだがw
294:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 01:04:11 3v225gS7
>>290
洗脳される南条くん役は誰だ?ギーシュあたり?
295:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 22:55:49 vWVvuYMb
もしも才人が人を笑わせるのが趣味だったら
ルイズにボケてみせたり
タバサを笑わせるために毎日いろんなギャグを考えたり
使い魔お披露目ではピン芸を披露したりする
296:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 23:09:06 4XN2OKJq
もしもサイトが人を笑わせないと呼吸障害に陥る病気にかかっていたら
297:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 23:53:59 6dbsUoAq
もしサイトがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
298:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 00:29:06 k0Sns5F3
≫296
ゾナハ病乙
早くクロス板に行くんだ
299:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 00:42:26 SoH0ekw+
もし技の名前を大声で叫ぶのが魔法の出し方だったら
魔法のパワーも音量、発音、発声方式、声のキレ具合で決まる
300:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 01:41:59 Sr4vqOMr
大塚芳忠的なのがラスボスクラスの声
301:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 07:21:45 hZnRb3vy
>>300
加齢とともにパワーダウンしていった納屋吾郎さん的声の元ラスボス
302:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 08:25:35 S0AWRJj8
>>299
タバサのキャラが変わりそうだな。
大きな声を出すのが苦手でせいぜいライン止まりのタバサ、
または魔法を使うときだけ性格が変わったようになるタバサ。
303:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 10:13:16 wqGUA6yc
タバサは最初からあの性格じゃないし、魔法に必要ならいくらでも大きい声を出すんじゃないかな。
あの性格になった当初は出せないとしても、必要だから出せるように努力するだろうしさ。
>>298
居酒屋ボンバーに雀荘エルボーですね
304:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 10:58:22 YmLTELw9
むしろどこぞの乙女座の聖闘士のように、普段は殆ど声を出さずに力を蓄積し、
魔法発生時に爆発的な威力を引き出すとか。
305:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 18:32:03 b2VXrx4O
>>299
挿絵が兎塚エイジから富士原昌幸に変わりそうな予感
……本当は石川賢と言いたかったのは内緒
306:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 22:56:44 hWt/8zwL
アレか、ルイズが口をがぼっとあけてそこからエクスプロージョンを放ったりするのか
307:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 22:58:13 AWJ4SdqT
サイト「ザケルッ!」
308:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 23:51:45 YSIC0KDp
あれか、優しい貴族になるのか
309:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/29 12:45:13 2ufIYw/2
>>301 納谷さんか 関係ないけど
そろそろ本格的にやばくなってきたからな
>>305
石川賢だったら汚いセリフも出そうだな
こんなゼロ魔・・・悪くないかも
310:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/29 13:40:49 SDrAaOqr
「火石の炎で焼き尽くしてやろうか? 時空の狭間に吹き飛ばしてやろうか!」
「やってみろ! ジョゼフ・ド・ガリア!!」
ピ キ ! !
ゼロの使い魔 完!
ラストはこうなるわけだな?
311:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/30 09:08:25 kM48xGXH
>>310
これがホントの「虚無エンド」ってことか…………
312:虚無と銃士代理
10/05/30 17:08:55 Wdp4i/Nu
「いやぁ、食った食った」
「満足そうね」
さて朝食も済み、ルイズは食堂の入り口でサイトと合流すると、教室へと向かっていった。
キュルケとタバサはすでに先に向かっていった。
「あんなに上手い飯は初めてだよ」
「マルトーさんはトリステインでも随一の料理職人だからね。あれは一度食べたら、暫くは他のものを食べられなくなるわよ」
「はは、だろうなー。それにあの人達、俺が腹減っているのを見て、すぐにご飯用意してくれたんだぜ。
大丈夫か、しっかりしろ! 貴族に苛められたのか! ほら、これでも食って元気でも出しな!って良い人過ぎるだろ」
「あー……。どうだろう、同情されたとか?」
「……それは切ないな」
サイトは厨房に辿り着いた時の事を思い出す。確かにあの時、腹が減りすぎたせいで酷い
顔をしていたかもしれない。そして自分を見る目は同情のそれだった気もしなくはない。そう思うと少し複雑な気分だった。
「さて、ここが教室よ」
「おぉ」
第15話
313:虚無と銃士代理
10/05/30 17:11:06 Wdp4i/Nu
そうこう歩いているうちにルイズとサイトは教室へと辿り着いていた。階段状に机と椅子が並べられ、一番下で教師が講義を行うような形である。
サイトはその光景に少し驚いた様子だった。
「こういうのは初めて?」
「いや、やっぱり学校の作りは似てるんだなぁって」
二人は中へと入り、ルイズの席へと向かう。
「へぇ……サイト、学校通ってるんだ。サイトの学校もこういう感じ?」
「大学っていう学校がこんな感じかな。もっと専門的な知識とか学びたい人が行く学校。俺はその下の学校に通ってるんだ」
「そうなんだ。サイトの世界にもそういうのあるのね」
「まあなぁ。俺も親から通え通えって言われてさぁ……」
「あはは、私と一緒ね!」
サイトの話に自分を思い浮かべて、思わずルイズは笑った。学院に行けとカリーヌに言われた時、ルイズは大層反発した。
私は騎士になりたい。母の幼き時のように騎士見習いになりたいと主張したが。
「いまどきの騎士はここ、頭もよくないとダメなのよ」
と、エレオノールに言われて。結局跳ね除けられて、ここへと通わされている。
今となっては良い思い出となっているが。とはいえ、今でも騎士になる夢は諦めていない。
とそんな会話をしている彼女たちに、何処からともなく、くすくすと馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。
明らかに馬鹿にしているその笑い声にサイトはむっと表情を顰めるが、ルイズがそれを制止した。
「……」
「あ、気にしなくて良いわよ。堂々としていましょう、堂々と」
「おう」
ルイズは胸を張って教室を進んでいく。サイトもその後を堂々と歩いていった。何の可笑しいことなどないのだ。
笑いたければ笑えば良いじゃないか。私たちは何も悪い事はしていない。
「はぁい、ルイズ。こっちよ。サイトもここ座りなさいな」
「お、キュルケさん、タバサさん」
「キュルケでいいわよ」
「私もタバサでいい」
と、二人を呼ぶ声が下のほうから聞こえてきた。どうやら先に教室へと来ていたキュルケのようだ。
その隣にはタバサが静かに本を読んでいる。キュルケは今まで話していた男たちをどけると、二人の席を作ってあげた。
二人は、その男たちに恨めしそうに見られるも、気にする様子もなく、キュルケが用意した席に腰を下ろした。
席に座ったサイトは落ち着かない様子で辺りを見回している。どうやら他の生徒の使い魔が気になるようだ。
「怖い? でも大丈夫、何にもしないから」
「そ、そうか。あの俺を睨んでる目玉は?」
「バグベアーね」
「そうか、あれがバックベアード様か……! ろ、ロリコンちゃうわ!」
「?」
「い、いやなんでもない。あの蛸人間は?」
「スキュアね」
「へぇ……。あれ、そういやタバサの使い魔は? あのでっかい竜」
「外。入れないから」
「はは、そりゃそうか」
当然といえば当然な事にサイトは軽く笑った。と、下側の教室の扉が開かれ、そこから中年の、ハットをかぶった女性教師が入ってきた。
ふくよかな頬がいかにも人の良さそうな雰囲気を出している。
314:虚無と銃士代理
10/05/30 17:12:06 Wdp4i/Nu
「いかにもっていうおばさんだな。あの人も魔法使い、いやメイジなのか?」
「当然」
ルイズは小さな声で答える。そろそろ授業を受ける姿勢にしなければ。
女性は教室を見回し、その様子を伺う。そして、満足したような優しい笑みを浮かべて言った。
「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔を見られるのがとても楽しみなのですよ」
「ミセス・シュヴルーズ! 一人平民を攫ってきた奴がいます! ゼロのルイ……」
一人のぽっちゃりとした生徒が手を挙げて、態々立ち上がってルイズを指差し、からかおうとしたが、
ルイズはまるで怒り狂ったドラゴンのような目つきでその生徒を睨みつけた。
ルイズは平民で育った時から自由奔放で、ムキになる事はあるが怒る事はあまりなく、お転婆ではあるが割と穏やかな性格だ。
しかし、学院に入ってからは、馬鹿にされまいと少し強気な性格に変わっていた。
寧ろ、こちらのほうが彼女の本来の性格なのだろう。睨みつけるルイズの威圧は、カリーヌから受け継がれたものと言って良い。
そんな目で睨みつけられた生徒はみるみるうちに顔を真っ青にし、身震いしながら席に座りなおした。
「ミスタ・グランドプレ。お友達を『ゼロ』など『人攫い』などと呼ぶものではありません。
彼女の事情はすでにコルベール先生より聞かせていただきました。
それにミス・ヴァリエール。貴方は公爵家の淑女なのですから、そのように怖い顔をしてはいけませんよ」
「は、はい、申し訳ございません」
「はぁい」
「さて、では授業を開始しましょう」
少し不満げだが、二人の返事にとりあえず満足したシュヴルーズは自分の杖をくるりと振る。
すると、いくつものこぶし大の石が机の上に転がった。どうやら彼女の系統は「土」のようだ。ルイズの姉、カトレアと同じである。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズ。これより一年間、皆さんに『土』の系統の魔法について講義させていただきます。
では、まず一年生の時の復習として、ミス・ヴァリエール?」
「ふ、ふぁい!」
突然当てられ、ルイズは緊張したように背筋を伸ばす。彼女は座学は苦手なのだ。
ともかく、動くことが好きな彼女は、魔法以外の身体を動かす授業ではトップクラスであるが、座学に関しては赤点ギリギリなのである。
いつもはキュルケかタバサかロングビルのところに泣き付き、一夜漬けで何とかしてしまう。全く、彼女らしい。
頭の回転は悪くはないので、そういうやり方で済んでしまうのだ。
もっと勉強すれば、座学トップも夢じゃないとロングビルに言われたことがあるが、彼女には勉強する気などさらさらないのである。
「魔法の四系統、答えられますね?」
「は、はい! えっと、土、火、水、風です。あ、あと一応虚無も!」
「はい大正解。四系統だけではなく、失われた魔法、虚無もしっかり含めましたね。よく勉強できていますね」
シュヴルーズは頷きながら、ルイズを軽く褒めた。ルイズは小恥ずかしそうに頭を掻く。
その周りでは、面白くなさそうに生徒たちが顔を顰めていた。
「虚無を含めては魔法は五系統に分かれますが、『土』系統はその中でも重要な役割を担っていると私は思っております。
勿論これは私が土の系統だからというわけではありません。土の魔法は万物の組成を司る重要なもの。
この魔法がなければ、貴重な宝石を作ることも、石から家を建てることも、農作物を収穫するのにも手間が掛かるでしょう。
このように、皆さんの密接に関係しているのです」
実際には、土だけじゃないけどね、とルイズは姉エレオノールの言葉を思い出す。
彼女の得意な系統は「水」であるので、そのことについて熱く講義されたこともある。自分の得意な系統は誇りたくなる。
つまりは、そういうことだ。
講義の最中、ルイズはちらりとサイトを見る。うんうん、なるほど、と頷いていた。どうやら魔法に興味を示しだしたようだ。
「では、今日は皆さんにこの土系統の魔法の初歩、『錬金』の魔法を覚えていただきましょう。ではまず、私めが見本をお見せします」
そう言ってシュヴルーズが杖をくるりと回し、詠唱を始める。そして短いルーンを口ずさむと、石に向かって杖を翳した。
すると、ただの石が光り始め、そしてその光が収まると、石は黄金の輝きを見せていた。
315:虚無と銃士代理
10/05/30 17:13:14 Wdp4i/Nu
「ご、ゴールドですか!? ミセス・シュヴルーズ!」
その輝きを見て、キュルケが我を失ったように立ち上がった。
だがそんな彼女の期待に裏切るように、シュヴルーズは申し訳なさそうに頭を振った。
「いいえ、ミス・ツェルプストー。これはゴールドではなく、真鍮です。ゴールドはスクウェアクラスでなければ錬成することはできません。
私は、トライアングルですから……」
「なぁんだ……」
がっかりするように椅子に座るキュルケの隣で、サイトはルイズに尋ねた。
「トライアングルって?」
「うーん……。なんて説明すれば良いんだろ? 結構定義曖昧なのよね。使える系統の数とか、合わせられる系統の数とか。
……ああもう、タバサ、解説代わって」
ルイズは説明に困り、隣に居たタバサに説明を代わってもらおうとするが、彼女は本を読んだまま拒否した。
「授業中」
「ちぇ。そう言って、いっつも本読んでるのに」
「こら、ミス・ヴァリエール!」
と、小さな声で雑談をしていた3人だったが、ルイズの動きが大きかったため、彼女だけシュヴルーズに見つかってしまった。
ルイズはまた背筋を伸ばして、愛想笑いをした。
「私語は慎みなさい」
「ご、ごめんなさい……」
「ははっ、怒られてら」
「サイト!」
「こら! ……ふむ。では、丁度良いので、実践をミス・ヴァリエールにお願いいたしましょう」
「あちゃあ……」
シュヴルーズがルイズを指名した瞬間、辺りがざわめく。隣に居たキュルケも頭を抱えてしまった。
わけが分かっていないのはサイトと使い魔達だけだった。ルイズは慌ててシュヴルーズに懇願した。
「シュヴルーズ先生! 私、その……ま、魔法上手く使えないので、できれば別の人にして欲しいかなぁ、なんて」
「そうですとも! ヴァリエールに魔法を使わせると危険です!」
「先生は去年僕たちのクラスを担当をしているから知らないんです!」
思わぬ援護、いや罵倒にルイズは半分ほっとしつつもむっと顔を顰める。
が、これがいけなかった。対抗心を燃やしていると勘違いしたシュヴルーズはルイズを援護するために生徒を叱咤した。
「お黙りなさい! ミス・ヴァリエール、失敗を恐れてはなりません。さあ前に出て。『召喚』が出来た貴女なら、きっとできますよ」
「う、うう……」
「ルイズ、仕方ないわ。骨は拾ってあげる」
「死なないっつの!」
言葉とは裏腹に、そそくさと机の下に隠れるキュルケに対しルイズはやけくそ気味に叫んだ。
そして彼女を皮切りにどんどん生徒たちはキュルケと同じように机の下へと避難していった。
そんな彼らを尻目に、ルイズは教卓へと向かっていく。あそこまで言われては後には引けない。
「ったく、なんでゼロのルイズなんだ!」
「皆避難しろ!」
「ゼロはゼロらしく大人しくしろってんだ!」
「全く、はた迷惑な奴ね」
「さあ、おいで、ラッキー。あんな奴の魔法を浴びたら、どんな悪影響が出るかわからないからね」
横を通り過ぎる度に浴びせられる罵声に、ルイズの眉間の皺が寄る。その様子を背中から
感じ取って、キュルケは乾いた笑みを浮かべた。
316:虚無と銃士代理
10/05/30 17:14:13 Wdp4i/Nu
「あぁ、今日は一段と爆発が強そうね……あはは」
「え、何々?」
「いいから貴方も中に入りなさいな」
「とても危険」
「へっ?」
サイトも言われるがままに机にもぐりこもうとする。そのとき、振り向いたルイズの表情を見た。
彼女の表情は何処か暗くて、そして不安そうだったが、サイトを見た瞬間、大丈夫だと言わんばかりに笑顔を見せた。
そしてルイズは教卓の前に立った。シュヴルーズは不安そうな彼女の緊張を、実際には違うのだが、ほぐそうと優しい笑みを浮かべる。
それがまたルイズにとっては辛い。
「錬金で何を大げさな……。さあさミス・ヴァリエール。錬成したい金属を心の中で思い描き、杖に込めるのです」
「はい。……あの」
「はい?」
「離れてたほうが良いですよ。危険ですので。お願いしますから離れてください」
「はぁ……。そこまで言われるのでしたら」
シュヴルーズはわけがわからない、と言った表情を浮かべたが、あまりにルイズが真剣な眼差しでぐいぐいと押しながら離れろと言うので、
言うとおりに一歩二歩と気持ち程度に離れた。ルイズはその様子にはぁ、とため息をつくと、どうなってもしりませんよ、と心の中で呟きながら、
目の前の石に見つめた。そしてぶつぶつと辺りに聞こえない小さな声で呟く。
「皆して馬鹿にして」
瞳には恨みを、いや負けん気を込めて。あんなに馬鹿にされて、苛立ちを覚えない人間などいない。
「私は細剣(レイピア)のルイズだっての」
自称だが。レイピアの扱いなら誰にも負けない。
一度起こした決闘騒ぎだって、メイジをレイピアで叩き伏せたこともある。……しこたま怒られたが。
それでもレイピアの扱いには、王国の騎士にだって負けない自信がある。未だに母や姉には一撃も与えた事はないが。
だってあの母の娘、あの姉の妹だもの。片方は血が繋がってないが。
「……シュヴルーズ先生も空気読まないし」
シュヴルーズには罪はないはずだが、無知とは罪である。使い方が間違っているが。
「いいわよ、そこまで言うなら、私の魔法、改めて見せてあげる。これも『復習』だわ」
その言葉と共に、極悪な笑みを浮かべた。まるで物語で出てくるような、悪事を考えている大盗賊のようだ。
そしてルイズは思い浮かべる。金だ、スクウェアでしか作れない金を作ろう。
そして、金を精一杯思い浮かべ、そして石を放り投げ、短いルーンを詠唱し、そして杖を向けた。
「あぁあ、爺の相手も疲れるわ」
ロングビルは晴天の下で背筋を伸ばしていた。
今日も今日とて、年老いた学院長の、使い魔を使ったセクハラから逃れ、突然血走った様子で現れたコルベールのお陰で休憩をすることができた。
こういうときは、普段の猫かぶりもせず、地を出していた。
爺の相手も疲れる、か。だがこの場所での仕事も満更ではないと思えてきた。ある目的のためにこの場所に来たのだが、その目的も忘れてしまいそうになる。
これも魔法が使えないはずなのに、明るさを忘れないあの娘のせいだ。
しかし、そうも行かない。ロングビルは普段の優しい表情からは見せない鋭い眼光を本塔に向けた。
そのときだった。ルイズが講義を受けている教室から、大爆発が起こった。
始めは何事かと驚いたロングビルだったが、慌てふためく生徒たちの声や罵声のおかげで原因が分かり、鋭い眼光も緩くして苦笑した。
「やれやれ、またかい。今日は一段と盛大だわ」
317:虚無と銃士代理
10/05/30 17:15:22 Wdp4i/Nu
呆れながらもくつくつと笑うロングビル。さて、今日はどういう風に発破を掛けてやろうか。
そう思っていると、少し離れた場所にメイドが腰を抜かしていたのを見つけた。しかし、ここいらでは見慣れない格好である。
学院が支給しているエプロンドレスとはまた違ったデザインだった。しかし、どこかで見覚えはある。
ああ、そうか。あれは去年の冬の休暇の最中、無理やりラ・ヴァリエール家に連れてこられた時の。
そう思い出し、ロングビルは猫かぶりをすると、そのメイドの娘の下に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「は、はいぃ。ご親切にありがとうございます」
「貴方は、シエスタさん?」
「あ、あれ!? ろ、ロングビルさん!」
どうやらビンゴだったらしい。しかもルイズと仲が良い、ドジなメイドのシエスタだった。一度見たら忘れられない、綺麗な黒髪だ。
彼女ともラ・ヴァリエールの実家に行った時に出会っていた。だが何故このような場所に? ロングビルは彼女に手を貸しながら尋ねた。
「何故ここに?」
「ルイズの、あ、いえ、お嬢様の様子を探ってこいと言われまして……」
なるほど、心配性の両親らしい。ロングビルは発破を掛けるなら彼女に任せようと思い、ルイズの居場所を教えた。
「ミス・ヴァリエールはあそこよ」
「ひぇ、やっぱり! る、ルイズぅ!」
「……やれやれ」
すると慌てん坊のメイドはパタパタと、敬語を忘れて大事な主人、いや友人の下へと走っていった。
その後姿を見ながら、ロングビルも猫かぶりを忘れてくつくつと意地悪に笑っていた。
ああ、そういえば、あの子の使い魔も一緒に居るんじゃなかったか。こりゃ面白くなった
と、ロングビルも仕事を忘れて、ゆっくりとシエスタの後を追った。
「いやぁ、申し訳ない……」
「魔法成功しないって、こういうことか」
手を立てて、めちゃくちゃになった教室を掃除するサイトに謝罪するルイズ。サイトは呆れながら、昨晩の事を思い出していた。
「そう。私の魔法は全部爆発するの。最近は、場所はコントロールできるようになったけれど、威力まではね」
「しっかしありゃすごかったなぁ……」
あの後はまさしく阿鼻叫喚だった。机は吹き飛び、使い魔達は暴れ周り、涼しい顔をしているルイズには罵声がとんだ。
一瞬防御が遅れたシュヴルーズは煤だらけになって気絶し、医務室へと運ばれていった。
サイトはその様子を、隠れた机の下で呆然と見つめていた。そんな中、他の教師が現れ、ルイズとサイトには教室の修繕が言い任されたのだった。
しかし、とうのルイズは本当に清清しい顔である。なんというか、やり遂げた顔だった。
「実技になるとねぇ、毎回こうなのよ」
「はぁ。しっかし、ルイズ。お前良く進級できたな……。勉強、苦手そうだったしさ」
「ふふん、一夜漬けと一瞬の集中力、そして運動には自信があるわ!」
「なんという体育会系……脳筋だな」
「ノウキン?」
「いや、なんでもねぇ」
エッヘンと無い胸を張るルイズに呆れてものが言えないサイトだったが、ふとルイズの鼻頭に煤がついているのを気が付き、立ち上がった。
「煤ついてんぞー」
「おう、ありがとー」
「ルイズゥゥ! はっ!?」
318:虚無と銃士代理
10/05/30 17:16:21 Wdp4i/Nu
そんな時だった。ドタバタと走ってきたシエスタがタイミング部屋の中へと入ってきた。
シエスタが見た光景。それは、まるでサイトがルイズに口付けをしようとしているような、
そんな光景。ルイズがまた恥ずかしそうに顔を赤らめて眼を瞑っていたから、また状況は悪い。
そしてそこからのシエスタの行動は早かった。とにかく早かった。何時ものドジっぷりは何処へ消えたのかと言うぐらいだ。
「ルイズのファースト・キスは私が守る!!」
「ぐべらぁ!?」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「いってぇえ……まだくらくらする……」
呪詛のように土下座して誤るシエスタの側で、サイトは地面に座り込みながら頭を抑えていた。
彼の傍には机の折れ端が落ちているから、これで殴られたのだろう。彼の頭にはたんこぶが出来ていた。
「全く、シエスタはあわてんぼうなんだから……」
「ごめんなさい……。わたしったら、早とちりして、罪も無い人を殴り倒してしまうなんて……」
「死ぬかと思った……」
「ごめんなさい……」
シュン、と落ち込むシエスタに思わずサイトも哀れに感じたのだろう、慌てて彼女を励ました。
「い、いやいいって。俺だって誤解されるようなこと、してたようなしてなかったような……」
「いやいやいや、してたでしょ。私が言うのもなんだけど」
「お、おい! そこはフォローしろよ、頼むから!」
「やっぱり、ルイズに……!」
悪乗りするルイズに、サイトは慌てて詰め寄るが、シエスタは再び勘違いからの怒りの炎を滾らせようとする。
サイトは恨めしげにルイズを見つめながら尋ねた。
「ご主人様!? この可愛らしくてご主人様を呼び捨てなメイドさんはどなたですかね!? いやぁ気になるな、俺は気になるぞぉ! うん!」
「ああ、この子? 私の幼馴染で、実家のメイドをしているシエスタっていうの。ちょっとした事情でね、まあ言わば私の親友ってとこ。
ね、シエスタ」
「むむむ……ってへっ!? あ、はい。……始めまして、ルイズの、もといルイズお嬢様のご実家であられます
ラ・ヴァリエール家にて使用人を勤めさせて頂いております、シエスタと申します」
「堅いなぁ、シエスタは」
「だ、だって見ず知らずの人ですし……」
と、残念そうにサイトを見つめながらルイズが紹介すると、シエスタはまるでスイッチが入ったように有耶無耶しく、
スカートの裾をつまみながら一礼し、サイトに自己紹介をした。
その姿はやはり上級貴族で教育を受けているだけはあるようだ。サイトはその可憐さに思わずでれそうになりながらも、自己紹介を返した。
「あー、俺はルイズの使い魔をやってる平賀才人。サイトって呼んでくれ」
「サイトさん、変わったお名前ですね。それに、使い魔。なるほど使い魔をやっておられるのですか。どおりでルイズお嬢様と一緒に。……使い魔?」
納得しかけたシエスタだったが、不意に、行く時にメイド長から渡された『平民でも分かる初歩的な魔法入門(エレオノール著)』の使い魔召喚の内容を思い出す。
使い魔召喚……それは、お互いの口付けで締めくくられる、なんというか、所謂結婚式のようなもの。
それが動物などであればまだいいかもしれない。
さらに正史の通り、ルイズとシエスタの関係がただの仕える平民と従える貴族であればまた別だったかもしれない。
だが、今の彼女はルイズの『無二の親友』である。
「ととととということは、やっぱりルイズのふぁふぁふぁふぁファーストキス奪ったんですか!? 奪ったんですね!?」
「うおっ!? ちょ、シエスタさん!? ぐぇ……」
「ちょ、シエスタぁ!? やめて!」
「許せない……! 貴方を殺して私も死にます! ごめんなさい、ルイズ、先立つ不幸を許して……!」
「ぐぇ……ぐ、ぐるじい……あ、でも胸が、あががが! あれぇ、おじいちゃん? じんだばずじゃ」
319:虚無と銃士代理
10/05/30 17:17:46 Wdp4i/Nu
「サイト、その先へ行ってはダメ! シエスタもやめてってば!」
「"土弾"!」
「きゃう!?」
と、ルイズが必死に引っぺがそうとしていたシエスタの頭にこぶし大の石がぶつかった。
勢いも大きさもそんなになかったため、頭を回して倒れるだけですんだが、その場を鎮めるのに十分だった。
何事かとルイズが石が飛んできた方向を見ると、そこには教室の入り口から、顔をのぞかせるロングビルとキュルケ、そしてタバサの姿があった。
「はぁい、ルイズ」
「もうすぐ昼食」
「全く、なにやってるですか全く」
三人とも呆れているようだ。ロングビルとキュルケは同じような苦笑を浮かべ、タバサも何処か微笑んでいるようだった。
「あ、うん! サイト大丈夫? シエスタも」
「げほっ、げほっ、まあ何とか」
「はれふれはれ……はっ!? ル、ルイズ私……」
「シエスタ、彼は何にも悪くない。ファーストキスも……の、ノーカンなんだから!」
「のーかん?」
「そう、ノーカン!」
「そ、そうよね! ノーカンよね! うん、私ったら、勘違いしちゃって、恥ずかしい……。
粗相起こしてしまって、申し訳ございません、サイトさん」
「へ? あ、いやその……あは、あはは! あはは……はぁ」
とりあえずは上手く収まったが、なんとも言い換えがたい虚しさが漂い、サイトは思わず項垂れてしまった。
「……強く生きなさい、少年。つらくなったら、何時でも私のところ、来て良いわよ?」
「うん、ありがとう……キュルケは優しいなぁ」
何となく打ちのめされ、キュルケに抱き寄せられるサイトは少し涙目だった。
「こらぁ! 人の相棒に色目使うな、キュルケ!」
「おほほ、これは失礼」
と、そんなキュルケにルイズは食って掛かる。キュルケは悪戯っぽい笑みを浮かべてサイトを放した。そのときのサイトの動作も、何となく力がないようだ。
そんな彼を見て、ロングビルは素の状態を少し曝け出したような笑みを浮かべながら、サイトに言った。
「しっかし情けないですわねぇ。メイド如きに気絶させられたり、首絞められたり」
「ぐっ……お、女の子にはなぁ、手を挙げない主義なんだよ!」
「したって、ねぇ」
「いやいや、シエスタ十分強いし。サイトはこっちに来たばかりだから、仕方ないよ。ね?」
「……」
「あー……うん。とにかくご飯食べに行こう? ね? シエスタの案内、お願いして良い?」
「……おう」
慰めのつもりが全く慰めになっていない。そんな切ない昼時だった。
「先ほどは本当に失礼しました。あんなに取り乱してしまって、その恥ずかしいです」
「いやいいって、気にするなよ」
さて、ルイズ達と別れて。サイトは先ほどの暴走特急メイド、シエスタを連れて、厨房へと向かっていた。
彼女は先ほどの事を恥じてか、顔を真っ赤にしながら、申し訳なさそうに俯いていた。
酷い目にあったとはいえ、可愛らしい少女にそんな態度をとられては才人だって黙っているしかない。悲しい男の性、というやつだ。
320:虚無と銃士代理
10/05/30 17:20:04 Wdp4i/Nu
「私って昔からあわてんぼうで……あとすぐ周りが見えなくなってしまうんです。屋敷でもよく叱られました。
それが、ああ……。見ず知らず、それもルイズの使い魔さんにまで迷惑を掛けるなんて」
「いやまあ……うん。それよりもさ、シエスタはここのメイドさんじゃないんだろ?どうしてここに?」
「ああ、それはですね。今日からここで一年ほどルイズの監視を兼ねて働くことになっているんです。
転勤の手続きも済ませましたし、これから一年よろしくお願いいたしますね」
「そっかーここで働くのかー」
まずい! このメイドのことだ、ルイズと同じ部屋で寝ているなんて知られたら。
ルイズの貞操は私が守る! → nice boatなんて事になりかねない。
才人は見る見るうちに顔が真っ青になっていくが、そんな彼の心情など露知らないシエスタは心配そうに、サイトの顔を覗き込んできた。
「あの、やはり何処か痛みますか?」
「いいいやなんでもないさ! 元気元気!」
「そ、そうですか。ならいいのですが……」
「はは、ははは……はぁ。ほら、着いたよ」
ああ、これからはこの娘の尻に敷かれるんだなぁ、と切ない気持ちになりながらも、シエスタを伴って厨房の中へと入っていく。
そこでは忙しそうにコックやメイド達が忙しそうに料理を作っていた。才人はシエスタを厨房の片隅にある机に座らせた。
「おっし、ここで待っててくれ」
「はい」
才人は厨房の奥に向かっていく。そして奥で料理をしていた豪快そうな中年の男のコックに話しかけた。
「マルトーさん!」
彼こそがここのコック長を勤めているマルトーだった。マルトーは手元の包丁捌きをそのままに、
才人のほうを見る。その手つきは慣れたもので、手元を見なくても正確に食材を切れている。
それだけでマルトーの腕がどれだけのものかを教えてくれた。
「おおっ、サイトじゃねぇか。遅かったじゃねぇか!」
「いや、すんません。ルイズのやつがちょっと……」
「はっはっは! またなんかやらかしたのか。しゃあねぇな、あの嬢ちゃんは」
「それで、今日はルイズの実家のメイドが来たみたいなんですよ」
「おお? おお、確かシエスタ、っていう子じゃねぇか? 聞いてるぜ」
なるほど、やはり話は通っているようだ。
「こんなところに転勤たぁ大変だなぁ。いけすかねぇ貴族のガキ共相手にしなきゃいけねぇし。まあ、新人同士仲良くしてやれよ」
「はい、わかってます」
「よっし、そこのシチューを持って一緒に食べて来い。そしたら、デザートの配給な」
「わかりました!」
明るく気さくで、そして豪快だ。少し度が過ぎることもあるが、サイトにとって嫌な人ではない。寧ろ好意的に思える。それに見ず知らずの自分に優しくしてくれているのだ。
才人はシエスタと自分の分のシチューをそれぞれ更に盛ると、それを持って彼女の許へと戻った。
するとシエスタが慌しい厨房の中をそわそわしたような様子で眺めていた。才人はそんな彼女に声を掛ける。
「シエスタの事、知ってたみたいだぜ」
「ああ、一応連絡は伝わっていたんですね。よかった」
「それで、この賄いを食べたら早速、デザートの配膳手伝ってくれだってさ」
「わかりました! では、いただきます」
「おう、いただきます」
才人とシエスタは同時に手を合わせて、同じ言葉を呟いてシチューを食べ始めた。
それが、どれだけこの異世界の住民同士、異常なことか、才人はわかっていなかった。
シエスタもシエスタでご飯をさっさと食べることに専念していて、よく聞き取れなかった。
321:虚無と銃士代理
10/05/30 17:20:55 Wdp4i/Nu
「おいしい! 賄い食でも手を抜かず、一流の味を出す……。マルトーさんは噂どおりの人ですね!」
「そうなのか? ルイズの実家、ええっとなんていうんだっけ?」
「ラ・ヴァリエール公爵家ですか?」
「そうそう、それ! そこでは美味しい飯が出なかったの?」
「まさか! だけど、わがラ・ヴァリエール家のコック長も、マルトーさんの料理に一度だけでも勝ちたいと仰っていた位ですから」
「なるほどなー……」
とすると、マルトーは相当の職人らしい。
才人の中では、一流シェフが、お坊ちゃまやお嬢様が通う高校で働いているようなものかと思った。そりゃ貴族も嫌いになるだろう。
はっきり言って、自分とそう歳が変わらない人間が料理の良し悪しとか、そういうのがはっきりとわかるかと言われれば絶対にNOである。
「ほら、サイトさん手が止まってますよ!」
と、シエスタの皿を見ると、もうすでに彼女の更にシチューは一滴も残されていなかった。才人は一瞬呆然として、慌ててシチューをかき込み始めた。
「あ、あれ? わ、悪い! ハムッ! ハグッ! ハムッ! ムグっ!」
「? あ、水ですね?」
「ムグ、ムグ……プハッ。お、お待たせ」
「ふふっ、サイトさんも慌てん坊さんですね、ふふっ、可愛い」
そんな才人の様子を見て、シエスタはラ・ヴァリエール家のメイドではなく、故郷の村娘らしい、明るい笑みを浮かべていたのだった。
そんな彼女に可愛いと言われて複雑な気分になるものの、満更ではない才人だった。
大きな銀のトレイにデザートが並べられている。それを才人が運び、シエスタがハサミで摘まんで皿に乗せていく。
変わった格好の給士に見ないエプロンドレスのメイドに怪訝そうに見る生徒もいたが、
しがない平民の事など気にしない彼らはすぐに興味を無くし、それぞれの会話に戻る。
「おいっすー」
「あ、サイト。何々、デザートの配給やってんの?」
「そうだよ。さあ、ルイズは何が良い?」
「えっへっへ、クックーベリーパイ」
と、ルイズの許へやって来て、軽い会話をしてデザートを渡してやる。どうやら好きなデザートにありつけたのか、
わかりやすい笑みを浮かべていた。やっぱりこういう表情も可愛いらしいなぁこんちくしょう! 凛としているルイズもいいけど。
もっと俺を頼ってくれれば最高なのに。などとサイトが考えながらトレイを持って、シエスタの後をついていく。
後ろから「うんまー!」というルイズの叫びが聞こえてきた。どうやらお気に召したようだ。
「おい、ギーシュ! お前今誰と付き合っているんだよ!」
「そうだ、ギーシュ! 恋人は一体誰なんだ?」
そんな彼らの前に、金髪の巻髪(というよりは癖毛か)の、けばけばしいフリルを付けたシャツを着た気障なメイジがいた。
胸ポケットにはバラが刺している。わかりやすい奴だ。彼らの周りには友人らしき生徒が、彼を冷やかしている。
だがそんな彼らに対し、ギーシュと呼ばれた気障なメイジは余裕の様子で唇に人差し指を当てて言った。
「付き合う? 僕にそのような特定の女性はいないよ。薔薇は多くの人々を楽しませるために咲くのだからね!」
ナルシストだ。自分の事をバラに例えてやがる。こいつの父親の名前はナルシスで決まりだな、死んでくれ。
と、さりげなくとんでもないことを思っているサイトは、さっさとケーキを置いて、そこを通り過ぎようとした。
が、そんなギーシュ少年のポケットから一つの小壜が落ちるのを、サイトは気づいた。液体に満たされ、ちょっとした細工が施されている。
落し物は落とし物、幾ら気に食わない相手であろうとも、彼はネコババすることも見逃すこともしない。小壜を指差し、ギーシュに話しかけた。
「おい、ポケットから小壜が落ちたぞ」
しかし、ギーシュは会話に夢中になっているのか、はたまた意図的に無視しているのか。才人の声に一瞥すらせず、友人との会話に集中していた。
このまま立ち止まっているわけにもいかないので、才人は小壜を拾い上げ、テーブルに置いてやった。
322:虚無と銃士代理
10/05/30 18:17:26 Wdp4i/Nu
「落し物だよ、色男君」
するとギーシュは苦々しい表情で才人を見つめると、小壜を彼に押しやった。
「何を言っているんだ君は。これは僕のではないよ」
「いや、お前のポケットから落ちたの見たし」
必死に才人に押し返そうするが、才人は頑として拒否した。何か様子が変だ。そう感じたからである。
すると、彼らを取り巻いていた友人たちの一人が小壜を取り上げ、そしてまじまじと見つめながら言った。
「お、この小壜はもしや『香水』のモンモランシーのものじゃないか?」
「いや、これは違うんだ……」
「おい、モンモランシー! これは君のかい?」
別の生徒が小壜を受け取り、それを掲げて、離れた場所で食事を食べていたモンモランシーに見せ付けた。
モンモランシーは立ち上がり、自信満々に頷いた。
「ええ、そうよ」
「やっぱりそうか!」
「これで決まりだな、ギーシュ!」
「いや、ははは……」
「ギーシュ様……」
と、青くなった顔で乾いた笑みを浮かべるギーシュの許に、茶色のマントを着た少女が近づいてきた。
栗色の髪を持つ可愛らしい少女である。そんな彼女を見た瞬間、ギーシュの顔が更に青くなった。
「や、やあケティ」
無理やり笑顔を作って取り繕うとするギーシュだったが、ケティはぼろぼろと泣き始めた。
「やはりミス・モンモランシと……」
「いやそのだね。誤解だ、ケティ……。僕の心の中には君もしっかり」
「最低です!!」
ケティは手を振り上げ、そしてギーシュの頬を思い切り引っ叩いた。
乾いた音が食堂中に響き渡り、近くに居たサイトも思わず、自分が叩かれたかのように頬を押さえてしまった。
そしてそれだけでは終わらなかった。今度はモンモランシーが彼の許に近づいてきた。
その表情は怒りに狂っているのではなく、まるで水のように清清しい表情なのが逆に怖い。
「ギーシュ? 今のはどういうことかしら?」
「モンモランシー。これは誤解だ。彼女とはただ一緒に、近くの森へ出かけただけで……」
「そう、あの一年生にも手を出してたのね。あんなに私の事、好きだって、愛を叫んでいたくせに」
「う……モンモランシー、そんなに悲しい顔をしないでぐれ。咲き誇る薔薇のような顔を、悲しみでゆがませないでくれ」
抱きしめようとするギーシュの手を振り払い、その代わりにモンモランシーはワインの瓶を掴むと、中身をギーシュの頭上からぶちまけた。
「うそつき!!」
そして捨て台詞を吐くと、怒り狂った表情を浮かべて、ドカドカッと靴音を鳴らしながらその場を去っていった。
ギーシュは暫く呆然としていたが、椅子に座り、ハンカチを取り出すと、それで気障ったらしく顔を拭いた。
「ふっ……。どうやらあのレディたちは薔薇の存在の意味を理解していないようだね……」
うぜぇ。と思わず声を出しそうになった才人だったが、もう相手にしていられないと首を横に振って、
デザート運びを再開しようとした。だが、そんな彼をギーシュは引き止める。
「待ちたまえ。どうしてくれるんだ? 君が壜なんか拾ったせいで、二人のレディの名誉が傷ついてしまった」
「知らん。二股掛けてたお前が悪いんだろ?」
「そうだ、お前が悪い!」
323:虚無と銃士代理
10/05/30 18:18:45 Wdp4i/Nu
気障ったらしい動作で椅子を回転させて、才人のほうを偉そうに見つめるギーシュに苛立ち、正論を言って返した。
そしてそれに乗っかるかのように友人たちもあおりながら笑った。
その強気な姿勢にギーシュは思わず、うっと表情を顰めた。まさかこんな風に、平民に強気に来られるとは思わなかったのだろう。
だが彼は負けじと顔に赤を差しながら言った。
「いいかい、給士君。君が壜をテーブルの上に置いた時、僕は知らないフリをした。
それぐらい、察して話をあわせてくれても良いんじゃないかい?」
「知らん。どっちにしろ二股なんて掛けてたら何時かバレちまうだろ。俺は仕事で忙しいんだ。それじゃ」
「待ちたまえ! 君、平民が貴族に対しそんな態度を取って、許されると思うのかい?」
「知るかよ。貴族とかいない世界から来たんでね」
「……よろしい、では君に礼儀と言うものを教えてやろう」
「ちょっと待ったぁ!!」
まさに売り言葉に買い言葉。ギーシュは態度が気に食わない才人を手打ちしてやろうと試みて、
才人も才人で売られた喧嘩を買おうとしていた。頼りない、弱いなどと女性陣に言われ続けた彼にとって他にもない挽回のチャンスである!
しかし、そんな彼らの間にルイズが慌てて割って入ってきた。よほど慌てたのか、口の周りには食べ残しがついているのがなんとも情けない。
そんなルイズは、詰めかかろうとしている才人を背中で押し返しながら、ギーシュに言った。
「ギーシュ! あんた、こんなところで何しようとしているのよ!」
「何って、ああゼロのルイズか。邪魔をしないでくれたまえ。君の失礼極まりない平民の使い魔を、僕が代わりに教育してやろうっていうんだ」
「ルイズ、どいてくれよ。こんな奴には負けやしねぇ」
才人はそれでも食って掛かろうとするが、ルイズの力は思ったよりも強い。こんな小さな身体の何処にこんな力があるのだろうか。
「サイトは黙ってて! ギーシュ、さっきのモンモランシーの顔、見た?」
「は?」
「すっごい悲しそうに泣いてた。悔しそうに、寂しそうに。貴方は知らないかもしれないけれど、
あの香水は何日も掛けてギーシュのために作ったのよ? 材料とかも一緒に探して、危険な場所だって行ったんだから。
それを知らないとか言って」
「うっ……そうだったのか……」
「この男の事、どう思いますかね、キュルケのお嬢さん!」
「最低だと思います」
真っ赤だったギーシュの顔が見る見るうちにまた青くなる。どうやら自分のしでかしたことの重大さにやっと気が付いたようだ。
そこへ更にルイズが追い討ちを掛ける。
「このままだとモンモランシーも、さっきのケティって子も可哀想よ。とにかく、ここは早く謝りに行かないと、一生後悔するわよ?
あんたのところのお父様だって、あんたが女の子を泣かしたと知ったら……」」
「う、うう……そういう事なら仕方がない。君、今日のところは許してあげよう!
しかし、次にこのようなことがあれば、絶対に許さないからな! モンモランシー!! ケティ、僕が悪かった!!」
ギーシュは慌てた様子で捨て台詞を吐くとその場から走り去っていった。
ごく一部、興味本心に後を追った者以外の周りの人間はつまらなそうに各々の席に座り、ルイズとシエスタも大きなため息を吐いた。
ただ一人、才人だけはつまらなそうな表情を浮かべている。
「……どうして止めたんだよ。あんな奴、俺一人でも」
「あのね! 昨日も見せたけど、魔法って結構強力なの。そんなの相手に、何の力も持たない人が勝つなんて難しいんだから」
「そ、そうですよ。もしかしたら、サイトさん殺されちゃうかもしれなかったんですよ? どうして謝らなかったの?」
「下げたくない頭は絶対に下げねぇ。だって今の俺は悪くねぇだろ?」
「う~ん、その心意気は買うけどさぁ。それにギーシュはあんなのだけど、本当はもっと良い奴なんだって」
魔法がなんだよ。確かに、昨日のキュルケの魔法は驚いたが、だがあんな奴だったら。
見返すチャンスを無くし、そんな悔しい思いが才人の中に宿った。
「さあ、仕事済ませたらさ。午後の授業も付き合ってよ。そしたらゆっくりサイトの世界の事、聞かせてもらうんだから」
「……ああ、わかったよ」
324:虚無と銃士代理
10/05/30 18:19:43 Wdp4i/Nu
だが、心配してくれている二人の少女の事も才人は無碍にすることができず、ただルイズの無垢な笑顔に応えることしかできなかった。
そして夜。双子の月が妖しく地面を照らす夜。
才人とルイズは昼の事も何とか気を取り直し、楽しくワインを飲みながら談話をしていた。
モンモランシーの事は気に掛かるが、もうこれは三人の問題である。部外者であるルイズや才人が出る幕などないのだ。
因みに、シエスタはというと、ルイズの制服などの洗濯に出ていた。
「俺、ちょっと用足してくるわ」
「いってらっしゃい~。あんまり遅くならないでね。漏らさないでよ!」
「漏らすか!」
才人は少し催して来たので、ルイズを部屋に残してトイレへ向かった。ここは女子寮、男子トイレなど存在しない。
女子トイレなどに入ればそれこそ変態扱いである。才人は急いで使用人たちが使っている共用トイレへと駆け込む。
間一髪だったようだ。入る時とは対照的に清清しい表情で出てくる。
「おや、君は……」
「あん?」
と、ルイズの部屋へ戻ろうとする時、不意に背後から聞き覚えのある声で話しかけられた。
才人は少し不穏な表情で振り向く。するとそこには昼で二股がばれ、才人に喧嘩を売ろうとしていた貴族の少年、ギーシュが立っていた。
彼を見て、才人は思わずうっ、と息を呑んだ。ひどい顔なのである。
目は晴れ上がっているし、数時間会わなかっただけでなんだかげっそりとやつれているのだ。
何があったのだろうか。いや想像はつくが。
「君は、あの時の平民君か……やあ、奇遇だね……」
「ど、どうしたんだよ……」
「は、はは……ゼロのルイズの言う通りさ。愛しのモンモランシーに謝罪をしに行ったはいいが、
顔どころか口すら聞いてもらえなかったよ……。ケティもあれ以来何処かへと行ってしまって……」
「はぁ」
「ははは、僕は何て最低な男だ。ああ、父上、お許しください……!
私めは、私めの薔薇の棘で、彼女たちを傷つけてしまった……愚かな息子をお許しください」
ギーシュは胸の薔薇を口にくわえながら膝を地面に着き、そして夜空を見上げて懺悔し始めた。
どうやら才人の口調を咎める余裕も、昼の事を追及する余裕も全くないようだ。
そんな様子に才人はもはやついていけない、という風な呆れた表情でギーシュを見つめていた。
と、突然ギーシュが立ち上がったと思うと、才人に尋ねてきた。
「……そうだ平民君。ケティは見なかったかね? 夜には戻っているかと思ってまた部屋を訪ねたのだが、一向に帰ってきていないようなんだ」
「ケティ? ああ、あの栗色の髪の子か? さあ、俺は見てないな」
「本当かい?」
「嘘なんてつくかよ」
「ふむ……。どうしたものか……。学院全体を探したんだが、もしかして外なのか? 夜の外出は危険だというのに」
ギーシュは困ったように考え込んだ。昼の彼とは打って変わった、気障なところなど全くない、少年らしい少年がそこにいる。
そんな彼に、少し考え込んだ様子でいた才人は、溜まらず声を掛けた。目の前に居る困っている人間を放置できるほど彼も冷酷ではない。
「なあ、お前、そのケティって子と近くの森まで出かけたって行ってたよな?」
「あ、ああ。そうだけど?」
「だったらそこにいるんじゃないのか?」
「あそこか……。確かに、あそこはケティとの思い出の場所だ。彼女が向かっていても可笑しくはない」
はっとギーシュも思いついたように言った。
325:虚無と銃士代理
10/05/30 18:20:29 Wdp4i/Nu
「ありがとう、平民君。君は失礼な奴だが、悪い奴ではないようだ」
「平民平民うるせぇな。俺は平賀才人だ。サイトって呼べ」
「……ではサイト君。この恩は忘れないよ。では」
「待てって、何処行くんだ?」
「僕はケティを探しに行く。止めるんじゃない」
「……俺も連れてけよ。一緒に探しに行く。こんな夜に貴族の坊ちゃん一人じゃあぶねぇだろ」
「言うね、君も。だが丸腰の平民がどうやって僕を助けるんだい?」
気障男に指摘されて、少しカチンと来たが確かにそうだ。この貴族の坊ちゃんと戦うのと、
外に出て捜索に出るのでは大きく違う。使い魔として召喚されてきたあの化け物たちと戦わなければいけないかもしれないのだ。
丸腰では何も出来ないだろう。才人は慌てて言い返そうとするが、何も言い返せなかった。そんな彼に対し、肩をすくめながら薔薇を抜いた。
「やれやれ、貴族に対して、自分の実力以上のものを見せようとする事は嬉しいのだがね。
しかし、僕とヴェルダンデだけでは、確かに危ないかもしれない。一応君にも来てもらおう。それには、これを与えようか」
そう言って優雅に薔薇を振り、一枚の花びらを地面に落とすと、突然それが光り、一本の剣へと変わった。何となく悪趣味な雰囲気だが。
どうやらあの薔薇は杖だったようだ。
「うわっ!」
「ふふ、これは錬金さ。君の主人、ゼロのルイズなんかとは違って、このように一枚の薔薇から剣だって作れるのさ!
もっとも、僕が得意とするのは、こんな野蛮な武器を作ることではないがね」
才人はなんだか色々と馬鹿にされた気分になったが、ひとまずその剣を握り締める。
こんな魔法を使えるなんて、喧嘩をしなくて良かったかもしれないと心の中でルイズに感謝しつつ。
すると、左手のルーンが淡く光った気がした。才人は驚いて剣を放してしまう。
「おや、どうしたんだい?」
「い、いやなんでもない」
何だったんだろう。なんだか少しだけ力が湧いてきたような。もう一度剣を握る。
いや、気のせいじゃない。
身体が軽くなっている。それに、剣が手に馴染んでくれているのだ。剣なんて初めて持つのに。
これならこのギーシュという気障なメイジにだって負けない。何にだって勝ってみせる。才人は余裕の表情をギーシュに向けた。
「……よくわからないが、準備は整ったね。さあ、行こうか!」
ギーシュは高々に薔薇の杖を掲げ、まるで進軍するかのような趣で叫んだ。
そんな大声出したら周りにばれるだろ、と才人は肩をすくめつつ、彼の後を追った。
326:虚無と銃士代理
10/05/30 18:21:14 Wdp4i/Nu
以上となります。
ギーシュとの決闘イベントは回避されましたが、代わりに冒険イベント発生。
ガンダールブに関してですが、この地点ではまだ才人の気持ちも滾っていないので、原作一巻の半覚醒状態ぐらいです。
うーむ、地味かなぁ。やっぱり大体がテンプレ通りになっているのが原因ですかね。
最近伸び悩んでいるので、何とかこういう風に原作とは違うイベントで挽回したいところです。
後はエレオノールとアニエスの逃避、いや冒険とかも書いてみたいですね。
きっとサイトは花村陽介ポジ。一方ルイズはりせちー混じりの里中千枝ポジ。
そして久しぶりに堕天召喚録カイジを呼んで吹く今日この頃。
327:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/30 18:25:59 YGhWfqvx
おつおつ
ここでケティにフラグが立つんですねわかりますよワハハ
328:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/30 18:27:57 ceBoFyj/
乙。
サイトとギーシュもいい関係になれそうで。
329:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/30 20:13:27 hLPbVLDj
代理の人も乙
330:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/31 20:08:43 LDnYoiTf
バグベアーがベアード様と混同されるのってアニメのデザインのせいだっけ
331:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/31 20:32:33 UOUyfPkN
混同つーより原作の少ない描写的に鈴木土下座衛門(版権のため変名)以外のなにものでもなくね?
332:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/31 20:35:56 vfJwC1xM
バックベアードは水木御大による創作妖怪。
バグベアはイギリスの妖精。
ごっちゃにしている人はとても多い。
333:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/31 22:09:57 Y7lH/iAq
1巻確認してみたんだが、サイトが「目玉のお化け」と評しているのをルイズが「バグベアー」と説明してるね。
>>332の言ってるバグベアはゴブリンの一種だから、まったくの別種だな。
>>331
漫画連載時には『ビホルダー』だったのが、版権に引っかかって版権元から苦情が来て、
担当の鈴木氏が土下座したところから、コミックス収録時に『鈴木土下座衛門』って名前に変えられたんだっけか。
334:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/31 22:56:08 B5RUTdaj
つまり、スカイライン(仮)ですね。
335:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 02:08:53 cYSHiyCw
レイナールが更新休止か・・・
336:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 02:10:13 cYSHiyCw
スレ間違えた・・・
337:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/06/01 20:35:49 flE1kQky
他のスレでシエスタがもし召喚されたら、とかあったけど、
結構原作キャラが呼び出されるifってないよね。烈風ぐらいしか。
もしもキュルケがルイズに、とかもしもアンリエッタがルイズに、とか。
個人的にはアンアンガンダールブ無双とか見てみたいけどw
一種の冒険譚になるし。
338:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 20:37:09 flE1kQky
ウボァ、名前がそのまま残ってたよぉぉ!
339:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 20:37:50 RyeGqPZI
もし学院の食事がすべて自給自足だったら
340:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 21:34:38 4zehBdVu
ギーシュがケティ呼んでモンモン無双が始まるやつがあったよね。
一方その頃、タバサがイザベラを呼ぶんだよ。
【ジョセフはサイトのパソコンだけを呼び出した】
341:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 22:11:54 flE1kQky
>>340
なにそれすごっく気になる。というか何処かで読んだ記憶があるんだけど、
どこだったかな…?
342:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 22:37:09 y0e5sSmL
もしサイトが異世界召喚ものでよくあるように、召喚される前に寝ているときの夢とかで
ハルケギニアのルイズの姿、たとえば幼いころ魔法を使えないことを馬鹿にされて、
泣いているいるところとか、必死に魔法の練習をしているところとかをたびたび見ていたら。
ルイズに対する態度とかだいぶ変わると思う。
343:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 22:43:40 9V1EHVbs
その状態で何故かジョゼフに召喚されるw
344:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 22:45:21 jTfr9YLu
そしてルイズはジュリオを召喚してコマされる
345:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/01 23:30:12 ycWlu0nB
もしも召喚がドラフト制だったら?
346:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 00:22:16 +Cos43M4
TDN…
347:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 20:19:45 ujMdiDhD
もしギーシュが「それは確かに心の友と書いて心友のモンモラシーからもらった香水だが?」
と答えたら?
348:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 20:21:54 /PGH66pk
華麗にお友達宣言されたモンモンが窓から飛び降りる
349:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 20:30:53 QBQ/PFLD
ギーシュが悪びれずに女を食い捨てる本物のタラシ野郎だったら
350:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 20:35:16 QYkA8XsP
nice boat
351:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 20:56:24 uBpVUGqv
>>345
8球団競合するきゅいきゅい。
ハズレ1位のフレイム。
ヴェルダンデを一本釣りするギーシュ。
352:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 21:21:10 3qnh1Yne
もし召喚自体無くして使い魔は生徒がハルケ中を巡って捕まえて来るルールだったら?
魔法の実地試験を兼ねて
353:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/02 21:31:28 FRJTVZud
>>352
あれから三十年。
使い魔はまだ……
もう、疲れました。ごめんなさい。
354:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/03 00:41:08 ADnXwdoD
>>352
使い魔ボールを使い、魔法で弱らせた生物をゲット、使い魔にする。
ルイズ「使い魔マスターに私はなる!!」
真っ先にこう浮かんだがこのセリフだとさらに別のものだ
355:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 15:28:26 RAaWmy0c
もし虚無の使い魔は全員ガンダだったら
それはそれで熱い展開がみられそうだ
356:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 15:41:10 07ap7N0C
もし虚無の使い魔は全員ガノダだったら?
357:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 16:12:28 bev9bQSk
虚無の使い魔は全員ガンダムだったらに見えた
358:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 16:43:11 m9JgWxP3
もし勝者が敗者の習得してる魔法をどれか一つ奪えたら
359:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 21:00:02 umSmSNqS
>>356
4人とも派閥が違って血で血を洗う争いに…。
360:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 21:50:48 fg09EToz
>>357
四人の虚無が戦って戦って戦い抜いて最後に残ったのが虚無ザ虚無になるんですねわかります
361:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 22:12:16 Pc8pyGFa
もし魔法の使用に振り付けが必要だったら
362:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/05 22:12:45 qUeOFM9A
カリンちゃんが悪魔的強さになっちゃうな
363:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:04:56 5boPjhlr
どうもです。第十六話が完成しましたので、10分後ぐらいに投下したいと思います。
364:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/06 00:09:44 OANiyi7l
……うあ、寝ようと思ってたのに。寝られないじゃないか。
わくわく
365:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:15:14 5boPjhlr
「ぐすっ、ぐすっ……ギーシュ様……」
ケティ・ド・ラ・ロッタは一人、森の中で泣いていた。
制止する衛士を振り払って、先輩であり愛しの人、ギーシュとともに訪れた思い出の場所に訪れていた。
木の葉の間から差し込む光が美しく、目の前に広がる小さな池はその光でピカピカと光っていた。
そう、たった一度だけだった。
しかし、ケティにとって、そのときのギーシュは確かに『薔薇』だったのだ。
入学したばかりで不安だらけだった自分に優しく声を掛けてくれた。
そして、お世辞にも決して容姿端麗とは言えない自分の事を美しいといってくれた。
それだけで、ケティの幼く純朴な心を掴み取るのは簡単だったのだ。
同級生から、グラモン家は確かに名家だが、女癖が悪いからやめたほうが言いと言われた時も憤慨したものだ。
ギーシュ様はそのような人ではないと。
しかし蓋を開けてみれば、自分など彼にとって遊びでしかなかったのかもしれない。だからこそ、彼の事を最低と言って平手打ちにした。
だが、結局は勘違いした自分が悪い。会って一日で、自分を愛してくれていると勘違いをした自分が、全て悪いのだ。
そう自虐的に考えていると、涙は止まらなくなった。
暫く泣き続けていると、ここまで走り続けてきたことや精神的なショックから、彼女は眠りについてしまった。
すぅすぅと寝息を立てて、風に揺られて、まるで海の波のように木の葉が揺れる音に身を委ねて。
彼女が目を覚まして気が付くと、辺りは暗くなっていた。ケティは慌てたように辺りを見回す。
湖面を照らしていた光も、もはや殆どなかった。だが幸いの事に月が彼女を仄かに照らしている。
更に、寝ていたお陰で自然と一体になっていたためか、彼女の周りには危険な生物は来なかった。
そもそも、この場所には、昼には危険な生物は居ない、だから安心して、ケティ。とギーシュが教えてくれていた。
しかし、これからは夜。状況は変わるだろう。
「ああ、どうしよう。授業サボっちゃった……。そ、それよりも早く戻らないと」
夜の森は昼のそれとは違ってとても妖しい。
彼女を照らし見守っている月も、何だか恐ろしく感じられた。
そんな雰囲気に恐怖を感じながらも、ケティは発火の魔法を使って、杖を松明代わりにする。
故郷の父が、野獣や亡霊は炎の光を嫌うから、もしもの事があればそれで振り払いなさいと教えてくれた。
そう、ただ光を照らすだけの『ライト』よりも効果的だった。
ケティは森の中を、来た道をたどって学院へ戻ろうと恐る恐る歩く。
怖くない、怖くないんだから。
そう自分に言い聞かせていたが、野鳥の声が、風が木の葉を揺らす音が、彼女の中の恐怖心を煽る。
そして、震える足を滑らせてしまった。
「きゃあああ!」
悲鳴を上げながら坂を滑り落ちるケティは杖を思わず放してしまう。そして、尻餅をつくと、彼女は小さな尻を摩りながら立ち上がった。
「あいたた……。えっ……つ、杖は? つ、杖!」
取り乱したように辺りを探る。強力な魔法を使えるメイジも、契約した杖がなければただの無力な人間だ。
ケティは汚れることも気にせず、茂みの中を探すが、暗闇では全く見つからない。
そんな最中、何処からか、自分以外の茂みを揺らす音が聞こえてきた。それもかなり大きめな音だ。
ガサガサ、ガサガサガサ!
それはどんどん彼女の元へと近づいてきている。背後からだ。茂みを揺らすだけではない。何か、地響きのような声も聞こえてくる。
ケティは悲鳴を上げそうになる口を押さえつけ、恐怖で涙が流れるのも気にせず、近くの茂みの中へと逃げ込もうとする。
だが、足は正直なのか、がたがたと震えて一歩も動けなかった。
ガサガサガサ、ガサガサガサ! ガサ……。
どんどん音が近づき、大きくなってきたが、突然止んだ。
ケティは訝るように、恐る恐る背後に振り向く。ゆっくりと。何も刺激しないように。
すると、目の前が黒い何かが広がっていた。それは上のほうにまで続いていて、そして。
「ひ、ひあ……、いやああああああ!!」
金色に光る鋭い眼が、ケティを睨みつけていた。
366:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:17:42 5boPjhlr
第16話
「ふ、ああ……。ったく、遅いなぁ、サイト。何してるのよ?」
「そうね……」
さて、一方トリステイン魔法学院の一部屋では、部屋主のルイズと従者シエスタが暇そうにサイトの帰りを待っていた。
シエスタは洗濯物を畳みながら、ルイズはベッドの上で足をパタパタしながら欠伸して寝転がっていた。
「まさか、またミスタ・グラモンに喧嘩を売られてしまったとか?」
「ないない。今頃あいつ、モンモランシーやケティって子に散々打ちのめされて、部屋のベッドに顔を埋めながら泣いているはずよ」
「ははは……」
シエスタは心配そうに呟いたが、即答でルイズに否定されて、思わず苦笑してしまった。
と、そんな時、ドアから激しいドンドン、ドンドン! とノック音が聞こえてきた。
夜中に誰だろう。ルイズは不意に立ち上がろうとしたが、シエスタが制止して、ゆっくりと立ち上がって、扉の鍵をはずした。
「ルイズ!!」
「きゃっ!」
すると、乱暴に扉が開かれ、シエスタが驚き、思わずその場で転んでしまった。
だが来訪者はそんな彼女を気にすることなく、焦燥しきった表情でドカドカと慌てて入り込んできた。
「も、モンモランシー、どうしたのそんなに血相を変えて」
「どうしたもこうしてもないの! ギーシュが何処か行っちゃったのよ!」
「お、落ち着いてよ。シエスタ大丈夫?」
「うん何とか……」
「そ、そうね……ごめんなさい」
来訪者は巻髪の少女、モンモランシーだった。ルイズは彼女を宥めながらベッドから起き上がった。
ギーシュが、ということだったが一体全体どういうことなのだろう? 気になったルイズは訊ねた。
「で、ギーシュが?」
「そうなのよ……。あいつ、私のところに泣きついてきて、『モンモランシー、許してくれ』とか『僕が悪かったとか』。
部屋の前で叫んでいたんだけれど、私無視していて、そしたら声がしなくなって……。
私もちょっと悪いかなって、思ってギーシュの部屋に謝りに行ったんだけど、あいつ、部屋にもどこにもいないのよ!
どうしよう、あいつ思いつめて自殺とか……」
説明していくうちに、モンモランシーの表情がドンドンと暗くなっていく。
そんな彼女を落ち着かせるため、明るい表情で言った。
ルイズはギーシュがそんなことで自殺するような男ではないと、母カリーヌから聞いていたギーシュの父親像から想像していたのだ。
「いやいやいや、あいつに限ってそんな事はないでしょ」
「でも……」
「……うん、わかった。私も探すから。ね?」
「うん、ありがとう……」
ルイズの言葉に安心したモンモランシーは感謝の言葉を呟く。普段の癪のある性格とは思えない表情だ。
そんな様子から、彼女にとってどれだけ不安なことか、ルイズにはひしひしと伝わっていた。
「ちょっと、五月蝿いんだけどぉ」
367:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:19:45 5boPjhlr
とそんなところに隣部屋からキュルケが顔を出してきた。どうやら男と会う約束をしていたのか、化粧道具を持ったままだった。
そんな彼女を見つけて、ルイズはニパッと笑って告げた。
「ああ、キュルケ。ちょうどいいから貴方も手伝ってね」
「へっ?」
「夜の散歩!」
「はあ?」
なんのこっちゃと状況が飲み込めないキュルケを差し置いて、ルイズはマントを羽織って、念のためにレイピアを持った。
ルイズはまだ知らない。彼らがあんなことになっていることなんて、今の彼女には想像もついていなかったのだ。
「本当にこっちなんだろうな」
「うるさいな、君も。文句があるなら帰りたまえ」
一方森を突き進む才人一行。
暗闇の中、ギーシュが使っている魔法『ライト』と才人の持つカンテラの明かりを頼りに歩いているため、今一方向感覚がつかめていなかった。
こういう森の中、それも夜にくることなど、都会っ子の才人にとっては始めての経験だったため、不安と苛立ちが募っていた。
一方のギーシュもそんな才人に対する苛立ちやケティが本当にここにいるか、方向があっているかという不安があった。
そしてお互いその感情を我慢することが出来ず、歩きながらそれをぶつけ合い、終に立ち止まってにらみ合ってしまう。
「君なぁ、僕が寛大だから許してやっているが、そんな態度を取れば普通手打ちにされるんだぞ。
なんなら今からそうしてあげようか?」
「お、おおやってみろよ。昼の続きをやってもいいぞ!」
「なんだと……?」
険悪なムードが漂い、お互い武器と杖を構えだす。
才人は何故だか分からないが、湧き上がった力を過信し、目の前のメイジを恐れて居なかったし、
そんなことを露知らないギーシュも、平民如き、自分の魔法で叩き伏せられると考えていたから、何時決闘が始まってもおかしくなかった。
しかし、先にそんな空気に折れたのはギーシュだった。彼はまた、トリステイン王国元帥の息子という誇りと余裕があるため、
平民などに簡単に怒るわけにはいかないのだと、昼の事をすっかり忘れながら自分に言い聞かせていた。
「ふっ、やれやれ。今はケティを探しているんだ。そんなことで無駄な体力を使うわけには行かないよ」
「……そうだな。悪かったよ」
「君は素直なのかひねくれているのか、どっちなんだい?」
「さあな……ん?」
ギーシュの余裕そうな言葉にサイトは悪態をつく。が、その瞬間ギーシュの背後の茂みから、何かが動く音が聞こえてきた。
「ん……?」
ギーシュとサイトは訝しげにその音がなる方向を見つめる。
茂みを掻き分けるような音が、一度、二度……そして三度鳴った時、茂みから複数の黒い小さな影が現れた。
「うわっ!」
サイトは驚いて後ろに転んだが、ギーシュは杖をすぐに振って花びらを一枚落とすと、素早く錬金を唱えた。
すると花びらはなんと、人間大の像へと変わり、そして独りでに動いて影を殴りつけた。
小さな影は大きく吹き飛ばされ、残った一匹は奇襲が失敗したことに浮き足立ち、一目散に逃げていった。
「申し遅れたが、僕の二つ名は『青銅』。この忠実なるゴーレム、ワルキューレが僕の手足となって戦ってくれるのさ」
像の姿は鎧を着た女性のような形をしていた。しかし、やはり剣と同じで何処か悪趣味であるのは否めない。
「な、なんじゃそりゃ……」
「知らないのかい? ふむ、まあいい。しかし、あんなゴブリン程度に驚いているようじゃ、この先不安だな……。やっぱり君は帰りたまえ」
「う、うっせえ! 今のはちょっとビックリしただけだ。これからは大丈夫だよ!」
368:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:21:45 5boPjhlr
「やれやれ」
小型の妖精ゴブリン相手に後れを取ってしまう才人に対し、純粋に心配していたギーシュは才人の強がりな
言葉に呆れてものが言えなくなってしまった。
彼はそんな才人を置いて、どんどん奥へと進んでいく。才人も慌てて立ち上がり、落とした剣を拾ってギーシュの後を追った。
「しかし、君はどうしてそこまで意固地に僕についてこようとするんだ。ゴブリンに驚くくせに」
「……お前には関係ないだろ」
「もしかして、ルイズのせいなのか?」
ルイズ。その言葉に才人の身体が一瞬強張った。いや、明らかに動揺していた。
「あぐっ……ち、ちげぇよ!」
「やれやれ、図星か。ふふん、君も隅に置けないねぇ。しかし、平民が貴族に恋心を抱くなんて、無謀にも甚だしいよ?」
「う、うるせぇな! そういうことじゃねぇ! ただ……」
「ただ?」
「……女の子に頼りにされないのが、ちょっと悔しいだけだ」
「……」
「な、なんだよ」
「いや、意外と可愛いところあるじゃないか。ただの生意気な平民かと思ったら」
「お、男に可愛いってなぁ!!」
―――いやあああああ!!
「なっ」
「この声は、ケティ! ケティィ!」
「お、おい!」
また再びくだらない言い争いが始まりそうなったそのときだった。
森の奥のほうから、少女の悲鳴が聞こえてきた。ケティだった。
ギーシュはその声が聞こえてきたほうへと急いで走っていく。才人も慌てて、彼を見失わないように後ろを追いかける。
だが、その足は非常に軽く、あっという間にギーシュを追い抜いてしまった。
「お、おい! 君!」
「待ってられっか!」
才人はギーシュを置いて先行した。息を上げながら、必死に走る。茂みに入る。
まるで短距離走のオリンピック選手か、いや風になったかのような気分だった。
走ることが、こんなにも気持ちの良いことだったなんて。
だが、そんな清清しい気分も、すぐに恐怖のものへと変わった。
走り続け、茂みを抜けた瞬間だった。
「う、うわあ!」
そこには二本足で立ち、何かをくちばしで持ち上げている、ダチョウに似ているが、はるかに巨大な鳥と、
そして服がぼろぼろになったケティの姿だった。表情はぐったりしているが、まだ息はありそうだ。
「た、助けてくださいぃぃ!」
「お、おう! ま、待ってろよ!」
鳥は才人を見つけると、その鋭い眼光でにらみつけた。
―獲物は渡さない。これ以上干渉するな
369:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:23:20 5boPjhlr
そう警告している様に、目で語っている。
だが、才人は勇気を振り絞り、震える足を抑えて剣を構え、巨大鳥に戦いを挑んだ。
戦う意思ありと感じた巨大鳥は、くちばしに銜えたケティを振り回し、その勢いで才人のほうへと投げつけた。
うわっ、と才人は悲鳴を上げながら、飛んできたケティを抱きかかえた。
だがその隙に巨大鳥は大きな足で才人をケティ後と蹴り飛ばそうとした。才人は必死に地面を蹴って、
ケティを抱きかかえながら飛んだ。そして地面を転がり、巨大鳥と距離を取る。
どうやらケティは気絶しているようだが、まだ生きているようだ。
「おい! あれだけに先にって の、のわぁ! ク、クリル鳥!」
「クリル鳥ってなんだよ?」
「クリルとは走る、という意味だ。空こそ飛べないが、その足は巨体に似合わず恐ろしく早い。
あいつの長く太い足に蹴られたらひとたまりもないぞ!」
「きょ、巨大版チョコボか……」
「何を言ってるんだ、君は! あんなのに狙われたら、すぐに食べられてしまうぞ! さっさとケティを連れて逃げるんだ!」
ギーシュは震える手を抑えて、薔薇の杖を振るった。そして先ほど出した素手のワルキューレ加えて、更に3体のワルキューレを錬金した。
先ほどの素手の像ではなく、今度は槍、剣、斧を持っていた。
「こここここは僕がくく食い止めよう! 行け、ワルキューレ!」
震える口調だが、毅然とした振る舞いで何とかワルキューレに命令を送る。ワルキューレたちは一斉にクリル鳥に突撃していく。
だがクリル鳥はそんなワルキューレをもろともせず、その立派な足でなぎ払って吹き飛ばしてしまった。
吹き飛ばされたワルキューレは木々にぶつかり、そして砕け散ってしまった。
「なっ……。くっ……ワルキューレ!」
さらに3体のワルキューレを呼び出す。だがそれをクリル鳥は難なく蹂躙し、吹き飛ばした。
生き残った一体も足に掴まれ、ギリギリと踏み潰されそうになる。
その時、吹き飛ばされたワルキューレを踏み台にして飛び込む一つの影がギーシュの目に写った。
まるでそれは、閃光のように突然で、そして速かった。
「おんどらあ!」
「!」
閃光のように飛び込んだ才人は剣を振り上げ、クリル鳥の頭めがけて斬りかかった。
だがクリル鳥が頭を上げたために狙い通りとは行かず、嘴に刃が当たった。
そして、ポキリ、と刀身が折れてしまう。
「んな!?」
才人はそのまま地面に着地し、折れた剣を呆然と見つめていた。
―ピィィィィィィィ!!
だが折れた剣は嘴に刺さっていた。クリル鳥はその痛みに甲高い悲鳴を上げる。
その場で地団駄を踏み、刺さった剣を引っぺがそうと必死に頭を振っていた。
「うわ、とと!」
足元に居た才人は踏み潰されそうになり、急いで転がるようにその場から離れた。
折れた剣を捨て、ケティを看病しているギーシュの元に転がった。
「剣をくれ、剣を!」
手を差し出して、新たな武器をねだる才人。剣がなければ、あの不思議な力は使えない。だがギーシュは首を横に何度も振った。
「む、無茶を言わないでくれ! もう精神力が……」
「精神力ってなんだよ!」
「魔法に使うために必要な力だよ! 君こそ、あの力でクリル鳥を倒せば良いだろ!」
「出ないんだよ、剣がないと!」
370:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:24:51 5boPjhlr
こんな状況の中、言い争いをしている二人に、ゆらりとクリル鳥は近づいていく。
その影に気が付き、二人は言い争いをやめて、同時頭上を見上げた。
そこには、目を真っ赤に染め、怒りに満ちたクリル鳥が荒い息遣いに3人を睨みつけていた。
「あ、あわわ……」
才人とギーシュは後ずさりをする。もはや二人に対抗できる手段はない。
かといって、この怒り狂った目の前の怪鳥がこのまま見逃してくれるわけもないだろう。
こんなところで死にたくない。命を惜しむな、名を惜しめ。そう教えられてきたギーシュだったが、
こんな怪鳥に殺されるのはただの無駄死に以外の何者でもない。
才人は後悔した。あの時、ギーシュについていかなければ。いや、少しでもルイズに一言声を掛けていれば……。
ルイズの忠告は正しかった。少しばかり剣を触れるようになったからって、調子に乗って、その結果がこれだ。
折角異世界へこれたのに。折角出会えたのに。
逃げなければ、だが足が震えて動けない。クリル鳥は地面を蹴って、狙いを二人に定めている。このまま突進して押しつぶすつもりだ。
―クァアア!
低い声で雄たけびを上げて、クリル鳥は地響きを鳴らした。
巨大な身体がギーシュとサイト目掛けて突進してくる。その恐怖に才人とギーシュは最後の矜持か、
悲鳴を上げないよう歯を食いしばりながら、眼を瞑り、その時を待った。
その時。その、という言葉は彼らとは別の物を指して、時は来た。
突然、目の前で爆発音が鳴り響き、二人は瞑ってた眼を見開いた。
すると、クリル鳥の巨体の側面に爆発が生じ、またその後からも火の弾が何個も襲い掛かっていた。それがぶつ
かるごとに、クリル鳥の身体が燃え上がる。だがクリル鳥はいまだ両足で踏ん張り、倒れようとはしなかった。
「たあああ!!」
続いて、小さな影もクリル鳥目掛けて飛び込んだ。桃色の髪をなびかせ、クリル鳥の背中に素早く飛び移り、
そして月に照らされ、小さな影、ルイズは光を放つレイピアを刺した。
クリル鳥は痛みに悲鳴を上げ、必死に背中のルイズを振り落とそうと暴れまわる。
「ルイズ!」
「この、大人しく、しなさい! きゃあ!」
ルイズはレイピアを必死に掴んで、振り落とされないように踏ん張るが、クリル鳥が身体を強く揺らした拍子にレイピアが抜けてしまった。
突然の事に身体が反応できず、受身を取れずに地面に叩き落されてしまった。レイピアもその拍子に放してしまう。
「ルイズ……!」
才人はルイズを見て、ドクンと高鳴りがしたのを感じた。なんだろう、この気持ちは。
ルイズが傷ついて、それを見て、許せないという気持ちが一杯になる。
ああ、そうだ。ルイズをこれ以上傷つけはさせない。
燃やされ、傷つき、正気を失ったクリル鳥は闇雲に辺りの木や岩に身体をぶちかます。
そして、未だに身体を起こせないルイズに向かって突進した。
「「「ルイズ!」」」
駆けつけたキュルケの、シエスタの、ギーシュの声が重なる。
才人は走った。叫ぶよりも先にまず身体が動いた。そしてその後に雄たけびを上げ、ルイズが落としたレイピアを拾う。
ギーシュの青銅の剣を握ったときよりもずっと身体が軽い。
371:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:25:33 5boPjhlr
レイピアの使い方も分かる。真直ぐ突けばいい。それだけだ。
くるりと手元でレイピアを回して握りなおし、そして両手でしっかり握って、そして地面を強く踏み込んだ。
雄たけびと共に、ルイズに飛び掛りかけたクリル鳥の首を突いた。ずぶりと、レイピアの刃は首をそのまま貫通した。
首を貫かれたクリル鳥はそのまま横に倒れ、口から血を吐きながらゆっくりと動きを止めた。
「はぁ……はぁ……」
着地したサイトはふらっと後ずさりして、そのままへたり込むように地面に座った。そんな彼のもとにギーシュが駆け寄る。
キュルケやシエスタも追いつき、急いでルイズに駆け寄った。
「やった、やったぞ!」
「お、おお……。俺、やったのか?」
「やったんだよ! ははは! 君と言うやつは!」
ギーシュは才人が平民であることを忘れて、まるで友人をたたえるように肩を叩いた。
無我夢中だった才人はいまだ自分がやったことを信じられず、ただ呆然と空を眺めているだけだった。
一方ルイズのほうもシエスタに抱きかかえられ、優しく起こされていた。
「あ、いててて……」
「ルイズ、大丈夫!? 怪我は!? ああもう、あんな無茶して……」
「シエスタ……ごめん」
「はあ~……疲れた。もう、今度埋め合わせしてよね」
「わかったわ、キュルケ。それよりも!」
ルイズは背中を摩りながら、横で心配そうに見つめているシエスタや呆れているキュルケに謝罪する。
そして思い出したように立ち上がって、シエスタを横目に、ずんずんと強い足取りで才人へと歩み寄った。
才人もそんな彼女に気が付いて、最初は申し訳ない気持ちになったが、次第にクリル鳥からルイズを助けたことに対する喜びに気持ちが一杯になった。
「る、ルイズ! 見たかよ、俺、あの化け物鳥倒しちまった! はははっ! どうだよ、俺もやれば……」
「この大馬鹿!!」
だがそんな調子づいた彼に対して、ルイズは賞賛の言葉ではなく、代わりに脳天に拳骨を食らわした。
ゴツン、と鈍い音が鳴り響き、才人はぎゃん、とまるで犬が悲鳴を上げたような声を出して、頭を抱えながら蹲った。
一方のルイズも、才人の頭が予想外に石頭で、殴った拳を押さえていた。
「な、なにすんだよ!」
才人は立ち上がって抗議するように怒鳴った。だが、そんなのはお構い無しに、涙目になりながらルイズは才人に怒鳴りつけた。
「馬鹿、本当馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿! なかなか帰ってこないと思って、道に迷ったのかなぁって思ってたら、
衛士さん達に聞いたらギーシュと一緒に外に出て!? 危険な夜の森に行って、そんでクリル鳥に襲われてるの!
馬っ鹿じゃないの! 死んだらどうするのよ! 馬鹿! 出かけるときは一言私に言ってって行ったじゃないの!! この馬鹿馬鹿! 馬鹿サイト!」
「ば、馬鹿馬鹿言いすぎだろ! それに俺はお前にそこまで心配……」
「すっごい心配したんだから! 心配したのよぉ……うええ……」
ルイズは我慢できず、才人の胸をぽかぽかと叩きながら、ぼろぼろと涙を流し始めた。
彼女もよもやこんな状況になるとは思っていなかったのだろう。
才人が無事だったことへの安心と彼の身勝手な行動に怒りとで訳が分からなくなってしまったのだ。
「うえ、ちょ、おま、な、泣くことないだろ!」
「あ~あ、泣かしちゃった。あんたねぇ、男が女を泣かすなんて風上にも置けないわよ?」
「さ、最低ですサイトさん……女の子泣かすなんて……」
「げ、げぇぇ!? 俺の味方無しですかぁ!?」
「うあああん!!」
「あ、う、うえ……す、すんませんでした……」
372:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:27:05 5boPjhlr
女の涙とは最大の武器であるとはよく言ったもので。
才人は二人の少女からも非難されて痛まれなくなり、がっくりと項垂れてしまった。だがルイズは泣き止むことがない。
才人はどうしていいのかわからずおろおろしてしまう。元の世界では異性の友達になんて恵まれたことのない彼だ。
それゆえに変な気遣いとかもしなくて済むが、逆にこういうときにどうすればいいのかもわからないのだ。
「ほら抱きしめてあげなさいよ」
そんな彼を見かねたのか、キュルケは助言を与えた。才人は一瞬ドキっと身体を強張らせ、ルイズを見つめた。
そして少し躊躇いながらも、優しくルイズを抱きしめた。
「ひっく……ひっく……」
「ああ~……うん、よしよし。悪かったよ……」
心の中では、うおお良い匂い、とスケベなことを考えて、自分に湧き上がる余計なものを感じていたが、
それを必死に抑えこんで、ルイズの頭をそっと撫でてやる。
そんな甘い空気を傍目で見ていたギーシュは、すっかり蚊帳の外に出されてしまったことに何となく疎外感を感じつつも、
気絶したままのケティを抱えながら、ふっ、と気障ったらしく笑った。
「ギィィシュゥゥ!」
だが、その背後で、やっとの事で追いついたモンモランシーが息を荒げて、毛を逆立ててギーシュを睨みつけていた。
彼女もまた涙目だった。そんな彼女に気が付き、ギーシュはあわわと全身から汗を流して後ずさりした。
「ひっ! ももももも」
「誰がもももももよぉ! この、馬鹿ギーシュ!!」
「ギャイン!」
だがそんな彼も、モンモランシーに股間を蹴り上げられ、才人以上の悲鳴を上げてその場に倒れたのだった。
「全く、あの時は私が来なかったらどうするつもりだったのよ」
「すんましぇん」
さて、翌日。ルイズはサイトに昼休み中ずっと説教をしていた。
あの事件の後、無事学院に戻った彼女たちだったが、夜の無断外出が教師陣にばれてしまい、
今朝に学院長であるオールド・オスマンの元へと呼び出されしまったのだ。
ひとまず彼女たちは、怪我人も居ることだし、全員無事だったということで、ロングビルの弁護もあってその罪は不問とされたが、
今後勝手な外出は控えるよう、もし破るようであれば親に報告させてもらうと厳重な注意を受けて解放された。
「本当にもう、勝手に外出ちゃだめなんだからね!」
「わかったよ、だからこの話もう無しにしようぜ」
「ダメ! ただでさえ成績不振で教師から目を付けられているのに……。
今日もオスマンのおじいさんが穏便に済ませてくれたからよかったわよ、本当」
だがそれだけで、ルイズの気持ちが収まるわけもなく。こうしてサイトを正座させて、彼是30分は説教をしていたのだった。
ちなみにルイズもルイズで、クリル鳥へ飛び込んだことをシエスタに説教を喰らっているのだから、なんとまあ人の事を言えないのだが、それはさておき。
「……そりゃお前が勉強しないからだろうに」
「なんか言った?」
「いいえなんでもございません!」
「ルイズ!」
と、そんなところへモンモランシーとギーシュが現れた。ルイズが振り向いて彼女たちを見ると、ぎょっと目を見開いた。
373:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 00:28:05 5boPjhlr
「……首輪?」
ギーシュの首には、まるでペットにつけるような首輪が取り付けられて、そしてそこから伸びている紐をモンモランシーが握っていた。
まるで犬と飼い主みたいだ。
「もう不倫しないように縛ってみたのよ。ねぇ、ギーシュ?」
「ははは、勿論さ、モンモランシー。もう僕の大事な部分を潰されたくはないからね!」
「うむむ、私もやろうかしら……」
「それはやめろよな!」
「相変わらず仲が良いわね、あんたたち。……昨日はありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。困った時はお互い様よ」
ルイズは微笑みながら答えた。その素直な笑顔に少しモンモランシーは恥ずかしそうにしていた。
「いやぁ。サイト君、君もなかなかやるじゃないか。見直したよ」
「あん? 男にほめられても嬉しくねぇ」
「き、君はだね……!」
ギーシュも何時もの気障な振る舞いでサイトをほめたが、当の本人の遠慮ない言葉に、思わず拳を握り締めてしまった。
「でね、あとそこの平民にお礼を言いたいってケティ言ってたから、連れてきたのよ」
「俺に?」
「ほら」
と、モンモランシーの背後から、もじもじと恥ずかしそうに顔を赤らめてケティが、そっと前に出た。
サイトも、正座してしびれた足に少し苦悶な表情を浮かべつつ、立ち上がって頭を掻いた。
「あ、あの……ミスタ・グラモンと共に私を助けてくださってありがとうございます、ミスタ……」
「え、あ……いや、あっはっは! た、大した事じゃないって!」
今まで見たことがないほどしおらしくサイトにお礼を言うケティに、彼は思わず鼻の下を伸ばしていた。
そんな先ほどのギーシュの態度とは180度違う彼をルイズはムッと少しだけ顔をしかめた。
また調子に乗ってる。こりゃあもっと説教してやらねばいかんと、考えていた。
だがそんな彼女を尻目に、ケティはサイトに近づき、一つのバスケットを手渡した。
「これ、焼いてみたんです。クッキー。よければ食べてください」
「うお、うおお! い、いいんすか!?」
「私、ミスタ・グラモンに振られてしまったのはショックですけれど、あの時、一瞬だけでしたが、
私を抱きかかえてくれたミスタはかっこよかったです」
「うんうん!」
「私その、ミスタのような……」
「お、俺のような?」
「ミスタのような……」
「う、うん」
いかんいかん、これは調子に乗りすぎる。ルイズはサイトに気づかれないように背後に回り、彼の背中をつねるために手を指し延ばした。
「お兄様がいればいいな、って思いました!」
「へっ!?」
と、そこでルイズの手が止まり、思わず吹きそうになったのを必死に我慢した。
サイトも期待していた言葉と違っていたのか、喜び半分悲しさ半分の複雑な表情で呆然としていた。
「ミスタはとても頼りになりますし、勇敢な兄がいればとても嬉しいです! これからはお兄様と呼んでいいですか?」
「ああ~……はは、お兄様ね、お兄様……ははは、いいよ」
「嬉しい! 今度またクッキーを作りますから、よかったら味見してくださいね、お兄様! それでは!」
374:虚無と銃士の人 ◆2DS2gPknuU
10/06/06 01:00:25 5boPjhlr
まさかの最後でサルさん・・・・・・!圧倒的っ・・・・・・・圧倒的敗北っ・・・・・!
呆然とするサイトの気持ちなど露知らず、ケティはその小動物的な顔で満面の笑みを見せて、その場から走り去っていった。
今の出来事に、やはり呆然としていたギーシュとモンモランシーだったが、我慢できずに笑い出し、
二人はサイトの肩を叩いてその場から立ち去っていった。
残されたのは、ケティから貰ったクッキーを持って立ち尽くすサイトと、背中で手を組んで、悪戯っぽく笑っているルイズだった。
彼女はサイトの横へと立つと、肘でこつきながら、にやりと笑って言った。
「よかったね、お兄ちゃんだって! 期待してた通りになってよかったね!」
「うがああ! い、言うなぁ!」
「お兄ちゃんだって、頼られてるぅ!」
「う、うっせぇ!」
「お兄ちゃんだからねぇ、手を出しちゃだめだよね! 恋心とかもってのほかだよね!」
「う、うおおお!! お、俺の男心を弄くるんじゃねぇええ!!」
学院中に淡い気持ちを打ちのめされた、哀れな男の叫び声が鳴り響いたのだった。
-------------------------------------------------------------
ケティ「え、恋愛感情ですかぁ? まさかぁ。平民と貴族ですよ? 小説じゃあるまいし……。
あ! 本当の恋人が出来たら、お兄様に報告しようと思っていますよ!」
ケティ、恐ロシア。残念、ケティ×サイトならず。
ということでフラグクラッシャー天然素材です。サイト君の淡い恋心、いやスケベ心はこうして打ちのめされたとさ。
クリル鳥はオリジナルモンスターということで、でも大体でかいチョコボだと思っていただければと思います。
結局決闘を共闘にしただけじゃね?
次回は久々にエレオノールとアニエスのコンビです。
他の作者さんみたいに、イラストをいただけるぐらいに有名になれたらなぁと、ふと思いましたが、
それには地道に続けていくしかないですよね。今後も頑張っていきたいと思います。
一度の投稿の長さですが、もっと短いほうが良いでしょうか?
あとヴェルダンデ出すの忘れてたウボァー
------------------------------------------------------------
375:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/06 02:00:31 tk40YYsb
乙
376:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/06 02:07:52 gOlHaqU2
乙
ケティ恐ろしい娘!!
377:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/06 19:03:29 /VoHtCTK
乙です!
ケティは天然のフラグクラッシャーやで~。というかクリル鳥強いな。
ルイズの剣技は、割と常識的な範囲に収まってるのね。もっと小型アニエス化してるのかと思ってた。
378:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 08:23:02 Wn8hPYyh
世界から魔法が消え去るんだけど今まで魔法に使っていたエネルギーが体に満ちることにより超人と化すメイジ達
379:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 08:55:49 jicf8fTR
天然道士か
380:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 17:40:30 nU3+MRZ+
メイジの血が混じったけど杖と契約しないまま成長したら天然メイジになって超パワーを得るIF
381:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 20:59:17 zhu53S6D
ルイズが炭鉱勤めのガテン系だったら
爆発魔法は重宝されそうな希ガス
382:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 21:17:46 LP013nNI
>>381
あっちの地域だと露天掘りじゃなかったっけ?
どのみち爆発魔法が錬金やらジャイアントモールより役に立つとも思えんけど
383:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/07 22:03:36 BDWvYqmx
杖と契約せずに素手で殴った箇所が爆発を起こす格闘型ルイズ
384:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 11:17:34 e4QygGyO
触った物を爆発させる能力を制御して、爆発までの時間調整や条件付けができるようになり、
鼻くそを飛ばして爆発させたり、人間を爆弾にして味方への巻き添えを狙ったり、キュルケの髪の状態を見てリンスを勧めるルイズ
385:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 16:02:17 bJxPbyk5
ハルケギニアが、魔法至上主義の世界じゃなくて、通常のファンタジーっぽく「剣と魔法」の世界だったら
「魔法を使えるからメイジなんじゃない、魔法『も』使えるからメイジなんだ」的に
ギーシュですらワルキューレを倒されても、青銅の剣を錬金して立ち向かってくるような世界。
ルイズの劣等感も緩和きるし
386:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 19:38:04 UHuhYn+F
>>384
どこの吉良吉影だよw
387:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 19:46:59 yzBRrq8p
ブリミルの記憶を持ち、ハルケで自分探しの旅に出るサイト
388:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 21:05:12 +tMJCm/u
もしも作者が福井晴敏だったら
自分がなぜこの世界に来たのか そして何をすべきなのかって事で悩んだり
自分がいた現代の政治がこの世界に役立つかもしれないって考えるサイトや
日食が起きる原因や兵器があまり進歩してない世界の戦場って物を
リアルに描かれそうだ そして「戦国自衛隊1549」と「亡国のイージス」
「ローレライ」と設定がリンクしてる所があるとか 零戦だけではなく
旧海軍の巡洋艦か伊号型潜水艦も出るだろうな 大量破壊兵器とか積んでさ
389:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 21:36:22 Lmk3mGN9
作戦中のダイスと中年ヘリパイでおk
390:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 23:28:50 DXf4s9vL
剣と魔法の世界って、1人で剣も魔法も使うんだな
どっちかだけだと思ってたよ
391:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/08 23:52:04 n3KKCeNU
剣と魔法の世界=一人でどっちも使うは微妙に間違いだろ
あれって、剣(戦士)ありーの魔法ありーのな感じで中には両方使うやつもいるだろうが
全員が全員両方使うわけじゃないだろ
まぁギーシュ、軍人の家系だし両方使ってもおかしくないかもしれないけど 土メイジだし
392:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/09 05:20:02 8yDUnEoC
『スレイヤーズ』世界だと リナを筆頭に両方使うキャラが結構いる。
『Fate』のサーヴァントだって、宝具なんてトンデモ武器を使う時点で 魔法(魔術?)みたいなものだし。
393:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/09 14:23:50 T+y8tRmy
サイトが強そうだという理由で決闘を申し込むギーシュ
394:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/09 14:45:32 Y0YiWtKN
メイジには使い魔のトレーナーの義務が課せられ、
定期的に学院で行われる使い魔コロシアムで勝ち抜き、
やがてはガリア主催の世界大会を制するルイズ&サイト
395:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/09 16:35:26 DsKzdu0K
何かしら「全裸で」なハルケギニア人。
396:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 15:35:54 ZJDbwYs2
剣と魔法の世界って要は剣と魔法がバランス取れてるって言いたいのかな?
ぶっちゃけゼロ魔だと強い人みんな魔法剣士な印象あるけど
>>395
錬金大系自重しろ
397:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 15:39:32 0Bk07B4F
ブレイドっていう杖に魔力を付加して武器にするって魔法があるから
それなりに体系化はしているんだろうな。
398:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 17:29:32 NmDXfHMY
>>384
今更だがミスター5と吉良吉影と鴉自重
あとリンス違うトリートメントや
リンスとトリートメントの違いはよく知らないけど
399:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 17:50:58 oKxVXMrP
>>398
リンス
昔のシャンプーは石鹸同様アルカリ性だったため残留するとキューティクルが開いて髪に悪い
そこで残留シャンプーを酸性溶液で中和してすすぐ(rinse)ために使う薬剤をリンスとよんだのが始まり
ちなみに日本語です
コンディショナー
リンスと違い髪の毛に「残留」してコーティングすることが目的の薬剤
シャンプー自体が中性洗剤の様になった近年から使われているみたい
Wiki先生ありがとう
400:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 20:22:29 g7JmL5ep
もし鏡をくぐったのが使い魔売りますと書かれた自販機だったら?
401:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/10 22:03:21 L5Zjp57o
もしもサイトがギーシュの香水を猫婆してたら
402:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/11 18:42:38 hLi9En2m
もしも才人が幸運だったら
棗ですか
403:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/11 21:48:05 ApmAm/nr
アンアンが巳那一族の出だと言うのはありそうだ
404:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 02:37:58 yve5eF9Q
もしもルイズがヤンデレだったら
405:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 05:27:25 FikrA6FJ
理想郷にあるね。ヤンデルイズ
406:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 14:33:22 T3wB3uZX
もしルイズが病んでたら
カトレアじゃなくてルイズが原因不明の病に犯されている
これじゃサイトさん召喚されなし、トリステインも終了っすね・・・
407:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 14:35:17 6zA5C9lQ
ルイズならすでに、慢性の無胸病に……
408:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 16:54:01 ssO+WLEN
大丈夫。ルイズはCカップあるから。
しかしウエストが細すぎて折れるんじゃなかろうかと思っている。
409:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 17:12:45 i3N37Tk4
もし魔法を出すのが杖で無く歌声や楽器だったら
ルイズは音痴の為出せない
410:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/12 21:22:46 LLC5APwR
故に、魔法は尻から出る
411:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 01:33:41 VoJCnJzv
>>400
文字が読めず、コッパゲールが色々試してるうちに使い魔が出てくることが判明
いざルイズが買おうとしたら売り切れ
412:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 09:07:43 zgiiVhVM
もしもルイズが最初からデレデレだったら
413:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 10:35:56 42Q0g2qV
ルイズ「宇宙の果てのどこかにいる、私の理想のパートナー(恋人的意味で)!強く、美しく、そして生命力に溢れた理想のパートナー(恋人的意味で)! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさいいい男!」
414:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 10:37:15 zsNPl/sd
ビッチじゃねーか
415:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 10:41:16 42Q0g2qV
キュルケに悪影響受けまくりですが無害です
416:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 10:53:33 nzBJ/xy3
もしギーシュがおんなのこのキモチを知るために女装してたら?
417:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 11:02:14 zsNPl/sd
時代はサイ×ギーですよねってなる
418:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 12:08:19 TVZQtG/b
もしエレ姉様がコッパゲばりの発明家だったら
ルイズの為に陰でメイジ養成ギブスとかイケメンホイホイとか夢が広がるかもしれない
419:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 15:20:14 /YT8wrAl
そういうことならむしろもう1人の妹の為にやりそう
魔法が使えないルイズもそっちに行くかな
420:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 22:04:21 B8X8GXVN
ビッチビッチ ロリロリ デレデレデレ♪
421:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/13 23:18:45 OBmXln0g
もしアンアンとルイズの中身が幼いときに入れ替わっていたら
カトレアとの入れ替わりは有ったけれどこれは有りそうでなかったはず。
422:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/14 11:03:33 Ya9/671d
お前、そのレス、過去スレで見たぞ
それはさておき、入れ替わった場合、ルイズはアンリエッタというより王族らしくあらんとして改革でもするんじゃないかしら。
改革というか、規律を正すみたいな感じで
423:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/14 13:11:34 aLAcBxpF
>>422
貴族の何たるか、王の何たるかを重んじて施政に当たろうとするんだが
そのへんをリッシュモンあたりにつけ込まれて
「陛下、税を上げましょう。不埒なアルビオンを膺懲するには軍を整えるべきです」
「陛下、不意打ちはなりませんぞ、王の沽券に関わります」
「陛下、あの指揮官の処刑を。軍律と王命を違えた愚か者には死あるのみです」
「陛下、諸侯軍を送らなかったものに今一度軍命を。兵が足りませぬ」
「陛下、ゲルマニアと断交なさいませ。此度の艦隊全滅はあの成り上がり共の策略に他なりませぬ」
そして
「陛下、譲位の御聖断を。トリステインの名を残す最後の手段です」
こんな未来が見える
424:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/14 15:57:06 T9gmS7rj
もし魔法ではなく麻雀の強さが優劣を決める世界になっていたら。
425:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/14 17:21:35 uf0hZkZD
タコスがたりないじぇ
426:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/14 20:53:13 Ya9/671d
>>423
うーん、ラ・ヴァリエール家が全力支援しそうだから、ある程度大丈夫だと思うけど、ドロドロしそうだ
427:名無しさん@お腹いっぱい。
10/06/15 00:27:31 HTlHiWRm
>>423
マザリーニはどこ行ったよ
あとちょっと過小評価しすぎ
428:虚無と銃士代理
10/06/15 16:12:25 kWVviJV3
気が付くと、アニエスは暗い空間にいた。ふわふわと浮いているような、
地面に足が付いているような、そんな不思議な空間だった。
『アニエス、剣は慣れたかしら?』
どこから声が聞こえてくる。
アニエスはゆっくりと振り向いた。そこには、幼き頃の自分と、そして自分を育てた剣士が立っていた。
相変わらず、その頃の自分は仏頂面で、そして剣士は得体の知れない雰囲気を出していた。
確かこれは自分が拾われて、3年ぐらいした時。6歳ぐらいだろう。ルイズもまだ生まれていない時だ。
思えば、この頃から剣をアニエスは振っていた。
よくもまあ、自分の事ながらこの女に付いていったものだ。普通の精神なら逃げ出すだろう。
それぐらい、この頃の自分は復讐心に満たされていたのかもしれない。
幼き頃の自分は剣を握りながら頷いていた。
『そう、好ましいわね』
何が好ましいだ。ニタニタと笑いやがって。
『いつか、私を殺してくれるかしら?』
それが剣士の口癖だった。今となっては、この言葉の意味は良く分からないが。
ただの狂人だった、と考えるのが一番だろう。
だが、それだけではないと大人になった今では何となく考えていた。
何故この女は、私に殺されたいと思ったのだろう。
『いつか、私が殺すんだ』
ビクッ、と身体が強張る。
これは幼きアニエスの声でも、女剣士の声ではない。
いや、女剣士が発した声ではあるが、紛れもなく『今のアニエス』の声だった。
アニエスの声にしても少し違和感を感じずいられない。
この違和感は一体。
記憶の中のアニエスもその声に驚いているようだった。
『ふふ、大人になった貴女の想像真似。似てる?』
『悪趣味だ』
『ありがとう、とても良い褒め言葉だわ』
ふぅ、とため息をつく。だが、アニエスには解せない。
何処かで聞いた声だった。絶対に忘れてはいけない声。誰だっただろう。
まどろみの中、最後に優しい女性の声が聞こえてきた。
――……なのよ、アニエス
アニエスを呼ぶ声だった。
429:虚無と銃士代理
10/06/15 16:14:17 kWVviJV3
第17話
「アニエス、起きなさい」
「……姉上」
ガタンガタン、と心地の良く揺れる音が聞こえてくる。
そしてそれと一緒にアニエスの耳には旅の共、姉エレオノールの声も聞こえてきた。
どうやらすっかり寝てしまっていたようだ。最近はずっと旅ばかりだったから、少し疲れたのかもしれない。
エレオノールはアニエスの顔を覘きながら心配そうに見つめていた。
「少しうなされていたけれど、大丈夫?」
「ええ、問題はありません。少し、昔の夢を見ていました」
「故郷の事?」
「いえ、拾われた後の事です。故郷の事は……正直もうよく思い出せませんから」
「そう。……その、ごめんなさい」
余計なことを聞いてしまったと、エレオノールはしゅんと俯きながら謝罪した。
アニエスは気にしていない素振りで顔を横に振った。それに安堵したエレオノールは言葉を続けた。
「……貴女の故郷、か。それにしても、昔のアカデミーも恐ろしいことをしてたのね。
実験部隊もそうだけど、人体実験にキマイラの生成……。こんなことをする金がどこから湧いてきたのかしら。
いくら小国のトリステインが他国に渡り合うためとはいえ、非人道的すぎるわ」
「繁栄には必ず闇がある、とはよく言ったものですね」
アニエスは淡々と言葉を紡ぎながらも、怒りを少しだけ声に交えていた。
アニエスがエレオノールの助手をする理由は、彼女の手伝いをするということだけではなく、
故郷を焼いた部隊の事についても調べる事もあった。
だが調べていくうちに、アカデミーの闇の部分と言うのも、多少ではあるが浮き彫りになってきていた。
他国の強大な力に対抗するべく行われた実験の数々。
グリフォン、ピポグリフ、マンティコアのキマイラの生成実験。
フェイス・チェンジを全身に適応できないかと、人間に風と水の精霊の力を移植する実験。
挙げればまだまだ出てくるが、それでも彼女たちが触れられたのはほんの一握りだろう。
これで金の流れなどを探れれば、本当の主犯を見つけることができただろうが、これ以上干渉するような事があれば二人の命も危ない。
極秘裏の調査は一旦中断され、今に至っていた。あとは何かの伝かコネでも使わなければ無理だろう。
「……すいません、アカデミーに誇りを持つ姉上の前でこのようなことを言うべきではありませんでした」
「いいのよ。私が憧れ誇りに持っているのは、今のアカデミーよ」
「……はい。私も、今はラ・ヴァリエール家が故郷ですから」
アニエスは微笑みながら言った。夢の中の幼い自分からは、考えられないほど柔らかい笑顔だったと思う。
その笑みを見て、エレオノールは思わず顔を背けた。アニエスは中性的な顔立ちだから、油断すると女性に思えなくなるのが怖い。
「それよりもほら、着いたみたいだわ」
エレオノールは誤魔化すように前を指差した。そこには懐かしい城壁が、目の前に広がっていた。
『やれやれ、しばらくぁ俺っちもお役御免かね』
「なんだデルフいたのか」
「デルフいたの?」
『ひでぇ!』
さて、このような漫才や会話をしつつ、気が付けばトリステインの首都トリスタニアに馬車は到着した。
エレオノールが駄賃を御者に払うと、二人と一本は門を通って、とりあえず当てもなく歩きまわった。
昼時ではあるが、不思議と今日は一通りが少なかった。
そんな中でも、貴族のエレオノールとアニエスが歩いてもなんら目立つこともなかった。
今の彼女たちはお忍びのためにマントも身に着けていなかったから、ただの平民と思われても無理はない。
いや、下手にアニエスが動きやすい男物の服を着ているものだから、カップルと思われているのかもしれない。
背はエレオノールのほうが大きいが。
430:虚無と銃士代理
10/06/15 16:16:45 kWVviJV3
「たまぁにあるのよね、こういう時」
「私も衛士をやっているときはこういう日に遇いましたね。私はこういう時のトリスタニアのほうが好きです。
物静かなほうが風も穏やかですし」
「確かに、あんまり騒がしいのは私もね」
「しかし、騒がしいのが普通の酒場で怒り出したときはびっくりしました、ははは」
「あ、あれはねぇ!」
―ぐぐぅ。
他愛のない会話を続けていると、エレオノールの腹の音が鳴ってしまった。
その乙女にしては大きな音にエレオノールは顔を真っ赤にしてお腹を抑えてみるが、時すでに遅く、
アニエスはくすっと隣で思わず失笑してしまっていた。
「姉を侮辱する無礼な口はこれかしら?」
「いひゃひゃ、ごめんなしゃい」
エレオノールは眼鏡を光らせながら、アニエスの頬っぺたを抓る。
アニエスは両手を空に上げて降参をしているものの、相変わらず顔は笑っていた。
「ジェシキャにょとこりょにでみょいきまひょ」
「もう! ……ジェシカねぇ。まあ、いいんじゃない?」
「あいたた……じゃあ行きましょうか」
やっとのことで解放され、アニエスは軽く頬を摩りながら歩き出す。エレオノールもふんっと鼻息を鳴らしながらその後を歩いていった。
しばらくは他愛のない会話を続けて、街路を歩いていく。
アカデミーの上司のセクハラ発言への愚痴だったり、薬草を何に使おうかと言う話だったり、
今度作る秘薬のテストはどうしようかであったり。
エレオノールが話し手になって、アニエスは聞き手になっている。
エレオノールは癇癪持ちで、性格上問題があるものの、しっかり話を聞けばなかなか面白い人間なのだ。
話を聞ければ、だが。と、そんな彼女たちの前を青髪の剣士が歩いてきた。
フード付きの少し綻びが目立つマントを大きくかぶっていて、顔が良く見えない。
アニエスとエレオノールはその剣士を横目に通り過ぎる。
と、少しだけ歩んだあと、アニエスは不意に足を止めた。
「アニエス?」
エレオノールは訝しげに彼女を見つめる。アニエスは横目に後ろを見ると、
背中のデルフの柄を握り、そして素早く鞘ごと振り抜いた。
「きゃっ!」
近くにいた花売りの少女は悲鳴を上げ、その場に転んだ。アニエスが剣を向けた先には、
先ほどの剣士が同じように剣を向けていたのだ。辺りが一瞬騒然となる。
「いきなり剣を向けるなんて、相変わらず血の気が多い奴だな、ミシェル」
「覚えてもらえて光栄です、アニエス。貴女は大分お変わりのようで」
そんな状況にも掛からず、二人は互いに笑みを浮かべながら、それぞれの得物を仕舞った。
それと同時に、緊張気味に取り巻いていた周りの民衆も、それぞれ文句を言いながら元の生活へと戻っていく。
剣を抜いた青毛の剣士、彼女は6年前、衛士時代にアニエスが会ったミシェルだった。
あのたった一度だけだったが、アニエスはその太刀筋や身のこなしを覚えていた。
だがそのときに比べ、彼女は影が更に深まっているようにも見えた。
「ちょ、ちょっとあんた何よ! いきなり剣なんか抜いて、野蛮な平民ね!」
「落ち着いてください、姉上。大丈夫です、私の知り合いですから」