10/05/15 10:41:35 vtOrkHjP
もしも7万人のアルビオン軍との戦いで
敵に捕虜として捕らえられたサイトが
シェフィールドの魔術により操られルイズの敵になったら
228:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/15 10:53:38 dbEzE5Mz
マジカルウェポン☆ガンダールヴか
229:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 00:14:40 FnNwXWbH
操りの力とルーンの強制力の狭間で苦しむサイトと申したか
230:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 00:24:13 U68Z9b8b
そこでサイトまさかのヤンデレ化ですね、わかります。
231:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 00:26:31 RCRfBtBC
ただのDV男と言う気もするけどな
お前が好きだからこんなに殴ってるのになんでわかんねえんだよとか
232:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 00:28:43 ZCLvnSy/
そこはハリセンかピコピコハンマーでツッ込むとかマイルドに
233:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 16:22:47 SGPokGTH
男ヤンデレって、確かにイメージするとそういう最低男な感じになるなぁ。
男ツンデレは、まだ萌えキャラだとか言われてるのに。
234:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/16 16:47:47 KMy1l1eD
ルイズはルイズで殴られるたびに
「ああ、サイトがこんな風になったのは私のせいでもあるんだ。サイトには私がいなきゃだめなんだ」
みたいな感じで受け入れて……ヒモでDVかw
235:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/17 23:58:34 h9ZUmp65
限りなく最悪の共依存じゃないかソレ。
二人揃って果てしなく破滅まで墜落していく負のスパイラルが見えますぞ。
しかし、ゼロ魔の初期設定から言って、ちょいと捻じ曲げればそんな感じの展開にもっていけそうなのがなんともはや。
IFでもあんまり見たくないなぁ、胃が重くなりそうだ。
236:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:13:59 9giV0LyW
どうも、こんばんわ。
第十三話が完成いたしました。もしよろしければ10分後に投下したいと思います。
237:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:23:44 9giV0LyW
それではいきたいと思います。
ラ・ヴァリエール公爵家の馬車に揺られながら、シエスタは外の様子をじっと伺い、昨日の晩の事を思い出していた。
「シエスタ」
「はい」
昨晩のラ・ヴァリエール公爵家屋敷、メイド長の執務室。
ここにシエスタは、ラ・ヴァリエール公爵家のメイド達を束ねるメイド長に呼び出されていた。
何かまた粗相を犯してしまったか、と緊張した趣で、彼女は目の前に居るメイド長と対峙していた。
そんなシエスタを鋭い目つきでメイド長が見つめていると、シエスタへ一通の手紙を手渡した。
「これより貴女はトリステイン魔法学院に赴き、ルイズお嬢様のご様子を伺いに行くことを命じます。
これは、母君カリーヌ様からの任命となっています。無事この手紙を届け、お嬢様が使い魔召喚の儀式に
成功しているかどうかを確かめに行くこと」
「はい。しかし、それであれば何時もの手紙にやり取りで使っているフクロウでいいのでは?」
シエスタはほっと胸をなでおろしながら手紙を受け取りながら、メイド長に尋ねた。
「それは私も進言しましたが、それ以上にルイズへの癒しのためでもあると仰っていました。
貴女は、ルイズお嬢様と随分仲が良いみたいね?」
「は、はい」
不適に笑うメイド長に圧されながらも、シエスタは力強く頷いた。学院に旅立つルイズを最後まで見送った平民も
シエスタだった。彼女はルイズと仲が良いことを誇りに思っているし、何より大事にしている。
「そう。ならこの任務は貴女が適任でしょうね」
「手紙を送り届けた後は如何しましょうか?」
「奥様は必要に応じて滞在し、随時様子を教えて欲しいと仰っていました」
「わかりました。頑張ります!」
「ええ、お願いねシエスタ」
そう任務を任され、今こうして馬車に揺られてトリステイン魔法学院に向かっていた。
久しぶりにルイズと会える。去年夏の休暇に会った以来だから、約半年と少しぶりの再会となる。
シエスタは心を躍らせて楽しみにしていた。
使い魔は何を召喚できたのだろうか。魔法が成功しないと聞いていたから、少し心配になっているものの、それでも大丈夫だと彼女は思う。
ルイズならきっとすごい使い魔を召喚できているだろう。そう信じて、彼女は学院へと向かう。
まさか、あんなことが起きるとは露知らずに。
238:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:26:00 9giV0LyW
第13話
ルイズは焦っていた。それは春の儀式をサボりかけて、コルベールに叱られたことでも、
先に召喚をしたキュルケがかなり良い使い魔を召喚できたことでもない。
目の前に居る少年の存在だった。
「君、誰……?」
何を言っているんだ、私はと思いつつも、そう呟かざる得ない。ルイズはそんな状況にあった。
春の使い魔召喚の儀式。ここトリステイン魔法学院では、二年への進級試験を兼ねて、メイジのパートナーとなる使い魔を召喚する。
使い魔はメイジの系統を決定付け、専門課程を学ぶに当たっての指標にもなる、らしい。
ルイズはその辺りを曖昧に聞いていたためによくは覚えていないが。
例えば、彼女の前に召喚を行ったキュルケは火を操るトカゲ、サラマンダーを召喚していたから、彼女の系統は『火』と言うことになる。
姉エレオノールは、種類を忘れてしまったが、確か水鳥を召喚して今も相棒にしている。だから『水』と『風』なのだ。
さあ、人間を呼び出した私は何系統なんだろうか。そもそも人間を何で呼び出したのだろう。
ルイズは大粒の汗を大量に流しながら必死に考える。
「いや待て私、落ち着け」
そうルイズは心の中で呟く。
今日は良いことがありそう。そんなことを考えていた矢先にこの事態が起こるとは思わなかった。
それは目の前で、地面に仰向けに寝転がり、呆然とした表情で青空を見つめる少年も同じだった。
格好は、何とも見た事がない奇妙なものだった。青を基調にところどころ白を入れた、フードが取り付けられた服。
黒のズボンに、見たことのないような形だが動きやすそうな靴。そしてハルケギニアには珍しい、シエスタとジェシカと同じような黒の髪。
そしてぱっとしなくて、少し頼りない顔をした男の子。自分と同年代の子だろうか。
何処で流行っているのだろう。もしかしたらゲルマニアのほうだろうか。それか東方のほう? ルイズは必死に頭を回転させるが、
一向にわかる気配がない。こんなことならちゃんと勉強しておけばよかったのだろうかと思ったが、今はそれどころじゃない。
少年も状況を把握し切れていないのか、体を上げ、顔を赤らめながらルイズを見つめ、そして恐る恐る辺りの様子を見ると、口を開いた。
「誰って……。俺は平賀才人」
「ひ、ヒラガサイト? ああ、えっと……それが名前なのね、うん。それでヒラガサイトくん? で、いいのかしら」
「あ、ああ、サイトでいいよ」
「あ、うん。サイトくんは、えっとその」
困った。何を話せば良い。というか、これは単なる人攫いなのではないだろうか。
ルイズは幼少の頃の自分の境遇の記憶が蘇ってきて、次第に顔が青ざめていく。
「お、おい大丈夫かよ」
「あ、う、うん」
「ちょっとルイズ! 何平民なんて召喚してるの?」
少年サイトは様子が可笑しいルイズの顔を覗き込もうとした時、周りを取り巻いていた魔法学院の学生の一人がそう言うと、
辺りから騒がしく笑い声が響き渡った。ルイズは青ざめていた顔を急に赤くすると、誤魔化すように笑った。
「あ、あはは……いや、これはその……」
「平民なんて召喚して、さすがはゼロのルイズよね!」
「普段平民と仲良くしてるから、平民が来たんじゃない?」
「いやあのすばしっこいルイズの事だ。どっかから連れてきたんじゃないのか?」
「ああ、そうに違いない。まるで人攫いだな!」
「ちょ、ち、違うわよ!! 私そんなことしていない!」
しかし、周りの笑い声が大きくなり、ついには人攫いと言う言葉すら上がった。その言葉を聞いてルイズは必死に否定をするように叫び散らした。
冗談じゃない! 私は人攫いなんかじゃない! 私は召喚をしただけだ! ルイズは必死にあたりに叫び散らす。
だが、ルイズの叫び声も虚しく、生徒たちの嘲笑は大きくなるばかりだ。
それどころかサイトは相変わらず状況が分かっていない様子だったが、その言葉に反応して、青ざめた表情でルイズを訝る目を送った。
その目を見て、ルイズはまた顔を青ざめて首を横に振って必死に否定した。
「ち、違う、私人攫いなんか……人攫いなんかじゃない……違うんだから!」
「ミスタ・コルベール、この状況どうにかしなくていいのですか?」
239:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:26:49 9giV0LyW
ついに頭を抱えて、ルイズはその場に膝を着いてしまった。
そんな彼女の様子に、今まで黙って見守っていたキュルケが教師であり、この儀式の監督官であるジャン・コルベールに提案した。
コルベールはこの状況をどうしたものか、と眼鏡を抑えながら思案しているところだったが、キュルケの言葉に頷き、学生たちを掻き分けて、
彼らの前に立つと一喝した。
「君たち! 貴族はお互いを尊重するもの。それなのに彼女を人攫い扱いするとは何事だ!」
普段は優しいコルベールからは想像もできないドスが利いたその一言で、周りの生徒たちの笑い声も収まった。
そしてコルベールはルイズの許に歩み寄っていった。
「ミス・ヴァリエール」
コルベールに声を掛けられ、ルイズは不安な表情で目に涙を浮かべながら、彼のほうを向いた。そして必死に弁解をする。
「こ、コルベール先生……私、人攫いなんか……」
その表情は恐怖と後悔で多い尽くされ、今にも泣き出してしまいそうな様子だった。
そんな彼女をコルベールは優しく微笑みながら、頭を撫でて励ましてあげた。
「ああ、わかっているとも。君はただ単に『サモン・サーヴァント』を唱えただけだ。
彼は君の呼び声に応えてこちらに来たはずだ。だから、人攫いじゃない」
「ほ、本当ですか!?」
「……やれやれ、『サモン・サーヴァント』については授業でやったはずだが」
「あ、あはは……」
ルイズは頭を掻いて恥ずかしそうに顔を赤らめながら、内心ではほっと胸をなでおろしていた。
しかし、状況を理解していないサイトがこちらの召喚に応えたとは思い難いのだが。
「とにかく、初めての魔法成功おめでとう、ミス・ヴァリエール。やればできるじゃないか」
「あ……は、はい」
コルベールの言葉に、ルイズは恥ずかしそうに俯く。だが内心ではとても嬉しいのか、涙を浮かべながら笑みをこぼしていた。
そんな彼女の様子に、キュルケやタバサ。そして一部の生徒は安心したように笑みを浮かべていた。
「それでは次に『コントラクト・サーヴァント』だね。これも今の君なら上手くいくだろう」
「え、でも、彼は状況を把握できていないみたいですけど……それに人間ですし……」
ルイズの言葉に、コルベールはサイトをまじまじと見つめる。
「ふむ、確かに。しかし、儀式は続けなければいけない。春の使い魔召喚儀式は神聖なもの。
途中で止める事は何人にも許されない。彼が人間であれ、契約は結ばなければ鳴らないんだ。わかるかい?」
「……はい、理屈は」
「では、『コントラクト・サーヴァント』で契約をしなさい」
「……」
ルイズは申し訳なさそうにサイトのほうを見る。こんな決まりに従うくらいなら留年、いや退学になったほうが良いと思った。
早く彼を元の場所に戻してあげたい。彼にも家族がいるはずなのだから。しかし、今退学になればロングビルの期待を裏切ることになるし、
それに自分の家族をも裏切ることになる。
サイトに対する心配と自分と親しい周りへの想いで板ばさみになったルイズは、コルベールに苦し紛れに言った。
「……せめて事情をちゃんと説明させてあげてからでいいですか?」
「いや、しかし」
「ちゃんと見せに行きますから!」
ルイズは強い意志でコルベールの目を見る。その瞳を見て、コルベールは困ったような表情を浮かべると、
大きくため息をついて、苦笑しながら頷いた。この少女は意志が強い。一度決めたら絶対に曲げない子だ。
だから今は好きにさせてあげよう。優しい子だから、悪いようにはしないはずだ。
240:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:28:06 9giV0LyW
「……ふむ、わかった。そこまで言うなら信じよう。さて、じゃあ皆教室に戻るぞ! ミス・ヴァリエールはちゃんと契約してくるんだよ?」
コルベールが号令を出すと、生徒たちは自分の使い魔を連れて、『レビテーション』や『フライ』を使って学院の教室へ戻っていった。
その場に残されたのはルイズとサイトにコルベール、そして何故か残っていたキュルケとタバサだった。
ルイズはコルベールに対し、大きく頭を下げて謝罪した。
「はい……。ごめんなさい、我侭を言ってしまって」
「初めての事だからね、混乱してしまうのは無理もないさ。だから、ゆっくりやればいい。ん? 君たちも戻りなさい」
「いいえ、ミスタ・コルベール。私たちはミス・ヴァリエールを見守らせていただきます。誰かが見ていたほうが良いでしょう?」
コルベールはキュルケとタバサを教室に戻そうと促すが、彼女たちは同時に首を横に振ると、それを拒否した。
「ミスタ・コルベールこそ、生徒たちの監督に戻ったほうが良いのでは?」
「いや、それなら君たちも……。はぁ……仕方ないな、君たちは。わかった。では頼んだよ、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ」
これもいつもの事。コルベールは呆れたように首を横に振ると、ルイズをキュルケ達に任せると、
彼も飛び去っていった。
見たところルイズの呼び出した使い魔は平民であるから、変に暴れたりはしないだろう。
そして彼女たちの根の真面目さも知っていたから、ここは任せていいかもしれない。
むしろ教室に戻った生徒たちがしっかりと世話が出来ているのか、そちらのほうがコルベールとしては心配だった。
さて、キュルケはその後姿を笑顔で見送ると、ルイズのほうを向きなおした。ずっと置いてけぼりになっていたサイトは表情を固めたまま、
生徒たちが飛び去っていった方向を見つめている。ルイズはそんな彼を前かがみになって覗き込んでいた。
「も、もしもーし」
ルイズがサイトの頬をぺちぺち、と軽く叩くと、はっと我に返った彼は急にルイズの肩を掴み、
錯乱したようにガクガクと彼女を前後に振りながら叫び散らした。
「ここ何処だよ!? あいつら何で空飛んでんの!? つーかさっきのおっさんは何だよ!!? 使い魔ってなんだよ!?」
「あわわ、ちょ、ちょっと落ち着いてって!」
「お前ら何もんだよ! 俺をこんなところに連れ込んでどうするつもりだよ!? 俺を早く元に戻せよ!!」
「落ち着け!!」
錯乱したサイトを必死に宥めようとしたルイズだったが、あまりに乱暴に振り回してくるために、
彼女も苛立って落ち着きをなくし、終にサイトを投げ飛ばして地面に叩きつけてしまった。
血迷っていたサイトは上手く受身を取ることができず、ズトン! と地面に叩きつけられ、
肺の中の息が全て抜け出て、背中を押さえながら咳き込んだ。
「あ、あわわ! ごめん、つい……」
「あ~あ。やっちゃったわね」
「でも自業自得」
「そうね」
ルイズははっと我に返り、慌てて地面に倒れたサイトの体を起こして背中を摩った。
遠めで見守っていたキュルケは笑いを堪えて、タバサは冷たい一言を言い放っている。
「げほっ、ゲホッ、いってぇ……これ夢じゃねぇ……ならドッキリなのか? なあ、そうだって言ってくれよ……」
と、地面に叩きつけられた事でサイトもようやく冷静になったのか、急に落ち込んだように
その場で顔を伏せてしまった。彼はまだ今いる自分の状況を理解できないようだ。
しかし、ルイズは不思議に思う。ハルケギニアの平民であれば、メイジに囲まれれば恐怖するはずだ。
それを物怖じもせずに突っかかってくるのは、やはり彼は遠い国の人なんだろうか。
メイジもいない、魔法も存在しない国。そんな国はどこにも存在していないと思っていた。
ただの御伽噺だとルイズは思いつつ、サイトに尋ねる。
「ドッキリって何?」
「ドッキリって何って……いやそんな事言って、どっかでカメラで俺を撮っていって、皆であざ笑ってるんだろ?
さっきの飛んでいったやつだってワイヤーアクションなんだろ?」
「いやさっきから言ってることがわからないわよ……」
241:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:30:13 9giV0LyW
困った。遠い国とか以前に変な人でも呼んでしまったのではないか。
とにかく、ルイズは自分が混乱しそうになるのを必死に我慢して、サイトに再び問いかける。
「とりあえず、さっきのは魔法で飛んでるんだけど、もしかして知らない?」
「ま、魔法!? 何言ってるんだよ、お前!」
「あら、魔法を知らないの?」
と、二人の会話に興味を持ったキュルケが割って入った。サイトは必死に何度も頷く。
どうやら彼も変な意味でルイズたちに危機感を持っているようだ。
「そうね……。なんか見たこともない格好だし……。ねえ、タバサ。この服の材質とかわかる?」
「……知らない。少なくとも、こんな生地は存在しないと思う」
「よねぇ」
キュルケはサイトの服の裾を握って、その感触を確かめる。タバサも同じように確かめていた。
そんな美少女二人、とりわけ大人の魅惑を持つキュルケに近寄られて、サイトは思わず顔を赤らめ、恥ずかしそうにしていた。
「ちょ、まじで恥ずかしいっすけど!?」
「我慢しなさいな。……魔法がない国から来たのかしら?」
「そんな国あったっけ?」
「東方?」
「魔法なんて普通は存在しないだろ! 何言ってるんだよ!」
「ウル・カーノ!」
必死に魔法の存在を否定しようとするサイトに対し、キュルケは突然杖を取り出すと、
『発火』のスペルを唱えてみせる。杖の先から、真っ赤に燃え盛る炎が上がる。それを見てサイトは驚いた。
「う、うわ!」
「これが『発火』の魔法。他にもお見せしたほうが良いかしら?」
「い、いや、いいです……。手品……でもねぇし、どうなってるんだよ、ここは……。というか、お前たち本当に魔法使いだったのかよ……」
「ええ、そうよ」
呆然とするサイトに対し、キュルケは髪を流しながら当たり前のような表情を浮かべる。
「とりあえずさ。覚えていることとか話してみない?」
「お、おう。任しておけ」
何が任しておけなのだろう。ルイズは少しだけ失笑してしまった。
とりあえずサイトは必死にルイズ達へ訴えかけた。だが、ルイズ達は彼の話を半分以上、
いやもしかしたら殆ど理解できなかったかもしれない。ひとまず理解できた事は。
「とりあえず突然自分の目の前に現れた『銀の鏡』に興味を持って、石ころとか何やら入れて、
とりあえず安全そうだったから、今度は自分から突っ込んで行ったと」
「……はい、その通りです」
「普通そういうのに無用心に触る?」
「はいその通りです、すんません」
『あきはばら』や『のーとぱそこん』やらよく分からない単語が出てきたが、
どうやらこちらに来てしまったのは彼の不注意もあるようだ。記憶をたどったことで少しは状況を把握できたサイトは、
その場で何故か『シェイザ』をしながら項垂れていた。
「でも良く分からないことばかりね。服の事もそうだし、まるで異世界から来たみたいだわ」
「異世界……」
使い魔のサラマンダーの背に乗り、その頭を撫でながらキュルケは呟く。そしてその膝の上には、
サイトが『のーとぱそこん』と言って差し出された薄い黒箱が乗せられていた。
そしてキュルケの言葉に反応したタバサが少しだけ憧れのような瞳を見せながら反芻した。
242:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:33:55 9giV0LyW
使い魔のサラマンダーの背に乗り、その頭を撫でながらキュルケは呟く。そしてその膝の上には、
サイトが『のーとぱそこん』と言って差し出された薄い黒箱が乗せられていた。
そしてキュルケの言葉に反応したタバサが少しだけ憧れのような瞳を見せながら反芻した。
「……少なくとも俺のいたところではそんな尻尾から火が出るトカゲなんて御伽噺の中の生き物だよ。というか熱くないっすか?
つーか俺のノートパソコン返して欲しいんですけど」
「ふふん、私にとってはこれぐらい涼しいぐらいよ。そしてけち臭いこと言わないの!」
「いや、壊れるって言うか……」
「というかもし本当に異世界だったら戻す方法ないんじゃ……」
青ざめた顔で、ルイズは乾いた笑みを浮かべる。その言葉を聞いてサイトもまた目を見開いて、一気に顔が青ざめていく。
「ど、どうするんだよ……」
「どうするって言ったって……」
「あ、そうだ! さっきの魔法をもう一度唱えれば……」
「無理ね。サモン・サーヴァントは呼び出すためだけの魔法。きっと恐らく貴方の目の前に鏡が出てくるだけよ。
そしてルイズの許に辿り着くだけ。それに、これは神聖な儀式だから、やり直しは利かないのよ」
「そ、そんな馬鹿な……」
「……まあ悩んでも仕方ないじゃない? 来てしまったんだし、貴方の居場所に戻す魔法を探すにしろ、
ここで一生暮らすにしろ。覚悟を決める以外ないでしょ? 貴方が何処に来たかは置いてね」
「……とほほ……」
キュルケの容赦ない言葉にサイトはその場で力なく項垂れてしまう。
しかし、今彼の状況ではそれ以外にないだろう。元々サイトには選択肢など残されていなかったのだ。
「まあ安心しなさいな。他の誰かに呼ばれてたらわからないけど、この子は面倒見がいいから。悪いようにはならないわよ」
「少なくともお腹は空かせないわ。それに、必ずご両親のところに戻してあげる。約束する」
「ああ、ありがとう……」
サイトは無気力に言った。途方もない事になって、色んな事を後悔し始めているのだろう。
ルイズはそんな彼を見て申し訳ない気分にまでなってきた。
「それよりも、契約」
「ああ、そうね」
と、タバサは思い出したように呟き、キュルケもぽんと手のひらを叩いた。
「契約って?」
サイトが尋ねると、ルイズがその内容を思い出すように説明を始めた。
「さっき、コルベール先生」
「あのはげ頭の人?」
「そうそう、その人。その人が『コントラクト・サーヴァント』をしろって言ってたでしょ?」
「そういえばそんな事言ってた気が」
「使い魔召喚の儀式はそれとサモン・サーヴァントを行って初めて成立して、私たちトリステイン魔法学院の学生は二年生になるわけ。
コントラクト・サーヴァントは使い魔と正式に契約を結ぶ、大事な魔法なのよ」
「つまりその、やらないと留年するって事?」
「この子の両親の事を考えると、留年はないわね。恐らく退学させられるわ。この子は公爵家のご令嬢だからね」
サイトは驚いた様子でルイズをじっと見つめる。
「公爵って、もしかして結構偉い人?」
「少なくとも、トリステインの中でも頂点に近いわね。もしかしなくとも」
「そうだったんだ……意外すぎるな」
「な、なによ。自分でも貴族らしくないのはわかってるわよ。偉そうにするの、結構疲れるんだから」
ルイズは恥ずかしそうにする。最近ではやっと貴族らしく振舞うことは出来るが、それでも平民だった頃のほうがずっと気が楽だ。
だから平民を相手にする時や、キュルケやタバサなどの友達に対してはそう言う風に振舞っていた。
まあそんな事情を説明している暇もないので、キュルケは適当に誤魔化して話を進めようとした。
243:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:35:10 9giV0LyW
「まあ色々と事情あるのよ。で? 結ぶ、結ばないの?」
「何かそんなセリフ、マンガで見たことがあるな……」
サイトは妙なことを呟きながら考え込む。ルイズとしては結んで欲しいとは思っていた。
そうすれば留年することがないから、家族や友達に迷惑をかけることもない。
しかしそれは自分の願いだ。それを押し付けられるほど、ルイズは身勝手になることはできなかった。
だがそんな彼女の思惑とは裏腹に、サイトは覚悟を決めた様子で大きく頷いた。
「よし、結ぶ」
「え?」
「結ぶって。俺、やっぱりここが別の世界だなんてまだ信じられないけど……。
でも、君たちは見ず知らずの俺を助けてくれようとしているわけだろ? 俺だってそれに応えるだけの男気ぐらいあるさ!」
「でも、そんな無理しなくても……。きっと事情を説明すれば先生たちだってわかってくれるわよ」
「大丈夫だって!」
「とか言って、可愛い女の子と一緒になれるのが嬉しいとかそういう下心じゃないの?」
「そ、そんなわけないし!」
決意の言葉を迷いなく言ったサイトだったが、キュルケに指摘されて明らかに動揺を見せた。どうやら図星のようだ。
ルイズは世間一般的に考えて美人の分類に入る。キュルケほどの色気こそないが、親譲りの綺麗な桃色のブロンドに透き通るような白い肌。
鳶色のくりっとした瞳に人懐こい性格。やや短気で悪戯が過ぎるところが難点だが、それでも彼女は可愛らしい美少女であることには間違いない。
確かに、サイトぐらいの年頃の少年が下心を持っても仕方はない。ルイズもその辺りは承知の上だが、それ以上に、そんなことで簡単に決めてしまったサイトの決意力に呆れていた。
「はぁ……もう、本当にいいの?」
「いいって、さっき言った事は嘘じゃねぇし。使い魔、やってやるよ。こうなったら、この世界の事もっと知ってやるさ」
「……貴方って、本当に好奇心旺盛で能天気なのね」
「わ、悪かったな!」
「ふふ、まあいいけどね。……んじゃ、今日から貴方は私の相棒。使い魔じゃなくてね。よろしく」
「ああ、こちらこそよろしくな。えっと……」
「あ、そっかまだ名前言ってなかったわね」
ルイズは徐に立ち上がると、二歩下がってサイトのほうを向く。そしてそれに合わせるようにキュルケとタバサは傍に寄り、
彼女たちの使い魔であるサラマンダーと風竜シルフィードもサイトの前に立った。
その光景にサイトは一瞬息を呑むも、じっとルイズを見つめた。
「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つの名は『微熱』」
「……タバサ。『雪風』のタバサ」
「そしてこの私がルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。……『ゼロ』のルイズよ。よろしくね、異国の殿方」
ルイズは手を差し出す。サイトは恥ずかしそうに頬を掻きながら、その手を握り返した。
「あ、うん。……俺は平賀才人。サイトって呼んでくれ。よろしくな、ルイズ」
一時期は平民として育ち、上手く魔法が使えないけれど、貴族の娘であるルイズ。
地球で普通に育ち、何故か異世界に呼び出されてしまった少年平賀才人。
少年と少女は出会い、そしてまた彼らを取り巻く運命もまたゆっくりと動き出した。
244:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/18 00:36:11 9giV0LyW
-----------------------------------
「ところで契約ってどうするんだっけ?」
「あんたそんなことも知らないの? 呪文唱えて、口にキッスよ、キッス!」
「口付け」
「え!?」
「え、キッス?」
「わーわー! そりゃいかん! 私ファーストキスなんですけど!?」
「何よ、ファーストキスぐらいすぐに捨てなさいな! ほーら、キース、キース!」
「やんややんや」
「ちょ、なんで二人ではやし立ててるの!? タバサそういう人じゃないでしょ!?」
「お願いします!!」
「君も何で地面に平伏して頼み込んでんのよぉぉ!」
「ソコロフっ!?」
「あ、またやっちゃった……」
どうも、皆様如何お過ごしでしょうか。私は毎日CQCをしたり、ヘリから逃げつつRPGを撃ったり、ホバーに潰されているという充実した日々を送ってます。
すいません、ピースウォーカー面白いですよねって言う話です。皆も買うと良いよ!
今回から原作の時系列に入ってみましたが、視点はルイズに絞ってみました。
原作とは違った、虚無と銃士の「ルイズ」らしさが出ていれば良いのですが……。
あ、因みに皆様が心配しているエレ姉の恋の進展は、もうちょい先で明かしたいと思います。
政治とかの話よりも、冒険譚に出来れば良いなぁ……。
少しキュルケとかのリアクション薄かったかな?
-----------------------------------
245:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 01:00:08 qYQEGvjK
>銃士の人
GJ
246:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 01:03:11 jK+oafbv
おつ
247:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 01:04:00 TF61gle4
おちゅんちゅん
248:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 11:31:05 oS2f3KVn
キース、キース! GJでしたw
249:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 13:10:14 ME8NFRF2
ここ 初めてきたけど気合入ってるね。
250:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 16:37:07 AlfrqaK3
残念だけど最近じゃあ気合はいってるのは銃士の人だけじゃね?
永遠の17歳カリンちゃんとかずっとまってるんだけどなー(チラッ
251:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 19:10:57 PoakWiHQ
もしシルフィードとタバサの性格が逆だったら
252:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 20:09:40 XkSC72Kl
タバサというかシャルロットってさ、素というか父ちゃん死んだり母ちゃん壊れたりする前はシルフィと似たようなもんなの?
253:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/18 20:48:26 UK49XZTX
イザベラの性格がきゅいきゅい
254:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 00:56:13 hSuvqWT7
>>227のサイト操られの変化形
もしサイトが対7万で死亡して操られゾンビになったら
ディスペル撃てばサイトはただの死体になってしまう
ゾンビサイトはゾンビサイトで「ルイズも死ねばずっと一緒にいられる」だの
「綺麗に苦しみも痛くも無く殺してあげる」だの「ルイズのために強くなったその成果を見せてあげる」だの
操られ+ルイズLOVE、というより馬鹿は死んでも直らなかった的なことを呟きつつ近づいてくる
どーする?どーするよ?ルイズ?
というのが頭に浮かんだ。我ながらひどいw
255:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 00:58:03 9xPyB4C0
パパンがトラウマ刺激されてサイトを粉砕するよ
256:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 01:22:47 KUoECnKh
>>234>>235
それってシェーフィールドじゃね?
257:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 01:48:01 fmNVmQqQ
いやジョゼフの愛妾のモリエール夫人の方でね?
258:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 12:23:50 EvnBOpCI
>>254
大体同じ状況(アンアンさらわれたあとは殺されてゾンビ化して傀儡だろうし)で始末つけた身としては
自分が同じ立場になったからって流されはしないと自分で始末つけて
その後に盛大に凹むんじゃないかなぁ、推定父方の遺伝子的に考えて年単位で
259:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 20:48:34 Qi1VpyKX
>>250
『気合い』が『入ってねぇ』だとぉ?(ビキィ
260:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/21 22:18:46 OAI/kOKy
?!
261:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 01:33:38 xutMpv9Z
嫌なゼロ魔だなw
262:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 01:38:48 rH1G8lFG
確かに他の作者さん帰ってこないなぁ…。寂しいなぁ。
263:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 10:35:16 d/x53CaW
ここを見てる人もめっきり減っちゃったしね。
銃士の人の投下に対しても、あまり感想がついてるとは言えないし。
やっぱり、見る人が少ない、感想もつかない、だと、作者さんのモチベーションも上がりにくいんじゃないかね。
264:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 10:43:17 pmIacfA0
上がりにくいというか、目に見えて下がるかと
265:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 11:14:14 IyIwwQQi
規制の影響?
266:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/22 11:54:59 rH1G8lFG
確かになぁ。烈風さんの時も目に見えて感想が減ってたしなぁ。
投下後はなるべく感想を書くと、反応があるってわかって、他の人たちも書いてくれるかもね。
過去スレでも色々とネタは眠っているはずなんだよなぁ。
防具屋キュルケとかアニエスがコルベールに拾われたらとか。
>>265
それもあるかもね。昔はもっと人が一杯いた気がする。
そ避難所をもっと活用しても良いと思うんだけど…。
267:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/23 11:10:08 GDq5h/F5
もともと、ネタ的にドン詰まった感があったのか、緩やかな減少傾向にはあった。
そこに規制が来て、一気にガクン、とやられた感じな気がするな。
268:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/23 11:54:20 LS0il4ic
その辺りは仕方ないよな。地道に人を戻していくしかないよね。どこも過疎ってるし…。
ところで、皆は今まで出てきたSSの中で、どのルイズが一番好き?
俺はニアゼロのルイズが一番好きだな。
269:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:25:13 KzZm9ULa
どうも、虚無と銃士の人です。
規制など色々とありますが、拙作が少しでもスレの活気を取り戻す機会になれば…
と思います。というわけで十四話を30分から投下したいと思います。
270:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:25:55 KzZm9ULa
「ここが私の部屋よ」
トリステイン魔法学院の夜。
ルイズはサイトを連れて、女学生寮にある自分の部屋へと彼を連れてきた。本当ならば男子禁制の場所であったが、
彼が使い魔になったということで特別許されることになった。その証拠として彼の左手には使い魔のルーンが刻み込まれている。
このルーンをコルベールに見せたときは、珍しいものだと言われたが、それ以外は何事もなく終わった。
ロングビルに見せに行ったときに大爆笑された時は、流石に怒ったが。その怒り方も可愛らしかった。
寝る場所を別に用意しようとしたが、男子寮も使用人寮も空いておらず、かといって他の使い魔同様に小屋に入れるわけには行かない。
仕方なく、しばらくはルイズの部屋で寝かせることになった。それに、使い魔を召喚した初日は一緒に過ごすのが慣わしなのだ。
「ほぉ……」
初めての女性の部屋だったのだろうか。サイトは部屋中を興味深そうに見回していた。そんな彼の様子に気が付き、
ルイズは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ちょ、ちょっと。そんなにじろじろと見回さないでよ。汚い部屋なのは仕方ないんだから」
「あ、いやごめん、女の子の部屋なんて初めてだから、つい」
「もう……」
と言ったものの、実際のところは彼女の言葉とは裏腹に質素で物が少ない部屋だ。
家具もベッドも化粧台も、貴族のものにしては安物を使っている。これも数少ない小遣いと合わせて、貯金を増やすためである。
その代わりにマジックアイテムやレイピアを研ぐための研ぎ石。冒険のためのグッズなどが置かれていた。
そんなものを見て、想像と違っていたのか、サイトは苦笑しながら呟いた。
「……男らしい部屋ですね」
「殴っていい?」
「だ、ダメ絶対! 暴力反対!」
「冗談冗談。そのぐらい言われなれてるし。ほらそれよりも、座った座った」
「あ、ありがとう」
サイトはルイズから差し出された椅子に座った。ルイズもそれと向き合うようにベッドの端に腰掛けた。
「……さてと。じゃあ改めて、ようこそハルケギニアへ。これから色々と大変でしょうけど、一緒に頑張りましょう?」
「おう、任しとけ」
サイトは自信満々に応えた。そんな彼にルイズは呆れたように苦笑した。
271:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:32:33 KzZm9ULa
あ、フライングしてしまった。すいません;
第14話
「すっごい自信。もっと不安になると思うけどなぁ」
「そりゃあ不安だけどさ。あんまり気にしてたら仕方ねぇし。もうこっちの世界を楽しむことにしたよ」
折角のファンタジーだしな、そう呟きサイトは悪戯っぽく笑う。ルイズにはふぁんたじーという言葉が理解できなかったが、
何となく彼の気持ちは理解できた。
「あれね、御伽噺の中に来た気分なのね」
「そうそう、それだよ。魔法だとか月が二つあるとかアニメかマンガの中……あー、御伽噺のような話だと思ってたしな。
実際見れば結構わくわくするな」
「でも現実はそう甘くはないわよ。これから生活もしなきゃいけないし……。特に、私やキュルケ、タバサはいいけれど、他の貴族には気をつけないとね」
「そういやこっちの世界は貴族とか身分の差ってやつがあるんだよな」
ハルケギニアは基本的にメイジが貴族であり、それ以外が平民である。メイジの中にも平民にまで堕ちた者もいるが、基本的にはそう考えて間違いはない。
『貴族は魔法をもってしてその精神を為す』というモットーがあるぐらいであるし、ルイズの姉アニエスも表向きには『メイジの子孫』を名乗っているから、
ゲルマニアのような新興国ではない限り、この習慣は世界共通と言って良いだろう。
「そうね。マントを見に付けている人は大体貴族だと思って良いわ。それ以外は見分けって結構付きにくいんだけど……。
ああ、そうそう。偉そうにしているのが貴族かしらね」
「ははは、わかりやすいんだな」
サイトは思わず失笑してしまった。ルイズも釣られて笑いをこぼす。
「そうでしょ? トリステインはね、魔法絶対主義の国なの。昔からの伝統で、魔法が使えることが一種の能力のようなものを表すの。
だから魔法を使えない人を馬鹿にする人もいるし、平民を苛めたりする人もいる。勿論良い人もいるけれどね」
「へぇ、そうなのか」
「まあそういうわけだから、あまり粗相を起こさないようにね?」
「わかった、気をつけるよ」
サイトはルイズの言葉に大きく頷く。後何を説明するべきか、そう考えていると、サイトのほうから尋ねてきた。
「……ああ、そうそう」
「何?」
「使い魔って何すんの?」
「あぁ、それね。あんまり気にしなくて良いんだけれど。えっと、まず一つは主人の目となり耳となる能力が身につくらしいけど」
「……何も感じねえなぁ」
「まあこの能力あったってお互い見られて困ること、あるでしょ? 例えば着替えとか」
「あ、ああそうだな」
と、同意はしているものの、言葉とは裏腹にサイトの表情は残念だ、といわんばかりのものだ。
契約の時の事もあり、ルイズは彼の本心を見破って、顔を真っ赤にしながら彼に飛びつき、彼のほっぺを引っ張った。
「何で残念そうなのよ! このドスケベ!」
「あだだだだ!! めっしょうもありましぇん!」
「さっきのキスもすっごく嬉しそうだったわよね! ええ、そうよね! ファーストキスって恋の味って言うしね!」
「いででででで!! ごめんなしゃい、もう考えましぇん!」
「もう! 本当かしら……。まあいいわ。後は秘薬を見つけてくるとかかな」
ルイズは訝りながらもベッドに戻り、説明を続けた。聞きなれない単語に、頬を摩りながらサイトは首をかしげている。
272:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:34:25 KzZm9ULa
「秘薬って?」
「硫黄とかコケとか。魔法の触媒となるものを探してくるの。でもこれも無理よね」
「ああ、この辺の地理は詳しくないからな」
「そうよね。それに学院の外とかは結構危険な場所が多いから、人一人が探しに行くのはどちらにしろ無謀よね。
そういうことだから、外には勝手に出ないこと! 出るときは私と一緒にね」
「わかった」
「後は、主人を守ることなんだけど……。うーん……」
「あ、それ以上は言わないで。傷つくから」
「まあ、私と同年代だしね……」
ルイズとしては別に守ってもらわなくても大丈夫なのだが。むしろ彼女としては、守ってあげたいという気持ちのほうが強い。
そんな気持ちがあったからこそ、進んでサイトを自分が養うとも言ったのだ。つまりは自分を拾ったアニエスと同じになりたいという想いが心の底にあったのだろう。
「とはいえ、何もしないのも暇でしょ?」
「そうだなぁ」
「じゃあマルトーさんのところで働くこと。これがご主人様からの最初の命令と言うことで」
「マルトーさん?」
「ここの食堂の料理長。マルトーさんの料理はとっても美味しいのよ! 残す人がいるけれど、それが信じられないぐらい」
「へぇ……」
「マルトーさんのところで働けば賄いもくれるでしょうから、ご飯にも困らないと思う。
配給の手伝いとか、皿洗いとか荷物運びとかだろうけど……それぐらいだったらできるわよね?」
「まあ大丈夫なんじゃない?」
「はっきりしないわねぇ」
「大丈夫!」
「うん、よろしい!」
あまりはっきりとしないサイトの返事に一抹の不安を感じたルイズだったが、その後は元気良く返事したために気をよくして笑顔を見せた。
基本的にルイズははっきりとした人物は嫌いではない。サイトも少し頼りない雰囲気があったが、彼女なりに彼の事が気に入り始めていた。
「それにしても異世界かぁ……。少し憧れるわね。だって、あんな綺麗な絵を魔法も使わずに見せるなんて」
そう言ってルイズはサイトの鞄を指差した。サイトはノートパソコンを散々弄くり遊ばれ、
もう少しで壊されそうになったのを思い出して苦笑した。
「俺にとっちゃ、魔法って言うほうが信じられないけど……。俺には使えないの?」
「残念。魔法を使うにはメイジの血筋が必要なのよ。だから別世界の貴方は絶対に使えない……はず」
「そうかぁ」
残念そうに呟くサイト。そんな彼にルイズは苦笑して語りかける。
「確かに便利だけどね。魔法がなくたって大丈夫よ」
「いやぁ、折角こういう場所に来たから使ってみたくてさ。ルイズは何か魔法使えないのか?」
「え? あ、いや私はね……」
参ったなぁと、ルイズは少し苦笑しながら思う。彼女は今も魔法が使えないのだ。あれだけ練習して、
最近では爆発の場所をコントロールできるぐらいにはなったが、それだけだ。
とはいえ、彼女としては魔法に執着などあるわけではなく、もっと別の事でその才能を活かしているわけだが。
だから隠していても仕方がない。いつかばれることだ。
「魔法、使えないのよ」
「え、でも俺を呼び出したのは魔法なんだろう?」
「あれが始めて成功したの。それ以外はからっきし。だから『ゼロ』のルイズなのよ。
……ごめんね、こんなのが主人で」
「い、いや気にすんなって! そ、そっかぁ、魔法使えないのかぁ、あははは!」
「……」
273:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:36:48 KzZm9ULa
しまった、これはまずいとサイトは思ったのか、笑って誤魔化すも、ルイズの表情は暗い。
魔法が使えないことを気にしたことがない。しかし、最近になってはそうもいかなくなった。
魔法が使えなければ周りから馬鹿にされる。それに反発すれば、今度は教師から厄介者扱いされる。
彼女の味方は少ない。もしキュルケがいなければ、タバサがいなければ、ロングビルがいなければ。
ルイズはこんな場所から逃げ出して、家に帰り。そして騎士になる修行をすることだろう。
恐らくそれも叶わないだろうが。それでもこんな場所よりかは幾分マシだ。
さて、サイトもその空気に耐えられなくなったのか、乾いた笑い声で話題を変えた。
「あ、あはは……。そ、そういやさっきのキュルケって子とタバサって子は友達なのか?」
「え? あ、うん。二人とも、大事な友達。ここの子じゃないんだけどね。外国からの留学生なのよ」
「留学生……」
「ここトリステインのほかにも、ゲルマニア、ガリア、ロマリア、アルビオン、そして東方という未開の地があるんだけれど……。
キュルケはゲルマニア、タバサはガリアから来たらしいわ」
「らしい?」
「キュルケは昔からの付き合いだから分かるけれど、タバサはほら、あの子は無口で自分の事喋りたがらないから。
まあ人には秘密があるわけだし、そんなのを無理に聞くのは迷惑でしょ?」
「まあ、そりゃな」
「でも二人とも良い人よ。……キュルケは時々盛っている時があるから、それだけやめてほしいんだけど。私の精神衛生面的に」
「ああ~、確かにあの体は……」
「そこで私の体と比べんな!!」
「げあ!?」
ルイズの怒りの飛び蹴りがサイトの顔に命中し、地面に叩きつけられた。
ルイズはふんっと鼻を鳴らすと、ブラウスを少しだけ摘まんで、自分の胸を覗き込む。
確かに6年前から胸の大きさが大差で負けていたし、色気でも負けていた。魔法の腕でも。
しかし、その当時から、151サントという、10歳の少女としてはそれなりの身長を持っていた彼女であった。
これに関してはキュルケ、この当時は138サントと年頃にしては低い、の身長を大きく上回っていたが、
ルイズの身長はこれを機会にぴたりと止まってしまった。そしてその代わりに、キュルケは173サントまで一気に伸びたのだという。
酷い話である。
もしも本来の歴史のままであれば、2サントぐらいは縮んだかもしれないのに。余計な挑発をしてしまったことで、余計に背を伸ばしてしまったのだ。
始祖は二物を与えないというが、キュルケにいたっては二物どころかもっと多くのものを与えてしまったんじゃないか。
そしてルイズはこの有様である。
はっきり言えば嫉妬した。羨望を通り越して、彼女の体を妬んだ。普段そういう感情を表さない彼女がはっきりと見せた嫉妬だった。
「キュルケに身長吸われたんじゃないの?」
と、巻髪の友人に言われた時には本気で殴りこみを仕掛けたぐらいだ。結局勝敗は引き分けで終わったが、
それ以来ルイズは好き嫌いをとにかくなくし(といっても一部は未だに克服できないが)、何でも食べて、やっと一年で2サント伸ばすまでにいたったのだ。
焼け石に水である。
「ふんっ! どうせ私はちんちくりんのどチビよ!」
ルイズは涙ぐみながら自虐する。サイトは顔と後頭部を押さえながら立ち上がり怒鳴った。
「いってえなぁ!! 蹴る事はないだろうが!! そ、それを言ったら、タバサって子はどうなるんだよ!」
「……タバサはタバサで、あれは可愛いからいいのよ。中途半端で筋肉質の私なんか……」
「お、俺は好きだなぁ! ご主人のそう言うところ!」
「え、何それ気持ち悪い」
「どうしろってんだよ!」
「ちょっとぉ、あんたたち五月蝿いわよぉ」
と、ぎゃあぎゃあと夜中に騒ぐ二人の下に、少し寝ぼけた様子のキュルケが現れた。
寝巻き姿の彼女は非常に官能的で、その姿を見たサイトは思わず息を呑む。しかしこの騒ぎで目を覚ましてしまったのか、少し不機嫌そうな表情だ。
ルイズは直ぐに謝罪しようと思ったが、何故キュルケが入ってこれたのか、それを考えた瞬間、キュルケを指差しながら注意した。
274:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:39:11 KzZm9ULa
「アンロック禁止!」
「そりゃあ……こんなに騒がれもしたら私だってアンロックぐらいしたくなるわよ……。お子様は早く寝なさいな」
「うっせー! エレ姉並に胸小さくなっちゃいなさい!」
「誰があんな鉄板になるものですか……とにかくおやすみー」
「良い夢でも見なさいよ、バーカバーカ!」
キュルケは適当にルイズをあしらうと、部屋を後にしていった。そんな彼女の後姿に大人気ない罵声を浴びせながらルイズは見送っていった。
「ああ、もう……なんだか最近エレ姉に似てきて嫌だわ」
「エレ姉って、ルイズのお姉さんか?」
「そうそう。くびれと髪の長さがなければ男に間違えられそうな体型な姉さんよ」
真実ではあるが、見も蓋もなかった。こういう事は本人が居ない時に、言える時に言っておくべきである。
「それって」
「あ、ダメよ! それ以上言わなくてもわかるわ! ふぁ……ああ! 騒いでたら疲れちゃったわ。そろそろ寝ましょう……」
ルイズは思いっきり背伸びをしながら、眠そうに欠伸をした。懐中時計を見れば、もう夜中も少し過ぎたところだ。
明日も授業があるのだから、もう寝たほうが良いだろう。サイトもこの世界に来て疲れを感じているのか、釣られて大きく欠伸をして頷いた。
「そうだな」
「そうね」
「……」
「……」
「……?」
「……ちょっと」
「はい?」
「着替えたいんですが」
「どうぞどうぞ」
「……」
「……はっ!? ご、ごゆっくりぃ!」
始めはルイズの意図が分からず、きょとんとしていたサイトだったが、彼女が不意に立ち上がり、
壁に掛けていたレイピアを抜いた瞬間、やっと意図を解し、飛び上がるように部屋から出て行った。
そんな彼の様子にルイズははぁっとため息を交えながら苦笑すると、レイピアを元に戻してクローゼットからネグリジェを取り出し、制服を脱ぐとそれを椅子に立て掛け、
下着姿を晒した。そしてネグリジェを着ると、ベッドに戻って部屋の外のサイトを呼んだ。
「もういいわよ」
「お、おう……おおう?!」
おそるおそると部屋に戻ったサイトは、双子の月に妖しく照らされたルイズの姿を見て、思わず息を呑んだ。
彼女の肢体は確かに美しかった。すらりと丁度良く締まった体つきは、それだけで女性的な美しさを曝け出している。
いわゆるスレンダー美人という奴だ。ブロンドの髪が光を反射してきらきらと光っている。
そして、眠気のせいか、虚ろな瞳も今では不思議な色気を出していた。
「何よ」
「い、いやなんでもねぇ」
と、そんな体でもコンプレックスを感じているのか、じろじろと見るサイトをルイズは少しだけにらみつける。
サイトはそんなルイズから目をそらし、顔を真っ赤にしながら誤魔化すように言った。
「お、俺は何処で寝れば良いかな!?」
「そこの藁の上、かな。人がくるとは思わなかったから、こんなのしかないけれど……。
毛布やシーツ、枕も貸してあげれるし、申し訳ないけど、一日二日は我慢して?」
「そ、そっか。まあ同じベッドで寝るわけには行かないしな!」
サイトは錯乱したように、シーツの敷かれた藁の上に寝転がると、毛布を全身に被せた。
275:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:43:36 KzZm9ULa
「おやすみ!」
「ふふっ、おやすみ」
ルイズは恥ずかしそうに毛布にもぐりこんだサイトに苦笑しながら指を鳴らす。
すると、部屋のランプが一瞬にして消え、辺りは暗くなった。それに釣られて、彼女は再び大きく欠伸をすると毛布の中へと入り、
ゆっくりと眼を瞑った。
「えへへ」
少しだけ笑みを浮かべ、ルイズは深い眠りの中へと意識を飛ばした。
いろんなことがありすぎて、少しだけ混乱はしているし、サイトは少しスケベだが悪い人ではない。
それに、異世界の住人なんてすごくドキドキする。やっぱり、良い事があった。そんな風に、今日一日を満足しながら。
「ね、眠れねぇ」
毛布の中にもぐりこんだサイトはぎらぎらと目を見開きながら、そう天井に向かって呟いた。
先ほどから興奮しきりぱなしでどう考えても眠れるはずがない。隣には美少女。はっきり言おう、眠れるわけがない。
突然変な場所に連れてこられ、可憐な少女とであったと思ったらそこは魔法使いが暮らす世界。サイトの世界の常識が通じない異世界。
貴族だとか魔法だとか彼にとっては理解し難いものだったが、そこは母親からも学校の先生からも「ヌケている」といわれる彼だ。
こんなアクシデントに動じず、彼なりに順応しおうとしていた。
ルイズは少し気が荒いところがありそうだが、それでも美少女には変わりない。くりっとした瞳、筋肉質だがすらっとして細い体。素晴らしい!
ここに来たばかりは、家に帰りたい、出会い系サイトからのメールをチェックしたい、ハンバーグが食べたい、と色々と文句を言いたくなったが、
美少女なガールフレンドが出来たと思えば割と、いやとても良いと思えてきた。これも一種の留学だ、国際交流だ。
いささか、使い魔の契約に関しては後悔をしているが。左手に刻まれてしまった文字(ルーンというらしい)は一生消えないだろう。
そして何より熱かった。しかし、そうして良いように自分を思い込ませれば、割といける気がしてきた。彼は単純なのだ。
そしてまた調子が乗りやすい。そして勘違いしやすい。普通だったら見ず知らずの人間に
あんなに優しく出来る人間など、そうそう居るわけではない。それをあんなに献身的にしてくれる。
もしかしたら、ルイズは自分に気があるのではないか。飛躍して、そんなことも考え始めていた。
「ううん……エレ姉……」
ルイズが寝言を呟く。エレ姉とは、先ほど言っていたルイズの姉の事だろう。サイトは忍び寄るように、
ホフク前進でルイズのベッドに近づくと、彼女の顔を覗き込んだ。彼女は幸せそうに眠っている。どうやら良い夢のようだ。
「アニエス姉さん……ちぃ姉さん……。この男の子? えへへ……」
おおっ!? とサイトはルイズの言葉に反応する。このタイミングで男の子、と言われたら自分しかいないだろう。
そしてこのシチュエーションは、もしや。さらにサイトのボルテージは上がり、息を呑んだ。
「……友達だよ。初めての、男の子の友達……」
だがサイトの期待も虚しく、友達宣言が飛び出した。ガーンである。だがそこで更にサイトは良いように考える。
これは恥ずかしがっているのだ。そうだとも。そんな時、ルイズの表情が苦しくなった。
「……だ、ダメだよアニエス姉さん! サイトが死んじゃう! あ、ああ! サイトがバラバラに……」
え、夢の中の俺どうなってるの? ガクリと項垂れるサイト。どうやらスプラッターな夢に変わったようだ。
苦しそうに眠るルイズの布団を直してやると、窓のほうへと近づいていった。
夜空には彼の故郷、地球には存在しない双子の月が彼を照らしていた。
「異世界かぁ」
改めてサイトはそれを思い知らされる。
果たして元の世界に帰れるのだろうか。帰りたいか、と聞かれたら正直に言えば帰りたい。
不安な事だらけなのだ。やはり故郷のほうが良いに決まっている。ここにはインターネットもゲームも何もない。
そして何より、今の自分は孤独なのだ。だが、それを今考えたところで仕方ない。
サイトは毛布の中へと戻ると、静かに眼を瞑った。不安な事は全て忘れよう。
しばらくはこの世界を楽しむしかない。そう思いつつ、彼は自分の母親に心の中で謝罪した。
今日は彼の大好物のハンバーグを用意してくれていたはずだったのだ。
276:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:46:52 KzZm9ULa
「いやぁ、なかなか悲惨な夢だったわ」
朝が来た。
ルイズはそう呟きながら顎に滴った汗を拭う。最終的に、サイトはエレオノールに改造人間にされ、ルイズと最終決戦をするというとんでもないオチだった。
なんともまあ酷い話である。こんなもの、物語としては三流以下だ。
その改造人間にされたはずのサイトが横にしっかりいる。先ほどの事は夢だが、昨日の事は夢でなかった。
机の上の懐中時計を見ると、まだまだ朝御飯までは時間がありそうだが、運動をするような時間でもない。仕方なくルイズは着替えを始めることにした。
隣で眠るサイトを起こさぬよう、慎重にクローゼットまで歩く。
そしてぶっきら棒に下着を選んで取り出すと、ネグリジェと下着を脱いで、素早く着替える。
そして椅子に立て掛けたブラウスを着ると、スカートを掴む。
「ふぁあ……。あれ、おはよ、うほっ!?」
「!?」
と、そこでサイトが起きてしまった。サイトは目の前の下着丸出しのルイズを見て固まってしまう。
そして、その状態のまま倒れこむと、毛布に包まった。
ルイズも突然の出来事に固まってしまったが、急いでスカートを履いて、何度か深呼吸をして息を整え、そして椅子に座る。
「ふ、ふぁあ……。あれ、おはよう」
「ええ、おはようサイト。良く眠れたかしら?」
そして何事もなかったかのように振舞った。サイトも何事もなく布団から立ち上がった。
二人にとって、何事もなかったほうが幸せなこともある。
「ああ、ばっちりだ!」
「その割には隈ができてるみたいだけど」
「き、気のせいだよ!」
「ふぅん、そう。あ、マント取って」
「ほい」
サイトは椅子に掛けてあったマントをルイズに手渡す。彼女はそれをバサッと勢い良く羽織り、髪を後ろで結ぶ。
そしてマントを翻しながらサイトのほうを向いた。その仕草はまさしく貴族のものだったが、笑顔はなんとも可愛らしい。
「さあ、朝食に行きましょう?」
「お、まじで!」
サイトはぐっと拳を握った。昨日はコルベールという先生のせいで夕食を食べ損なったのだ。
何とか夜食を頂いたが、それでも年頃の男子。物足りないのは仕方がないことだった。
ルイズもまた腹の音を鳴らしながら、ニヘラと笑いながら部屋を出た。
サイトとルイズが部屋を出れば、同じような作りのドアが並んでいる。この一つ一つが女学生が寝泊りする部屋になっている。
そのうちの一つが開かれて、まるで炎のような赤髪の少女、キュルケがその使い魔であるサラマンダーと共に出てきた。
彼女はルイズを見つけるや否や、普段の大人びた彼女からは想像できない、ニパッと無邪気な笑みを浮かべて挨拶した。
「あら、おはようルイズ」
「おはよう、キュルケ」
ルイズも元気良く挨拶を返す。なんやかんやで二人は仲が良い。それは入学時から、いや始めて出会った時から変わらないことだった。
「そしておはよう、サイト」
「あ、ああ、おはよう」
サイトはキュルケを見つめて、一瞬呆けていた。ルイズは唇を尖らして彼の態度を不満そうに見つめる。
彼の視線の先、それはブラウスの一番上と二番目のボタンをはずし、晒しだされた胸の谷間。
ふんだっ、どうせ私は色気なんかありませんようだ、と拗ねた様子で視線をそらした。その先にはサラマンダーがいる。
「……いいわねぇ、あんたのご主人は。あんな色気があってさ」
277:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:51:40 KzZm9ULa
「何、人の使い魔に愚痴ってんのよ。あんただって可愛いと思うわよ? ま、私のほうが男受けはいいけれどね!」
「ムッキー!」
「おほほほ! それにこのサラマンダー、フレイムもサイトに負けてないわ!
見て、この赤く輝く鱗に鮮やかな炎の尻尾! これは火竜山脈のサラマンダーに違いないわ! サイト、素晴らしいと思わない?」
「いや、すごいと思うけど……すげぇ、改めてみると本当にヒトカゲだよ……立ってないけど。目つきも、いや意外と可愛いな」
サイトはじっと好奇心を含めた目でサラマンダーのフレイムを見つめる。フレイムも興味深そうにサイトを見つめていた。
意思疎通をしているのか、といえばそうではなく、ただ単にサイトはフレイムの炎を怖がっているだけだった。
「昨日も言ったけど、危なくね? 熱くない? 鎖でつなげたりしないの?」
「おほほ、臆病ちゃんねぇ。でも大丈夫。私が命令しない限りは襲ったりしないわ。現にルイズに危害を加えないでしょ?」
サイトがルイズのほう見ると、彼女はフレイムの首に自分の腕を回して抱きついていた。
フレイムは少し嫌がっていたが、そんなルイズに身体をゆだねている。羨ましい奴め。そう心の中でサイトは考えていた。
「確かになぁ。っていうかルイズは怖くないの?」
「私? ちぃ姉さんのところにでっかい虎とか居たからなぁ。今更よ」
平然と言うルイズにサイトは引き気味だったが、彼女にとって火トカゲなど怖いものでもなんでもない。
よっぽど姉カトレアが飼っていた動物や母カリーヌのマンティコアのほうが怖い。一度悪戯を試みた時、本気で追い掛け回された時には
流石に命の危険を感じたものだ。
「……この子の家族構成どうなってるの?」
「動物好きの姉さんがいるのよ。もっとも、その度を越えているとしか思えないけど。ちなみに美人」
「だろうなぁ」
「ルイズよりも背も高くて」
「ほほう」
「清楚で」
「ふんふん」
「儚くて……」
「おおう……」
「私並みに女らしいわ!」
「完璧じゃないか……!」
「あんたらねぇ……」
ルイズは、さりげなく自分をひけらかしにされているのを不満そうにしていたのだった。
「さて、ここがアルヴィーズの食堂よ。と言っても、平民は入ってはいけないって言うルールがあるから、
食事はマルトーさんに頼んでキッチンで取らせてもらうことになるけど」
さて、あの後ルイズとサイトはキュルケと共に魔法学院の本塔にある『アルヴィーズの食堂』に足を運んでいた。当然、朝食をとるためである。
食堂には100人が優に座れるような、豪華な飾りつけのテーブルが3つ並べられ、そこには豪華な料理が並べられている。
そしてそこでは各々生徒たちが自分の席に座っていた。大人びていて、紫色のマントを着けているのは3年生。
初々しく、茶色のマントを着けているのは一年生。そして、二年生のルイズ達は彼らに囲まれた真ん中のテーブルである。
この豪華絢爛な光景に、いや料理の豪勢さにサイトは思わず見とれてしまっていた。
「すげぇ……。って、俺は食べれないのか……」
そう、平民はここでは食事を取る事は許されない。美味しい料理を目の前にして諦めるしかないのだ。
しかし、そんな彼をルイズは優しく励ました。
「まあまあ。マルトーさんの賄い料理は美味しいわよ。大きい声で言えないけれどね、もしかしたら、そっちのほうが力入れてるかも」
「本当か!?」
すると、ぱぁっとサイトは機嫌をよくし、思わず叫んでしまった。その叫び声に周りの生徒たちが何事かと彼らに視線を向けた。
ルイズは慌てて彼の口を塞ぎ、自重させる。マルトーたちの保身のためにも、流石に今の会話を聞かれるわけには行かないのだ。
278:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 00:51:45 Z2cRbZbw
なんだか支援するのも久しぶり
279:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 00:53:41 KzZm9ULa
「しぃー! とにかく、この本塔をぐるっと裏に回れば厨房があるから、そこに行って、マルトーさんか他のコックさん、
メイドさんとかにご飯をくださいってお願いして。私の名前を出せば一発だと思うから」
「む、むがむが」
サイトもうんうんと頷いて理解したようで、辺りも平静に戻ったのでルイズは彼の口から手を離した。
と、キュルケはフレイムの頭を撫でながら言った。
「ああ、そうそう。私のフレイムも連れて行ってくれる? この子もおなかを空かせていると思うから」
「わかった」
「フレイム、そこの冴えないお兄さんに付いていきなさい。食べちゃダメよ?」
「冴えないっていうなぁ~! ってフレイム、俺の裾を噛むんじゃねぇ!!」
「ぎゅるー」
「いってらっしゃい~」
反論するサイトの裾を、まるで早く連れて行けと言わんばかりにフレイムは噛んで引っ張ろうとする。
サイトはその強い力に対抗できず、引きずられるように厨房へと連れて行かれた。
そんな彼を苦笑しながら見送りつつ、二人はテーブルに座る。そこにはすでにタバサが座っていた。
相変わらず、無表情だったが、二人は気にせず挨拶をする。
「おはよう、タバサ」
「おはよー」
「おはよう」
タバサは静かに挨拶を返した。これも何時もどおりだ。ルイズは彼女の隣に座って、ニヘラと笑いながら言った。
「朝食、楽しみねぇ」
「そう」
「タバサも楽しみだって、目が言ってるわよ」
「否定はしない」
タバサは素直に頷いた。彼女の楽しみは誰にも邪魔されない読書の時間、そして何よりこの食事の時だった。
彼女は小さな体に見合わず、大食らいだった。表情こそ変わりはしないが、それでも美味しそうにご飯を食べる彼女の事がルイズは気に入っていた。
そして、始祖ブリミルへの祈りが唱和されると、一斉に食事が始まった。ルイズとタバサも自分の皿へ料理を重ねると、勢いよく口に運ぶ。
「こらこら、あんまり急いで食べるのはレディの風上に置けないわよ。もっと落ち着いて食べなさいな。じゃないと、大きくなれないわよ」
「そんなの騙されないわよ!」
ルイズとタバサは女性である。女性であれば、それこそ色気のある体には憧れがある。
特にキュルケは女性として理想、いやそれ以上の身体を持っている。
そんな彼女が大きくなったきっかけ、それは好き嫌いを無くし、よく食べよく寝てよく運動することだった。
そのお陰でキュルケはすこぶる程健康体だから、夜の相手でも何のそのである。どれもこれも、ルイズにだけには負けないというライバル心からだ。
そしてそのライバル心はルイズにも、そしてさりげなくタバサにも宿っていたのだった。
「はぁ、じゃあ私も食べますかね」
そんな二人に呆れつつ、キュルケも食事を始める。二人とは対照的に丁寧な食べ方だ。人間、ほどほどという言葉がある。
キュルケは調子に乗って、下手な男並みに身長を伸ばしすぎたと後悔している部分もあった。
可愛げというものを犠牲にしてしまったのは少し後悔。
少しだけ。
「……ハシバミ草、ちゃんと食べなさいよ」
「ぐっ」
さりげなくハシバミ草のサラダをキュルケの更に移そうとしたルイズを、キュルケが咎める。
その様子はまるで姉妹のようだ。そんな彼女に、更にタバサが残念そうに呟く。
「おいしいのに」
「まさか! こんな苦いものは食べりゃしないわよ!」
「大きくなれないわよぉ」
「うっさい! ハシバミ草なんて食べなくたってね、ちぃ姉さんみたいに大きくなれる、はず!」
280:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 01:00:30 KzZm9ULa
強がりを言うルイズだが、根拠がないわけではない。カトレアも女性的には素晴らしい身体を持つが、
彼女は小食だし、何よりハシバミ草を苦手としている。彼女曰く。
「あんなに苦いのは薬だけで十分です」
だそうだ。因みに、ラ・ヴァリエール家ではこのハシバミ草の好みが真っ二つに分かれている。
ハシバミ草を好きだといっているのは公爵とアニエスとエレオノール。
反対に嫌いだと言っているのはカリーヌとカトレア、そしてルイズである。
ひと時は『ハシバミ草論議』なんてものも開かれたぐらいだ。因みに、勝負は付かなかったらしい。
閑話休題。
そんなことで、ルイズはハシバミ草だけは食べることを拒むのだった。
「じゃあ貰う」
「どうぞどうぞ」
「もったいない」
タバサはルイズの皿からハシバミ草のサラダを戴くと、それをすぐに胃の中へと運んでしまった。
ルイズは信じられないという顔をして彼女を見つめていたが、すぐに食事に戻る。
「相変わらずね、あんたたちも」
「あ、モンモランシー。おはよう」
「おはよう、ルイズ」
と、そんな三人の下へ、ルイズの巻髪の友達、『香水』のモンモランシーがやってきた。
モンモランシーは最近出来たルイズの友達である。その切欠はふとしたことで、ルイズが彼女の香水ビンを拾ったことから始まった。
ビンを渡しに部屋を訪れたルイズを、モンモランシーは始め、腫れ物を見るような目で彼女を迎えたが、
ルイズが香水に興味を持ち始め、あまりにモンモランシーを褒め称えたために、気を良くして、彼女のための香水を一つ作ったのだ。
だがそれだけでは終わらなかった。そもそも魅惑の妖精亭で働いていたルイズは、妖精達が使っているものをよく嗅いでいたから、『男を喜ばせる』香水の匂いをよくわかっていた。
男子学生であるギーシュと恋仲であるモンモランシーにそのアドバイスをすると、彼女は試しにそのアドバイス通りに香水を作ってみる。
するとどうだろう。ギーシュは何時も以上に魅惑的だね、素晴らしいよ、さすがは僕の『香水』にモンモランシーだ! と褒めてくれたのだ。
これで更に気をよくしたモンモランシーはさらにルイズと仲良くし、香水作りを手伝ってもらったりしているのだ。
その代わりとして、彼女に自作の秘薬や香水をプレゼントしている。
そうしているうちに、モンモランシーはルイズの事を、魔法に関しては『ゼロ』だが、決して無能ではないと感じ、彼女への評価を改めている。
それに対し、モンモランシーの事はトリステインの貴族にありがちな高慢な性格だが、悪い子ではない。
どちらかといえばエレオノールと同じタイプだと、ルイズは考えていた。
そんなモンモランシーは、少し恥ずかしげに顔を赤らめながら言った。
「まずは使い魔召喚、というより魔法成功おめでとう」
「おー、ありがとう」
ルイズはお礼を言う。が、すぐにモンモランシーは厳しい表情になった。
「でも、相変わらずあんたは『ゼロ』なんだから、調子に乗らないでよ?」
「おおう、厳しいわね」
と、苦笑はするもののルイズには分かっていた。視線をそらすモンモランシーは素直じゃないが、
ちゃんと心の中では祝福してくれているのだ。
「しかし、平民を呼ぶなんてルイズらしいっていうか」
「ふふん、これがただの平民じゃないのよ」
「どういうこと?」
「ふふん、内緒!」
「ちょ、教えなさい! キュルケ!」
「どうしようかしらねぇ。ルイズもこう言ってる事だしねぇ」
「タバサ!」
「秘密」
281:虚無と銃士 ◆2DS2gPknuU
10/05/24 01:01:45 KzZm9ULa
「な、何よ私だけ仲間はずれにして……ふんっ! いいわよ、そこまで言うのなら!」
三人に意地悪され、モンモランシーは軽く涙目になるが、すぐに強情なふりをして誤魔化した。そんな彼女にルイズは苦笑しながら謝った。
「ごめんごめん。まあ今度ゆっくりと話すからさ」
「……約束よ?」
「うん。あ、そだ。あれは上手くいった?」
「ちょ、ルイズ! こ、こんなところで!」
「あれ?」
と、ルイズの言葉に突然慌てだすモンモランシーに、興味を示したキュルケだったが、ルイズは首を横に振り、そして突然表情を無くすと、声色を変えていった。
「秘密」
「今のタバサの真似?」
「……似てない」
「あれま」
どうやら自信があったようだが、本人からは厳しい評価のようだ。
「ま、まあ上手くいったかって言われたら、いったわね! それだけ、じゃあね!」
そう言い残し、モンモランシーはその場から立ち去っていった。そんな顔を真っ赤な表情を見て、なるほどと呟くキュルケには
もうすでに予想が付いているようだ。
「あの気障男のどこがいいんだかねぇ……」
「本人は気に入ってるんだから、いいんじゃない?」
「悪趣味」
「それはちょっと酷い気がする……」
相変わらず毒舌なタバサに、思わずルイズは突っ込みを入れてしまったのだった。
---------------------------------------------
もう少しのところでさるさん……。
支援ありがとうございました! これからも頑張って書いていきたいと思います。
これからも仲良し三人娘とその仲間たちをよろしくお願いいたします。
出張のため、次回は少し時間が掛かると思います。
PS
エレ姉の系統間違っちゃった。ごめんなさいごめんなアッー!
---------------------------------------------
282:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 01:12:39 4Dlb9t6P
投下乙ですー。
学院内でのルイズの立場は、多少マシになりつつも基本原作準拠に近くなるのか。
まあ、魔法を使えない以上、そうなんだろうけどなぁ。
それでも健やかに育っているルイズはいい子やねぇ。
283:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 01:53:38 GH5dYHee
乙
284:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 02:23:56 guS9418t
投下乙ですー
しかしひでぇ夢だwwwww
285:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 20:31:45 htZT/jpp
正夢で良いぞw
286:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/24 21:36:41 5OYIufqK
乙。
……ひょっとして、決闘イベント無し?
287:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/25 20:26:08 RNzCKbi9
投下乙です。
ルイズパーティにモンモンが加わった!!
まあ、準レギュラーっぽい感じですけど。
魅惑の妖精亭との交流は、まだ続いてるんですかね。
>>268
自分は武器屋ルイズと、上の銃士のルイズの平民ルイズ組ですね。
こういうIFネタでは、原作とのギャップが好きなんで。
健やかに、というよりやたらパワフルに育ってるのが良し。
そこから更に突き抜けちゃったお仕事ルイズも好きだけど。
288:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:38:22 HAKp7AeD
>>268
>>287
さらに別方向の突き抜け方として「ルイズは悪友を呼ぶ」のヲタルイズを推したい。
いや、最近某所の「109回目」見てて思い出したんで。
289:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:41:02 tHtZVBKG
もしもデルフ売ってた武器屋の親父がジャパネットたかたの社長だったら
290:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:50:44 5djY4Tzm
もしもデルフ売ってた武器屋……の近くにあるピエモンの秘薬屋から、某サトミタダシ的な洗脳ソングがエンドレスで流れていたら。
ヒットポイント回復するなら~
291:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 21:55:12 xO6fV6ry
もしもデルフの声も釘宮だったら
292:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 22:59:07 fruRkLJ8
せめてデルフは田中天にしてあげて。多分ギャラ安いから。
293:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/26 23:06:10 JQ7M8T6s
一部の人にはそれご褒美すぎるだろう、デルフが中の人にのっとられそうだがw
294:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 01:04:11 3v225gS7
>>290
洗脳される南条くん役は誰だ?ギーシュあたり?
295:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 22:55:49 vWVvuYMb
もしも才人が人を笑わせるのが趣味だったら
ルイズにボケてみせたり
タバサを笑わせるために毎日いろんなギャグを考えたり
使い魔お披露目ではピン芸を披露したりする
296:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 23:09:06 4XN2OKJq
もしもサイトが人を笑わせないと呼吸障害に陥る病気にかかっていたら
297:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/27 23:53:59 6dbsUoAq
もしサイトがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
298:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 00:29:06 k0Sns5F3
≫296
ゾナハ病乙
早くクロス板に行くんだ
299:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 00:42:26 SoH0ekw+
もし技の名前を大声で叫ぶのが魔法の出し方だったら
魔法のパワーも音量、発音、発声方式、声のキレ具合で決まる
300:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 01:41:59 Sr4vqOMr
大塚芳忠的なのがラスボスクラスの声
301:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 07:21:45 hZnRb3vy
>>300
加齢とともにパワーダウンしていった納屋吾郎さん的声の元ラスボス
302:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 08:25:35 S0AWRJj8
>>299
タバサのキャラが変わりそうだな。
大きな声を出すのが苦手でせいぜいライン止まりのタバサ、
または魔法を使うときだけ性格が変わったようになるタバサ。
303:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 10:13:16 wqGUA6yc
タバサは最初からあの性格じゃないし、魔法に必要ならいくらでも大きい声を出すんじゃないかな。
あの性格になった当初は出せないとしても、必要だから出せるように努力するだろうしさ。
>>298
居酒屋ボンバーに雀荘エルボーですね
304:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 10:58:22 YmLTELw9
むしろどこぞの乙女座の聖闘士のように、普段は殆ど声を出さずに力を蓄積し、
魔法発生時に爆発的な威力を引き出すとか。
305:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 18:32:03 b2VXrx4O
>>299
挿絵が兎塚エイジから富士原昌幸に変わりそうな予感
……本当は石川賢と言いたかったのは内緒
306:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 22:56:44 hWt/8zwL
アレか、ルイズが口をがぼっとあけてそこからエクスプロージョンを放ったりするのか
307:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 22:58:13 AWJ4SdqT
サイト「ザケルッ!」
308:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/28 23:51:45 YSIC0KDp
あれか、優しい貴族になるのか
309:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/29 12:45:13 2ufIYw/2
>>301 納谷さんか 関係ないけど
そろそろ本格的にやばくなってきたからな
>>305
石川賢だったら汚いセリフも出そうだな
こんなゼロ魔・・・悪くないかも
310:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/29 13:40:49 SDrAaOqr
「火石の炎で焼き尽くしてやろうか? 時空の狭間に吹き飛ばしてやろうか!」
「やってみろ! ジョゼフ・ド・ガリア!!」
ピ キ ! !
ゼロの使い魔 完!
ラストはこうなるわけだな?
311:名無しさん@お腹いっぱい。
10/05/30 09:08:25 kM48xGXH
>>310
これがホントの「虚無エンド」ってことか…………
312:虚無と銃士代理
10/05/30 17:08:55 Wdp4i/Nu
「いやぁ、食った食った」
「満足そうね」
さて朝食も済み、ルイズは食堂の入り口でサイトと合流すると、教室へと向かっていった。
キュルケとタバサはすでに先に向かっていった。
「あんなに上手い飯は初めてだよ」
「マルトーさんはトリステインでも随一の料理職人だからね。あれは一度食べたら、暫くは他のものを食べられなくなるわよ」
「はは、だろうなー。それにあの人達、俺が腹減っているのを見て、すぐにご飯用意してくれたんだぜ。
大丈夫か、しっかりしろ! 貴族に苛められたのか! ほら、これでも食って元気でも出しな!って良い人過ぎるだろ」
「あー……。どうだろう、同情されたとか?」
「……それは切ないな」
サイトは厨房に辿り着いた時の事を思い出す。確かにあの時、腹が減りすぎたせいで酷い
顔をしていたかもしれない。そして自分を見る目は同情のそれだった気もしなくはない。そう思うと少し複雑な気分だった。
「さて、ここが教室よ」
「おぉ」
第15話
313:虚無と銃士代理
10/05/30 17:11:06 Wdp4i/Nu
そうこう歩いているうちにルイズとサイトは教室へと辿り着いていた。階段状に机と椅子が並べられ、一番下で教師が講義を行うような形である。
サイトはその光景に少し驚いた様子だった。
「こういうのは初めて?」
「いや、やっぱり学校の作りは似てるんだなぁって」
二人は中へと入り、ルイズの席へと向かう。
「へぇ……サイト、学校通ってるんだ。サイトの学校もこういう感じ?」
「大学っていう学校がこんな感じかな。もっと専門的な知識とか学びたい人が行く学校。俺はその下の学校に通ってるんだ」
「そうなんだ。サイトの世界にもそういうのあるのね」
「まあなぁ。俺も親から通え通えって言われてさぁ……」
「あはは、私と一緒ね!」
サイトの話に自分を思い浮かべて、思わずルイズは笑った。学院に行けとカリーヌに言われた時、ルイズは大層反発した。
私は騎士になりたい。母の幼き時のように騎士見習いになりたいと主張したが。
「いまどきの騎士はここ、頭もよくないとダメなのよ」
と、エレオノールに言われて。結局跳ね除けられて、ここへと通わされている。
今となっては良い思い出となっているが。とはいえ、今でも騎士になる夢は諦めていない。
とそんな会話をしている彼女たちに、何処からともなく、くすくすと馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。
明らかに馬鹿にしているその笑い声にサイトはむっと表情を顰めるが、ルイズがそれを制止した。
「……」
「あ、気にしなくて良いわよ。堂々としていましょう、堂々と」
「おう」
ルイズは胸を張って教室を進んでいく。サイトもその後を堂々と歩いていった。何の可笑しいことなどないのだ。
笑いたければ笑えば良いじゃないか。私たちは何も悪い事はしていない。
「はぁい、ルイズ。こっちよ。サイトもここ座りなさいな」
「お、キュルケさん、タバサさん」
「キュルケでいいわよ」
「私もタバサでいい」
と、二人を呼ぶ声が下のほうから聞こえてきた。どうやら先に教室へと来ていたキュルケのようだ。
その隣にはタバサが静かに本を読んでいる。キュルケは今まで話していた男たちをどけると、二人の席を作ってあげた。
二人は、その男たちに恨めしそうに見られるも、気にする様子もなく、キュルケが用意した席に腰を下ろした。
席に座ったサイトは落ち着かない様子で辺りを見回している。どうやら他の生徒の使い魔が気になるようだ。
「怖い? でも大丈夫、何にもしないから」
「そ、そうか。あの俺を睨んでる目玉は?」
「バグベアーね」
「そうか、あれがバックベアード様か……! ろ、ロリコンちゃうわ!」
「?」
「い、いやなんでもない。あの蛸人間は?」
「スキュアね」
「へぇ……。あれ、そういやタバサの使い魔は? あのでっかい竜」
「外。入れないから」
「はは、そりゃそうか」
当然といえば当然な事にサイトは軽く笑った。と、下側の教室の扉が開かれ、そこから中年の、ハットをかぶった女性教師が入ってきた。
ふくよかな頬がいかにも人の良さそうな雰囲気を出している。
314:虚無と銃士代理
10/05/30 17:12:06 Wdp4i/Nu
「いかにもっていうおばさんだな。あの人も魔法使い、いやメイジなのか?」
「当然」
ルイズは小さな声で答える。そろそろ授業を受ける姿勢にしなければ。
女性は教室を見回し、その様子を伺う。そして、満足したような優しい笑みを浮かべて言った。
「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔を見られるのがとても楽しみなのですよ」
「ミセス・シュヴルーズ! 一人平民を攫ってきた奴がいます! ゼロのルイ……」
一人のぽっちゃりとした生徒が手を挙げて、態々立ち上がってルイズを指差し、からかおうとしたが、
ルイズはまるで怒り狂ったドラゴンのような目つきでその生徒を睨みつけた。
ルイズは平民で育った時から自由奔放で、ムキになる事はあるが怒る事はあまりなく、お転婆ではあるが割と穏やかな性格だ。
しかし、学院に入ってからは、馬鹿にされまいと少し強気な性格に変わっていた。
寧ろ、こちらのほうが彼女の本来の性格なのだろう。睨みつけるルイズの威圧は、カリーヌから受け継がれたものと言って良い。
そんな目で睨みつけられた生徒はみるみるうちに顔を真っ青にし、身震いしながら席に座りなおした。
「ミスタ・グランドプレ。お友達を『ゼロ』など『人攫い』などと呼ぶものではありません。
彼女の事情はすでにコルベール先生より聞かせていただきました。
それにミス・ヴァリエール。貴方は公爵家の淑女なのですから、そのように怖い顔をしてはいけませんよ」
「は、はい、申し訳ございません」
「はぁい」
「さて、では授業を開始しましょう」
少し不満げだが、二人の返事にとりあえず満足したシュヴルーズは自分の杖をくるりと振る。
すると、いくつものこぶし大の石が机の上に転がった。どうやら彼女の系統は「土」のようだ。ルイズの姉、カトレアと同じである。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズ。これより一年間、皆さんに『土』の系統の魔法について講義させていただきます。
では、まず一年生の時の復習として、ミス・ヴァリエール?」
「ふ、ふぁい!」
突然当てられ、ルイズは緊張したように背筋を伸ばす。彼女は座学は苦手なのだ。
ともかく、動くことが好きな彼女は、魔法以外の身体を動かす授業ではトップクラスであるが、座学に関しては赤点ギリギリなのである。
いつもはキュルケかタバサかロングビルのところに泣き付き、一夜漬けで何とかしてしまう。全く、彼女らしい。
頭の回転は悪くはないので、そういうやり方で済んでしまうのだ。
もっと勉強すれば、座学トップも夢じゃないとロングビルに言われたことがあるが、彼女には勉強する気などさらさらないのである。
「魔法の四系統、答えられますね?」
「は、はい! えっと、土、火、水、風です。あ、あと一応虚無も!」
「はい大正解。四系統だけではなく、失われた魔法、虚無もしっかり含めましたね。よく勉強できていますね」
シュヴルーズは頷きながら、ルイズを軽く褒めた。ルイズは小恥ずかしそうに頭を掻く。
その周りでは、面白くなさそうに生徒たちが顔を顰めていた。
「虚無を含めては魔法は五系統に分かれますが、『土』系統はその中でも重要な役割を担っていると私は思っております。
勿論これは私が土の系統だからというわけではありません。土の魔法は万物の組成を司る重要なもの。
この魔法がなければ、貴重な宝石を作ることも、石から家を建てることも、農作物を収穫するのにも手間が掛かるでしょう。
このように、皆さんの密接に関係しているのです」
実際には、土だけじゃないけどね、とルイズは姉エレオノールの言葉を思い出す。
彼女の得意な系統は「水」であるので、そのことについて熱く講義されたこともある。自分の得意な系統は誇りたくなる。
つまりは、そういうことだ。
講義の最中、ルイズはちらりとサイトを見る。うんうん、なるほど、と頷いていた。どうやら魔法に興味を示しだしたようだ。
「では、今日は皆さんにこの土系統の魔法の初歩、『錬金』の魔法を覚えていただきましょう。ではまず、私めが見本をお見せします」
そう言ってシュヴルーズが杖をくるりと回し、詠唱を始める。そして短いルーンを口ずさむと、石に向かって杖を翳した。
すると、ただの石が光り始め、そしてその光が収まると、石は黄金の輝きを見せていた。
315:虚無と銃士代理
10/05/30 17:13:14 Wdp4i/Nu
「ご、ゴールドですか!? ミセス・シュヴルーズ!」
その輝きを見て、キュルケが我を失ったように立ち上がった。
だがそんな彼女の期待に裏切るように、シュヴルーズは申し訳なさそうに頭を振った。
「いいえ、ミス・ツェルプストー。これはゴールドではなく、真鍮です。ゴールドはスクウェアクラスでなければ錬成することはできません。
私は、トライアングルですから……」
「なぁんだ……」
がっかりするように椅子に座るキュルケの隣で、サイトはルイズに尋ねた。
「トライアングルって?」
「うーん……。なんて説明すれば良いんだろ? 結構定義曖昧なのよね。使える系統の数とか、合わせられる系統の数とか。
……ああもう、タバサ、解説代わって」
ルイズは説明に困り、隣に居たタバサに説明を代わってもらおうとするが、彼女は本を読んだまま拒否した。
「授業中」
「ちぇ。そう言って、いっつも本読んでるのに」
「こら、ミス・ヴァリエール!」
と、小さな声で雑談をしていた3人だったが、ルイズの動きが大きかったため、彼女だけシュヴルーズに見つかってしまった。
ルイズはまた背筋を伸ばして、愛想笑いをした。
「私語は慎みなさい」
「ご、ごめんなさい……」
「ははっ、怒られてら」
「サイト!」
「こら! ……ふむ。では、丁度良いので、実践をミス・ヴァリエールにお願いいたしましょう」
「あちゃあ……」
シュヴルーズがルイズを指名した瞬間、辺りがざわめく。隣に居たキュルケも頭を抱えてしまった。
わけが分かっていないのはサイトと使い魔達だけだった。ルイズは慌ててシュヴルーズに懇願した。
「シュヴルーズ先生! 私、その……ま、魔法上手く使えないので、できれば別の人にして欲しいかなぁ、なんて」
「そうですとも! ヴァリエールに魔法を使わせると危険です!」
「先生は去年僕たちのクラスを担当をしているから知らないんです!」
思わぬ援護、いや罵倒にルイズは半分ほっとしつつもむっと顔を顰める。
が、これがいけなかった。対抗心を燃やしていると勘違いしたシュヴルーズはルイズを援護するために生徒を叱咤した。
「お黙りなさい! ミス・ヴァリエール、失敗を恐れてはなりません。さあ前に出て。『召喚』が出来た貴女なら、きっとできますよ」
「う、うう……」
「ルイズ、仕方ないわ。骨は拾ってあげる」
「死なないっつの!」
言葉とは裏腹に、そそくさと机の下に隠れるキュルケに対しルイズはやけくそ気味に叫んだ。
そして彼女を皮切りにどんどん生徒たちはキュルケと同じように机の下へと避難していった。
そんな彼らを尻目に、ルイズは教卓へと向かっていく。あそこまで言われては後には引けない。
「ったく、なんでゼロのルイズなんだ!」
「皆避難しろ!」
「ゼロはゼロらしく大人しくしろってんだ!」
「全く、はた迷惑な奴ね」
「さあ、おいで、ラッキー。あんな奴の魔法を浴びたら、どんな悪影響が出るかわからないからね」
横を通り過ぎる度に浴びせられる罵声に、ルイズの眉間の皺が寄る。その様子を背中から
感じ取って、キュルケは乾いた笑みを浮かべた。
316:虚無と銃士代理
10/05/30 17:14:13 Wdp4i/Nu
「あぁ、今日は一段と爆発が強そうね……あはは」
「え、何々?」
「いいから貴方も中に入りなさいな」
「とても危険」
「へっ?」
サイトも言われるがままに机にもぐりこもうとする。そのとき、振り向いたルイズの表情を見た。
彼女の表情は何処か暗くて、そして不安そうだったが、サイトを見た瞬間、大丈夫だと言わんばかりに笑顔を見せた。
そしてルイズは教卓の前に立った。シュヴルーズは不安そうな彼女の緊張を、実際には違うのだが、ほぐそうと優しい笑みを浮かべる。
それがまたルイズにとっては辛い。
「錬金で何を大げさな……。さあさミス・ヴァリエール。錬成したい金属を心の中で思い描き、杖に込めるのです」
「はい。……あの」
「はい?」
「離れてたほうが良いですよ。危険ですので。お願いしますから離れてください」
「はぁ……。そこまで言われるのでしたら」
シュヴルーズはわけがわからない、と言った表情を浮かべたが、あまりにルイズが真剣な眼差しでぐいぐいと押しながら離れろと言うので、
言うとおりに一歩二歩と気持ち程度に離れた。ルイズはその様子にはぁ、とため息をつくと、どうなってもしりませんよ、と心の中で呟きながら、
目の前の石に見つめた。そしてぶつぶつと辺りに聞こえない小さな声で呟く。
「皆して馬鹿にして」
瞳には恨みを、いや負けん気を込めて。あんなに馬鹿にされて、苛立ちを覚えない人間などいない。
「私は細剣(レイピア)のルイズだっての」
自称だが。レイピアの扱いなら誰にも負けない。
一度起こした決闘騒ぎだって、メイジをレイピアで叩き伏せたこともある。……しこたま怒られたが。
それでもレイピアの扱いには、王国の騎士にだって負けない自信がある。未だに母や姉には一撃も与えた事はないが。
だってあの母の娘、あの姉の妹だもの。片方は血が繋がってないが。
「……シュヴルーズ先生も空気読まないし」
シュヴルーズには罪はないはずだが、無知とは罪である。使い方が間違っているが。
「いいわよ、そこまで言うなら、私の魔法、改めて見せてあげる。これも『復習』だわ」
その言葉と共に、極悪な笑みを浮かべた。まるで物語で出てくるような、悪事を考えている大盗賊のようだ。
そしてルイズは思い浮かべる。金だ、スクウェアでしか作れない金を作ろう。
そして、金を精一杯思い浮かべ、そして石を放り投げ、短いルーンを詠唱し、そして杖を向けた。
「あぁあ、爺の相手も疲れるわ」
ロングビルは晴天の下で背筋を伸ばしていた。
今日も今日とて、年老いた学院長の、使い魔を使ったセクハラから逃れ、突然血走った様子で現れたコルベールのお陰で休憩をすることができた。
こういうときは、普段の猫かぶりもせず、地を出していた。
爺の相手も疲れる、か。だがこの場所での仕事も満更ではないと思えてきた。ある目的のためにこの場所に来たのだが、その目的も忘れてしまいそうになる。
これも魔法が使えないはずなのに、明るさを忘れないあの娘のせいだ。
しかし、そうも行かない。ロングビルは普段の優しい表情からは見せない鋭い眼光を本塔に向けた。
そのときだった。ルイズが講義を受けている教室から、大爆発が起こった。
始めは何事かと驚いたロングビルだったが、慌てふためく生徒たちの声や罵声のおかげで原因が分かり、鋭い眼光も緩くして苦笑した。
「やれやれ、またかい。今日は一段と盛大だわ」
317:虚無と銃士代理
10/05/30 17:15:22 Wdp4i/Nu
呆れながらもくつくつと笑うロングビル。さて、今日はどういう風に発破を掛けてやろうか。
そう思っていると、少し離れた場所にメイドが腰を抜かしていたのを見つけた。しかし、ここいらでは見慣れない格好である。
学院が支給しているエプロンドレスとはまた違ったデザインだった。しかし、どこかで見覚えはある。
ああ、そうか。あれは去年の冬の休暇の最中、無理やりラ・ヴァリエール家に連れてこられた時の。
そう思い出し、ロングビルは猫かぶりをすると、そのメイドの娘の下に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「は、はいぃ。ご親切にありがとうございます」
「貴方は、シエスタさん?」
「あ、あれ!? ろ、ロングビルさん!」
どうやらビンゴだったらしい。しかもルイズと仲が良い、ドジなメイドのシエスタだった。一度見たら忘れられない、綺麗な黒髪だ。
彼女ともラ・ヴァリエールの実家に行った時に出会っていた。だが何故このような場所に? ロングビルは彼女に手を貸しながら尋ねた。
「何故ここに?」
「ルイズの、あ、いえ、お嬢様の様子を探ってこいと言われまして……」
なるほど、心配性の両親らしい。ロングビルは発破を掛けるなら彼女に任せようと思い、ルイズの居場所を教えた。
「ミス・ヴァリエールはあそこよ」
「ひぇ、やっぱり! る、ルイズぅ!」
「……やれやれ」
すると慌てん坊のメイドはパタパタと、敬語を忘れて大事な主人、いや友人の下へと走っていった。
その後姿を見ながら、ロングビルも猫かぶりを忘れてくつくつと意地悪に笑っていた。
ああ、そういえば、あの子の使い魔も一緒に居るんじゃなかったか。こりゃ面白くなった
と、ロングビルも仕事を忘れて、ゆっくりとシエスタの後を追った。
「いやぁ、申し訳ない……」
「魔法成功しないって、こういうことか」
手を立てて、めちゃくちゃになった教室を掃除するサイトに謝罪するルイズ。サイトは呆れながら、昨晩の事を思い出していた。
「そう。私の魔法は全部爆発するの。最近は、場所はコントロールできるようになったけれど、威力まではね」
「しっかしありゃすごかったなぁ……」
あの後はまさしく阿鼻叫喚だった。机は吹き飛び、使い魔達は暴れ周り、涼しい顔をしているルイズには罵声がとんだ。
一瞬防御が遅れたシュヴルーズは煤だらけになって気絶し、医務室へと運ばれていった。
サイトはその様子を、隠れた机の下で呆然と見つめていた。そんな中、他の教師が現れ、ルイズとサイトには教室の修繕が言い任されたのだった。
しかし、とうのルイズは本当に清清しい顔である。なんというか、やり遂げた顔だった。
「実技になるとねぇ、毎回こうなのよ」
「はぁ。しっかし、ルイズ。お前良く進級できたな……。勉強、苦手そうだったしさ」
「ふふん、一夜漬けと一瞬の集中力、そして運動には自信があるわ!」
「なんという体育会系……脳筋だな」
「ノウキン?」
「いや、なんでもねぇ」
エッヘンと無い胸を張るルイズに呆れてものが言えないサイトだったが、ふとルイズの鼻頭に煤がついているのを気が付き、立ち上がった。
「煤ついてんぞー」
「おう、ありがとー」
「ルイズゥゥ! はっ!?」
318:虚無と銃士代理
10/05/30 17:16:21 Wdp4i/Nu
そんな時だった。ドタバタと走ってきたシエスタがタイミング部屋の中へと入ってきた。
シエスタが見た光景。それは、まるでサイトがルイズに口付けをしようとしているような、
そんな光景。ルイズがまた恥ずかしそうに顔を赤らめて眼を瞑っていたから、また状況は悪い。
そしてそこからのシエスタの行動は早かった。とにかく早かった。何時ものドジっぷりは何処へ消えたのかと言うぐらいだ。
「ルイズのファースト・キスは私が守る!!」
「ぐべらぁ!?」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「いってぇえ……まだくらくらする……」
呪詛のように土下座して誤るシエスタの側で、サイトは地面に座り込みながら頭を抑えていた。
彼の傍には机の折れ端が落ちているから、これで殴られたのだろう。彼の頭にはたんこぶが出来ていた。
「全く、シエスタはあわてんぼうなんだから……」
「ごめんなさい……。わたしったら、早とちりして、罪も無い人を殴り倒してしまうなんて……」
「死ぬかと思った……」
「ごめんなさい……」
シュン、と落ち込むシエスタに思わずサイトも哀れに感じたのだろう、慌てて彼女を励ました。
「い、いやいいって。俺だって誤解されるようなこと、してたようなしてなかったような……」
「いやいやいや、してたでしょ。私が言うのもなんだけど」
「お、おい! そこはフォローしろよ、頼むから!」
「やっぱり、ルイズに……!」
悪乗りするルイズに、サイトは慌てて詰め寄るが、シエスタは再び勘違いからの怒りの炎を滾らせようとする。
サイトは恨めしげにルイズを見つめながら尋ねた。
「ご主人様!? この可愛らしくてご主人様を呼び捨てなメイドさんはどなたですかね!? いやぁ気になるな、俺は気になるぞぉ! うん!」
「ああ、この子? 私の幼馴染で、実家のメイドをしているシエスタっていうの。ちょっとした事情でね、まあ言わば私の親友ってとこ。
ね、シエスタ」
「むむむ……ってへっ!? あ、はい。……始めまして、ルイズの、もといルイズお嬢様のご実家であられます
ラ・ヴァリエール家にて使用人を勤めさせて頂いております、シエスタと申します」
「堅いなぁ、シエスタは」
「だ、だって見ず知らずの人ですし……」
と、残念そうにサイトを見つめながらルイズが紹介すると、シエスタはまるでスイッチが入ったように有耶無耶しく、
スカートの裾をつまみながら一礼し、サイトに自己紹介をした。
その姿はやはり上級貴族で教育を受けているだけはあるようだ。サイトはその可憐さに思わずでれそうになりながらも、自己紹介を返した。
「あー、俺はルイズの使い魔をやってる平賀才人。サイトって呼んでくれ」
「サイトさん、変わったお名前ですね。それに、使い魔。なるほど使い魔をやっておられるのですか。どおりでルイズお嬢様と一緒に。……使い魔?」
納得しかけたシエスタだったが、不意に、行く時にメイド長から渡された『平民でも分かる初歩的な魔法入門(エレオノール著)』の使い魔召喚の内容を思い出す。
使い魔召喚……それは、お互いの口付けで締めくくられる、なんというか、所謂結婚式のようなもの。
それが動物などであればまだいいかもしれない。
さらに正史の通り、ルイズとシエスタの関係がただの仕える平民と従える貴族であればまた別だったかもしれない。
だが、今の彼女はルイズの『無二の親友』である。
「ととととということは、やっぱりルイズのふぁふぁふぁふぁファーストキス奪ったんですか!? 奪ったんですね!?」
「うおっ!? ちょ、シエスタさん!? ぐぇ……」
「ちょ、シエスタぁ!? やめて!」
「許せない……! 貴方を殺して私も死にます! ごめんなさい、ルイズ、先立つ不幸を許して……!」
「ぐぇ……ぐ、ぐるじい……あ、でも胸が、あががが! あれぇ、おじいちゃん? じんだばずじゃ」
319:虚無と銃士代理
10/05/30 17:17:46 Wdp4i/Nu
「サイト、その先へ行ってはダメ! シエスタもやめてってば!」
「"土弾"!」
「きゃう!?」
と、ルイズが必死に引っぺがそうとしていたシエスタの頭にこぶし大の石がぶつかった。
勢いも大きさもそんなになかったため、頭を回して倒れるだけですんだが、その場を鎮めるのに十分だった。
何事かとルイズが石が飛んできた方向を見ると、そこには教室の入り口から、顔をのぞかせるロングビルとキュルケ、そしてタバサの姿があった。
「はぁい、ルイズ」
「もうすぐ昼食」
「全く、なにやってるですか全く」
三人とも呆れているようだ。ロングビルとキュルケは同じような苦笑を浮かべ、タバサも何処か微笑んでいるようだった。
「あ、うん! サイト大丈夫? シエスタも」
「げほっ、げほっ、まあ何とか」
「はれふれはれ……はっ!? ル、ルイズ私……」
「シエスタ、彼は何にも悪くない。ファーストキスも……の、ノーカンなんだから!」
「のーかん?」
「そう、ノーカン!」
「そ、そうよね! ノーカンよね! うん、私ったら、勘違いしちゃって、恥ずかしい……。
粗相起こしてしまって、申し訳ございません、サイトさん」
「へ? あ、いやその……あは、あはは! あはは……はぁ」
とりあえずは上手く収まったが、なんとも言い換えがたい虚しさが漂い、サイトは思わず項垂れてしまった。
「……強く生きなさい、少年。つらくなったら、何時でも私のところ、来て良いわよ?」
「うん、ありがとう……キュルケは優しいなぁ」
何となく打ちのめされ、キュルケに抱き寄せられるサイトは少し涙目だった。
「こらぁ! 人の相棒に色目使うな、キュルケ!」
「おほほ、これは失礼」
と、そんなキュルケにルイズは食って掛かる。キュルケは悪戯っぽい笑みを浮かべてサイトを放した。そのときのサイトの動作も、何となく力がないようだ。
そんな彼を見て、ロングビルは素の状態を少し曝け出したような笑みを浮かべながら、サイトに言った。
「しっかし情けないですわねぇ。メイド如きに気絶させられたり、首絞められたり」
「ぐっ……お、女の子にはなぁ、手を挙げない主義なんだよ!」
「したって、ねぇ」
「いやいや、シエスタ十分強いし。サイトはこっちに来たばかりだから、仕方ないよ。ね?」
「……」
「あー……うん。とにかくご飯食べに行こう? ね? シエスタの案内、お願いして良い?」
「……おう」
慰めのつもりが全く慰めになっていない。そんな切ない昼時だった。
「先ほどは本当に失礼しました。あんなに取り乱してしまって、その恥ずかしいです」
「いやいいって、気にするなよ」
さて、ルイズ達と別れて。サイトは先ほどの暴走特急メイド、シエスタを連れて、厨房へと向かっていた。
彼女は先ほどの事を恥じてか、顔を真っ赤にしながら、申し訳なさそうに俯いていた。
酷い目にあったとはいえ、可愛らしい少女にそんな態度をとられては才人だって黙っているしかない。悲しい男の性、というやつだ。
320:虚無と銃士代理
10/05/30 17:20:04 Wdp4i/Nu
「私って昔からあわてんぼうで……あとすぐ周りが見えなくなってしまうんです。屋敷でもよく叱られました。
それが、ああ……。見ず知らず、それもルイズの使い魔さんにまで迷惑を掛けるなんて」
「いやまあ……うん。それよりもさ、シエスタはここのメイドさんじゃないんだろ?どうしてここに?」
「ああ、それはですね。今日からここで一年ほどルイズの監視を兼ねて働くことになっているんです。
転勤の手続きも済ませましたし、これから一年よろしくお願いいたしますね」
「そっかーここで働くのかー」
まずい! このメイドのことだ、ルイズと同じ部屋で寝ているなんて知られたら。
ルイズの貞操は私が守る! → nice boatなんて事になりかねない。
才人は見る見るうちに顔が真っ青になっていくが、そんな彼の心情など露知らないシエスタは心配そうに、サイトの顔を覗き込んできた。
「あの、やはり何処か痛みますか?」
「いいいやなんでもないさ! 元気元気!」
「そ、そうですか。ならいいのですが……」
「はは、ははは……はぁ。ほら、着いたよ」
ああ、これからはこの娘の尻に敷かれるんだなぁ、と切ない気持ちになりながらも、シエスタを伴って厨房の中へと入っていく。
そこでは忙しそうにコックやメイド達が忙しそうに料理を作っていた。才人はシエスタを厨房の片隅にある机に座らせた。
「おっし、ここで待っててくれ」
「はい」
才人は厨房の奥に向かっていく。そして奥で料理をしていた豪快そうな中年の男のコックに話しかけた。
「マルトーさん!」
彼こそがここのコック長を勤めているマルトーだった。マルトーは手元の包丁捌きをそのままに、
才人のほうを見る。その手つきは慣れたもので、手元を見なくても正確に食材を切れている。
それだけでマルトーの腕がどれだけのものかを教えてくれた。
「おおっ、サイトじゃねぇか。遅かったじゃねぇか!」
「いや、すんません。ルイズのやつがちょっと……」
「はっはっは! またなんかやらかしたのか。しゃあねぇな、あの嬢ちゃんは」
「それで、今日はルイズの実家のメイドが来たみたいなんですよ」
「おお? おお、確かシエスタ、っていう子じゃねぇか? 聞いてるぜ」
なるほど、やはり話は通っているようだ。
「こんなところに転勤たぁ大変だなぁ。いけすかねぇ貴族のガキ共相手にしなきゃいけねぇし。まあ、新人同士仲良くしてやれよ」
「はい、わかってます」
「よっし、そこのシチューを持って一緒に食べて来い。そしたら、デザートの配給な」
「わかりました!」
明るく気さくで、そして豪快だ。少し度が過ぎることもあるが、サイトにとって嫌な人ではない。寧ろ好意的に思える。それに見ず知らずの自分に優しくしてくれているのだ。
才人はシエスタと自分の分のシチューをそれぞれ更に盛ると、それを持って彼女の許へと戻った。
するとシエスタが慌しい厨房の中をそわそわしたような様子で眺めていた。才人はそんな彼女に声を掛ける。
「シエスタの事、知ってたみたいだぜ」
「ああ、一応連絡は伝わっていたんですね。よかった」
「それで、この賄いを食べたら早速、デザートの配膳手伝ってくれだってさ」
「わかりました! では、いただきます」
「おう、いただきます」
才人とシエスタは同時に手を合わせて、同じ言葉を呟いてシチューを食べ始めた。
それが、どれだけこの異世界の住民同士、異常なことか、才人はわかっていなかった。
シエスタもシエスタでご飯をさっさと食べることに専念していて、よく聞き取れなかった。
321:虚無と銃士代理
10/05/30 17:20:55 Wdp4i/Nu
「おいしい! 賄い食でも手を抜かず、一流の味を出す……。マルトーさんは噂どおりの人ですね!」
「そうなのか? ルイズの実家、ええっとなんていうんだっけ?」
「ラ・ヴァリエール公爵家ですか?」
「そうそう、それ! そこでは美味しい飯が出なかったの?」
「まさか! だけど、わがラ・ヴァリエール家のコック長も、マルトーさんの料理に一度だけでも勝ちたいと仰っていた位ですから」
「なるほどなー……」
とすると、マルトーは相当の職人らしい。
才人の中では、一流シェフが、お坊ちゃまやお嬢様が通う高校で働いているようなものかと思った。そりゃ貴族も嫌いになるだろう。
はっきり言って、自分とそう歳が変わらない人間が料理の良し悪しとか、そういうのがはっきりとわかるかと言われれば絶対にNOである。
「ほら、サイトさん手が止まってますよ!」
と、シエスタの皿を見ると、もうすでに彼女の更にシチューは一滴も残されていなかった。才人は一瞬呆然として、慌ててシチューをかき込み始めた。
「あ、あれ? わ、悪い! ハムッ! ハグッ! ハムッ! ムグっ!」
「? あ、水ですね?」
「ムグ、ムグ……プハッ。お、お待たせ」
「ふふっ、サイトさんも慌てん坊さんですね、ふふっ、可愛い」
そんな才人の様子を見て、シエスタはラ・ヴァリエール家のメイドではなく、故郷の村娘らしい、明るい笑みを浮かべていたのだった。
そんな彼女に可愛いと言われて複雑な気分になるものの、満更ではない才人だった。
大きな銀のトレイにデザートが並べられている。それを才人が運び、シエスタがハサミで摘まんで皿に乗せていく。
変わった格好の給士に見ないエプロンドレスのメイドに怪訝そうに見る生徒もいたが、
しがない平民の事など気にしない彼らはすぐに興味を無くし、それぞれの会話に戻る。
「おいっすー」
「あ、サイト。何々、デザートの配給やってんの?」
「そうだよ。さあ、ルイズは何が良い?」
「えっへっへ、クックーベリーパイ」
と、ルイズの許へやって来て、軽い会話をしてデザートを渡してやる。どうやら好きなデザートにありつけたのか、
わかりやすい笑みを浮かべていた。やっぱりこういう表情も可愛いらしいなぁこんちくしょう! 凛としているルイズもいいけど。
もっと俺を頼ってくれれば最高なのに。などとサイトが考えながらトレイを持って、シエスタの後をついていく。
後ろから「うんまー!」というルイズの叫びが聞こえてきた。どうやらお気に召したようだ。
「おい、ギーシュ! お前今誰と付き合っているんだよ!」
「そうだ、ギーシュ! 恋人は一体誰なんだ?」
そんな彼らの前に、金髪の巻髪(というよりは癖毛か)の、けばけばしいフリルを付けたシャツを着た気障なメイジがいた。
胸ポケットにはバラが刺している。わかりやすい奴だ。彼らの周りには友人らしき生徒が、彼を冷やかしている。
だがそんな彼らに対し、ギーシュと呼ばれた気障なメイジは余裕の様子で唇に人差し指を当てて言った。
「付き合う? 僕にそのような特定の女性はいないよ。薔薇は多くの人々を楽しませるために咲くのだからね!」
ナルシストだ。自分の事をバラに例えてやがる。こいつの父親の名前はナルシスで決まりだな、死んでくれ。
と、さりげなくとんでもないことを思っているサイトは、さっさとケーキを置いて、そこを通り過ぎようとした。
が、そんなギーシュ少年のポケットから一つの小壜が落ちるのを、サイトは気づいた。液体に満たされ、ちょっとした細工が施されている。
落し物は落とし物、幾ら気に食わない相手であろうとも、彼はネコババすることも見逃すこともしない。小壜を指差し、ギーシュに話しかけた。
「おい、ポケットから小壜が落ちたぞ」
しかし、ギーシュは会話に夢中になっているのか、はたまた意図的に無視しているのか。才人の声に一瞥すらせず、友人との会話に集中していた。
このまま立ち止まっているわけにもいかないので、才人は小壜を拾い上げ、テーブルに置いてやった。
322:虚無と銃士代理
10/05/30 18:17:26 Wdp4i/Nu
「落し物だよ、色男君」
するとギーシュは苦々しい表情で才人を見つめると、小壜を彼に押しやった。
「何を言っているんだ君は。これは僕のではないよ」
「いや、お前のポケットから落ちたの見たし」
必死に才人に押し返そうするが、才人は頑として拒否した。何か様子が変だ。そう感じたからである。
すると、彼らを取り巻いていた友人たちの一人が小壜を取り上げ、そしてまじまじと見つめながら言った。
「お、この小壜はもしや『香水』のモンモランシーのものじゃないか?」
「いや、これは違うんだ……」
「おい、モンモランシー! これは君のかい?」
別の生徒が小壜を受け取り、それを掲げて、離れた場所で食事を食べていたモンモランシーに見せ付けた。
モンモランシーは立ち上がり、自信満々に頷いた。
「ええ、そうよ」
「やっぱりそうか!」
「これで決まりだな、ギーシュ!」
「いや、ははは……」
「ギーシュ様……」
と、青くなった顔で乾いた笑みを浮かべるギーシュの許に、茶色のマントを着た少女が近づいてきた。
栗色の髪を持つ可愛らしい少女である。そんな彼女を見た瞬間、ギーシュの顔が更に青くなった。
「や、やあケティ」
無理やり笑顔を作って取り繕うとするギーシュだったが、ケティはぼろぼろと泣き始めた。
「やはりミス・モンモランシと……」
「いやそのだね。誤解だ、ケティ……。僕の心の中には君もしっかり」
「最低です!!」
ケティは手を振り上げ、そしてギーシュの頬を思い切り引っ叩いた。
乾いた音が食堂中に響き渡り、近くに居たサイトも思わず、自分が叩かれたかのように頬を押さえてしまった。
そしてそれだけでは終わらなかった。今度はモンモランシーが彼の許に近づいてきた。
その表情は怒りに狂っているのではなく、まるで水のように清清しい表情なのが逆に怖い。
「ギーシュ? 今のはどういうことかしら?」
「モンモランシー。これは誤解だ。彼女とはただ一緒に、近くの森へ出かけただけで……」
「そう、あの一年生にも手を出してたのね。あんなに私の事、好きだって、愛を叫んでいたくせに」
「う……モンモランシー、そんなに悲しい顔をしないでぐれ。咲き誇る薔薇のような顔を、悲しみでゆがませないでくれ」
抱きしめようとするギーシュの手を振り払い、その代わりにモンモランシーはワインの瓶を掴むと、中身をギーシュの頭上からぶちまけた。
「うそつき!!」
そして捨て台詞を吐くと、怒り狂った表情を浮かべて、ドカドカッと靴音を鳴らしながらその場を去っていった。
ギーシュは暫く呆然としていたが、椅子に座り、ハンカチを取り出すと、それで気障ったらしく顔を拭いた。
「ふっ……。どうやらあのレディたちは薔薇の存在の意味を理解していないようだね……」
うぜぇ。と思わず声を出しそうになった才人だったが、もう相手にしていられないと首を横に振って、
デザート運びを再開しようとした。だが、そんな彼をギーシュは引き止める。
「待ちたまえ。どうしてくれるんだ? 君が壜なんか拾ったせいで、二人のレディの名誉が傷ついてしまった」
「知らん。二股掛けてたお前が悪いんだろ?」
「そうだ、お前が悪い!」