09/06/12 04:44:28 AKDrdBSE
行間 七
あくまで白く、果てまで白い世界。
何処までも高い空も、何処までも広い壌も、ただ白く、影一つ堕ちぬ其処は、窮極であり無限であり。
何処までも。限りなく白い世界は、しかし処女雪の純白ではなく、白日の下の明白でも無い。
空虚な世界で、彼女(ソレ)と彼女(ソレ)は向かい合っていた。
片方が口を開こうとする。しかし、もう片方がソレを制した。
そして、
「アタシたちだけに判る言葉で対話し(はなし)ても、アタシとしては問題無いけれど、それはちょっと不親切じゃない?」
その言葉に、もう片方は冷めた瞳を一瞥した後、瞼を閉じて
「わかった。ならこれで行きましょう」
再び開いた時には、皮肉気な空気は霧散し、柔らかな光を湛えていた。
「で、何の御用かしら? やりすぎだって釘を刺しにきた?」
その言葉に、彼女(ソレ)はふるふると首を振った。
「ううん、『貴女』は此処にたどり着いた暫定的に唯一の存在(ヒト)だから、今のところ此処の占有権は『貴女』にしかないわ」
それに――、
「此処に在(い)る存在(もの)は、例外なくその存在を祝福される。
彼らも『私』も、勿論『貴女たち』も」
言われて彼女(ソレ)は、ふーん。と、つまらなさげに鼻を鳴らした。
「余裕ね」
「別に、そういうのじゃないんだけれど………。
まぁ、そんなコトはいいわね。色々と手を出してるようだけれど、また私が出張らなければいけないかしら?」
んー。と、彼女(ソレ)は視線を明後日の方に逸らした。
「大丈夫じゃない? それなりに上手く行ってるし、あとは流れに任せれば、それなりのところに辿り着くでしょう」
「お兄ちゃんをぐるぐる回してるのもその一環?」
「そうね。もう少し下級侵魔どもと遊んでて欲しかったんだけど、余計な手出しがあったからねぇ」
「そんな人事みたいに」
「人事よ。思いっきり」
「………なにそれ――?」
「なにそれって、アンタさ、アタシ達のことなんだと思ってるのよ」
「何って――」
「待った、言わなくていい、大体解った」
彼女(ソレ)は、はぁ。と、嘆息して、
「まったく『アタシたち』は曲りなりにも技術者よ。基本的には裏方だってのに――」
「えー?」
「何よその顔。納得して無いわね」
「だって……」
「あー、もう。いいわ言わなくて、解るから。
そりゃ、表で色々やったけどね、それはそういう部分だもの、機能が決まっている機械じゃないんだから」