09/06/12 03:37:20 bmss85F0
「あらぁ、ベル。いたの?
あんまりにも魔力が小さすぎるから、気付かなかったわぁ」
「ふん。
それって、たかが人間の異能者風情に、攻撃魔法かき消された奴がいう言葉なの?」
「う、五月蝿い!! 何よアレは!! 反則じゃない!!」
「ソレが幻想殺しよ。予習が足らないわね」
弾かれるように、パールの視線が敵意に溢れる上条の視線と絡み合った。
「………なるほどね。
それにしてもベル。こんな気持ち悪いものと、よくもまぁ一緒に居られるものね」
「アンタほどじゃないわよ。
この世界のプラーナを狙うなんて、悪食にも程があるでしょ?
本来、暴食はあたしの役目。そのあたしですら遠慮したい物をよく口にできるわね」
幾つもの世界の断片が混ざり合ったこの世界。当然、内包されるプラーナもまた多種多様。
世界で一番不味いのは、一切の味が無い食品(モノ)だろうが、あらゆる味覚を同時に刺激するものも、舌には不愉快極まりない。
「ふん。
アンタ如きに、このパールちゃんの偉大な計画なんかわかりっこないわよ」
高慢に、異装の少女は嗤う。
「抜かせ。
高々世界一つ如きで、のぼせ上がるなパール・クール」
『東方王国旗』
立てた場所をパール・クールの領地とし、其の総てをパールの所有物にする魔導具。
しかし、世界一つがどうしたと言うのか、
私は魔王。
それは、世界を喰い尽すものにのみ、許される名だ。
世界が揺らぐ。
ぶつかり合う殺意敵意の波は、音を発てて空間を軋ませる。
裏界のNo.2とNo.3が睨み合う姿は、容易に世界の終わりを連想させた。
「叩きのめしてあげる、ベール・ゼファー。そして私の足を舐めさせてあげようかしら?」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。パール・クール。
でも足を舐める必要は無いわよ。あんたの汚い舌で、汚されちゃ叶わないもの」
同時に放たれた致命的な魔法。
炸裂する殺意の魔力が、開戦の合図だった。