リリカルなのはクロスSSその87at ANICHARA
リリカルなのはクロスSSその87 - 暇つぶし2ch199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 13:43:10 K450rjsj
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200:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 13:53:28 kicim8mz
もう飽きたから荒らしは帰れ。中学生じゃないんだから。

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 14:47:07 O5gGojzW
基地外が沸いてるな。

202:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 15:22:23 U5v0wTEl
>>200
案外中学生だったりしてな

203:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 15:26:00 XShMLJ3f
冬休みだからか

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 15:28:05 dcegc9Z+
冬休み・・・
いい響きだ

底辺リーマンの俺は今日も会社から携帯でカキコだ

205:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 15:36:20 vemL9ZHZ
来年は俺もそうなるのか…

206:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 15:45:00 4BlJM6UF
荒らし対策に関する提案を避難所の運営議論スレにして起きました。
夏も冬も似たようなものですね。

207:一尉
08/12/29 15:53:16 JpSSMn0k
したかしに春も秋にも似ているじゃねえええか。

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 16:14:10 kicim8mz
季節の変わり目とかに出るのかな。

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 16:19:04 NHP6RZX0
>288
変わり目やないやん真っ只中やん
荒らしの為に苦労するのはもう嫌だ

210:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 16:21:11 NHP6RZX0
安価ミスったorz
288じゃなくて>>208だった

211:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 17:27:43 qVlf+LzK
避難所はともかくとしてスルー出来ないのも結構多いんだよなぁこのスレ
荒らしに見事に食らい付いて中学生だのキチガイだの煽り始めてどうするよ

212:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 20:06:27 NHP6RZX0
>>206みたいなことだけしてスルーすりゃ良かった…スマソ

213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/29 20:12:42 NoQ8z079
とりあえず削除依頼だしときな
これは余裕でアク禁レベル

214:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 00:18:12 Ih05YLPv
容量荒らしは2ちゃんのサーバーそのものに被害が出るからな

215:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 01:58:05 czyRUoh9
予約がないようでしたら、クウガクロスの2話を投下しようと思いますが、よろしいでしょうか?
とりあえず、10分後から投下開始と予約しておきます。

216:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 02:04:11 +dOlflnx
支援

217:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:17:04 czyRUoh9
それでは投下開始します

//////////////////
時は未来―2004年。
現在の所持金は僅か240円。
持ち者はバイクとヘルメット、今日の日付の新聞のみ。
これが五代雄介を取り巻く現在の状況である。
そして極めつけは、五代が現在いるこの場所。

―海鳴市

「……ってどこだっけ?」

現在地、不明。
暫くバイクを走らせた五代は、ようやくこの場所の地名を記した看板を見つける事が出来た。
が、しかし。
五代にとって海鳴市などという地名は聞いたこともない。
まず東京ではないのは間違いないとして、何処かに海鳴という名前の街があったかと思考する。
されど、それはやはり冒険家として様々な土地を渡り歩いてきた五代にすら聞き覚えのない地名であった。
しかし五代は、現在の状況をそれほどの危機だとは考えていない。
普通の人からすれば、これこそ最大のピンチなのではとも思えるような状況でも、
五代はいつだって乗り越えてきた。それはやはり冒険家として鍛えられた魂あっての物なのだろう。
そんな五代がまず選んだ道は、なんとかして東京へと戻ること。
そして、自分が住んでいたポレポレへと戻り、再び冒険の準備を整えること。
確かにここが未来―3年後の世界だという事は意外ではあるが、多分自分にはどうしようもない。
それならば、この未来を冒険することが今の自分に出来る最善の行動だと判断したのだ。

「それじゃあ、まずはここが何処なのか……そこから調べないと」

取りあえず、五代は大きな国道を探すことにした。
恐らく国道を道なりに進めば、何処かで大きな高速道路にぶつかるか、
県境を現す標識、もしくは何らかの位置を示す物と巡り合える筈だからだ。
そう考えた五代は、海鳴市の公道の上、バイクを疾走させるのであった。

218:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:19:59 czyRUoh9
 

EPISODE.02 捕獲


同日、次元空間航行艦船アースラ、作戦会議室――05:42 p.m.
時空管理局が保有する巡航L級戦艦。なのは達が時空管理局と出会うきっかけにもなった船である。
ここに現在集合しているのは、艦長であるリンディ・ハラオウンに呼び出された
高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、アルフ、それからクロノ・ハラオウン以下アースラスタッフの一員だ。
それぞれが自分に用意された椅子に腰掛け、リンディが話を始めるのを待機している。
本日、学校はまだ始まったばかりという事で、なのはもフェイトも早めに帰宅することが出来たのであるが、
帰宅してからややあって、休む間もなく再びリンディによって収集されたのである。
ここに八神はやて及びヴォルケンリッターが来ていないのは、恐らくリンディが気を利かせたからなのだろう。
まだ学校が始まったばかりということもあって、色々な準備や、何よりも家族皆で過ごせる時間を尊重させてあげたい、と。
それに何より、今回の任務にそれほどの戦力は必要ないと判断されたのだろう。
といっても、恐らく後からこれをはやてが聞けば、「何で私らだけ呼んでくれへんかったん!?」等と騒ぎ出すのだろうが。
さて、一同が揃ったところで、リンディが軽く咳払いをした。

「えー……学校が始まったばかりなのに、何だか悪いわね?」
「いえ、気にしないでください」
「私達は望んでこうしてる訳ですから」

ばつが悪そうに言うリンディに、フェイトとなのはが揃って微笑む。
リンディはそれに安心しながらも、二人の優しさに少しばかり嬉しくなる。

「それじゃあ、今回の任務を簡単に説明するわね。エイミィ」
「はい、取りあえず……これを見てください」

と、リンディの言葉に応えるように、エイミィがスクリーンに一枚の画像を映し出した。
なのは達はそれを食い入るように見つめるが、映し出された画像はピントが合っていないのかぼやけてよく見えない。
何となく、空に浮かんだ黒い影のように見えはしたが。

「これは、今朝この第97管理外世界で撮影されたものです」
「私達の世界で……?」
「ええ、なのはさんにはこれが何に見えるかしら?」

問われたなのはは、うーんと唸りながら、画像を見つめる。
画像がぼけていて「黒い影」程度にしか見えないのに、何に見えるのかと聞かれても困るに決まっている。
エイミィがスクリーンに映し出された写真をスライドさせ、次の画像に切り替える。
今度の画像もまた、先ほどと余り変わらない黒い影にしか見えないが――

「うーん、ツノがある……?」
「そう。二対の巨大な角を持った、未確認飛行体です」
「今朝ほんの小さな次元震があって……コレがこの世界に紛れ込んだみたいなの」

なのはが答えたのは、何かツノがある黒い影。現状ではそれ以上に言いようがない。
リンディとエイミィは、それをこの世界に今朝紛れ込んだばかりの未確認飛行体と説明する。

219:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:23:05 czyRUoh9
 
「それは、ロストロギアなんですか?」
「……現状では何とも言えませんが、恐らくは」

フェイトの質問に、リンディが答える。
次にスクリーンに映し出されたのは、なのは達が住む国―日本列島の簡単なマップだ。
マップに映し出された赤い線は、中心あたりから始まり、だんだんと東京方面に向かいながら移動している。
現在は、位置で言う所の、神奈川県付近で点滅しているが。

「今朝確認された未確認飛行体は、長野県中央アルプスで確認され、
 ゆっくりと移動を開始しました。この進路からして、恐らく目的地は東京方面だと思われます」
「それで……今はどの辺りを移動してるんですか?」
「30分程前に、遠見市で確認されたのが最も新しい情報です」

エイミィの報告を聞いたフェイトが、その顔色を強張らせる。
遠見市と言えば、ほんの1年前までは自分が仮の住まいとして生活していた場所。
海鳴市の隣町であり、それはつまり自分達の街に接近しているということになる。
いつの間にかなのはも真剣な表情に変わっており、集められた一同もこの作戦の目的を理解し始めていた。

「もう解ってると思うけど……今回の任務は、この未確認飛行体の捕獲です。
 武装局員が海鳴市の一部に結界を張り、アルフさんがそれの補助を担当。
 なのはさんとフェイトさんが未確認飛行体を牽制し、クロノが捕獲する。
 作戦の説明は以上です。 質問は?」

一気に作戦の全容を説明するリンディ。最後に「質問は?」と一言付け加えるが、一同は特に聞き返すことも無かった。
なのはもフェイトもここまでの説明で作戦の内容は理解出来たし、ついでに言うとあまり時間がないという事も理解出来た。
要はもうすぐ海鳴に侵入しつつある未確認飛行体が、海鳴に入った瞬間に結界を展開。それを捕獲しなければならない、という事だ。
作戦自体は非常に単純。これまで数々の事件を解決してきたなのはにとって、この程度の事件なら何の問題もないと思えた。
リンディも一同の表情に安心しながら、言葉を続ける。

「それじゃあ、早速ですけど、もう時間があまりないわ。
 未確認飛行体が海鳴市を出る前に、作戦を開始します!」

リンディの掛け声に、なのは達は大きな声で「はい!」と返事を返した。

220:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:26:17 czyRUoh9
 




海鳴市上空――06:27p.m.
夕方6時ともなると、4月の空は既に薄暗い。もうすぐで日も完全に沈み切るだろう。
そんな夕方の空の下、なのはとフェイトはバリアジャケットに身を包み、各々のデバイスを構えていた。
その表情は緊張に強張っており―といっても、それは当然なのだろう。
相手は戦闘能力も何もかもが謎に包まれた未確認飛行体なのだから。
そんな時、なのはら二人の目の前に空間モニターが展開された。
相手は今回の作戦を共に行うこととなったクロノだ。

「なのは、フェイト……もうすぐ未確認飛行体が作戦エリア内に侵入する。準備はいいか?」
「うん、私はいつでも大丈夫だよ」
「うん……私も、なのはと一緒なら怖いものは無いよ」

なのはがフェイトをちらりと見ると、フェイトは少し照れたように顔を背けた。
そんなフェイトに、「頑張ろうね」と、明るい微笑みを向けるなのは。
フェイトは嬉しそうにうん、と頷くと、力強くバルディッシュを握り締めた。
なのはと一緒の任務で、なのはに頑張ろうねと言われたからには、もう百人力である。

「来たよ、フェイトちゃん!」
「うん……行くよ!」

と、そうこうしている内に、気付けばなのは達の視界に真っ黒の未確認飛行体が入っていた。
速度は恐らく、普通の車と同じくらいか、それ以上。結構な速度である。
上空にいた数名の武装局員が結界魔法を発動し、アルフがそれを強化する形で補助する。
なのはが足もとに桜色の魔法陣を展開し、フェイトが未確認飛行体に向かって飛び出す。

「いいか、なのは。結界はそれほど広範囲に展開できる訳じゃない。出来るだけ迅速に仕留めるんだ」
「りょーかいっ! 私に任せてクロノくん!」

言うが早いか、なのはが構えたレイジングハート本体から三枚の魔力で出来た翼が飛び出した。
同時にレイジングハートの切っ先にも、桜色の魔法陣がいくつか展開される。

「一応聞くけどクロノくん、結界の防御力は完璧なんだよね?」
「あ、ああ……その筈だけど……なのは、まさか……」
「それじゃあ安心! 一撃で仕留めるから、そっちは任せるよ!」
「ちょ、ちょっと待てなのは! 目的は捕獲であって撃墜じゃな―」
「わかってるよ! だから安心してクロノくん!」

クロノの言葉を聞いているのか聞いていないのかは定かではないが、なのははとにかく止まるつもりはないらしい。
「ディバインバスター」のチャージに入ったなのはは、飛び回る未確認飛行体に照準を定める。
逃がすつもりはない。一撃で行動不能に追いやってしまえば、こちらの勝ちだ。
クロノにとってはそれは不安でたまらないのだろうが。

221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 02:28:14 RtSmUW6O
あ~アレか。支援

222:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:31:22 czyRUoh9
 
「なのは、私が牽制して動きを封じるから、その隙を狙って!」
「わかったよフェイトちゃん。フェイトちゃんもすぐに離脱してね!」

なのはの自身に満ち溢れた表情に、フェイトは安心したように微笑み、うん、と一言頷いた。
同時に、フェイトが漆黒のマントを靡かせて、未確認飛行体に突撃する。
ハーケンフォームに変形したバルディッシュは、金色の魔力光を噴出しながら、唸りを上げる。
どうやらフェイトもフェイトで、手加減をするつもりはないらしい。

「はぁぁぁぁぁっ!」

勢いよく、正面からフェイトは未確認飛行体へと斬りかかる。
何処かクワガタ虫にも似た形をしたそれは、前方に突き出た大きな角でバルディッシュの魔力刃を受け止める。
飛び散る火花に、二つが傷付け合う甲高い金属音が響く。
しかしフェイトも怯む事はない。すぐにバルディッシュを未確認の角から引き抜くと、上空に飛び上がった。
未確認はフェイトに構わず前方へと進み続ける。その姿はまさに、羽根を羽ばたかせるクワガタムシの如く。
その刹那、フェイトはクワガタムシの背中に、輝きを放つ緑の宝石が埋め込まれていたのを見逃さなかった。

「そこがコアか……!」

言うが早いか、フェイトはバルディッシュを振り上げて、再びクワガタムシの背中へと並んだ。
この程度の速度なら余裕で追いつける。寧ろ速度に関してはこのクワガタよりもフェイトの方が圧倒的に上だ。
フェイトは、バルディッシュの魔力刃の切っ先を、勢いよくクワガタムシの背中に輝く緑の宝石へと叩きつけた。

「―――ッ!!」
「よし……効いてるっ!」

刹那、緑の宝石は火花を散らし、クワガタムシがふらりとよろめいた。
同時に聞き取る事が不可能な言語を洩らすが、フェイトはそれを気にしない。
どうやら背中への攻撃が弱点らしい。フェイトはよろめいたクワガタムシの背中に、再び魔力刃の一撃を叩き込む。
今度は高度を下げて、クワガタムシはフラフラと下降していく。
と、そうこうしていると、フェイトの頭の中になのはの声が流れ込んでくる。

「フェイトちゃん! ディバインバスター、発射するよ!」
「うん、わかったよなのは!」

見ればなのはのレイジングハートは既に切っ先に桜色の魔力を目一杯に溜めこんでいた。
あれを爆発させて、このクワガタを打ち抜くのだろう。
フェイトはすぐにクワガタから離れ、なのはの元へと飛んで行く。

「ディバイィィィィィィィィィン……――」

同時に、なのはがゆっくりと口を開いた。
対するクワガタムシも、何とか高度を取り戻し、ゆっくりとではあるが元の高さへと戻っていく。
なのはとの距離もだんだん縮まっていくが、問題はない。
なのは的には撃ち落としてしまえば一緒だ。

「バスタァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

そしてなのはは、レイジングハートは溜めこまれた魔力を、一気にクワガタムシ目掛けて解き放った。
それは周囲の者全員にも聞こえるほどの轟音を放ちながら、クワガタを撃ち落とそうと加速していく。
瞬間、漆黒のクワガタムシはなのはが放った桜色の光に飲み込まれた。

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 02:32:47 pyURhEiD
支援

224:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:37:10 czyRUoh9
 




フェイトの目の前で、なのはが砲撃を放っている。
あのクワガタムシは見事になのはのディバインバスターに飲み込まれ――否。
何か様子がおかしい。なのはの表情が、強張ったまま変わらない。
なのははただ真剣な面持ちで、ディバインバスターを照射し続けている。
刹那――

『押し切られます』
「うそ……っ!?」
「そんな……!?」

レイジングハートの警告音が響いたかと思うと、なのはの目の前―
ディバインバスターの魔力照射部から、漆黒のクワガタムシが飛び出してきたのだ。
つまりあのクワガタムシは、ディバインバスターの光の中を、構うこと無く前進していたという事になる。
驚く暇も与えられないままに、なのはとフェイトの二人は咄嗟に左右へと飛びのき、クワガタムシとの激突を避ける。

「そんな……ディバインバスターの直撃で無傷!?」
『ドンマイです、マスター。次、行きましょう』

と、驚くなのはをよそにレイジングハートは第二射の発射を要請する。
だが、そうしている間にクワガタムシは既になのは達を置き去りに遥か後方へと進んでいた。
どうやらあのクワガタムシになのは達を襲うつもりはないようだが―それでも、アレを倒さない事には任務成功とは言えない。
故になのはは諦めない。なのはのプライドが、このまま諦めることを許さないのだ。
再びレイジングハートを構え、カートリッジをロードさせる。

「なのは、今からチャージしてちゃあの未確認飛行体が結界を出るまでに間に合わないぞ!」
「安心して、クロノくん。今度は結界、持たないかもしれないけど……絶対撃墜するから!」
「ちょ……だからそれじゃ困るんだよ!」
「大丈夫だよ、クロノ。今度は私もいるから」

と、クロノは焦って抗議するが、今度はフェイトが答える。こうなったなのはとフェイトはもう止まらない。
なのはに至っては一撃目を防がれた事による悔しさか、今度は心なしか目付きも変わっているように見えた。
次は先ほど以上に魔力を集束させる。相手の防御力が想像以上であるなら、自分はそれ以上の魔力をぶつけるまで。
ただのディバインバスターで無理なら、特別版ディバインバスターEXで。それで無理なら、もっと凄い魔法で。
フェイトもなのはと並んで、足元に黄色の魔法陣を展開させ――魔法のチャージに入る。

「私のプラズマスマッシャーとなのはのディバインバスターで、あの未確認飛行体を撃墜します!」
「いや、だから目的は撃墜じゃなくほか――」
「行くよ、フェイトちゃん!」

最早クロノの言葉に聞く耳など持たない。
二人とも、意地でもあのクワガタムシを撃墜して持ち帰るつもりだ。
そんな事を言っている間にも、二人の眼前にチャージされた黄色と桜色の魔力光は増幅していき――

225:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:41:20 czyRUoh9
 




黒いクワガタムシが、凄まじいパワーで結界を内側から圧迫する。
二対の角が結界の壁にぶち当たるが、それでもクワガタムシは無視して突き進もうとしているのだ。
アルフは結界を保つため、必死で補助魔法を掛け続けるが――
しかし、それももう時間の問題だ。あと少しでこの結界は絶対に崩壊する。
何故なら。

「全力全壊!」
「疾風迅雷!」

なのはとフェイト。二人が叫んだと同時に、二色の閃光はクワガタムシ目掛けて奔っていた。
結界を破壊しようとただひたすらに力押しするクワガタムシの背後から二色の閃光が迫り、
クワガタムシごと結界を撃ち貫こうとしているのだ。
クロノは最早呆れた表情でそれを見るしか出来ず、アルフはアルフで必死の形相。
とにかく耐えようと、補助魔法を掛ける腕に力を込める。
が、そんな努力も虚しく―

「駄目だ……あたし一人じゃ、結界を保てな―ッ」

と、アルフが歯を食いしばるように言葉を紡ぐが、それは最後まで間に合わず。
同時に、二色の魔力光は結界を貫き、遥か彼方の空へと吸い込まれていく。
結界が破壊される寸前、結界全体に亀裂が入ったために、アルフが言うまでもなくクロノはもう諦めていたのだが。
そうして、二人の魔法により放たれた光の照射が止んだとき――そこにあのクワガタムシの姿はなかった。
そんななのはの眼前に現れた空間モニターに映るエイミィの表情は、苦笑い。

『未確認飛行体、ロストしました』
「あれ……撃墜しちゃった?」
「逃げられたんだよ!」

二人の会話に割り込んで、クロノが大声で怒鳴った。
結果として、二人の魔法はあのクワガタムシを加速させる結果となったのだ。
何かの装甲のような物を身に纏った頑丈な体は、魔法では傷を付けられないということなのだろうか。
光に押され、そのまま遥か彼方へと飛んで行ったクワガタムシは、既にアースラ側からの追尾を振り切っていたという。
それが今回の結果。つまり、作戦は失敗だ。
そんな結果に、なのはとフェイトは大きく肩を落としていた。

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 02:44:32 6j8l7yML
支援

227:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:46:20 czyRUoh9
 




平成13年4月――科学警察研究所。
ようやく平和になった世界。勿論そんな平和な世の中に未確認生命体などが現れる筈もない。
―にも関わらず、科学警察研究所……通称「科警研」の科学者である、榎田ひかりは職場へと呼びだされていた。
大切な一人息子である冴との貴重な親子の時間を削ってまで来たのだ。それはやはりつまらない理由である訳もなく。
榎田は、眼鏡の奥の鋭い眼光で、白衣の男を見据え、言った。

「で、ゴウラムが消えたってどういうこと?」
「そのまんまの意味です……ここに保管されていたゴウラムが、突然消えたんですよ」
「ちょっと待って意味がわからない。 消えるって何? 監視カメラは!?」

呆れた口調の榎田に、白衣の男もまた困ったようにパソコンのキーボードを操作した。
男が操作することで、パソコンの画面に小さなスクリーンが映し出された。
そこに映っているのは、「ゴウラム」と呼ばれる戦士クウガの力強い味方。それを保管していた一室だ。
カメラに映し出されたゴウラムは、最初は何の動きも見せなかった。が、やがてその羽根を開くと、ゆっくりと浮かび上がり―
背中に埋め込まれた翠の霊石―アマダムが、力強く光を放ち始めた。
その光はどんどん強さを増して行く。やがて一瞬ではあるが、カメラに映った全ての映像が緑の光によって遮断された。
カメラに何も映らなくなるほどという事は、それこそよっぽど強力な光を放っていたのだろう。
ややあって、カメラがその視界を取り戻した時――

「ゴウラムが消えてる……」
「はい……そういう訳です。何が何だか……」

ゴウラムは、その姿を消していた。
榎田はその肩を大きく落としながらも、パソコンの画面をじっと見つめている。
こればっかりは対処のしようもなかった、というかまさか未確認との戦いが終わって
三ヶ月も経過してからゴウラムがその姿を消すとは誰も思わなかっただろう。
もしも戦士クウガが「聖なる泉」を枯らした際には、ゴウラムは砂になる。という説は聞いた事はあったが、
流石に消えるというのは予想外だ。

榎田は腕を組んで、思考する。
五代雄介とBTCSが姿を消したという報告は警視庁から連絡されていたが、もしかしたらゴウラムも何らかの関係があるのだろうか?
しかし、未確認との戦いも終わった今、何故彼らが消えるのかがわからない。もしかすると、まだ何かするべき事があるから?
だがそれならば何処かでクウガかゴウラムの目撃情報が出る筈である。

「……何にしても、今はどうしようもないわね」

考えても今は推測の域を出ない。榎田は、大きくため息を落とした。
消えてしまった者をどうこう言っても仕方がない。
とりあえず今自分に出来る事と言えば、ゴウラムが消えた事に関する報告資料をまとめる事くらいしかない。
また帰るのが遅くなってしまう事に、我が子への罪悪感を感じながらも、榎田はポケットから携帯電話を取り出した。
仕事で帰りが遅くなる場合は、冴が待つ自宅へと「かえれないコール」を掛けることにする。というのが、榎田親子の約束なのである。

228:マスカレード ◆RIDERvUlQg
08/12/30 02:48:30 czyRUoh9
第二話、投下完了です。
もうなのは達が戦ったアレが何なのかは解ると思いますが……。
とりあえず多分、このフェイトはなのはが好きなんでしょうね。
もうなのはラブって言う感じ。
とりあえず今回の話は、このあとのそこそこ重要なフラグになります。

229:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 02:59:52 QtuSH7Ns

五代さん東京に着いたらどうするんだろうか

あ、3時20分頃から小ネタ投下していいですか?

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 03:11:00 7NPwpmvP
GJ!!
クウガは大好きなので活躍するのを待ってます!


231:1/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:23:13 QtuSH7Ns
時間になりましたので投下します

「…ふぅ」

レジアス・ゲイズ中将は今日もお疲れだった。

地上の少ない人員の遣り繰り、廃棄都市区画の治安維持、
そろそろ年齢的にやばい娘の結婚について、etc...
頭を悩ますことが多すぎるのである。

ちなみに娘は今日は家にいない。
なんでも学生時代の同窓会なんだとか。
あわよくば学生時代の恋人とヨリを戻すなりなんなりして
早く親を安心させてほしいものである。
まあそんなわけで本日は家に一人。
子供なら「夜更かししても誰にも怒られないぜヒャッホーイ」と喜んだかも知れないが、
この歳になるとそれなりに広いこの家に独りというのは少し寂しい。
しかし目下の問題はそこではない。

「腹が空いた…」

そう、夕食である。
普段は地上本部の食堂だし、料理なんてめったに家に帰れないため作り方はうろ覚えだし、
正直腹が減ってそんなことする気力なんて無いのである。
そんな時、新聞の折込広告が目に止まった。
ピッツァマンという名の宅配ピザの広告。

「ピザか…」

いいかもしれない。少し時間はかかるが自分で作って変な味の物を食べるよりはマシだろう。
そう思い、早速ピザを注文した。






232:2/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:26:35 QtuSH7Ns
「遅い…」

なんだこの遅さは。
ふざけてるのか。
30分以上かかるとかどういうピザ屋だ。
実になっとらん。地上本部の総力を挙げて取り潰してやろうか。

ピンポーン

「っ、やっと来たか。」

そう言いつつ、インターホンへ向かう。

「はい、ゲイズです」

『ピッツァマンでーす。ピザお持ちしましたー』

「はい、今ドアを開けますので」
一刻も早くピザを食べ、この空腹を何とかしたい。
そう思いながら玄関に向かい、ドアをに手を掛け――

『あ、ドア開ける前に「ピッツァマーン♪」って言って貰えますか』

止められた。

「……何故だ」
『30リリカル引きになるんですよ』

ちなみにリリカルとはミッドチルダの通貨単位である。
レジアスは幾秒か懊悩し、そして結局

「………ピッツァマーン♪」

言った。
その途端、ドアが開けられた。

233:3/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:30:27 QtuSH7Ns
「そんなに30リリカルが欲しいのか」
「…貴様が言えと言ったんだろう」
「まあね♪」
「というか第一なんでこんなに時間かかってるんだ?どこにあるのだ貴様の店は」
「ここから300mほどですねー」
「じゃなんでこんなにかかっとるんだ」
「ほら、学校の近くに住んでる子ほどよく遅刻するでしょ。まあ、いわゆる油断ですよ」
「仮にも宅配ピザ屋だろう貴様。ピザが冷めたらどうする気だ」
「ははは。えーっと3870リリカルになります」


………………は?


「…すまんが、もう一度言ってくれるかね」
「3870リリカルになります」
「何でそんなに高いのだ」
「いや、キャンペーン中だから」

キャンペーン中?キャンペーンだったら普通高くなるんじゃなくて安くなるのが常識という物ではないのか?

「まあ、高いキャンペーンってのもギリギリ無い話じゃないですからね
 でもね、いまこれ付いて来るんですよ、これ」
「何だその段ボールは?景品か何かか?」
「これはですね、あのね」









「テレビ局開局キットです」






234:4/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:34:28 QtuSH7Ns
「は?」
「あのね、これがあればね、誰でも今すぐテレビ局開局できんの」
段ボールを叩きながら店員がそれについての説明を始める。
ぶっちゃけどうでもいい。早くピザを食べたい。腹が減った。

「嘘だろう」
第一こんな段ボール箱一個に入るだけの設備でテレビ局を開設出来る訳がない。

「あ、納得してないねあんた」
「するわけないだろう。………もしやこれが着いてくるからそんなに高いのではあるまいな」
「…ハァ、あんたも珍しい人だねえ。景品に文句つけるの?
 キャラメルのおまけにさあ、マリアージュの人形付いてたってさあ、何だこれってアンタ言わねえだろうがよ!」
「言うわあ!」

というか何だマリアージュって。新手の芸能人か何かか。

「やんのかあ!やらないよ俺は!
 いいから貰っといてよこれ。ね」
「いや、いいって言ってるだろう」
「ターダだから。どうもありがとー!」
「タダじゃなくて3270リリ…」

言い終わらない内にバタン、とドアが閉められた。

「さっきの奴はなんだ、まったく…」

後で絶対返しに行ってやる。
そう決めながらも、空腹で死にそうなのでまずレジアスはピザを食べることにした。




しかし、彼は知らない。
そのテレビ局開局キットが、彼をある陰謀 ―ゲーム― へと巻き込んでいく事を。

235:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 03:38:32 oo/Kt8FV
なんかピザが食べたくなってきた支援

236:5/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:39:42 QtuSH7Ns
「戦闘機人ナンバー2、ドゥーエ。あなたに治安維持法違反の容疑で逮捕状が出ています」
「署までご同行願います」
「……私達戦闘機人はね、甲羅の無い亀にはならないのよ!」

「暗躍は生涯に一回位でいいけどバブルは二回あってもいい…そう思わないかい?」
「…そのバブルとテレビ局と何の関係があるのだ、スカリエッティ」
「つまり……Lyrical`s HIGHだよ。レジアス・ゲイズ」
「Lyrical`s HIGH……」

「いよいよ地上波からお別れかあ。これからはBSの時代やな」
「いや、地デジの時代だと思うのだが」
「まあ、それはさておいて衛星打ち上げロケットの準備は万端や。
 燃料の灯油もバッチリ満タンやで!レジアス中将!」
「灯油!?液体酸素と液体水素ではないのか!?」

「…ようやく追い詰めた、ジェイル・スカリエッティ。
 治安維持法その他諸々の違反で、逮捕します」
「わしはレジアス・ゲイズであの変態化学者ではない!
 お前の隣に居る男が本当のスカリエッティだ!」
「騙されてはいけない、ハラオウン執務官。…その恰幅のいい男が本当のスカリエッティだ」

「ご無事ですか、中将。…実はこの部屋には外に通じる穴があるのです」
「そこのポスターの裏だろう?だがCの字状になってて反対側の壁に繋がってるだけだったぞ」
「穴に入る前にちくわの神様にお願いしなかったでしょう?だからですよ。
 お願いすればちゃんと外に繋がります」

「二度とたけわと言うな。…ちくわと言え」
「もうたけわって言いません」

「ねえ、本当のメガネは心の中にある……そう思わないかい?」

「合言葉は、HELP ME」

「ピスタチオの豆で作ったピスタチオコーヒーです。飲みますか?」

『わしは聖王を人質にとったぞゴラァ!無事に帰して欲しかったら、身代金300万リリカルを払わんかゴラァ!』

「…牛丼屋でも、始めるか」

このゲームは、視聴率80%を取るまで終わらない。
Lyrical`s HIGH、いつかにつづく。

237:6/5 ◆heZlW5Fk6U
08/12/30 03:43:02 QtuSH7Ns
投下終わり

元ネタは九年ぐらい前の深夜バラエティ「TV's HIGH」
このスレに知ってる人が居るか疑問。居たら少し怖い
出演者が無駄に豪華でした

元ネタだとレジアスの役回りは日本人なら誰でも知ってる某国民的アイドルのあの人
スカリエッティはもう亡くなられた元都知事の方です
あ、通貨単位は思いつきです。レートは大体1リリカル=1円
実家に帰ってDVD漁ってたら何故か出てきたのでその場のノリと勢いで書いた
色々と後悔している

238:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 05:11:01 JhCY2O4C
だからスルリとサペスンスが足りんのだよ!

っでGJ

239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 09:31:32 Z28QSbzm
(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
【年末は荒らし厨の季節】

240:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 10:22:12 6zKqtXjZ
GJ!なんかもうわけわかんねぇwww

241:一尉
08/12/30 14:42:53 dmkv4+la
そうだね未だわからないよ。

242:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 21:51:39 WWgRdADW
どうもこんばんわです皆様
22時20分より、一発ネタを投下しようと思うのですがよろしいでしょうか?

243:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 21:58:56 9r7FhTFc
>>242
come on!

244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:01:28 6piNyamB
ドーン!と来い!!

245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:06:06 i5pnJS6H
しえん

246:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:20:07 s94455oo
一発ネタより連載の続きを書けコラ

247:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:21:14 WWgRdADW
「……どーしよっか? コレ」

 それはとある休日の朝。
 彼女、八神はやては困ったように頭を抱えた。
 助けを求めるように周りを見回すも、彼女に付き従う守護騎士達もまた、心底困った様子でため息をつくばかり。
 そんな折、いつものメンバーが彼女らの根城へと訪れる。

「うーっす。銀さんがやってきたよーっと」

 そう、いつものお騒がせ三人組、万事屋銀ちゃんである。
 勝手知ったるはやての家に、新八と神楽、そして定春を引き連れてずかずかと上がりこむ。
 玄関を跨ぎ、短い廊下を通り抜け、そしてリビングの扉を開いた銀時達を出迎えたのは……。

「おはよーございますなのです! ぎんときどの!」

『……誰!?』

 ……随分と頭身の縮んだシグナムにそっくりの、可愛らしい幼女であった。



 なの魂 ~番外にも程がある編 男は基本的にギャップに弱い~



「つーか、何コレ?」

 と尋ねるは銀時。
 困惑しきった様子で声を漏らす彼の膝の上には、幸せそうな顔でシュークリームを頬張るシグナムそっくりの幼女。
 テーブルを挟んで銀時の向かいに座るはやては、深い深いため息をつきながら、

「何っていうか……シグナムや」

「見りゃ分かるよ。姐さんのそっくりさんだろ? 肝心の本人はどこ行ったんだよ」

「いや、そうやのーて……」

「あー……もしかしてアレか? 隠し子? なんだよ、普段は興味なさそうな顔しやがって。
 やるこたァしっかりヤってんじゃねーか」

「いや、だから……」

「……マジ?」

「マジや。残念ながら」

 頭を抱えてため息をつくはやての様子を見る限り、どうやら彼女が言っているのは嘘ではないようだ。
 にわかには信じがたい様子で、銀時は膝の上に鎮座する小さなシグナムを見下ろす。
 鼻の先にクリームをつけた彼女は、どこか満足した様子で大きなカップを両手に抱え、牛乳をゴクゴクと飲んでいる真っ最中であった。

「……どーいう理屈だよオイ。ロストロギアの暴走か? それとも源外のじじいが変な道具でも作ったか?」

 尋ねる銀時だが、しかしはやては首を縦には振らない。


248:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:23:21 WWgRdADW
「ロストなんとかっていうのは、よー分からんけど……シャマルが言うには、なんや闇の書にちょこっとバグがあって、
 その影響やないんかって話やけど……」

「ちょっとどころじゃねーよ。万札はたいて購入して、期待に胸と股間膨らませてプレイしてみたら、
 CGが差分含めて十四枚しか入って無かったってレベルのバグだよ」

「銀ちゃん。それバグやなくて仕様やから」

「ごらんの有様だよ!」

 それなりに切迫した状況だというのに、どこかほのぼのとした光景。
 他愛もない会話を続ける銀時の腕に、不意に何かに引っ張られるような感覚が走る。

「ん?」

 特に意識することも無く、銀時は自分の腕を見下ろす。
 真っ先に目に入ったのは、キラキラと輝く大きな瞳。
 子供のように無垢な笑顔を向ける、シグナムであった。

「ぎんときどの、ぎんときどの! これからけんのけいこをするのです」

「ああそう……頑張ってらっしゃいねー」

 ヒラヒラと手を振り、銀時はテーブルの上に肘をついて大きくため息を漏らす。
 その行動が面白くなかったのだろう。
 シグナムはぷくっと頬を膨らませたかと思うと、ぴょんと彼の膝から飛び降り、そして彼の腕を力一杯に引く。

「いっしょにけいこするのです! "ぶしどうとはしぬこととみつけたり"なのです!
 あるじにはしんぱんをおねがいするのです!」

 グイグイと銀時の腕を引きながらそんなことを言うシグナムなのだが、その力は身体相応。
 銀時を椅子から動かすには、全くと言っていいほど力が足りなかった。
 呆れた様子で銀時ははやての顔を見る。

「……どーするよ?」

「んー……好きなようにさせたげたほうが、ええんとちゃうかな? だって……」

 そこまで言ったところで異変が起こる。
 銀時の腕を掴んでいたシグナムの不機嫌さが最高潮に達したのだろう。
 彼女は目を潤ませながら膨れっ面を見せて、

「……したがわないと、こうなのです!」

 ぽんっ、と。
 何かが爆発するような音が聞こえた。
 同時に立ち上る黒い煙。
 ゆっくりと、銀時は自分の腕に視線を向ける。
 勝利を掴めと轟き叫ばんばかりに真っ赤に燃える自分の右腕がそこにあった。

「あづァづァづァァァァァァ!!」

「中身まで子供になっとるから、結構情け容赦ないよ?」

「先に言えェェェェェ!!」

 台所で流水に腕を晒しながら、情けない声を上げる銀時なのであった。




249:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:25:22 WWgRdADW
「……なーんでこーなるの?」

 ぶっきらぼうに木刀を構え、心底不本意な様子で銀時は零す。
 ここは八神家に存在する小さな小さな庭。
 庭に面する家の窓には、どこか疲れた様子の夜天の騎士達と万事屋の助手達。
 そして銀時と相対するは……。

「せ、せーせーどーどーと、しょーぶなのです! ……とと」

 身の丈に合わない大剣―レヴァンティンを構えるシグナムであった。
 どうやら小さくなったのは彼女自身のみであり、デバイスのサイズはそのままのようだ。
 相対的に大きくなった愛剣を構え、しかしその重量に耐え切れないのか、シグナムはヨタヨタと千鳥足を踏む。
 あっちへヨロヨロ、こっちへオタオタ。

「……ふあっ!?」

 何度目かになる8の字運動の後、ついにシグナムはコケた。
 それはもう盛大にすっころんだ。
 レヴァンティンを放り出し、"びたーん!"という擬音が似合いそうなくらい、勢い良く芝生に向かって接吻をかまし、
 そのままピクリとも動かなくなる。
 そして、主の手を離れた魔剣はというと。
 ヒュンヒュンと風切り音を鳴らしながら、澄み切った大空に活き活きと飛び上がり。

 ドスッ、と。

 銀時の眼前、鼻先から数ミリのところを掠め、地面に深々と刺さった。
 居た堪れない沈黙。
 重い空気。
 陽気なスズメ達の合唱が、どこか腹立たしく聞こえてくる。

「……俺、もう帰っていいかな?」

 血の気の引いた顔でガクガクと膝を震わせながら、銀時は割りと真剣にはやてに願い出るのであった。



「……何ゆえこうなるのだ……?」

 暖かな陽の光を目一杯に受けながら、盾の守護獣ザフィーラはそう零す。
 蒼き狼の姿となった彼と共に歩むのは、万事屋店長坂田銀時、夜天の王八神はやて。
 そして……。

「しょうぶなのです! なぐりこみなのです! かんばんはいただきなのですー!」

 ザフィーラの背にまたがり、元気一杯に小さな竹光を振り回すシグナムであった。
 小さなナイトの奔放な振る舞いに、ほとほと呆れた様子でザフィーラは一人ため息を漏らす。

「将がこれでは、周りに示しがつかんぞ。まったく……」

「元に戻るまでの辛抱や。今、シャマルが元に戻る方法探してくれとるみたいやし……」

「……つーかよォ……」

 はやての車椅子を押していた銀時が、ポツリと呟いて足を止める。
 どこか焦燥した様子で目の前を見つめる銀時に倣い、ザフィーラとはやても、彼が視線を向ける方を見やる。

―"真選組屯所"

 そこに立てかけられた看板には、達筆な字でそう書かれていた。


250:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:27:30 WWgRdADW
「なんでこんなトコに来なきゃならんわけ?」

「いや、その……シグナムがどーしても来たいって言うから……」

「ダメなものはダメだって言ってやるのも、かーちゃんの仕事だぞ」

「だってー……」

 むすっ、と頬を膨らませ、はやては守護獣に騎乗するシグナムを見る。
 純な笑顔、溢れんばかりの無邪気さ。
 普段の彼女とは全くの真逆、新感覚純真魔法少女シグナムちゃんがそこにいた。

「……あんな可愛い子におねだりされて、断れるわけないやんかー!」

 パタパタと手を振って、自分には非が無いということを必死にアピールする。
 銀時は呆れたように息を吐きながら額に手を置き、

「そーかい。……まァ気持ちは分からねーでもねーけどよ。俺もお前におねだりされたら、断れる自信無ェし」

「……ふぇ?」

「俺だって命は惜しいからな」

「……さ、さらっと失礼なこと言うなー!」

 頭上に掲げた両手をブンブン振り、「ちょっとだけ期待してしもたやんかー!」と銀時の手を引っ叩くべく、
 はやては車椅子の上で、懸命に身をよじらせる。
 だがとっくの昔に車椅子から手を離し、安全圏まで退避した銀時に決死の攻撃が届くはずも無く。
 はやては顔を薄い朱に染めて頬を膨らます。
 その時だ。
 突然屯所の方から、若い男の声が聞こえてきた。

「おーい、危ないですぜー」

 聞き覚えのあるその声に、その場に居た四人は一斉に、開け放たれた屯所の門へ目を向ける。
 ヒュンヒュンと鳴る風切り音。
 それが屯所の奥から急速にこちらへ接近し。

 ドスッ、と。

 ザフィーラの額に、高速回転する竹刀が突き刺さった。
 まるで噴水のように額から血を吹き流し、ザフィーラはその場に力無くくず折れる。

「ああ! ザフィーラがやられた!」

「メディック! メディーック!」

「はわわ! お、おちつくのです! まだあわてるようなじかんじゃないのです!」

「ぐふっ……あ、主……。私の遺体は、どうかルーベンスの絵が見える教会へ……ガクッ」

『僕もう疲れちゃったよヨーゼフゥゥゥ!』

 もはや阿鼻叫喚としか形容のしようが無い光景。
 このカオスティック空間を修復することが出来る人物は果たしてこの世に存在しうるのだろうか?

「いやーすいやせん。手元が狂っちまって」


251:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:29:46 WWgRdADW
 ……いた。
 そんな呑気な言葉を吐きながら屯所から現れたのは、亜麻色の髪の若年剣士。
 そう、真選組のドS王子こと、沖田総悟であった。
 彼はどこか意外そうな表情で荒れ狂う夜天の戦士達を見やり、

「こんなトコで何やってんですかぃ。旦那にお嬢に……」

「……あ。おはよーございますなのです! おきたどの!」

「……誰ですかぃ? このちんまいの」

 大の字になって寝そべるザフィーラの上で、元気一杯に己の存在をアピールするシグナムを指差してそう零すのであった。



「なんじゃこりゃァァァ!!」

 と、男の大爆笑が響いたのは真選組屯所のとある一室。
 彼、土方十四郎は、自分の膝をバシバシ叩いて盛大に笑い声を上げる。
 そんな彼の向かいには、行儀良く正座をして目を爛々と輝かせる小さなシグナム。
 規則正しく視線を左右に行ったり来たりさせる彼女の目の前では、大きな棒付きキャンディーが振り子のように揺られていた。
 まるでペットを手懐けるように甘い餌を無垢なる少女の前に晒すのは、やはりというかなんというか、沖田であった。

「むー……そんなに笑わんでもええんとちゃいます? こっちは真剣に困ってんのに……」

「くく……いや、悪ィ悪ィ。しかし傑作だなこりゃ」

 必死に笑いを堪えつつ、膨れっ面でこちらを睨んでくるはやてに土方は平謝り。
 そして再びシグナムへ視線を向ける。
 いい加減シグナムを弄るのも飽きたのか、沖田が彼女の目の前にキャンディーを差し出し「ほれ、あーんってしてみ」などと
 している真っ最中であった。
 シグナムは目を輝かせ、言われるがままにあーんと口を大きく開けてキャンディーにかじりつこうとする。
 だが、聞こえてきたのはキャンディーをかじる音ではなく、歯と歯がぶつかり合う音。
 涙目で抗議の視線を向けるシグナムの目の前で、沖田はしたり顔でキャンディーを咥える。

「……もー! 沖田さんっ! あんまりシグナムんこといじめんといてくれる?」

 むくれた様子で精一杯凄んでみるはやてだが、沖田は飄々とした様子で肩を竦ませながら、

「すいやせん。いじめ甲斐のありそうなツラしてたもんで」

「んなこたァいいからなんとかしやがれ、チンピラども。何のために税金払ってやってると思ってんだ」

 様子を窺っていた銀時は、随分と不機嫌な様子でそう言い放つ。
 土方は疎ましそうに舌打ちをして、懐から取り出したタバコに火をつける。

「できるわけねーだろ、万事屋じゃあるめーし。俺達の管轄外だ。
 治してーなら病院か魔法関係の研究所にでも行きやがれ」

「そりゃねーんじゃねーの? せっかくおもしれーもん見せてやったんだから、ちったァ頭捻りやがれ」

「テメーの連れを見世物に使うような輩に貸す頭はねーよ」

「ンだとテメ」

「ンだとコラ」


252:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:31:48 WWgRdADW
 いつもの如く激しい火花を散らす土方と銀時。
 どうにかそれを宥めようとはやてが仲介に入り、

「……う~!」

 と、どこか泣き出しそうな幼女の呻き声に、三人は思わず声のした方を向く。
 短い両手をグルグルと振り回し、しかし沖田に頭を押さえつけられているため、一切の反撃が出来ないシグナムの姿がそこにあった。

「……まだやってはったんですか……」

「威厳もへったくれもねーな、オイ」

「オイ総悟、ガキ相手に大人げねーぞ。いい加減やめてやれ」

 呆れた様子で口々に口走る。
 その中でも、特に土方の発言が気に入らなかったのだろう。
 鼻の先を赤くし、瞳を潤ませたシグナムがキッと土方を睨みつけた。

「わたしはこどもじゃないのです! りっぱなれでぃであり、きしなのです!」

「だったらまずはその舌足らずな口調をやめろ」

 ビシッ、と指差し容赦の無いツッコミ。
 あくまでも自分を子供扱いする土方に、シグナムは心底ご立腹のご様子。
 ついには肩を震わせながら、愛剣レヴァンティンを起動させ、

「だったら、じつりょくでみとめさせてやるのです! けんをぬくのです、ひじかたどの!」

 ヨタヨタと、覚束ない足取りでデバイスを構える。
 しかし土方はシグナムの言葉に応えようとせず、どこか面倒くさそうに頭を掻くだけ。
 そんな彼の姿に業を煮やしたのか、シグナムは声高に叫ぶ。

「こないのならこっちからゆくのです! ればんていん、かーとりっじろーど!」

 宣言と同時、レヴァンティンの内部機構が唸りを上げる。
 カートリッジシステム起動。装填された弾丸から、内包された魔力がレヴァンティンへ注がれる。
 赤熱する刀身。描かれる魔法陣。そして……。

「……あうっ!」

 レヴァンティンから排出された空薬莢が、シグナムのおでこを直撃した。
 あまりの痛さに彼女の精神の均衡が乱されたのか、燃え上がる刀身は鳴りを潜め、描かれていた魔法陣は
 掻き消えるようにその姿を消す。
 どこか居た堪れない空気の中、シグナムはおでこを押さえて鼻をすすりながら、

「め、めにもとまらぬざんげき……さすがひじかたどのなのです……!」

「いや、何もしてないからね。完全に自業自得だったからね、今の」

「ですが、これでかったきになるのははやいのです!」

 呆れた様子で呟く土方を華麗に無視し、シグナムは再び魔剣を握る。
 いや、それは既に剣ではなかった。
 猛禽類を思わせる鋭利なシルエット。
 純白に彩られた、美しくしなやかな輪郭。
 そう、それは弓。
 全てを撃ち貫く白銀の強弓。
 ―レヴァンティン・ボーゲンフォルム。


253:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:32:18 VNovasJp
死怨!

254:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:32:35 gjRcLC0q
支援

255:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:34:08 WWgRdADW
「かけよ、はやぶさ!」

 生成される魔力の矢。
 叫び、それを弦にかける。
 だが……。

「……ふんぐぐぐ!」

 唸る。唸る。これでもかと言わんばかりにシグナムは唸り続ける。
 しかし、矢は一向に動こうとしない。
 硬く張られた魔力の弦は、ピクリとも動こうとしない。
 弓というものはああ見えて、意外と弦を引くのに力が要るものである。
 それは魔法の弓でも例外ではないらしい。
 身体相応、つまりはやてとどっこいどっこいかそれ以下の腕力しかない今のシグナムでは、最強の弓を引くには
 全くもって力が足りなかったのだ。
 というか、この短い腕で戦闘用の弓を引ききれというのがそもそも無茶である。
 だがしかし、そこは腐っても鯛ならぬ、小さくなっても守護騎士。
 身体強化の魔法を併用して、強引に弓を引く。
 張られた弦が僅かに歪み、同時に弓もほんの少しだけしなる。
 小さな騎士は目を瞑り歯を食いしばって、懸命に弓を引き絞る。
 その様子に一抹の不安を覚えたのか、シグナムを取り巻く者達はあとずさりながら部屋を出ようとし……。

「おうトシ、聞いたぞ。なんかシグナムさんがエラいことになってるんだってな?」

「……近藤さん。今入ってきたら危ないですぜ」

「……あっ」

 ドスッ、と。

 偶然部屋に入ってきた近藤の額に、それはそれは見事に矢が突き刺さったのだ。
 穴の開いた水道管のように額から血を噴出しながら、近藤はその場にバタリと倒れる。

「予感はしてたけどね! 嫌な予感はしてたけどね!!」

「近藤さん! しっかりしてくだせぇ!」

 土方と沖田は血相変えて近藤の傍へ駆け寄る。
 近藤は瞳に大粒の涙を溜め、空ろな目で二人を見やりながら、

「ト、トシ……Dドライブのお宝映像、全部消しといて……ガクッ」

「どんな遺言んんんんん!!?」

 パニックに陥る真選組幹部達を見やりながら、シグナムはただオロオロとするだけなのであった。

 罪状:過失傷害。
 実刑:一週間屯所への出入り禁止。



 そして結局何の打開策も考え付かぬまま時間は流れ、今はもう夕方。
 銀時達が仕事を終えて、自分の家へと帰っていく時間と相成ってしまった。

「ごめんな銀ちゃん。なんか、いっぱい迷惑かけたみたいで……」

 銀時達を見送るため、玄関までやってきたはやてはしょぼくれた様子で顔を俯ける。
 そのあまりの落ち込みようは、見ているこっちが居た堪れなくなってくるほどだ。
 銀時はどこかバツが悪そうに頭を掻き、しばらく逡巡の様を見せた後、そっとはやての頭に手を置いた。


256:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:36:22 WWgRdADW
「別に迷惑なんかじゃねーよ。ガキの相手なら、お前となのはで嫌ってほど慣れてるからな」

 子供扱いされたのが気に食わなかったのか、はやては頬を膨らませて銀時を見上げようとする。
 だが、それも一瞬のこと。
 ポフポフと銀時に頭を撫でられ、はやてはくすぐったそうに目をつぶって身動ぎをする。
 慣れている、と自負するだけのことはある。
 銀時が手を放した頃には、はやての不機嫌など空の彼方へ吹っ飛んでいってしまったらしく、はにかんだ笑顔で、
 しかしどこか名残惜しそうにはやては小さく手を振った。

「ほな、また明日な? 銀ちゃん」

「おう。明日にゃ姐さんが元通りなることを願っとくよ」

「絶対、遅刻せんといてな?」

「わーってるよ。そんなに信用ないかね? 俺ァ」

「絶対に絶対やよ?」

「……なんかそこまで言われると腹立つな。明日昼過ぎに来てやろーかな」

「う~……銀ちゃん、やっぱりいぢわるやぁ……」

 せっかく直った機嫌を再び曇らせ、はやては頬を膨らませる。
 小さな天使を弄り倒すのを充分に満喫した銀時は、ヘラヘラと悪ガキのように笑いながら、
 一足先に家の外へ出た新八達の元へ向かおうと、玄関の扉に手をかけ……。

「……ん?」

 着物の裾を引かれるような感覚を覚え、その動きを止めた。
 どことなくデジャヴを感じつつ、銀時は視線を下のほうへ向ける。
 案の定、そこにいたのは小さなシグナムであった。
 彼女は何処か期待の念を孕んだ瞳で、銀時をじぃっと見つめている。

「ぎんときどの、ぎんときどの。きょうはうちにとまっていくのです」

「……はァ?」

 突拍子も無いシグナムの提案に、銀時はおろかはやても目をまん丸にするばかり。
 素っ頓狂な表情で二人は小さな騎士を見つめ、そしてはやてははっとした様子で慌ててシグナムを咎める。

「も~、シグナム? あんまり銀ちゃん困らせたらアカンよ?」

 するとどうだろうか。
 普段のシグナムならまずもって見せないであろう不服そうな表情を、彼女は惜しげもなくはやてに向けるのだ。
 初めて見るシグナムからの反発の目に、はやてはただ驚くばかり。
 あっけに取られるはやてを尻目に、シグナムはグイグイと銀時の着物の裾を引き、家の中へと誘おうとする。

「あるじもいつもいっているのです。ぎんときどのがいないとさびしいっていってるのです」

「シ……シグナム~!!」

 内緒の独り言をあっさりと当人の目の前でバラされてしまい、はやては顔を真っ赤にして慌てる。
 しかしシグナムはというと、きっと悪気など全く無かったのだろう、どこか楽しそうに銀時を引っ張り続けていた。
 かしましく騒ぎ立てる幼女二人を前に、銀時は心底呆れた様子でため息をつき、そして黙考。
 しばし腕を組んで考え込んだ後、彼はもったいぶるように、

「……あーあー、分かった分かった。そんじゃま、お言葉に甘えさせてもらうかねェ」


257:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:38:41 WWgRdADW
「……ふぇ?」

 予想だにしなかった銀時の快諾に、はやては思わず呆けた顔を見せる。
 あまりにもからかい甲斐のある顔だったのだろう。
 そんなはやてのおでこに人差し指を押し当てながら、銀時は意地の悪い笑みを浮かべる。

「オイオイ、そんなに俺と一つ屋根の下が嫌か? そこまで露骨に嫌がられると、結構ショックなんだけどな」

 もちろん、はやては銀時の来泊を厭うようなことはしない。
 それどころか、むしろはやてにとっては嬉しい誤算であった。
 はやてはブンブンと首を横に振り、しかし当惑した様子で銀時に問いかける。

「い、嫌ってわけやないよ! でも……ホ、ホンマにええのん? 銀ちゃん、色々用事あるんとちゃうの……?」

「あいにく、こちとら暇を持て余してるんでね。それによォ……」

 苦笑しながら視線を下へ向け、はやても釣られるように銀時の足元を見やる。
 その視界に広がるのは、にぱーっと嬉しそうに笑みを零すシグナムの姿。

「みんなでおとまりかいなのです!」

「……今朝みてーなことされちゃァ、たまんねーからな」

 急かすように腕を引くシグナムにされるがまま、まんざらでもない様子で銀時はそう言葉を漏らすのであった。

「おもしろそうなてれびがやってるのです! みんなでごはんたべながらみるのです!」



 そして日もとっぷり暮れて、今は夜。
 街を走る車のエンジン音と僅かな衣擦れの音が響く中、小さく二人の少女の声が浮かんだ。

「ぎんときどの、ぎんときどの。まだおきているでありますか?」

「銀ちゃん銀ちゃん、先に寝てへんやんな?」

 音源は部屋の中央、布団の中。
 どこか不安を孕んだその声の主は、小さなシグナムとはやてであった。
 二人は布団の真ん中で尊大に寝転ぶ男に、寄り添うようにうごめく。

「はいはい起きてますよ。お前らこそ勝手に先に寝るんじゃねーぞ」

 二人に囲まれ、眠そうにそんな言葉を吐くのは銀時。
 何故彼が美少女二人に囲まれて眠るというなんとも羨ましい状況になっているのかというと、
 原因は夕食時に見ていたテレビ番組である。
 一体どのような番組が放映されていたのかといえば、まあ有体に言って、心霊番組である。
 全国の心霊スポットを行脚して、写真を撮って、そして映っていた胡散臭い"霊"とやらを専門家に除霊してもらう……という
 極々ありふれた内容の番組だ。
 しかしこの番組、幼い二人にはなかなか刺激が強かったようで、放送が終わった途端、はやてとシグナムははやての自室の隅っこで
 肩を寄せ合いながらブルブルと震えだしてしまったのだ。
 お風呂に入るときも一緒。トイレに行くときも一緒。そして就寝時間となって……。

「いわれなくてもわかっているのです」

「銀ちゃんこそ、先に寝たりせぇへんとってな?」


258:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:40:49 WWgRdADW
 怖くて怖くて仕方ない二人は、こうして銀時が眠る布団の中へと潜り込んできてしまったのである。
 しかし、ここで誤算があった。
 二人はまだ知らないが、実は銀時もたいがい怖がりなのである。
 外見強がってはいるものの、実のところ、内心でははやて達並に怯えまくっている銀時なのであった。
 つまり……。

「うっせ。なんでお前らが寝るのを待たにゃならねェんだよ。俺ァ先に寝るぞ。だから俺より先に寝るなよ?」

 この男、まったくアテにできない。
 布団を目深に被って就寝の準備をする銀時に対し、はやてとシグナムは非難轟々。

「い~や~や~! 私が先に寝んの~! 銀ちゃんは後から~!」

「あるじをこまらせるようなことは、だんじてゆるさないのです! ばつとして、あけがたまでおきているのです!」

「だまらっしゃい! とにかく寝る! 俺は寝るぞ!」

「いやや~! 銀ちゃんが先~!」

「お前が先だ!」

「銀ちゃん!」

「お前!」

『だァァァ! うるせェェェ!!』

 突如として聞こえてくる怒鳴り声。
 ビクリと肩を震わせて、三人は一斉に声のした方を見る。
 怒れるチャイニーズ娘と鉄槌の騎士が、そこにいた。

「三人ともうっさい!」

「静かに寝てろヨ!!」

『……はい』

 居心地悪そうに三人は頷き、しかしなおも小声で口論を続けるのであった。



「銀ちゃん……ぎ~んちゃ~ん……」

 翌日、はやてにゆさゆさと身体を揺さぶられながら銀時は目覚めた。
 寝ぼけ眼をこすりながら大きなあくびを漏らし、銀時は気だるそうに身体を起こす。

「……ンだよ。まだ七時にもなってねーじゃねーか……」

 そう言って隣を見ると、そこにいたのは、目を半開きにしてうつらうつらとするはやて。
 目脂もとらず、髪の毛はボサボサ。少しサイズの大きなパジャマはシワだらけになり、肩も少し肌蹴ている。
 まさに今起きてきたばかりのような出で立ちだった。

「私も、もーちょっと寝ときたかってんけど~……あふぅ……なんや、変な物音がして……」

「物音?」

「うん~……ほんで、起きてみたらいつの間にかシグナムがおらんようになってて……」


259:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:43:44 KeRb6haH
支援する!! チビシグナム支援!

260:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:44:23 WWgRdADW
 そう言って心配そうにはやては視線を落とす。
 彼女の視線を追ってみると、なるほど、確かに昨日までそこにあったはずのシグナムの姿が、忽然と消え去っていた。
 辺りを見回してみるが、しかしシグナムの姿は何処にも見当たらない。
 一体何処に行ったのだろうか?
 銀時が頭を捻っていると、彼の肩に何かがもたれかかってきた。
 それと同時に大きなあくび。

「あふぅ……」

「……とりあえず顔洗って来い。せっかくの美人が台無しだぞ」

「う~……褒めても、なんもでぇへんよぉ~……ふぁ……」

 惜しげもなくあくびを連発するはやてを抱え、銀時もまた大きくあくびを零しながら、洗面所へと向かうのだった。



「はい、口ゆすいでー」

「あ゛ー……ぷぺっ」

 と、銀時に抱えられたままはやてがうがいをしている真っ最中。
 唐突に玄関が開く音が聞こえてきたのは、その時だ。
 鳴りえないはずの音に不信感を抱き、二人は背後へと首を回し……そして、驚愕に目を見開く。

「あ……起きていらしたのですか、お二人とも」

 ポニーテールに結わえた長い桃色の髪。
 しなやかな肢体に豊満なバスト。
 どこか気品すら漂わせる、丁寧な物腰。
 おそらく、日課のジョギングを済ませてきたのだろう。
 真っ白なタオルで汗を拭いそこ佇むのは、紛れも無く"普段通りの"シグナムであった。

「シ、シグナム!?」

 驚いた様子ではやてが上擦った声を上げると、シグナムは控えめに微笑みながら、

「あまりにも仲睦まじく眠っていたので、そっとしておいたのですが……起こしたほうがよろしかったですか?」

「……いや……ていうか、姐さん、確か昨日……」

 困惑した様子で尋ねる銀時に、シグナムは何処かバツが悪そうにこめかみの辺りを掻く。

「え、ええ……実は、その……お恥ずかしい話ですが、先日の朝からの記憶が無いのです……。
 今朝起きた時も、銀時殿が隣に居て驚きましたよ」

 言っている本人も何処か当惑した様子だが、先日の騒動を知っている身としては、彼女以上に疑問を抱きたくなる。
 どういうことだとはやてと顔を見合わせるが、しかし答えなど返ってくるはずも無い。
 二人揃って頭を捻っていると、突如として二階から声が渡り響く。


261:なの魂 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:46:56 WWgRdADW
「……はやてちゃん! はやてちゃんっ!」

「……なんだ?」

 どことなく間延びした、聞き覚えの無い声。
 不審に思ったシグナムは階段の方へ目をやり、そしてはやてと銀時は揃って額から脂汗を流す。
 まさか? もしかして? いやいやそんなはずは無い。
 脳裏に浮かぶ疑念を必死に否定し、しかし二人の願いは……。
 なんというか……。
 ……無駄に、終わってしまったようだ。

「へぷっ!」

 明らかに身の丈にあっていない、ブカブカのパジャマ。
 ぽややんとした舌足らずな口調。
 軽いウェーブのかかったブロンドの髪。
 今にも泣き出しそうな、幼い顔。

「……だから……」

 額に拳を押し付ける銀時とはやての前で、シグナムは半ば放心状態で目を点にする。

「うぅ~……はやてちゃん、おなかすいたですの~……」

 凄まじい音と共に、階段から転がり落ちてきたのは……。

『……だからどーいう理屈ゥゥゥゥゥ!!?』

 随分と頭身の縮んだシャマルにそっくりの、それはそれは可愛らしい幼女であった。



終われ。

262:なの魂の人 ◆.ocPz86dpI
08/12/30 22:49:06 WWgRdADW
以上で投下終了です。
なんかチャットでちびキャラの話で盛り上がってたら、いつの間にか書いてました。
投げっぱなしジャーマン。続きなんて(゚ε゚)キニシナイ!!

263:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:51:12 i5pnJS6H
GJ!
チビっ子かわええwこれがヴィータだったら赤ん坊ですね
差分CGの降りは心当たりがあるなぁ

264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 22:55:49 ibzSvJX7
なの魂氏GJ!
ょぅレ゛ょ化シグナムに萌えさせて頂きましてありがとうございます。あと
>「ちょっとどころじゃねーよ。万札はたいて購入して、期待に胸と股間膨らませてプレイしてみたら、
 CGが差分含めて十四枚しか入って無かったってレベルのバグだよ」
アナタもやったんですか・・・・・・あの今年度最凶グラビディブラスト級のソフトを・・・・・・
パッチが出る気配も無い上売りたくても店が買い取り拒否かますシロモノを・・・・・・
これ以上はスレチなんでこの辺で。次回も楽しみにしてますよ!


265:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 23:04:39 VNovasJp
あんた……なんちゅうもんを見せてくれるんや……。

いやぁ、相変わらず氏はいい仕事しますね、ええGJですとも!

266:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 23:21:59 5KSYf3CT
幼女シグナムわろたw想像に難くないw
G J で し た ! !

267:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 23:23:11 oo/Kt8FV
あぁもう!!
このシグナムもらっていk(紫電一閃
萌え死ぬ……

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/30 23:28:59 1pzS1kg+
あなたはとことん私のツボをおしてくる
ディエチの巫女服とか!今回の幼女シグナムとか!
今後も期待してますよ!!!

269:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:06:19 vaksS7ZP
お久しぶりです。
もし投下の予約等が無ければ24時20分から
魔術士オーフェンStrikers第十話を投下したいのですがよろしいでしょうか?

270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 00:15:56 7C7bKMD0
>>なの魂氏
いい年でした(乙的な意味で)
魔法少女アイ惨でマヨ吹きました。
そしてチビシグをいじめる沖田でどこぞやの小さい物大好きファミレスアルバイトを思い出しました。

271:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:21:53 vaksS7ZP
え~と、時間になりましたので投下を始めさせていただきます。

てか、sage忘れてた…。

272:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:23:38 vaksS7ZP
ダミアン・ルーウは考える。
背後に走り去る足音を聞きながら、天を仰いで思考にふける。
いつの間にかレリックの入ったケースも無くなっていたが――恐らくはキリランシェロが持ち去ったのだろう――それも今やどうでも良い事だった。
鋼の後継、奴に関しても同様だ。必要な情報を引き出した時点であの男は役割を終えている。何をしようが知った事ではない。

(――必要な情報、か…)

その皮肉に思わず失笑する。いや、実際笑い話にもならない…。
キリランシェロが語った顛末はおよそ自分が運び進めるつもりでいた脚本とは大きく異なるものだった。

領主様との盟約に背いたディープ・ドラゴンの長。
貴族連盟の勅命を無視した王都の魔人プルートー率いる<十三使途>の聖域への独断進行。
我々を裏切り、更に聖域すら出し抜こうとしていたユイスの暗躍と、その目的。

聞いただけで頭が痛くなりそうな自体の連続ではあった。およそイレギュラーだらけだ。
…だが真に自分を落胆させたのはそんな事ではなかった。
第二世界図塔。聖域において魔王召喚機とも呼ばれる装置。
大陸に破滅をもたらす女神を殺す事が出来る唯一の存在、神殺しの魔王スウェーデン・ボリーを召喚するための装置。第二世界図塔の力で魔王を召喚し、その魔王に女神を殺させる。
それが我々最接近領の、いや正確には自分と領主様の計画であった。
――リスクの大きい計画である事は否定しない。だがそれでもこれがもっとも現実的な手段であるとダミアンは今なお確信していた。
少なくとも聖域だけを残して大陸全土を捨て去ろうとしていた聖域のドラゴン種族らよりは…。それを――

(何だそれは。そんな事に何の意味がある…)

苦虫を噛み潰すような心持ちで呟く。あの黒魔術士は確かに言った。
『第二世界図塔から得た魔王の力でアイルマンカー結界から大陸を解き放った』と。
と、唐突に轟音が轟いた。天を仰いでいた視線を音源の方へと向けると奥でわずかに魔術の光が見える。言わずもがな、彼が走り去った方向だ。
そちらを感情の篭らない瞳で見つめる。本来精神のみの存在である自分には眼球どころか視覚すら必要としないのだが――。
余分な遺産。抜けきらない人間でいた頃の感覚に今度こそ苦笑を漏らしながら白魔術士は一人ごちる。


273:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:25:30 vaksS7ZP
(…確かに女神が大陸を危険視していたのは自身の力でも突破出来ないアイルマンカー結界があったがゆえだ)

瞑目し、祈るような心地で静かに認める。
そうだ、結界の穴から外の世界を見てきた自分は知っている。結界が外れてしまえばキエサルヒマ大陸はただのちっぽけな小陸に過ぎない。
少なくとも結界外の世界全土と比較すれば狭小と言わざるを得ないだろう。
結界を脅威に思うからこそ女神は攻めてくる。ならばその結果そのものを消してしまえばいい。
短絡的とも言える極論だが…。理解できないわけでもない。
――だが…。
「だが、それは滅びを受け入れるのと同義だ…。虚無主義だ!」
唐突に湧いた憤怒と共に吐き捨てる。あの黒魔術士は理解していたのだろうか…。結界の破壊とは、それすなわち大陸の未来を女神に委ねるという行為だ。
仮にこの先、万が一にも女神の気まぐれか何かで結界を失った大陸が破滅を免れ続ける。そんな奇跡が在ると…?

答えはいともあっさりと導き出せた。あの大陸に住まう者ならば誰でもこの答えに辿り着くはずだ。
「在り得ない。祈るべき神のいないこの世界でそんな奇跡は絶対に起こらない…」
絶望しかないのだから起こり得る筈もない。
誰にともなく確信する。キエサルヒマは滅びる。それこそ、女神のほんの気まぐれで…。

「―――フッ、ハハハ…」

笑いが漏れる。肉体を捨て去り、精神のみの存在となって幾年月。大陸の存続のみを目的に生きてきた数十年はここに無為となった。
憤慨するべきなのかもしれない。号泣しても許される事なのかもしれない。だがどういうわけなのか、湧いてくる感情はどこまでも空虚だった。
暗闇の中、意味も無く止まらない哄笑とは裏腹に心が急速に乾いていくのが分かる。

ああ、そうか――

狂ったように笑い転げながら、裏腹に冷めた胸の内で悟る。この感情の正体を…。長く、自分自身に問い続けていたモノの答えを…。

彼はこの時ついに、ようやく――絶望するに足る理由を見つけたのだ。

魔術士オーフェンStrikers 第十話

「ウオアアアアアアアアア!!!」
ほぼ半壊した列車内、絶叫…いや、もはや咆哮と呼ぶに相応しい雄叫びを挙げながら赤髪の少女、ノーヴェが駆ける。
ある一点、自分と相対する黒服の男目掛けて。


274:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:26:56 vaksS7ZP
(この野郎この野郎この野郎!!ぜってぇ許さねぇ…不意打ちなんて汚ねえ真似かましやがって!!)
紅蓮に染まった思考で毒づきながら、頭のどこか冷静な部分――彼女の戦士としての部分が数秒前の光景をフラッシュバックさせる。
振り返った直後の、まるでタイミングを計ったかのように背後から扉越しに放たれた砲撃魔法。
自分のISが無ければ、そして直前に紡がれた呪文を聞いていなければ反応すらできずに列車の遥か後方まで吹き飛ばされていただろう。
(…チィッ)
完全には避け切れなかったのか、その頬には生々しい火傷の痕がくっきりと刻まれている。
チリチリと痛むそれはあの光熱破が物理設定での攻撃である事を克明に告げていた。
非殺傷設定じゃないのか?管理局員のクセに…?
解せない。が、彼女はその疑問を瞬時に打ち消した。今はそんな事はどうでもいい。幸いあの手の魔導師の仕留め方は心得ている。
相手は砲撃魔導師だ。接近戦にさえ持ち込んでしまえばあんな魔法怖くない。距離はあと三歩の所まで詰まっていた。
(バカが!こんな距離になるまでボケッと突っ立てんじゃねぇよ!)
半身の姿勢で短剣形のデバイスを構えたまま微動だにしない男を睨み据える。砲撃など許されない距離。完全に彼女の間合いだ。
「くたばれッ!!」
裂迫の叫びと共に鋼鉄の右足を振り上げる。瞬激の回し蹴り。常人離れした体のバネにより繰り出されたソレは凶悪な威力と速度でもって男の頭蓋を粉砕しにかかる。
当たれば文句無く必死の一蹴。だがその鋼の蹴撃が彼の頭部を抉ろうとする刹那、男が動きを見せる。

迫り来る旋風に対し微塵の躊躇いも見せず滑らせるように一歩踏み込み、あっさりと蹴りの軌道の内側へ張り付く。
ノーヴェの顔色に少なからぬ驚愕が浮かぶ。この場面で距離をとらず逆に懐に踏み込んでくる砲撃タイプの『魔導師』など彼女のノウハウには存在しなかった。
そんなこちらの様子など意に帰さず、男は距離を潰され威力の死んだ蹴りを肘を振り上げて受け止める。
「――ッ」
更に男は腕に力を込め、こちらの右足を弾き返すとごく自然な動作で懐へと潜り込み無防備なわき腹に右拳を軽く触れさせる。
「ッの野郎!!」
容易く間合いへの侵入を許したのがプライドに触ったのか、苛立たしげな声を上げながらノーヴェが男を引き剥がそうと再び足を振り上げる、が――。
「――フッ!」
それよりもわずかに速く、短い息吹と共に男の足元から爆発するような鋭い踏み込み音が響き渡る。

ノーヴェは知る由もなかっただろう。そんな技術があるという事すらひょっとしたら、彼女は知らなかったかもしれない。


275:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 00:28:55 vOcIOMho
支援

276:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:30:09 vaksS7ZP
これこそが彼の師、チャイルドマン・パウダーフィールドの秘奥にしてオーフェン自身の切り札の一つでもある密着状態から放つカウンター、すなわち「寸打」である。
相手のミリ単位の挙動から打撃タイミングを導き出すこの打法のパターンは二種類。
拳から身を引こうと後ろに下がればその勢いを利用し、そのまま相手を後方へと吹き飛ばす。シグナムとの模擬戦で使用したのがコレだ。
そして、もし逆に相手が踏み込んで来たのなら――

メキリ…と岩か何かを鈍器で砕くような音が響く。異音の発生源は男の拳、いや彼の拳が深々と突き刺さっているノーヴェの腹部から――。
「……カ…ハァッ……」
肺から空気を搾り出し、振り上げかけた彼女の右足が力を失い地に落ちる。
他者から初めて受ける容赦のない打撃。それは彼女のこれまでの人生最大の衝撃となってその体を貫いた。
ついさっきまで羽のようだった手足が鉛のように重い。腹部を襲う鈍痛に声も出せない。呼吸を司る器官は与えられた衝撃にその活動を放棄させられている。
彼女にとって、それら全てが未知の感覚だった。
尋常ではない痛みに前のめりに崩れ落ちるのと同時に抗いがたい――しかし心地良さとはほど遠い類の睡魔が襲ってくる。
(フザ、けんな……、何だ…っよ、これ…何で、アタシが――)
意識が混濁する。ある種恍惚すら感じながら闇へと落ちてゆく最中――
「悪いな…。武器持って襲い掛かって来る相手にゃあ誰だろうが手加減しない事にしてるんだ」
「…ッ……て、…め……」
若干の居心地悪さを匂わせるその言葉にカッと、酸素負債で堕ちかけていた意識がわずかに白熱する。
依然体は動かぬまま。だから地に伏したまま眼球だけをギリギリと動かしその男を視界に収める。
男も自分を見下ろしていた。横たわる自分に向けて油断無くその斜視に近い眼差しを向けている。
(―――ッ―)
その顔を、その姿を、決して忘れまいと脳裏に刻み付ける。
必ず倒すと心に誓いを立てる。自分のプライドを傷つけた男、初めて完全な敗北を喫した相手へと憎悪の視線を送りながら、
――やがて彼女は意識を宙へと手放した。

「―――よし、ここはもう大丈夫だな?」
完全に気を失い地面に横たわる少女をエリオがバインドで編まれた手錠で拘束し終えるのを待つと、オーフェンは足を扉――はもう無い。彼が吹き飛ばしてしまった――の方へと向けた。
「え?」
背後でエリオが疑問の声を上げる。
「どこへ行くんですか?」
意味が分からないというようなエリオ――キャロもか――の方へわずかに振り返りながら、
「リィンが列車を止めに向かったはずなのに停止する気配がまるで無い。何かあったんだ。ひょっとしたらその女とは別に襲撃者がいるのかもしれない」
「じゃあボク達も」
「いや、お前らはここに残ってくれ」
こちらに走り拠ろうとするエリオを手で制しながら言う。
「でも…」
「違うんだ。万が一彼女が目を覚ました時、見張ってる奴が居ないと逃げられる可能性がある。いい加減なのは達も追いついてくる頃だろうからそう心配はいらないと思うが…」
視線をエリオとキャロから赤髪の少女へと転じる。
――ダミアンはこの少女の事を知っているような口ぶりだった。
我知らず拳を固める。ただしエリオ達には気取られない角度で。
一刻も早くこの場に駆けつけるために一も二もなく飛び出して来てしまったため結局ダミアン自身からはろくな情報が引き出せなかった。
「…彼女には聞きたい事がある。油断して逃がすような真似は出来ればしたくない」
その言葉に――
「えっと…聞きたい事ってひょっとしてダミアンって人の事ですか?」
その言葉に対する反応は予想外の方向から発せられた。


277:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:34:03 vaksS7ZP
「キャロ…?」
エリオが驚いたようにチームメイトの方を向く。オーフェンも彼に習って首を回して彼女の方へ視線を向けた。
「…何故、奴の事を?」
思ったよりも硬い声で話しかけてしまった事に若干焦りながらフォローを入れる。
「いや、確かにその通りなんだけどな。奴とは…まぁ、色々あって―彼女がダミアンの事を知っているんなら情報が欲しいんだ」
「…………………」
するとキャロはスカートの裾をモジモジとさせながら何かを迷うような仕草を見せる。
「ん、どうした?」
「そ、その…」
だがそれでも促してやると彼女は存外素直に話し始めた。チラチラとこちらの様子を窺うように…
「つまらない、事なんですけど…結界の中から出てきてから、ていうか、あの…ダミアンさんって人に会ってから、なんとなくオーフェンさんの雰囲気が変わったような気がして…。
その、前よりちょっと、怖い感じっていうか――ご、ゴメンなさい!怖いって言っても別にその、お、おかしな意味じゃなくって」
言葉の途中で失言を感じたのかキャロが顔を真っ赤に染めて捲くし立てる。わずかに涙目になりながら慌てているその様は同情を引くが、なんとなく愛嬌を感じるようでもあった。
わたわたと手を振り回しながら言い訳―だかなんだかよく分からないもの―をしゃべり続けるキャロを励ますようにフリードが彼女の周りを鳴きながら旋回する。
「う~ん…」
オーフェンは考え込むように腕を組むとそちらから一旦目を離し、
「俺って怖いかぁ?」
自分を指差しながらキャロの隣にいるエリオに話を振った。
「はい」
少年が考える間も見せず一切の迷い無く頷いてくるのを見てオーフェンは自分の頬が引きつるのを感じた。
「……言い切りやがったな」
「え?えっと、すいません…。あまりにも考える余地がない質問だったので―痛っ!何でぶつんですか!?」
とりあえず彼の頭をベシン!と引っぱたいてやってからオーフェンは一つガスを抜くつもりで大きく息を吐くと未だに何やらしゃべり続けているキャロの頭を帽子の上からポフポフと叩いてやる。
「あぅぅ……」
狼狽するキャロにオーフェンはわずかに苦笑しながら、
「雰囲気、てのは自分じゃ分からんが…そうだな。余裕がなくなってるのは確かかもな…。怖がらせちまったんなら謝る」
「す、すいません…」
頭に手を置かれたままシュン、とうな垂れるキャロに再び微苦笑を漏らす。
「とにかくここを乗り切ったらダミアンの事もちゃんと話す。だから今はとにかく――」
刹那、悪寒を感じてオーフェンは腰の鞘からフェンリルを抜き放ちその場で背後に向けて横薙ぎに一閃させた。


278:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:36:52 vaksS7ZP
ギィンッ!――と、鈍い金属音と共にフェンリルを握っている手に軽い衝撃が伝わる。
(何だ!?)
弛緩しかけていた神経を瞬時に張り詰め直す。それと同時、自分を襲ったモノの正体を確かめるヒマもなく、闇の中から自分がたった今出てきて、
そして向かおうとしていた方向――すなわち重要貨物車両の方から無数の気配が飛来してくる。
オーフェンは迎え撃つように両手を掲げ、叫んだ。
「我は紡ぐ光輪の鎧っ!」
呪文に呼応するように無数の光の輪で編まれたような防御壁が自分と、後ろの2人を守るように展開される。
それに一拍遅れて連続した金属音が防御壁を叩く。勢いを失って次々と地に落ちるそれをオーフェンの瞳が捉える。
小振りなナイフ。それは持つ部分が異常に小さい、刃の部分が尖端から小さな扇状に広がっている奇妙なナイフだった。スローイングダガーの一種なのだろうが…。
(ともかく、他にも敵がいるって読みは当たってたワケだ…)
次撃が来ないのを確認して、オーフェンは防御壁を解いた。と、その瞬間を狙っていたとでも言うように再び暗闇から何かが飛び出してくる。
が、今度はナイフの類ではなかった。
弾かれたような速度、地を這うような動きで何かが――いや、誰かがこちらに駆け込んでくる。
手振りで後ろの二人に離れてろと告げるとオーフェン自身も構えをとる。
(魔術は…無理だな。もし狙いが外れて向こうの通路を壊しでもしたらここで立ち往生するハメになる。素手でねじ伏せるしかないか)
決して短くない距離を凄まじい速さで疾駆する相手を見据えながら胸中で一人ごちる。敵の技量は定かではないが、あの赤髪の少女と同等程度の使い手ならば不可能ではないはずだった。
と、距離が近づいたためか相手の姿が鮮明になる。矮躯の少女…いや、というよりもむしろ――
(ガキ!?)
その姿はエリオ達とそれほど背丈も違わないであろう子供だった。
「シッ」
こちらのわずかな動揺を見て取ったのか、速度は緩めぬままにかすかな息吹と共に少女の腕が鞭のようにしなる。
その手には先ほど投げつけられたものと同じ型のナイフ。
「ッ、チィ――!」
近距離から真っ直ぐこちらの眉間に向けて放たれたそれを滑らせるように体を沈めてかわす。
頭部をわずかに掠っていく刃物の感触に舌打ちしながら中腰の姿勢のままオーフェンは少女に向けて一歩踏み込むとそのまま拳を突き出した。
真正面から突進してくる少女に対するカウンターでの一撃。避けられるようなタイミングじゃない。
「―――」
だが少女は顔色一つ変えず、ナイフを持っていた手とは違うもう一方の手をわずかに閃かせる。


279:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 00:39:38 JSeysbyb
支援する!

280:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:40:41 vaksS7ZP
「ッ…!」
その意味を理解するよりも早く体の方が勝手に動いた。拳は突き出さずに両腕を交差させて顔面を守る。
敵を目の前に視界を塞ぐような真似は避けたかったが他にどうしようもなかった。
遅れて左腕に焼けるような痛撃が走る。だがオーフェンはそれに構わず両腕を解いた。
予想通りというかべきか、少女の姿はオーフェンの視界の中には無かった。
(…………………)
腕に刺さったナイフを引き抜き、痛みに舌打ちしながら背後を振り返る。そこに果たして、少女はいた。
ただその距離がまたかなり離れている。車両の中央にいる自分達からもっとも遠い位置、つまりはこの車両の最端に少女は存在していた。
長くウェーブのかかった銀髪に――今気が付いたが――左目に眼帯をしている。
よくよく観察してみれば風変わりな格好の少女だった。
彼女はその小さな肩にあの赤髪の少女を担いでいた。担いだまま、こちらに向けて厳しい視線を送り続けている。
「――通信が一向に通じないのでまさかとは思ったが…。駆けつけて来て正解だったな」
「お前は……」
こちらの腕の傷を心配してか駆け寄って来ようとするエリオとキャロを手で制し、魔術で傷を塞ぎながら少女に話しかける。
「お前達は仲間なのか?」
「………ならば、どうだと言うんだ?」
ジリジリと後ろに退がりなら――どのみち行き止まりだがそうせずにはいられないものなのだろう――憮然とした表情で少女が答える。
「ダミアンもか?」
「なに…?」
それは予想外の質問だったのか少女の眉が不思議そうに上がる。
「貴様、なぜダミアン殿の事を………」
警戒の色を濃くする少女に向けて再び口を開こうとしたその時、ふいに気配を覚えてオーフェンは天を仰いだ。
「ッ!?チィ、やはり時間をかけすぎたか!」
こちらに習ってか、同じように上を見上げた少女が焦燥の声を漏らすのが聞こえた。
その刹那、突如現れた桜色のバインドが意思のあるロープのように銀髪の少女の上半身に絡みつき、その体を拘束してしまった。
「くっ!?」
自由を奪われ苦悶の声を上げる少女の事は一旦無視する事にしてオーフェンは天井に開いた穴から降ってくる二人の女性に声をかける。
「なのは…フェイトもか」
「すいません、遅くなりました!ちょっと数が多くて手間どっちゃって…」
申し訳なさそうに頭を下げるなのはに手を振って答える。フェイトの方にはエリオとキャロが駆け寄っていた。


281:魔術士オーフェンStrikers
08/12/31 00:42:27 vaksS7ZP
近寄ってきたエリオが若干の手傷を負っている事に気付いてオロオロと狼狽する彼女を見ながらオーフェンは隣に降りてきたなのはに問いかける。
「ヴィータはどうしたんだ?」
「あ、はい。ヴィータちゃんには列車の制御室の方に向かってもらいました。リィンがティアナ達のフォローに向かったってシャーリーから念話で聞いたので」
それを聞いてオーフェンは不安そうに顔を曇らせる。
「大丈夫なのか?アイツで…」
制御室なるものがどのようなものかは定かではないが、どのようなものだとしてもこれだけの重量物を自動で動かす代物が単純な造りをしているとはオーフェンには思えなかった。
そんなこちらの懸念に気付いたのか、それとも単に気付かれるほど顔に出ていたのか(恐らく後者のように思える)なのはが苦笑いしながら言ってくる。
「心配いりませんよ。操縦の手順はロングアーチの子達が指示してくれますから。それより――」
そう前置くとなのはは表情を引き締め、背後に振り返る。彼女の視線を追うとそこには拘束されたまま佇む銀髪の少女の姿があった。
今は抵抗もせずおとなしくその場に座り込んでいる。
「彼女は、一体?」
彼女の質問に肩を竦めて答える。
「俺が聞きたいくらいだよ…。俺が少し前にライトニングスから分断させられたのは聞いてるか?」
「はい、ロングアーチから報告がありました。術式も魔力反応すら見せずに転移させられた、って話でしたけど」
ちょっと信じられませんけど…と付け加えるなのはに頷きながら、
「その辺の事は戻ってから全員の前で話すよ。ともかくダミアン―俺を転移させた奴の事だが―の話じゃあの女達は俺とダミアンに話をさせるため、
いや、他の奴に話を邪魔させないために来たみたいな口ぶりだった」
「……何でですか?」
「さぁそこまでは、な。だがダミアンと彼女らが協力関係にあるのは間違いなさそうだ――」
「あ、えっとそっちの事じゃなくて…」
「うん?」
手を振ってこちらの言葉を遮ってくるなのは。
「その、ダミアン…さん?は何でそんな事までしてオーフェンさんとお話したかったんですか?」
「―――」
それは、ある意味核心を突いたセリフではあった。ダミアンの目的が自分との接触であった事は間違いない。
理由もハッキリしている。ただそれをそのままなのは達に言うのはどうにも憚られた。
(世界を滅ぼす女神を殺せる魔王を召喚する事が出来たのか出来なかったのか聞きにきたんだ、なんてな。
事情を知らない奴が聞いたら気が狂ったと思われても仕方ないだろ、実際…)
「オーフェンさん?」
「ん、あ、ああ。悪い、ちょっと考え事を――」
話の途中で急に黙り込んでしまったこちらを不審に思ったのか首を傾げるなのはに慌てて答える。
と、直後―――。

「あああーーーーーーーーーーーーー!!!」

車内全体をビリビリと振動させるほどの甲高い大音声が轟いた。
「な、何だ!?」
あまりの声量に思わず耳を塞ぎながら振り返る。
そこには反対側の入り口――かなり遠い――でビシィ!とその小さな指をこちらに突きつけたまま大きく口を開いているリィンと、その後ろで息を喘がせているスバルとティアナの姿があった。


◇     ◆    ◇     ◆    ◇    ◆    ◇    ◆    ◇

「――――――」
モノレールの遥か上空、精神の王たる彼はただ眼下を見下ろしていた。
物理に作用されないその体は打撃のような激しい強風の中悠然と佇んでいる。
本来何も映さない瞳――今はどこか濁ったモノを感じさせるその瞳を、手で覆えるほどの小ささになった列車に向け――

ただ…ただ…機を待ちながら…。


魔術士オーフェンStrikers 第十話  終


282:魔術士オーフェンstrikers
08/12/31 01:08:07 7C7bKMD0
以上で投下を終了します。支援してくださった方ありがとうございました。

283:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 01:23:27 /yO12mgL
>>282
本音スレには行かなくていいのか?
向こうに待ってる人いるぞwww

284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 01:25:45 ATY2Lxg5
年が変わる前に続き読めてよかった、GJ!
公式ですっかり魔王扱いされてるんだよなw


285:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 01:26:42 /yO12mgL
おっと、感想忘れてたよ
スマンかった。


>>282
すごく面白かった。
文章力上がった。
化けたよアンタ。

自演じゃないですよ。

286:魔術士オーフェンStrikers氏代理
08/12/31 01:40:19 O4YmnRif
以上で投下終了です。
支援感謝&お目汚し失礼しました。というか投下間隔空けすぎだろ自分。前回の投下は一体何ヶ月前だったっけ…。
まぁ全ては自分の遅筆と執筆時間取れない忙しさのせいなんですが…。
一応ラストまでの展開は全部頭の中で組み立ててあるので途中で投げ出す事だけはないと思います。
あとかな~り前に拍手コメでオーフェン続編の報を教えてくれた方、本当に遅ればせながらですが感謝の謝辞をありがとうさせてください。
あれが無かったらきっと永遠に気付かなかったと思います。ファン失格ですいません。



上に投下終了宣言あるけど向こうにあったので一応貼り貼り

287:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 01:50:27 9lSlXYca
こんばんは。
一話パートBが書きあがりました。
ぶっちゃけパートAより長いので、6~7レス投下したら5~7分の休みを入れ、さるを防ぎたいと思います。
勿論支援をいただければ幸いです。

戦闘パートは書いたことがあまり無いので苦手ですが、投下して大丈夫ですか?


288:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 01:57:35 rFCZadv+
支援

289:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:01:21 9lSlXYca
リリカルガウザー 
一話「闇の騎士、魔法の国へ」パートB

ホテル・アグスタ六階の高級ルームの一室。
この部屋では、五十代くらいの白髪の女性が、自分の指にはめられた数多くの指輪を見ていた。
それぞれの指輪には大きなダイヤモンド、サファイア、エメラルド等の高価な宝石が付けられている。

「う~ん…美しいわ…」

この女性は大手化粧品会社の女社長で、なによりも宝石が大好きだった。
会社での会議の途中でも自分の指にはめた宝石たちに見惚れ、会議を有耶無耶にしてしまったことも数多くあった。
だが、彼女にとってそんなものはどうでも良かった。
むしろ自分たちが愛する宝石をずっと見ていられるのならば、例え自分の会社が無くなる事になっても構わないとさえ思っていた。

「でも、そろそろお腹空いたわね…」

とはいえ宝石への愛着だけで腹が膨れるわけも無く、流石に空腹は感じ、室内に設置された時計を見てみる。
時計の針は12時半を示していた

「ホテルマンさん遅いわねぇ…どうしたのかしら?」

ホテル・アグスタは、食事の準備が整った場合、ホテルマンが決められた時間に呼びに来る事になっている。
昼食の場合ホテルマンが来るのは12時のはずなのだが、もう30分も遅れている。
女性は「まぁ、良いか。何か都合が悪いのかもしれないし」と思い、食堂に向かおうとすると、インターホンが鳴った。

「あ、はい!今開けます!」

女性はそう言い、ドアの方に歩いた。
そして「一応遅れたんだから少し注意でもしようかしら?」と思いながらチェーンを外し、ドアノブを回してドアを開いた。
だが、扉の向こうにいたのはホテルマンではなかった。

「!?、きゃあああああああああ!?」

ドアの向こうにいたのは、金属バットに似た姿を持つ異形のモンスターであった。
モンスターは女性の首を左手で掴み、ゆっくりと持ち上げた。

「だ…誰か…」
「ふっふっふ、貰うぞ、貴様のラーム!」

モンスターがそう叫んで口から息を吸うような動作をすると、女性の口から輝く黄色の光が放出され、モンスターの口に吸い込まれていった。
やがて光が女性の口から出なくなると、女性は生気を失ってガクリと頭を下げ、残った肉体は消滅した。
この黄色い輝きがラーム、人間が持つ生体エネルギーの一種である。
このラームがダークザイドの食料であり、生きる為の生命力でもあるのだ。
そして女性のラームを吸ったモンスター・闇生物バドールはスーツを着用した少し体型が太めのホテルマンに変身し、唇を手の甲で拭った。

「はっはっは、金持ちの人間が持つラームは最高だ。腹が満たされる。はっはっはっは!」

ホテルマンに変身したバドールは君の悪い笑い声を上げながら、女性が居た部屋の玄関から去っていった。


黒岩はシャッハ、セインの案内で、行方不明事件の現場であるホテルアグスタまで来ていた。
本当は速やかに捜査を行い、ダークザイドと思われる人物と接触することが目的であった。
本当にそれだけが目的であったのだが…

290:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:03:19 9lSlXYca
「うわ~♪綺麗なドレス…こんなドレス、着てみたかったんだぁ~」
「セイン!遊びじゃないんですよ!」
「だって、シャッハだってドレス着てんじゃん。」
「こ…これは、場所に相応な服装をしようと思ったから来ているまでです!こんな豪華な場所に、修道服では失礼です!」

セインは水色の、シャッハは赤みがかかった桃色のドレスを身に付け、黒岩の後を歩いていた。
せめて黙っていてくれればまだ許せるものの、お互い口喧嘩をしながら付いてくるのだから溜まったものではない。
他の利用客たちの自分達を見つめる嘲笑と侮蔑の視線がとても痛かった。

「大体何その胸を強調したドレス?ペチャパイのクセに見栄張らないでよ!」
「セインこそ、そういうことは人の胸に文句を言う事ができるほど胸を大きくしてから言って欲しいですね!」
「何よ!この貧乳シスター!」
「言いましたね!お子様!」
「おい!煩いぞ!」

視線に耐え切れなくなった黒岩は後ろを振り向き、大声で二人に注意した。
二人は喧嘩を止め、同じタイミングで黒岩の方を向く。
黒岩はこの息の合い方を是非日常生活で実践して欲しいと心で思った。

「だってこの貧乳シスターが…」
「まだ言いますかこのお子様が~!」

シャッハは両手でセインの頬を掴み横に引き伸ばした。

「ひ、ひひゃいでひょふぉのふぃんひゅうすぃすだ~!(い、痛いでしょこの貧乳シスター~!)」

セインもシャッハの両頬を掴み、横に伸ばした。

「やひぃまひだねふぉのふぉふぉはま!(やりましたねこのお子様!)」

注意をしても未だに喧嘩を続ける二人を見て、黒岩はここまでくると感心するとさえ思った。
本当に何処までも涼村暁と速水克彦の凸凹コンビにも匹敵する凸凹シスターコンビである。
だが感じるのは不快感だけではなかった。
この二人のやり取りを見ていると、心のどこかに賑やかさ、楽しさのような感覚を得ることが出来たからだ。
エリもこのようにどこか楽しげな眼差しで暁と速水のやり取りを見つめていたのだろうか?
そう思うと、また自分が未練がましい男だと思ってしまうが、愛した人と同じ体験をすることが出来てと思って嬉しくなる。
そして少し経つと、シャッハとセインの腹の虫が音を出した。

「う…」
「あれ…?」

二人は赤面し、自分たちの腹を手で押さえた。
黒岩も調度腹が空いたと思って時計を見ると、もう1時になっていた。
三人とも昼食はまだのため、食事をするには丁度良い。

「全く、喧嘩のし過ぎだからそうなるんだ。飯を奢ってやる。付いて来い。」
「うん!」
「あ…はい…」

三人は足並みをそろえ、ホテル内に設置された洋食専門レストランに向かった。


洋食レストランはかなり込んでいたが、丁度席がひとつ空いていたため、待ち時間無しで座ることが出来た。
そこでセインはサーロインステーキとオレンジジュースを、シャッハはオムライスとコーヒーを、黒岩はスパゲティナポリタンとワインを注文し、食事をした。

「う~ん!やっぱ高級ホテルのステーキは美味しい!黒岩さん!ありがとね~♪」
「すみません黒岩さん、わざわざ奢って貰ってしまって…」


291:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:04:55 9lSlXYca
セインとシャッハは礼を言うが、今の黒岩の耳には入っていなかった。
なぜなら黒岩は、今自分が一口食べたスパゲッティナポリタンに腹を立てていたからだ。
黒岩は近くに居るウェイトレスを見つけ、スパゲッティの皿を持ち上げると「ウェイトレス!」と声を上げて呼んだ。
すぐにウェイトレスが駆け寄ってくると、黒岩はスパゲッティの皿をウェイトレスに突き出した。
「このスパゲティナポリタンは失敗だ。作り直してもらおうか。」

ウェイトレスが「は?」と首をかしげると、黒岩は目の色を変え、得意の薀蓄を披露した。

「知らないのか?パスタという物は柔らかく、かつ歯応えがある料理でなくてはならない。
これでは柔らかすぎて歯応えが無く、後味が悪くなってしまう。
今すぐ作り直せ。」
「申し訳ありません!」

ウェイトレスは黒岩に謝罪すると、パスタの皿を持ち、厨房の方へと歩いていった。

「ちょ、ちょっと黒岩さん!」

シャッハは慌てて黒岩の耳元に唇を近づけ、焦りながら囁いた。

「これはクレームじゃないですか!良いんですかこんなことして!?」
「フン、間違った料理を行ったこの店に非がある。それに高級レストランとはいえ、料理とは他人に喜んで食べて貰うもの。
不満だと客が言ったなら、客の指摘どおりに料理を作り直して出す。
文句を言わず客の指摘を聞き、満足してもらえる料理を出す店と料理人こそが一流の店と料理人なんだ。
お前達は知らないのか?」

黒岩は作法や礼儀、そして様々な知識を持った紳士的な人間ではあったが、料理やコーヒーの入れ方については煩かった。
地球では秘書であるユリカに自分の好みのコーヒーの味を徹底的に教え込み、食事に行ったレストランのロールキャベツやトマトスープにクレームを付け、作り直させた事がある
黒岩もこういう部分については暁ほどではないものの、傲慢な人間であった。

「お待たせいたしました。」

七分ほど経つと、先程のウェイトレスが作り直したスパゲティナポリタンを持ってきた。
黒岩より先に料理を食べ終えていたシャッハとセインは、彼がパスタを食べ終わるのを待った。
だが黒岩は待っている彼女達などお構いなしと言わんばかりに、パスタをゆっくりと食べた。

「ねえ!早く食べてよ!」

こういうゆっくりと言った状況が苦手なセインは、貧乏ゆすりをしながら黒岩に不満をぶつけた。
だが黒岩はそんなセインの不満を聞くと、セインに目線を向けて語り始めた。

「知らないのか?料理はゆっくりと、味を噛み締めるようにして食べなければならない。それは…」
「ああもう分かった!分かったからお好きな速度で食べてください!」

セインは苦手な薀蓄を聞き流すために、耳を塞ぎながら引き下がった。
セインは黒岩が薀蓄を語り始めるとすぐに流そうとする。
堅いことより楽しいことが好きなセインにとって、黒岩の薀蓄は耳障りなことこの上ないのだろう。
セインの隣に座っていたシャッハはそんなセインを見てふっと噴出してしまうのであった。

292:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:07:08 9lSlXYca

食事をし終えた三人は、三手に分かれて犯人と思われる人物を探した。
セインが一階を、シャッハが二階を、黒岩が三階を、時間をかけてくまなく捜索した。
だがそれらしき人物は見つからず、三人は一旦合流地点にしていた一回のエントランスに集まった。
「ダメ…全然いないよ。」
「こっちもです。」
「俺の方もだ。やはり犯人の特徴が無いからには、探しようがないな。」
「ホテルの職員の方々に、質問してみましょうか?」
「そうだな。それが良い。」

三人は話し合いの結果、アグスタに居るホテルの従業員たちへの聞き込み調査の開始を決め、設置されているエレベーターの方に向かおうとした。
その時だった。

「…ガウザー!お前ガウザーじゃないか!お前も転移に失敗したのか!?」
「ん?」
「ふぇ?」
「誰ですか?」

階段の方から一人のホテルマンが現れ、黒岩の傍に駆け寄ってきたのだ。

「お…お前は!?」
「久しぶりだな!ガウザー!」

ホテルマンは黒岩の両肩に手を置き、喜びを露にした。
この男、闇生物バドールは、黒岩省吾・暗黒騎士ガウザーの知り合いであった。
バドールは闇次元界から地球にダークザイド達が移住する際、次元移動に失敗して消息を絶ったが、このミッドチルダに流れ着いていたのだ。
それ以来この世界で暮らしていたバドールは、様々な高級ホテルを転々とし、多くの富豪達のラームを吸ってきた。
しかし、今までは極力目立たないよう行動してきたが、このホテル・アグスタに訪れる客達は皆有数の大富豪ばかりだった。
なので節操が無くなってあまりにも多くの人間達のラームを吸いすぎてしまい、大きな事件となってしまったのだ

「黒岩さんの知り合いですか?」
「でもなんでミッドに居るのよ?黒岩さんは地球人でしょ?」

黒岩の両脇に居たセインとシャッハは、黒岩にミッドチルダ人の知り合いが居るということに首を傾げた。
「違う、人違いだ」と黒岩は否定しようとしたが、バドールが擬態したホテルマンは黒岩の両肩から手を離し、シャッハとセインを交互に見た。

「これがアンタの新しい獲物か…しかし一気に二人もモノにしちまうなんて、アンタもやるな!」
「違う!この二人はそんなものではない!」

黒岩・ガウザーが好むラームは、自分に惚れた女のラームだった。
黒岩は何人もの女性を口説き落とし、ラームを吸い取ってきた。
その中で唯一ラームを吸えず、本心から愛してしまった女性が、対ダークザイド対策組織「SAIDOC」の女性隊員・南エリであった。
自分が今まで知らなかった「だるまさんがころんだ」を教えてくれたときの彼女の笑顔は、今でも脳裏に焼きついている。

「違うのか…じゃあ…!」

ホテルマンは、いきなり黒岩を突き飛ばし、シャッハとセインの首を掴んだ。

「うわ!?」
「ぐっ…!」
「シャッハ!セイン!くっ…バドール!貴様!」
「俺がこの女達を食ってやる!金持ちとは言え年寄りばかりのラームで、食中りしそうだったんだ!ヒャッハッハッハ!!」

ホテルマンは不気味な笑い声を上げ、金属バットをモチーフとした不気味な怪人に姿を変えた。

「う…うわああああ!?」
「モンスター!?なら、コイツが…犯人…てやあぁぁあ!!」

シャッハは足を振り上げ、バドールを蹴る。
そしてバドールが怯んだ隙にセインと共にバドールから離れた。

293:名無しさん@お腹いっぱい。
08/12/31 02:09:30 D/nRlqnv
支援!

294:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:09:49 9lSlXYca
「ぐぅ…貴様ぁ!」

怒ったバドールは右手を金属バット型の棘付き棍棒に変化させ、シャッハに向けて襲い掛かった。
そしてシャッハはペンダントのような物を取り出すと、胸元に構えた。

「逆巻け!ヴィンデルシャフト!!」

シャッハがそう唱えると同時に、シャッハが着ていたドレスが青緑色の戦闘服に変わり、両手には二刀一対のトンファーが握られていた。
この青緑色の戦闘服こそ、ミッドチルダの魔導師の中で「騎士」と呼ばれる者たちが身につける騎士甲冑であり、両手の「ヴィンデルシャフト」というトンファーが武器である「デバイス」であった。

「何!?貴様魔導師か!?おのれぇ!」
「せやっ!」

シャッハは二刀のトンファーでバドールの棍棒を受け止めると、棍棒をトンファーで挟んだままバドールと共にエントランスの自動ドアから出て行った。
室内では十分な戦闘を行うことが出来ないからである。
黒岩とセインもバドールとシャッハを追い、自動ドアから出て行った。


バドールとシャッハの戦闘フィールドはホテル付近にあった森の中に移動した。
シャッハがここまでバドールを誘導したのは、ここならどんなに大きな戦闘をしても被害は大きくなく、屋外のために全力で戦うことが出来るからだ。

「女ぁ…貴様ぁ!!」
「ここなら思い切り戦える!覚悟!」

シャッハはバドールを棍棒ごと突き飛ばすと、光となって周囲を飛び回った。
シャッハが得意とするのは素早さを生かした高速戦闘である。
彼女はバドールが追いつけないほどの速さで木々の間を潜り、バドールに攻撃を繰り返していく。
バドールは闇雲に棍棒を振り回すが、AAAランクの騎士である彼女の動きに追いつくはずも無く、一方的な攻撃を受け続けた。

「このアマぁ…このバドール様に…!」
「今だ!」

シャッハはバドールの体力の限界を察し、光の姿から元の細身の女性の姿へと変わり、バドールに飛び掛りながらトンファーを振り上げた。

「疾風一じ…」

そして止めの一撃をその身に決めようとした瞬間、バドールが頭部を彼女に向けた。

「何!?」
「何てな!!」

バドールの頭部が口のような穴を開き、そこから緑色の粘着質な球体型の液体が発射され、シャッハの体中に浴びせられた。
液体を浴びせられたシャッハはそのまま地面に落下し、うつ伏せになって動けなくなった。

「体が…痺れる…」

シャッハは力を振り絞り、立とうとしてみるが、痺れに苦しめられ、指一つ動かすことが出来なかった。

「ヒャッハッハッハ!俺の特性痺れエキスだ!どうだ?凄い効果だろ?おい!」

バドールは口調を荒げ、シャッハの脇腹を蹴り上げて仰向けの姿勢に強引に変えた。

「がは!」
「よくもバドール様に恥じかかせてくれたなこのクソアマ!」


295:リリカルガウザー ◆tLVkxXSbUQ
08/12/31 02:11:48 9lSlXYca
バドールはシャッハの腹部に何発もストンピングキックを打ち込んで行き、それが終わると棍棒でシャッハの細い体を何度も殴りつけた。
シャッハが痛みに声を上げ、騎士甲冑がボロボロになり、細い肌の一部が露になる。
激しい痛みにシャッハは止めを懇願するが、バドールは拷問のような一方的な暴力を続けた。
シャッハはこの痛みと苦しみに恐怖を覚え、痺れを堪えて顔を逸らした。
だがバドールに髪を掴まれて顔を元の位置に戻されてしまった。
シャッハの顔は恐怖に歪み、目尻には涙が光っていた。

「うあああああああああ!!あ…あああああああああああ!!」
「ヒャーーーーーハッハッハッハッハ!!ヒャーーーハッハッハッハッハ!!」

シャッハが苦しみの悲鳴をあげ、バドールは残忍な笑い声を上げてそれを楽しむ。
そんな絶体絶命の危機のその時、バドールに向けて一枚の名刺が飛んできた。
名刺は物凄い速さで宙を泳ぎ、バドールの長い額に突き刺さった。

「ぐあ!?」

驚愕したバドールはシャッハから数メートル下がり、額から名刺を引き抜いた。

「クソ…誰だ!?」

バドールが名刺を見ると、それには「黒岩省吾」という名前と黒岩相談所の住所、電話番号が記されていた。
そしてバドールとシャッハが名刺が飛んできた方向を向くと、そこにはバドールに向けて指を指す黒岩省吾の姿があった。

「く…黒…岩…さ…」
「ガ、ガウザー!?」
「知っているか!?世界で初めて名刺が発祥したのは、後漢時代の中国だ!士大夫階級の人々が姓名が書いた紙の札を門前に置いた箱に入れ、
取次ぎを頼んでいた習慣が、やがて全世界に広まり、今の名刺交換と言う手段になったという!」
「だから何だ!?」

バドールは黒岩が突然語った演説に困惑し、声を荒げて突っ込みを入れた。
そしてセインが少し遅れて到着し、黒岩の隣に並んだ。

「もう黒岩さん!そんなに速く走らなくても…!?、シャッハ!?」

セインは傷付いたシャッハの姿を見つけ、目を大きく開いた。
そしてシャッハの傍に駆け寄り、彼女を抱き起こす。

「シャッハ!ねぇ!大丈夫!?」
「セ…セイン…だ…い…じょう…ぶ…」

シャッハは既に満身創痍で、話すのもやっとの状態だった。
セインは涙を流しながら傷付いたシャッハを抱きしめ、その光景を見た黒岩は眉間の皺を深め、二人の前に移動した。

「ば…馬鹿な!?暗黒騎士ガウザーともあろう者が、人間を庇うのか!?」
「暗黒…?」
「騎士…?」

「暗黒騎士」
その邪悪な感じがする異名で呼ばれた黒岩の後姿を、セインとシャッハはゆっくりと見上げた。
そして黒岩は、二人の目を少しだけ気にするように横顔を二人に向けると、右手を頭上に構え、再び前を向いた。


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