リリカルなのはクロスSSその82at ANICHARA
リリカルなのはクロスSSその82 - 暇つぶし2ch380:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 23:00:46 6wgrxiis
>>379
明日までメンテですね

381:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 23:51:34 vEVF9eYU
メンテ終了予定時刻は明日のAM7:00の予定となってますね
それまでまとめサイトに作品を載せたりするのも無理ですね

382:379
08/11/16 01:17:09 nRSEaWKR
>>380-381
遅ればせながら、情報サンクスです

383:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 07:43:05 K7ACf3nb
ロックマンゼロさんのクロス作品に非常に似ている作品を書いている人を
モバゲータウン内の小説のコーナーで見つけたのですが
この作者はご本人様なのでしょうか?もしくはご存知でしょうか?
題名は『紅き戦士と魔法少女達』です。投稿小説の検索でこの題名または『リリカルなのは クロス』
で調べると出てきます。

一応報告した方が良いと思い報告させていただきました。

384:反目のスバル ◆9L.gxDzakI
08/11/16 10:05:58 QKY7k0Cm
おはようございます。
ご意見承りました。現在対応を検討中ですので、勝手な行動をしないよう、ほかの皆様方におきましてもご了承願います

385:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 13:57:22 T9jq36CN
こんにちは。
投下したいのですが、盗作関連の事態が鎮静化するまで止めておいた方が良かったりしますかね?

もし大丈夫なようでしたら、14:40頃に投下予約をお願いします。

386:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:00:22 CqqfqHbk
>>368
GJ
てかそいつらはクロスさせちゃいけないだろ、腹筋崩壊的な意味でw

理想郷でマブラヴオルタとのクロスやってるのがいたよ。ドリアン+ウォッカばりに危険な組み合わせなのに…。

387:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:09:33 mwU5aQst
支援
ついでに盗作疑惑の見てきたがほんとにそっくりだった。


388:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:20:31 Pe0MwQmk
モバゲーって確か前にもゲームの盗作で問題になってたよな?
どうなってんだあそこは一体

389:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:43:15 T9jq36CN
遅れました、それでは投下開始します

390:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:44:05 T9jq36CN

酷く心が重く感じる。
以前に味わった事のある、懐かしい感覚だ。
ただ、傍観しているしかなかった八年前。
辛い現実を前に苦しんでいる大事な人へ、笑顔を取り繕って大丈夫、と励ますしかなかった事件。
恐怖と悲しみに身が凍り付き、喉の活動制御が困難になって。
彼女の前で、平静を装って喋る事がどんなに辛かった事か。
―そして今現在も。
恋人の娘、さらに大事な親友も手の届く所にいない。
だが以前のように、負い目を胸にひたすら悲しんでいるつもりは無い。
『傍観』という名の逃避はもうしないと決めたのだ。

それは世界で最も嫌悪すべき物なのだから。

第十四話「決戦へ」

ユーノが重たい目蓋を持ち上げると、ぼんやりとした視界が広がった。
自分はどうやら眠っていたらしい。
おぼろげな意識を覚醒させようと体を起こし頭を振った所で、ずり落ちる毛布に気が付く。

「……仮眠室か」

ユーノはボソリと呟いて、毛布を拾い上げた。
最後の記憶は、聖王のゆりかごについて纏めたデータを各部署に送った所で途切れている。
―スカリエッティがゆりかごを保有していると仮定。
恐らくそれが二つの月の魔力を最大限活用出来る場所、衛星軌道上へと飛び立つ筈だろう、と。
次元跳躍攻撃さえも可能になるそれを許すのは非常に危険であり、予言の完成に一役買う事は間違い無い。

「……ふぅ」

起きて早々重い溜め息をついて立ち上がる。
誰かが寝てしまったユーノをここまで運んでくれたのだろう。
ここ、無限書庫備え付けの仮眠室は幾度と無く世話になった場所だ。
もしかしたら、局の寮よりも使用頻度は高いかもしれないな。
ユーノはぼんやりとそう考えながら、別のベッドで鼻提灯を揺らし爆睡している司書を横目に無限書庫へと戻った。

「アルフ、ごめん。寝ちゃってたみたいだ」

無重力空間。
ユーノは緩やかに揺れているふさふさの尻尾に向かって声を掛けた。
声に反応して振り返った、頭から耳を生やした少女は軽い挨拶の後、苦笑しつつ手を振ってみせる。

「いいんだよ、ユーノは陳述会の後からずっと働きっぱなしだったじゃないか」

むしろもっと寝てな、と容赦の無い言葉を浴びせられてしまい、思わず苦笑する。
十年来の友人であるアルフも、以前からちょくちょく手伝いに来てくれているのだ。
感謝の念が絶える事はない。

―公開意見陳述会が襲われ、地上本部と機動六課が壊滅してから四日が経っていた。
正に、歴史的大敗と言える。
マスコミもこの事件について朝昼晩引っきりなしに騒ぎ、一向に止む気配は無い。
怪我人多数、行方不明者三人。
行方不明者の内訳はギンガ・ナカジマとヴィヴィオ、そしてソリッド・スネーク。
前者二人は襲撃で誘拐されたのだが、スネークは違う。
彼はスカリエッティのアジトに単身潜入して、今も通信が繋がらない状態になっているのだ。
皆ユーノと顔見知り以上の仲であり、心配で心配で堪らないのだが。


391:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:46:39 T9jq36CN
―ともかく、六課が態勢を立て直したら、本局は総攻撃を仕掛けるつもりらしい。
現在も地上は単独調査を主張しているが、状況が状況だ。
世論も本局を後押しする事だろう。
その為ユーノは事件後、無限書庫に籠もってゆりかごの情報収集に努めてきた。
いつ総攻撃が開始されても支障の無いように。
それもなんとか間に合ったようで、安堵の息をつくばかりだ。
ようやくこの事件における、無限書庫司書長ユーノ・スクライアの仕事は終わったのだから。

「……アルフ、それでちょっと六課に行ってこようと思うんだけど」
「おー、行ったれ行ったれ。通常業務は任せときな、仮眠室の奴も叩き起こすよ。なのは達も大変だろうけど、顔くらいは出しときなー」

ありがとう、と頷いてアルフの頭を撫でる。
照れ臭そうにしながらユーノの手を払い除けるアルフが何とも微笑ましい。
事件後なのはとは軽く通信で会話した程度だから、彼女の顔を直接見たかった。
他の六課隊員も気になるところである。
現在は次元航行艦アースラに拠点を移し、六課隊員達がぞくぞく乗り込んでいるのだろう。
ユーノは通信ではやてを呼び出して、疲れ気味の、それでもやる気と負けん気は衰えていない顔に声を掛けた。

「やぁ、はやて。送ったデータ、見てくれたかい?」

勿論、と勢い良く頷くはやて。
そのまま決意の籠もった表情で、絶対に止めてみせる、と眼光鋭く言い放った。
―現状、機動六課がそれを食い止める際に重要な位置にいる事は明白だ。
部隊長であるはやての肩にも相当な重圧が掛かっているのだろう。

「う、うん、そうだね。……あー……他の隊員は、大丈夫かい?」

ユーノは思いがけず深刻な雰囲気になった事を後悔して、無理矢理話題を変える。
―もう少し自分には話力があると思ったのだが、これは我ながら苦しいな。
はやてもそんなユーノの心情を見抜いたのか、真剣な表情を崩して明るく笑った。

「プッ……フフフ、私は大丈夫やから、ありがとな。んー、まだフォワード陣で治療しとる隊員がおるけど、他は大体何とかなったかな」
「決戦は近いみたいだね。……そっちにちょっと行きたいんだけど、いいかな?」
「ん、大丈夫や。なのはちゃんもやっぱり落ち込んでるみたいやし、励ましてあげてな」

連絡しといてあげるな、とからかうような笑みを浮かべたはやてに苦笑する。
了解、と一言告げて、ユーノは転送の準備を始めた。

懐かしいな、とユーノはアースラの通路を歩きながら呟く。
初めてここに乗船してからもう随分と年月が経っている。
思えばユーノが十歳かそこらの頃、スネークは二十四歳程。
一回り以上も年が離れている彼は、実は気が置けない友人だなんて少しおかしいとも思う。
……だが、他に形容する言葉が見つからない。
ユーノが苦笑していると、不意に目の前から歩いてくる人影に気が付いた。
何処か大人びた雰囲気を持ち、なのは曰く、スネークを特に尊敬している少女。

「……ティアナ・ランスターさん、だっけ?」
「す、スクライア司書長!」

慌てて敬礼をするティアナに、堅くならないで、と優しく声を掛ける。
正直、そこまで堅くなられても困るのだが。
ユーノはスネークとの初対面で、彼に敬語で話していた。
そんな記憶はユーノの体に鳥肌が立たせる物として十分過ぎ、ブルッと震えてしまう。
もし今スネークに敬語で話せと命令されたら、大事な段ボールを三階建てのビル屋上から川へ投げ捨ててでも拒否してみせる。
―色々な意味で、随分と毒されたものだ。


392:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:49:01 3A1fxyLs
>>388
あそこはリア厨とDQNの集まりだから仕方ないといえば仕方ない…

支援

393:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:49:28 T9jq36CN

「……あの、スクライア司書長は何か御用があってこちらに?」
「うん。なのはや他の隊員達の様子が気になったからね」
「あぁ、成る程。なのはさん、喜ぶと思いますよ」

可愛らしい笑顔を向けてくるティアナ。
……何だか、周りの皆からそう言われているような気がしてならない。
ユーノ自身は、そこまでバカップルだとは思っていないのだが、からかわれているのだろうか?
ハハ、とユーノは乾いた笑いを返す。

「ティアナさんは怪我とか、大丈夫なのかい?」
「はい、私は掠り傷程度で……これからシャーリーさんの元へ行く所です」
「……え?」

まだ病院にいてもおかしくない筈の名前が出て来て、ユーノは軽く耳を疑った。
彼女は、スネークから送られた情報をハードコピーする為最後まで残り、負傷したのではなかったか?

「シャリオさんって、確かスネークの無線サポートに付いてて……怪我したんじゃ?」
「ええ。シャーリーさん、まだ完治していないのにスネークさんから送られた情報の纏め作業をしてるんです」

だからせめて私はそのお手伝いを、とはにかみながら答えるティアナ。
ユーノはふうん、と呟いて顎を撫でる。

「……僕もなのはと会った後に、行かせてもらって良いかな? ちょっと気になるし」
「あ、はい。全然構いませんよ、お待ちしています」

―意外にも、すんなり了承された。
こうも信用されている事を喜んで受け取るべきか悩みつつ、ユーノは笑顔でティアナと別れる。

そのまま居住区画へ向かって数分歩き、目当ての部屋の前に人影を確認する。

「―ユーノ君っ!」

笑顔と共に、意気揚揚と栗色の髪を揺らしながら走り寄ってくる女性。
彼女を見て、ユーノも大いに頬を緩ませた。

「なのは!」

ブレーキを掛けずに突っ込んでくる恋人。
ユーノはその衝撃をしっかりと受け止める。
―鼻孔をくすぐる女性特有の甘い香り。
だがそれも一瞬で、すぐに離れていってしまう。
公私混同はよろしくない。
いつまでもここでくっついている訳にもいかないだろう。
とりあえず、と部屋の中へ入る。

「……ごめんね、押し掛けちゃって」
「ん、大丈夫。嬉しいから。……送られてきた資料、見たよ。大変な事になっていきそうだけど……」

僅かだが、なのはの顔に不安の色が浮かんだ。
攫われたヴィヴィオの事。
聖王のゆりかごの事。
彼女も色々な不安と戦っているのだろう。
だが、ユーノはその為にここまでやって来たのだ。
なのはの肩に手を置き、その澄んだ瞳を見据える。


394:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:52:21 T9jq36CN

「……なのはも、スネークみたいに気遣われたりするのは得意じゃ無いから―」
「そんな事は無いけど……」
「―だから、一言だけ。……大丈夫。きっと、大丈夫だから」

なのはが息を呑んだ。
少々の照れ臭さに襲われて誤魔化すように、熱が籠もり始めた頬を掻く。
なのははそのまま、ボスッとユーノの胸に顔を埋める。

「余計なお世話かもしれないし、スネークの励まし程説得力は無いと思うけど……ね」
「ううん……元気、出たよ。ありがとう」

彼女の声が潤んでいくのを感じながら、何も言わずに抱き締める力を強める。

「……この事件を無事解決出来たら、ヴィヴィオを正式に娘にしようと思うの」
「……なのはも母親かぁ」

少女もいつの間にか大人の女性となっている事に、年月の流れが早い事を実感させられる。
なのはが穏やかに笑いながら、ユーノを見上げた。

「ユーノ君も、ユーノパパなんて呼ばれるようになるんだよ?」
「そうか。……そうだったね」

ハハ、と互いに笑いあって。

「ああ、そうだユーノ君。大事な話があるんだけど」

―気付いたらすっかり、頼れる高町一等空尉殿の顔に戻っている。
事件関連かい、と問い、なのはの微妙な表情での頷きに首をかしげる。

「とりあえず、フェイトちゃんの所に行こう? そこで詳しく話すよ」
「……わかった」

アースラの廊下を仲良く肩を並べてしばらく歩き、目的地に辿り着くとなのはが扉を開ける。
―幾つも展開されたモニターと、忙しなく手を動かし続けている女性達。
頭に包帯を巻いたシャーリーと、ティアナ。
その隣に、フェイトがいた。
ティアナが真っ先にユーノ達に気付いて振り返り、軽い敬礼で迎える。
それによって残りの二人もドアへ振り返る。

「あぁユーノ、なのは、来たね」
「ユーノ司書長、こんにちわー」

思い思いの挨拶。
ユーノはそれに軽く手を振って答えた。

「やぁ。……シャリオさん、怪我は大丈夫なのかい?」
「はい、休んでなんかいられませんよー。任務は終わってませんからね、スネークさんの頑張りは無駄に出来ません」
「……そうだね」

―皆、強いな。
自然とそう呟いてしまったが、誰にも気付かれなかっただろうか心配になる。
それはどうやらユーノの杞憂だったようで、シャーリーがユーノに向き直った。
それで、と早速話を切り出す。

「スネークさんから送られた情報、最後の方は映像は正常に受信仕切れてなくて、音声も途切れ途切れなんです」
「……それで最後の部分だけざっと確認したら、こんな言葉が残されていたの。はやてちゃんにも伝えたんだけどね……」


395:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:54:54 T9jq36CN

なのはの緊迫した声に、ユーノは唾を飲み込んだ。
フェイトがシャーリーに視線をやる。
神妙な面持ちで頷くシャーリーが、手元のモニターを操作。
雑音と共に、音声が再生される。

『シャー………そ…し………イツ……!?』

―何を言っているのかさっぱりだ。
音声の中に雑音が混じっているのではなく、雑音を掻き混ぜるようにスネークの音声がちりばめられているといった感じか。
それでも、緊迫した空気は音声越しによく伝わってくる。
ユーノはしばらくの間続いたそれから最後にはっきりと、一つの単語を聞き取った。

『……レール、ガン』

何だって。
ユーノはモニターを前に大声を上げた。
―その単語には聞き覚えがあった。
いつかスネークから聞かされた、シャドーモセス事件における重要なキーワード。
シャーリーが、音声の停止したモニターを消す。

「―そう。スネークさんが話してくれた、磁場で核爆弾を発射する質量兵器」
「……奴は、スカリエッティは核攻撃をするつもりなのかっ……?」
「……」

ユーノが呆然と呟いた言葉を誰も否定出来ないのか、無言がひたすら返ってくる。
しかし、とんでもない話になってきていないか。
ユーノは頭を抱えたくなりながらも、それを何とか抑えつけて一呼吸置く。
自分自身凄く動揺しているのがよく分かるな。
どうやらそれはフェイト達も同じようで、深刻な表情の奥に不安が見え隠れしている。
ユーノは荒い呼吸を整えた。

―狼狽していても仕方がない。
明るい声になるように努めて、眼鏡を押し上げる。

「……まぁ、でも。スカリエッティがどこへ核を撃ち込むつもりでも、頑張って止めるしかないよね?」
「ユーノ、言うね……」

ポジティブ思考の発言に、フェイトが唸る。
感心しているのか呆れているのかは分からないが。
微笑しているなのはがいる事だし、胸を張る事にする。

「スネークなら、おまけに『なんとかなる』『どうにかする』って自信満々に付け加えてるよ」
「……ふふ、そうかも」

楽観的なスネークの事だからそう言って、自分と周りを奮い立たせるだろう。
違いない、と数か月もの間スネークを見てきた女性陣の穏やかな笑いが零れる。
レールガンについて、知ったような顔をしているティアナやシャーリー。
ユーノはふとそれが気になって、フェイトとなのはに視線を向けた。

「フェイト、なのは。……スネークの事、皆に話したの?」

スネークも必死に隠したがるような過去でも無い、別に話しても構わない、とは言っていたが。
気軽に話すような事でもないし、隊長陣三人とユーノは、極力話さないでいた。
他にスネークの出自を知っているのは、クロノとカリム、ヴェロッサだけである。


396:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:55:58 75Z5oFmL
支援

397:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:57:44 T9jq36CN

「……うん。スカリエッティがスネークさんに固執してたっていう事やレールガン。それに……」

なのはがちらりと視線を向けると、フェイトがどこからか本を取り出した。
久しぶりに見る日本語で書かれたそのタイトルは―

「『シャドーモセスの真実』……?」

シャドーモセス。
聞き間違えるはずもない地名がタイトルになっているその本を受け取って、ぱらぱらと捲る。
以前にスネークが話した内容が、彼を無線でサポートした女性の視点で詳細に記されている。

「海鳴のエイミィから送られきてね、翻訳版が日本でも話題になっているんだって」
「……向こうではどんな反応なのか、エイミィさんに聞いた?」

答えが大体予測出来るが、聞かずにはいられなかった。
友人として、スネークが侮辱されるのはどうしても我慢出来ない。

『一々反応して、どうにかなるものでもあるまい』
『気にしていても仕方が無い』

そんな風にスネークは言うのだろうけど。

「ん、荒唐無稽っていう意見が殆ど。……最初はね」

―最初?
今は八割が信じているとでも言うのか?
ならばその八割が信じるに至った経緯は?
湧き続ける疑問を早口で捲し立てるユーノに、フェイトはこれ以上無い位にたじろいで話を続けた。

「じ、事件日の米軍の異常行動が、最近報道されたんだって。アラスカ近海に出現した原子力潜水艦や爆撃機……」
「……」
「色々な報道機関で『第三国の軍事侵攻』だとか『軍の一部によるクーデター』だとか憶測が飛んだらしいんだけど……」

シャドーモセス事件の詳細を語ったこの本が、それらを一蹴したという事か。
何たって事実を元に書かれているのだ。
パズルピースのように上手くはまる辻褄によって信憑性が高める事は間違いない。
ユーノは顎に手をやりそう呟き、フェイトも同意の頷きを見せる。

「米政府は事件を否定しているけど、それで結構信じる人は増えちゃったみたい。信じる人達は、スネークさんを英雄視しているか、もしくは……その……」
「……嫌悪感?」

うん、と小さく頷くフェイト。
自分達とは違う存在へと向ける、異形を嫌うという、人間の、生物の本能。

―スネークが何時、それを望んだというのか。
スネークが父親を殺し、戦友を殺し、心身共にボロボロになるまで戦って世界を核戦争から守り、今も必死に歩みを進めている。
奴らに、そんなスネークへと嫌悪の視線を向ける資格があるのか。
そう考えれば考える程ユーノは心が冷え込むのを感じ、表情が堅くなるのを実感する。
それに気付いたのかなのはが不安そうにユーノの横顔を見上げ、握り拳をそっと手の平で包み込む。
それだけで心が暖かくなるのだから、心強いものだ。
念話でありがとう、と一言送る。
更にティアナが一歩前に乗り出して、力強い表情をユーノへ見せた。
スネークを尊敬している少女の想いの強さが滲み出ている。


398:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:01:16 T9jq36CN

「スネークさんがどんな生まれ方をしていても、あの人が尊敬に値する人だという事に違いは無いです!」
「……ティアナさん」

柔らかい微笑の後、シャーリーも動かし続けていた腕を止めユーノを真っすぐ見て、ティアナに同意する言葉を吐く。
あの人は信用出来ます、と。

「あの人は『何か』を持っています」
「……『何か』?」

反射的に聞き返すが、それは以前からユーノも思っていた事だ。
スネークやなのはが持つ、言葉に表せない『何か』。

「強い人。信じるに足る人。他人の期待に応える事が出来る人だけが持つ『何か』を。……それに、見た目よりもフランクでしたしね」
「……うん、そうだね。ありがとう、ランスターさん、シャリオさん」

逆に励まされてしまったな、と照れ臭さを感じて、彼女達に笑い掛ける。

見ず知らずの他人がどう思おうが、そんな事はユーノやなのは達には関係無い。
ユーノは改めて決意を固める。
もう逃げない。
傍観は終わりだ。
―これ以上何も失う事無く事件を終わらせてみせる。



公開意見陳述会から一週間後。
刻む足音が強く耳に残る程、静かな空間。
少し薄暗いそこには、二人の男がいた。
ジョニー・ササキと呼ばれる男、そしてその視線の先、格子の付いた扉を挟んで半裸の男。
『不可能を可能にする男』『伝説の英雄』等と持て囃された兵士。
ベッドに腰掛け黙って俯いているその男の名はソリッド・スネーク。
―寝ているのだろうか?
違う、とジョニーはその考えを振り払う。
スネークはシャドーモセスの独房にいた時、無線で何か話していたかと思えば、シャドーボクシングの真似事をしたりしていた。
壁を飽きる事なく何度も叩いていた様はまるで、誰かに操られていたかのようだった。
ジョニーが何度大声で注意した事か。
それでも言う事を聞かなかった事を考えると、このスネークの状態は異常。
少し心配しつつ、少々抑え気味に声を掛ける。

「おい、スネーク」
「……お前か」

スネークが顔を僅かに持ち上げ、バンダナの下に覗く鋭い瞳でジョニーを射貫いた。
ピリピリした空気が流れ、ジョニーは一瞬だがたじろぐ。
何でもない様子だったスネークを確認して、ジョニーはポケットをまさぐった。
目当ての物をスネークに投げ渡して、選別だ、と一言。
スネークの装備から抜き取った、ライターとタバコだ。
スネークは微かに困惑した表情でタバコの箱とジョニーに視線を行き来させる。
やがて軽くタバコの箱を掲げて、ジョニーに感謝の意を示した。

「俺の装備は?」
「纏めて置いてあるよ。……気分はどうだ?」
「……最悪だよ。ここ一週間変態科学者に加えて、お前の仲間の美女達にまで裸体をじっくり観賞されたからな」

タバコをくゆらせながら皮肉気に話すスネークへ、それは災難だったな、と苦笑する。
スカリエッティはクローンとして造られたスネークに大層な興味を抱いていた。
あんな奴にじっくりと、なぶるように身体検査されるのを想像したら、同情の一つもするさ。


399:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:04:28 T9jq36CN

それでも、シャドーモセスで行われたオセロットの拷問よりはマシなのだろう。
―身動き出来ないよう回転ベッドに縛り付けて、気の向くまま電流を体に流す。
数十秒の間断続的に響き続けたスネークの、人間が上げるものとは思えないぞっとするような悲鳴。
そして加虐の喜びでオセロットの顔に浮かぶ、官能味のある恍惚の表情。
ジョニーはそれをありありと思い出して、体を襲う寒気に身震いした。
そんなジョニーへ、おい、とスネークがだしぬけに声を掛ける。

「お前、地球人だろ?」
「えっ? あ、そ、そうだが……よく分かったな?」

ピシャリと言い当てられて、訳もなくどもってしまう。
この異世界では、人間に猫耳が生えているなんて事はない。
ジョニーを一見して、どこの出身なのかなんて分かり得ないのだ。
まさか、シャドーモセスで捕まった時からずっと俺を覚え―

「―GSRはこの世界に無いからな」
「……ああ、成る程ねー」

一度はスネークに奪われたジョニーの愛銃が、奇しくも主人の出身証明書になった訳だ。
説得力のある言葉に、下らない考えを一蹴する。
よくよく考えたら、多くのゲノム兵の中の一人なんて覚えている筈もないか。

「お前はどうやってこっちに?」
「……トイレから」
「……」

沈黙と共に、痛々しい空気が流れる。
トイレに駆け込んだら、不思議な光に包まれてこっちに来た。
―脚色しようの無い事実だ。

「ケツはちゃんと拭いてきたのか?」
「……出す前に飛ばされた」
「……それは残念だったな」

それっきり、沈黙。
対話と言う物は、黙っていたら進まない。
二人きりの時なら尚更だ。
ジョニーは困ったような呻き声を上げる。
スネークも押し黙っていたのだが、ふと思い立ったように一歩前に乗り出した。

「……何故奴は、スカリエッティはメタルギアを……俺を知っている?」
「うっ、それは……」

スネークからしたら、当然の疑問である事には間違いない。
思わず閉口。
冷や汗が背中を伝う。
そもそも、ジョニーが『シャドーモセスの真実』をスカリエッティに手渡した所から、奴の暴走が始まったのだから。
口籠もるジョニーに、スネークは不審そうに眉をひそめさせた。

「どうした?」
「……その、俺が奴に『シャドーモセスの真実』を渡したのが原因で」
「……『シャドーモセスの真実』?」

何だ知らないのか、と問い直し、スネークの首が縦に振られる。
地球、先進国でなら噂位聞く筈なのだが。
―こいつ、いつからこっちにいるんだ?
そんな疑問がジョニーの脳裏を過る。


400:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:06:00 +pQLLy2U
支援

401:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:08:31 T9jq36CN

「あんたのサポートをした、ナターシャだったか、ロマネコンチだったかがあそこで起きた事件の全てを記した本さ」
「……ナスターシャ・ロマネンコ?」
「ああそう、それ。その本のタイトルが『シャドーモセスの真実』ってんだ」

今やあんたは知らぬ者のいない有名人なんだぜ。
そう付け加えると、複雑な表情が返ってくる。
やはり良い気分はしないのだろう。
スネークは疲れたように唸り、目蓋を揉んで座り直した。

「奴が作ったメタルギアにはREXの情報が色濃くあった。彼女がその本に、設計情報を綺麗に印刷したとでも言うのか?」
「いいや。フォックスハウンドの生き残りがREXの情報を、モセスから持ち出して売り捌いてるんだよ。……誰だか分かるか?」
「まさか……」

オセロットさ、と小声で呟くと、スネークは苦渋に顔を歪ませて鼻を鳴らした。

「オセロットめ、ふざけた真似を。……奴は何が狙いなんだ?」
「金を集めて国を作るんじゃないのか? 『戦慄! 恐怖のロシア大帝国』なぁんてさ」

どこのB級映画だ、と間髪入れずに突っ込みが返ってきて苦笑する。

「……まぁオセロットはともかく、スカリエッティは多分奴から情報を買って、作るのに役立てたんだろうさ。その……SOLIDをな」

『SOLID』という言葉でスネークの眉がピクリと動いたのを、ジョニーは見逃さなかった。
自分の名前が付けられているのだ、相当な嫌悪感を持っていても仕方がないか。

「それで奴は『メタルギア』を作れたという事か。……それで?」
「……え?」
「お前は何がしたい?何故奴らに協力しているんだ」

ここへ世間話をしに来たのか、と
スネークはタバコの火を揉み消してそう言った。
ジョニーはここへ来た目的を思い出して、真剣な眼差しをスネークへ向けた。

「俺の爺さんは元GRUの兵士だった。エリート兵士って奴さ」
「……GRU。旧ソ連軍参謀本部情報部か。お前が兵士になったのは、祖父の影響か?」
「ああ。爺さんは俺の憧れだった。だから俺は兵士になった。でも……」

―それは戦う理由には成り得ない事に気が付いた。
紆余曲折を経てここへ飛ばされ、スカリエッティやナンバーズと邂逅を果たし。
その後、ナンバーズ達を守りたいと思うようになった、と。
スネークはおもむろに立ち上がって、ジョニーに負けず劣らずの真剣な眼差しのまま近付いた。

「彼女達は、少なくとも五番からは、スカリエッティの計画に直接賛同していない」
「……生みの親の命令を聞いているだけ、か?」
「彼女達が自分の意志でスカリエッティの言う事を聞くなら、俺はそれでも構わなかった。……でも聞いちゃったんだよ」
「……何を?」

低い声で問うスネークにジョニーは壁に寄り掛かって、数時間前の事を思い出した。
―成功に終わった局の襲撃だが、一人だけ出た重傷者。
ナンバーズの五番・チンク。
ボロボロになってアジトへ帰ってきたチンクは、メンテポッドでずっと眠ったままだった。
数多いナンバーズの中で、取り分け異色の雰囲気を放った戦闘機人。
『此処』に飛ばされて半ば放心状態だったジョニーにも良くしてくれた。
最大の作戦開始が数時間後に迫る中、彼女が目を覚ましたと聞いて嬉しくない筈が無い。
ジョニーは飛び上がって喜び、彼女の元へ向かって―それを聞いた。

『外の世界を、見たいと思うか?』


402:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:11:03 T9jq36CN

妹達にそう質問するチンク。
チンクを慕うノーヴェを始めとして、そこにいた誰もが数秒、答えに詰まった。
それも仕方がない、初めてそんな事を考えたのだろうから。
チンクの妹達が出した答えは、皆と一緒にいれれば良い、という至極単純明快な物。
対して少しだけ寂しそうな微笑を返したチンクの横顔をこっそり覗いて、ジョニーは確信した。

―チンクは外の世界へ解放される事を心のどこかで願っているだろう、と。

「……どうやら、そいつらにもまともな思考力はあるみたいだな」
容赦無く毒舌を吐くスネークに向き直る。

「あんたが伝説の傭兵として聞きたい事がある。……俺は彼女達を外の世界に導きたい。だが、本当にそれは正しいのか? 彼女達の為になるのか?」

それを肯定するだけの自信が無い。
彼女達の為を思い、少なくとも自分の意志で戦う彼女達へ牙を剥くのだから。
本当はやはり、彼女達を守るために局をボコボコにのめすのが正しいのかもしれない。
ジョニーは俯いて再び壁に寄り掛かり、背中の気配が答えを言う事を待った。

「……俺は英雄じゃない。英雄であった事もない。今までも、これからもな」

スネークはまずそこから否定した。
俺は只の兵士に過ぎないんだ、と。
そして只の兵士が、自身の考えを一言一言、噛み締めるように話し出す。

「正しいという事に規範は存在しない。……大事なのは、信じる事だ。正しいと信じる思いがどんな形であれ未来を作る」
「……正しいと、信じる?」
「スカリエッティも自分が正しいと信じて行動しているし、俺も奴を止める事が正しいと思っている。……誰に聞く事でも無い、お前が判断するんだ」

……要は自分で考えて、それを貫け、という事か。
予想外の回答に苦笑しつつ、思考を巡らせる。
何が本当に彼女達の為になるのか、自分が何をしたいのか。
―そんなの、分かり切っているじゃないか。

「……彼女達が、スカリエッティの元にいる事が良いとは思えない。―外の世界を見せてやりたい!」
「それがお前の信じる事か」
「心のどこかで、『外の世界で普通に暮らしてみたい』と思っているのはきっと何人もいる筈だろっ?」

落ち着け、とスネークにたしなめられる。
ジョニーは荒くなった呼吸を抑えつける。

「スネーク、時間的に作戦はもう始まっている頃だ。……だが、あんたは今こうして捕われている。絶望的な状況だと思わないか?」
「……いいや。まだだ、まだ終わってない。必ず奴を止める」

力強く拳を握る『伝説の英雄』と直接話して、ジョニーは確信した。
伝説の英雄は、ソリッド・スネークは、まだ諦めていない。
内面で燃え盛る闘志、絶対に折れる事の無い不屈の意志。
これ程頼れる仲間はいないぞ。
だったら、賭けてみようじゃないか。
―不可能を可能にする為に。
扉の横に取り付けられた端末を操作して、ロックを解除する。

「スネーク、彼女達をスカリエッティから解放させる。……あんたの力を貸してくれ」

独房からゆっくりと出て来たスネークは頼れる目付きで、黙って頷いた。
―それぞれの思い、様々な思惑を交錯させた戦い。
それの始まりを示す狼煙が、立ち上る。


403:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:13:31 T9jq36CN
おまけ

それほど長くなかった話も終わり、再びモニター上をシャーリー達の手が踊り始める。
ユーノはその様を少し眺めて、おもむろに声を上げた。

「……じゃあ、僕はそろそろ退散しようかな。ごめんね、忙しいところを邪魔しちゃって」
「ああ、いえいえ。ぜんぜ―」
『―これはっ!!』

シャーリーの言葉を遮るように、いる筈の無いスネークの声が響いた。
モニター上のスネークが発した、様々な感情を含ませた声。
視線がモニターに集まり、モニター一杯に映し出されたそれを見て、全員が一様に固まる。
ロッカーに貼り付けられている、際どい水着を着用した女性の写真。
―所謂、グラビアアイドルの写真。
ごそごそ、とモニターの中のスネークは荷物をまさぐり、取り出したデジタルカメラを構える。

じじー。
かしゃり。
ぴぴっ。

スネークは保存されたデジタルカメラの映像を素早く確認、仕事をやり遂げた表情で一言。

『……よしっ』
「よしっ、じゃない!」

その場にいたユーノを除いた、四人の綺麗にハモった突っ込みが響いた。
そう、ユーノも男だ。
ぶら下がったメロンには否が応でも目を奪われてしまう。
なかなかだな、と内心で水着女性に拍手を送る。

「……?」

なのはが唯一突っ込まなかったユーノに訝しげな視線を向け、彼のそんな心境に気付いてしまった。
そして、ユーノはなのはの様子に気付かずに、じっくりとモニターを観賞している事が致命的だった。
なのはが目を吊り上げる。

「―っ痛ぅ!?」

グリグリと断続的に足を襲う痛み。
ユーノは足を踏んでいるなのはの顔を見て、ようやく事態を把握したのだが、時既に遅し。

「ユーノ君、随分熱心に見てるね!? ……全く、前も部屋にイケない本を隠し持ってたし……!!」

なのはの暴露に、うわぁ、と痛々しい視線がそこかしこからユーノへと降り注いだ。
違うそれはスネークから拝借したものだ、男は皆そういうものだ、なんて言い訳も逆効果。
ユーノが全てを諦め掛けたその時―何故かなのはが表情を崩した。
顔を赤らめ微笑を浮かべながら、上目遣いにユーノを見る。

「―もぅ。そんなに興味があるなら、一言言ってくれれば良いのに……」
「え。……い、言ったら?」

ユーノはごくりと唾を飲み込んで尋ねる。
なのはは、事態を見守っているシャーリー達でさえ真っ赤になる程の艶めかしい表情でクスリと笑って顔を近付けた。

「……フフ。『我慢しなさい』って言ってあげる」
「ぁー……」

……女は恐ろしい。
そうだろ、スネーク?
ユーノの嘆息が部屋中に虚しく響いた。

404:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:15:01 T9jq36CN
第十四話投下完了です、支援ありがとうございました。

おまけの話に関連して、MGS2の写真ネタは個人的にかなり好きです。
グラビア写真を見たオタコンさんも「……保存しとこ!」なんて言ってて笑わせて頂きましたw
ことわざ解説時のふざけた言動もあれば、ジーンとくる台詞も吐けるオタコンさん。彼も大好きなキャラの一人です。

それでは、次からは戦闘ばっかりです。
最終回もぼんやり見えてきましたが、次回もよろしくお願いします。

405:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:20:34 75Z5oFmL
GJ!!
盛り上がってきました~。はたしてスネークの作戦はどうなるのでしょうか。
悪女ななのはさんにも笑いました。

406:反目のスバル ◆9L.gxDzakI
08/11/16 15:30:47 QKY7k0Cm
報告です。
モバゲータウンにおける盗作の件ですが、ロックマンゼロ氏本人と連絡を取ることができました。
以降は我々で対処しますので、引き続き勝手な行動を取らぬよう、よろしくお願いします。

407:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:50:44 Mdxsawyj
チンクたちとジョニーには幸せになって欲しいです

408:一尉
08/11/16 15:58:50 yPbPesPu
オマケなら最後です。

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 16:02:53 /ydidjRr
投下乙です。

是非ともジョニーには最後まで生き残って欲しい……
誰かの命と引き換えの自由なんて、嫌だろう?

410:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 17:52:28 fdnAqETf
GJ! こ、これはジョニーとスネークのタッグバトル!?
MGS4でのあの大活躍が見れたりするんでしょうかw
それはそうと、艶めかしい表情のなのはさん想像して思わずイジェクトしてしまいました。
責任とってください(ぇ

<<まぁそんなことはいいとして……オメガ11は今回短編と言うか次回作への予告と言うか、そんなもの
を書いてきたそうだ。1830に投下予約したいが、よろしいか?>>

411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:26:30 CVI5RxHp
やったりやったり


412:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:30:12 fdnAqETf
<<それでは投下を開始する。今回は予告だから非常に短い>>

OK,まずはいいニュースから行こう。
その日、世界は素敵な状態だった。
ロシアでは現在の政府支持派と超国家主義者たち―スターリンを崇拝し、旧ソ連復活を目論んでいるテロリスト集団が衝突して内戦状態。
一万五〇〇〇発もの核弾頭が、危機に瀕している。
で、中東のアル・アサドとか言う権力者と手を組むつもりらしい、この超国家主義者たちは。
別にいつものことだから、大して気にしてない。
もう一つ、こっちは悪いニュースだ。
俺は明日には第二二SAS連隊に配属される予定だったんだ。
だと言うのに、列車は人身事故で止まってしまっている。
SASの選抜試験を奇跡的に抜けたのはいいが、変なコールサインをもらって挙句この様だ。
神よ、いるなら答えてください。俺、何かしました?


その日、二人の若者が出会った。

「―お宅も足止め食らったクチ?」
「ああ、これから故郷の国に帰る予定だったんだが……」
「そうか……まぁ、列車が動くまでの間ゆっくりロンドンを観光してなよ。何だったら案内するよ。俺は―」

出会った二人の若者の名。
片方はジョン・"ソープ"・マクタヴィッシュ軍曹。第22SAS連隊所属の、新米SAS隊員。

「いや待ってくれ、僕は未成年―」
「固いこと言うなよ。ほら、ビールは冷えてるのばっかりが美味い訳じゃないぞ」
「一応仕事の帰りなんだけれどな……」

もう片方は、クロノ・ハラオウン執務官。時空管理局所属の、次元航行艦"アースラ"の切り札。


二人の出会いは、それだけで終わるはずだった。
思わぬ足止めを食らったおかげで、いい奴に会えた。あとは思い出の一部となって、記憶の片隅に留めておくだけ。
―そのはず、だったのだが。

「ソープ、飛び乗れ!」

嵐の大洋、荒れる海に飲み込まれつつある貨物船の甲板上。
―誰かいる!
脱出のヘリに飛び乗ろうとしたその時、ソープは不意に背後から人の気配を感じた。
この手の分野では傑作と名高いMP5の銃口を素早く振り回し―彼は、引き金にかけた指の動きを止めざるを得なかった。

「……クロノ!?」
「―ジョン!? なんでここに……っ」

再会。しかし、その真意を問うには、お互い残された時間があまりに少なかった。

413:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:33:14 fdnAqETf
場所は変わって、中東。
一人の兵士が、戦っていた。
理由なんて、後から考えればいい。目の前の敵を撃つ、撃つ、撃つ。ひたすらに撃つ。そうしなければ、やられてしまう。
だけども、仲間を見捨てようとは思わなかった。
例え核兵器が目の前で爆発する恐れがあったって、構うものか。一人の仲間も、見捨てない。

「ジャクソン、彼女を救助するんだ! 一分以内に連れて来い!」
「了解、援護頼む」

彼の名は、ポール・ジャクソン軍曹。海兵隊第一偵察大隊"フォース・リコン"のベテラン兵士。

だが―仲間を見捨てない、それ故、彼は地獄を見る羽目になってしまう。
彼を地獄に送り込んだのは―

「―ザカエフ」
「え? プライス大尉、今なんて……」
「イムラン・ザカエフだ」

「一五年前だ、ジョン……いや、ソープ。僕の世界の方で、あるロストロギアがこっちの方に流出したんだ」

全ての元凶は、一五年前から始まっていた。

「リーダーは我々を売り飛ばした……文化を汚し、経済を崩壊させた。名誉も―我らの血は、祖国の土に染み込んだ。私の血も」

全ての元凶が、動く。自らの理想を実現させるため、世界を破壊する。

「アメリカとイギリスの全軍隊は即刻ロシアから立ち去るがいい。さもなくば苦しむ結果になるだろう……」

予想される損害は、アメリカ本土東海岸一帯が全滅。予想死亡者数は、四十万人を超える。
食い止めなくては。
組織の壁など、もはや関係なかった。今動かなければ、未来はお先真っ暗だ。
SAS、海兵隊、そして管理局。三つの組織の精鋭たちが、動き出す。

「ソープ、ジャクソン、クロノ、ザカエフを追え! ここは俺とギャズ、グリッグが抑える―元凶を断つんだ、これで終わりにしろ!」

世界を滅ぼすのは人間の力。
それを止めるのも、人間の力。
兵士たちは、紛れもなく"人間"だった。

「ソープ、了解」
「ジャクソン、了解だ」
「クロノ、了解した」

飛び交う銃弾、魔力弾。全ては世界の未来のため。
交わるはずのない線が交わった時、兵士たちの戦いは、もう一つの結末を迎える。


Call of Lyrical 4


戦いは、まだ始まらない―。

414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:34:02 T9jq36CN
支援

415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:34:40 CVI5RxHp
COD4キタァァァアア

416:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:36:05 fdnAqETf
おまけ1

「―プライス大尉、一つ質問があります」
「僕もです、プライス大尉」

ブリーフィングが終わった直後。
指揮官のプライスが最後に何か質問はないかと皆に問うと、真っ先に手を伸ばす者がいた。ソープ、それにクロノだ。

「何だ、二人とも」
「このザカエフの息子なんですが」

ソープは配布された資料の中から今回の作戦目標、ザカエフの息子の写真を取り出す。
SASの隊員皆が興味津々とした視線を送ってくる最中で、クロノが口を開く。

「どうして戦場のど真ん中で上下ジャージなんでしょう?」

ブリーフィングルームに、ため息と罵声が響き渡った。
詳しくは「Call of Duty4」をプレイしてね!

おまけ2

「ブラボー6、聞こえるか? プライス大尉、航空支援を送った。活用してくれ」
「航空支援だって? コールサインは?」

<<Omega11 Engage>>

「帰れ、お前は」

サーセン。

おまけ3

「ブラボー6、聞こえるか? さっきはすまなかった。プライス大尉、今度こそ航空支援を送った。活用してくれ」
「さっきのはイジェクト(脱出)して落ちたな、何しに来たんだか……で、今度の航空支援のコールサインは?」

<<Mobius1 Engage>>

「―ちょ、マジで?」

嘘です、たぶん。

417:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:39:04 fdnAqETf
投下終了です。
はい、クロス元はFPSの「Call of Duty4」ですね。
コメントで次回作はこれを!という声が多かったので、試しに予告編と言う形
で書いてみました。
プロットはまだ出来てないのでいつ本格的に始められるか分かりませんが、その
うち始めるとしましょう。

418:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 19:02:45 75Z5oFmL
むむむ、クロノもでてくるようですね。
これは興味深いです。

419:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 19:07:29 vSLD8D7N
あのジャージはこの手のロシアンマフィアの象徴ってことで
それはともかく乙です!続編期待してます!

420:名無し@お腹いっぱい
08/11/16 23:13:09 xxD9NKp5
SSのネタでCoD4クロスさせてるの書いてる自分としては期待せざる負えないwww


アレですね、オメガ11の空爆支援はベイルアウトによる特攻(ry

421:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 23:53:01 s0Y4fZJY
GJ!!
ザカエフの息子の息子はなぁ、なんか映画のポスターかよ!!って感じの写真になってなかったっけ?
最強の航空支援、メビウス1が来たら何もかも吹き飛ばしてくれるぞ。
敵陣地の高射砲もSAMも無視してなぎ払ってくれる

422:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 00:25:06 VB0I2Lh3
日向玄乃丈辺りを呼んでキャロと組ませて、セプテントリトンとか絡めたオリジナル展開の話を書きたいなぁ、と思った。
セプテントリトンとか世界調査局とか、時空管理局と親和性高すぎる設定でかえって話が作れなかった。
つーか設定多いよ! なのはも大概だけどそれより更に多いよ!
構想練ろうと思って調べたけど、調べれば調べるほど訳分かんなくなったよ!
あの会社は中二病の巣窟か!?

423:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 01:07:27 jlCSJoFT
えっ、核じゃなくてロスロトギアでジャクソンは死なないということですか!!
なに、その燃える展開……
えぇとゲーム本編と同じ結末じゃないといいなぁ……なんて思った
アレはホント涙出てきたもん……


ふと、ソープ、メビウス1、ストーム1がミッドで大暴れ なんていうとんでもないのが思い浮かんだ

424:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 01:29:41 JvEN6rd/
小ネタであった、パンプキンシザーズとのクロスも面白そうだw
ハンスは寝返らない方向でw

425:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 02:45:08 7int3OEe
>>422
全ての設定を正確に理解しようとしてる時点で奴らの思う壺だ
一見さんから見たアレの意味不明さは一種の様式美みたいなところがあるから
クロスSSを書く程度なら、各作品の一般公開設定ぐらいで済ませたほうがいい

まず間違いなく、設定の全てに忠実に話を作れる奴なんていないよwww
ただ忠告しておくと、セプには手を出さないほうがいい
だってあの組織が何なのか、現在進行形で完全に理解してる奴なんて一人もいないんだぜ?

426:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 05:48:22 4PktcqAB
αは痛い設定に定評のあるメーカー

427:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 11:17:11 ppe93gTI
>>404
GJ!
やっぱりユーノにはスネークが必要なんだぜ。

428:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 12:02:04 A7C6EFrZ
投下された作品に関する話題以外はウロスでやったほうがいいですよ
URLは>>1にありますので

429:一尉
08/11/17 12:03:00 1wfxK8Xx
スネークなら最強支援たよ。

430:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 17:46:31 DOgq1aQX
投下した皆さん、まとめてですみませんが本当にGJです。

そして、本当にお久しぶりです。
ようやく続きが出来たので、本日の11時ごろにラディカルノーヴェを投下したいと思います。

431:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 17:47:19 DOgq1aQX
すみません、下げ忘れました

432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 18:27:22 NGViZHzs
魔装機神さんお久しぶりです!
そしてお帰りなさい!!
投下待ってますよ!!全裸待機だヤッホイ\(・∀・)/

433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 18:54:39 8B1BTB4K
15分後に投下してもよろしいでしょうか?
一発ネタを投下したいのですが、もし予告がなければ15分後にします。


434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:03:17 kOdeZvMI
>>433
支援

435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:18:12 8B1BTB4K
失礼、それでは投下させていただきます。クロス先はSGA。海外ドラマ「スターゲイト アトランティス」

僕がこの資料を見つけたのは偶然だった。
その文献はただ、そこに存在していた。
本と呼べない、人によってはただの石にしかみえないだろう。しかし、僕はこれを本と表現する。
おそらく右下に書いてあるのは数字と思われるものだ。そして文章とおもわき物と挿絵。その挿絵はリングの形をしていた。
しかし、僕にこれは読めなかった。“これ”に興味をもった僕は自分の部屋に持ち帰り調べることにした。

ジェイル・スカリエッテの事件が終了し、六課が解散した。
僕も最後の作戦にはなのはへの援護と思い参加した。そして、事件が終わるとともに僕は自分の興味に没頭した。
興味の先、それは事件が起こる前に見つけた本。見つけてから半年、僕は何一つその本を解読することが出来なかった。
本の物質は、現在では何か見当がつかないもので作られているということが調べで分かった。
しかし、それが何なのかはわからない。



436:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:20:35 8B1BTB4K
僕は本を見つけてから2年がたとうとしていた。
その本に没頭することで僕は自分の関係を崩し始めていた。
数日前、ジェイル・スカリエッテの事件後から恋人関係になったなのはとの関係に終止符を打った。
すべては自分の研究の所為であることは理解していた。彼女に最後に言われたのは厳しいものではなかった。
しかし、彼女は寂しそうな顔をして、「互いの仕事もあるし、忙しいから別れよう」と伝えられた。
胸が痛まないといえばウソになる。しかし、僕は自分の研究を止めることを止めることが出来なかった。
いつしか、僕はこの本から興味とともにこの文献の内容がすごく重要ではないのかと思い始めた。いや、感じていたのだ。

 なのはとの関係が終わってから半年、本を見つけてから3年たっていた。
そこで僕はまた本を見つける。その本は僕が過去に見つけた物と同じ、石でできていた。
前回と違うことはそれが読めたことだ。その文字は地球、なのはの出身世界で言う、古代エジプト文字といわれるものだ。
地球で生活する時、自分ひとりであの世界を回って、興味をもったことがあり、読むことができる。
しかし、それはしっかりと読むことができるわけではなく、なんとなくであった。

それから2ヶ月後、僕は学会で発表をする。
次元世界の否定、自分たちの世界の存在、すべてにおける否定。僕が発表した論は否定されておわった。
奇人、変人と言われ、その論文のおかげで時空管理局「無限書庫」司書長としての地位を剥奪。
危険思想者を重要な仕事の位置に置けないというのが一番の理由ということらしい。
僕の研究は無限書庫から出てくる、この世界の古文から考えたものだ。
そして、僕はそこでまたあの本と同じようなリングを見つけ出す。しかし、それが何なのかはまだ分からなかった。



437:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:23:50 8B1BTB4K
無限書庫の地位を剥奪されたが、ある種のコネで以前の事件の首謀者、ジェイル・スカリエッテとの面会ができことになった。
自分が望んだことだ。ここ数年で何度も世界を渡り歩いてきたが、あの本になる話は聞かなかった。
最終的にこの人に辿りついたのだった。

「これはこれは、司書長様じゃないですか」
「元、です。何で知っているかは聞かないでおくよ、ジェイル・スカリエッテ。お前に聞きたいことがあってここに来たんだ」
「それは、どのような御用件で? こんな遠いところまで」

「ユーノ・スクライア氏、ここでの会話は記録されますが」
「構わないです、ジェイル・スカリエッテ。あなたはこのようなものを見たことがあるか?」

そういって僕はリングの絵を印刷してきた紙を看守にわたし、スカリエッテの手元に行くようにした。
それを手にした瞬間、彼は驚いた顔をして僕を見た。

「これを知っているんだな」
「まさかこれを発見する人間が管理局にいるなんて思いにもよらなかったよ」
「…おほめの言葉、どうも。しかし、管理局員ではないのでね。っで、これはなんなのですか?」
「私にもわからないさ。ただ、“星の扉”とだけは知っている。
もともと、これは聖王のゆりかご内にあったものだがね。そこから調べたさ」

聖王のゆりかごの中に?

「僕の研究施設はまだのこっているかい?」
僕は記録をとっている局員に目を向けると彼はまだ残っているといった。
「君がこれを何なのか気になるなら、直接見に行くといい」

そういって、彼は看守にメモを渡した。

僕はそれを受け取り、その場を後にした。


438:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:26:04 8B1BTB4K
彼が僕にくれたメモ、それはこの世界を変えた――――


 彼がくれたのは地下への道だった。研究施設の地下に行く道。
転送技術が必要だったのだが、爆破と砲撃で穴をあけ、そこに行った。
それがこの世界の命運を分けていた。

地下には“星の扉”は存在していた。
それが存在する部屋にの前にはすごく分厚壁があった。
彼に言われたメモに書かれたパスワードを打ち込み、僕は中に入って行く。

このとき、僕には護衛が付いていた。クロノから派遣されたの20名。
やけに多いが、それはスカリエッテの隠された研究施設を調べるためのものであった。


しかし、ここに入って帰ってくることができたのはたった5名だった。

中に入って、リングはすぐに見つかった。そして、リングとともに台のようなものもの。それはボタンを押すようになっていた。そこまではみた。しかし、
見ている最中で、”星の扉”は光はじめ、そして、その中から化け物が出てきた。

彼らが撃つ攻撃は僕たちが使う非殺傷とにかよったものだった。
直接的な傷はなく、気を失う。違うところといれば、バリアの上から僕たちの意識を奪うことができていたことだ。
僕以外に10名ほどの最初の攻撃から逃れることができた。そして、狭い部屋での戦闘がはじまった。


439:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:28:41 8B1BTB4K
戦闘員のうち、近接戦闘が主なものは大半がやられた。近接の場合、彼らが出すビームには弱いのだ。
距離をとり、僕たちはひとりずつ、始末していく。

敵が全員倒れたところで僕は安心していた。
それがあだとなった。リングの中から出てきた飛行物体に油断していたのだ。僕はあせって横の影に飛び込み、隠れて交戦しようとした。
他の局員たちも隠れようとしたが、飛行物体が発する光につつまれ、消えていく。
意識を失った者たちもそのようにして消えていき、飛行物体は僕たちが入ってきた穴から出て行た。
怒涛のような出来事に動きが遅れた。僕はあせってクロノに念話を飛ばし、連絡。4機の未確認飛行物体が外に出たことを伝えた。



4機の飛行物体は近隣の街を襲い、そこに住んでいた人たちは人だけがあとかたもなく消えていた。
そして、その4機も消えていた。


440:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:31:14 8B1BTB4K
時空管理局はこれを重く見て、リングの前に部隊を置いた。
破壊すればいいという声も出たが、壊すことでの危険性が分からないために研究チームとともに配備することになった。
そこにはエースオブエースである、なのはも参加していた。そして研究チームには僕、ユーノ・スクライアを筆頭とした考古学者チームと犯罪者・ジェイル・スカリエッテを筆頭とした科学チームを起用した。
当然スカリエッテは両腕を動かせないようにされ、口頭だけでの参加としていれられた。
名目上、アドバイザーである。


あれからリングがたびたび起動することがあった。
そのたびに出てくる化け物たちをぼくたちは倒し、捕獲していった。
しかし、捕獲した化け物たちに殺される看守たちが増え…やむえなく、捕獲された化け物たちはその後殺され研究されるようになっていった。
あまりいい話ではないが、これは時空管理局もやむえないと感じたのだろう。批判もあるが、
自分の世界の人々を守ることを前提としなくてはならないのだ。

そもそも、一度は交渉に出ようとしたが、その時にひとりの士官が殺されてしまったのが始まりだ。



リングを見つけてから数日、このリングの名前がわかった。

スターゲート

星を移動するためのものらしい。
そして、同じように一つわかったことがあった。
時空管理局、すなわち僕たちがいるこの場所は違う次元の世界ではなく、地球からは遠く離れた銀河に存在する星にひとつだということがわかった。
これは管理局、技術主任が発表したことにも基づいている。


441:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:32:29 8B1BTB4K
スターゲートから化け物が出て、1年。僕たちは出てくる化け物たちと戦い続けた。そして、新しい部隊が出来上がっていた。旧六課と言われるぐらいの面子。それは時空管理局がこのプロジェクトにどれだけ力を入れているかわかる。

それは、「SG課」。そう言われるものだった。


そして、僕たちはスターゲートから現れた地球人たちと接触する。SGA、僕たちの部隊名は大体のものからSGAの援護として、SGAに加入し、互いに助け合うための部隊になった。



SGAには旧六課と、旧ナンバーズ、そしてジェイル・スカリエッテが行くことになった。
SG課にはエリートを集めたバックアップチーム。
そうして、銀河をまたにかける戦いが始まった。



442:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:33:15 8B1BTB4K
「ふむ、おれも日本語を勉強したほうがいいかな」
【念話で会話できるからいいじゃないですか?】
「フェイトみたいな美女と話すならその声を聞いたほうがいいじゃないか?」
【いつもお上手で】

基本の会話が念話で行われた。それはSGAと時空管理局の言葉がちがったから。

「ユーノさん、最近どうなの?」
「なにがだい?」
「高町さんとのことさ」
「普通、聞くかい? こんな状況で」

互いにレイスに捕まることもある。

【強いな…ロノン、不思議とあなたに興味がわいたよ】
「シグナム、お前とやりあうと俺も練習になるからいいぜ」

ライオンとシグナムはたがいを磨き合い交流を深めていいた。
ナンバーズも、そしてジェイル・スカリエッテも…

「しかし、“ゆりかご”がエンシェントの船かぁ。言われてみればレイス対策のためだったのかもね。ヴィヴィオがエンシェントだったってのも驚きだけど…」
 マッケイが独り言でそれを言いながらヴィヴィオのがいるところに向かって歩いていくのを横目で見ながらゼレンカはため息をついていた。
「ゼレンカ、そっちはどうだい?」
「そろそろできそうだよ、あとはマッケイだけだね。そっちはおわったの?」
「当然さ、私をなんだと思っているんだ?」
「天才なんて、ここにはたくさんいるさ。でもおどろきだよ、ジェイルのすごさは」
「はは、私もゼレンカとマッケイには驚きだよ。生まれてはじめてさ、こんな喜びをえてるのは」
「こんなのが楽しいのかい? ジェイルは変わりものだね。僕はつかれたよ」
「寝てこいよ、ゼレンカ。マッケイがここに来たら伝言を伝えておいてやるよ」
「ドクターお茶持ってきましたよー」
「あぁ、ありがとう、セイン」



443:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:34:34 8B1BTB4K
一番変わったのは彼かもしれない。彼は友ができ、喜びを覚えていた。
しかし、彼は時よりなやんでいた。自分だけがこんな幸せを感じていいものなのか、自分が犯罪者であることを忘れそうになるのが。

「ドクター、どうかしましたか?」
アトランティスのブリッジで彼が空の二つのつきを見ながらコーヒーを飲んでいると後ろからウーノがうしろから声をかけてきた。
「いや、気にしなくていい」
「…また悩んでいるのですか」
「私がやったことで苦しんだ人がいた。あの時はこんなことを感じなかったのにな」
「…ドクター、過ぎたこ」
「過ぎても罪は消えないさ。 アトランティスのやつらはいいやつらばかりだよ。ゼレンカも、マッケイも、シェパードも…私を仲間と呼んでくれる」
ウーノは暗い顔をしている彼をうしろから見つめることしかできなかった。
「つぶれてしまいそうだよ、自分の罪に。こんなにも仲間ができると人は、もろくなってしまうんだな。…仲間が出来たからこそ喜びを感じれてよかったよ。そう思える自分もいる」
ウーノはゆっくりと歩いていき、ジェイルの背中に抱きついた。抱きついた時の拍子で、ジェイルの長い白衣が揺れた。
「私が支えます、ドクター、いえ、あなたをナンバーズのUNOとしてではなく、女性のウーノとして」

彼を悩みを支えるものもいた。しかし、彼は自分の罪を許せなかった。


444:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:35:01 jLhpbgG8
とりあえずスカリエッティじゃないか?

445:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:38:23 8B1BTB4K
「ゲートをあけろ!!」
「だめだ、バリアを外すな!」
「ジョン! まだ、向こうにジェイルがいるんだぞ!!」
「あの状況で今ゲートを開ければアトランティスをレプリケーターに占拠されるだけだ!!」
「だからといって、向こうで作業している彼を見捨てるのか!!」
「誰もそうとはいってないだろ!!」
「今やっていることはちがうのか!」


…たった一つのミスが起こした、大きな意味。


≪…聞こえるか、アトランティス≫
「ジェイルっ!生きていたのか!」
「ドクター!」

≪少しうるさいよ、大丈夫さ。まだ生きている。もうすぐいなくなるがね≫

通信が来た。それは助かった合図でもなく、援護を頼む合図でもなかった。

≪レプリケーターの船にいるんだよ。逃げることはできない。でもできることはある≫

そういって、彼は船と周囲にある6機丸ごと破壊する方法を話した。
自分を犠牲にして。そして、彼は語り始めた。ゆっくりと、自分が過去にしたあやまちに謝罪するかのように。






446:代理
08/11/17 20:17:27 H3VC+OVb

≪…済まなかった。今だから言える。いっても許されないのはわかっている。しかし、いま言わなくてはならないと思った≫
「そんなのは面と向かって聞かせてください!」
≪はは、エースオブエースは厳しいな≫
「あなたがそんな風に笑うなんてあのときでは信じられないですよ」


≪フェイト・T・ハラオウン、君にはあやまらなくてがならないことがたくさんあるな≫
「いいんです、私は自分が自分であることに自信を持っています」


≪マッケイ、ゼレンカ、すまないな。こんど地球で飲みに行く約束は守れなくなったよ≫
「おいおい、やめろよ。まるで死ぬ前のセリフじゃないか」
「そうだよ、ジェイル。帰ってこいよ」


≪ウーノ…≫
「…」
彼女は涙を流していた。顔をうつむかせて、画面に顔を向けることが出来なかった。
≪娘たちのことは任せたぞ。お前の妹だからな、お前がいれば大丈夫だ≫
「…」
彼女は声を殺しながら泣いた。他のナンバーズも、涙を流した…

≪…SGA、作戦の成功を祈っている≫

それとともに、通信は爆発音とともに消えた。

「レプリゲーターのオーロラ、6機が消滅しました」

その声を聞いてもあたりはシーンとしていた。
全員はゆっくりだが敬礼していた。その眼には涙を浮かべるものもいた…






SGAの戦いは長い。その戦いで敵を倒すことがあれば、仲間を失うこともある。それでも彼らは星のために、戦っていくのだ。自分たちの信念のために…


447:代理
08/11/17 20:17:57 H3VC+OVb
代理投下終了

448:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 20:51:42 zcLzkxEe
とりあえず「てにおは」からなんとかしろ
わけがわからん事になっている

449:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 20:59:12 4sQFpXl5
>>448
お前の読解力が壊滅的なほどに無い、ということが分かった。

450:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 21:05:03 Cj4t4hze
>>448
「てにをは」だよ。

451:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 21:30:38 me+ZVkyY
とりあえず・・・
「スカリエッテ」とひたすら同じ語尾「た」が気になって仕方なかった。

452:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 22:49:33 vqnmHktj
一か月ぶりのご無沙汰です。
もうね、本当に筆が進まないのなんの、皆様大変長らくお待たせいたしました。
魔装機神氏の次に投下させていただいてよろしいでしょうか?

453:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 22:52:55 DOgq1aQX
少しばかり早いですが、そろそろ投下したいとおもいます

454:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 22:54:44 DOgq1aQX
「………」

ただ、彼女は大の字になって倒れていた。
体が自由に動かない。
動かそうとすると、ミシミシと体から悲鳴が聞こえるような気がする。
これ以上は限界だ、動かすな……と体が警告している。

(も、もう無理)

もう、息をするのも辛い。
しかし、呼吸をしなければ、人は生きていけない。
辛さに耐えながら、彼女は息をしつつ夕焼けに染まっていく空を見る。
普段は意識してみないけど、空ってこんなにきれいなんだ……と彼女はしみじみと思う。
少女は感慨にふけりながらも、体の警告を無視し首を横に倒す。
そこには、自分と同じように倒れこんでいる姉妹達の姿。
どの姉妹も、もうほとんど虫の息。
その光景はまさに阿鼻叫喚、地獄絵図。
少女はそんな姉妹達を、そして自分の体を見て、ポツリとつぶやく……

「あの人達……人間じゃない………ティアナたち、よく毎日受けられるな……」

ここは、機動六課の訓練スペース。
現在、ナンバーズ更正組は大絶賛訓練中であった……


最速少女ラディカルノーヴェ  2話


「ぜぇ……ぜぇ……」

もう日が暮れようとしているとき、ナンバーズ更正組は木にもたれかかっている。
J・S事件以降、更正施設に入ってからはろくに体を動かしていないような気がする。
しかし……それでもだ。
このエースオブエースと呼ばれる高町なのは一等空尉の教導は、今まで自分達が行ってきた訓練よりも、確実にきつい。

「スバルたちが……あれだけ成長するのも……はぁ…納得だよね」
「ど、同感っす……ひぃ……」

セインは視線を移すと、今度はスバル達フォワード陣がなのはたちにかかっていっている。
自分達のときとは打って変わって、本気でかかっている隊長陣。
毎日あれだけやっていればそりゃあ強くなるはずだ……と、この訓練をほぼ毎日受けているフォワードたちを見る。
当初は、ガジェット1型ですら苦戦していたと聞いたとき、そのときの彼女達が想像できない。
説明が遅れたが、現在、ナンバーズがこの六課の訓練場にいる理由。
一言で言えば、慣らしのためだ。
先のJ・S事件から、彼女達はろくに体を動かしていない。
そんな鈍っている体を動かすために、と訓練に参加させているのだ。
その件で、隊長と副隊長陣はもちろんのこと……

「ふぅ、いい汗かきました」

ほぼ毎日が実戦形式という事で、ナンバーズの監視という名目で、聖王協会のシスター、シャッハ・ヌエラも訓練に参加している。
そのシスターは、まるであの訓練を運動のように、すがすがしいまでの汗をかきながら、開放感に満ち溢れた笑顔をさらけ出している。

455:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 22:56:07 DOgq1aQX
「…………」

しかし、そんな彼女を、セインは恐ろしい目で見る。
今度、いつその矛先が自分ひとりにむけられるかわかったものではない……
なぜか、彼女は自分の事をなぜか気に入っているように見える。
何をされるか、わかった物ではない。
今のうちにいろいろなことに対策を立てなければいけない……

「けど、これだけ動くと、さすがにおなかが減るッスねぇ……」

ふぁ~~、とウェンディはおなかをさすると、同時にと気持ちのいいほどにお腹から音が聞こえてくる。
これだけ動けば、嫌でも腹は減る……

「……よく食べ物のことが連想できるね。僕は逆に何も入りそうにないんだけど」

のだが、後衛ポジションで、サポートがメインのオットーは違った。
かつての訓練でも、彼女は主にISのコントロールがメインで、飛んだりはねたりはあまりしない。
そんな彼女が、いくら戦闘機人といえども1日中暴れまわれば、一番先にへたれこむのは明白だった。

「お、オットー、大丈夫?」
「う、うん……」

もうへとへとを通り過ぎ、完全に青ざめているオットーを、ディードは心配そうに見る。
こう見ると、まあ確かに仲がいい双子の姉妹なのかもしれない……髪はともかく目が似ている。

「……」

ただ、そのやり取りを眉一つ動かさず、疲れている表情を除けば、ポーカーフェイスで行っているのだ。
なにか、素人役者が演技をしている、というイメージが浮かび上がってしまう。

(けど、最近は二人ともよく喋るようにはなったよね?)
(ああ、あの二人も少しずつだが変わってきている。姉としては嬉しいことだ)

そのうち、感情も表に出すようになるだろう、とこの中では長姉のチンクは笑みをこぼす。

「は~~い、皆さん、お疲れ様でーす」
「で~~す」

そこに、やけに明るい女性の声と、無邪気な声が聞こえてきた。
それに一同は反応すると、そこにはスポーツドリンクをもつ二人の女性。
一人はメガネをかけた、六課の制服を着用している女性。
もう一人は、6,7歳位の女の子で、こっちの方は普通の私服姿。
前者は、六課の管制、さらにはフォワード陣全員のデバイスの面倒を一手に引き受けているシャリオ・フィニーノ陸曹、通称シャーリー。
後者は、J・S事件の後、本格的に高町なのはが養子として迎えた、高町ヴィヴィオ。

「はい、これ」
「あ、ありがとう」

ディエチはヴィヴィオを見て、少々複雑な顔を浮かべてドリンクをうけとる。
自分達は、彼女にひどいことをしてしまった。
それで、少しは根に持っているだろうとディエチは思っていたのだが、当のヴィヴィオはまるで気にしている様子もなく、満面の笑みを自分に浮かべてくる。
そんなヴィヴィオに、ディエチは微妙な笑みしか返せない。
しかし、そんな笑みも、次のシャーリーの言葉に身を凍らせる。

456:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 22:57:28 nYAXOTod
支援

457:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 22:58:00 DOgq1aQX
「なのはさんの訓練はどう?あれでもまだゆるいほうなんだけど」

にっこりと手に持っているドリンクを渡しながら、シャーリーが口にした言葉に、一同はえ?と彼女を見る。
まあ、今やっているスバル達を見れば、当たり前なのだろうが……

「まずは、今まで動かさなかった分の体力を取り戻して、それから本格的な訓練に移るんじゃないかな?」

スバルたちの訓練もほとんど付き添いで見ていたシャーリーの予想だから、おそらくあっているだろう。
まだきつくなるのか……と深さはそれぞれだが、ため息をつく一同。
確かに、今回はただ走ったり飛んだりするだけだったから、次からは戦闘を交える、ということだ。

「本来だったら、もっとゆっくりと、確実にいきたいんだけど……今回ばかりは時間がねえ。
教えたいこともたくさんあるっていてたし」

本来、なのははこのような突貫的な訓練を嫌っている。
まずは基本からこつこつと教えていくのが彼女の教導方法だ。
しかし、今回は全くといってもいいほど時間が足りないのだ。
名前も素性も全くわからない謎の男が、どのような理由でノーヴェをさらったのか……
それを含めて、今現在ではわからないことだらけである。
彼が次の動きを掴むまでに、彼女達を以前のように動かせるようにはしたい、となのはは思っている。
運よく、多少腕はさび付いているが、彼女達は基本の体が出来ている
だからこその、現在の突貫訓練だ。

「確かに、私たちもまごまごして入られないからな」

チンクは、訓練中のスバルを見て、決意を秘めた顔をする。
全ては、大切な妹をさらって行った男に、一撃お見舞いするため。


丁度そのころ。別のところにいる姉妹も、ひとつの決意を胸に秘めていた。

「で、話したいことって何だよ?」

ミッドチルダ南部の森で、ストレイト・クーガーとノーヴェはいる。
二人は、お互いに向かい合うように立っている。
いつものように周囲を散策していると、ノーヴェの方から「話がある」とここに呼んだのだ。
少々の静寂が訪れた後、ノーヴェはゆっくりと口を開く。

「あたしは、前にたくさんの人に迷惑をかけてきた……」

ノーヴェは、自分の手を忌々しげに見る。
自分は、以前この手で数々の悪行に手を染めてきた。
さもそれが、当然の事のように。
自分は戦闘機人。所詮は戦うことしか出来ない存在。
そう思っている。

「収容所に入ってからも……普通に暮らせていけることが出来るのか、ちょっと不安だった」

自分達と同じ戦闘機人でありながら、普通の人となんら変わらない生活を送ってきた、タイプゼロと呼ばれる二人。
しかし、彼女達と自分達とでは、これまで生きてきた環境がまるで違う。
そんな自分達が、いまさら彼女達のように社会に溶け込めることが出来るのか、とても不安なのだ。
珍しく弱気なノーヴェの話を、クーガーは黙って聞いている。

「そんな事を考えてたらお前と会って……それから、いろんな所を旅して……笑ってる人たちを見た」

458:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 22:59:18 DOgq1aQX
ノーヴェは、ずっと見ていた手を握り、クーガーを見た。
それからは、クーガーといろいろなところを旅して、そこに住んでいる人たちをこの目で見てきた。
幸せに暮らしている人々を、将来を夢見ようと奮起している人。
本当に、いろんな人を見てきた。

「そんな人たちを見て、あたしは、自分に出来ることをしたいって思った」

以前、川辺で少年を助けたように、自分のできる事をしてみたい。
それが、彼との旅を通しての、彼女なりの決意。

「う~ん、いい決意だ。俺がわざわざ連れ出した意味がある。ノーウェ」
「ノーヴェだ」
「ああ、悪い悪い」

ノーヴェの決意に、クーガーは感動したようにうんうんと頷く。
もしかしたら、最初から仕組んでたんじゃないのか?と疑問を持ちたくなるように……
それもつかの間、うんうんと感動していたクーガーが、不意に彼女を見る。

「で、俺を呼んだのはその事を聞いてほしいからなのか?」
「!?」

彼の突然の言葉に、ノーヴェはうつむいて黙り込む。
これからが話すことが、彼を呼んだ本当の理由。
最初は彼女も戸惑っていたが、意を決してクーガーを見る。
それは、何かを決意した澄んだ目。

「あのとき、助けてくれたお前を見て、改めてお前がすげえ奴なんだなって思った」

数日前、襲ってきた熊をいとも簡単に撃退したクーガー。
あの目にも止まらぬスピードと、その速さが合わさった強烈な蹴り。
それを目の当たりにして、ノーヴェは自分がどれだけひ弱な存在なのかを思い知らされた。

「だから……たのむ!!あたしを強くしてくれ!」

ノーヴェは、頭を深く下げる。
彼女がここまで頼み込むのは珍しい。
それほどに切実な願い、ということだろう。

「あたしは、もっとつよくなりてぇ。強くならなきゃいけないんだ!だから……頼む」

ノーヴェが、誰かに頭を下げるという事は滅多にない。
それほど、彼女の思いは強い。
そんな彼女を見て、クーガーはにやり、と笑みを浮かべる。

「それぐらいならお安いごようだ」
「ほ、ホントか!」

少々あっけに取られたが、クーガーの二つ返事に、ノーヴェは満面の笑みを浮かべて彼を見る。
彼女は素直になれないところがあり、照れや嬉しさなどが来る前に、つっけんどんな態度を取ってしまう。
そんな彼女が、ここまでの笑顔を見せるのは珍しいケースだ。
それほど彼を信頼し、また自分の心から素直に彼を認めているということだ。
彼女は、頼れる人に弱いのかもしれない。

「まあ、俺にとっても暇つぶしに丁度いいし、何より少々口が悪いが美少女の頼みだ。断るほうが野暮ってもんだからな」
「な……び……びしょ……」

459:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:00:18 DOgq1aQX
美少女、という言葉を聞いて、ノーヴェの顔がトマトのように真っ赤になった。
自分をこのように呼ぶ人がいないから戸惑っているのか、それとも美少女と呼ばれて単に照れているのか。

「そんじゃ、早速始めるか?」
「え……」
「早く強くなりたいんだろ?だったらまずは練習あるのみだ」

あっけの胃取られているノーヴェを楽しむような目で見て、クーガーはとんとんとつま先をたてる。
ノーヴェはきょとんとしながらも、ああと頷いてファイティングポーズをとる。
しかし……

(や、やる気あるのかよ……)

さっきから手はポケットに突っ込んだまま微動だにしないクーガー。
いくら足技がメインだといっても、本当にやる気があるのだろうか、と思えてくる。

「そういや、お前にひとつ言い忘れていた事がある」
「あ?」

クーガーは、眼鏡にかかっている髪を払うと、意識を集中させるように下を向く。
くる……と瞬時に悟ったノーヴェは、緩めていた気を引き締めなおす。
それと同時だった。
彼の周囲から、虹色の光の粒子が突然あふれ出した。

「なんだ……?」

その、彼女の目から見ても見とれる輝きを持つ粒子は、クーガーの周囲にある地面をえぐった。
それだけではない、周囲の木々もその粒子に触れた瞬間、分解されるように消えていく。

(あれは……)

あのえぐれた地面、中途半端に残っている木々。
それは、彼に助けられた時に見たふと見た光景と一緒なのだ。

「俺も、お前のようにちょっと代わった特殊能力を持つ」
「なに?」
「それは、物質を分解し自分に合った能力に再構成させる力。それはアルター能力と呼ばれる。そして!」

彼の周囲に漂っていた虹色の粒子は、だんだんと彼の足に収束していく。
収束していくとともに、彼の靴が、今まで履いていた靴とは別のものに構成されていく。

「俺のアルターの名前は、ラディカル・グッドスピード!!……脚部限定!!」

粒子が消えると、そこには、いつも彼が乗っている車に似たような形の靴が装着されていた。

「お前にはひとつ体験してもう事がある。それは!」

クーガーは、陸上で言うクラウチングのポーズをとり、戦闘体制にはいる。
鍛える前に、彼女にはひとつ体験してほしいことがある。
それは、彼が故郷「ロスト・グラウンド」と呼ばれる地域で「最強のネイティブアルター」と呼ばれた所以。

「受けてみろ、俺の速さを!!」
「!?」

ただ、一言も言えず、彼が視界から消えた瞬間、強烈な衝撃が遅い、彼女は天高く宙を舞う。
その意識を落としていった。
訳が解らないまま、彼女は意識を闇に落とした。

460:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:01:40 NLY4Sw6I
支援

461:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:01:45 DOgq1aQX
「それで、私に協力してほしいこととは?」

時空管理局、その本局にあるひときわ暗い通路を、数人の魔術師、そして研究者が一人の男を取り囲むように歩いている。
男は囚人服のままでそれ以外は何も着用しておらず、手には手錠、さらにはバインドがかけられている。
それにしては、余りにも異様な人数だった。
しかし、男はそれに何も疑問を持つことはなく、腰まで伸び、少々汚れている紫色の髪を揺らしながら歩いている。

「それはもうすぐ解る。黙っていてもらおうか」

研究者の一人が、彼の言葉に眉を吊り上げながらも、その歩むペースを乱す事は無い。
しかし、その研究者の言葉に、男はくくく……と醜悪な笑みを浮かべる。
獄中生活で気でも狂ったのだろうか……

「なにがおかしい」
「いや、君達は人に頼み込む姿勢がなってない、と思っただけだよ」
「!!」

男の言葉に、研究者はかっとなり、おもむろに男を殴りつけた。
彼の手は拘束されてるので、まるで吸い込まれるように地面に倒れる。
それを見た武装局員がさっと二人の間に割って入る。
研究者は怒り肩で息をしつつ、その男を睨みつける。

「ジェイル・スカリエッティ……礼儀がなっていないのは君の方だ。君は今の立場というのが未だにわかってないようだな?」

その男こそ、先のJ・S事件の主犯、ジェイル・スカリエッティ。
スカリエッティは一人の局員の手を借りて立ち上がると、もう一度その研究者をみて笑みを浮かべる。

「解っているさ……ただ、投獄されているただの一犯罪者に過ぎない私を出向かせる、管理局の人材不足は相変わらずのようだな」
「な!……」
「一つ言わせてもらおうか。私は君達に「協力」する気は一切無いという事を忘れないでもらおうか。
あくまで、私はノーヴェの行方を捜す条件のために「取引」しているだけさ」

スカリエッティは、研究者のすぐそばまで近づき、すれ違いざまにポツリとつぶやいた。

「それに、そんな事件を起こした男を作ったように命じたのは、どこの組織だったかな?」
「ぐ……」

スカリエッティの言葉に、研究者は黙り込んでしまう。
そう、彼は普通に生まれてきた人間ではない。
彼もまた作られた存在。
それも、管理局によって……
スカリエッティは、何もいえない研究者をみると、今度は今までとは違う笑みを浮かべる。

「重犯罪者でも、作られた存在であっても、わたしとて人の子でね。ずっと監獄で生活してて。話し相手がいなかったものでね。
少々おしゃべりが過ぎたようだ」

そうつぶやくと、彼は静かに歩き出し、それにつられるように武装局員と研究者も続いていく。
先ほどまで彼と口論をしていた研究者も、しぶしぶついていく。

「ここだ」

そして、局員に案内されたのは、とある研究施設だった。
そこには、数人の人が入ったカプセルや機材がいくつもあり、研究員がせわしなく動いている。
しかし、そんな研究員達も、スカリエッティを見ると動きを止める。

462:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:02:48 DOgq1aQX
(あれがジェイル・スカリエッティか)
(その力をちゃんと使っていれば、天才といわれていたものを……)

仕事中にもかかわらずひそひそと話を始める研究員を無視して、スカリエッティは真っ直ぐ、その責任者であろう研究者へと歩み寄る。

「君がジェイル・スカリエッティか……私は今回の件の主任のラーボ・ルクスという」

その主任と名乗る人物は、何か微妙な表情を浮かべ、お互いは握手する。

(ルクス……)

その中、スカリエッティは彼のファミリーネーム、「ルクス」という名前に少し違和感を覚えた。
管理局に属する一研究者など知るはずが無い。
しかし、何か懐かしい……ずっと前に聞いたことがあるような気がする。

「それで、見てほしいのはこの先にある。来てくれ」
「この先?あれはなんだね?」

スカリエッティは、首だけでポッドの中に入っている誰かを見る。
話とは、彼等のことではないのか……

「あれはまだ意識が無い。向こうに意識を回復させた唯一の男がいる。まずは、そいつから詳しい話を聞いてくれ」

ラードは、静かに彼をその目的の場所まで案内する。
それと同時に、先ほどの魔道師もぞろぞろと同行していく。
なんでも、この先には危険なものがあり、念のために武装隊に待機してもう、との事。

(結局、最後まで何か教えるつもりは無い、か……)

まあ、いいだろう、とスカリエッティは気にせず彼等についていく。
その時、ラーボは彼に聞こえないようにしたのだろうか、小さくつぶやく。

「まさか、彼とこのような形で会うとはね」

もしかしたら聞き逃していたかもしれないしラードの言葉。
それを聞いて、スカリエッティはああ、と小さく頷いた。
先ほどから気になっていた「ルクス」という言葉。
そして、さっきのラードの言葉と自分を見たときの奇妙な表所。

「なるほど……」

一人小さく納得し、それを聞いた彼の近くにいた魔道師はスカリエッティを見るが、彼は気にせずそのまま歩みを止めず、ラードの後をだまって追う。
彼が「自分を作った」者の一人の弟か、はたまた子か、孫かは定かではない。
だが、その血族というのは大まか正しい判断だろう……
彼も、その事を知っているはずだ。
でなければ、先ほどの言葉の意味が理解できない。

「ここだ、くれぐれも注意してくれ」

そこには、重々しいほどまでに厳重に魔力による鍵が施された大きな扉。
よくもこれだけの封印をするものだ、とスカリエッティは感心してそれを見る。
自分ですら、ここまでの事はされていない。
いったい、どれほどの人物はここにいるのか……

463:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:03:40 NLY4Sw6I
支援

464:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:04:05 DOgq1aQX
「あ、主任」

門の前にいる、数人の門番も。自分達に気付き、さっと一礼する

「あれから、何か変わった事は?」
「いえ、なにも……今は静かなものですよ。ようやくここが別世界だということを判断したのでしょう」
「そうか……まあ、おとなしいならそれに越した事はないか」

門番とラーボの話を聞くと、その人物は時限漂流者か何かだろうか……
なにか、特殊な能力でも持ってるのか……よほどの危険人物なのだろう。

「もう一度彼と話をしたい、扉の封印をといてくれ」
「は!」

ラーボの言葉に、門番と数人の武装隊は、扉に施された封印を解除に取り掛かる。
これだけの封印だ、解除をするにもかなりの時間を要するだろう。

「ずいぶん大した封印じゃないか。ロストロギアでも封じているのかね?」

現在、取り残された形となったスカリエッティは、ラーボにこれから会う人のことについてたずねる。
少しくらいの知識は欲しいところだ。

「いえ、中にいるのはロストロギアどころか魔力すらも持っていない人ですよ。ただ……」
「ただ?」

ラードは、いかにも目の前の人物を睨むような形相で睨む。

「奴は、魔力とは別の、恐ろしい力を持っている」
「力?」
「はい、おそらく厄介度で言えば、ISよりも……」
「ほう、それは……」

スカイエッティは、少し興味を持ってその扉を見る。
自分が開発した戦闘機人が使う特殊能力、ISよりも厄介といわれれば、一研究者として興味を持ってしまう。
やはり、自分は今でも「無限の欲望」であるようだ。

「封印は解除されました。毎度のことですが十分に注意してください。武装隊は後ろで待機させておきます」
「ああ、解ってるよ」

いつの間にか封印は解除され、扉には無骨で重々しい扉だけが残った。
二人の局員が、慎重に扉を開ける。
その重厚な見た目と同様に、重々しい音を立てながら、ゆっくりとその扉が開かれていく。
その部屋を見ると、それは凄惨なものだった。
部屋中が抉れており、もう部屋などと呼べる状態ではない。
その部屋の真ん中に、幾重ものバインドで拘束された一人の男がいた。
その男は奇怪な、どこかの制服らしいものを纏っていて、ぐったりとしたまま下を向いている。
この部屋は、彼が一人でやったのだろうか?
ならば、ここまで厳重な封印をしていてもおかしくは無い。

「なんだよ……飯の時間には、まだはえぇんじゃねのか?
それとも釈放でもしてくれんのか?」

男は、ゆっくりと視線を上げながら、その顔をさらす。
見た目は、30前後といったところだろうか。

「今日は、君に合わせたい男がいてね」
「なんだ……釈放じゃねえのかよ」

男は、さもがっかりした様子で肩を落とす。
よほどこの部屋が不便で仕方が無いようだ。

465:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:05:11 DOgq1aQX
「君が常識ある人なら、すぐ釈放なんだがね……残念ながら、君の力は危険極まりない上に、性格も非常に危険だからね」
「ちっ……いつでも俺等は嫌われ者かよ」

男は、自嘲気味に笑いながらラーボを見る。
反論しないという事は、それを認めているのだろうか。

「で、俺に話したい奴って言うのは誰なんだよ?」
「私だよ、私はジェイル・スカリエッティ。かつては科学者だったが、今はただのしがない一犯罪者だよ」

スカリエッティは男の前に立ち、大げさに手を広げて自己紹介をする。
さも、自分は偉いんだぞ、といわんばかりに。
男はそんな彼を奇異な目で見る。
男にとって、彼の第一印象は「変なやつ」だ。

「で、その元科学者の私は、君の変わった能力というものに興味があってね」
「へえ、俺のアルター能力にかい?」

アルター能力。
今まで聞いたことも無い言葉に、「無限の欲望」である自分が、目の前の「アルター」という言葉に喜びを、ときめきを感じている。
管理局に手を貸す、というのは腹が煮えくり返るほど腹が立つ。
しかし、一瞬だけこれがノーヴェを助けるため、というのを忘れそうにもなるほどスカリエッティは興奮している。
そんな彼を見て、後ろで待機している研究者は、ただ呆然と彼を見る。
あれが、道さえ間違えなければ間違いなく天才とされ、後一歩のところまでミッドチルダを危機に陥れた「無限の欲望」そのもの。

「やっと見つけましたよ、HOLY所属のC級アルター使い、立浪ジョージ」

そこに、彼の興奮を邪魔するように、突如後ろから謎の声が聞こえてきた。
そこには、黒いスーツを見に纏った、蛇を思わせる特徴的な目をした男。

「誰だお前は!?ここは立ち入り禁止のはずだぞ!!」

入り口で待機していた武装局員は、すぐさま男の方へ向き、デバイスを構える。
突如現れた男はそれに意を解さず、ただにやりと笑みを浮かべるだけだった。

「申し送れました。私は無常矜持と申します。以後、お見知りおきを……ああ、もうその必要はありませんね。
あなたたちは、ここで死ぬのですから」

その後、そこを見かけたものが見た光景は、局員と研究者の屍骸だった。
その報告では、その屍骸の中に、ジェイル・スカリエッティ、そして投獄されていた男は含まれていなかった……

466:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:06:45 qgwUCWFW
支援


467:魔装機神  ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 23:07:20 DOgq1aQX
これにて投下終了。
久しぶりに投下するので、新鮮な気持ちで投下できた。
次は早く投下できればいいと思ってます。

468:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:11:18 NLY4Sw6I
>>467
GJ!!
なのはさんとの訓練を受けて数の子達はどう変わるのか。
他のアルター使いも出てきて楽しみです。

469:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:18:05 qgwUCWFW
GJ!!です。
立浪か、こいつは砲撃は強いですが接近戦がなぁ。そして、無常wスカ博士の手で量産型戦闘機人兼アルター使いが生まれるのかな?
ただ一つに気になったのは、ナンバーズが肉体的に訓練についていけなかったことですかね。
精神的になら分かるんですけど、肉体的についていけない場合、最新型戦闘機人なのに筋力が魔導師以下、
そんなのを中将は期待し、スカ博士は誇ってたとしたら……相当のアホ?
ただ、骨格に金属を使用しただけの人間になってしまいますから、筋肉や心肺機能も強化や人工的なもので作っていると思いますし。 

470:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:25:18 NLY4Sw6I
>>469
う~んそうなるとスバルはどうなるんだろう。

>>467
前は粗野な感じがしたノーヴェが、またとても可愛くてよかったです。

471:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:29:14 qgwUCWFW
>>470
ここだと、投下の邪魔になってしまうので、ウロスにいきませんか?

472:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:42:49 NLY4Sw6I
皆さん失礼しました。

473:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:50:45 vqnmHktj
魔装機神氏、GJでした。
ではそろそろ自分の投下、行かせていただいてもよろしいですか?

474:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 23:52:17 8+KArqza
ばっちこーい

475:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:52:19 vqnmHktj
では行きます!
======


 女は問うた。
 「FATE」ではないのか? と。
 異形の仮面に素顔を隠した男は答えた。
 「FEIT」でいいのだ、と。
 プロジェクトF.E.I.T.……Far-dimensional Enhanced Intelligence Tenantry.
 遠き次元の優れた知性を借りた者。
 いかにもこじつけ臭い単語の羅列。
 しかし、男はこの時すでに気付いていたのかもしれない。
 フェイトと読みながらFATEという綴りを与えられなかったこのプロジェクト。
 借り物は所詮借り物……本物には決してなりえない、という事に。

 そして、今。

「鉄仮面が呼び寄せた過去の闇の一族の反乱から、調整もままならないまま
 超時空転移装置で逃げのびた私は、今から十年前のミッドに辿り着いた」

 時の庭園、最深部。
 虚数空間に喰われた空間が生物のように蠢く、この世の地獄。
 冥土の土産に、とでも言うつもりなのだろうか。
 聞いてもいないのに、バインドで空中に固定されているなのはとフェイトに向けて、
プレシアはここに至るまでの長い日々を語り続けていた。

「鉄仮面から手に入れたホムンクルスの技術も加えて、プロジェクトFはあなたという成果を得た。
 けれど、しょせんそれはまやかしに過ぎない。
 借り物の命と、本物の命はやっぱり別のものだから。
 だから私はこの十年、本物のアリシアを蘇らせるこの秘術の研究に没頭したの」

 クン、とプレシアが指し示したその先。
 宙に浮かんだ巻物を、六色の光……紅、青、橙、緑、白、黒。
 そう、「黒」の光という、なんとも形容しがたい輝きもそこに混じっている。
 それら色とりどりの光球が紡ぐ、ミッド式とは違う独特な魔方陣が包み込んでいた。

「そう、ジボウリュウ……未だ人類のたどり着いた事のない私だけが見つけた世界の、最高位の秘術。
 それを同時に手に入れたアルハザードの古代魔法を介する事で、ミッドの術式に不足する部分を補い、
 魔法儀式の精度を高めるの。ジュエルシードには私の思念を増幅する役目を担ってもらう」

 狂気に彩られた眼をぎらぎらと輝かせ、プレシアは暗闇の深淵にまで届くかのように声を張り上げる。

「もう少しよ、アリシア……もう少しで、あなたに……」

 しかし、シリンダーに浮かぶアリシアを見つめるその眼は、どこまでも慈愛に満ちたそれであった。



 巻之弐拾六「閃光の中の鉄機武者やでっ!」



「虚数空間の侵食がどんどん進んでる……急がないと!」
「けど、一体どうしたら……」

 際限なく現れ続ける傀儡兵の集団を切り抜けながら、
出口の見えない迷路を進み続けるクロノ、ユーノ、そして斗機丸。
 残された時間はもう少ないという事を理解しながらも、彼らの目指す先は
未だヴェールの下に隠されたままだった。

476:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:53:35 vqnmHktj
「足を止めるな、ユーノ! 一寸先は闇だからと言って、俺達に立ち止まる事は……」

 三体もの敵から一斉に振り下ろされる、槍やハルバートといった
重量にまかせ相対したものを粉砕するポールウェポン。
 それらをナギナタライフルで受け止めながら、斗機丸は弱音のこぼれるユーノを叱咤する。

「許されないっ!!」

 気合い一発。
 吹かされる背部の姿勢制御バーニアの炎とともに、勢いをつけて武器を跳ね飛ばし、
そのまま勢いに任せて空中から敵を一刀両断にする。
 力任せの技は本来武者丸の得意技だったなと、苦笑しながらも心のどこかでは
この場で唯一の希望であるその彼と合流する事を祈っていた……ちょうどその瞬間であった。

「見つけたぜ、斗機丸!!」

 派手な爆発とともに、なぜか壁ごと傀儡兵を突き倒しながら現れた白い影。
 それは紛れもなく斗機丸の無二の戦友、武者丸の姿だった。
 やっとの事で勝利の鍵を握る友に巡り合い、柄にもなく感傷的になって駆け寄っていく斗機丸
 それに対して武者丸は。

「武者丸か! ずいぶんと心配しへぶらっ!?」

 何の前振りも前置きもなく斗機丸を左ストレートで殴り飛ばした。

「……これが、俺の答えだ」

 じんじんと、金属の塊を殴りつけた痛みに腫れあがる拳を微動だにさせる事なく、
武者丸は斗機丸をただじっと、言葉少なに見据えている。
 当の斗機丸はこの理不尽な行為に思い当たる節があるのか、真っ向からその目を見つめ返している。
 一触即発。
 この状況を一言で表すならばそう呼ぶのが一番ふさわしいだろう。
 とても仲良しこよしの関係にある二人とは思えない、剣呑な空気が両者の間でせめぎ合っていた。

「ちょ、ちょっと、二人とも……?」

 両者の間に挟まれた格好のユーノは二人の放つ威圧感に気押されながら、遠慮がちに声をかける。
 が、その言葉はすでに二人の耳には届かない様子だった。
 しかし、少なくとも今日のフェイトの襲撃によって別れ別れになるまでは
こんなに険悪な仲になるような要素は何一つなかったはず。
 だとすると、今日これまでに斗機丸が行った「何か」に武者丸は激怒している可能性が高い。
 一体、斗機丸の行為の何が武者丸の逆鱗に触れたというのだろうか。
 そうやって悩んでいる間に、二人の様子は一触即発の「発」にまで至ってしまっていた。
 武者丸と斗機丸は互いに右手を振りかざし、弾かれたように相手に向かって飛びかかっていく。
 よもや同士討ちか? と、ユーノが思わず目を背けると。

「とりあえず、文句は!」
「全部後回しだ!」

 武者丸の拳が、斗機丸の手刀が派手な金属音を巻き起こす。
 しかし、その一撃に傷つき、倒れたのは当の二人ではなかった。

「えっ!? これって……」

 そう、武者丸達は互いに殴りつけあったのではない。
 二人の背後から音も立てずににじり寄っていた傀儡兵にその一撃を加えていたのだ。

「おいアルフ! 聞こえてたら返事しろ!」
「何だい!? 今こっちも……忙しいんだっ!」

477:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:55:01 vqnmHktj
 壁の向こうから、フェイトの使い魔であるはずのアルフの叫び声が聞こえてくる。
 傀儡兵がちぎっては投げちぎっては投げられている一角があるので、恐らくその辺りからであろう。

「そこをなんとか! 仲間と合流できたみたいなんだが、知っている顔が一人しかいない!
 これは一体どういう事だー!?」
「なにー? よく聞こえない!」

 武者丸の様子がおかしい。
 いや、さっきからかなりおかしいのだが、今度は自分の考えとかみ合っていない。
 しかし、これには思い当たる節がある。
 その事に気がつくと同時に、ユーノはポム、と開いた左手を握った右手で軽く叩き、
その結論を言葉に変換して口から紡ぎだした。

「……あー。そういえば武ちゃ丸ってあの場にいなかったっけ。
 僕だよ僕、ユーノだよ」
「ユーノだって? お前が? ハッハッハ……坊主、つまらねぇ冗談はよせやい」

 と、その言葉通りに全く笑っていない声音で、傀儡兵をなます切りにしながら武者丸は答える。
 だめだ、完全に信用されていない。

「本当だってば! あーもう……」

 仕方なく、傀儡兵の団体さんのど真ん中で、すでに本日何度目かになる
自らの正体についての説明を行わされる羽目となった。

「……了解了解、とりあえずオッケーだユーノ!
 おいアルフ、本当に聞こえてるか? 聞こえてるんなら出て来い!」
「だから、さっきから何なんだい!? 今こっちも大変だって言ってるじゃんか!!
 くぉんのぉーっ!」

 気合いの一声とともに、何体もの傀儡兵をまとめて吹き飛ばしながら、
武者丸たちの下に躍り出るアルフ。
 長い髪を振り乱し、疲労をあらわに大きく息をする姿は、ある種異様な気迫を醸し出している。
 若干引いているユーノをよそに、武者丸はそれを気にも留めず、自然体を保ったままに
アルフと会話を続けていた。
 
「仲間とも合流できたし、俺と斗機丸は駆動炉ってのをぶっ潰しに行く!
 あとはプレシアとフェイトだ!
 フェイトはなのはと一騎打ちの真っ最中らしいが……お前はどうする?」

 そんな武者丸の問いかけに、さっきまでの勢いはどこにやら。
 シュンと耳を寝かせて寂しそうに、そして申し訳なさそうにアルフは重い口を開く。
 ただし、その腕は背後から迫りくる傀儡兵に恐ろしい速度で裏拳を叩きこみながら。

「……ダメ、さっきの情報はもう古いよ。だって、フェイトの事を近くに感じない」
「何だって? オイ、それって一体……」
「じゃ、じゃあなのはは!? なのはは一体今どうなってるの!?」
「えぇい、邪魔だ! どいてろ使い魔モドキ! フェイトがなのはを倒したのか?
 それとも倒されたのか? どうなんだ!?」

 ユーノが血相を変えて、武者丸の頭を両手で押さえつけながら、
そして敵を一手に引きつけていたはずのクロノが、自分で「無駄遣いをするな」と言っていたのを
忘れたかのように、たった一瞬で傀儡兵の群れを一掃し、二人揃ってアルフに詰め寄っていく。

「あぁ、もう! 質問はまとめてやんなよ! ずっと下の方……庭園の最下層にいるみたいだ。
 あっちの奥にある通路から行けるはずだよ」
「最下層……? じゃあ、もしかしてそこになのはやあのオバンも!?」

 頭の上でやいのやいのとうるさいユーノとクロノを跳ねのけて、武者丸が問いかけた。

478:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:56:14 vqnmHktj
「多分ね。だから……」
「二手に分かれる、と言う訳だな? いいだろう、僕はプレシアの確保に向かう。
 駆動炉の場所は?」

 格好をつけているつもりなのか、武者丸に吹き飛ばされた時についた細かなゴミを掃いながら、
クロノは普段の調子で目的の場所を問いかける。
 はっきり言って格好良くもなんともないのだが、本人の名誉のためにこの場は不問とする。

「そっちと真逆。向こうにある螺旋階段を昇りきったその先……最上部に!」
「よし、そっちは俺と斗機丸で行く! ユーノはそこの生意気そうな黒服の坊主と、
 アルフ達と一緒にプレシアのオバンの所に行って……なのはを迎えに行ってやれ」
「武ちゃ丸……うん! そっちも気を付けて!」

 武者丸の心遣いに心が暖かくなるのを感じながら、ユーノはその想いに応えようと、
決意も新たにクロノの下へと向かい、そして彼につぶやいた。

「……言っておきますけど、貸し借りとかそんなのじゃないですからね」
「もちろんだ、ハッキリ言ってそんな問答をする余裕はもう無い。それと……」

 行く手を遮る傀儡兵を前に並び立ち、標的から視線をそらさぬままクロノはそれに答える。

「一々突っかかってくるくらいなら、もう敬語とかはナシにしてくれ!
 そんな事に気を使う奴が競争相手なんて、僕は納得しない!」
「……分かったよ、クロノ! これでいい?」

 一拍の間をおいてもたらされたユーノの返事に、クロノは満足そうに頷くと力強く声を張り上げた。

「結構だ、ユーノ! そこの使い魔、確か……アルフだったか。道案内を頼む!」

 アルフもまたそんな二人に微笑ましい目を向けながら、後方で奮戦している舎弟達を呼び集める。

「聞こえたね、あんた達! ボサっとしてないで行くよ!」
「アラホラサッサー!!」

 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! な三人組。
 だが、どう見てもそこに立っているのは……

「傀儡兵!?」
「違う違う! 敵違うよ俺ら!!」
「清く正しいが美しくはない外道の道を歩む者……堕悪の抜け忍カルテットのエース三人よぉ!」

 傀儡兵達はどこぞの鷲鮫豹の戦隊ヒーローのように決めポーズをとり、例の堕悪武者を名乗った。
 そのシュールな様を見て呆れるやら力が抜けるやら。
 弛緩しきった体に今一度喝を入れ、ユーノはどうにかその鉛のように重くなった口を開く。

「はぁ……けど、どうしてそんな大変な事に?」
「話すと長くなるんだな」
「それでも聞きたい? ねぇ聞きたい、坊ちゃん?」
「な、長くなるって……?」

 傀儡兵と同じ姿を、しかも複数の種類の特徴を併せ持つちぐはぐな姿。
 いったい彼らの身に何があったというのか。
 知らず知らずのうちに神妙な面持ちとなり、耳を傾けると。

「傀儡兵の残骸に堕悪融合しました」
「短ッ!?」

479:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:57:22 vqnmHktj
 わずか十五文字で説明完了してしまう程度の事であった。
 そういえばそうだった、彼らはやせても枯れても堕悪武者。
 周囲の物体を取り込んでパワーアップするのがその最大の特徴だった。
 名古屋への道中で新幹線と融合したこのへっぽこどものリーダー、堕悪圧愚のように。

「んー。細かい原理を説明すると日が暮れるくらいの長さに……」
「できないよね? 絶対君達それ説明できないよね!?」
「もう夜だぞ……って、んな事はどうでもいい! それよりススムはどうしたんだ、ヘッポコトリオ!」
「また何やら失礼極まりない罵詈雑言が聞こえたような気がするのですが?」
「いやはや、今日の我々は至極機嫌がよろしい。ここは出血大サービスで教えてあげなくもない」

 ちょっと強くなったという事でどうやら調子に乗り始めている堕悪どもは、
武者丸の問いかけに対して恐ろしく不真面目な態度で接している。
 そんなお馬鹿さぁんに対して向けられるものはもはや説明するまでもなく。

「この場で斬リ捨てられたくなかったら今すぐ吐け」

 まるで捨てられた仔猫を見て「可哀想だけど家では飼えないし、これから保健所で始末されるのね」
というように表現できる遥か高みからの冷酷なまなざしと、鈍く光を反射する刃の輝きだった。

「サ、サーイエッサーッ! 調子乗ってスンマセンしたッ、サー!」
「前もそうだったけど、この武者頑駄無カルシウムが足りてないと思うんだな」
「コ、コラ! 余計な事は言うな圧愚害! かの少年は自分の腹の中に匿っております、サー!」

 体に染みついた負け犬根性では苛立ち最高潮の武者丸に立ちはだかる事は不可能。
 慌てて背筋を伸ばし、姿勢を正すと堕悪武者のうちの一人……恐らく堕悪雑獄愚が
腹の部分の装甲を開き、中からススムを降ろす。だが、しかし。

「外界から隔絶された空間にボクはただ一人身動きをとる事すら許されずただただ膝を抱えて丸くなっていたボクに感じることができたのは激しく上下に揺り動く感覚と金属と金属がぶつかり合う激しい衝突音
 そしてその瞬間伝わる激しい衝撃ボクはいつ果てるとも知れない終わりのない悪夢の中でただひたすらにこの無限獄が終わる事だけを願っていると堕ちてみれば心地よいものだと全身黒ずくめの男の人がおいでおいでと手招きを」
「わかった! ほったらかしにした俺が悪かった! だから正気に戻ってくれススムゥゥゥゥッ!!」

 ぐったりと柱にもたれかかるススムは、虚ろな目に乾いた笑みを浮かべながら、ただひたすらに
ぶつぶつと何やら怨み言らしき呪詛のような文字列を呟き続けていた。
 もはや何物も寄せ付けぬほどの近寄りがたいオーラを放っている。
 先程からどうも傀儡兵が手を出してこないと思ったらこういうカラクリだったのか。

「……もしかして、その駄目そうな……エフン! 失礼」
「すみません、今こちらの坊ちゃん俺らの事『駄目そうな』とはっきりのたまいませんでしたか?」
「彼らも連れて行くことになるのか?」
「スルーした!」

 自らの理解の範疇を超える存在を前に、思考回路がショートしていたクロノは、これから先も
恐らく自らの脳細胞を蝕むであろうと予測される存在の処遇について問いかける。
 自分のペースを極力乱されないように振舞いながら。

「あぁ、まぁ、その、成り行き上……」
「イエス、アイドゥー! 我ら堕悪武者、コンゴトモヨロシク!」
「まるでできの悪いB級映画を観せられたその夜の悪夢を目の当たりにしたような感覚だ」

 片手で頭を押さえ、やれやれと言わんばかりに首を横に振るクロノ。
 一言で言い表すなら「次元が違う」存在を前に、彼は胃薬の処方の算段をすでに始めていた。


480:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/17 23:59:14 vqnmHktj
 
「エルガ・オルフェ・マーキュ・クエリ・ジュピ・ガンティ……
 七曜万象の創世を司どりし神元素よ、六つの誓いを今一つの力に……」

 再び時の庭園、最深部。
 
(レ、レイジングハート……わかる……?)
<<Analysis were impossible. This is unidentified masic system.>>

 ユーノの部族とともに数多の古代遺跡を巡ってきたはずのレイジングハートでさえ
見た事も、聞いた事もない不可思議な呪文。
 それに応えて六つの輝き……紅・青・橙・緑・白・黒の光柱が魔方陣の六方から立ち昇り、
プレシアの周りに浮かんでいた同じ色の光球とアーチを結ぶ。
 その光を浴びたプレシアの放つ魔力の光が大きくなったことから、
何らかの魔力強化呪文であろう事に察しはつく……が、それだけだ。
 どちらにしろ、バインドでがんじがらめに拘束されているなのは達には
指をくわえて見ている事だけしかできない。

(お願い……フェイトちゃんのお母さんを……止めて……!)

 結局、力が足りなければ足手まといにしかならないというのか。
 ……そう、足手まとい。逆に言えば自分は一人ではない。
 自分は負けても自分「達」が負けたわけではないのだ。
 だから、心だけは決して屈してはならない。
 なのはは目の前のプレシアを凛とした目で、ただじっと見つめていた。



「……?」
「おい斗機丸、ボーッとしてんじゃねぇ!」
「あ、あぁ……悪い」

 螺旋階段を半ば以上昇り詰め、駆動炉はもうすぐそこ。
 激化する傀儡兵の攻撃の中、斗機丸は確かに誰かの悲痛な叫びを聞いた気がしていた。

「ねぇ、二人とも! あれがアルフの言ってた……」
「おぉ、きっとそうだ!」
「さっきから膨大なエネルギー量を感知している。あの奥が駆動炉に間違いない!」

 つい先程まで心神喪失状態であったススムをまさか一人で放り出すわけにもいかず、
二人だけで護衛対象を抱えつつ危険地帯への侵入という困難な道。
 だが、それもあと少し。
 目の前のに立ちはだかる不必要なまでに巨大な扉をくぐれば、この煩い傀儡兵たちも沈黙する。
 互いに顔を見合せて頷きあい、扉を開きその中へとなだれ込もうとした……まさにその時。

「……ッ!! 伏せろ、ススムッ!」
「えっ? わ、わわっ!!」

 武者丸は、自分と斗機丸に挟まれるように進んでいたススムが
その一歩を踏み出そうとするのを半ば強引に押しとどめる。
 ススムが目を白黒させて顔をあげると。

「何、これ!? シャッター!? あ、あっぶなかったぁ~……」

 ススムと斗機丸の間を、まるで断頭台のように分厚い鋼鉄の隔壁が雪崩落ち、通路を遮っていた。

「あんの性悪ババア……戦力の分断たぁ、念の入った真似をするじゃねーか!
 オイ、斗機丸、聞こえるか? 斗機丸!?」

481:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
08/11/18 00:00:08 vqnmHktj
 対象が所定の位置に踏み込むことで作動するブービートラップ。
 どこまでも周到なプレシアの手口に毒づきながら、隔壁の向こうの斗機丸に武者丸は
必死で呼びかけを試みる。

「あぁ、聞こえてる。こっちは無事だ。今のところは……な」

 友の叫びに、平静を装いながら答える斗機丸。
 その眼前には見渡す限りの地形を埋め尽くすほどの傀儡兵の集団が彼を待ち受けていた。

「待ってろ! こんな薄壁、すぐにブチ抜いて……」
「駄目だ! そっちに残っている傀儡兵だってゼロじゃない。ここは……俺一人で切り抜ける!」

 ススムという守るべき存在を抱えている武者丸に、次々に迫りくる雑魚の掃討をしながら
壁を突き破るような器用な真似はできないはず。
 悠長に待っている時間も、もはや残されてなどいない……ならば。
 そんな斗機丸の決意を見透かしたかのように、壁を隔てた向こう側から武者丸が
隠しきれないモヤモヤとした感情をこめて話しかけてくる。

「斗機丸……ここ最近のお前、どうかしてるぞ。
 さっきだってそうだ! 人に断りもせずに我致止飛やらかそうとしたり……
 俺が起動スイッチを押してたらどうなってたと思ってるんだ!?」
「だが、そうはならなかった」
「そんな事を聞きたいんじゃねぇ! お前、アレがどういう意味なのか本当に分かってんのか!?
 へたすりゃ俺達……なのはやユーノだって巻き込む事になるんだぞ!?」

 だんだんと過熱していく武者丸の口調とは裏腹に、斗機丸の声はどこまでも事務的に響いた。
 そんな彼らのただ事でない状態に耐えられなかったのか、半ば無意識のままに
ススムは両者の間に割って入ってくる。

「武者丸、さっきから巻き込むとかなんとか……それってさっき言ってたガチャ○ンって奴の?」
「だから我致止飛(ガチャンピ)だって!
 いいか、斗機丸は俺達とはちょっと違う……設計図から作られた人造武者、鉄機武者なんだ」

 斗機丸に対するそれとはまるで逆の態度で、諭すようにぽつぽつとススムに語り出す。
 右手に握った刀にじっとりと汗を染み込ませ、散発的に襲いくる傀儡兵を蹴散らしながら。

「人造……? それって、トッキーはロボットって事? シンヤはその事を知ってるの!?」
「黙って聞け! 昔、俺達の世界で鉄機武者を動かす魂とも呼べるぷろぐらむ……
 『鉄機心得』が改竄されて、鉄機武者軍団が丸ごと頑駄無軍団の敵に回るって大事件が起きた。
 それ以来、鉄機武者に搭載が義務付けられた暴走を外部から止める手段。それが我致止飛だ」

 壁の向こうの斗機丸は何も語らない。
 ただ武者丸の言葉と、その手に握られた刃が敵を斬り裂く甲高い音ばかりがその場を支配していた。

「それを使うと体内に蓄えられた強大なエネルギーの開放とともに、斗機丸は……」

 そこまで話すと武者丸は口ごもってしまう。
 怪訝そうにその背中を見つめるススムも、その先にある言葉の重みを薄々感じとりながら続きを待つ。

「死ぬ」

 長い、とても長い一瞬が過ぎて。
 からからに乾いた喉から絞り出すようにその一言が告げられた。

「それって、自ば……!?」
「その起動スイッチを握るのが、俺と鎧丸だ。
 このスイッチの信号はちょっと特別でな、俺達三人の心の絆で伝わるようになっている。
 例えどんな時でも、互いがどこにいても伝わるようにな」

 絶句するススムに言い聞かせるようにそこまで語ると、ふっと武者丸の纏う雰囲気がその趣を変える。


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