08/11/14 00:02:34 0agmqnmJ
>>285
お答えありがとうございます。
そして、連投と上げてしまい申し訳ございません。
290:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:05:25 ajOi+QQf
支援します
291:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:05:59 4lFyaQVL
――6
カリム・グラシアの視界に最初に入って来たのは、聖王医療院の真っ白に塗装
された天井と、暖色系の光を放つ据え付け型の室内灯だった。
「騎士カリム?」
その声に顔を向けると、傍らにはシャッハ・ヌエラが居て、心配そうにこちらの
顔を覗き込んでいる。
「シャッハ…」
カリムは一言呟いた後、窓の方を振り向く。
空は夜の帳に覆われ、正面に見える大聖堂が、キャンドルライトで仄かにライト
アップされているのが見えた。
カリムは、シャッハに顔を向けて尋ねる。
「私…どれ位気を失っていたの?」
「丸一日眠られてました」
「正確には10時間42分29秒です」
シャッハの後ろに控える、同じ修道士服を着たロングのストレートヘアーに感情
の読み取れない表情をした若い女性が、空間モニターを操作しながらシャッハの
言葉を訂正する。
「と、いう訳です。騎士カリム」
シャッハが苦笑しながら両手を広げて“お手上げ”のポーズを取ると、カリムも
笑みをこぼしながら言う。
「相変わらず、ディードの体内時計は極めて正確ね」
「恐れ入ります」
ディード・ハルベルティルダは、丁寧に頭を下げた。
「失礼します」
ディードと同じ顔立だが、ショートヘアーと執事の格好で一見男女か判別の
付かない、中性的な雰囲気の女性が、病室に入って来た。
彼女は、ティーポットと二つのカップに、食べやすいように切られた、赤い色の
林檎のような実が並べられた皿の載るカートを持っている。
ディードが空間モニターを操作すると、窓側のベッドサイドから折り畳み式の
テーブルが迫り出し、同時にカリムのベッドも上半身部分が持ち上がる。
デザートの皿をテーブルに乗せ、紅茶をカップに注いだ後、頭を下げて退出しようと
する二人を、カリムは手で制した。
「オットー、ディード。あなた達も一緒にどう?」
カリムの言葉に、ディードとオットー・ハルベルティルダは顔を見合わせると、これ
以上ない見事なユニゾンでカリムに尋ねる。
「よろしいのですか?」
カリムは微笑みを浮かべながら、首を縦に振った。
292:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:08:21 0agmqnmJ
支援
293:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:14:40 4lFyaQVL
湯温、葉の匙加減共に完璧なオットーの紅茶と、ディードが選んだ丁度いい甘さの
デザートがその場の空気を和ませ、暫くの間は和気あいあいとした雑談が続いた。
「今朝は何故、気を失われたのですか?」
シャッハの言葉に、カリムは自分のティーカップに視線を落として考え込む。
「はっきり言って、私もよくわからない」
そこで一旦言葉を切ると、今度はシャッハの方を振り向いて言葉を続ける。
「起きた時から、目覚めているのに…まるで意識に靄がかかったかのような感じが…」
今度は天井を見上げ、目を細めて何かを思い出そうとする。
「…心が体から切り離されて浮遊しているかのような感覚…何て言ったかしら?」
「夢遊病…ですか?」
シャッハがそう言うと、カリムは頷いて話を続ける。
「そう、まさにそんな感じね。
最後に覚えてるのは、礼拝所でオルガンを弾いてる途中、聖王様のステンドグラス
を見なければ…という義務感が突然湧き上がった事。そこから先は覚えてないわ」
「そう言えば、ステンドグラスを見上げられてた時、何か口走ってられる様子が
見受けられましたが、その事は?」
ディードの問掛けに、カリムは首を横に振りかけたが、ふと何かを思い出したらしく、
顎に手を当てて言った。
「ひとつだけ、覚えている言葉があるの」
「何でしょう?」
「“トランスフォーマー”」
「トランス…フォーマー?」
シャッハがオウム返しに答えると、カリムは頷いた。
「どういう意味なのでしょうか?」
シャッハが尋ねると、カリムは首を横に振った。
「私にも分からない。オットー、ディード、あなた達は?」
二人とも首を横に振って、“自分たちも知らない”と意思表示する。
「無意識の中でそれだけ覚えてた…って事は、相当重要な言葉なのでしょうけど…」
294:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:16:18 0agmqnmJ
支援
295:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:17:21 ZOnUQFeO
メガトロン様支援
296:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:17:40 4lFyaQVL
突然、カリムの目の前で金色の輝きを放つカードの形をした物体が現れた。
「“プロフェーティン・シュリフテン”!?」
カリムは自らのレアスキル“預言者の著書”が何の予告も無く突然発言した事に、
戸惑いの表情を見せた。
「二つの月の魔力が揃っていないのに…、何故!?」
カードは二枚、三枚、四枚と次々に分裂し、やがてカリムの周囲を輪のように囲んでグルグルと回る。
しばらくして、その中からカードが一枚飛び出して、カリムの眼前で止まる。
旧い結晶と無限の欲望が交わる地
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る
死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち
それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる
「これは…“JS事件”の予言!?」
発現されたカードの文を読んだシャッハが、怪訝な表情をする。
「すでに終わった筈の予言が、何故今になって――」
シャッハの言葉を、カリム
「オットー、ディード、急ぎ着替えの用意を」
二人が頭を下げて退出する。
「騎士カリム!?」
尋常でないカリムの様子に、シャッハが戸惑った様子で尋ねる。
「この予言が、“JS事件”を指していないとするなら…」
カリムの言っている意味を理解すると、シャッハの顔から血の気が引いて行く。
「予言は、まだ終わってない…?」
カリムは頷くと、更に言葉を続ける。
「もしかしたら、始まってすらなかったのかも知れない。
いずれにしても、至急法王様に報告しなければ…」
オットーとディードが外出着を持ってやって来ると、カリムはベッドから降り
ながらシャッハに言う。
「シャッハ、あなたも立ち会い人として同行して」
「かしこまりました」
シャッハは頭を下げると、空間モニターを開いて法王直属の秘書官に、至急法王
への面会を取り次ぐよう依頼した。
297:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:20:09 ZOnUQFeO
映画第2弾はまだですか支援。
298:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:20:19 0agmqnmJ
支援、これはw
299:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:22:36 4lFyaQVL
シャーリーはコンソールに両肘を付いて、目の前でリピート再生されている、
フレンジーのクラッキング信号をじっと眺めていた。
「これを解析できる可能性のある人間と言えば…」
シャーリーはそう独り言を呟くと、モニターから顔を上げて周囲を見回す。
誰もが仕事に没頭している事を確認すると、シャーリーは空間モニターを
もう一つ開いて、コンソールを操作する。
“コピー完了”
その表示が出ると、シャーリーは次には右手首上の時計型空間モニターを操作し、
タイマーを起動させる。
1:29:59
タイマーがカウントダウンを始めると、シャーリーは急ぎ足で部屋を出ていった。
300:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:23:32 0agmqnmJ
支援
301:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:26:20 4lFyaQVL
私服に着替えて本局ビルを出たシャーリーは、交通渋滞著しいクラナガンで一番
最近人気の“シュランピーゲ(運び屋)”という動物や人力によるタクシー便を、
ビルから少し離れた大通りで待ち構えていた。
暫くしてシャーリーが居る側の路側帯を、黒衣のフードで身を包んだ人間を乗せた
馬がやって来る。
シャーリーは両手を大きく振ってその前へ出た。
「ねぇ、待って待って!」
馬が動きを止めると、シャーリーは騎手が何か言う間も与えず、後ろに素早く飛び
乗る。
「どちらまで?」
フードで顔も見えない騎手が、低い、歯車の軋りのような声で行き先を尋ねる。
「43区のイトゥメヌゥ通り、大急ぎで!」
騎手はそれを聞くと、馬を軽快に走らせる。
「時間はどれぐらい?」
シャーリーの質問に、騎手は前を向いたまま答える。
「大体30分ですな」
「チップは弾むわ、20分で行って!」
シャーリーはそう言って、財布から高額紙幣を取り出し、騎手に突き出す。
騎手はちょっとの間紙幣を見つめた後、それを受け取って言った。
「かしこまりました、しっかりおつかまり下さい」
その言葉と同時に、騎手は気合いの声と共にたずなを激しく振る。
それに反応して、馬はそれまでとは段違いの速さで走り始めた。
302:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:26:45 ZOnUQFeO
キューブ支援
303:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:30:00 0agmqnmJ
支援
304:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:32:56 4lFyaQVL
イトゥメヌゥ通りのある43区は、機能性を重視したモダン様式の建物が主流の
行政・経済区域とは対照的に、アラビアや東南アジア様式が混ざりあったような、
独特の民族様式の建物が密集する区域である。
その裏通りは、イスラム教のモスクと同じ形の屋根をした一軒家や、どこかの
次元世界の神々のレリーフが壁一面に彫られた高層アパートなどが、所狭しと
立ち並んでいて、陽は路面まで射し込む事はない。
蛙か何だかよく分からない生物の干物がびっしりと吊り下げられたり、得体の
知れない不気味な生き物の切身や背開きが並べられた、怪しげな露店がズラッ
と立ち並んでいる裏通りを抜け、シャーリーは更に細い路地へ入る。
路端のゴミを漁っていた羽の生えた恐竜が驚いて物陰に身を隠し、安楽椅子に
座って水煙草を味わっていた、シャーリーと同じ身長の人間に似たゴキブリ型
生物が、触角を振るわせながら興味深く見やる。
タイの仏教寺院に似た尖搭の屋根をした比較的大きな一階建ての家の前に来ると、
シャーリーはドアチャイムを3回鳴らす。
ドアを開けたのはシャーリーとほぼ同年代だが、体格は彼女の三倍はあろうかと
言う黒人男性。
シャーリーの姿を見た途端、男性は慌ててドアを閉めようとするが、シャーリーは
すかさずドアに足を挟み込んで、それを食い止めた。
「シャ、シャーリー!? 何しに来たんだ」男性はドア越しに、シャーリーを疫病神を
見るような目つきでた尋ねる。
「グレン、あなたの助けが必要になったの」
シャーリーの言葉に、グレン・ホイットマンは表情を歪ませて言った。
「勘弁してくれ。以前、そっちの頼みで交通システムにクラッキングした時、危うく
こっちの位置がバレそうになったんたぞ」
「だから、バルゴア社の超高密度チップをプレゼントしたんじゃない。あれ、幾ら
掛ったと思ってんの?」
「そういう問題じゃ―」
グレンがそこまで言いかけた時、家の奥から老婆と思われるしわがれた、しかし
ドスの効いた低い怒鳴り声が響いてきた。
「グレンー! 誰が来たんだい!?」
「友達だよ、お婆ちゃん! 心配しないで!」
それに負けじとでかい声で怒鳴り返した後、グレンは意を決したように、ドアを
開けてシャーリーを中に入れる。
「ったく、此処は俺の心の安息所なんだぞ。外界の面倒事は一切持ち込まない事に
してるのに…」
「突然お邪魔したのは悪かったわよ。でもそれだけの価値は―」
シャーリーの言葉を遮って、再び祖母の金切り声が廊下の奥から響いてきた。
「グレンー! ロダの実のジュースは何処だい!」
それに対して、グレンも負けず劣らずの大きい声で場所を教える。
「冷蔵庫の二段目の棚の奥だよ、お婆ちゃん!」
「…心の安息所?」
シャーリーの疑わしげな視線に、グレンは笑いで返した。
「ちょっとしたBGMさ」
305:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:34:09 ZOnUQFeO
オプティマスはマジいいお方支援
306:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:39:26 0agmqnmJ
破壊大帝こそが真の死せる王、ヴィヴィオとは格が違う本物の帝王が復活するのかw
支援。
307:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:39:43 4lFyaQVL
グレンはシャーリーと議論しながら、自分の部屋へと入って行く。
そこは、様々な次元世界から集められた品々が溢れ、ちょっとした博物館のような
雰囲気を呈していた。
部屋には二人の他、グレンの友達で外骨格型の体をした半漁人似の生物が、
レイジングハートの形をしたコントローラーを両手で持ち、大型の空間
モニターにそれ向けてゲームをやっている。
彼はグレンを見ると、モニターを指差して叫んだ。
「おい見ろ! “ブラスターモード”まで来たぞ!」
それを聞いた途端グレンの眼が輝き、シャーリーを放ったらかしに、巨体に
似合わぬ猛スピードで部屋を突っ切って友達の横に立つ。
「マジか!? 俺、“エクシード”が精一杯だったのに!」
「マジマジ!! もう少しでスターライトブレイカーが射てる!」」
「おおお! スゲェ!!」
エキサイトするグレン達を、シャーリーは呆れた眼で眺めながら呟いた。
「小学生か…」
そんなシャーリーの事など意にも介さず、二人は画面内のなのはが、ゆりかご内
でスターライトブレイカーを放とうするのを夢中で見入っている。
「スターライト――」
画面内上なのはが、クアットロに照準を合わせて永唱するのに合わせて、二人も
唱和する。
「ブレイカーッ!」
なのはの凛とした声を、シャーリーの言う小学生レベルの青年二人組の野太いダミ声
が掻き消す。
画面がピンク一色に染まると、グレン達は手の平を叩き合わせて、歓声を上げた。
308:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:42:46 ZOnUQFeO
メガトロン様こそ真の王よ!支援
309:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:43:12 Ue/t5F0Q
なのはゲーム化www
支援
310:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:46:27 4lFyaQVL
余韻冷めやらぬまま、幾つも空間モニターが表情されている自分の席に座った
グレンに、シャーリーはフレンジーの信号が映る小型の空間モニターを開き
ながら、猫撫で声で言う。
「ねぇグレン? 国家機密を覗いてみたくなぁい?」
次の瞬間、グレンの眼の色がまたしても変わり、シャーリーのモニターに手が
伸びかけるが、何かを思い出したかのように手を停めた。
「いやいやいやいやいやいや、その手には引っ掛からないぞ! こないだので
懲りたからな」
グレンは誘惑を振り切るかのように目を閉じ、首を横に激しく振るが、動揺して
いるのは誰の目にも明らかだった。
「あらそう? それは残念ねぇ」
シャーリーはそう言いながら、匆体付けた動作でモニターを消して席を立とうとする。
「待った、待ってくれ!」
グレンは慌ててシャーリーの腕を掴むと、ゲームを一時停止させる。
友達が難詰するような眼でグレンを見ると、肩をすくめて申し訳なさそうに言った。
「悪いが少し席を外してくれないか?」
シャーリーも、両手を合わせて頭を下げる。
「ごめんなさいね」
友達はグレンとシャーリーを交互に見比べると、肩をすくめて言った。
「データはセーブしといてくれよ」
友達が退出すると、グレンは周囲を見回してから、シャーリーに声を潜めて尋ねる。
「機密レベルはどれぐらいだ?」
グレンの問掛けに、シャーリーも声を潜めて答えた。
「あんたに洩らしたのがバレれば、あたしは軌道拘置所送りの後、どっかの管理外
世界の無人惑星に永久追放されるレベル」
それを聞いたグレンは、一番欲しかった玩具を手に入れた子供のように、両手を
上げてはしゃぎ回った。
311:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:47:12 ZOnUQFeO
機械生命体支援
312:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS
08/11/14 00:53:41 4lFyaQVL
本日はここまでになります。
クラナガン市街でも、地区ごとに文化のことなるエリアがあるのではないか…
と考えて、オリエンタル様式の地域を設定しました。
次はグレンと管理局員のドタバタ劇を入れたいと思います。
お読みいただいてありがとうございました。
今回のオリキャラの元ネタ。
グレンの友達:『シンジェノア』シンジェノア
シャーリーを送ったタクシー:『ロード・オブ・ザ・リング』ナズグル(指輪の幽鬼)
水煙草を吸うゴキブリ型生物:『ミミック』ミミック
313:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:55:49 ZOnUQFeO
GJ!
この預言はメガトロン様復活の狼煙!
314:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 00:57:06 0agmqnmJ
GJ!!です。
もう、メガトロン様がいつ復活するか楽しみすぎるw
力こそ全てを体現する破壊大帝に敬礼w
315:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 01:45:32 QDqFXCeW
2:00に投下します。
316:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:00:22 QDqFXCeW
「未明の早朝、全マスコミに向けてジョーカーと名乗る男からの声明が発表されました。まずはその一部をご覧ください」
「アァハハハハハ!おはよう、日本国民の皆様、私、ジョーカーは…はるばる遠いゴッサムからやってきた。
自分たちが他人事ばかりと、私とバットマンの戦いを娯楽大衆の見世物のようにして笑っていた…。
私はこれが許せなかった。だから少しだけお仕置きをしたかったのだ。
だが、それももうやめようとおもう。日本政府の隠し玉の力を見せてもらい、私も心底疲れてしまった。
人質を順に解放し、私は祖国に帰ることにする」
「このジョーカーの発言の真意を警視庁、首相官邸は『人質が解放されていない以上は、何も始まっては居ない』とコメントするにとどまっております。
ジョーカーの声明からは警視庁の特殊部隊による介入があったかもしれないという憶測がでており、
ジョーカーの今後の行動が警察の動きを決めていくものだと思われます」
「ブルース氏は、今回のジョーカーの発言については広報を落として慎重に、様子を見ていたいとコメントするにとどまっております」
「人質の解放の時刻等については明言が避けられていますが、
近いうちに、何らかのアクションがあるのではないかと、警視庁では見ているようです」
317:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:02:27 QDqFXCeW
第3話 歩み、止まるとき…。
警視庁、マスコミに出された声明後…3時間後。
時刻16時20分。
場所、井の頭公園…。
ワゴン車から、ゴミのように投げ出される1人の男。
それを呆然と見つめているホームレス。
ワゴン車から下ろされた男は、口にガムテープを張られており、意識を失っているようだった。ワゴンはすぐに出て行く。
下ろされた男はスーツを着たままの状態だった。
時刻17時00分
近隣警察に、倒れている男の人を確認したという連絡が入り交番警察が確認、拉致されていた政府の金融副大臣であることを確認。
至急、救急車から搬送されることになる。
金融副大臣は、怪我もとくにないようである。
この間に、ゴッサムシティのジェームズ・ゴードン市警本部長から、解放された人質にたいして徹底的な危険物等の確認をという要請が入るが、
解放による一時期の興奮状態によるものと、情報の錯乱により、その警告は届かない。
時刻17時30分
救急車で搬送される金融副大臣の容態を含めた緊急特別番組が編成され、報道される。
ジョーカーの人質解放ということに、マスコミは一斉に報道を開始し、事件の経緯や、
今後も人質が解放されていくのではないかという、肯定的意見が占める。
高町なのはは、自宅にてフェイト・T・ハラオウンのガス摂取による容態を見ながら、テレビを眺めていた。
あのジョーカーという人間が……どこか釈然としないが、
それでも自分たちの行った行動が一定の成果をあげたのではないかということを少し嬉しく感じてはいた。
時刻17時40分
救急車が都内の大学病院に到着…。
報道陣が集まる中、救急車からでてくる副大臣の姿。
そこに黒い影が現れた。
カメラが映し出したのは、黒きマスクの存在…バットマンの姿。
バットマンは、移動ベットに寝かされている副大臣の服をめくり、そこに大きな手術跡があるのを見つける。
バットマンはその長年の勘…なのはやフェイトとは違う、
その強い心と供に…知り尽くしたジョーカーという存在から、その移動ベットを蹴り、関係者から離す。
警備がバットマンを拘束しようとするが、そこで起きた光景に誰もが目を奪われた。
爆発……。
そう、それは人間の身体に設置された爆弾である。
拉致した人間の内部に爆弾を設置し、解放、人が集まってきたところで爆発させる。
効果的かつ、恐怖、そして自分自身はまったくリスクがないというおぞましい人間爆弾。
その光景は、日本中が注目する中で最悪の形で起きてしまった。
318:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:03:52 QDqFXCeW
『アァハハハハハハ~~!!私は、約束どおり人質を解放したぞ?これがお望みだろう?
日本国民の諸君!!これからも、1人ずつ解放していってやる。
そして蝙蝠男、久しぶりだな~?お前も含め、この俺に戦いを挑んだものすべてを屈服させてやる。
アァ~ハハハハハハハハ!!!』
ジョーカーの声明は、憎悪を通り越して恐怖を植えつけた。
警視庁は声明を避け、今後の捜査方針を大きく考え直す必要が出てきた。
なのはは、言葉を失った。
いまだかつて、このような敵とは戦ったことがない。
これが…私たちの今の敵。空を飛ぶことも、魔法という力を持つことも出来ない相手だというのに…
その存在は私たちを凌駕しようとしている。
これがあのバットマンという人が言っていた私たちではジョーカーには勝てないという意味?
『…君たちではジョーカーには勝てない』
そんなことはない。
確かに、あの狂気は凄まじいものがあるけれど…私たちには私たちのやり方がある。
人を救うこと、誰だって話しをすればわかるはずだから。
都内の警察官の増員を行い、すぐに解放された人質を見つけ出せるようにする一方で爆発物処理班を待機させ、
すぐに処理できるように準備を進める。
だが、広範囲をまわせる余裕も無く、テレビでこの様子をみた人たちは、怯えと恐怖を抱きながら生活を送ることになる。
「!?」
なのはの、パソコンの画面にヴィヴィオの携帯の電波が再び受信される。
ヴィヴィオや、フェイトの携帯は特殊であり、その場所がすぐ特定できるよう、管理局の技術を用いている。
再びこれを受信した…。まさか!?ヴィヴィオが…。
319:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:05:38 QDqFXCeW
なのはは、立ち上がり、レイジングハートを持つ。
今度こそ…止めないと。
「なのは…私も」
「フェイトちゃんは…待っていて」
「だけど!」
なのはは、頭を振って起き上がろうとするフェイトの身体を優しく抱きしめ
「…今度は私の番。絶対にヴィヴィオをつれてくるから」
「うん……気をつけて、なのは。あの人は…」
「わかってる」
夜空に飛び出すなのは。
そう、わかっている…あの人は……私たちの考えが通用できる人じゃない。
腕時計型のレーダーでヴィヴィオの位置を探るなのは。
東京都内のネオンの光の中…この中で再び、被害者が解き放たれ、爆発するようなことがあれば、パニックになる。
レーダーの示す場所は、旧テレビ局跡地。
ここは…解体工事が行われるといわれながらも、その莫大な費用の前に、なかなか取り壊しが行われていない場所である。
なのはは、警戒を緩めずに、レーダーの示す場所を目指す。
暗闇の中で、なのははレイジングハートを握り、止まる。
銃撃…、ピエロ仮面のものたちが機関銃を撃ちこんで来る。
なのはは、レイジングハートを床に差して、床を破壊する。
バランスの崩れたピエロ仮面たちはそのまま落ちていく。
なのはは、やはりここにジョーカーがいるのだと思い、先に進む。
「…なぜ、来た?」
振り返った、なのはは、レイジングハートを向けかまえる。
そこに立つ黒きマスク…バットマンに向けて。
バットマンは、動揺する様子もせず、なのはを見つめる。
「ジョーカーを止めるのは私だけだ。邪魔はするな」
そういってバットマンは、なのはの、隣を通り過ぎようとする。
「私の仲間を助け出すためまでは、諦めない」
なのは、通り過ぎようとしたバットマンを見ずに、そう告げる。
「…お前の力、能力…どれをとってもジョーカーには敵わないだろう。だが、お前の仲間はジョーカーに負けた。なぜだとおもう」
「……」
なのはは、答えられない。
ここにくるまで自問自答してきた。
あの場所で言われた言葉…バットマンにはあって私にはないもの。
それは一体なにかと…。
「…それは、お前にある心の弱さだ」
「!」
なのはは、バットマンを見る。
バットマンは歩き続けながらはっきりと答えていた。
320:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:07:38 QDqFXCeW
「アハハハハハハハ、蝙蝠男。はるばる異国の地にようこそ。俺のショーは気に入ってくれたかな?」
正面の扉が開き、そこにたつ、ジョーカー。
にやけた表情でジョーカーは私たちを見つめる。
「…御託はいい。来るならこい」
バットマンは冷静に答える中で、なのはには、そんな余裕が無かった。
焦り…、ヴィヴィオがいつ、何時にあの人間爆弾にさせられるかわからないからだ。そのときジョーカーの後ろにいる人質たちの中にヴィヴィオの姿がはっきりと見えた。
「ヴィヴィオ!!」
なのはは、コンクリートを蹴り、その距離を一気に縮める。
レイジングハートを持ち、そこにいるジョーカーに振り下ろした。
相手を気絶させるくらいなら。だが、そのレイジングハートはジョーカーの身体にあたったにもかかわらず、すり抜けてしまう。
なのはは、息を呑み、人質達に手をやるが、それらもすり抜けてしまう。
これはグラフィックス映像…。
「アハハハハハハハハ、なるほどお嬢さんの狙いがよくわかったよ。
なんで俺をつけ狙うのかわからなかったからな。アハハハハハハハハ」
ジョーカーの声だけが響きわたる。
なのはは、自分がとんでもない過ちを犯したことに今になって気がつく。
そう、これは罠だったのだ。
私たちを呼び出して、そして…私たちが誰を助けだしたいかという…罠。
「それでは、お嬢さん、バットマン…ごきげんよう」
バットマンはすぐに何が起こるか気がついて、呆然としているなのはを抱え、建物から飛び降りる。
それと同時に、あちこちの柱が爆発し、建物が崩れていく。
噴煙の中、なのはを、地上に下ろすバットマン。
なのはは、地面にたちながらも、なおも、ふらついた足取りでいた。
自分のせいでヴィヴィオを危険な目に合わす事となったことへの絶望…。
「…どんな敵にも、話せば通じる…そう思っているんじゃないか」
うつろな顔でバットマンを見る、なのは。
「正義の味方では、そこまでが限界だな」
「…あなたは違うの?あなたは…正義の味方じゃないの?」
バットマンは、なのはに、顔を向ける。
「違う。私は…悪人にとっての『恐怖』だ」
「きょう…ふ?」
「すべての人間に優しい、正義の味方では…悪人はのさばり続ける。私はそんな悪人の恐怖として存在している」
すべての人間に、なのは達のやり方は通じない…。
「悪に憎まれることを…恐れるな。人間には様々な面がある。
友人、仲間、社会…それらに向ける顔が全て同じではないのと同様に、これもまた違う1つの面。
私という存在を、ある人はヒーローと唱え、ある人は犯罪者と罵る。
それでいい…それが私、バットマンという存在だ」
そういうと、バットマンは噴煙の中、姿を消す。
「…私は」
なのはは、答えが出ない状態で…ただ、立ち尽くすことしか出来なかった。
321:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/14 02:09:01 QDqFXCeW
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。
感想、ご指摘等ありがとうございます。
322:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 02:22:18 jEVvSos1
投下乙です
なのははバットマンから何を学んでいくのか…
323:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 02:26:00 3QjiOJyQ
そっか、バットマンの根本には「悪人に両親を殺された怒り」があったはずだから
別に正義の味方でもなんでもないんだよなぁ
シンボルに蝙蝠を選んだのだってたしか幼少期の自分の恐怖が元だし
ていうかバットマンの敵ってどれも基本的に行くとこまで言っちゃったもう引き返すことの出来ないやつだよなぁ
ともかくGJです
324:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 02:26:52 dIpeDi1F
乙。
警視庁相手じゃジョーカーには対応できません><
なんか教官時代のなのはにしては行動も意思もぬるい気がする
325:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 04:19:50 lYoaVBP9
パニッシャーもいいぞ!
326:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 06:50:17 dj4qp/E3
ハイペースの投下乙です。
魔導師もデバイスも無い魔力は感知できないだろうし、手品に近い物理的、視覚的なトリックでジョーカーが遅れを取る訳はないでしょうし、やはり苦戦は必至でしたね。
327:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 07:14:47 Ue/t5F0Q
GJ!やべぇバットマンかっけぇ!
なのは達にはいない存在だな
328:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 09:56:42 rUMnYIP7
まさにダークヒーロー!かっこいい
GJ!
329:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 11:49:29 0agmqnmJ
GJ!!です。
なのはたちは、こうゆう策を使う相手は初めてだろうか?スカ博士とクアットロなんか相手にならないほどの、
邪悪さと狡猾さを持つジョーカーにどう立ち向かうのか楽しみです。
ジョーカーとかバットマンに出てくる奴は、話を聞いた上でそれを踏みにじる野郎だからなぁ。
通常の犯罪者とは、行動原理も違いすぎるし。利益の為じゃないって恐ろしすぎる。
330:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 13:21:30 h0eZCj+x
バットマンはビギンズしか見たこと無いけど、これは続き楽しみだ。
GJです。
331:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 13:49:10 BJ5pWs9G
GJ!
さすがはジョーカー!バットマン初期からいる名物ヴィランだぜ!
そこに憧れるぅ!
そしてさすがバットマン!かっこいい!あるスーパーマンとのクロスオーバー作品じゃ、
55歳にして持てる力と作戦を駆使し、スーパーマンをあわや倒すところまで追いつめただけのことはある。
332:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 15:09:54 Ay2+abav
GJ
バットマンはあんま知らないけどおもしろく読ませていただきました
今度バットマン借りて見てみようかな
こういうタイプはリリカル世界の連中は苦手そうだな
>>323
別に両親殺された怒りがあっても正義の味方でもいいんじゃないか?
昭和ライダーの大半もそんな感じだし
まあバットマン詳しくないからあんま言えないけど
333:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 15:41:35 ydnKsiJa
バットマンSS、まとめになくね?
334:一尉
08/11/14 15:42:12 zfsutmtO
さずかバットマン支援。
335:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 15:53:41 fcCEvmId
>>333
お前かやりたい奴が更新すれば良いだけ
いつも更新してた人がしばらく更新出来なくなるみたいだから、一部の作品は誰かが動かない限り放置みたいな扱いになる
「待ってれば勝手にまとめ更新されるだろう」という意識はどうにかした方が良いな。
336:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 18:21:47 RI5G/e9X
>>332
バットマンは正義を尊びながらもその正義に根深い無力感を抱いている
彼の父親がスーパーヒーローではないにせよ
心優しく全ての人に手を差し伸べようとする「正義の味方」だったことが深く関係してる
337:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 18:52:49 JEqiuUQ9
ジョーカー相手じゃなのはは、勝負にならないな
338:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 19:04:17 h0eZCj+x
確かに。なのは戦いをしない的には弱そうだ。
339:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 19:59:23 rA5Q+jHK
GJ!
バットマンはあくまで常人として築いた力を駆使して戦う人だから、なのはとは正反対だ。
340:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 20:22:42 vu6apI4A
面白いんだが文法がおかしい所や誤字が多いのが残念だな。
341:名無しさん@お腹いっぱい
08/11/14 21:47:39 2zYTcEbk
●国籍法改正案とは?
D N A 鑑 定 な し に、男親が「俺の子です」と認知さえすれば、
外国人の子供が誰でも日本国籍を取れてしまうようになるザル法案。しかも、罰則は超緩い。
●成立すると起こりうる問題
DNA鑑定不要→偽装認知が簡単 / 母親と結婚していない人でも認知可能→1人の日本人男性で何百人もの認知が可能
その結果…
・人身売買・児童買春など悪質なビジネスが横行
・偽装で取得した子供の日本国籍を盾に続々と外国人親族が日本に大挙
→外国人スラム街が誕生し、治安が悪化。いずれ日本のことを外国人に決定されるようになる。
・巨額の血税が、偽装認知で生活保護の権利を得た外国人親族のために公然と使われる など多数
この様な日本にしないためにもこの事を知らない人たちに知らせてください。
ご協力をお願いします。
342:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 22:08:56 U9fu78Dp
>>341
自重すべき
343:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 22:24:29 ZOr11jdT
>>342
こういうレス他のスレでも結構あったから荒らしっぽいね。
反応しないで無視してようよ。
344:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 23:03:21 PxBNK92W
>>342
ここは無視して投下を待ちましょうよ
345:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/14 23:22:08 U9fu78Dp
>>343
>>344
過剰に反応してしまい申し訳ない…
346:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 01:03:39 LwTj37SR
GJ!
ジョーカーめ『ザンボット3』を見やがったなw
347:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:00:46 njtCh6Oq
投下します
348:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:03:09 njtCh6Oq
第4話 光と闇
人質が乗せられているトラックの扉が開かれる。
差し込む光の中で、ピエロ仮面が銃を向け、立っていた。
「……お前、でろ」
「た、助かった……」
男は嬉しそうに、振り向きもせず、自分が助かることを喜びながら飛び出していく。
男はピエロ仮面にいわれた指示通り服を着替えさせられる。
男はよくわからないようだが、それでも助かるならば…命があればいい。
そんな男を笑いながら見ているジョーカー。男にはその笑いの意味がわからない。
男は腕を背中に回されて縄で縛られたまま、目隠しをされる。
さらに、口にはガムテープを貼られた状態で、ピエロに連れられていく。
ピエロは、男を擬装用のゴミ収集車に乗せて、連れて行った。
揺れる車の中で、男は自分がどこに連れて行かれるのか不安になるが、解放されるというジョーカーの言葉を信じるしかない。
だいたい、もし嘘であり、殺すというのなら、その意味がない。
自分には人質としての価値があるからだ。きっと日本政府の交渉が上手く言ったに違いない。
車が止まり、路上に下ろされる男。
ピエロに目隠しを解かれ、男を置いて路上から去っていくゴミ収集車。
男はそれを横目で見ながら、腕は縄で縛られた状態でよろめきながら、路上に出る。正面から車がやってくる。
男は身体をむちゃくちゃに動かして、自分が人質であることをアピールする。そう、俺は犠牲者だといわんばかりに。
すると、男は目の色を変えてアクセルを踏み込む。男はなぜ?という顔をしながら、車に撥ね飛ばされた。
男の身体はコンクリートに叩きつけられ…動かなくなった。
『…悲劇が起きました。人質の金融商社の取締役が、幕張駅前にて車に跳ねられ死亡しました。
運転手は、人間爆弾と思い、引いてしまったと告げています。引かれた男性からは、爆弾は見つかっておらず…』
『警察は、人質が解放された場合、慎重な対応を求めるようしていますが、都内に住む人の話を聞いたところ、今回の出来事について怖い、逃げてしまう。
同じことをしてしまうかもしれない。という意見が大半を占めており、今後の人質解放では同じようなことが起きる可能性があると予想されています』
『野党議員からは、政府に対して人質の解放のためには、
国民の不安を払拭するのが優先されるべきだと意見を述べ、早朝、夜の外出禁止令をだすよう提言しました。
与野党からもこれについては、賛否両論であり、今後の国会審議が待たれることになります』
349:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:05:26 njtCh6Oq
右往左往する警視庁、日本政府の対応は、国民さえも動揺させる。
動揺は混乱をよび、混乱は恐怖を生み出す。
疑心暗鬼…誰も信用することが出来なくなる状態。
「アハハハハハハ、楽しいな。あの困った顔、何も出来ず、手も足もでずに見守ることしか出来ないものの顔。
最高だぁ!フハハハハハハ。そうだ、そう…もっと迷え、疑え…そうすれば、この国は、第二のゴッサムになるぞ。
ハハハハハ……お前たちも口が裂けるほど笑わしてやる」
ジョーカーの前にはイスに縄で巻きつけられたヴィヴィオの姿があった。
ヴィヴィオは疲労し、息を漏らし、目には涙を浮かべている。
眠気が襲うが…そうなると。
ジョーカーは、スイッチを押す。
するとイスが振動してヴィヴィオの足の裏やわき腹などをくすぐり始める。
幼いヴィヴィオの皮膚は敏感である。くすぐったさに笑うしかない。
「そうそう、子供は笑わなくては元気になれないぞ?」
ヴィヴィオに対する拷問は、先ほどから永遠続いている。
慣れないように、休みをいれながら、眠りそうになったらこれで強制的に目覚めさせる。
ジョーカーは、ヴィヴィオからなのはやフェイトの正体を聞き出そうとしていた。
だが、ヴィヴィオはそれを拒んだ。ジョーカーにとっては、この拷問もショーの1つ。
幼い子供がどれだけ耐えられるか、見ものだ。
高らかに笑うヴィヴィオを見物しながら、ジョーカーは食事を取る。
ヴィヴィオの目から流れ落ちる涙…。そこにあるのは、なのはママとフェイトママの想いだけ。
日本支社…ブルース・ウェイン滞在先の一室において、ブルースはパソコンを開いていた。
そこに現れるのはブルースの理解者であり有能な執事アルフレッド。
『…ブルース様、ここ最近の日本首都圏内におけるジョーカーの出現地域を追ってみました』
データにだされる出現地域…そして人質が解放された場所をあてはめる。
それらをみながら、ブルースはイスに座りながら息をつく。
『さすがに疲れましたか?』
「…ジョーカーもよくやる。日本政府の、治安の良さを逆に利用している。
日本警察では、この事態を収拾は出来ないだろう」
日本政府は治安が良いためもあり、このような大規模な行動に対しての免疫力がない。
結果、事態を甘く見たために…それはジョーカーの思い通りの混乱から恐怖という連鎖を作り出す。
『例の二人組の女の子でもですか?』
ブルースは立ち上がり、昼間の東京を全面に見渡すことができる窓の前に立つ。
「彼女達は僕とは違う。僕の真似をすればいいというものでもないさ。答えは彼女達が見つけるべきものだ」
彼女達は若く、それにその目には強いものがあった。
あとはそれに気がつけるかどうかである。
心配は必要ない…きっと彼女達は見つけ出せるだろう。
彼女達にはまだ、あるだろう。自分にはないものが…。
350:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:06:49 njtCh6Oq
そこで窓を見つめていたブルースは、あることに気がついた。
夜と昼…これらで違うもの。ブルースはイスにつくと、あるデータを取り出す。それは電力消費。
あれだけの人間を移送して爆弾の設置を施したりしているのだ。
相当の電力が必要となるはずだ。そうなると…電力消費の高い場所が、ジョーカーの巣となる可能性が高い。
『しかし、日本は、どこも夜になると電力消費は世界でトップクラスの利用が施されています。それらでは、わかりづらいのでは?』
ブルースは首都圏内の地図を見ながら、あるところを見つける。
そこは電力消費量が他と比べても随一である。
「なるほど…、ここか」
『見つけましたか?』
「あぁ、夢の国だ」
ブルースの視線の先…そこにあるのは、電力消費が最も激しい場所である日本の首都圏で最も巨大なテーマパークである。
満月の出る夜…
既に、パレードは終了し、テーマパーク自体の営業は終了している。
それまでの明るい場所とは裏腹に、静まり返る園内。
ゆっくりとその場所を歩く影…。電力の制御室があるのは、園内の中央にある城を模した建物。
ここから園内全体に電力を送っている。
おそらく、ここの電力を使い、爆弾などの製造を行っているのだろう。
これ以上の被害は防がなければならない。本来ならゴッサムだけの出来事…それを世界中に広めるわけには行かない。
再び自分のようなものをつくらせないためにも…。
突然、照明がつく。
遊園地のすべての照明がつき、今まで動いていなかったアトラクションの乗り物が一斉に動きだした。
そして軽快な音も鳴り出しはじめる。
夜の中、光に照らされる黒きマスク…バットマン。
そのバットマンに対して、聞きなれたあの笑い声が聞こえてくる。
「アハハハハハハハハ、蝙蝠男は、光が苦手かな?」
351:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 02:07:45 lrcrkcCS
永遠じゃなくて延々とだな。支援
352:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:09:19 njtCh6Oq
目の前のメリーゴーランドから降り立ったジョーカーはポテトチップスを食べながら、バットマンに向かって歩いてくる。
「不法滞在、誘拐、殺人……それらを含め、お前を捕まえる」
「フフ…アハハハハハハハ。かまわんぞ、どうせすぐに逃げ出す。よく聞け。My Friend 」
ジョーカーは、路上においてあるベンチに座り、バットマンを見る。
「俺は、人間の悪の部分の代弁者に過ぎない。人間は誰しも持っているもの。
憎悪、疑心、それらすべてを俺は解き放っているだけに過ぎない。
それは世界共通だ。お前も見ただろう?あの哀れな男を…。
あれは俺のせいじゃない。あれはお前が守ろうとしているものたちのせいだ。お前が守ろうとしているものが、解き放った人質を殺した。
何にも知らない、解放されたと思った男をひき殺した。
フフハハハハハハ…ハ。そんな奴らを守るほどの価値はあるのか?」
「……全ての人間がお前の言う人間ではない」
ジョーカーは拍手しながら、ポテトチップスを食べる。
「素晴らしい、素晴らしい~なんとも模範的な回答だ」
パリパリとポテトチップスの砕ける音が響く。
「お前は、全ての人間がそうではないという。
しかし、そういった危険性はすべての人間に平等であり、結果…危険性を伴う人間に対して、そうではない人間は巻き込まれる被害者でしかない。
たった一人で、それらを止めることなどできないだろう?
犯罪者は俺が捕まろうがゴキブリのように這い出る。
いや、犯罪者じゃないな。お前が言う『悪』という存在だ。
お前のような人間が頑張れば、頑張るほど悪はでてくるんだ。
永遠に終わることのない、ワルツのように…フフ、フハハハハハハ。
お前のやっている行動は、無意味なのさ」
「少なくとも、お前が今、捕まえている人間の命は救える。それだけで十分だ」
「いいだろう。やってみるがいいさ…少なくとも、人質は俺の手を離れぞ」
「なに!?」
ジョーカーはポテトチップスの袋を、顔を上げて残さず食べ終えると立ち上がる。
「人質の半分は人間爆弾、もう半分は普通の人間。
フハハハハハハ…時間はあまりないぞ?その前に勝手に殺されるかもしれないが…クックック、アハハハハハハハハ!」
ジョーカーは笑いながら、バットマンにナイフを握り飛び掛る。
バットマンはそんなジョーカーの攻撃にスーツの襟首を掴み、投げ飛ばす。
ジョーカーは地面にたたきつけながら、腰をさすり、立ち上がろうとする。
バットマンはジョーカーの背後から捕まえようとするが、
ジョーカーは向かってきたバットマンの片足を、足で挟み込みバランスを崩して倒す。
その上に乗りかかり、ナイフを握り、バットマンの顔に向けて刺そうと力をこめる。
その手をバットマンは、両手で掴んで、防ごうとする。
「あきらめろ!蝙蝠男、お前のやろうとしていることは無意味なんだ!
これからはこのジョーカー様がお前の代わりに世の中を見守ってやる」
「っ!」
バットマンは、そのジョーカーのナイフを持つ腕を持ち上げていく。
「往生際が悪い奴だ!!さっさと引退しろ!」
足を曲げ、ジョーカーの胴体を蹴り上げて、体を離すバットマン。
ジョーカーは、蹴られた、胴体をさする。
「フフ……フハハハハハハ」
立ち上がったジョーカーの笑い声はそのテーマパーク中に響きわたる。
353:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:13:17 njtCh6Oq
高町なのはは、窓の外を眺めていた。
自分のせいで…ヴィヴィオを危険に晒してしまった…
夜の町並みが見える。このどこかにヴィヴィオが…いる。
自分がしてきたとの否定。
今までやってきたこと…フェイトちゃんと戦ったときも、はやてちゃんと戦ったときもそうだった。
戦うことだけが全てじゃない。
戦うその先にあるもの……私はそこでフェイトちゃんや、はやてちゃんと出会えた。
それが……あの人には通じない。その先が暗闇で見えない。
うぅん、その先がない。
そんな相手に、どうやって勝てるのだろうか…。
バットマンが言った自分の面はひとつだけじゃないという言葉。
私の今までなんだったのだろうか…。友達、家族、社会……。
私にとって大切な人たち。それらは…私のことをどう見ていてくれたのか。
「なのは」
お姉ちゃん、お兄ちゃん、お父さん、お母さん…
「なのは」「なのはちゃん」
フェイトちゃん…はやてちゃん。
「なのはさん」
スバル、ティアナ、キャロ、エリオ……
「なのはママ」
ヴィヴィオ…
私にとって、かけがえのない大切な人たち…。
それは、私が私でいたから…、誰でもない、私という存在でいたから…みんなとこうして出会えた。
私の捕らえ方は人それぞれ…だけど、私のやることは、変わらない。
きっと変えてしまったら、それは私ではなくなってしまうから。
354:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:14:30 njtCh6Oq
「……フェイトちゃん、私を叩いて」
「え?」
「……お願い、今のままじゃ、私は私が許せないから」
「……わかった。だけど、その代わり、私も…お願い…なのは」
乾いた音とともに赤くなる頬。
「…今まで私たちはこうしてやってきた」
「気持ちも何も変わらず…ずっと」
だから私たちの気持ちも、やり方も変わらない。
私たちの為し得て来た、作り上げてきたものは…決して間違ってはいないから。
それが甘いと言われても良い。蜃気楼のように儚いものと思われても良い。結果はここにある。
たくさんの大切な仲間がいる。頼ってくれる人がいる…強い絆を持つ人たちがいる。
私たちに、足りなかったのは…バットマンのいう強い心。
そしてそれは、バットマンのようになることじゃない。
強い心…それは、自分たちの積み上げてきたものを信じること。
ジョーカーの放つ狂気、そしてヴィヴィオを助け出すためという焦りが…恐れにかわり、
私たちの本来揺ぎ無いものを崩し、それを見失わせていた。
だけど今の私たちにはそれがある。
はっきりと…『自信』を持つことができる。
「いくよ、フェイトちゃん!」
「うん……今度こそ、負けない」
今は前だけ見ればいい
信じることを信じれば良い
愛も絶望も羽になり、不死なる翼へと
…蘇る私たちの心
355:魔法少女リリカルなのは×バットマン ◆HxLt3eoqWY
08/11/15 02:15:59 njtCh6Oq
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。
たくさんの感想、gj、支援ありがとうございます。
これもすべてキャラクターの素晴らしさにあると思います。
本当にありがとうございます。
356:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 02:23:23 Mdu1pB6e
そんなキャラクターのすばらしさをしっかりと表現してみせるあなたにGJ
357:トランスマスター
08/11/15 02:31:48 uirC6zKV
犯罪王とも、怪物とも呼ばれるジョーカーになのは達は
どう立ち向かうのか? それが気になりますね。
後、私はジョーカーの恐ろしさを知る人間の一人です。
358:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 07:17:39 Z3OkI+13
映画ダークナイトのレビューページみたいなトコに、ジョーカーの超絶的な悪党ぶりを記した文を発見した。
集団で銀行を襲った後、他のメンバーを皆殺し。更に盗んだ札束の山にキャンプファイヤーの如く火をつけるのだとか。
359:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 07:32:23 e+4zyc0t
>ヴィヴィオに対する拷問は、先ほどから永遠続いている。
「永遠」じゃねえ「延々」だ
その他「てにをは」レベルで根本的に日本語としておかしい所多数
一々指摘してたらキリが無いほど大量だ
いわゆる「ふいんき(なぜか変換ry」を素でやらかしてる
もっと根本的に確かめないと恥晒し続ける事になるぞ
360:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 08:05:18 g9/x2Q2A
>>355
俺もGJです。
361:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 11:28:23 8zg2ZyqQ
ジョーカーは格好いいんだよなあ
ヒーローから何度も大切な人奪ってるんだもんなあ
法律で裁くことが出来ないから不滅ってのも不条理で
362:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 12:24:44 WJ2BNjzM
誤字とか直してから投下しろよ
多すぎる
363:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 12:39:43 WJ2BNjzM
内容以前の問題だな
日本語が不自由すぎる
文章もまともに書けないようなのがSS投下すんじゃねえ
364:×DOD ◆murBO5fUVo
08/11/15 12:57:16 7Z5JbM3g
ご報告。
個人の保管庫ができましたので、作品の方はそちらにも掲載させていただきます。
議論スレの結論は「確…定…?」な状況ですが、少なくとも個人保管庫なら問題ないとの判断です。
URLはWikiの中に置いておきます。
365:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 13:53:01 XFBuliAD
>>362
>>363
2回も書かんでいい
366:一尉
08/11/15 14:02:12 3ygxh/ok
バットマン支援。
367:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 15:15:08 EaqDNSA5
予約がないようなので15:40頃から投下します
ホーリーブラウニーの一発ネタです
368:367
08/11/15 15:40:27 EaqDNSA5
時間になったので投下開始します
彼らはあらゆる時 あらゆる場所に――
ときには老いた職人の為に靴を作り ときには継母に狙われた姫君を救い またあるときには1945年のニューメキシコでキノコ雲を巻き上げさせる――
語り 創り 惑わし 導く――
彼らは人と関わる 人知れず――
だが人は彼らを伝える――
知恵ある者の言葉を借り『妖精』と呼んで――
ホーリ-●ラウニー
369:367
08/11/15 15:44:03 EaqDNSA5
新暦XX年 某管理世界
暗く長い洞窟を赤と青の光に包まれた妖精が飛ぶ。
二人は手のひらに載ってしまうような小人を模った人形の体をしていた。
「地球じゃなくて、管理世界に飛ばされるなんて珍しいわね。 変に発達してるからやりづらいってのに」
「だいじょーぶ、今回も地味な仕事だからー」
「あんたの言葉は全然信用ならないのよ。 例によってメルヘンなんて欠片も無い仕事なんでしょ?」
「まだメルヘンを期待してるのー? ボクらにそういう仕事回ってくるはずないじゃん」
「誰のせいよ! いいから仕事するわよ! で、今回は何をするの!?」
多くの仕事をこなしてきた赤の妖精――ピオラは不本意ながら腐れ縁になりつつある相棒のフィオに仕事の内容を確認する。
「ちょっと待って、もうすぐだから」
そうして二人がたどり着くのは洞窟の最奥にある大きく機械的な扉。
そこをくぐった先にあったのは無数に並ぶ2メートル程の大きさのカプセル。
透明な液体に満たされたそれらの中で多くの老若男女が眠っていた。もっともまともな人間の形をしているのは少なかったのだが。
あまりの光景に愕然となりながらもピオラは問いかける。
「何……なの、これ?」
「何って、大規模生体実験施設~。今回のお仕事はここで研究を続ける若き天才に成功を与えてあげることさー」
「やっぱりろくな仕事じゃないじゃない! で、具体的には!?」
襟首を掴みあげるピオラにフィオが示したのはⅠとナンバリングされた一つのカプセル、その中に浮かぶ妙齢の美しい女性。
よく見れば無数のカプセルの中でナンバリングされたものはたった12個。
それだけその中で眠る存在が特別なものだと知れた。
370:367
08/11/15 15:46:03 EaqDNSA5
「この女性型生体サイボーグを完成させればいいのさー。ぶっちゃけ9割がた完成してて僕らが手を出さなくても半年もあれば完成するんだけどね」
「だったら私たち来なくても良かったんじゃない?」
フィオは首を振る。
カプセルの脇のデスクに突っ伏して眠る白衣を着た長髪の男を見やりながら、
「その半年ってのが問題でね。実はあと半月ぐらいしたら治安組織がこの施設に踏み込んじゃうんだー。
それまでにこの科学者さんに脱出してもらわなきゃいけないんだけど――」
「それにはこのサイボーグを完成させなきゃいけないってわけね……。ってやっぱりこの施設、違法なんじゃない!
なんだってそんな犯罪者のフォローしなきゃいけないのよ!」
「んー、今から十年後くらいにこの人結構大きな事件を起こすんだけど、その事件で保護される幼児が更に数十年後にここらの世界で最大の宗教組織の最高指導者になるんだ。しかもその子供を保護した治安機構の人間もその後かなり出世する人でねー」
「つまりまだ捕まっちゃ困るって事ね……」
うなだれるピオラを尻目にフィオは作業を開始。
事前に与えられていたスペック情報を基にカプセル内の女性の体を弄りまわす。
ピオラも諦めた表情で追随する。
「9割完成してるだけあって楽だねー」
「というか、固有の特殊装備の搭載にてこずってただけじゃない。理論は完成してたし、本当に優秀みたいねそこの男」
普段担当する仕事を思えばあまりにも楽な仕事。
順調に作業が進んでいたが、ふとピオラの手が止まる。
「ねぇ、フィオ?」
「何―」
「このサイボーグの計画書見ると、個体ごとの適正や固有装備の機能で差異が出るみたいだけど概ね用途は戦闘用よね?」
ピオラのモニターに表示されていたのは女性の腹部、その内部の情報。
生命維持に必要な臓器に混じって、純粋に戦闘用に用いるなら無駄とも言える存在があった。
「……何で『子宮』があるの?」
「ああ、それはやっぱり――」
和やかに答えようとするフィオに手を向けて『止めろ』とジェスチャーするが、悪趣味な相棒は見事にスルーして続けた。
371:367
08/11/15 15:48:08 EaqDNSA5
「――やっぱり色々と『入用』なんじゃ――」
「分かったからわざわざ口にしないでいいわよ!」
ピオラはどこからか取り出した小さな人形の体で扱うには大きすぎるカッターナイフで眼前のロクデナシをずたずたに切り刻む。
お気に入りの体だとよく言っているが構う事は無い。どうせ謎のギミックですぐに修復するのだから。
ぶーぶー言いながら切り落とされた首を抱えるフィオを無視して作業を完成させる。微妙に不愉快な気分になるが計画書通りに完璧に仕上げた。
仕事が済んだらさっさと撤収。朝日が昇る前に帰らなくてはならないのだ。
ピオラはいつものように体を繋げたフィオと共にカプセルの並んだ部屋を出て、洞窟の外へと向かう。
「そういえば疑問に思ったんだけど、いくら優秀でも拠点をとっかえひっかえして逃げ回ってるような奴によくあんな規模の施設が用意できたわね」
「あーアレ? だってさっき言った治安機構の指導者が裏で支援してるし」
本当にただなんとなく口にしただけなのだがフィオの答えはピオラの考えの斜め上をいっていた。
今度こそ凍りついたピオラにフィオは説明を続ける。
「実はあの科学者さんもその連中が作らせた人造生命でさー。色々目的があるらしくてこき使ってるみたいなんだけど、ベタな事に暴走してね?
十年後くらいに起こるって言った事件でそのお偉いサンも殺されるんだー」
アハハと何が楽しいのか愉快げなフィオの言葉の続きを、どうにかピオラが引き取った。
「で、暴走したソイツを何も知らないその連中の部下が逮捕するのね……。マッチポンプで焼死した挙句に部下に鎮火させるってその連中バカでしょ?
本当に碌でもない仕事だわー」
「いつもの事じゃん。ボクらのお仕事は神様の尻拭いのための便所紙~」
――そうして妖精たちは何処とも知れぬ場所へ帰っていく。
小さな小さな彼らが去ったあとには――
―――――何かが終わっている
372:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 15:48:13 5XfqsxPg
支援
373:367
08/11/15 15:49:57 EaqDNSA5
投下完了です。微妙にあのシュールというかブラックな雰囲気を再現しきれなかった感じですが・・・
誤字などには気を使ったつもりですが、あるかもしれません
374:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 16:08:01 5XfqsxPg
GJでした。
375:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 18:20:58 lrcrkcCS
あぁ、あの人を馬鹿にするのが得意な(褒め言葉)人の漫画ね!!
376:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 19:57:07 2roAewuT
まあこんな話になるよな、あの妖精ならw
もう一波乱あるかと思ったけど綺麗に仕事が終わってて驚いた。
377:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 20:11:36 kT+oejLd
乙。
戦闘機人は妖精さんがつくったのか!
フィオ達が仕事したわりには平穏に済んだと思ったが、これからのことを考えるとそうでもないなw
378:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 20:55:57 bkXOZF2X
GJ!!です。
皮肉が効いてるなぁw
379:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 22:37:16 27a+uvr4
まとめサイトにつながらない
鯖落ちなのかな?
380:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 23:00:46 6wgrxiis
>>379
明日までメンテですね
381:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/15 23:51:34 vEVF9eYU
メンテ終了予定時刻は明日のAM7:00の予定となってますね
それまでまとめサイトに作品を載せたりするのも無理ですね
382:379
08/11/16 01:17:09 nRSEaWKR
>>380-381
遅ればせながら、情報サンクスです
383:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 07:43:05 K7ACf3nb
ロックマンゼロさんのクロス作品に非常に似ている作品を書いている人を
モバゲータウン内の小説のコーナーで見つけたのですが
この作者はご本人様なのでしょうか?もしくはご存知でしょうか?
題名は『紅き戦士と魔法少女達』です。投稿小説の検索でこの題名または『リリカルなのは クロス』
で調べると出てきます。
一応報告した方が良いと思い報告させていただきました。
384:反目のスバル ◆9L.gxDzakI
08/11/16 10:05:58 QKY7k0Cm
おはようございます。
ご意見承りました。現在対応を検討中ですので、勝手な行動をしないよう、ほかの皆様方におきましてもご了承願います
385:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 13:57:22 T9jq36CN
こんにちは。
投下したいのですが、盗作関連の事態が鎮静化するまで止めておいた方が良かったりしますかね?
もし大丈夫なようでしたら、14:40頃に投下予約をお願いします。
386:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:00:22 CqqfqHbk
>>368
GJ
てかそいつらはクロスさせちゃいけないだろ、腹筋崩壊的な意味でw
理想郷でマブラヴオルタとのクロスやってるのがいたよ。ドリアン+ウォッカばりに危険な組み合わせなのに…。
387:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:09:33 mwU5aQst
支援
ついでに盗作疑惑の見てきたがほんとにそっくりだった。
388:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:20:31 Pe0MwQmk
モバゲーって確か前にもゲームの盗作で問題になってたよな?
どうなってんだあそこは一体
389:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:43:15 T9jq36CN
遅れました、それでは投下開始します
390:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:44:05 T9jq36CN
酷く心が重く感じる。
以前に味わった事のある、懐かしい感覚だ。
ただ、傍観しているしかなかった八年前。
辛い現実を前に苦しんでいる大事な人へ、笑顔を取り繕って大丈夫、と励ますしかなかった事件。
恐怖と悲しみに身が凍り付き、喉の活動制御が困難になって。
彼女の前で、平静を装って喋る事がどんなに辛かった事か。
―そして今現在も。
恋人の娘、さらに大事な親友も手の届く所にいない。
だが以前のように、負い目を胸にひたすら悲しんでいるつもりは無い。
『傍観』という名の逃避はもうしないと決めたのだ。
それは世界で最も嫌悪すべき物なのだから。
第十四話「決戦へ」
ユーノが重たい目蓋を持ち上げると、ぼんやりとした視界が広がった。
自分はどうやら眠っていたらしい。
おぼろげな意識を覚醒させようと体を起こし頭を振った所で、ずり落ちる毛布に気が付く。
「……仮眠室か」
ユーノはボソリと呟いて、毛布を拾い上げた。
最後の記憶は、聖王のゆりかごについて纏めたデータを各部署に送った所で途切れている。
―スカリエッティがゆりかごを保有していると仮定。
恐らくそれが二つの月の魔力を最大限活用出来る場所、衛星軌道上へと飛び立つ筈だろう、と。
次元跳躍攻撃さえも可能になるそれを許すのは非常に危険であり、予言の完成に一役買う事は間違い無い。
「……ふぅ」
起きて早々重い溜め息をついて立ち上がる。
誰かが寝てしまったユーノをここまで運んでくれたのだろう。
ここ、無限書庫備え付けの仮眠室は幾度と無く世話になった場所だ。
もしかしたら、局の寮よりも使用頻度は高いかもしれないな。
ユーノはぼんやりとそう考えながら、別のベッドで鼻提灯を揺らし爆睡している司書を横目に無限書庫へと戻った。
「アルフ、ごめん。寝ちゃってたみたいだ」
無重力空間。
ユーノは緩やかに揺れているふさふさの尻尾に向かって声を掛けた。
声に反応して振り返った、頭から耳を生やした少女は軽い挨拶の後、苦笑しつつ手を振ってみせる。
「いいんだよ、ユーノは陳述会の後からずっと働きっぱなしだったじゃないか」
むしろもっと寝てな、と容赦の無い言葉を浴びせられてしまい、思わず苦笑する。
十年来の友人であるアルフも、以前からちょくちょく手伝いに来てくれているのだ。
感謝の念が絶える事はない。
―公開意見陳述会が襲われ、地上本部と機動六課が壊滅してから四日が経っていた。
正に、歴史的大敗と言える。
マスコミもこの事件について朝昼晩引っきりなしに騒ぎ、一向に止む気配は無い。
怪我人多数、行方不明者三人。
行方不明者の内訳はギンガ・ナカジマとヴィヴィオ、そしてソリッド・スネーク。
前者二人は襲撃で誘拐されたのだが、スネークは違う。
彼はスカリエッティのアジトに単身潜入して、今も通信が繋がらない状態になっているのだ。
皆ユーノと顔見知り以上の仲であり、心配で心配で堪らないのだが。
391:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:46:39 T9jq36CN
―ともかく、六課が態勢を立て直したら、本局は総攻撃を仕掛けるつもりらしい。
現在も地上は単独調査を主張しているが、状況が状況だ。
世論も本局を後押しする事だろう。
その為ユーノは事件後、無限書庫に籠もってゆりかごの情報収集に努めてきた。
いつ総攻撃が開始されても支障の無いように。
それもなんとか間に合ったようで、安堵の息をつくばかりだ。
ようやくこの事件における、無限書庫司書長ユーノ・スクライアの仕事は終わったのだから。
「……アルフ、それでちょっと六課に行ってこようと思うんだけど」
「おー、行ったれ行ったれ。通常業務は任せときな、仮眠室の奴も叩き起こすよ。なのは達も大変だろうけど、顔くらいは出しときなー」
ありがとう、と頷いてアルフの頭を撫でる。
照れ臭そうにしながらユーノの手を払い除けるアルフが何とも微笑ましい。
事件後なのはとは軽く通信で会話した程度だから、彼女の顔を直接見たかった。
他の六課隊員も気になるところである。
現在は次元航行艦アースラに拠点を移し、六課隊員達がぞくぞく乗り込んでいるのだろう。
ユーノは通信ではやてを呼び出して、疲れ気味の、それでもやる気と負けん気は衰えていない顔に声を掛けた。
「やぁ、はやて。送ったデータ、見てくれたかい?」
勿論、と勢い良く頷くはやて。
そのまま決意の籠もった表情で、絶対に止めてみせる、と眼光鋭く言い放った。
―現状、機動六課がそれを食い止める際に重要な位置にいる事は明白だ。
部隊長であるはやての肩にも相当な重圧が掛かっているのだろう。
「う、うん、そうだね。……あー……他の隊員は、大丈夫かい?」
ユーノは思いがけず深刻な雰囲気になった事を後悔して、無理矢理話題を変える。
―もう少し自分には話力があると思ったのだが、これは我ながら苦しいな。
はやてもそんなユーノの心情を見抜いたのか、真剣な表情を崩して明るく笑った。
「プッ……フフフ、私は大丈夫やから、ありがとな。んー、まだフォワード陣で治療しとる隊員がおるけど、他は大体何とかなったかな」
「決戦は近いみたいだね。……そっちにちょっと行きたいんだけど、いいかな?」
「ん、大丈夫や。なのはちゃんもやっぱり落ち込んでるみたいやし、励ましてあげてな」
連絡しといてあげるな、とからかうような笑みを浮かべたはやてに苦笑する。
了解、と一言告げて、ユーノは転送の準備を始めた。
懐かしいな、とユーノはアースラの通路を歩きながら呟く。
初めてここに乗船してからもう随分と年月が経っている。
思えばユーノが十歳かそこらの頃、スネークは二十四歳程。
一回り以上も年が離れている彼は、実は気が置けない友人だなんて少しおかしいとも思う。
……だが、他に形容する言葉が見つからない。
ユーノが苦笑していると、不意に目の前から歩いてくる人影に気が付いた。
何処か大人びた雰囲気を持ち、なのは曰く、スネークを特に尊敬している少女。
「……ティアナ・ランスターさん、だっけ?」
「す、スクライア司書長!」
慌てて敬礼をするティアナに、堅くならないで、と優しく声を掛ける。
正直、そこまで堅くなられても困るのだが。
ユーノはスネークとの初対面で、彼に敬語で話していた。
そんな記憶はユーノの体に鳥肌が立たせる物として十分過ぎ、ブルッと震えてしまう。
もし今スネークに敬語で話せと命令されたら、大事な段ボールを三階建てのビル屋上から川へ投げ捨ててでも拒否してみせる。
―色々な意味で、随分と毒されたものだ。
392:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:49:01 3A1fxyLs
>>388
あそこはリア厨とDQNの集まりだから仕方ないといえば仕方ない…
支援
393:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:49:28 T9jq36CN
「……あの、スクライア司書長は何か御用があってこちらに?」
「うん。なのはや他の隊員達の様子が気になったからね」
「あぁ、成る程。なのはさん、喜ぶと思いますよ」
可愛らしい笑顔を向けてくるティアナ。
……何だか、周りの皆からそう言われているような気がしてならない。
ユーノ自身は、そこまでバカップルだとは思っていないのだが、からかわれているのだろうか?
ハハ、とユーノは乾いた笑いを返す。
「ティアナさんは怪我とか、大丈夫なのかい?」
「はい、私は掠り傷程度で……これからシャーリーさんの元へ行く所です」
「……え?」
まだ病院にいてもおかしくない筈の名前が出て来て、ユーノは軽く耳を疑った。
彼女は、スネークから送られた情報をハードコピーする為最後まで残り、負傷したのではなかったか?
「シャリオさんって、確かスネークの無線サポートに付いてて……怪我したんじゃ?」
「ええ。シャーリーさん、まだ完治していないのにスネークさんから送られた情報の纏め作業をしてるんです」
だからせめて私はそのお手伝いを、とはにかみながら答えるティアナ。
ユーノはふうん、と呟いて顎を撫でる。
「……僕もなのはと会った後に、行かせてもらって良いかな? ちょっと気になるし」
「あ、はい。全然構いませんよ、お待ちしています」
―意外にも、すんなり了承された。
こうも信用されている事を喜んで受け取るべきか悩みつつ、ユーノは笑顔でティアナと別れる。
そのまま居住区画へ向かって数分歩き、目当ての部屋の前に人影を確認する。
「―ユーノ君っ!」
笑顔と共に、意気揚揚と栗色の髪を揺らしながら走り寄ってくる女性。
彼女を見て、ユーノも大いに頬を緩ませた。
「なのは!」
ブレーキを掛けずに突っ込んでくる恋人。
ユーノはその衝撃をしっかりと受け止める。
―鼻孔をくすぐる女性特有の甘い香り。
だがそれも一瞬で、すぐに離れていってしまう。
公私混同はよろしくない。
いつまでもここでくっついている訳にもいかないだろう。
とりあえず、と部屋の中へ入る。
「……ごめんね、押し掛けちゃって」
「ん、大丈夫。嬉しいから。……送られてきた資料、見たよ。大変な事になっていきそうだけど……」
僅かだが、なのはの顔に不安の色が浮かんだ。
攫われたヴィヴィオの事。
聖王のゆりかごの事。
彼女も色々な不安と戦っているのだろう。
だが、ユーノはその為にここまでやって来たのだ。
なのはの肩に手を置き、その澄んだ瞳を見据える。
394:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:52:21 T9jq36CN
「……なのはも、スネークみたいに気遣われたりするのは得意じゃ無いから―」
「そんな事は無いけど……」
「―だから、一言だけ。……大丈夫。きっと、大丈夫だから」
なのはが息を呑んだ。
少々の照れ臭さに襲われて誤魔化すように、熱が籠もり始めた頬を掻く。
なのははそのまま、ボスッとユーノの胸に顔を埋める。
「余計なお世話かもしれないし、スネークの励まし程説得力は無いと思うけど……ね」
「ううん……元気、出たよ。ありがとう」
彼女の声が潤んでいくのを感じながら、何も言わずに抱き締める力を強める。
「……この事件を無事解決出来たら、ヴィヴィオを正式に娘にしようと思うの」
「……なのはも母親かぁ」
少女もいつの間にか大人の女性となっている事に、年月の流れが早い事を実感させられる。
なのはが穏やかに笑いながら、ユーノを見上げた。
「ユーノ君も、ユーノパパなんて呼ばれるようになるんだよ?」
「そうか。……そうだったね」
ハハ、と互いに笑いあって。
「ああ、そうだユーノ君。大事な話があるんだけど」
―気付いたらすっかり、頼れる高町一等空尉殿の顔に戻っている。
事件関連かい、と問い、なのはの微妙な表情での頷きに首をかしげる。
「とりあえず、フェイトちゃんの所に行こう? そこで詳しく話すよ」
「……わかった」
アースラの廊下を仲良く肩を並べてしばらく歩き、目的地に辿り着くとなのはが扉を開ける。
―幾つも展開されたモニターと、忙しなく手を動かし続けている女性達。
頭に包帯を巻いたシャーリーと、ティアナ。
その隣に、フェイトがいた。
ティアナが真っ先にユーノ達に気付いて振り返り、軽い敬礼で迎える。
それによって残りの二人もドアへ振り返る。
「あぁユーノ、なのは、来たね」
「ユーノ司書長、こんにちわー」
思い思いの挨拶。
ユーノはそれに軽く手を振って答えた。
「やぁ。……シャリオさん、怪我は大丈夫なのかい?」
「はい、休んでなんかいられませんよー。任務は終わってませんからね、スネークさんの頑張りは無駄に出来ません」
「……そうだね」
―皆、強いな。
自然とそう呟いてしまったが、誰にも気付かれなかっただろうか心配になる。
それはどうやらユーノの杞憂だったようで、シャーリーがユーノに向き直った。
それで、と早速話を切り出す。
「スネークさんから送られた情報、最後の方は映像は正常に受信仕切れてなくて、音声も途切れ途切れなんです」
「……それで最後の部分だけざっと確認したら、こんな言葉が残されていたの。はやてちゃんにも伝えたんだけどね……」
395:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:54:54 T9jq36CN
なのはの緊迫した声に、ユーノは唾を飲み込んだ。
フェイトがシャーリーに視線をやる。
神妙な面持ちで頷くシャーリーが、手元のモニターを操作。
雑音と共に、音声が再生される。
『シャー………そ…し………イツ……!?』
―何を言っているのかさっぱりだ。
音声の中に雑音が混じっているのではなく、雑音を掻き混ぜるようにスネークの音声がちりばめられているといった感じか。
それでも、緊迫した空気は音声越しによく伝わってくる。
ユーノはしばらくの間続いたそれから最後にはっきりと、一つの単語を聞き取った。
『……レール、ガン』
何だって。
ユーノはモニターを前に大声を上げた。
―その単語には聞き覚えがあった。
いつかスネークから聞かされた、シャドーモセス事件における重要なキーワード。
シャーリーが、音声の停止したモニターを消す。
「―そう。スネークさんが話してくれた、磁場で核爆弾を発射する質量兵器」
「……奴は、スカリエッティは核攻撃をするつもりなのかっ……?」
「……」
ユーノが呆然と呟いた言葉を誰も否定出来ないのか、無言がひたすら返ってくる。
しかし、とんでもない話になってきていないか。
ユーノは頭を抱えたくなりながらも、それを何とか抑えつけて一呼吸置く。
自分自身凄く動揺しているのがよく分かるな。
どうやらそれはフェイト達も同じようで、深刻な表情の奥に不安が見え隠れしている。
ユーノは荒い呼吸を整えた。
―狼狽していても仕方がない。
明るい声になるように努めて、眼鏡を押し上げる。
「……まぁ、でも。スカリエッティがどこへ核を撃ち込むつもりでも、頑張って止めるしかないよね?」
「ユーノ、言うね……」
ポジティブ思考の発言に、フェイトが唸る。
感心しているのか呆れているのかは分からないが。
微笑しているなのはがいる事だし、胸を張る事にする。
「スネークなら、おまけに『なんとかなる』『どうにかする』って自信満々に付け加えてるよ」
「……ふふ、そうかも」
楽観的なスネークの事だからそう言って、自分と周りを奮い立たせるだろう。
違いない、と数か月もの間スネークを見てきた女性陣の穏やかな笑いが零れる。
レールガンについて、知ったような顔をしているティアナやシャーリー。
ユーノはふとそれが気になって、フェイトとなのはに視線を向けた。
「フェイト、なのは。……スネークの事、皆に話したの?」
スネークも必死に隠したがるような過去でも無い、別に話しても構わない、とは言っていたが。
気軽に話すような事でもないし、隊長陣三人とユーノは、極力話さないでいた。
他にスネークの出自を知っているのは、クロノとカリム、ヴェロッサだけである。
396:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 14:55:58 75Z5oFmL
支援
397:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 14:57:44 T9jq36CN
「……うん。スカリエッティがスネークさんに固執してたっていう事やレールガン。それに……」
なのはがちらりと視線を向けると、フェイトがどこからか本を取り出した。
久しぶりに見る日本語で書かれたそのタイトルは―
「『シャドーモセスの真実』……?」
シャドーモセス。
聞き間違えるはずもない地名がタイトルになっているその本を受け取って、ぱらぱらと捲る。
以前にスネークが話した内容が、彼を無線でサポートした女性の視点で詳細に記されている。
「海鳴のエイミィから送られきてね、翻訳版が日本でも話題になっているんだって」
「……向こうではどんな反応なのか、エイミィさんに聞いた?」
答えが大体予測出来るが、聞かずにはいられなかった。
友人として、スネークが侮辱されるのはどうしても我慢出来ない。
『一々反応して、どうにかなるものでもあるまい』
『気にしていても仕方が無い』
そんな風にスネークは言うのだろうけど。
「ん、荒唐無稽っていう意見が殆ど。……最初はね」
―最初?
今は八割が信じているとでも言うのか?
ならばその八割が信じるに至った経緯は?
湧き続ける疑問を早口で捲し立てるユーノに、フェイトはこれ以上無い位にたじろいで話を続けた。
「じ、事件日の米軍の異常行動が、最近報道されたんだって。アラスカ近海に出現した原子力潜水艦や爆撃機……」
「……」
「色々な報道機関で『第三国の軍事侵攻』だとか『軍の一部によるクーデター』だとか憶測が飛んだらしいんだけど……」
シャドーモセス事件の詳細を語ったこの本が、それらを一蹴したという事か。
何たって事実を元に書かれているのだ。
パズルピースのように上手くはまる辻褄によって信憑性が高める事は間違いない。
ユーノは顎に手をやりそう呟き、フェイトも同意の頷きを見せる。
「米政府は事件を否定しているけど、それで結構信じる人は増えちゃったみたい。信じる人達は、スネークさんを英雄視しているか、もしくは……その……」
「……嫌悪感?」
うん、と小さく頷くフェイト。
自分達とは違う存在へと向ける、異形を嫌うという、人間の、生物の本能。
―スネークが何時、それを望んだというのか。
スネークが父親を殺し、戦友を殺し、心身共にボロボロになるまで戦って世界を核戦争から守り、今も必死に歩みを進めている。
奴らに、そんなスネークへと嫌悪の視線を向ける資格があるのか。
そう考えれば考える程ユーノは心が冷え込むのを感じ、表情が堅くなるのを実感する。
それに気付いたのかなのはが不安そうにユーノの横顔を見上げ、握り拳をそっと手の平で包み込む。
それだけで心が暖かくなるのだから、心強いものだ。
念話でありがとう、と一言送る。
更にティアナが一歩前に乗り出して、力強い表情をユーノへ見せた。
スネークを尊敬している少女の想いの強さが滲み出ている。
398:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:01:16 T9jq36CN
「スネークさんがどんな生まれ方をしていても、あの人が尊敬に値する人だという事に違いは無いです!」
「……ティアナさん」
柔らかい微笑の後、シャーリーも動かし続けていた腕を止めユーノを真っすぐ見て、ティアナに同意する言葉を吐く。
あの人は信用出来ます、と。
「あの人は『何か』を持っています」
「……『何か』?」
反射的に聞き返すが、それは以前からユーノも思っていた事だ。
スネークやなのはが持つ、言葉に表せない『何か』。
「強い人。信じるに足る人。他人の期待に応える事が出来る人だけが持つ『何か』を。……それに、見た目よりもフランクでしたしね」
「……うん、そうだね。ありがとう、ランスターさん、シャリオさん」
逆に励まされてしまったな、と照れ臭さを感じて、彼女達に笑い掛ける。
見ず知らずの他人がどう思おうが、そんな事はユーノやなのは達には関係無い。
ユーノは改めて決意を固める。
もう逃げない。
傍観は終わりだ。
―これ以上何も失う事無く事件を終わらせてみせる。
公開意見陳述会から一週間後。
刻む足音が強く耳に残る程、静かな空間。
少し薄暗いそこには、二人の男がいた。
ジョニー・ササキと呼ばれる男、そしてその視線の先、格子の付いた扉を挟んで半裸の男。
『不可能を可能にする男』『伝説の英雄』等と持て囃された兵士。
ベッドに腰掛け黙って俯いているその男の名はソリッド・スネーク。
―寝ているのだろうか?
違う、とジョニーはその考えを振り払う。
スネークはシャドーモセスの独房にいた時、無線で何か話していたかと思えば、シャドーボクシングの真似事をしたりしていた。
壁を飽きる事なく何度も叩いていた様はまるで、誰かに操られていたかのようだった。
ジョニーが何度大声で注意した事か。
それでも言う事を聞かなかった事を考えると、このスネークの状態は異常。
少し心配しつつ、少々抑え気味に声を掛ける。
「おい、スネーク」
「……お前か」
スネークが顔を僅かに持ち上げ、バンダナの下に覗く鋭い瞳でジョニーを射貫いた。
ピリピリした空気が流れ、ジョニーは一瞬だがたじろぐ。
何でもない様子だったスネークを確認して、ジョニーはポケットをまさぐった。
目当ての物をスネークに投げ渡して、選別だ、と一言。
スネークの装備から抜き取った、ライターとタバコだ。
スネークは微かに困惑した表情でタバコの箱とジョニーに視線を行き来させる。
やがて軽くタバコの箱を掲げて、ジョニーに感謝の意を示した。
「俺の装備は?」
「纏めて置いてあるよ。……気分はどうだ?」
「……最悪だよ。ここ一週間変態科学者に加えて、お前の仲間の美女達にまで裸体をじっくり観賞されたからな」
タバコをくゆらせながら皮肉気に話すスネークへ、それは災難だったな、と苦笑する。
スカリエッティはクローンとして造られたスネークに大層な興味を抱いていた。
あんな奴にじっくりと、なぶるように身体検査されるのを想像したら、同情の一つもするさ。
399:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:04:28 T9jq36CN
それでも、シャドーモセスで行われたオセロットの拷問よりはマシなのだろう。
―身動き出来ないよう回転ベッドに縛り付けて、気の向くまま電流を体に流す。
数十秒の間断続的に響き続けたスネークの、人間が上げるものとは思えないぞっとするような悲鳴。
そして加虐の喜びでオセロットの顔に浮かぶ、官能味のある恍惚の表情。
ジョニーはそれをありありと思い出して、体を襲う寒気に身震いした。
そんなジョニーへ、おい、とスネークがだしぬけに声を掛ける。
「お前、地球人だろ?」
「えっ? あ、そ、そうだが……よく分かったな?」
ピシャリと言い当てられて、訳もなくどもってしまう。
この異世界では、人間に猫耳が生えているなんて事はない。
ジョニーを一見して、どこの出身なのかなんて分かり得ないのだ。
まさか、シャドーモセスで捕まった時からずっと俺を覚え―
「―GSRはこの世界に無いからな」
「……ああ、成る程ねー」
一度はスネークに奪われたジョニーの愛銃が、奇しくも主人の出身証明書になった訳だ。
説得力のある言葉に、下らない考えを一蹴する。
よくよく考えたら、多くのゲノム兵の中の一人なんて覚えている筈もないか。
「お前はどうやってこっちに?」
「……トイレから」
「……」
沈黙と共に、痛々しい空気が流れる。
トイレに駆け込んだら、不思議な光に包まれてこっちに来た。
―脚色しようの無い事実だ。
「ケツはちゃんと拭いてきたのか?」
「……出す前に飛ばされた」
「……それは残念だったな」
それっきり、沈黙。
対話と言う物は、黙っていたら進まない。
二人きりの時なら尚更だ。
ジョニーは困ったような呻き声を上げる。
スネークも押し黙っていたのだが、ふと思い立ったように一歩前に乗り出した。
「……何故奴は、スカリエッティはメタルギアを……俺を知っている?」
「うっ、それは……」
スネークからしたら、当然の疑問である事には間違いない。
思わず閉口。
冷や汗が背中を伝う。
そもそも、ジョニーが『シャドーモセスの真実』をスカリエッティに手渡した所から、奴の暴走が始まったのだから。
口籠もるジョニーに、スネークは不審そうに眉をひそめさせた。
「どうした?」
「……その、俺が奴に『シャドーモセスの真実』を渡したのが原因で」
「……『シャドーモセスの真実』?」
何だ知らないのか、と問い直し、スネークの首が縦に振られる。
地球、先進国でなら噂位聞く筈なのだが。
―こいつ、いつからこっちにいるんだ?
そんな疑問がジョニーの脳裏を過る。
400:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:06:00 +pQLLy2U
支援
401:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:08:31 T9jq36CN
「あんたのサポートをした、ナターシャだったか、ロマネコンチだったかがあそこで起きた事件の全てを記した本さ」
「……ナスターシャ・ロマネンコ?」
「ああそう、それ。その本のタイトルが『シャドーモセスの真実』ってんだ」
今やあんたは知らぬ者のいない有名人なんだぜ。
そう付け加えると、複雑な表情が返ってくる。
やはり良い気分はしないのだろう。
スネークは疲れたように唸り、目蓋を揉んで座り直した。
「奴が作ったメタルギアにはREXの情報が色濃くあった。彼女がその本に、設計情報を綺麗に印刷したとでも言うのか?」
「いいや。フォックスハウンドの生き残りがREXの情報を、モセスから持ち出して売り捌いてるんだよ。……誰だか分かるか?」
「まさか……」
オセロットさ、と小声で呟くと、スネークは苦渋に顔を歪ませて鼻を鳴らした。
「オセロットめ、ふざけた真似を。……奴は何が狙いなんだ?」
「金を集めて国を作るんじゃないのか? 『戦慄! 恐怖のロシア大帝国』なぁんてさ」
どこのB級映画だ、と間髪入れずに突っ込みが返ってきて苦笑する。
「……まぁオセロットはともかく、スカリエッティは多分奴から情報を買って、作るのに役立てたんだろうさ。その……SOLIDをな」
『SOLID』という言葉でスネークの眉がピクリと動いたのを、ジョニーは見逃さなかった。
自分の名前が付けられているのだ、相当な嫌悪感を持っていても仕方がないか。
「それで奴は『メタルギア』を作れたという事か。……それで?」
「……え?」
「お前は何がしたい?何故奴らに協力しているんだ」
ここへ世間話をしに来たのか、と
スネークはタバコの火を揉み消してそう言った。
ジョニーはここへ来た目的を思い出して、真剣な眼差しをスネークへ向けた。
「俺の爺さんは元GRUの兵士だった。エリート兵士って奴さ」
「……GRU。旧ソ連軍参謀本部情報部か。お前が兵士になったのは、祖父の影響か?」
「ああ。爺さんは俺の憧れだった。だから俺は兵士になった。でも……」
―それは戦う理由には成り得ない事に気が付いた。
紆余曲折を経てここへ飛ばされ、スカリエッティやナンバーズと邂逅を果たし。
その後、ナンバーズ達を守りたいと思うようになった、と。
スネークはおもむろに立ち上がって、ジョニーに負けず劣らずの真剣な眼差しのまま近付いた。
「彼女達は、少なくとも五番からは、スカリエッティの計画に直接賛同していない」
「……生みの親の命令を聞いているだけ、か?」
「彼女達が自分の意志でスカリエッティの言う事を聞くなら、俺はそれでも構わなかった。……でも聞いちゃったんだよ」
「……何を?」
低い声で問うスネークにジョニーは壁に寄り掛かって、数時間前の事を思い出した。
―成功に終わった局の襲撃だが、一人だけ出た重傷者。
ナンバーズの五番・チンク。
ボロボロになってアジトへ帰ってきたチンクは、メンテポッドでずっと眠ったままだった。
数多いナンバーズの中で、取り分け異色の雰囲気を放った戦闘機人。
『此処』に飛ばされて半ば放心状態だったジョニーにも良くしてくれた。
最大の作戦開始が数時間後に迫る中、彼女が目を覚ましたと聞いて嬉しくない筈が無い。
ジョニーは飛び上がって喜び、彼女の元へ向かって―それを聞いた。
『外の世界を、見たいと思うか?』
402:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:11:03 T9jq36CN
妹達にそう質問するチンク。
チンクを慕うノーヴェを始めとして、そこにいた誰もが数秒、答えに詰まった。
それも仕方がない、初めてそんな事を考えたのだろうから。
チンクの妹達が出した答えは、皆と一緒にいれれば良い、という至極単純明快な物。
対して少しだけ寂しそうな微笑を返したチンクの横顔をこっそり覗いて、ジョニーは確信した。
―チンクは外の世界へ解放される事を心のどこかで願っているだろう、と。
「……どうやら、そいつらにもまともな思考力はあるみたいだな」
容赦無く毒舌を吐くスネークに向き直る。
「あんたが伝説の傭兵として聞きたい事がある。……俺は彼女達を外の世界に導きたい。だが、本当にそれは正しいのか? 彼女達の為になるのか?」
それを肯定するだけの自信が無い。
彼女達の為を思い、少なくとも自分の意志で戦う彼女達へ牙を剥くのだから。
本当はやはり、彼女達を守るために局をボコボコにのめすのが正しいのかもしれない。
ジョニーは俯いて再び壁に寄り掛かり、背中の気配が答えを言う事を待った。
「……俺は英雄じゃない。英雄であった事もない。今までも、これからもな」
スネークはまずそこから否定した。
俺は只の兵士に過ぎないんだ、と。
そして只の兵士が、自身の考えを一言一言、噛み締めるように話し出す。
「正しいという事に規範は存在しない。……大事なのは、信じる事だ。正しいと信じる思いがどんな形であれ未来を作る」
「……正しいと、信じる?」
「スカリエッティも自分が正しいと信じて行動しているし、俺も奴を止める事が正しいと思っている。……誰に聞く事でも無い、お前が判断するんだ」
……要は自分で考えて、それを貫け、という事か。
予想外の回答に苦笑しつつ、思考を巡らせる。
何が本当に彼女達の為になるのか、自分が何をしたいのか。
―そんなの、分かり切っているじゃないか。
「……彼女達が、スカリエッティの元にいる事が良いとは思えない。―外の世界を見せてやりたい!」
「それがお前の信じる事か」
「心のどこかで、『外の世界で普通に暮らしてみたい』と思っているのはきっと何人もいる筈だろっ?」
落ち着け、とスネークにたしなめられる。
ジョニーは荒くなった呼吸を抑えつける。
「スネーク、時間的に作戦はもう始まっている頃だ。……だが、あんたは今こうして捕われている。絶望的な状況だと思わないか?」
「……いいや。まだだ、まだ終わってない。必ず奴を止める」
力強く拳を握る『伝説の英雄』と直接話して、ジョニーは確信した。
伝説の英雄は、ソリッド・スネークは、まだ諦めていない。
内面で燃え盛る闘志、絶対に折れる事の無い不屈の意志。
これ程頼れる仲間はいないぞ。
だったら、賭けてみようじゃないか。
―不可能を可能にする為に。
扉の横に取り付けられた端末を操作して、ロックを解除する。
「スネーク、彼女達をスカリエッティから解放させる。……あんたの力を貸してくれ」
独房からゆっくりと出て来たスネークは頼れる目付きで、黙って頷いた。
―それぞれの思い、様々な思惑を交錯させた戦い。
それの始まりを示す狼煙が、立ち上る。
403:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:13:31 T9jq36CN
おまけ
それほど長くなかった話も終わり、再びモニター上をシャーリー達の手が踊り始める。
ユーノはその様を少し眺めて、おもむろに声を上げた。
「……じゃあ、僕はそろそろ退散しようかな。ごめんね、忙しいところを邪魔しちゃって」
「ああ、いえいえ。ぜんぜ―」
『―これはっ!!』
シャーリーの言葉を遮るように、いる筈の無いスネークの声が響いた。
モニター上のスネークが発した、様々な感情を含ませた声。
視線がモニターに集まり、モニター一杯に映し出されたそれを見て、全員が一様に固まる。
ロッカーに貼り付けられている、際どい水着を着用した女性の写真。
―所謂、グラビアアイドルの写真。
ごそごそ、とモニターの中のスネークは荷物をまさぐり、取り出したデジタルカメラを構える。
じじー。
かしゃり。
ぴぴっ。
スネークは保存されたデジタルカメラの映像を素早く確認、仕事をやり遂げた表情で一言。
『……よしっ』
「よしっ、じゃない!」
その場にいたユーノを除いた、四人の綺麗にハモった突っ込みが響いた。
そう、ユーノも男だ。
ぶら下がったメロンには否が応でも目を奪われてしまう。
なかなかだな、と内心で水着女性に拍手を送る。
「……?」
なのはが唯一突っ込まなかったユーノに訝しげな視線を向け、彼のそんな心境に気付いてしまった。
そして、ユーノはなのはの様子に気付かずに、じっくりとモニターを観賞している事が致命的だった。
なのはが目を吊り上げる。
「―っ痛ぅ!?」
グリグリと断続的に足を襲う痛み。
ユーノは足を踏んでいるなのはの顔を見て、ようやく事態を把握したのだが、時既に遅し。
「ユーノ君、随分熱心に見てるね!? ……全く、前も部屋にイケない本を隠し持ってたし……!!」
なのはの暴露に、うわぁ、と痛々しい視線がそこかしこからユーノへと降り注いだ。
違うそれはスネークから拝借したものだ、男は皆そういうものだ、なんて言い訳も逆効果。
ユーノが全てを諦め掛けたその時―何故かなのはが表情を崩した。
顔を赤らめ微笑を浮かべながら、上目遣いにユーノを見る。
「―もぅ。そんなに興味があるなら、一言言ってくれれば良いのに……」
「え。……い、言ったら?」
ユーノはごくりと唾を飲み込んで尋ねる。
なのはは、事態を見守っているシャーリー達でさえ真っ赤になる程の艶めかしい表情でクスリと笑って顔を近付けた。
「……フフ。『我慢しなさい』って言ってあげる」
「ぁー……」
……女は恐ろしい。
そうだろ、スネーク?
ユーノの嘆息が部屋中に虚しく響いた。
404:リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo
08/11/16 15:15:01 T9jq36CN
第十四話投下完了です、支援ありがとうございました。
おまけの話に関連して、MGS2の写真ネタは個人的にかなり好きです。
グラビア写真を見たオタコンさんも「……保存しとこ!」なんて言ってて笑わせて頂きましたw
ことわざ解説時のふざけた言動もあれば、ジーンとくる台詞も吐けるオタコンさん。彼も大好きなキャラの一人です。
それでは、次からは戦闘ばっかりです。
最終回もぼんやり見えてきましたが、次回もよろしくお願いします。
405:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:20:34 75Z5oFmL
GJ!!
盛り上がってきました~。はたしてスネークの作戦はどうなるのでしょうか。
悪女ななのはさんにも笑いました。
406:反目のスバル ◆9L.gxDzakI
08/11/16 15:30:47 QKY7k0Cm
報告です。
モバゲータウンにおける盗作の件ですが、ロックマンゼロ氏本人と連絡を取ることができました。
以降は我々で対処しますので、引き続き勝手な行動を取らぬよう、よろしくお願いします。
407:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 15:50:44 Mdxsawyj
チンクたちとジョニーには幸せになって欲しいです
408:一尉
08/11/16 15:58:50 yPbPesPu
オマケなら最後です。
409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 16:02:53 /ydidjRr
投下乙です。
是非ともジョニーには最後まで生き残って欲しい……
誰かの命と引き換えの自由なんて、嫌だろう?
410:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 17:52:28 fdnAqETf
GJ! こ、これはジョニーとスネークのタッグバトル!?
MGS4でのあの大活躍が見れたりするんでしょうかw
それはそうと、艶めかしい表情のなのはさん想像して思わずイジェクトしてしまいました。
責任とってください(ぇ
<<まぁそんなことはいいとして……オメガ11は今回短編と言うか次回作への予告と言うか、そんなもの
を書いてきたそうだ。1830に投下予約したいが、よろしいか?>>
411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:26:30 CVI5RxHp
やったりやったり
412:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:30:12 fdnAqETf
<<それでは投下を開始する。今回は予告だから非常に短い>>
OK,まずはいいニュースから行こう。
その日、世界は素敵な状態だった。
ロシアでは現在の政府支持派と超国家主義者たち―スターリンを崇拝し、旧ソ連復活を目論んでいるテロリスト集団が衝突して内戦状態。
一万五〇〇〇発もの核弾頭が、危機に瀕している。
で、中東のアル・アサドとか言う権力者と手を組むつもりらしい、この超国家主義者たちは。
別にいつものことだから、大して気にしてない。
もう一つ、こっちは悪いニュースだ。
俺は明日には第二二SAS連隊に配属される予定だったんだ。
だと言うのに、列車は人身事故で止まってしまっている。
SASの選抜試験を奇跡的に抜けたのはいいが、変なコールサインをもらって挙句この様だ。
神よ、いるなら答えてください。俺、何かしました?
その日、二人の若者が出会った。
「―お宅も足止め食らったクチ?」
「ああ、これから故郷の国に帰る予定だったんだが……」
「そうか……まぁ、列車が動くまでの間ゆっくりロンドンを観光してなよ。何だったら案内するよ。俺は―」
出会った二人の若者の名。
片方はジョン・"ソープ"・マクタヴィッシュ軍曹。第22SAS連隊所属の、新米SAS隊員。
「いや待ってくれ、僕は未成年―」
「固いこと言うなよ。ほら、ビールは冷えてるのばっかりが美味い訳じゃないぞ」
「一応仕事の帰りなんだけれどな……」
もう片方は、クロノ・ハラオウン執務官。時空管理局所属の、次元航行艦"アースラ"の切り札。
二人の出会いは、それだけで終わるはずだった。
思わぬ足止めを食らったおかげで、いい奴に会えた。あとは思い出の一部となって、記憶の片隅に留めておくだけ。
―そのはず、だったのだが。
「ソープ、飛び乗れ!」
嵐の大洋、荒れる海に飲み込まれつつある貨物船の甲板上。
―誰かいる!
脱出のヘリに飛び乗ろうとしたその時、ソープは不意に背後から人の気配を感じた。
この手の分野では傑作と名高いMP5の銃口を素早く振り回し―彼は、引き金にかけた指の動きを止めざるを得なかった。
「……クロノ!?」
「―ジョン!? なんでここに……っ」
再会。しかし、その真意を問うには、お互い残された時間があまりに少なかった。
413:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:33:14 fdnAqETf
場所は変わって、中東。
一人の兵士が、戦っていた。
理由なんて、後から考えればいい。目の前の敵を撃つ、撃つ、撃つ。ひたすらに撃つ。そうしなければ、やられてしまう。
だけども、仲間を見捨てようとは思わなかった。
例え核兵器が目の前で爆発する恐れがあったって、構うものか。一人の仲間も、見捨てない。
「ジャクソン、彼女を救助するんだ! 一分以内に連れて来い!」
「了解、援護頼む」
彼の名は、ポール・ジャクソン軍曹。海兵隊第一偵察大隊"フォース・リコン"のベテラン兵士。
だが―仲間を見捨てない、それ故、彼は地獄を見る羽目になってしまう。
彼を地獄に送り込んだのは―
「―ザカエフ」
「え? プライス大尉、今なんて……」
「イムラン・ザカエフだ」
「一五年前だ、ジョン……いや、ソープ。僕の世界の方で、あるロストロギアがこっちの方に流出したんだ」
全ての元凶は、一五年前から始まっていた。
「リーダーは我々を売り飛ばした……文化を汚し、経済を崩壊させた。名誉も―我らの血は、祖国の土に染み込んだ。私の血も」
全ての元凶が、動く。自らの理想を実現させるため、世界を破壊する。
「アメリカとイギリスの全軍隊は即刻ロシアから立ち去るがいい。さもなくば苦しむ結果になるだろう……」
予想される損害は、アメリカ本土東海岸一帯が全滅。予想死亡者数は、四十万人を超える。
食い止めなくては。
組織の壁など、もはや関係なかった。今動かなければ、未来はお先真っ暗だ。
SAS、海兵隊、そして管理局。三つの組織の精鋭たちが、動き出す。
「ソープ、ジャクソン、クロノ、ザカエフを追え! ここは俺とギャズ、グリッグが抑える―元凶を断つんだ、これで終わりにしろ!」
世界を滅ぼすのは人間の力。
それを止めるのも、人間の力。
兵士たちは、紛れもなく"人間"だった。
「ソープ、了解」
「ジャクソン、了解だ」
「クロノ、了解した」
飛び交う銃弾、魔力弾。全ては世界の未来のため。
交わるはずのない線が交わった時、兵士たちの戦いは、もう一つの結末を迎える。
Call of Lyrical 4
戦いは、まだ始まらない―。
414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:34:02 T9jq36CN
支援
415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 18:34:40 CVI5RxHp
COD4キタァァァアア
416:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:36:05 fdnAqETf
おまけ1
「―プライス大尉、一つ質問があります」
「僕もです、プライス大尉」
ブリーフィングが終わった直後。
指揮官のプライスが最後に何か質問はないかと皆に問うと、真っ先に手を伸ばす者がいた。ソープ、それにクロノだ。
「何だ、二人とも」
「このザカエフの息子なんですが」
ソープは配布された資料の中から今回の作戦目標、ザカエフの息子の写真を取り出す。
SASの隊員皆が興味津々とした視線を送ってくる最中で、クロノが口を開く。
「どうして戦場のど真ん中で上下ジャージなんでしょう?」
ブリーフィングルームに、ため息と罵声が響き渡った。
詳しくは「Call of Duty4」をプレイしてね!
おまけ2
「ブラボー6、聞こえるか? プライス大尉、航空支援を送った。活用してくれ」
「航空支援だって? コールサインは?」
<<Omega11 Engage>>
「帰れ、お前は」
サーセン。
おまけ3
「ブラボー6、聞こえるか? さっきはすまなかった。プライス大尉、今度こそ航空支援を送った。活用してくれ」
「さっきのはイジェクト(脱出)して落ちたな、何しに来たんだか……で、今度の航空支援のコールサインは?」
<<Mobius1 Engage>>
「―ちょ、マジで?」
嘘です、たぶん。
417:THE OPERATION LYRICAL
08/11/16 18:39:04 fdnAqETf
投下終了です。
はい、クロス元はFPSの「Call of Duty4」ですね。
コメントで次回作はこれを!という声が多かったので、試しに予告編と言う形
で書いてみました。
プロットはまだ出来てないのでいつ本格的に始められるか分かりませんが、その
うち始めるとしましょう。
418:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 19:02:45 75Z5oFmL
むむむ、クロノもでてくるようですね。
これは興味深いです。
419:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 19:07:29 vSLD8D7N
あのジャージはこの手のロシアンマフィアの象徴ってことで
それはともかく乙です!続編期待してます!
420:名無し@お腹いっぱい
08/11/16 23:13:09 xxD9NKp5
SSのネタでCoD4クロスさせてるの書いてる自分としては期待せざる負えないwww
アレですね、オメガ11の空爆支援はベイルアウトによる特攻(ry
421:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/16 23:53:01 s0Y4fZJY
GJ!!
ザカエフの息子の息子はなぁ、なんか映画のポスターかよ!!って感じの写真になってなかったっけ?
最強の航空支援、メビウス1が来たら何もかも吹き飛ばしてくれるぞ。
敵陣地の高射砲もSAMも無視してなぎ払ってくれる
422:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 00:25:06 VB0I2Lh3
日向玄乃丈辺りを呼んでキャロと組ませて、セプテントリトンとか絡めたオリジナル展開の話を書きたいなぁ、と思った。
セプテントリトンとか世界調査局とか、時空管理局と親和性高すぎる設定でかえって話が作れなかった。
つーか設定多いよ! なのはも大概だけどそれより更に多いよ!
構想練ろうと思って調べたけど、調べれば調べるほど訳分かんなくなったよ!
あの会社は中二病の巣窟か!?
423:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 01:07:27 jlCSJoFT
えっ、核じゃなくてロスロトギアでジャクソンは死なないということですか!!
なに、その燃える展開……
えぇとゲーム本編と同じ結末じゃないといいなぁ……なんて思った
アレはホント涙出てきたもん……
ふと、ソープ、メビウス1、ストーム1がミッドで大暴れ なんていうとんでもないのが思い浮かんだ
424:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 01:29:41 JvEN6rd/
小ネタであった、パンプキンシザーズとのクロスも面白そうだw
ハンスは寝返らない方向でw
425:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 02:45:08 7int3OEe
>>422
全ての設定を正確に理解しようとしてる時点で奴らの思う壺だ
一見さんから見たアレの意味不明さは一種の様式美みたいなところがあるから
クロスSSを書く程度なら、各作品の一般公開設定ぐらいで済ませたほうがいい
まず間違いなく、設定の全てに忠実に話を作れる奴なんていないよwww
ただ忠告しておくと、セプには手を出さないほうがいい
だってあの組織が何なのか、現在進行形で完全に理解してる奴なんて一人もいないんだぜ?
426:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 05:48:22 4PktcqAB
αは痛い設定に定評のあるメーカー
427:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 11:17:11 ppe93gTI
>>404
GJ!
やっぱりユーノにはスネークが必要なんだぜ。
428:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 12:02:04 A7C6EFrZ
投下された作品に関する話題以外はウロスでやったほうがいいですよ
URLは>>1にありますので
429:一尉
08/11/17 12:03:00 1wfxK8Xx
スネークなら最強支援たよ。
430:魔装機神 ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 17:46:31 DOgq1aQX
投下した皆さん、まとめてですみませんが本当にGJです。
そして、本当にお久しぶりです。
ようやく続きが出来たので、本日の11時ごろにラディカルノーヴェを投下したいと思います。
431:魔装機神 ◆BbNMlcrDFw
08/11/17 17:47:19 DOgq1aQX
すみません、下げ忘れました
432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 18:27:22 NGViZHzs
魔装機神さんお久しぶりです!
そしてお帰りなさい!!
投下待ってますよ!!全裸待機だヤッホイ\(・∀・)/
433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 18:54:39 8B1BTB4K
15分後に投下してもよろしいでしょうか?
一発ネタを投下したいのですが、もし予告がなければ15分後にします。
434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:03:17 kOdeZvMI
>>433
支援
435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:18:12 8B1BTB4K
失礼、それでは投下させていただきます。クロス先はSGA。海外ドラマ「スターゲイト アトランティス」
僕がこの資料を見つけたのは偶然だった。
その文献はただ、そこに存在していた。
本と呼べない、人によってはただの石にしかみえないだろう。しかし、僕はこれを本と表現する。
おそらく右下に書いてあるのは数字と思われるものだ。そして文章とおもわき物と挿絵。その挿絵はリングの形をしていた。
しかし、僕にこれは読めなかった。“これ”に興味をもった僕は自分の部屋に持ち帰り調べることにした。
ジェイル・スカリエッテの事件が終了し、六課が解散した。
僕も最後の作戦にはなのはへの援護と思い参加した。そして、事件が終わるとともに僕は自分の興味に没頭した。
興味の先、それは事件が起こる前に見つけた本。見つけてから半年、僕は何一つその本を解読することが出来なかった。
本の物質は、現在では何か見当がつかないもので作られているということが調べで分かった。
しかし、それが何なのかはわからない。
436:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:20:35 8B1BTB4K
僕は本を見つけてから2年がたとうとしていた。
その本に没頭することで僕は自分の関係を崩し始めていた。
数日前、ジェイル・スカリエッテの事件後から恋人関係になったなのはとの関係に終止符を打った。
すべては自分の研究の所為であることは理解していた。彼女に最後に言われたのは厳しいものではなかった。
しかし、彼女は寂しそうな顔をして、「互いの仕事もあるし、忙しいから別れよう」と伝えられた。
胸が痛まないといえばウソになる。しかし、僕は自分の研究を止めることを止めることが出来なかった。
いつしか、僕はこの本から興味とともにこの文献の内容がすごく重要ではないのかと思い始めた。いや、感じていたのだ。
なのはとの関係が終わってから半年、本を見つけてから3年たっていた。
そこで僕はまた本を見つける。その本は僕が過去に見つけた物と同じ、石でできていた。
前回と違うことはそれが読めたことだ。その文字は地球、なのはの出身世界で言う、古代エジプト文字といわれるものだ。
地球で生活する時、自分ひとりであの世界を回って、興味をもったことがあり、読むことができる。
しかし、それはしっかりと読むことができるわけではなく、なんとなくであった。
それから2ヶ月後、僕は学会で発表をする。
次元世界の否定、自分たちの世界の存在、すべてにおける否定。僕が発表した論は否定されておわった。
奇人、変人と言われ、その論文のおかげで時空管理局「無限書庫」司書長としての地位を剥奪。
危険思想者を重要な仕事の位置に置けないというのが一番の理由ということらしい。
僕の研究は無限書庫から出てくる、この世界の古文から考えたものだ。
そして、僕はそこでまたあの本と同じようなリングを見つけ出す。しかし、それが何なのかはまだ分からなかった。
437:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/17 19:23:50 8B1BTB4K
無限書庫の地位を剥奪されたが、ある種のコネで以前の事件の首謀者、ジェイル・スカリエッテとの面会ができことになった。
自分が望んだことだ。ここ数年で何度も世界を渡り歩いてきたが、あの本になる話は聞かなかった。
最終的にこの人に辿りついたのだった。
「これはこれは、司書長様じゃないですか」
「元、です。何で知っているかは聞かないでおくよ、ジェイル・スカリエッテ。お前に聞きたいことがあってここに来たんだ」
「それは、どのような御用件で? こんな遠いところまで」
「ユーノ・スクライア氏、ここでの会話は記録されますが」
「構わないです、ジェイル・スカリエッテ。あなたはこのようなものを見たことがあるか?」
そういって僕はリングの絵を印刷してきた紙を看守にわたし、スカリエッテの手元に行くようにした。
それを手にした瞬間、彼は驚いた顔をして僕を見た。
「これを知っているんだな」
「まさかこれを発見する人間が管理局にいるなんて思いにもよらなかったよ」
「…おほめの言葉、どうも。しかし、管理局員ではないのでね。っで、これはなんなのですか?」
「私にもわからないさ。ただ、“星の扉”とだけは知っている。
もともと、これは聖王のゆりかご内にあったものだがね。そこから調べたさ」
聖王のゆりかごの中に?
「僕の研究施設はまだのこっているかい?」
僕は記録をとっている局員に目を向けると彼はまだ残っているといった。
「君がこれを何なのか気になるなら、直接見に行くといい」
そういって、彼は看守にメモを渡した。
僕はそれを受け取り、その場を後にした。