あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part178at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part178 - 暇つぶし2ch66:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:14:53 VY5OQ8cp
この労力を何かに使えば人生もっと実りあるモノになるだろうに。

67:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:19:10 QFpDkHna
今日は汽車の日ということで、FFⅥから魔列車を召喚。
ウェールズ皇太子、冥府の車窓から
「明日は、幽霊共和国に停まります」

68:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:26:03 HN8Q2THM
>>66
結局他人書いたものをそのまま頂くしか能のない時点でもう・・・

69:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:30:15 CkRVyn9B
>>67
ワルドは母親に引っ張られそうだな

70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:32:04 Acohak5E
偽テンプレ……きっと香しいほどにスイーツ脳の人間がやってるんですよ。……腐ってやがる、ってくらいに臭う奴が。

71:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:32:51 K49L4sm4
しかも遅いときている

72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:35:03 bMy+zgV8
まあ、腐ったものには触らずにおこうぜ

冷蔵庫で「じっくり腐らせて」から生ゴミに出そう出そうとしているうちに
いつしか冷蔵庫を掃除する機会を失って
気がついたら部屋全体に異臭が

73:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:36:19 jODzP6hq
いや、スイーツ脳の意味まちがってるような。

74:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:40:27 vcrkLIlx
正しく「無能な働き者」だな。銃殺決定w

75:狂蛇の使い魔
08/10/14 20:40:39 4Jh5mhPO
投下予約等なければ20:50くらいから投下します

76:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:43:40 ihkDkWMP
狂蛇キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

お待ち申し上げておりますよ。

77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:46:26 DX27irWO
惨劇ですね?惨劇なんですね?支援用意!

78:狂蛇の使い魔
08/10/14 20:50:31 4Jh5mhPO
では、投下します

79:狂蛇の使い魔
08/10/14 20:51:47 4Jh5mhPO
第四話



目の前で一体何が起こったのか、ギーシュには理解できなかった。

マジックアイテムらしき箱を使い、奇妙な鎧を身に纏ったルイズの使い魔の平民。
不思議な形をした剣をどこからともなく呼び出すと、ワルキューレに向かって駆け出したのだ。

「でやあぁぁぁ!!」
そしてワルキューレが攻撃の体勢に入るよりも早く、順手に持ち変えた剣を上から振り降ろしてきた。



ワルキューレは青銅でできている。
たとえ相手が武器を持っていようと、並みの攻撃ではびくともしないはずだ。
攻撃を受け止め、その隙をついて攻撃を仕掛ければいい。

そう、僕はふんでいた。

しかし、やつが二度三度と剣を振るっただけで、その考えは脆くも崩れ去った。

やつの斬撃に、自慢の防御力が意味をなさないどころか、攻撃を受けた箇所にヒビが入り、ついには砕け始めた。

「ハァッ!」
トドメとばかりに下から放たれたその一撃で、ワルキューレの体が宙を舞い、僕の目の前に落ちてきた。
もはや戦える状態にない。



「ふん……もう終わりか? つまらんな」
剣で肩をトントンと叩きながら、『平民だったもの』が呟いた。

80:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:52:29 DX27irWO
支援

81:狂蛇の使い魔
08/10/14 20:54:07 4Jh5mhPO
 
「ま、まだだ! 勝負はこれからだ!」

正直、侮りすぎていた。
あのパワーとスピードでは、ワルキューレ一体だけだと相手にならないだろう。

(だが、複数ならば此方にも分がある!)

そう思うと、すぐに二体のワルキューレを出現させ、指示をだす。
「いけ!」
青銅の長剣で武装した二体が、同時に走り出す。



「ほう。もうしばらくは楽しめそうだな」
そう言って、手にした剣を放り投げる。
再び紫の杖を取り出すと、箱からカードを引き、杖に差し込んだ。

『SWING VENT』

杖から声がすると、鏡から赤色の鞭が飛び出し、先ほどの剣と同じように王蛇の手に収まる。

エビルウィップと呼ばれるこの鞭は、剣よりも広い攻撃範囲と、自在な動きで敵を翻弄する。

王蛇は鞭を地面に一振りすると、近づいてきた二体の人形に向けて、上下左右あらゆる方向に何度も振り抜いた。
その攻撃に、ワルキューレたちは思うように近づけず、ついには二体とも武器が弾き飛ばされてしまった。

今は二体とも両腕で守りを固めているが、体のあちこちに傷や破損が目立つ。

82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:55:46 kvCI/JWp
支援

83:狂蛇の使い魔
08/10/14 20:57:09 4Jh5mhPO
 
頃合いを見計らって、王蛇はワルキューレたちに猛スピードで近づくと、その場で勢いよく回転し、右から回し蹴りを叩き込む。
蹴り飛ばされた一体がもう一体を巻き込み、観衆がいる方向へと飛んでいった。
見物人たちが悲鳴をあげてそれを避ける。

王蛇に傷一つつけることができぬまま、またしてもワルキューレたちはその機能を停止した。



(くそっ、こうなったら……!)
ギーシュは残る四体のワルキューレを呼び出し、突撃の指示を出す。
各々が剣や槍で武装されている。



「ほう……」
王蛇は手にした鞭を投げ捨て、紫の杖を取り出す。
箱からカードを引き、杖に差し込んだ。

『STRIKE VENT』

杖から声がし、鏡から鉄の盾のような物体が飛び出すと、王蛇の右腕に装着された。

メタルホーンと呼ばれるそれは、腕に着ける灰色の盾のような部分と、先端部分から伸びる黄色い角のような突起物でできている。
その形状から、攻撃と防御を両方ともこなすことのできる武器なのである。



突撃してきた四体のワルキューレに向かって、王蛇はメタルホーンを構えた。

84:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:59:07 Acohak5E
ギーシュの命を心配しつつ支援。

85:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 20:59:56 0Rhn5cDA
ギーシュの冥福を祈りつつ(?)支援

86:狂蛇の使い魔
08/10/14 21:00:29 4Jh5mhPO
 
王蛇は一体目と二体目の攻撃を避けると、残る二体の攻撃を両方とも盾の部分で受け止め、そのまま横になぎはらった。
二体のワルキューレが地面に転がる。

攻撃を避けられた一体が、再び攻撃を仕掛けた。
が、攻撃が届くよりも前に、王蛇によって上から振り降ろされた一撃を顔面にくらい、地面に叩きつけられる。
その顔には、縦に大きな亀裂が走っていた。

もう一体も王蛇に攻撃を仕掛けたが、盾の部分で攻撃を受け止められると、蹴りで武器を叩き落とされた。
そして、無防備になったその胴体に、王蛇はメタルホーンを勢いよく突き出す。

ワルキューレは咄嗟に避けようとしたが、間に合わず脇腹に攻撃をくらい、弾き飛ばされた。
脇腹の一部が砕け散る。

地面へ倒れたところに、王蛇はすかさず追撃を仕掛ける。
「ダァァッ!!」
メタルホーンの角がワルキューレの首元を砕き、首から上が吹き飛ばされた。



なぎはらわれ、地面に倒れていた二体が起き上がるのを見ると、王蛇は言った

「今日はなぜか調子がいい。……だが、そろそろ雑魚の相手も飽きてきたな」

87:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:04:29 HN8Q2THM
支援

むぅ、さるさんか?

88:狂蛇の使い魔
08/10/14 21:04:39 4Jh5mhPO
 
王蛇はメタルホーンを腕から外すと、そのまま地面に振り落とし、紫の杖を取り出す。
紫の箱から、それと同じ模様が描かれたカードを引くと、杖に差し込んだ。

『FINAL VENT』

杖から声がし、その直後手鏡から巨大な紫の蛇が現れた。
観客たちが悲鳴をあげる。

顔の周りに無数の鋭い刃を持つその大蛇―名をベノスネーカーという―は、シューという声をあげながら、王蛇の方に向かって地を這い進む。
王蛇はその場で構えると、後ろに向かって大きくバック宙をした。

そして、王蛇の背後にまで迫ったベノスネーカーが、口から毒液を吐き出す。
その勢いに乗り、王蛇が二体のワルキューレたちに向かって、両足を交互に上下させる、奇妙な形式の蹴りを放った。
「ウオオオォォ!!!」

(避けられない!!)
獲物を何度も噛み砕く、蛇の牙を彷彿とさせるその攻撃は、身構えるワルキューレたちをものともせずに蹴り砕いていき、そして―爆発した。
二体のワルキューレは木っ端微塵に吹き飛ぶ。



「そん……な……」
ギーシュが、崩れるようにして膝をつき、うつむく。

89:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:05:41 kvCI/JWp
支援 これからの惨劇が楽しみだw

90:狂蛇の使い魔
08/10/14 21:06:17 4Jh5mhPO
 
いくら奇妙な鎧を纏ったとはいえ、ワルキューレたちが平民を相手に、全く手も足も出なかった。
それどころか、戦いにすらなっていなかった。

あったのは、圧倒的な力による、破壊。
一方的な暴力のみだ。



「この感覚……! やっぱり戦いは最っ高だ……!!」

しばらく愕然としていると、王蛇がギーシュに近づいてきた。

「おい。……ギーシュとかいったか」
「ひぃっ!!」
殺される!と思ったギーシュであったが。

「時々、俺の相手をしろ。……モンスター以下だが、少しはイライラも収まる」

返ってきたのは、予想もできない言葉であった。



一方で、ルイズもまた、愕然としていた。

ただの乱暴者だと思っていた男が、何かとてつもない力を秘めていた。
しかも、この上なく強い。

(あんなのを使い魔にしちゃったのか、私……)
頼れる使い魔だったという喜びよりも、もしあいつが牙をむいたら、という恐怖が、ルイズの胸の中に広がっていく。
ルイズは思わず身震いした。



―これからどう接すればいいんだろう。

そんな疑問を抱えながら、ルイズは広場を立ち去った浅倉の後を追うのであった。

91:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:08:29 kmcuKoQ6
お供三匹ヴァージョンだったのか支援w



92:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:09:48 Acohak5E
契約モンスターが三体ってことは、ご飯も三倍。
……トリステイン魔法学園には、人が夜な夜な消える怪談話があってですね。

93:狂蛇の使い魔
08/10/14 21:10:26 4Jh5mhPO
以上です。
惨劇とか書いちゃいましたが、ギーシュを始め誰一人死なないような結果になってしまいました。期待させてしまって申し訳ないです

それでは、支援ありがとうございました!

94:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:10:54 fxziop7p
あって良かったルーンの刷り込み
それでもイライラを抑える程度ってのがww

レコスタに寝返る事はなくても場をかき乱すんだろうなぁ、色々と

95:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:12:51 HN8Q2THM
蛇の人乙

原作が原作なだけに、つい死人を期待しちゃったよ
いや寧ろガンガン殺しちゃってください

96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:13:15 kvCI/JWp
惨劇期待していたのになぁ とにかく乙!

97:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:13:48 9MobT5po
狂蛇の人乙でした
ライダーは爆発すると証明してくれた浅倉さんだけにゴーレムや偏在も爆発するのかどうか期待

98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:18:55 jgrZhr8s
浅倉の人、乙です

しかし龍騎のライダーは変身中に周りの鏡を錬金されたらどうなるんだろう
モンスターとか武装を召喚できなくなったりしないだろうか

99:ゲーッ!熊の爪の使い魔
08/10/14 21:23:16 A4I8V2Lj
21時30分ごろから投下します。

100:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:24:43 zTOHPIez
>>98
ライダーのスーツが何で構成しているか分からないと無理なんじゃない?

101:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:26:27 GTKGwqOM
キタァァ

102:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:28:36 VY5OQ8cp
USSR代表支援

103:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:29:43 zTOHPIez
実はヘルズベアは

104:ゲーッ!熊の爪の使い魔
08/10/14 21:30:40 A4I8V2Lj
では、久しぶりですが次から投下します。

105:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:31:31 DLldR9dk
その後、>>103の姿を見たものは…あれ、こんな時間に誰d

106:ゲーッ!熊の爪の使い魔1/19
08/10/14 21:32:03 A4I8V2Lj
第七話 ヘルズ・ベアー

その日の昼、コルベールはオールド・オスマンにベルモンドについての発見を報告するため学院長室を訪れていた。
そして報告する。現れたルーンは特別であり、古文書によるとそれが伝説のルーンであると。
「見てください、ベルモンド君のルーンはあのガンダールヴのものなのです!
素晴らしい、あんなに愛らしいだけでなく伝説の使い魔でもあるなんて!
このコルベール、この魔法学院で教師をしてきたかいがありました」
「まあ、少し落ち着きたまえ。それで間違いはないんじゃな」
「はい、ベルモンド君にいい加減なことを伝えるわけにはいきませんからね、
何度も確認しました」
それを聞いてオスマンは思案する。もし本当ならいったいどう扱うものやら。
そのときドアがノックされ、オスマンの秘書ミス・ロングビルがやってきた。
なんでも決闘をしようとしている生徒がいるらしい。そのうちの一人はギーシュ、
そしてもう一人は今話に上がっていたベルモンド。
それを聞くとコルベールは飛び上がりオスマンに向かってまくし立てた。
「お願いです、今すぐ眠りの鐘の使用を!
ああ、決闘などと、ベルモンド君が殺されてしまう!
躊躇している場合ではありませんぞ、早く眠りの鐘を。
いやそれでは生ぬるい、いっそギーシュ君には実力行使で」
「……さっき自分で言ったことを忘れたのかの?
伝説のガンダールヴじゃなかったのかの、あの使い魔は」
「だってクマちゃんなんですよ!!あんなかわいいクマちゃんが戦うなんて。
ああ、ベルモンド君……」
「いいから落ち着きなさい」
オスマンはロングビルを下がらせるとヒートアップするコルベールをなだめながら、
杖を振ると鏡に広場の様子を映し出した。

107:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:32:03 vlHbIb9/
着ぐるみ支援

108:ゲーッ!熊の爪の使い魔2/19
08/10/14 21:33:21 A4I8V2Lj
ベルモンドがヴェストリの広場に到着すると、そこにはすでに大勢の生徒がギャラリーとしてたむろしていた。
そしてその中心にいるギーシュがベルモンドを見ると口を開く。
「やあ、逃げ出さずによく来たね。ボロ屑になる覚悟はできているようだな。
じゃあ始めよう。諸君、けっと」
「さあ!ついにこのヴェストリの広場に両雄が揃いました。
いよいよ決闘が始まります!
立ちはだかるのはドットクラス、土のメイジ、
「青銅」のギーシュ・ド・グラモンーー!!
対するはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、
「かわいいクマちゃん(チャーミング・ベアー)」ベルモンドォー!」
「実況」の二つ名をもつ生徒が皆に渡る声を響かせる。
なお、彼の使い魔はすでに彼とは反対側に位置し、「実況」本人が見聞きできない位置をカバーすべく待機している。
「……まあいい、そういうことだ。始めさせてもらうよ」
口上を途中で邪魔をされて憮然としながらもギーシュは早速行動を開始する。
ギーシュが薔薇の花を振ると花びらが一枚宙に舞い、 甲冑を着た女戦士の形をした人形が現れる。
「先ほど言われたように僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
ギーシュはこれを見てあのふざけたクマ公も震え上がるだろうと考えていた。
だが、ベルモンドの行動はそんな彼の想像を超えたものだった。
「わあーい、お人形さんだー。なーんだ、決闘なんて言うから何やるのかなって思ったけどお人形遊びしてくれるんだ。
遊ぼ、遊ぼ」
そう言って手を差し出してワルキューレに近づいていく。
「ふざけるな、行け!」
それを見てギーシュは怒りとともにワルキューレを突進させていく。
「うわっと」
さすがに無防備にそれを受けはせずベルモンドは突き出された拳をよけようと身をひねる。
その結果、
ガシャーーン!

109:ゲーッ!熊の爪の使い魔3/19
08/10/14 21:34:12 A4I8V2Lj
「あーっと、ベルモンドとワルキューレ、もつれ合ってともに地面に倒れたてしまった!
が、単に倒れただけなのだろう、ベルモンドはすぐに起き上がる。
しかしワルキューレも起き上がろうとするがうまく立ち上がれずまた倒れてしまった。
「なんだ、どうしたんだ!?」
「おい、何やってんだよ!」
「お、おい、見ろよ、足のところを」
ギーシュやギャラリーが混乱する中一人の生徒が異常に気付く。
すかさずそれを「実況」が続ける。
「なんと!ワルキューレの足が歪んでしまっている!!
先ほどの転倒で変にひねってしまったのかーー!?」
「なんだよ、手抜きなんじゃないのか?」
「おいギーシュ、ろくにきちんとした錬金もできないのかよ!」
それを聞いた周りから馬鹿にした声が上がる。
「う、うるさい、これならどうだ!!」
ギーシュはそう言うと、立ち上がれないワルキューレをおいて、新たに二体ワルキューレを呼び出しベルモンドへと向かわせる。
「うわーい、今度は二人だー」
しかしベルモンドはまたしてもてってっと近づいてゆく。
そんなベルモンドにワルキューレが拳を突き出すが、それはむなしく宙を切った。
「おおっ、ベルモンド、巧みに二体の間をすり抜けたあっ!」
そして背後に回ったベルモンドは二体の腰にそれぞれ手を回すと、
「楽しーなー、楽しーなー」
スキップしながら二体と一緒にくるくると回り始めた。
「きゃー、かわいーー!」
そんな、クマと青銅の人形が戯れるようにしか見えない図に女生徒から黄色い声が上がる。
しかしギーシュにとっては馬鹿にされているようなものであり、離れようとワルキューレの足を動かす。
だが、それが地面を蹴ることはなかった。

110:ゲーッ!熊の爪の使い魔4/19
08/10/14 21:35:13 A4I8V2Lj
「ああーーっ、いったいどこにそんな力があるのか、ベルモンドに抱えられたワルキューレが宙に浮いているーー」
なんと、ワルキューレは二体ともべとモンドに回されながら持ち上げられていた。
ワルキューレは腕を動かしベルモンドを振りほどこうとするが、
「おっと、いけない」
そのせいでバランスを崩したのか、ベルモンドが転んでしまい、
ドガアァッ!!
「あーーっと、体勢を崩したベルモンドから二体のワルキューレ、
投げっぱなしジャーマン気味に投げ飛ばされ頭から地面に叩きつけられたーー!!」
その二体のワルキューレは、金属製の体からくる体重を受けたことにより、頭部が完全にひしゃげてしまっていた。
無論、もう起き上れはしなかった。
「あれー?お人形さん、動かなくなっちゃったー」
そんな様子を見てベルモンドは残念そうな声を上げる。
「おい、見た目だけじゃなく作りにも凝れよ」
「真面目にやれよ、ギーシュ!」
再び男子生徒から囃し立てる声が起こる。
が、彼らとも黄色い声を上げる女生徒とも違う者たちもいた。

111:ゲーッ!熊の爪の使い魔5/19
08/10/14 21:36:55 A4I8V2Lj
「珍しいわねえ、タバサがこんなのに興味を持つなんて、やっぱりあのクマちゃんがかわいい?」
「確かにかわいいけどそういうわけではない、でもあの使い魔には興味がある」
「なによ、もって回った言い回しねえ。
でもギーシュも情けないわねえ、あんな倒れただけでダメになるようなゴーレムしか出せないなんて」
「倒れただけ、そう見えた?」
「見えたもなにも実際そうじゃない。転んで足ひねったりクマごと倒れて頭打ったり」
キュルケが見たままの感想を述べる。しかしそれに対してタバサは、
「違う、最初はあのベルモンドが倒れるときにワルキューレの足をつかんで
しっかりとアンクルホールドに固めていた。
次の二体も投げ飛ばされるまで見事なジャーマンスープレックスのブリッジを描いている。
倒れた拍子にもつれたとか転んだ際に投げ出されたとかではない」
「えー、ちょっと待って。その前にアンクルホールドとか「実況」も言ってたけど
ジャーマンなんとかってなに?」
「プロレス技の一種」
プロレス、そういえばキュルケも聞いたことがあった。
確か平民の中で現在はやっている格闘のスポーツだったか。
でも、それは、
「プロレス、あれって見せもののショーなんじゃないの?そんな物の技が本当に効くの?」
だがタバサはすかさず反論する。

112:ゲーッ!熊の爪の使い魔6/19
08/10/14 21:38:33 A4I8V2Lj
「確かに基本的には見せもの。でも技の威力は種類によっては本物。
むしろ本気で技をかけると危険だからこそ真剣勝負ではなく
筋書きに沿ったショーとして見せているという部分もある」
祖国ガリアでの立場上危険な任務にたびたび駆り出されるタバサは単純な魔法の知識、技術だけでなく
他の戦闘技術にももしもの対策のため一応の知識を持つようにしている。
それゆえプロレス技の危険性についても分かっていた。
「ええっと、じゃあワルキューレが壊れたのは
ギーシュの作りが悪いからでも打ち所が悪かったわけでもなくて
あのクマちゃんがそのプロレス技ってのを掛けたからって言うこと?」
「そう、あの使い魔は明らかな確信を持って技をかけている。
見た目通りのかわいいクマちゃんではない」

113:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:39:16 6nI5gsio
sien

114:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:39:44 n+hEO10k
「実況」www支援

115:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:39:51 HN8Q2THM
じゃれついてパロスペシャル支援

116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:40:38 6nI5gsio
ゲェーッ!知っているのか!タバサ! 支援

117:ゲーッ!熊の爪の使い魔7/19
08/10/14 21:41:54 A4I8V2Lj
「くそっ、もうお遊びは終わりだ!」
そんな中、ギーシュはそう叫ぶと今度は今出せる限界である
4体のワルキューレを一度に呼び出した。
しかも今度は素手ではなくそれぞれ剣、槍、斧、ハンマーを手にしている。
「ボロ屑にしてやれっ!」
そう言うと一斉に突撃させていく。
四つの武器による一斉攻撃、先ほどのようなくぐれる様なスペースもなく、
今度こそベルモンドを捉えられると思われたそれもやはり宙を切った。
「なんだあーー!ベルモンドが消えたーー!?
い、いや違う、ボールだ、ワルキューレに交じって茶色いボールのようなものが見えるっ!
なんとベルモンド、自分の身をボール状に小さく丸めて一斉攻撃をかわしていたーー!」
「くうーん」
「くそっ!」
ギーシュも手を休めずさらに攻撃を繰り返していく。
だが、ベルモンドはボール状に丸まったままころころと転がり、
ぽんぽんと跳ねて迫りくる攻撃をかいくぐっていく。
「かわいー、クマちゃーん頑張ってー!」
そんな光景にまたしてもベルモンドへ黄色い声が上がり、
「ちゃんとやれよ下手くそー!」
ギーシュを囃すが上がる。
ギーシュはさらに激しく攻撃を行うが逆に冷静さを欠いた結果、
ガスガシャァァッ!!
ベルモンドを攻撃しようとしてかわされ、勢い余って後ろのワルキューレを攻撃してしまった。

118:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:41:59 c7jiWogg
プロレスに造詣の深いタバサwwwwwwwwwwwwwww

119:ゲーッ!熊の爪の使い魔8/19
08/10/14 21:43:20 A4I8V2Lj
「これは痛い!斧を持ったワルキューレ、
他の三体の攻撃を受けてぐしゃぐしゃになってしまったーー!」
「なんだよ、ギーシュ、ばっかじゃねーの!」
「ぎゃはははは」
もはやギーシュへの声は嘲笑へと変わっていた。
ギーシュは唇を噛みしめ倒れたワルキューレを見つめる。
かろうじて人型を留めているだけのぼろぼろのワルキューレ、
これが逆にこちらの攻撃力を証明してもいたがどうしても当たらない。
もっと広く攻撃できるような方法があれば。
土の属性の魔法なら、石つぶてを飛ばすというものがあり、それなら条件を満たしている。
しかし、自分の得意とするのはワルキューレの錬金だ。
それを7体全部出し、しかも先ほど激しい攻撃を行ったため
かなり精神力を食ってしまっている。
この状態で、広範囲に十分な威力で石つぶてを飛ばせる自信はギーシュにはなかった。
くそっ、何か方法は。
その時ギーシュに閃きが舞い降りた。
飛ばすものならあるじゃないか。
「おい、こっちを見ろクマ公!!」
「くうーん?」
ギーシュは剣と槍をもつワルキューレに武器を捨てさせると、
先ほど同志討ちでボロボロになったワルキューレを両脇から抱えあげる。
「青銅の力を見せてやるっ!!」
そして、最後のハンマーを持ったワルキューレがハンマーを大きく振りかぶり、背後から叩きつけた。
ドガァッ!
すでにボロボロになっていたワルキューレはこの一撃でばらばらに砕け散り、
正面のベルモンドへと飛び散っていた。
ガスガスガスガスッ!!
「うわーー!」

120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:44:17 6nI5gsio
らめー!オーバーボディ破れちゃらめー!支援

121:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:44:21 Rp0/PI7B
タバサ、なんというロビンやラーメンマン先生並みの分析力

122:ゲーッ!熊の爪の使い魔9/19
08/10/14 21:45:11 A4I8V2Lj
多少時が戻るがそのころルイズとシエスタはまだ食堂にいた。
決闘に向かうと告げるベルモンドの、これまで見せたことのない迫力に気圧されてしまっていたのだ。
そして、出遅れてタイミングを逃すと一層足が重くなってゆく。
どうしよう、自分のせいで。
行ってどうなる、もうベルモンドはやられてしまっているのではないか。
いやな想像が頭に次々と浮かび、今向かえばそれを現実に
目の当たりにしてしまうのではないのかという恐怖が足を留めてしまっていた。
しかし、真の貴族は立派な行いをするから偉いんだ、
そのベルモンドの言葉がルイズを奮い立たせる。
そうだ、私もそれを目指していたじゃない。
魔法が使えなくても、貴族として立派であろうって。
こんなことをしている場合じゃない。
「行かなきゃ、ほら、あなたも行くわよ。
私たちのために戦ってくれてるベルもん簿をほおっておくつもり?」
「そ、そんなことしません、待っててくださいベルモンドさん」
そうしてシエスタにも声をかけ二人は広場へと向かった。
しかしそこで二人が見たものは、

123:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:46:26 CEzDz2Y3
キン肉マンのテンプレにゼロ魔キャラ入れ込んだだけじゃねえか





・・・・・・・・・・だがそれがいい

124:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:47:03 6nI5gsio
「実況」のメイジと使い魔についてくやしく 支援

125:ゲーッ!熊の爪の使い魔10/19
08/10/14 21:48:07 A4I8V2Lj
全身穴だらけになって立ちすくむベルモンドだった。
「そ、そんな、ベルモンド……」
「い、いやーー!」
そんな二人に何があったかを教えるように「実況」からの声が上がる。
「なんと、ギーシュ!傷ついたワルキューレを打ちすえ、破片として飛散させたーー!
これはまさに、青銅の散弾だーーー!!
これは効いたか!?ベルモンド、微動だにしないー!」
「はははははっ!貴族であるこの僕にたてつくからこうなるんだ、この畜生め!」
そう、高笑いを上げるギーシュに対して、ルイズとシエスタ以外の女生徒からも非難の声が上がる。
「ひどい、なんてことするの!」
「死なないで、クマちゃん!」
一方キュルケ達は、
「あーらら、結局やられちゃってるじゃない。
ドットのギーシュにも負けるんじゃあ、
あのクマちゃんが強いなんてのはやっぱりタバサの思い過ごしだったわね」
「だと、いいのだけれど」
だが、タバサにはまだこれで終わりだとは思えなかった。
これまで死地をくぐった経験が告げている。
あのクマちゃんの中にはまだ何かがあると。

126:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:49:29 6nI5gsio
オーバーボディがボロボロ……!ここでやっぱ正体バレか! 支援

127:ゲーッ!熊の爪の使い魔11/19
08/10/14 21:50:01 A4I8V2Lj
そんなタバサの内心を知る由もなくギーシュは続ける。
「所詮は低能なケダモノにすぎなかったようだね、
ああ、まさに「ゼロ」のルイズの使い魔にふさわしいよ」
「……!」
自分の口上に酔っていたギーシュは気がつかなかった。
このとき、ベルモンドの目に力がこもったことを。
「やめなさい、これ以上私の使い魔を侮辱することは許さないわ!」
そんな中、ルイズは自分の使い魔を救おうと声をかける。
「ああ、無能なご主人様のお出ましかい?
だが悪いね、これはこのクマ野郎も認めた決闘だ。
例え主人であっても口出しはできないよ。
そこでこのクマ公が布と綿のボロ屑になるところを見ていたまえ、
行け!とどめだワルキューレ!」
そう言ってハンマーを持ったワルキューレが一撃を加えようと前に出てハンマーを振りかぶる。
「やめてーー!」
ルイズの悲鳴が響き渡る。

128:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:50:12 B1QBN2Yz
支援クマちゃんが死んじゃうー

129:ゲーッ!熊の爪の使い魔12/19
08/10/14 21:51:08 A4I8V2Lj
が、その時、
「グギャワアーン!」
突如ベルモンドが叫びをあげワルキューレに飛びかかった。
しかも足の筋肉は隆起し、着ぐるみの上からでも足の形がはっきり分かるほどに肥大していた。
バギャ!
そしれそのままワルキューレを蹴り飛ばす。
そのままワルキューレは10メイルは吹っ飛んで行った。
「ああーーっ!ベルモンド、突如生気が戻りワルキューレにドロップキックを叩き込んだー!!
なんという威力だ!青銅製のワルキューレがまるでおもちゃの人形であるかのように軽々しく吹っ飛んでいくー!!」
もちろんこれだけでは終わらなかった。
「グギャワアーン!」
ベルモンドは残る二体のワルキューレのもとへも向かっていく。
その二体は先ほどボロボロになったワルキューレを抱えるため武器を置いてしまっていたため、
拳での攻撃を繰り出すがあっさりかわされると一体が懐に潜り込まれる。
ガスッ!
そして腹部へのひざ蹴りを食らって片膝をついた所に、
ドガアアァッ!
その膝を踏み台にして飛び上がったベルモンドからの強烈な飛び膝蹴りが頭部に叩き込まれた。
「おおーっ、これはすごい、膝をつかせたところへ流れるようにシャイニングウィザード
(相手の膝などを踏み台に飛び膝蹴りを仕掛ける技)
が叩き込まれたー!!」

130:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:51:15 c7jiWogg
ガワが取れるwwwwwwwトラウマもんだぞwwwwwwwwww

131:ゲーッ!熊の爪の使い魔13/19
08/10/14 21:52:19 A4I8V2Lj
これは先ほどのドロップキックと違い斜め上からの攻撃であったためそこまで吹っ飛びはしなかったが、
それでもワルキューレは2-3メイルは地面を転がって行った。
ゴスゥッ!
さらに残る一体へと襲いかかるとラリアットを叩き込む。
倒れたところにすかさず両足を取ってわきに抱えるとそのまま自分を軸に振り回した。
ミスミスミスミス……
そして勢いが付いてくると、何とそのまま上へと向かって投げ上げた。
「うわあーー!!これは信じられない!!
ラリアットで倒したワルキューレをジャイアントスイングにとらえたかと思うと、
なんと横ではなくて上に!投げ飛ばしたぁーーー!!!」
「う、うあわああぁー!」
次々と、もはやだれの目にもわかるような力でワルキューレを倒されたギーシュは恐慌状態になり、
自分を守らせようと先ほどシャイニングウィザードを受け倒れたワルキューレを立ち上がらせた。

132:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:53:11 6nI5gsio
ヤバい!オーバーボディの内側でウォーズマンスマイル入ってる! 支援

133:ゲーッ!熊の爪の使い魔14/19
08/10/14 21:54:27 A4I8V2Lj
が、その瞬間ベルモンドが正面から組みついてベアー・ハッグで締め付ける。
「くそっ、振りほどけ、ワルキューレ!」
ギーシュはそう命令を与えるが、そのかいもなく、
ミシミシミシミシッ!!
「うわああぁぁー!!なんということだ!
ベルモンド、ベアー・ハッグで青銅製のワルキューレを腕だけでなくボディまでもへし折っていくーー!!!」
「ゴギャアアアアアァァァーーーーッ!」
一体どれだけのパワーが必要なのか、
投げ飛ばしたり蹴り飛ばしたりというように勢いをつけるわけでもなく密着状態から締め上げているだけで、
ワルキューレの体は軋み、歪み、ねじ曲がっていった。
「ね、ねえ、クマちゃんが元気だったのはいいけど、なんだか変じゃない?」
「う、うん。私も思う、何だか怖いような……」
そんな様子にベルモンドに黄色い声をあげていた女生徒たちも違和感を感じ始める。
が、そんなものは無視して、
「うおおーーっ、いくぜーー!」
そう、アグレッシブな声を上げると、ワルキューレをベアー・ハッグに捉えたまま、
「ゴギャア!」
上空へと飛びあがった。
さらにその上からは先ほど投げ飛ばされたワルキューレが頭を下に落下してくる。
そして、
「ロンリー・テディー・クラッシャーーー!!!」
ガッグゴオオォォンン!!!!

134:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:55:30 6nI5gsio
ああ、ガワが取れちゃう…… 支援

135:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:56:01 Rp0/PI7B
ちょwロンリーw

136:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:56:42 Cs9agPiD
パンダだってあんなに可愛くても凶暴な動物なんだぞ支援

137:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 21:57:08 GTKGwqOM
やべえええええ、ついに出るのか中身が!?支援

138:ゲーッ!熊の爪の使い魔15/19
08/10/14 21:57:46 A4I8V2Lj
「あああぁーーっ!こ、これはなんという凄まじい大技!!
投げ上げられ落下してくるワルキューレとベアー・ハッグに捉えて上昇させたワルキューレの頭部同士を
空中で激突させたーー!!
これはもはや「かわいいクマちゃん(チャーミング・ベアー)」などではない、
これはまさしく、「地獄のクマ(ヘルズ・ベアー)」だあぁぁーーーっっ!!!」
そのまま、完全に破壊された二体のワルキューレはギーシュの手前に落下し、
先ほど投げっぱなしジャーマンで倒された二体に折り重なるように倒れた。
「ゴギャ」
そしてベルモンドもその後ろに降り立つと、
ドバドバドバ!
突如体から何かを放出した。
「うわっなんだ!?」
それは一部観客にまで降り注ぎ混乱を呼んだが、
タバサはそれと風で防ぐとキュルケと二人で飛んできたものを見つめた。
「青銅の破片」
「それにこっちの木片ってルイズが授業で吹っ飛ばした机とかの破片?
じゃあ、あのクマちゃんはルイズの起こした爆発で吹っ飛んだ破片も
ギーシュがハンマーで飛ばした青銅の散弾も体に通さなかったて言うこと!?」
「そうなる、恐るべき頑強な肉体」

139:ゲーッ!熊の爪の使い魔16/19
08/10/14 21:59:14 A4I8V2Lj
この事実を前にタバサの声にも珍しく感情がこもる。
しかしそんな考察などしている余裕のない者がいた。
ギーシュである。
この間に、さきほどドロップキックで遠くへ吹っ飛んだワルキューレをようやく自分のもとへ戻すことはできていたが、
たかが一体ではこのクマを相手に何の役にも立たないことはもはや明らかだった。
そんな彼を睨みつけるベルモンド。
「ゆ、許してくれ、僕の負けだ!」
半ば無意識にギーシュはそう言っていた。
「ほんと?」
「あ、ああ。約束通りキチンと謝りもする」
「そう、じゃあみんなに謝りに行こう」
そう言うとベルモンドの目も穏やかになりギーシュのもとに近づいていく。
確かにこの降参にうそ偽りはなかった。ギーシュの理性はこの実力差に間違いなく敗北を認めていた。
しかし感情はそうではなかった。
ゼロのルイズの使い魔のクマ公ごときに負けを認めることを受け入れられずにいた。
そしてその想いが、折り重なって倒れる4体のワルキューレをベルモンドがまたごうとしたときにある閃きを与えたのだった。

140:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:00:23 6nI5gsio
らめぇ!ギーシュらめぇ!オーバーボディ剥いじゃらめぇ! 支援

141:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:00:32 B1QBN2Yz
支援ギーシュそれは死亡フラグだ

142:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:00:38 hovxNWLe
ドロップキックで吹っ飛んだのにまだ原形をとどめていたのか!
支援

143:ゲーッ!熊の爪の使い魔17/19
08/10/14 22:00:52 A4I8V2Lj
「そ、そうだ、これだ!くらえクマ野郎!!」
そう言うや否やギーシュは残る精神力を振り絞り、ベルモンドの足元のワルキューレを足に絡みつく青銅の塊に変えた。
「ク、クゥーン」
ベルモンドは当然ふりほどこうとするものの、さすがにワルキューレ4体分の重さに完全に足は固定されてしまっていた。
「ははは、どうだクマ公!これが偉大なる魔法の力だ!
メイジであるこの僕にたてついた愚かしさを思い知るんだよぉっ」
ガスゥッ!
そう言うと最後に残ったワルキューレがベルモンドに正面からハンマーを叩きつけた。
「キュウーン」
しかもこれだけでは終わらず、
ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスゥッ!
何度も何度もハンマーを叩き込んでいく。
「あああー!これは残酷!足を固められたベルモンドに対して、
さきほどワルキューレを散弾に変えたハンマーの一撃が、直に! しかも何度も叩き込まれるーー!!」
その一撃一撃はベルモンドの着ぐるみを破り、綿と血しぶきを舞わせていく。

144:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:01:39 GTKGwqOM
戦争男の微笑が見れるのか…支援

145:ゲーッ!熊の爪の使い魔18/19
08/10/14 22:01:41 A4I8V2Lj
「クゥーンクゥーンクゥーン!」
これにはベルモンドも悲鳴を上げる。
「卑怯よー、ギーシュ!」
「やめてー!クマちゃんを殺さないでー!」
非難の声が上がるも、食堂の時のようにまたしてもそれらは逆にギーシュをヒートアップさせていく。
「うるさい!黙れ!こんなクマ野郎にさっきからキャーキャー言いやがって!
こんなボロ屑の畜生が何だって言うんだ。こんなやつ所詮は血にまみれた布と綿に過ぎないことを教えてやる!」
そう、普段は決して口にしないような言葉を吐くとさらにベルモンドを打ちすえる。
ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!
「いやーー、もうやめてーーー!!」
その惨状にルイズはひときわ大きな声を上げる。
それすらも無視して打ち続けるギーシュにベルモンドの弱弱しい声が掛けられた。
「ね、ねえ、さっき自分の負けだって……みんなに謝るっていたのはウソだったの……?」
「はははっ、そんなの当たり前だろう。
どうしてこんな畜生ごときに約束など守らなければいけないんだい!」
「ど、どうしても謝ってくれない……?」
「まだ言うのかい?そんなの当たり前だろうがーー!」
そう言ってワルキューレはひときわ大きくハンマーを振りかぶる。
「………………そうか、もういい」

146:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:02:10 6nI5gsio
しかし、携帯でなければ1レスにもっとまとめられると思うですよ 支援

147:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:02:37 hovxNWLe
ギーシュ…死んだな

148:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:03:18 6nI5gsio
【自業自得】ああ、ギーシュ……追悼スレ22【因果応報】 支援

149:ゲーッ!熊の爪の使い魔19/19
08/10/14 22:04:33 A4I8V2Lj
ザグ!
だが、次の瞬間、ベルモンドの胴体を突き破って回転する漆黒の何かが飛び出した。
そして、
ギュガガガガガガガ!
それはそのままワルキューレの胴体をえぐり飛ばすとギーシュの目の前に着地した。
そこには、左手の甲に4本の鋭い爪をもち、表情のない仮面をつけた、
鍛えこまれ抜いた肉体をもつ漆黒の戦士が降り立っていた。
この出来事を前に誰一人として声を上げられるものはいなかった。
ギャラリーも「実況」もシエスタもギーシュもルイズでさえも。
その静寂の中、
コーホーー
彼の呼吸音だけが広場に響いていた。

150:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:06:24 hovxNWLe
ゲェー!?ベルモンドの中から謎の超人が!?


151:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:07:26 vlHbIb9/
コーホー支援

152:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:08:01 6nI5gsio
ウォーズマンスマイルktkr 乙でしたー

153:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:08:04 B1QBN2Yz
イヤァーーーーっ!!
クマちゃんの中から残虐そうな怪人がーっ

154:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:08:56 c7jiWogg
とうとう出てしまったw乙wwwwww

155:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:09:03 89ZJS9BB
中の人って血しぶき出るっけか?
まあどうであれ笑ってたらギーシュ死亡確定だな


156:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:09:38 kix1YsXY
ゲェーッ!機械の超人!
ついに出てきちまったかwwww

157:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:09:45 9IReH0ji
ああ、ついに中の人がwww
これは乙せざるを得ない

158:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:10:02 L4CucRdQ
ファイティングコンピューターがとうとう出てきたか

159:ゲーッ!熊の爪の使い魔
08/10/14 22:10:25 A4I8V2Lj
以上で投下は終了します。
プロレスはハルゲニアでも流行ってることにしてみました。
というわけでこの作品内では皆さん普通にプロレス用語を使ってもおかしくないということで。

160:鋼の使い魔(前書き) ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:10:27 9MwjkrRV
ウォーズマンの人、おつかれですー。
んー、でももう少しコンパクトにされるとやはりよろしいのではと愚考。
でもこの後のルイズの対応が非常に気になりますね。
では予告。22:30から。

161:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:14:08 hovxNWLe
ギュス様支援

162:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:19:56 CEzDz2Y3
>プロレスはハルゲニアでも流行ってることにしてみました。

志村ー
ハルケギニアー

163:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:20:09 n+hEO10k
お!待ってました!

お姉さまとのトレンディ・ドラマに期待。

164:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:20:17 LgPGcuRk
ミスロングビルっぽいAA見つけた
               _,,,,__/;;ヽ
             ,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;丶;;;ヽ
           /;;;;;;;;::::::;;;;;;;;;;;;;;;;ヽノ
           i;;;;|.      !|;;;;;;;;;;;',
          i;;;;;|-   ー- |;;;;;;|;;;;;|
          |;;;r'7o、 r''て '|;;;;;r^ v
          |;;弋_タ ̄ヽ、ニ|;;;;レ ノ
          |;;;;;',  '_  |;;;;;/、
          |;;;;;|\ ` ' /|;;;;|| )
          |;;;;;;|ノ >=--.|;;;|:|ヽ_
         /|;;|;;i:':´ ∩: : :!;;|:|: : : `.''⌒ヽ
        /: : :|;|:!:|: : :∪: : !:ノ: : : :/: : : : : :i
        /: : : /: `: : : : : : :/: : : : :!: : : : : : :',
        /: : : /: : : : : : : : : : : : : : :|: : : : : : : ',
      ./: : : :{: : : : : : : : : : : : : : : : !: : : : : : : ',
      ヽ: : : ヽ: : : : : : : : : : : : : : : :i: : : : : : ;ノ

165:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:22:07 fxziop7p
コーホーで死んだ
クマちゃんからの超進化っぷりに周りは絶対ついてけないwww

166:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:31:19 HN8Q2THM
戦争さん乙

・・・なんか所々あぼーんしているレスが

167:鋼の使い魔(前書き) ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:32:33 9MwjkrRV
では投下していきます。

 昼下がりのトリステイン魔法学院。
 ルイズは一人、風通しを良くした自室で机に齧りついていた。
「ん~……う~……ん~……」
 つらつらと便箋に書き連ねては、クシャリと丸めて捨てる。
 床にはそんな具合に丸められた便箋があちこちに転がっていた。机には、開かれた詩集と『始祖の祈祷書』、そしてペンに綺麗な便箋が置かれている。
 
 ルイズはギュスターヴ達が王都に出かけている間、部屋に残って祝詞を考えていたのだった。
 座学では優良な成績を誇るルイズだったが、なにぶん、詩というのは感性の世界である。魔法という世の真理に触れられない、という潜在化のコンプレックスは、
自然ルイズにそれらへの食指の発達を阻害する一面があり、なかなか名文、美文が思いつきもしなかった。
 しかも今回は王家の婚儀で使う詩である。色々と制約がつく。使ってはいけない語句、使わなければいけない語句、韻の踏み方、最低字数、最大字数、…と、
課題は山ほどある。
 流石のルイズも参り始め、耳から煙が湧き上がりそうだった。
 …そして不意に、ルイズの中で何かが切れる。
「あー、もう!部屋に篭っててもいい語句なんて思いつかないわ!…そうよ、外に出ましょう。外に出て新鮮な風と緑に触れればきっといい文句が浮かぶわ!」
 確かモノの本にある有名な文豪は、日がな領地の緑に戯れて文章を作るというではないか!
 …と、いささか逃避気味に結論を出したルイズ。祈祷書と便箋、そして携帯用のペン及びインク壷を持って部屋を出る。
 学生寮の外、学院敷地内の広場の一つに出た。王家の婚儀が近い事もあってか、学院の授業は近頃半分ほどに減らされ、代わりに生徒や教師の一部は、
こういった時に家門が王国より架せられる仕事を持つ者もいるために、王宮に借り出されている。
 しかしそれほど身に忙しい用事のない生徒達は、降って湧いたのどかな時間を思い思いに過していた。平時のタバサのように図書館に篭る者もいる。
 広場に目を移せば、そこにも学院の生徒はいる。車座になっておしゃべりに耽る者。木陰で使い魔とともに午睡に興じる者。
 広場の一角では、男子生徒二人が杖を抜いて対峙していた。決闘…ではない。
 二人の間には線が引かれ、その間を鳥の羽で作った玩具が行きつ戻りつしている。向かい合う両者が浮遊【レビテイション】で羽を拾い合い、
お互いが線の向こう側に落そうと競争する。最近学生の間で逸り始めた遊びらしい…。
 天気も良く、のどかな風が吹いて心地よい。肺一杯に空気を吸って気持ちを入れ替えたルイズだったが、残念ながらその場で名文の類は思いつかなかった。
 そこで学院にいくつかある広場を練り歩いてみる。その内の一つ、目立たない壁際の木陰でケティとモンモランシーがなにやら
絡み合って寝転んでいたような気がするが、多分気のせいだろうと思う。
 
 そんな具合で、最終的に足が向いた先は、このところよく通い始めたコルベール師の研究塔前だった。
 
 
 
 『下準備の日々』
 
 
 


168:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:33:09 HN8Q2THM
支援

169:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:34:17 9MwjkrRV
「習慣って怖いわねー…」
 とはいえ、仮にもコルベールは教師だ。何かしら助力を得られるかもしれない。そう思って塔の中を覗いたが、中は無人。
その代わり、塔の脇に建てられた大きな天幕から、定期的に火の粉が吹き上がっていた。
 近寄ってみると、天幕の中に作られた溶鉱炉のそばで、コルベール師がえっちらおっちらと箱ふいごの取っ手を押し引きしている。
押すとそれに合せて、溶鉱炉の天井から火の粉が吹き出ていく。
「ふっ、ふっ、…おや、ミス・ヴァリエール。今日は、一体、何の、用ですかな?」
 小刻みに息を切りながらコルベールはふいごを動かしている。
 用と言う用があってきたわけではないルイズは、少し困った。
「いえ、ちょっと近くまできたものですから…」
 といって、天幕の影に置かれたテーブルセットの一角に座る。
 座ってルイズは暫く、コルベール師の動きに合せて動く溶鉱炉を眺めていた。ふいごの運動に合せて火を噴く溶鉱炉は、ふと、昔見た解剖学書に書かれていた
心臓の挿絵を想起させる。脈に合せて熱せられた空気を送る、鉄の心臓…。
「…ミスタ・コルベールは詩を作られたりはしますか?」
 問われたコルベール。少し手を止めて答えた。
「詩ですか?…生憎と文学の素養は、持ちえませんでしてな…」
 暗に自分が粗忽者であると言っているようで、コルベールは苦笑した。ルイズはそこまで表情を読めず、言葉の表面だけを受け取る。
「そうですか…」
 ルイズが落胆しているようで、何か声をかけようとしたコルベールだが、溶鉱炉が冷め始めていると見て急いでふいごを動かし始める。
「そういえば、貴女は、王室の婚儀の、巫女役に、選ばれたのでしたな」
 教師の中でもオスマンと繋がりの深いコルベールはそれを知らされていたのである。
「はい。家名の恥にならぬよう、大役を果たして見せます」
「そうですか、ふっ、私は助力、できませんが、オールド・オスマンに、やはり、聞かれると、よいでしょうな」
 結局オスマンの手を借りた方が良いらしいと、今日の散策で結論付けられてしまったルイズであった。
 
 そのまましばらく、コルベールの溶鉱炉を観察していたルイズ。ふと疑問が浮かんだ。
「ミスタ・コルベール。そもそもこの溶鉱炉って何のために作られたんですか?」
 最もな話で、ルイズは溶鉱炉の落成を見たが、何のために作られたのかはさっぱり知らなかった。ただ、ギュスターヴが協力しているらしい、とだけは察知している。
「ん…そうですな。しばしお待ちを…」
 ふいごを止め、そばの麻袋からスコップで石炭を掬って溶鉱炉の中へ投下し、コルベールはやっと体を止めた。
「ふぅ、やはり人力では限界がありますな。塔に風車をつけてそこから動力を得ますか…」
 後退した額には玉の汗が浮かび、コルベールは懐のハンケチーフでそれを拭った。
「…さて。この溶鉱炉はですね、まず材料を用意する為のものなのですよ」
「材料?」
「ええ。この溶鉱炉で作った鋼材を使って、私はやりたい事があるのです」
 ルイズには俄に理解しがたい志向だった。例えるなら、普通パンを焼く時に小麦粉を求めるが、この場合まず小麦を畑で作るところから始める、ということである。
「残念ながらトリステイン産の鋼材では用件を満たさないのです。ですから自分で作ることにしたのですよ」
「はぁ。…じゃあ、その鋼材でやりたいことってなんですか?…その、姉様は外道な研究と言っていましたが…」
「ははは、確かに、エレオノール君のような生粋の魔法研究者から見れば、私の研究は外道もいいところでしょうな。
…私はね、魔法に寄らない技術の開発をしているのですよ」
「魔法の力によらない…?」
 時にこの教師は貴族らしからぬ、メイジらしからぬ事をいう。柔軟である。ルイズの知性が刺激されうることも多岐に渡る。
 コルベールは続ける。「例えばメイジは浮遊【レビテイション】や飛翔【フライ】で空を飛ぶ事が出来ます。といっても、精々地上40メイルほどですが…。
しかし平民の、魔法の使えない人々にとっては、どうやっても空を飛ぶ事が出来ない」
「あたりまえじゃないですか」
「そこです。その『当たり前』というのは、魔法を使うことが前提だからですよ。技術の全てを魔法に傾注する事を私は良しとしません。
世の理の全てが魔法であるというのは、遺憾ながら貴族の持つ幻想であると私は思ってますぞ」
「はぁ」コルベールの思想を受け止めきれないルイズだった。

170:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:36:12 9MwjkrRV
 コルベールの思考、実に柔軟である。縛られぬ小貴族だからこそ、貴族の特権たる魔法にこだわらないのか。はたまた、うやむやに伏せられる半生に、何を見たのか…。
 ともかくも、コルベールの思想はトリステインの、いや、ハルケギニア全域のメイジと貴族にとって危険極まりないものであろう。ルイズがそれを聞いても判然としないのは、やはり魔法の使えない『ゼロ』だからなのかもしれない。
「今の私の目標は『魔法を使わずに人を空に飛ばすこと』です。…といっても、現状の計画では一部に魔法を使わざるを得ないのですが、ゆくゆくは全て、非メイジの労働力で作成が可能なものを作り上げるつもりですぞ」
「本当にそのようなことが可能なんですか?」
「ははッ、ミス・ヴァリエールは鳥や蝶も魔法で飛んでいるとお思いですか?」
 はっとするルイズ。以前、ギュスターヴにも似たようなこと言われたことがある…。
「まッ、夢物語の様でもありますし、普通のメイジからすれば異端の研究と謗られても仕方がありません」
 とはいえ、コルベールの目には背徳に慄く素振りなど欠片もない。彼は夢見ているのだ。いつかメイジと非メイジが互いの技術を競い合い、社会がより円満に回転する未来を見たいと願うのである。
 ルイズは思わず、そんなコルベールの一旦を垣間見たのだった。
 
 
 さて、学院の散策を終えて部屋に帰ってきたルイズ。結局、詩の新しい一行が思い浮かぶことはなかった。
 部屋の前に立つと、人の気配がする。そっとドアを開ける。
 中では、いつもの場所にギュスターヴが座っている。以前は床にべた座りだったが、何処からか調達した丸椅子に腰掛け、まんじりとせず瞠目していた。しかし、ルイズが部屋に帰ってきたと見ると、目を開いて、朗らかに笑った。
「お帰り、ルイズ」
 思わずルイズの頬も緩んだ。
「ただいまギュスターヴ。…お店の方はどうだったの」
「順調な滑り出しだったよ。…ちょっといざこざもあったが」
「?」
 どこか話しにくそうにするギュスターヴである。
「まぁ俺のことはいい。ルイズは祝詞ってやつができたのか?」
「まだぜーんぜんよ…。どうしたものかしら」
「まだ時間はあるんだろう?ゆっくり考えればいいだろう」
「そうね。…ところで、ギュスターヴは…」
「生憎詩の才能はないぞ。そのあたりは全部友人に任せてたから」
「あらそう…」
 ルイズの落胆は深い。
 若い頃はケルヴィンに手紙の代筆を頼んだ事もあるギュスターヴだった…。
 
 
 


171:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:37:21 hVw9Nchr
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172:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:38:05 9MwjkrRV
 夕刻の王都トリステインの王宮。通廊という通廊には魔法で設えられた尽きないランプが灯されていく。
 通い詰める官僚たちは連日部屋に篭り、三国不可侵条約のすり合わせや、婚儀の準備などで大忙しである。
 王女アンリエッタもまた、婚儀の為のドレス合せや何やらで引っ張り回されていた。
 
 「ふぅ…」
 やっと一日のお努めが終り、王宮の内部―王族一家の私空間である―に引っ込んだアンリエッタ。その目は自然と、指に嵌めた『風のルビー』に向かう。
「お疲れのようね、アン」
「お母様…」
 振り向けばトリステイン女王、母マリアンヌが自分を見つめていた。政務らしい政務の殆どを自分を含めた他者に押し付け、一人自分は
私室で夫を思う寡婦として暮す母…。
「この婚儀でトリステインが救われるのだと思って頂戴」
 どこか哀れむように娘を見るマリアンヌ。まるで他人事のように聞こえたアンリエッタの脳裏がささくれる。自然、口を出る言葉は針を含む。
「トリステインの何を守れると言うのですか。ゲルマニアから兵を借りたとしても、戦端が開けば結局、トリステインの民草の血は流れざるを得ません」
「ゲルマニアと繋がればアルビオンの愚か者とて安易に手は出せませんよ。それを察してアルビオン側から和平の打診があったじゃないですか」
「王家を蹂躙した連中の言葉など信用できるものですか」
 座るアンリエッタの肩に手を置くマリアンヌ。ふっくらとした、穢れの無い手である。
「貴女がウェールズ殿下と親しくしていたのは判っていたわ」
「…!」
 きゅっ、と手のひらを片手で握り締める。
「あの人が生きていれば王子を産んで貴女に幸せを与えることも出来たのでしょうけど、今となっては過去の事。忘れなさい」
 …なんと無責任な。握り締める手に力が篭る。
「……全て貴女のせいだわ、お母様。貴女が王子を産まないから、貴女がもっとこの国を盛り立てないから、私は今……」
 その先が言葉にならない。ならなくて俯き、殺すように泣いた。
「私は貴女が願うように、強く生きられるでしょうか…?」
 か細く、つぶやくアンリエッタの言葉を、『風のルビー』は静かに聴いていた…。
 
 
 
 夜も更けて月が天頂を昇りきる頃。神聖アルビオン共和国、ロサイスは一部を除いて夜の帳の中であった。
 ロサイスはアルビオンの中でも古くから造船、特に軍艦の建造で名を残す都市である。
 内乱終息後、ロサイスは消耗した空軍が注文した建造や改修、修理で活気づいていた。職人にとってお上の戦争よりも仕事が第一である。
 
 そのようなロサイスのドックの中でも最も大きなものの一つに、『レキシントン』が停泊していた。
 ニューカッスル攻防戦において船体が受けた損傷は、既に8割ほど修復を終え、現在は皇帝クロムウェル傘下の技術者集団考案による『新兵器』実装の為の
艤装に取り掛かっていた。
 今朝方もクロムウェルがわざわざ視察に訪れ、『レキシントン』艦長、現在は艤装主任に就いているヘンリー・ボーウッドによる艦隊整備の進行状況の説明を受けていた。
「余の考案せし『火竜弾』はどれだけ載せられるかね、ボーウッド君。」
 ボーウッドが答える。「現在の生産状況と弾薬庫の改装計画から、従来砲弾10に対して1から3の割合で積み込める計算になっています」
 クロムウェルは眉をひそめる。くどいほどに顔を憂いで染めてボーウッドに語る。
「それは少ないぞボーウッド君。余と余の議会が企画した『親善訪問』では従来砲弾10に5は必要なのだよ」
「…恐れながら閣下。我がアルビオン艦隊の腕を以ってすれば、新兵器に頼らなくとも従来砲弾で事は達成できます」
 ボーウッドはかねてより聞かされていた『親善訪問』の内容を思い出して顔をわずかに曇らせた。
「ならぬぞボーウッド君。計画通り、従来比5は搭載するように。…なに、場所が足らぬなら砲を下ろせばよい」
「……は」
 所詮ボーウッドは軍人である。上が首を振るままに働くのみだった。
 

173:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:38:35 hVw9Nchr
支援

174:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:40:26 9MwjkrRV
 さて、そのような一幕もあったロサイスには、駐留するアルビオン軍向けに建てられた兵舎がある。その中の一室から、男の呻き叫ぶ声が漏れ聞こえる…。
「うぅ…あぁ!ぐあぁぁぁっ!!」
 男は明かりのない部屋でテーブルに置かれた瓶やグラスを腕で払い飛ばす。床に落ちて音を立てて砕け散るガラスの音が続く。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 椅子にもたれかかって男はうなだれていた。夏には少し早いはずなのに、上半身にはシャツの一枚も羽織っておらず、さらに身体は汗で濡れていた。
 男は左腕をぎこちなく掲げては、それを掻き抱いたり、振り回したりしている…。
「随分荒れてるねぇ色男」
 男…ワルドが振り向くと、部屋の扉が空けられてローブを纏う女が壁に寄りかかっていた。
 フーケである。アルビオンの内乱が終わったと聞くと、ラ・ロシェールからアルビオンに渡り、レコン・キスタ内の符丁を使いつつこのロサイスまでやって来ていたのだった。
「失せろ盗賊。お前にもう用はない…」
 濡れたグレーの髪が顔に張り付いているワルド。その髪の根元は…白くなっていた。
「私だって用はないよ。ただ、挨拶代わりに顔を出しに着ただけさ。…それにしても、どうだい?片輪の仲間入りを果たした気分は」
 フーケの口角が悪意を満ちてつり上がっている。その目はワルドの新たな左腕を見ていた。
 彼女の両脚もまた、ワルドの左手と同じく作られたもの……義足である。その芯材に魔法の杖と同じ技法が施されており、素手でも魔法を使うことが出来る代物である。
 ただし、フーケは自らそれを欲したわけではなかった。監獄から脱出した時、既にその両足は血が滞り腐り始めていた。
ワルドはトリステイン内に潜伏する親レコンキスタ勢力に要請し、義足を与えたのだった。
 その手術の折、ワルドはスクウェアメイジという技量を買われて、自らフーケの脚を切り落としたのだ。
「無くした腕が恋しいかい?眠る夜にふと、既にありもしない指先が痺れたりするだろう?」
 例え腐り落ちると知っていても自分の身体の一部を棄て去るのは精神を病む。フーケは新たな両脚が生み出す『無手による魔法』と
メイジとして破格の『脚力』を手にしたが、反面、無くした脚の代わりである義足に尋常ならざる依存心を芽生えさせていた。
「…常に油鍋で煮込まれているかのようだ」
「ほぅ。そりゃあいい」
 ケタケタとフーケが哂う。
 その時、ワルドがバネ人形のように椅子から飛び上がり、フーケを銀の左腕で壁に叩き付けた。
「がうっ?!」
 金属特有の冷たい質感の指先がフーケの首にめり込んでいる。
「お前のような薄汚れた盗賊と一緒にするな。お前の足はお前自身の責任で失ったものだろう。俺は違う。あのような、魔法も使えぬ使い魔如きにっ!
あの野蛮極まる剣にっ!…判るか?俺の気持ちが、俺の屈辱が、俺のこの煮えたぎる怒りがお前ごとき盗賊に判って堪るか!!」
「がっ…あ゛ぁっ…」
 指先がフーケのしなやかな首を締め上げ続ける。フーケの口先から舌が零れ、潰される気管から笛のように空気が漏れている。
 憤りのままにフーケを締め上げるワルドの左腕。その付け根の触手が不意に動いた。
「がぁぁぁぁぁ!!」
 たちまちワルドは叫び声を上げて悶え狂う。意識の落ちる直前でフーケは解放された。
「かぁ!はぁ!はぁっ…はぁっ……ちっ、精々その立派な左腕で生きながらえるといいさ。裏切り者のグリフィン隊隊長さんよ」
 捨て台詞を吐き捨て、フーケは逃げるように部屋を出て行った。
(チッ…何か金目の物があればせびってやろうと思ったんだけど、失敗だったね。…こんな形(ナリ)じゃ、あの娘に会いに行くのも、な…)
 
 また、月明かりだけの暗い部屋で、ワルドは窓から見える月に向かって、その銀の左腕を掲げていた。
「ふふふ…はっはっはっ…クロムウェルから貰い受けたこの左腕で…俺は…世界を手に入れるのだ…はっはっはっはっは…!!」
 その両目は双月を映し込み、炯炯と暗い炎を灯している…。
 いみじくも、ワルドもフーケと同じく、身体の欠損によって心を壊し始めていた…。

175:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:43:14 MtIL0sX6
支援

176:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:44:08 E+hShXU3
支援

177:鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk
08/10/14 22:44:47 9MwjkrRV
投下終了。今回は前回出なかった人たちがほぼ同時刻にどうなっていたか、ってところですかね…。
ぁー、最近読んでる「紺碧の艦隊」の影響が各所に見られます。反省…。

ぇー、つきましては、付録といたしまして『鋼の使い魔』用王都の簡略ながら地図を作成しました。
極めて粗雑ですが大まかにわかってもらえたら嬉しいかなぁとおもいます。若干重たいですが、ペイントで書いたものなのであしからず…。
URLリンク(roofcity.hp.infoseek.co.jp)
ファンタジー世界を描写する時に地形を念頭に置くと少し違った見方が出来ていいですね。王都というならやはり川が近くにあると考えました。
他にも地図めいたものはぽつぽつ作成していたり…。でも、プロットも未だ未完…。

178:THE GUN OF ZERO 10 インセクト・ケージ(0/2)
08/10/14 22:50:22 n+hEO10k
鋼の人乙ですー。

って言うかすげぇ!地図とか!
そこまで考えてるのか!脱帽ッス……



たぁいむだぁいばぁあ~おぉお~れぇはぁ~

そして一日に三度投下するのも私だ……!
先に誰かいらっしゃらなければ22:55頃より……

今回は幕間的な短めのお話です。
順調にテンプレをこなしている久保ですが、このままでは戦力が圧倒的すぎて

5万?7万?テトラクテュス・グラマトンしてやんよ

                     / /  丿 :
                   //ミ /_,. -;=''" _,
                   // '-'"`" -‐ニ‐"___=__--_ __ _ __ ___ _____
    /ノ         |\ :/レ    ____-__-__-__=_--_-__=__=_=_=____=__--
  / \   \_\_ / .,/′ ミ   : =  _-
 /    \ (  ゚∀゚)  ; i:::″  ;ミ  二 __=__--_ __ _ __ ____-__-__-__=
(   (    ⊂ ◎⊃ )..!::^:     三____-__-__-__=_--_-__=__=_=_=____=__--
 ∨⌒\ /   |   | ⌒!::^:   ミ) ≡ _ __ _ __ _
     ∨    し ⌒J   i:: :: :  ミ    _-__-__-__=_--_-__=_=_=___
                 ヽ  ヾ ) ) ヽ_ __ _ __ ___ _____-__-__-__=_--_-__
                  ヾ\\:  \,. -;=''" _,.-;-
                   \ |\  :: |i''-'"`" -
                    丶 :: ,. -;=''"

するのが目に見えているので敵にも梃子入れしておきます。まぁ、前フリみたいなモンですね。

179:THE GUN OF ZERO 10 インセクト・ケージ(1/2)
08/10/14 22:54:54 n+hEO10k
探索一日目。
 宇宙をディス・アストラナガンで飛びながら、クォヴレーは先程から気になっていることがあった。
 周りにあるのが若く、小さな星ばかりなのだ。
 しかも、どれもこれも軽元素ばかりからなる種族Ⅱの星。
 ハルケギニアを含む大地を持つ惑星の親星たる恒星は、もちろんのこと種族Ⅰだったが、それ以外に重金属を含有した恒星が見つからない。
 そして、尚奇異なことに、それらの恒星には、一つとして惑星を持つものがなかった。

探索二日目。
 その日の探索で、クォヴレーはあり得ないものにたどり着く。
 世界の果て。
 漆黒の宇宙の先。本来なら、常に膨張を続けていて観測不能であるはずのそこは、微動だにせぬダークマターの壁だった。
 しかも何故、これがこんなにも近くに存在しているのか?
 あの星を出てから、ほんの1光年しか移動していないのに。

探索五日目。
 クォヴレーは青い顔をしていた。
 ディス・アストラナガンの目前には、やはりダークマターで構成された壁。
 光を反射しないその壁は、ハルケギニアから仰げる太陽を中心として、東西南北四方八方360度、ありとあらゆる方向に張られていた。
「まるで……箱庭だな」
 その大きさ。僅か、半径1光年。
 銀河一つすら内包出来ない箱庭だ。
 そして、その箱庭で生きる者が居るのはあの惑星ただ一つ。
「箱庭で生かされるモルモットたちか……」
 何故に見る星見る星、種族Ⅱの星ばかりなのか。そして何故一つとして惑星を連れているものがないのか。それが判った気がした。
 この恒星達は全て書き割りだ。
 ハルケギニアの大地から見て、夜空が星で溢れているように見せかけるためだけに用意された舞台なのだ。種族Ⅱの星ばかりなのは、おそらくただ単に箱庭制作者の手間を省くため。
 そしてハルケギニアの科学力でいえば、書き割りの星にわざわざ惑星を付けておく必要はない。誰もそんなことに気づきはしないのだから。
 この箱庭の主は一体誰なのか?そして何のためにこの箱庭を作ったのか?
 情報が足りなさすぎる。

 再度転移して帰還する中、クォヴレーは思いがけないものを視界に捕らえた。
「あれは……!?」
 箱庭に浮かぶ即席の星々に惑星はなかったはずだが、その恒星はただ一つ惑星を従えていた。

180:THE GUN OF ZERO 10 インセクト・ケージ(2/2)
08/10/14 22:56:21 n+hEO10k
 ただ、それをクォヴレーは惑星と呼んだことは無かったが。
「自動攻撃衛星、ネビーイーム……」
 ゼ・バルマリィ帝国バルマー本星防衛の切り札にして、侵攻作戦の駒の一つ。白き魔星。
 要塞側のプロテクトにアクセス。―解放、進入。
 コクピット後部のトランクからベレッタ90-Twoを取り出し、ネビーイーム内部機動兵器発着用のハッチに降り立つ。
 ひとまず手近な端末にとりつき、情報を引き出す。
 ……これは侵攻作戦用のネビーイームであるらしい。バルマー本星の情報ではなく、銀河を航行するデータがインプットされていた。それも地球への。
 続けてネビーイーム内生命反応を探査。
 ―自分以外に反応無し。
「生命反応ゼロ?」
 思わず驚きの声も上げてしまう。
 そんなはずはない。
 防衛用のネビーイームでも、自分たちバルシェムのような人造生命は兵士として配備されているし、これが侵攻作戦用のネビーイームであるというのなら、なおさら侵攻を統括する役目のハイブリット・ヒューマンが一人はいるはずだ。
 とりあえずネビーイーム内部の全防衛機構を外そうとして……外せなかった。
 既に外されていたのだ。
 尚のこと不信感を大きくしつつ、ディス・アストラナガンに戻りネビーイーム内部の探査を始める。
 ……兵器貯蔵施設、サンプルデータ収集用プラント『キブツ』、コールド・スリープ施設、中央制御室。全てもぬけの殻だった。
 メギロート一体、見つからない。プラントでは機器の一つに至るまでもなくなっているし、何より、全ての制御系たるジュデッカも消えている。
「どうなっている……」
 このネビーイームの戦力。ハルケギニアどころかあの惑星そのものを征服するのにも困らない質・量の筈だ。
 交戦の跡が全く見られないということは、この世界に存在する誰かが、根こそぎその戦力を保有しているという事になる。
 しかし、クォヴレーの確認する限り、バルマーの兵器をあの惑星周辺で未だ見かけたことはない。
 単なる世界征服が目的ではないということか?
「いや、そもそも……」
 慌てて首を振る。
 何故ネビーイームがここにあるのかという根本的な疑問が解決出来ていない。
(この書き割りの世界に、コイツを持ち込んで何をするつもりか?)
 現状では、箱庭の主が持ち込んだのかどうかさえ判らない。
 そして、あるべき戦力がどこへ行ったのかも、掴めない。
 ネビーイーム内には、何も残っていないとはいえ、未だに兵器製造プラントは生きていた。
 今後利用させないため、自爆シークエンスを作動させ、クォヴレーは白き魔星を飛び立ち、
(ネビーイームを利用する者……その影を追うにも、鍵を握るのはやはりあの星か)
 一路、ハルケギニアへと戻った。


ホントに短いですが、他の話に混ぜ込むのも難しかったので、こうさせて頂きました。

181:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 22:58:26 rCBl9KtL
毒の爪、熊の爪ときたら次は鷹の爪か?

182:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:11:51 ruGvtNwE
鋼の人乙

似た者親子だなw

183:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:19:17 9MwjkrRV
久保の人投下お疲れです。
その昔夜華に投稿されていた「幼年期の終り」というSSを思い出します。(世界は書割だった、的なくだりが)


184:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:24:50 tD8LS0zX
久保の人乙です。
なんか背後にどこぞのロリコンにやられたヘッポコ邪神の影が見えるなw

185:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:31:48 87kUUJ2N
久保様乙です!

186:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:33:53 tvU3YBw0
鋼の人乙

母親が王子を産んでればってセリフはまぁその通りだわな。
それが望めない今アンアンが隣国に身売りするのが国家にとっても民衆にとっても最良だ。
アンアンは王の器じゃないし。






187:夜明けの使い魔 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:35:09 zRyJkiRy
よろしければ40分から拙作を投下させていただきます。

188:夜明けの使い魔 1/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:40:09 zRyJkiRy
 業火が唸りを上げ、その身を広げる。
 龍の炎すら児戯と見まがうほどのその灼熱が、大地を覆い軍を囲んでいく。
 ―不味い。
 怜悧なジョゼフの頭脳が警鐘を告げていた。
 この怪炎は炎そのもの、すなわち無慈悲なその一撃はアムルタートとガリアの兵のみならず、その陣まで焼き払う。
 近づかれればそれをふりほどくには打ち倒す他無い。
 これを打ち倒し得るのはアムルタートの一部と、そして姪であるシャルロットを含めたメイジ、それも手練れのみ。
 軍に率いられる有象無象では致命の一撃も遠いだろう。
 更に、ジョゼフには見える。虚無である故か、それともグリシーナと共にいた時が長かったことが原因か、この炎は決して一体ではない、と。
 姿定まらぬ炎故に一体と見えるが、ジョゼフの目には二体は存在すると見える。一体でさえあの脅威、それが倍となれば―。
 そして、意識を向けるべきはそればかりではない。同時に存在する同数の大地の化身。
 見るに大地の堅牢さをその身に宿したと思しき、怪炎と同種の怪物。その実力は未知数だ。
 恐らくは数日の奇妙な体験があるからこそ兵士達も動揺は薄かろう。けれども、太刀打ちできるかどうか。
 ―だが、それを気にとめたところで何にもなるまい。
 剣を構える者がいる。杖を構えるものがいる。あるいは盾を構え、あるいは槍を手に取り炎に岩に挑みかかる。
 ジョゼフの叱責を恐れてか、それとも本能的にこれが敵だと悟ったか、いや、ジョゼフにとっては兵が果敢に挑むのであればどちらでも良い。
 不意に、氷の槍が飛んだ。炎を貫かんとタバサの放った氷の矢。
 目を細める。最適解を探し即座に動くその姿。敵を貫く氷の槍。どちらも弟を思い出させる。
 ここにシャルルがいれば。恐らくジョゼフはシャルルに指揮を任せ逃げたグリシーナを叩くべく追撃しただろう。
 グリシーナ。あの女怪。あれの存在を、これ以上許すわけにはいかない。あれの陰謀をこれ以上のさばらせるわけにはいかない。
 シャルル、お前がいれば。
 けれど、それは自ら潰えさせた可能性だ。
 グリシーナの掌で踊らされたわけでもなく、他の何者かの意志によって決定したものでもなく。
 ただ、己の決断によって成し遂げたことだ。
 ならば、ジョゼフが今それを悩むことはない。いや、思い悩んでいてはいけない。
 それは己の道、己の意志。それに慚愧を覚えるなど、そんなことはありえてはいけないのだ。
 タバサの氷に貫かれた炎はわずかに動きを鈍らせたが、それまでだ。やはり一撃で消し去るのはやや難しい。
 だが、難しいだけだ。確実に動きは鈍った。タバサの一撃でも、だ。―あるいはタバサだからこそだろうか。
 視界の中、龍が飛んだ。青い鱗を持つ龍たちだ。翼の一打ちごとに氷の粒が舞う。氷を宿した龍か、ジョゼフは龍たちを見上げ、頷く。
 恐らくタバサとあの龍たちが攻撃を加えれば、炎は僅かずつ消えていくだろう。そうすればグリシーナを追うことも容易となる。
 氷の龍が顎門を開く。口腔にきらきらと輝くそれは恐らく極低温の大気だろう。
 豪と音を立てて、吹雪が吹き荒れた。
「寒覇白冷轟。いかに炎のアルコーンといえども防ぐことは出来ん!」
 青い龍の一体の、その背に立つハイゼンガーが声を張り上げた。
 高らかと歌い上げるようなその言葉は、周囲の怒号を貫いてジョゼフの耳に届く。
 言葉通り、この吹雪ならあるいは一撃で炎を霧散させることとて―否。
 不意に、大地の巨怪が腕を伸ばした。あるいは人として見たときに腕と映るような岩塊を。
 吹雪は炎に届かず、ことごとくそれに食い止められる。炎への攻撃を割り込み己で受けたのだ。馬鹿な。
 いかな岩とは言え、氷龍の一撃を受け削られている、がそれは炎のアルコーンに比べれば恐らく微々たるものだ。
 厄介な、とジョゼフは歯がみした。
 同時に炎の触腕が四方に走った。ガリアもアムルタートも一切の区別なく、その炎が襲う。
 薙ぎ払われ、焼き尽くされ、兵士達が倒れていく。その盾と仲間の挺身をもって生き残る兵もあるが―あまりにも無力だ。

189:夜明けの使い魔 2/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:40:53 zRyJkiRy
 時間をかけるわけにはいかん、とジョゼフは眉を寄せた。
 視線を周囲に飛ばし、冥龍皇と名乗る龍の支配者、あのタバサより幼い少女にしか見えぬ姿を探す。
 果たして、その姿はすぐに見つかった。石と変わりつつあるリムシュとか言った龍をかばい、炎をしっかと睨みつけている。
 その目に宿る、殺気。
 炎も岩怪も近づくことすらままならず、手を出しかねているようにさえ見える。
「冥龍皇!」
 周囲に響く怒号や轟音にかき消されること無いように、ジョゼフは声を荒げた。
 揺らめく何かをその身に宿して見える冥龍皇が、その言葉に合わせて視線を向ける。
 鋭い。あるいは死そのものを表すか。
 その眼光に射貫かれて一瞬、ジョゼフは死を感じた。
 けれど冥龍皇イルルヤンカシュは即座にそれがジョゼフであると悟ってか、眼光を緩める。
「なんじゃ!」
「手を分けろ、冥龍皇! グリシーナの向かった先を探らせよ!」
 戦場で、この怪物たちを相手にするのに配下を別のことに振り分けろ、と言う。
 その言葉に、冥龍皇イルルヤンカシュはジョゼフを測るように目を細める。
「その言葉、なにゆえじゃ! なにかもくろみでもあると言うのか?」
 イルルヤンカシュのもとへと足を進めて、ジョゼフはああと頷く。
「その通り。情報源は言えぬが―奴の目的はアポルオンを支配下に置くために死人を造ることだ」
「……なに?」
 姉上を、と冥龍皇が呟いたのを、ジョゼフは聞かなかったことにした。
「今頃我らが来ないと踏んで悠々と殺戮を繰り広げているだろうな。だが、そうはいかぬ。そうだろう?」
 ああ、とイルルヤンカシュが頷く。
「そうと知ってはこのような雑兵相手にしておる気にもならん! 者ども、総攻撃じゃ!」
 総攻撃という単語をイルルヤンカシュが叫んだ瞬間に、アムルタートの軍は高らかに雄叫びを上げた。
 さすがはアムルタートの女王というべきか、その言葉はある種の魔法に似ている。
 己が号令を下したところで―と、自嘲しながらも、ジョゼフはイルルヤンカシュに声をかける。
「今の内に奴を追わねばならん。居所を誰かに探らさねば」
 うむ、とイルルヤンカシュが答える。
 ジョゼフは自軍の者を裂くわけにはいかぬと考える。
 メイジでもなければ奴を探るような手は無かろうが、この現状でメイジを動かすわけにはいかないのだ。
 対してイルルヤンカシュ率いるアムルタートならば、飛ぶことの出来るものは数多くある。
 重要な戦力を削るということには、ならないだろう。
 不意に蜥蜴のような顔の龍がイルルヤンカシュに向けて一歩詰めた。
「イルルヤンカシュ様。僭越ながらその任、この震龍将ラハブめに」
「ほう、ラハブか。しかしおぬしは……」
 イルルヤンカシュがそのラハブを見つめ、僅か思案するように口を閉ざす。
「我が震龍軍は炎龍軍ほどの火力も氷龍軍ほどの技巧もありませんので。戦線から離脱しても問題はありません。それに―」
 悩むイルルヤンカシュに決断を早めるためかラハブが言う。
 そして、わずかに笑い―少なくとも、それに類する表情を浮かべてラハブが言う。
「わたくしは頭が回りますので」
 目を閉ざし、悩むこと一秒、二秒。ぱちりと目を開き、イルルヤンカシュは頷く。
「良かろう、ラハブ。おぬしと配下の震龍軍へと命ずる! 一刻も早くグリシーナを探し出し、可能ならば打ち砕くのじゃ!」

190:夜明けの使い魔 3/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:41:28 zRyJkiRy
 ラハブは恭しく一礼。一列に付けられた兜飾りが揺れる。
 振り返り、その配下の軍勢に向けて告げる。
「分かりましたねぇ! 我々はグリシーナを追います。上手くすればアポルオンと戦うことも無いでしょう。行きますよぉ!」
 震龍軍の返答が、豪と風にも似て戦場を吹き荒れた。
「それではイルルヤンカシュ様ぁ! 我ら震龍軍とこのラハブの朗報をお待ちくださいませぇ!」
 神速と言うほどでも無い。けれど迅速に彼らの軍は戦場を離脱し、空を彼方へと、アポルオンの消えた海岸の方へと向かっていく。
 不意にそれを追ってか、炎の一体が火炎を伸ばし震龍軍を追撃する。
 触れれば即堕とされるだろう、その業炎。
 たった一振りであるはずなのに怒濤のごとき斧の一撃に、その炎はかき消された。
 赤い龍将が飛び去る震龍軍を尻目ににやりと笑った。
「ワシがここを通すとでも思ったか、アルコーン」
 炎龍将アジ・ダハーカがその唇を歪め、吠える。
 同時にもう一つの首が氷龍将たるハイゼンガーに向かう。
「おい若造。ここはワシひとりでも十分だ。お前も行ったらどうだ?」
「馬鹿を言うな、アジ・ダハーカ。この状況をお前一人で改善するには時間がかかるだろう。それではグリシーナとの戦いに間に合わんぞ」
「むう、そいつァ困るな」
 戦場だと言うのに、目の前に怪物が存在すると言うのに、炎龍将はまるで子供の遊び場にでもいるかのような余裕ぶりだ。
 ひとまず冥龍皇に礼を言い、ジョゼフは自軍の指揮官の場所へと戻る。
 ついでに、炎龍将へと声を掛けた。
「炎龍将殿、炎といえどもより強い炎の前には飲まれるものだ。油断なさらんことだな」
「何ィ? このワシがこのへなちょこの火どもに劣るだと?」
 思った通り、ジョゼフの一言でアジ・ダハーカの形相が一変する。
 内心で舌を出しながら、ジョゼフはいやと首を振った。
「別にそんなことは言っておらん。まあ、もしかするとそうなるかもしれぬなと、それだけの警句よ」
「面白いこと言うじゃねぇか、人間!」
 ガハハ、と豪快に笑うアジ・ダハーカ。けれどその目は決して笑ってなどいない。
「よおし、ワシの強さを思い知らせてやらァ、人間! 腰抜かすなよ!」
 その言葉とともに、豪と音を立てて戦斧が空気を薙いだ。
 獅子奮迅の言葉に相応しく、アジ・ダハーカの巨体が炎へと挑み掛かる。
 風を捲く一撃は確かに言葉に相応しい。その衝撃で炎が一瞬分断されさえしている。
 小さくくすりと笑ったのをアジ・ダハーカに悟られぬようにその場を退き、近づく群臣に手を挙げる。
「よし、まずは炎と岩を分断せよ。炎の方が危険だ。まずは炎を消し、その後岩に手を出せ」
 指示を受けた者たちの一部が頷き、それを伝えに走る。
「炎に対しては水と風のメイジたちに当たらせよ。岩は未知数だが、同じ土か、あるいは風か」
 言い置いて、タバサを見上げる。
 タバサは変わらず風竜の背に乗り氷の矢を放っている。
 惜しむらくは、その攻撃のほぼすべてが岩に阻まれてしまっているところか。
 大地の剛性を受け継いだか、岩の怪物はその肉体たる岩を自在に組み替えるわけではなく、人に似た姿で動かしている。
 それに反して怪炎は変幻自在にして伸縮自由な炎の特性を継いだか、どう動くか読めぬうえにその一撃が遠くまで届く。
 指示を出した通り、ジョゼフとしては炎の脅威を先に払ってしまいたい。
 タバサにもそれは分かっているようだが―どうにも、難しいものだ。
 如何にして切り抜けるか、己の軍勢を見てジョゼフは目を細めた。


191:夜明けの使い魔 4/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:42:30 zRyJkiRy
 火炎が踊る、瓦礫が舞う。
 単一の炎に挑んだ時とは、訳が違う。
 岩と炎の連携は想像以上に強力だ。
 想像以上? そう考えてタバサは思わず自分の発想に笑ってしまう。
 そんなもの、どんな物語にも無かったし、想像したことも無かったくせに。
 ルーンを紡いで氷の矢を放つ。氷柱のようなそれは狙い違わず炎へと突き進み、そしてまた岩によって阻まれた。
 小さく舌打ちをする。
 シルフィードの翼が、今はタバサとシルフィードにあらゆる一撃を近づけていないが、それがいつまでも続くわけではない。
 タバサの放つ氷は炎にこそ当たっていないが、大地の精には確実に僅かずつでも手傷を負わせている、はずだ。
 ―どちらが先に限界に達するか。そういうこと。
 杖を握る手に力がこもる。あの土塊の、岩の塊をどうやって倒すか。
 眼下ではジョゼフに指示を与えられたメイジ達が杖を手に自慢の魔法を紡ぎ上げ、アムルタートが総力を結集している。
 だが、足を止める必要のあるメイジはどう考えても良い的でしかない。本来なら離れて距離を取ればいいのだろうが、周囲をすべて取り巻かれては―。
 舌打ち、同時に氷を放つ。
 大地の精の堅固な身体はタバサの渾身の一撃ですら、容易には貫くことができない。
 ―いや、本当にそうだろうか。
 目を細め、鋭い視線が岩の巨怪を刺し貫く。
 その表面にはヒビが走り、ともすれば砕けそうにも見える。だが、その身体に幾度強打を受けてもその表皮は崩れていない、ように見える。
 目を凝らす。本当に、そうなのか。
 詠唱を繰り返し、更に氷を生み出す。狙いは炎ではなく、岩塊。
 或いはかばう際に何かしているのではないか、とそう思ったからだ。
 狙いを定め、放つ。
 大地の精はかばう時とは違う鈍重な動きで、その直撃を受けた。
 効いた、と思った。
 だが、岩の巨怪は相変わらず身体を僅かに揺らすばかりで、まだ倒れる気配は無い。
 違う。
 届いた、そのはずだった氷の矢が、触れる寸前に消えている。
 思わずタバサは目を見開いた。
 なるほど、効いていないのも当然だ。
 直撃のはずのその一撃でさえ、触れる直前にかき消され、まともな威力ではない。
 この巨怪の持つ特性か、それともあのグリシーナとか言う女が何かをしたのか。
 一瞬脳裏にかすめた疑問を、タバサは打ち消した。
 何故効いていないのかが分かれば、あとはそれを乗り越える手段を講じれば良い。
 ―いや、待て。確か見たはずだ。効かないはずの一撃で、確かに致命打を与えた存在を。
 タバサの視線が戦場を踊る。探す先はアジ・ダハーカ。
 炎の精を、その斧の一撃で吹き散らした龍将だ。
 なにも、大地の精まで己の手で倒す必要は無い。大地の精が倒れると同時に炎の精に致命の氷を放てば、或いは。
「シルフィード。アジ・ダハーカのところへ」
 きゅいとシルフィードの喉を鳴らす声が、タバサへの信頼の色で満ちる。
 風を切る翼が、炎の一撃も振りかざされた岩塊の拳をも抜けて、戦斧を振るうアジ・ダハーカへと向かう。
 羽撃きが届いたか、アジ・ダハーカの双頭の一つがタバサへと顔を向けた。
「なんだ、小せぇの」
 問いかけながらも、アジ・ダハーカのもう一つの首と腕は戦斧を振るい岩を撃つ。
 だが、その動きが全力かと問われると、違う。炎を切り捨てた時のような圧倒的な力は、見えない。
 或いは、ジョゼフの言い方が不味かったか。

192:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:42:31 A0SiNWEy
世界は書割だった といえば
「熱死戦線ビットウォーズ」 葛西 伸哉 富士見ファンタジア文庫
でしょ


193:夜明けの使い魔 5/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:43:03 zRyJkiRy
 炎をこそ真に討つべきと思い極め、その前座に過ぎない岩を甘く見てしまっているのかもしれない。
 轟音立てて振り下ろされた岩を、アジ・ダハーカは戦斧で軽くあしらう。
 その肉体に強大な力を秘めたアムルタートにとっては、恐らくはその程度鈍重なものなのだろう。
「ちィッ! 頑丈なだけでろくな面白味も無ェ!」
 苛立たしげに唸るアジ・ダハーカに、タバサはこくりと頷く。
「今から完全に足を止める。そこに全力で打ち込んで」
 その言葉と同時に、アジ・ダハーカの表情にいぶかしげなものが広がった。
「全力でなければ打ち抜けない。あなたの一撃も、多分、この表面が自ら砕けることで相殺されている」
 なに? と炎龍将の視線が一つ大地の精に向けられる。
 もう片方の頭がぐるぐると唸り、不満げな表情で頷いた。
「たしかにそうみてェだな」
「そう。だから私が、今から動きを止める。そこに全力の一撃を」
「……ちッ。確かにこいつらがいつまでものさばるのは面倒だ。―どうやら氷龍軍の連中ァ岩ころを一匹をぶちのめしてくれたようだしな」
 言葉通り、氷龍軍の一団の連撃を受け続けていた大地の精が一体、その場に倒れようとしている。単純な数の差が、それを成し遂げたのか。
 それでもまだこちらにも一体、残っているのだ。一刻も早く、それを考えればアジ・ダハーカ、シルフィード、そしてタバサの三人でそれをなさねばならない。
 メイジ達は早くも炎に挑み掛かっている。隙はある。
「おい嬢ちゃん、足を止めるってんなら早くやりな。ワシは」
 ぐう、と戦斧を振り上げる。その肉体に並々ならぬ怪力が閉じ込められているのが、タバサにすら分かった。
「―嬢ちゃんが良しと言や即座にこの岩ころをブチ砕いてやるよ」
 こくりと頷いて、タバサはシルフィードに飛ぶようにと囁く。決して止まらず、岩の怪の周囲を巡るようにと。
 ルーンを刻む。ひとつひとつ。これを使うのは初めてだ。水と、風。そのどちらもを併せて、ひとつひとつ確実に紡いでいく。
 優雅に風を切るシルフィードの翼が、岩怪の周りを孤を描いて飛んでいく。飛び交う火炎も、襲い来る岩も、その翼を捕らえることはできない。
 そして、円が描かれた。同時に、タバサの詠唱も終わりを告げる。
 草木に霜が降りた。
 空から白いものが舞い落ちた。
 戦場にいた誰もが寒さを感じ、一瞬身を竦ませた。
 そして。
 大地が、凍てついた。
 極寒の冷気が岩怪を大地に縫い付けていた。その身体へと無数の霜が降りていく。身動きはもはやとれまい。
 タバサが、親善試合でミステルに使われた技、だった。
「なるほど、確かに」
 戦斧が、真一文字に岩怪を切り裂いた。
「こりゃ、身動きもとれねぇな!」
 同時に、岩怪はその存在を終えて大地へと還った。
 更に、タバサはもはや無防備にその身を晒す炎へと視線を向ける。
 後ろに隠れるための岩怪の巨体の無い今、炎の精はただタバサの氷の槍と、アジ・ダハーカの戦斧のどちらかを甘んじて受ける他は無い。
 あるいはどちらもを、か。
 ゆらりと揺れた二つの炎は、最早手無しと見てかその身を押し広げた。
 その場を焼き付くさんと、赤い炎が青く染まる。
 そして、そのひとつがジョゼフを襲う。触れれば肉どころか骨も残さない、灼熱が。
 刹那、タバサの脳裏に囁く声がする―けれど、その内容を確と聞き取る前に、タバサの手が杖を向け、口が呪を紡いでいた。
 そうして、炎は戦斧の衝撃と氷と、そして両軍の総攻撃を食らって消え失せた。
 ジョゼフはただタバサを見て、「一段と―」と、呟いた。

194:夜明けの使い魔 6/5 ◆Chaos55.a2
08/10/14 23:43:52 zRyJkiRy
投下終了です。
反応の無さは自信の未熟さと真摯に受け止めたいと思います。

195:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:48:44 BdgR4vH0
>>194
というより元ネタ分からない人が多いんじゃないかな?

それはいいとして、GJ!
文才に満ち溢れたいい文章だった
これからの展開にも期待が持てるね

196:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:49:57 UMubuwHk
夜明けサンひさしぶり!
おかえりなさい!

197:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:50:33 uQgGvDgl
良く戻ってきた!
そしてGJ!

今日は避難所といい、復帰祭り?

198:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:52:31 zTOHPIez
>>181
ハルケギニアを征服するのか

199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:52:41 zcw/7ed1
終わりよければ全て良し、この時間に懐かしい作品が投下された今日はとても良い日

200:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:54:04 7Iozo01Y
年単位で待つことには慣れてるさ。
といいつつも、帰ってきてくれるとやはりうれしいですね。

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/14 23:55:07 2WCvEum4
ある日、部屋の掃除をするルイズ。一人では出来ないと判断。四人必要と思い、奴らを召喚する。
名前は『死鬼隊』
ルイズ『さぁ、私の部屋とこの学校を、貴方達の好きな様に片付けなさい』
ゴステロ『好きにやっちゃってもいいんだな~』
ルイズ『えぇ、早くやんなさいよ』
ゴステロ『ぐへへ、おう、みんな聞いたかぁ~。好きに殺っちまおうぜ。まずは、そこの女からだぁ』
ルイズ『や、・・・・・・
(これ以上は放送できませんので、終了させて頂きます)
ゴステロ『俺は人殺ろしと、いじめが大好きだ~。ハッハッハ』

202:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:02:03 xsBUbJ9T
この調子でほかのとまってるのもどんどんきてくれないかなあ・・・。
個人的には「エデンの林檎」とか「ゼロの天使」とか吸血鬼のやつとか・・・

203:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:02:34 1TygG8he
夜明けの使い魔乙
個人的にはラハブのせこさがクリティカルヒットw
内心何をたくらんでるのか分からんけど、とりあえず逃げてる姿がよく似合うぜw

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:06:01 hNCRHOds
ゼロと人形とか角女の人とか巨砲の人とか・・・・
後、他にも色々あるんだよ。

205:虚無と金の卵
08/10/15 00:06:37 nPwVFMkz
予約無ければ、0:15より投下させていただきます。
しかし今日は力作多くて特攻するの怖い日だ…。

206:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:07:37 TAprubru
狂蛇美味ぇww

ゲーッ!熊の中の人出ちゃったww

207:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:09:11 fYev3M2u
イザベラ管理人さんとか、とある人の方も帰ってきてほしいな~

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:13:04 1TygG8he
お前ら避難所の応援スレでやれw
あっちの方が流れにくいから、作者さんに気づいてもらいやすいぞ

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:15:07 ZXGqr+0b
爆熱の人とエルクゥの人も…支援

210:虚無と金の卵 1/5
08/10/15 00:16:12 nPwVFMkz
 ある日の学院長室における、年寄りの楽しい楽しいセクハラの時間/代価―ミス・ロングビルのビンタと蹴りの応酬。
 痛がりつつも満足を覚えていた学院長オスマンの至福の時間は破られる。
 コルベールの逸る足音が学院長室へと近づく。
 オスマン達はその足音が聞こえた時点で、気の抜けた空気を早業で払拭させていた。

「オールド・オスマン! 大変です!」
「なんじゃね? 大変なことなどあるものかね」

 コルベールの目に映るのは、机に向かい重々しく手を組むオスマン/粛々と書類を整理するミス・ロングビル。
 そして乱暴に扉を開けたコルベールに対し、オスマンは重々しく頷いて促す。

「こ、これを見てください!」
「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。
 まーたこのような古臭い文献など漁りおって。
 そんな暇があるのなら、たるんだ貴族達から学費を徴収するうまい手をもっと考えるんじゃよ。
 ミスタ……なんだっけ?」
「コルベールです! お忘れですか!」
「そうそう、そんな名前だったな。君はどうも早口でいかんよ。
 で、コルベール君、この書物がどうかしたのかね?」
「これも見てください!」
「……これは……」

 コルベールは、ウフコックの額に現れたルーンのスケッチを手渡す。
 それを見たオスマンは、重々しく呟く。

「……小さすぎてよく見えんのじゃが」
「すみません。鼠の額に現れたルーンを、原寸大で写したもので……」
「猫の額どころではないのう。眼鏡、眼鏡……と。
 あ、そうじゃ、ミス・ロングビル。資料室の整理をお願いして宜しいか?
 召喚の儀式も終わって授業も本格化してきたからのう」
「ええ。畏まりました」





211:虚無と金の卵 2/5
08/10/15 00:17:46 nPwVFMkz
 春の召喚の儀式以降、ルイズは相変わらず魔法が成功することは無かったが、めげることなく
 勉強と実践に取り組んでいた。
 つまるところ、ルイズ達は概ね平穏な日々を送っていた。
 そして学生の身の彼ら、彼女らにとって、退屈とは敵であった。

「ウフコックはピスタチオ好きよね。鼠なのにチーズが嫌いだし」
「俺のいた国でも、鼠はチーズを齧る、というのがステレオタイプなイメージらしい。
 食事やパーティの度に勧められて困ったものだ」
「ちゅう(良い生活してるもんじゃな、ウフコックも)」

 放課後のヴェストリ広場、そこに備え付けられたテーブルの一角で、一人の少女と二匹の鼠が長閑な休憩を取っていた。
 ルイズ、ウフコック、そして学院長の使い魔、ハツカネズミのモートソグニルである。
 同じネズミどうし、そして同じ使い魔の二匹は、出会ってすぐに意気投合していた。
 今では茶飲み友達といったところだろうか。
 ルイズは、この世界に馴染みつつあるウフコックに安堵を覚えつつ紅茶を飲む。
 何と平和に満ち溢れた放課後だろうか―そんな主人の満足げな匂いを感じ取り、
 ウフコック自身も同じ満足感に浸っていた。

「ま、おかげで運動不足だ。きっと寮の廊下を走ったら息切れしてしまう」
「ちゅう(おいおい、2、30メイルくらいじゃねぇか。そんなんで獲物を捕れんのか?)」
「……自分自身、不甲斐ない気がする……。
 そういえば、獲物を捕ったことは無いな。というより調理されていない食事を摂ったことが無いと思う。
 調理器具なら用意できるんだが……」
「ん? モートソグニルに怒られてるの?
 それじゃあ食堂の人にお願いして、一度くらい獲物を捕まえるのにチャレンジしてみたら?」
「ルイズ、勘弁してくれ……俺にはあまり鼠の本能は残っていないんだ。
 それに獲物を捕ったとして、別に見たくはないだろう?」
「……それもそうよね」
「ちゅ(何抜かしてやがる。野生の魂を忘れちゃあいけねぇ。メスでも紹介してやろうか?)」

 そんな気軽な会話を交わしていた頃、男子達の一団が、騒がしい空気を醸し出していた。
 その中心に居るのは、フリル付きのシャツに薔薇を挿した金髪の少年。
 少なくとも学生達の話題の中心になる程度には華がある。彼を囲むのは少数の女性も混ざっていた。



212:虚無と金の卵 3/5
08/10/15 00:19:31 nPwVFMkz
「なあギーシュ、お前今誰と付き合っているんだよ?」
「付き合う? 僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」

 などと冷やかされつつ、気障な斬り返しで場を盛り上げている。
 その会話の輪の中へ、あるメイドがそのギーシュと呼ばれた少年に近づき、何かを手渡そうとしていた。
 ―結論から言って、恋愛や性にあまり興味を持たないウフコックからしても、そこからの展開は酷かった。
 ウフコックは何処か険悪な匂いだけを嗅ぎ取り、少年らの方へ首を向けた。

「あのう、こちらの香水を落とされましたよ」
「……これは僕のじゃない。君は何を言ってるんだね?」

 一見してごく普通のやり取り。だが、明らかにギーシュからは焦慮の匂いが漂う。

「おお、その香水、モンモランシーが自分で調合したやつじゃないか。
 それがギーシュから出てきたってことは……モンモランシーと付き合ってるのか!」
「違う。いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが……」

 ギーシュの側に居た栗色の髪の少女は香水の瓶を見咎め、ほろほろと泣き始める。
 そしてまた別の少女がギーシュの元につかつかとやってくる。その様子に気付いたルイズが、
 「あ、モンモランシー」と言葉を漏らす。

「ギーシュさま……その香水が貴方のポケットから落ちたのが何よりの証拠ですわ。さようなら!」
「やっぱり、この一年生に手を出してたのね、うそつき!」

 やってきたモンモランシーによって惜しげもなくギーシュのあたまにぶっかけられるワイン/
 去って行く二人の少女/表情を崩さず芝居がかった仕草のギーシュ/哀れなほどに顔を青くするメイド。
 ギーシュは表情を崩さず、だが肩を震わせつつメイドに問い詰めた。

「そこの君……。君の軽率な行動のおかげで、二人のレディが傷付いてしまったじゃないか?
 どうしてくれる気だね?」
「も、も、申し訳ありませんっ」

 メイドから感じるのは心からの恐怖。
 理不尽に対して怒りを覚えることのできない、剥ぎ取ることの難しいほどに染み付いた何かの匂い。
 この一連の出来事と匂いに黙っているウフコックではなかった。
 ルイズも未だ知らないお喋り鼠の悪癖―感情の匂いを頼りに相手の心の隙を付くこと。

「ったく、ギーシュったら本当に仕方ないわね。
 ……って、ちょっとウフコック、どこ行く気よ!」
「待て。少なくとも彼女は、間違った行動は取っていない。
 今出て行った二人を傷つけた人間が居るとしたら君しか居ないだろう」
「……誰だね?」


213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:20:41 1TygG8he
支援

214:虚無と金の卵 4/5
08/10/15 00:21:48 nPwVFMkz
 
 ウフコックは、元居たテーブルから飛び降りて、ギーシュたちの居る場所へと近づいてメイドを庇った。
 誰がどう見ても、無鉄砲極まりない行為である。ルイズはウフコックを止めようとしたが、
 お喋りネズミの口を遮るには至らなかった。

「……む、姿を隠さないで現したらどうだ!?」
「……下だよ、下」

 ギーシュは声の主を見つけられずきょろきょろと辺りを見回す。
 ギーシュの取り巻きの一人がウフコックを指差し、やっと見つけられたようだ。

「ね、ネズミっ!?
 ……ふ、ふん、貴族に説教とは、身の程をしらないネズミも居たものだ。
 第一、ネズミがうろちょろしてる場所で、よく君達は食事ができるものだね。
 ……おや、そういえばこのネズミはルイズが呼び出したのか。では、仕方無いな。
 しかし魔法を使えなくとも、使い魔にマナーくらいは教えておいてほしいものだ」

 平静な顔をしつつも、ギーシュは今の出来事に興奮しているらしい。
 つい、ウフコックのみならずルイズを含めた何人かを愚弄する形になったが、当のギーシュは気付いていない。

「……へえぇー、言ってくれるじゃないのギーシュ……!」

 流石にルイズも、ここまで愚弄されて黙っているほど人間はできていない。

「まあ、ルイズ、ここは俺に話させてくれ。
 ……俺がここに居ることで不快に思う人間がいれば謝ろう。
 また、彼女が香水の瓶を拾ったことで傷付いた女性が居たら、彼女と共に謝ろう」
「わ、私謝りますっ!」
「……ふむ、なかなか素直じゃないか」

 冷静に、場を纏めようとするウフコックの言葉に、ギーシュは溜飲を下げそうになった。
 メイドもそれにならって頭を下げようとする。
 しかしウフコックは冷静であった。
 事態に流されて頭を下げるほど、面食らってもいなかった。

「……だが、俺が謝ったところで、あるいは君が俺を詰ったところで、
 君から離れた二人の少女が癒されるわけではない。
 得られるのは君の刹那的な充足感であって、君の疚しさの根元が消え去ることは無い」

 まるで、患者の不摂生を詰りもせず淡々と説明する医者のように、ウフコックは言葉を並べる。
 ギーシュどころか、ルイズを含めた周囲の人間は、ぽかんとした表情すら浮かべた。

「できることならばその疚しさを解消してやりたいと思うのだが……、
 今この瞬間にできることではないし、まず第一に、自分の冒した行動を自覚してもらなければならない」
「つ、使い魔に説教される覚えは無い!
 僕が、この無礼な使い魔を摘まみ出してやろう!」



215:虚無と金の卵 5/5
08/10/15 00:28:14 nPwVFMkz
 逆上し顔を歪ませウフコックを指差すギーシュ。
 そして思わず杖を振って青銅のワルキューレを出現させ、ウフコックに掴みかかる。
 あまりの出来事に、メイドは悲鳴を上げた。

「きゃあっ!」
「ちょっと何するのよギーシュ! 喧嘩売る気!」
「ふん、君がネズミでなければ決闘を申し込んだかもしれないが、
 そんな非道な真似は僕はしないさ。
 ただ僕の衛生観念上、ネズミにはここからご退場願おうと思ってね」
「喧嘩売ってるのと同じよ!
 ……ギーシュ、そこからちょっとでもその不細工なゴーレムを動かしてごらんなさい。
 あんたのにやけ面が跡形も無い爆心地になるわよ」

 今にも飛び掛らんばかりに怒りに目を吊り上げるルイズ。
 だが、当のウフコックはワルキューレに掴まれた程度で焦ることは無かった。
 むしろ激情に身を任せ怒りを発散させるルイズを恐れた。
 ギーシュも心底恐れた。

「…そ、その、ルイズ、俺は全くもって大丈夫だ。君が落ち着いてくれ。
 それに、だ。俺にとっては、この程度の事態など危機とすらいえない」

 ウフコックはギーシュを見もせずに言った。
 鼠に虚仮にされている、という事態にギーシュは頭が付いていかず、単純な疑問を口にする。

「……なんだって?」

 ウフコックはギーシュと向かい合う。鼠らしからぬ力強い眼で相手を見据える。

「決闘、と言ったな。
 互いの了承したルールに乗っ取って雌雄を決する、というのならば望むところだ。
 ギーシュ、君に決闘を申し込もう」

216:虚無と金の卵
08/10/15 00:29:15 nPwVFMkz
以上、投下終了です。ありがとうございました。

ちなみに、モートソグニルの口調は捏造です。
気に入らない人は、ワイズ・キナードが勝手にアテレコしてると思いつつ
スルーして頂ければ幸いです。


217:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:36:00 7EZ5EfEv
乙ー
正論過ぎてどう言ったもんか分からないくらいの正論だw

218:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:46:10 eq0Uiul/
戦闘でない決闘をするんですかな  乙です
楽しみにしてます

219:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:53:03 YA5oE4yi


ネズミつながりで、アメリカや千葉の某マウスを召喚したらどうなるか、少し考えてしまった
投下する勇気なんて無いけど

220:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:55:47 uxRoGdyr
ルイズが黒服に連行されて終わりか

221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:58:26 FO0qMGFt
それらしきモノなら小ネタにある

222:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 00:59:58 uxRoGdyr
四番目の使い魔って、そういうことだったのか?

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:05:18 fYev3M2u
ねずみ繋がりでゲゲゲの鬼太郎からねずみ男を…
役に立つどころか足引っ張りそうw

224:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:07:21 ZJ8ugtNp
ちょいと失礼。
出落ち的な部分があるのでキャラ名は伏せるが、ここでもちょくちょく
出てくる超有名キャラで実験的にナンセンスギャグ長編を試みてみた
差し障りないようならその初回を投下させてもらいたいのだが

225:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:10:31 pygQ4S5V
某マウスじゃないなら問題ないと思う

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:11:17 1TygG8he
実験的長編というとなんか微妙な組み合わせだがまあ支援

227:実験的長編
08/10/15 01:12:43 ZJ8ugtNp

 ―ルイズのサモン・サーヴァントの詠唱が終わり。
 白煙とともにそこに現われたのは、見たこともないような異形だった。
 人と比して、いや、世界中のいかなる生物と比べても、異様に大きい顔。
 歩行が可能なのか疑いたくなるほど極端に短い足。身長ほどはありそうな胴回り。
 そしてその重厚そうな体は、ほとんど全身、青い皮膚で覆われていた。

「kdネ&ぁずpEc4q”z$fミ-%!!」

 そんな異形がほとんど半狂乱で叫びながら、グルグルとその場を回っているのだ。
 恐怖を感じない方がどうかしている。
「る、ルイズ。な、なんなんだい? 君が喚び出したモノは……」
 そこに居合わせた金髪の少年が、思わず、といったように問いかける。
 だが、それは図らずもその場にいた全員の感想と同じだった。
 しかし、その問いかけに答えられる者はいない。
 その異形を喚び出した当のルイズでさえ、その正体は皆目見当もつかないのだ。

 ―ただ分かるのは、『それ』があまりにも『ちがう』ということだけ。

 体のバランスや色だけを見ても、到底まともな生き物であるとは思えない。
 それに加えて、顔の大きさに比べあまりに大きな目、横に大きく裂けた口が、
その奇態さをさらに強く印象づけている。
 ……知能はあるのだろうか。
 突如周りの状況に気づいたかのようにそいつは動きを止め、用心深く周りを見渡し始めた。
「………………?」
 状況を検分し終わると、その巨大な頭部をガコンと傾け、そいつは自分の腹に手を伸ばした。
 よく見るとその生き物は、腹部に一部の有袋類が持つような袋を備えている。
 皆の視線が集中する中、そいつはそこから、灰色がかり、
所々に斑点の浮き出すブヨブヨとした物体を取り出すと、
あろうことかそれを左右に裂けた巨大な口に放り込んだのだ。
 そしてそのまま口を閉じて、ぐちゅ、ぐちゅと咀嚼する。
「う、うわ……」
 それを見た見物人の一人が思わず口を押さえる。

 ……しかし、本当の異変はそこから始まった。
 謎の物体を咀嚼したそいつは、今までの取り乱したようなわめき声ではなく、
きちんとした人間の言葉ではっきりとこう口にしたのだ。

「やあやあ。これはおはずかしいところをお見せしました。
 こんにちわ。ぼくドラえもんです」

 ―と。

228:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:15:05 1TygG8he
やべえ、微妙に危険な使い魔ktkrwww

229:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:15:45 uxRoGdyr
CVは、CVはどっちなんだ!?支援

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:16:32 tRLhX+wG
こんにゃく味噌味w

231:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:17:52 ZJ8ugtNp

 ドラえもんはみんなのぽかんとした顔を見て、首をかしげた。
「おかしいなあ。ねんのためにほんやくこんにゃくまで食べたのに……。
 もしや言語中すうのこしょうかしら?」
 それから一拍遅れ、ようやく事態を把握した見物人たちが騒ぎ出した。
「た、タヌキがしゃべった!」「いや! しゃべる青ビョウタンだ!」
 それで呪縛が解けたかのようにみんな三々五々、好き勝手にしゃべり出し、
それを聞いたドラえもんがなぜか表情を変え、必死に怒りを抑えようと
している様子なのにも気づかない。
 ―しかし、この奇妙な動物の出現に一番動揺していたのはルイズだった。
 この『春の使い魔召喚』の儀式は、今までコモンマジックも使えなかったルイズにとって、
大きなチャンスだった。
 自分の力を示す上でも、これからの自分の系統を見定める上でも、
絶対に外せないイベントだったのだ。
 だから、何度失敗しても諦めず、サモン・サーヴァントに挑んだ。
(ぜったい、すごい使い魔を呼び出してみんなを見返してやろうと思ったのに……) 
 それなのに、それなのに、ようやく呼び出せたのが、

「こんな、こんな青ダヌキだなんてぇえええ!!」
「ぼくはタヌキじゃなぁーい!!」

 ―キィーン…!

 ルイズの悲鳴と、それにかぶせるように放たれたドラえもんの絶叫が
だだっ広い草原の端まで響き渡る。
 あまりの大音量に、その場にいた全員が思わず耳を押さえた。
 そして、
「ミス・ヴァリエール。色々と思うところはあるかもしれませんが、とにかく結果は結果です。
 早くコントラクト・サーヴァントを済ませなさい」
 事ここに至って、このまま放っておく訳にはいかないと考えたのだろう。
 耳を押さえたまま、ハゲ頭の教師、コルベールがルイズを促した。

232:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:19:50 1TygG8he
漫画版かw 支援

233:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:20:26 ZJ8ugtNp
「……う」
 その言葉に反論出来ず、ルイズがうめく。
 妙ちくりんなタヌキとはいえ、一応使い魔を呼び出せたのは確かだ。
 ありえないような物―例えば平民や異世界の怪物など―が出て来たというならともかく、
一応普通(?)の動物が出たのだから、ここは契約するのが筋なはずだ。
 しかし、契約をするということは……。
「き、きき、貴族がタヌキとキス?
 そ、それも、この名誉あるヴァリエール家の三女で、美少女のわたしが、
 『美少女の』このわたしが、ここ、こんな、こんな野良ダヌキとキス?
 いい、いいの? それっていいのかしら? 果たしてそんなことが許されていいの?」
 ワナワナと、たぶん彼女以外には共感できない理由で震えるルイズ。
 そう考えればモグラとキスをしたギーシュも相当の物だが、やはり女の子だからだろうか、
異様なテンパりを見せるルイズに、今まで黙って成り行きを見ていたキュルケが口を出した。
「考え方を変えてみなさいよルイズ。そのタヌキ、動物なのにきちんとしゃべってるのよ。
 もしかしたら高位の幻獣なのかもしれないわ」
 ―実際、ここハルケデニアには幻獣と呼ばれる数々の不思議な生物がいる。
 その中でも高位とされる生き物は高い知能を持つことが多く、例えば今は絶滅したとされている
韻竜と呼ばれるドラゴンは、言語感覚に優れ、人が使う物とは異なる魔法までをも操ったという。
 そう考えれば言葉を話すこのタヌキも、何か優れた能力を持っていると考えるのが自然であり、
「幻獣? このヘンテコなタヌキが?」
 そう言われると、ルイズのドラえもんを見る目も変わる。
 もしかするとこのバランスが悪い頭の大きさも、それだけの脳味噌がつまってるからじゃないか、
などと好意的な解釈を考えてしまう。
 それを見て含み笑いをしたキュルケは、とどめとばかりにさらに言葉を重ねる。
「ええ、それもたぶん、まだ誰も発見したことのない、ね。
 もしそうならすごい名誉じゃない。そんな生き物を使い魔にするなんて、
 きっとこの学院始まって以来の快挙だわ」
「め、名誉……」
 冷静になって考えれば、先祖代々宿敵としていがみ合い続けてきたツェルプストーの言葉である。
 何か裏があるかもしれないと思いそうな物だが、そこは普段からゼロだゼロだと
バカにされ続けてきたルイズである。
 いかんせん名誉という言葉に弱かった。
「やる! わたし、やるわ! こいつを使い魔にする!」
 キュルケにあっさり説得され、ルイズがドラえもんの前に立つ。
 ちなみにその間ずっと、
「だから、ぼくはタヌキじゃなくて未来の世界のネコ型ロボットで…!」
 と、ドラえもんが力説しているが、誰も聞いていない。
 もちろんルイズもそんなことにはお構いなしで、
「あんた、感謝しなさいよね。貴族がタヌキにこんなこと、普通はめったにしないんだからねっ!」
 そう言い捨ててから手に持った杖を振り、呪文を唱えて、
「ん……」
 ルイズの唇が、ドラえもんの唇に重ねられる。


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