08/10/15 01:20:26 ZJ8ugtNp
「……う」
その言葉に反論出来ず、ルイズがうめく。
妙ちくりんなタヌキとはいえ、一応使い魔を呼び出せたのは確かだ。
ありえないような物―例えば平民や異世界の怪物など―が出て来たというならともかく、
一応普通(?)の動物が出たのだから、ここは契約するのが筋なはずだ。
しかし、契約をするということは……。
「き、きき、貴族がタヌキとキス?
そ、それも、この名誉あるヴァリエール家の三女で、美少女のわたしが、
『美少女の』このわたしが、ここ、こんな、こんな野良ダヌキとキス?
いい、いいの? それっていいのかしら? 果たしてそんなことが許されていいの?」
ワナワナと、たぶん彼女以外には共感できない理由で震えるルイズ。
そう考えればモグラとキスをしたギーシュも相当の物だが、やはり女の子だからだろうか、
異様なテンパりを見せるルイズに、今まで黙って成り行きを見ていたキュルケが口を出した。
「考え方を変えてみなさいよルイズ。そのタヌキ、動物なのにきちんとしゃべってるのよ。
もしかしたら高位の幻獣なのかもしれないわ」
―実際、ここハルケデニアには幻獣と呼ばれる数々の不思議な生物がいる。
その中でも高位とされる生き物は高い知能を持つことが多く、例えば今は絶滅したとされている
韻竜と呼ばれるドラゴンは、言語感覚に優れ、人が使う物とは異なる魔法までをも操ったという。
そう考えれば言葉を話すこのタヌキも、何か優れた能力を持っていると考えるのが自然であり、
「幻獣? このヘンテコなタヌキが?」
そう言われると、ルイズのドラえもんを見る目も変わる。
もしかするとこのバランスが悪い頭の大きさも、それだけの脳味噌がつまってるからじゃないか、
などと好意的な解釈を考えてしまう。
それを見て含み笑いをしたキュルケは、とどめとばかりにさらに言葉を重ねる。
「ええ、それもたぶん、まだ誰も発見したことのない、ね。
もしそうならすごい名誉じゃない。そんな生き物を使い魔にするなんて、
きっとこの学院始まって以来の快挙だわ」
「め、名誉……」
冷静になって考えれば、先祖代々宿敵としていがみ合い続けてきたツェルプストーの言葉である。
何か裏があるかもしれないと思いそうな物だが、そこは普段からゼロだゼロだと
バカにされ続けてきたルイズである。
いかんせん名誉という言葉に弱かった。
「やる! わたし、やるわ! こいつを使い魔にする!」
キュルケにあっさり説得され、ルイズがドラえもんの前に立つ。
ちなみにその間ずっと、
「だから、ぼくはタヌキじゃなくて未来の世界のネコ型ロボットで…!」
と、ドラえもんが力説しているが、誰も聞いていない。
もちろんルイズもそんなことにはお構いなしで、
「あんた、感謝しなさいよね。貴族がタヌキにこんなこと、普通はめったにしないんだからねっ!」
そう言い捨ててから手に持った杖を振り、呪文を唱えて、
「ん……」
ルイズの唇が、ドラえもんの唇に重ねられる。
234:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:21:08 77t2aF39
翻訳こんにゃく!?
235:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:22:40 uxRoGdyr
マンガ版…だと…
支…援…
236:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:23:36 HgrCbBkf
ボイルド召喚を書いてる俺だが全く筆が進まん
まかせたぞパートナーよ
237:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:25:45 ZJ8ugtNp
(これで、いいわよね)
頃合を見て、ルイズが唇を離す。
「い、いきなりなにするんだきみは…!」
突然唇を奪われたドラえもんはバタバタと短い手足を振り回して怒っているが、
「いいからだまってなさい」
ルイズは全く取り合わない。
(これでしばらく待って、こいつの体にルーンが刻まれれば終わりね。
・…………………………………………………あれ?)
しかし、いくら待ってもドラえもんの体に変化はない。
「だいたいきみたちはこっちが自己しょうかいしているのに
名乗りもせずにかってなことばかり……」
ドラえもんはさらに暴れだすが、ルイズはそれどころではなかった。
「な、なんで? なんで使い魔のルーンが刻まれないの?
ちょっとあんた、どういうことよ!」
一世一代の蛮勇を振りかざしてタヌキにキスまでしたのに、ドラえもんにはまったく
使い魔のルーンが現われる徴候もないのだ。
逆ギレもはなはだしいが、ルイズは思わずドラえもんに詰め寄った。
「つかいま? ルーン?」
「あんた、ゲートをくぐってきたんでしょ。ゲートをくぐった生き物がどんな物であれ、
正しい方式に従ってキスをすれば、そいつが使い魔になるはずなのに……!」
ドラえもんはふうん、と言ってみた後で、
「つかいまとかルーンというのはよくわからないけど、たぶんそれはぼくが機械だからだね」
そう言ってあっさりと頷いてみせる。
「……機械?」
「そう、22世紀のひみつ道具でみんなの夢をかなえる未来のネコ型ロボット!
それがぼくなんだ」
たかが子守りロボットが、胸を張ってそう宣言するが、
「……ぜんっぜん、わからないわ」
ルイズにはもちろん通じない。
「ふうん。ここはまだ機械文明が発たつしていないみたいだな。
かんたんに言えば、動くカラクリ人形だよ」
「カラクリ人形?! つまり、魔法を使わないゴーレムみたいな物ってこと?
そんな!? 生き物じゃない相手の所にゲートが開くなんて話、聞いたこともないわ!」
「ぼくが知るかよ。そんなこと」
「……う」
突き放した言い方をされ、ついルイズはひるんでしまう。
(でも、こいつの言うことも一理あるかも)
落ち着いて考えると、いろいろと不思議なことがあるのに気づいた。
(しゃべるタヌキがいるなんて聞いたこともないし、こいつ、やっぱり幻獣って感じじゃない。
きっと、こいつは遠くから、たぶんこことは文化も言語も、もしかしたら使ってる
魔法だって違う、遠い国から来たんだわ)
238:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:27:31 1TygG8he
まあルーンが刻めなくても不思議じゃないか支援
239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:29:24 BaPEoss4
銀魂神楽が召還されたら?
240:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:31:43 ZJ8ugtNp
そこまで考えて、どうせなら本人に話を聞けばいいのだと気づいた。
「そういえばあんた、一体どこから来たわけ?」
そうルイズが尋ねると、急にドラえもんは飛び上がった。
「そ、そうだっ! のび太くんにかしてた道具を返してっていったら、
ネズミがぼくを追いかけてきてるっていわれて……」
「……ネズミなんてどこにもいないけど?」
ドラえもんが現われた時も、周りにネズミの姿なんてなかった。
さては、とルイズは思いつく。
「あんた、もしかしてその『のび太』っていうのに騙されたんじゃない?」
「くうぅ、のび太のヤツぅ。あとでおぼえてろよ!!」
ドラえもんは肩を怒らせるが、ルイズとしてはその辺りの事情はどうでもよかった。
「で、ネズミがいるって言われてからどうしたの?」
「さあ。むがむちゅうだったからなにがなにやら。
ただ、とちゅうで光る門みたいなものをくぐったような…」
なぜネズミと言われると無我夢中になるのかルイズにはわからなかったが、
(猫型ロボットらしいから、ネズミを見るとわれを忘れておいかけちゃうのかも)
と、適当に納得し、とりあえずドラえもんの言葉にうなずいた。
「あぁ、その光る門がきっとサモン・サーヴァントのゲートね」
「サモン・サーヴァント? ゲート?」
「ええ。遠くから使い魔を呼び寄せるための門よ」
ルイズとしては親切に説明してやったつもりなのに、ドラえもんは首をかしげた。
「? つまり、どこでもドアみたいなものかな」
「どこでも……? なにそれ? 何系統の魔法?」
言葉の意味がわからず、ルイズは真剣に尋ねたのだが、それをこともあろうに、
「魔法? アハハ。きみはじつにバカだな」
笑った。魔界で大冒険したことも忘れ、ドラえもんはルイズの言葉を笑い飛ばしたのである。
「……なんですって?」
人一倍短気なルイズである。バカだと割と図星なことを言われ、思わずむっとする。
「どうりで話がつながらないと思ったよ。魔法なんて非科学的もの、あるわけないじゃないか。
見たところきみは子どもみたいだけど、そろそろ小学校くらいには行ってるだろ。
魔法なんて夢みたいなことばかりいっていないで、すこしはげんじつを見ろよ」
この世界の常識と、ついでにドラえもん自身の存在意義までぶち壊すようなことを言うドラえもんに、
ルイズの怒りは極限に達した。
魔法は本当にある!と言ってやりたいのだが、じゃあ見せてみろよ、と言われると困るので
強く出れないのだ。
「べ、べべつに、信じたくないなら信じなければいいわ。……でもね!
あんたがここに呼ばれたっていうのは本当よ。たぶん、ずっと、ずぅーっと遠くの国からね。
そんなところから召喚されて、普通の方法で元の世界に帰れるかしら!」
ルイズとしては、ちょっとした負け惜しみくらいのつもりだった。
しかしドラえもんは、
「な、なんだってーー!?」
驚きのあまりその場で一メートルくらい飛び上がって、すぐさま、
「どこでもドア~!」
奇天烈な掛け声と共にお腹の袋からドラえもんの身長より大きなドアを取り出し、
その扉を開く。
しかし当然のことながら、開いた先はどこにもつながっておらず、
ただ一面の草原が広がっているだけで、
「ほ、ほんとうだ。帰れなくなってる」
だがそれを見たドラえもんはなぜかガックリとうなだれた。
241:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:32:16 dG2yRvCg
モートソグニル逃げてー
支援
242:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:32:57 1TygG8he
ハルケギニア破壊爆弾か支援
243:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:34:24 ZJ8ugtNp
「な、なんてことをしてくれたんだ。これはたいへんなじたいだぞ…」
ドラえもんは衝撃のあまり、犯罪者チックな目つきで頭を抱えた。
「な、なに? どうしたっていうのよ…?」
そして、その完全に据わった目つきでルイズをにらみつける。
「いいか、よく聞けよ! ぼくがもとの場所にもどれなくなったらどうなるか!」
「ど、どうなるっていうのよ? ……まさか、世界が滅びる、とか言わないわよね」
あまりのドラえもんの剣幕に、さすがのルイズも少しだけびびる。
しかしドラえもんは、とんでもない、とばかりに身震いした。
「ああ、そんなことならどれだけよかったか……。
いいかい? ぼくがもとの場所にもどれないと…」
「も、戻れないと…?」
「のび太くんはジャイ子とけっこんすることになるんだぞ!!」
「…………………………は?」
目が点になるルイズに、ドラえもんはさらにたたみかける。
「それだけじゃない。大学入試にはらくだいするし、しゅうしょくはできない。
しかたなく自分で会社をはじめてみても、火事で丸焼けになってつぶれるんだ」
「な、なんかよくわからないけど、やけに具体的な未来ね…」
「そのときの借金が孫の孫の代になっても返せなくて……。
とにかく、年をとってしぬまで、ろくなめにあわないんだよ。
ああっ、かわいそうなのび太くん! ぼくがいなくなったばっかりに…!」
自分で口にしたことが相当ショックだったのか、ドラえもんはおいおいと泣き出した。
一方ルイズにはドラえもんが言っていることの意味はさっぱりわからなかったが、
とりあえず泣かれてもしょうがないので、なぐさめの言葉をかける。
「な、なに言ってるかわからないけど、あんたがいなくなればその『のび太』って子も、
きっと独り立ちするわよ。ちょうどいい機会じゃない」
しかし、それはドラえもんののび太への愛情に火を点けただけだった。
「あまい! のび太くんはぼくがいなくちゃおつかいにもひとりでいけないダメ人間なんだぞ!
かれがまたノラ犬においかけられて、ズボンのおしりをやぶかれていたら、
きみはいったいどうしてくれるんだ!」
「……そんなの知らないわよ」
一応相手の都合も聞かずに召喚してしまった負い目があるからマジメに話を聞いていたが、
やはりルイズは気の長い方ではない。だんだんとめんどうくさくなってきた。
―ていうかこいつ、ちょっと調子乗ってるわよね。使い魔のくせに、ご主人様ナメてんじゃない?
そう考えると何だか腹が立ってくる。
いやいやしかし、コントラクト・サーヴァントは失敗したではないか。
つまりこのタヌキは使い魔ではない訳で……。
(って、そうだわ! わたし、こいつにき、ききき、キスまでしてやったのに、
このタヌキってば、使い魔にならなかったのよね!
じゃ、じゃああのキスは無駄じゃない! 無駄キス…。そう、完全な無駄キスだわ!)
理不尽な事実に、一度は収まった苛立ちが、むくむくとルイズの中で大きくなってくる。
「き、きみのせいだぞ! わかってるのか!?」
だからドラえもんがキレ気味にルイズにつっかかってきた時、
ルイズは目の前の生意気な青ダヌキに『口撃』を開始することにした。
それは、ゼロゼロと呼ばれ蔑まれ続けてきたルイズが鍛え上げた唯一の武器だった。
244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:38:40 khhePqsQ
支援
245:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:40:02 ZJ8ugtNp
小学生のしずちゃんよりもまっ平らな胸を張り、傲然とドラえもんの前に立つ。
「で、その、あんた、ドラえもんとやら。とにかくあんた、ほんとに猫なの?」
「しっ、しっけいな…! ぼくのどこがネコらしくないって…」
「ぜんぶ」
あっさりと言われ、さすがのドラえもんも絶句する。
「青い猫なんて、トリステイン中、ううん、ハルケデニアを隅から隅まで探しても一匹もいないわよ」
「う、これは傷心の海の色というか、なみだでとそうが……。もとは黄色くて……」
「黄色い猫だっていないわよ」
「……………」
それはまさにその通りだったので、さすがのドラえもんも黙り込む。
「いいわ。百歩ゆずってそれはいいとしましょう。
青い猫だって、そうね、百万匹に一匹くらいならいるかもしれないもの。
でも、それ。それはどうなの? あんた、猫のくせになんで耳がないのよ」
「そ、それは……。ね、ねていたところをネズミにかじられて……」
―どっ。
ドラえもんがそう口にした途端、ルイズだけではなく、周りで見ていたギャラリーからも笑い声があがる。
「き、君ィ。同じうそをつくのでも、もう少しマジメなうそをつきたまえよ。
だいたい君はネコ型ロボットなんだろう? ネコがネズミにやられるなんてまるであべこべじゃないか」
特に大きな笑い声をあげた金髪の少年、ギーシュが堪え切れずにドラえもんにそんな言葉を投げかけた。
「ひ、ひとにはひとつくらい、どうしてもにがてなものが…」
なおも言い訳を続けようとするドラえもんを、
「理由なんてどうでもいいわ。とにかく耳はないわけよね」
ルイズが横からばっさりと切り捨てる。
「ないというか、なくなったというか…」
もともとあまり口のうまい方ではない。すでにドラえもんはしどろもどろだ。
そんなドラえもんに嗜虐の笑みを浮かべると、
「もう一度、聞くわ。あんたのどこが猫なの? 言ってみなさいよ」
「……う。そ、それは、ぼくにはこのとおり、りっぱなヒゲが…」
さっきまでの勢いはどこに行ったのか、おどおどと答えるドラえもん。
その姿が、ルイズの奥底に眠っていた『イケナイ』スイッチをオンにした。
「へぇ。……これがヒゲ?」
「い、いたい!」
ビイン、とルイズが無造作にヒゲを引っ張る。
「あんまり貧相だったから、ぜんっっっぜん、気づかなかったわ。
そこらの雑草拾って差しといた方がまだ見栄えがいいんじゃない?」
「ざ、ざっそう…」
あまりの言葉に絶句するドラえもんを、ルイズは優越感に浸りながら見下ろす。
自分に無駄キスまでさせた生意気な青ダヌキがはいつくばっているのが愉快でたまらない。
―ルイズ、小悪魔への目覚めであった。
「で、ほかには? もうおしまい?」
「あとは、しっぽ! そう、ぼくにはちゃんとしっぽがあって……」
そして、ルイズの迫力に押され、ヒゲの時の顛末も考えず
思わずそう口走ってしまったのがドラえもんの最大の失敗だった。
246:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:41:07 uxRoGdyr
ワンナウツ始まってた……支援
247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:42:10 1TygG8he
あーあ、言っちゃった支援
248:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:43:34 ZJ8ugtNp
その言葉を聞いたルイズはまさに水を得た魚。
ルイズは嬉々としてドラえもんの後ろに回りこんで、
「しっぽ! まさかあんたの言う『しっぽ』ってこの子供が使うオモチャみたいな、
小さなぼんぼんのついたこれのこと? こんな、ちょっと引いたら取れちゃいそうな…」
言いながらドラえもんのみょうちくりんなシッポをぐいっと引いた途端、
「あ、そこをひっぱったr……」
―コテン。
ドラえもんは急に黙り込み、その場に転がった。
だが、そんなことで同情するようなルイズではない。
「ふぅぅん。都合が悪くなったからって死んだフリ?
今さらそんなことしたってごまかされないだからね!」
そう言ってルイズはコチョコチョとドラえもんをくすぐり倒し、
それでも反応を見せないのでゴロンゴロンと好き勝手に転がしてみて、
そこまでしてもぴくりとも動かないので、ようやくこれが尋常な事態ではないと気づいた。。
「あ、あれ? 本当に動かないじゃない。ちょ、ちょっと?
どうしたのよ、ドラえもん。ねぇ、ドラえもん?」
それからも焦って色々とやってみるが、押しても揺すっても、
ドラえもんは全く動こうとしない。
まるで本当の人形でも動かしているようになすがままだ。
すると、それを見かねたのか、後ろからキュルケが近寄ってきた。
「ちょっとどきなさい、ルイズ」
「なによ。なんであんたが…」
「いいから。あんたに医術の心得なんてないでしょ。
あたしも得意じゃないけど、あんたよりは場慣れしてるわ」
そう言われて、ルイズはしぶしぶと場所を空ける。
「ふうん。これがルイズの、ね。ううん、妙なさわり心地ねぇ……」
「キュルケ! 遊んでないで、まじめに診なさいよ!」
ものめずらしげにドラえもんをペタペタといじりまわすキュルケに、
ルイズの叱咤が飛ぶ。
「はいはい。……えーと、どれどれ?」
様子を確かめるようにドラえもんの胸の辺りに顔を寄せ、
そこで急にキュルケの表情に驚きが混じる。
「まあ大変。ルイズ、この子、息してないわ」
「えぇっ!」
「オマケに、心臓も止まってる」
「うそっ…!」
ルイズはキュルケを押しのけ、ドラえもんに駆け寄る。
いくら憎たらしい相手であっても、殺すつもりなんてなかった。
「そんな、うそでしょ。だって、さっきまでは元気に動いてたのに……」
だが、現実は無情だった。
その体はすっかり冷たくなっていて、そこにはもう、生命の徴候はない。
「そんな、そんな……」
もしかすると、ほんの少し運命の歯車が違う風に回っていれば、
相棒にもなっていたかもしれない存在だったのに。
それを、こんな形で失うことになるなんて。
「あぁっ……」
目の前が真っ暗になってその場に膝をつく。
後ろからつぶやかれる「いやあのねルイズ。この子カラクリなんだから息してなくて当たり前…」
というキュルケの言葉ももう耳に入らない。
わきあがる後悔の念に押されるように、ルイズは叫んだ。
「ドラえもーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
『ドラえもん のび太のパラレル漂流記』 第一話 完
249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:44:57 uxRoGdyr
完wwwwwwww
乙でした
250:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:47:55 1TygG8he
投下終了か?
251:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:50:41 EYe/MRoT
ちょwww
歴代最強級の使い魔なのにいきなり死亡(機能停止だけど)で終了かよ!w
252:ドラえもん(マンガ版)
08/10/15 01:51:05 ZJ8ugtNp
投下手間取って申し訳ない。これで一話全部
今回は初回なんで全然ナンセンスではないんだが、次回以降、
のび太不在のため八巻前半のルイズみたいにやけっぱちなドラえもんが
ひみつ道具の力で数々の事件を身も蓋もなく解決していく予定
このスレにこの作風が受け入れられるのなら、だが
253:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:53:05 kgOKGFE5
乙乙w
その前にだ、のび太不在なのにタイトルにちゃっかり入ってるw
254:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:53:43 1TygG8he
乙ー
ドラえもんをネタにするときの最大の問題は、ひみつ道具に関する知識格差だと思うw
こういうシュールなノリも楽しいと思うよ
期待して待っておく
255:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:54:11 77t2aF39
少なくとも、自分は受け入れるよ・・・全力でな!
256:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:55:22 uxRoGdyr
良かった、続くのねw
劇場版補正されたのび太さんとジャイアンの登場が楽しみだ
257:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 01:56:58 lbRDDRxd
暴走するプロアクションリプレイってとこか
地球破壊爆弾はお約束だな
で、お風呂覗かれる役はどなたですかね?
258:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:09:15 VPdVoZj3
初投下です。投下したいんだが、量が多いんで避難所に行ったんだけど、最後のレスが一時間半前
誰も居なくても、勝手に投下してよいの?
259:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:14:18 dJpvco0J
流石漫画版、台詞がキツイwwwwww
260:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:15:50 pygQ4S5V
>>258
全然問題ない
避難所とはそういう場所
261:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:16:08 FO0qMGFt
>>258
ここの書き込みの速さと量が異常なだけで
他のスレとか掲示板ではそんなモノですよ。
262:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:40:00 HzCXptzo
しかし、単純な戦闘タイプのキャラじゃない奴の召喚は話し作り難しいな‥‥
いや熱気バサラのことなんすけどね。
263:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:43:27 0ZF1hmOI
あい。んじゃいってきます。
264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 02:45:51 EYe/MRoT
>>262
虚無の力の源は精神力。
なればバサラさんの歌エネルギー大活躍ではないですか。
265:アクマがこんにちわ
08/10/15 02:57:00 X+P0ttMg
スイませェん、今誰もいませんよね?
投下します。
266:アクマがこんにちわ
08/10/15 02:58:07 X+P0ttMg
がたがたがたと音を立てて、馬車が進んでいく。
音の割には振動が少ないのは、貴族御用達の車体だからであろう。
その馬車に乗っているのは、人修羅とルイズ。
人修羅は魔法学院の制服と同じシャツとズボンを着用し、その上からジャケットを着ている。
傍らには杖の代わりにデルフリンガーが立てかけられており、すぐにでも引き抜けるようになっていた。
これで半ズボンなら英国に似てるかな? と考えていると、隣でうとうとしていたルイズが眠気に負け、こつんと人修羅の肩に頭を乗せてきた。
人修羅はその様子に微笑み、窓から外をちらりと見た。
ボルテクス界では見られなかった…いや、日本ですら見ることのできない、広大な草原や牧場が広がっている。
のどかな風景を見ながら、人修羅は今朝のことを思い出していた……
■■■
ヴァリエール家へと帰省する当日、前日のうちに手配していた馬車が、夜明け頃に魔法学院へとやってきた。
門前で待っていた人修羅は御者に挨拶すると、ルイズに馬車の到着を知らせ、ルイズと一緒に馬車へと乗り込む。
乗り込む前に人修羅は、車体を支えている板ばねを見て「へぇー」と感心の声を漏らした。
「何か感心するようなものでもあったの?」
馬車が走り出した後、向かい合わせで座ったルイズが、意外そうに聞いてきた。
人修羅はいろんなことを知っている、今まで聞いたことのない魔法の理論と、ハルケギニアと違う文化の話は、ルイズにとって大きな興味対象であった。
「ああ。板ばねがさ、車輪と車体の間に入っていたから、この世界にも乗り心地のいい乗り物があるんだと思って」
「板ばね? あなたの世界じゃ珍しいの?」
「珍しくは……ないな。トラックとかダンプって言うんだけど、荷物を運ぶための車には板ばねが使われてるって聞いたことがある。他にも空気を使ってるらしいけど」
「空気?まさか、風系統の魔法を使って乗り心地をよくしてるの?」
「魔法じゃないよ。でも原理は一緒かな、伸び縮みする筒に空気を入れて閉じこめると、ゴムみたいに伸び縮みする筒ができるんだ。それをばねの代わりに使うのさ」
「ふうん、レビテーションとは違うんだ…あ、でもそれって『エア・ハンマー』みたいな空気の固まりの上に乗っているのと一緒よね」
「まあ、そんな所かな。俺は専門家じゃないからよく分からないけど」
「ところでさ、この馬車って…借りるのに相当…お金かかるのか?」
「何でそんなこと聞くのよ」
「この前ブルドンネ街に行ったとき、こんな大きさの馬車は見かけなかったし」
「これはね、ブルーム・スタイルって言うの。平民が使うコーチ・スタイルと違って乗り心地もいいし、貴族ならこれぐらいの馬車は当然よ」
ルイズは腕を組んで自慢げに言い放った、が、すぐに手を解くと両手を大げさに広げて、首を横に振った。
「…本当はもう一回りか二回り大きい馬車を借りたかったけど、オールド・オスマンが『お忍びで帰省するんだから、必要最低限のものにしなさい』って言ったから……」
「お忍びねえ…この馬車でも、お忍びとはとても思えないんだけどなあ」
「そんなこと無いわよ、お姉様はいつも仰っていたわ、ヴァリエール家はどんな時でも、最低でも侍女を二人以上と、幌馬車をつけなさいって」
「……」
人修羅頭をぽりぽりと掻きつつ、ルイズの言葉から導き出される馬車一行を想像した。
四人、いや六人は乗れそうな馬車を四頭の馬が引き、その後ろには幌付きの馬車があり、中には着替えなどの荷物を詰めたバッグと、侍女が二人……
侍女役にはシエスタの姿を想像したが、これはご愛敬……
「なんて言うか、凄いなあ」
「当然でしょう。ヴァリエール家は王家の傍流でもあるのよ。トリステイン王女の危機を救った祖を持つの。馬車三台でも少ないぐらいよ」
「はあ。さいですか」
人修羅は思わず『まるでファンタジーだな!』と叫びそうになった。
267:アクマがこんにちわ
08/10/15 02:59:02 X+P0ttMg
…とまあ、そんな風に喋りながら馬車が進んでいったが、日が高くなってくるとルイズも眠いのか、時々目をしょぼしょぼとさせていた。
「大丈夫か?」
「…ん、ちょっと眠いかも」
「どうせ夕べはほとんど寝てないんだろ?今のうちに眠っておいたらどうだ、どうせ夕方近くならないと到着しないんだろう?」
「そうね、ちょっと眠るわ…ふわ」
ルイズは手で欠伸を隠しつつ、人修羅の隣へと席を移した。
「?」
「ゆ、揺れて椅子から落ちそうになったら、押さえるのが使い魔の仕事よ」
「なんだよその取って付けたような仕事は。別に良いけどさ」
「……つべこべ言わないの…ふわぁ……」
■■■
そして場面は冒頭に繋がる。
ルイズが人修羅の肩に体を預け、寝息を立て始めてから、一時間弱の時間が経った。
窓から外を見ると、野草の小さな花が咲き乱れる草原が見える、その中に点在する木々の影は、真下を向いている。
「昼か…なあデルフ、起きてるか?」
人修羅は、デルフリンガーの柄を顔と同じ高さに持ち上げると、が小声で呟いた。
『おーう。起きるも何も、剣は眠れねえよ』
「そりゃすまなかった」
かちゃかちゃと小さい音で鍔が鳴る、どうやらデルフなりに気を遣って、小声で喋っているらしい。
『第一、おめえも眠る必要は無いんだろ?』
「まあな。でもまあ、睡眠が無いと人間の生活を忘れちゃいそうでさ」
『そんなもんかねえ』
「そんなもんさ…ところで、ちょっと相談なんだが…」
『言ってみ』
人修羅はデルフリンガーを右手で掴み、柄を肩に乗せた。
「これからルイズさんの両親に会うかもしれない」
『まあ、そう思うのが当然だわな』
「デルフは、伝説の使い魔ガンダールヴの左手…だろう?この世界じゃちょっと知名度が高すぎるんじゃないか?」
『知名度は高ぇよ、でもブリミル由来のアイテムって呼ばれてるものはいくらでも在るんだ、それこそ与太話扱いだね』
「デルフみたいなインテリジェンスソードも、与太話扱いか」
『今は自我を持たされたガーゴイルもガリアで作られてるし、喋る奴も珍しくはないとか、武器屋の親父がよく悪態ついてやがった』
どこか懐かしそうに呟くデルフリンガー、それが6000年生きた剣の感性かと思うと、人修羅は少し人生の先輩に敬意を払おうかと思えてきた。
「なるほどね…。とりあえず、この『ガンダールヴ』と『デルフリンガー』は、オスマン先生から口止めされてる、って事で口裏を合わせておこう」
『おう、分かった。後で嬢ちゃんにも口裏を合わせておけよ』
「そうする」
■■■
268:アクマがこんにちわ
08/10/15 02:59:49 X+P0ttMg
がたごと、がたごとと馬車が進む。
今、丁度昼頃だろうか?と思いつつ外を見たところで、ゆっくりと馬車が静止する。
人修羅がルイズの肩を軽く揺すると、ルイズが目を覚ました。
「うぅん…なに?旅籠にでもついたの?」
「休憩じゃないかな?」
(……!)
(……)
ふと、外から何者かの声が聞こえてきた。
「ん…?」
目をこするルイズを横目に、人修羅が外の様子を見ようと扉に手を伸ばす。
だが、その手がドアノブを掴む前に扉が開かれ、眼鏡をかけた金髪のルイズ…といった感じの女性と顔を合わせる羽目になった。
ふと、ロングビルさんをちょっと厳しくしたような感じかな?と思ったが。
「どきなさい下郎」
ちょっとどころじゃ無かった。
「え、ええと、どちら様で」
「えっ、エレオノールお姉様ー!?」
「ちびルイズ!お供もつけずにこんな下郎を馬車に乗せて!何を考えているの!」
金髪の女性は喋りながら小声でレビテーションを操り、人修羅の体をぽいと馬車の外に放り投げた。
そのまま入れ替わるように馬車の中に乗り込み、ルイズの顔に手を伸ばす。
「いだい! やん! あう! ふにゃ! じゃ! ふぁいだっ!」
ルイズは頬をつねりあげられた。
プライドの高い、ちょっと高慢で負けず嫌いなルイズが、文句も言えずに頬をつねり上げられている。
その光景を見た人修羅は、引きつったような笑みを浮かべた。
「ハハ…マジかよ、ルイズさんを手玉に取ってる。上には上が居るんだなあ」
『嬢ちゃんの強化版って感じだなあ』
人修羅とデルフは、数十分にわたって続くエレオノールのお説教を外で聞いていた。
■■■
さて、それからしばらくして、人修羅はルイズ達とは別の馬車に乗り、ゆっくりと流れていくヴァリエール領の景色を眺めていた。
先ほどから、ルイズとエレオノールの乗る馬車から声が聞こえてくる。
『ちびルイズ。わたくしの話は、終わってなくってよ?』
『あびぃ~~~、ずいばぜん~~~、あでざばずいばぜん~~~』
人修羅の耳は小さな声も聞き逃さない、ルイズが頬をつねられ、半泣きで謝っている声が聞こえてくると、その姿が容易に想像できる。
先頭の馬車は、エレオノールが乗ってきた馬車であり、今はルイズとエレオノールが乗っている。
二番目の馬車は、ルイズと人修羅が乗っていた馬車だが、今はエレオノールの従者と侍女が乗っている。
三番目の幌馬車には、エレオノールの従者と侍女が乗っていたが、今は人修羅一人と、デルフリンガーが一振りしかいない。
『相棒、ひとりぼっちで寂しそうだな』
ぼけーっとしている人修羅に、デルフリンガーが話しかける。
すると人修羅は、ちらりと御者の姿を見た。
馬を操る御者はゴーレムらしい、人間そっくりの姿をして、見事に馬を操っているが、一言も喋らない。
「寂しいとは思わなかったが…御者までゴーレムだと寂しい気がしてくるな」
『そうかい?』
「ああ。……経験あるんだよ、こういうの」
269:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:01:46 uxRoGdyr
オレサマ、オマエ、シエン
270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:01:56 kgOKGFE5
人修羅帰還!支援!
271:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:04:10 eQeSrmqj
支援、こんな時間になんてもんを投下してくれるんだ。
272:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:06:39 xWJAy2kC
支援
273:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:06:54 uxRoGdyr
サルサ?
274:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:07:08 X+P0ttMg
それっきり、人修羅は何も語らなかった。
言いにくいことだと察したのか、デルフリンガーも聞き返そうとせず、沈黙を選んだ。
流れていく景色を見ながら、人修羅はボルテクス界で共に戦った幾人もの仲間を思い出した。
マネカタから鬼へと転生した仲魔、フトミミ。
彼は仲間を大切にする心を持っていた、そして人修羅の持つ孤独感にも気が付いていたのだろう、人修羅がどんなに強くなっても、変わらぬ態度で接してくれた。
もしボルテクス界にいたマネカタ達が、ゴーレムのように意志を持たない人形だったら、自分は心が壊れていたかもしれない。
彼らは人間的で、時には人修羅に無理難題を押しつけることもあったが、今思えばソレも楽しい、笑って許せる程度の物だった。
トウキョウがボルテクス界に変容する前の日本は、ゴーレムのような、都合の良い道具ばかりを発展させようとしていた気がする。
だからだろうか、人間味の無い力に憧れる社会は、いつかその無機質な力に人間が飲み込まれていく。
だからこそ平成の世の中に、アクマ求められたのだ……
■■■
魔法学院を出て、二日目の昼。
ラ・ヴァリエールの領地に到着した人修羅たちだったが、屋敷に到着するのは夜になると聞かされ、人修羅は馬車の中で一人冷や汗を流していた。
「日本じゃ考えられない規模だな」
そう呟いて、今までの行程を思い出す。
領地に入ってから屋敷につくのが半日後、これまで農地や森や山や川や草原やら牧場やらを目にしていた。
世界各地の列車に乗って、車窓から見える景色を堪能する番組があったが、それを馬車で再現したような感じだった。
ぼんやりとした想像しか出来ないが、まあ要するに、ルイズの実家は東京ドーム、いや東京ネズミーランドよりはるかに大きいらしい。
市町村で言えば、市ほどの広さだろうか、もしかしたら県ほどあるのかもしれない。
「大地主、ってレベルじゃないよなあ……」
ヴァリエール家は公爵家だと言っていたが、時代劇に出てくる藩主ぐらいの地位なのだろうか?
大貴族というものは恐ろしい、と人修羅は思った。
更に驚いたのが、魔法学院では決して見られないルイズの貴族っぷりである。
とある旅籠で小休止したルイズ&エレオノール一行だが、旅籠に馬車を止めたとたん、どどどどどどどどどどど!という足音が聞こえてきた。
それは、勢いよく旅籠から飛び出てきた村人達の足音だった、村人達は馬車から降りてきたルイズたちの前で帽子を取り、挨拶している。
「エレオノールさま! ルイズさま!」
と口々にわめき、ぺこぺこ頭を下げていた。
人修羅は呆れたような顔でそれを見ていたが、ルイズの従者役なのでじっと見ているわけにも行かない。
馬車から降りルイズ達に近寄ろうとしたが、人修羅もまた村人達に囲まれてぺこぺこと挨拶をされてしまった。
「俺は貴族じゃないんですけど……」
あんまりにも頭を下げられるので、人修羅は微妙に恐縮し、そう返事した。
「とはいっても、エレオノールさまかルイズさまの御家来さまにはかわるめえ。どっちにしろ、粗相があってはならね」
しかし農民達はそんなことを言って頷きあう。
魔法学院では考えられなかったが、ルイズの家来はかなりの立場として見られるらしい。
「背中の剣をお持ちしますだ」だの「長旅でお疲れでしょう」などと騒いで、人修羅の世話まで焼こうとするのだから、人修羅は愛想笑いしかできなかった。
275:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:08:20 X+P0ttMg
エレオノールが口を開いた。
「ここで少し休むわ。父さまにわたしたちが到着したと知らせてちょうだい」
その一言で、ルイズ達に群がっていた中の一人が直立した。
魔法学院の生徒と、同年代に見える少年が馬にまたがって、走り去っていった。
その間に一行は旅籠の中に案内された、人修羅はどうしようかと悩んだが…とりあえず旅籠に入るのは止めておくことにした。
誰もいない馬車の中で、ごろんと寝ころぶ人修羅を見て、デルフリンガーが呟く。
『なあ相棒、嬢ちゃんの側にいてやらないで、いいのかい?』
「今俺が行っても邪魔になるだろう、姉妹水入らずで話したほうが良いさ」
『怖いんだろ?』
「否定はしない」
そんな話をしている間にも、ルイズが地雷でも踏んだのか、エレオノールの説教する声とルイズの泣きそうな声が聞こえてきた。
『あの二人、飽きねーなぁ』
「……行かなくて良かった」
■■■
夜もふけた頃、人修羅は何かに気づき、馬車の幌から顔を出し外を確認した。
前を行く馬車の脇から、丘の向こうが見えると、そこには大きなお城が見えている。
魔法学院どころか、トリステインの宮殿並に大きいそのお城へ、街道が続いているように見える。
「もしかして、あれ?」
高い城壁、深そうな堀、城壁の向こうに見えるいくつもの高い尖塔。
旅番組で見かけるお城そのものであった。
その瞬間大きなフクロウが、ばっさばっさとエレオノールの馬車へと飛び込んでいった。
耳を澄ますと、「おかえりなさいませ。エレオノールさま。ルイズさま」という誰かの声が聞こえてくる。
「まさか、あのフクロウの声か?デルフどう思う」
『どうって、喋るフクロウなんて珍しくねーだろ?』
「……そうだよな、よく考えたらお前喋る剣だもんな」
更に、耳を澄ます。
「トゥルーカス、母さまは?」
エレオノールの声だ、トゥルーカスというのはフクロウの名前だろう。
「奥さまは、晩餐の席で皆さまをお待ちでございます」
なんか腹が立つぐらい淀みなく答えているフクロウ。
「父さまと、ちぃ姉さまは?」
今度はルイズだ、どことなく不安そうな声に聞こえる。
「旦那さまも、奥様とご一緒にお待ちになっておられます、カトレア様もルイズ様のお帰りを今か今かと待ちわびておられますよ」
そうこうしているうちに、一行は城へと近づいていた、お堀の直前で静止すると、向こうに見える門と跳ね橋がゆっくりと動き始める。
よく見ると、門柱の両脇に控えた巨大な石像が、じゃらじゃらと音を立てて跳ね橋の鎖をおろしている。
身長20メイル近い門専用ゴーレムが跳ね橋を下ろす姿は、ボルテクス界で非常識なものを見慣れた人修羅でも驚く程壮観だ。
276:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:10:10 X+P0ttMg
■■■
豪華絢爛!
と表現するしかない。
少ない語彙からは、すばらしいです!とか、高そうですね!とか、そんな言葉しか出てこない。
それほど城の中は凄かった。
壁を見ても床を見ても天井を見ても、調度品を見ても、メイドさんを見ても高級そうな城内は、人修羅を驚かせた。
いくつもの絵や美術品が飾られた部屋を何個も通り、ようやくダイニングルームへと到着すると、そこもまたとんでもない部屋だった。
人修羅はルイズの使い魔だという事で、晩餐会への同伴が許されたが、正直なところ逃げ出したい気持ちがあった。
ルイズの椅子の後ろで、護衛のように控えるだけなのだが、それでも30メイルはありそうなテーブルを見ると嫌でも緊張する。
そんな巨大なテーブルにルイズの一家五人分しか椅子が準備されていない、しかも周囲に20人ほどの使用人が並んでいる。
魔法学院で貴族の生活に多少は慣れた気もするが、そんなのは幻想だった。
テーブルマナーのテの字も分からない人修羅には、針のむしろのような空間。
もし、この場所で一緒に夕食を、と言われたら本気で逃げ出していたかもしれない。
上座に控えた公爵夫妻は、到着した娘たちと人修羅を見回した。
人修羅はその迫力に、思わず「親子だ…」なんて考えてしまった。
人修羅の力や知識のおかげで、ルイズの高慢さはだいぶ落ち着いていたが、それでも貴族らしい高飛車さはある。
それを手玉に取るエレオノールは、とんでもない高飛車オーラを放っていたが、ルイズの母はもっと凄い、この母にしてあの娘ありだ。
ルイズの父親は、母に比べると迫力こそ薄い気がしたが、それがかえって威厳を感じさせている。
二人とも歳は40程に見えるが、もしかしたら50ほどかもしれない、何せ16才のルイズに年の離れた姉が二人いるのだ、何というか若々しい夫妻だと思う。
ふと気が付くと、ルイズがやけに緊張していた。
そっと視線を動かすと、ルイズの母と人修羅の目が合った。
鋭い刃と、今まさに吹き出んとする火炎放射器の種火のような眼光が人修羅を射抜く。
生まれつきの才能と、英才教育と、戦いの中で磨かれた光だと思った。
(やっぱり顔にまで入れ墨のある男が使い魔じゃ、納得しないよねー)
そんなことを考えながら人修羅は、もう一人のルイズの姉を見た。
カトレアというその女性は、ルイズの桃色がかったブロンドにごく近い、どうやら母親ゆずりの髪質らしい。
「母さま、ただいま戻りました」
と、エレオノールが挨拶した。
すると公爵夫妻は静かに頷く、それを合図にして三姉妹がテーブルについた。
丁寧かつ上品に、給仕たちが前菜を運び……晩餐会が始まった。
後ろに控えていた人修羅は、ボルテクス界でカツアゲにあったのと同じぐらい息がつまりそうだと思った。
誰も喋らない、物音すらほとんど無い。
堅苦しいと思っていた魔法学院での食事がとても楽に感じられる、それぐらいこの空間は厳しい。
デザートと、紅茶が運ばれたのはそれから何時間後だろうか。
実際には一時間も経っていないが、五時間ぐらい経過したような気がする。
長い長い沈黙を破るようにして、ルイズが口を開いた。
「あ、あの……、お父様」
公爵は返事をしない、その代わり、公爵夫人がルイズに声をかけた。
「ルイズ。なぜ突然帰省などしたのですか」
ルイズはどこかビクビクしながら、使い魔を召喚したこと、使い魔が異国の魔法を使えること、使い魔が治癒のマジックアイテムを作成したこと……
それがカトレアの病を治す手だてにならないかと思ったこと、オールド・オスマンに相談し帰省の許可を得たことを話した。
277:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:11:07 uxRoGdyr
支援
278:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:11:20 X+P0ttMg
「つまり、先住魔法を使う亜人なの? いえ、そんなことより、貴女はサモン・サーヴァントを使うことが出来たわけね?」
エレオノールの問いかけに、ルイズは頷いた。
それを見たもう一人の姉、カトレアは優しそうな笑みを浮かべてルイズを見た。
「良かったわ、ルイズが魔法を使えて。使い魔さん、お名前を教えていただけないかしら」
「え? ああ、俺は人修羅といいます」
貴族相手とは思えないぶっきらぼうな態度に、周囲がヒヤッとした。
エレオノールに至っては不機嫌そうな表情を崩しもしない。
「人修羅さんは、ルイズを守ってくれているのね?」
「まあ一応」
人修羅が笑みを浮かべて答えたが、そこで公爵の横やりが入った。
「カトレア、話は後にしなさい」
すっ、と口を閉じるカトレアだが、相変わらず嬉しそうな笑みを浮かべたままだ、それを見たルイズの緊張もだいぶ解れている。
厳しい長女に優しい次女か…と思ったところで、公爵が人修羅を見据え、呟いた。
「人修羅と言ったな、ふむ。亜人が召喚されたなど、聞いたことが無いが…」
「お、お父様、人修羅は亜人じゃありません、人間ですわ。今は亜人ですけど……」
ルイズがおそるおそる訂正しようとするが、どこかぎこちない。
「人間?だとしたら余計にサモン・サーヴァントで呼び出された前例が無いではないか」
公爵がちらりとエレオノールに視線を移した。
「ええ、アカデミーの記録では、サモン・サーヴァントの研究で本や金属が召喚されたのみですわ」
「あ、あの、わたし、本当に、召喚に成功したの!だからっ」
ルイズは叫ぶように言葉を放った。
「落ち着きなさいルイズ、貴女が召喚したと言うのなら、疑うわけはありません。…貴女は、カトレアの治癒のため使い魔を連れて帰省した、そうですね?」
公爵夫人の言葉に、ルイズが小声で「はい」と答えると、婦人もまた満足そうに頷いた。
公爵は婦人からの目配せを受け、頷く。
そして人修羅とルイズを見つめると、重々しく口を開いた。
「ルイズ、オールド・オスマンが帰省の許可を出したのなら、使い魔には相応の実力があるのだろう。カトレアの診察を認めるが…エレオノール、立ち会いなさい」
「はい」
とりあえず、人修羅は使い魔として認められたらしい。
ルイズはほっとして胸をなで下ろした、が、そこでまたエレオノールが口を開いた。
「ところで……、先ほど言っていた、治癒のマジックアイテムだけど、どういった物なの?」
ルイズはぎょっとして、硬直した。
よく考えたらマジックアイテムがどんな物なのかは、よく知らないのだ。
「ひ、人修羅、答えなさい」
微妙に声が裏返りつつ、ルイズが呟く。
人修羅は公爵夫妻とルイズの姉たちに注目されて、微妙に緊張している、なんか高校の面接を思い出すようだ
「正確には、魔法学院の教師ミスタ・コルベールに協力を仰いだもので、私一人で作った物ではありません。
召喚されて間もない頃、俺…私の魔法が先住魔法だと言われたのですが、あいにく先住魔法や系統魔法といった分類があるのを知りませんでした」
人修羅は喋りながら、ズボンのポケットを探り、2サントほどの大きさがある、緑色の結晶体を取り出した。
「自分の魔法と、ハルケギニアの系統魔法の相違点を知る研究の一環として、マジックアイテムの作成を行っていました。これはその一つです」
壮年の執事が給仕が近寄って、人修羅の脇でお盆を差し出した、人修羅はその上に結晶体を置く。
執事は音もなくエレオノールに近寄り、その結晶体を見せた。
「ふぅん…これがそうなの。」
そう呟くとエレオノールは杖を取り出し、ディティクト・マジックで結晶体を調査しようとした。
魔法アカデミーの研究員たるエレオノールなら、マジックアイテムの構成などすぐに見破ってしまう。
しかし今回ばかりは、膨大な知識と経験をもってしても計り知れぬものがある、と知ることになってしまった。
たった2サント程の、小さな結晶体に、途方もない”力”がこもっている。
トリステインの王女アンリエッタが持つ杖には、水晶玉がはめ込まれており、そこに魔力を蓄積しておけるのは研究員が皆知るところであった。
エレオノールは、それに似た魔力の蓄積体や、風の力が込められた『風石』の研究をしたことがある。
279:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:12:18 X+P0ttMg
この結晶はそのどれとも違う。
もし、この結晶に込められた魔力が治癒ではなく、火の魔法だとしたら…?
おそらくこの屋敷が跡形もなく吹き飛ぶぐらいの力が込められている…そう気づいて、エレオノールは珍しく慌てたような表情を見せた。
「……ッ!」
杖を人修羅に向け、ディティクト・マジックを行使する。
人修羅の周囲に光る粉のような物があらわれ、人修羅の体へと吸い込まれていった。
「あっ」「ちょっと待って」
ルイズと人修羅は制止しようとしたが、後の祭り。
エレオノールの顔色がみるみる青ざめ……ふっと意識を失い、椅子から転げ落ちた。
■■■
280:アクマがこんにちわ
08/10/15 03:14:07 X+P0ttMg
所変わってガリアの王宮グラン・トロワ。その離宮プチ・トロワでは。
「くすぐったいホー」
「ああ、ごめんね、でも柔らかくていい臭いで……なんて言うんだろうね、癒される、そうだ体じゃなくて心が癒される気がするよ」
ベッドの上で枕代わりになったヒーホーに、イザベラが顔をこすりつけていた。
夜になるとイザベラは人払いをする、イザベラとヒーホー二人きりの時間になると、イザベラはヒーホーに抱きついたり顔をこすりつけたりしている。
「ああ、かわいいねえ、もうホント幸せだよ……」
にくったらしい従姉妹のことや、自分に興味を示さない父王のことなど、どうでもよくなってくる。
ヒーホーから聞いた話では、もっと大きいヒーホーもいるらしい。
また、時々黒いガクセイボウ?という帽子を被ったモミアゲの目立つヒーホーも見かけられるとか。
「ねえヒーホー。お前を召喚できたことが、私にとって唯一、本当の魔法かもしれないよ…」
とろんとした目つきでそんなことを呟くイザベラ、ヒーホーは体をゆすってイザベラから離れると、ベッドの脇にちょこんと直立した。
「そんなことは無いホー、イザベラちゃんなら、いろーんな魔法が使えるホー」
「魔法ねえ……自慢じゃないけどさ、私はちょっと風を出して、ほんのちょっと傷を付けることしかできないのさ。
……ああ何か不思議だねえ、ヒーホーになら私、何だって言える気がする……」
「う~ん、イザベラちゃんはすごく魔法の力が強いはずだホー……」
ヒーホーはちょっと腕を組んで、首をかしげる。
その仕草を見てイザベラがだらしなく頬を緩めた。
「そうだホ!他の魔法を試してみればいいホー」
「他の魔法?」
イザベラがきょとんとして、聞き返した。
「もうすぐスカアハが来てくれるホー、ボクからもお願いするから、イザベラちゃんも魔法を習ってみるといいホー」
イザベラは体を起こして、ベッドの上からヒーホーを見下ろした。
普段のイザベラを知るものなら考えられない、いわゆる女の子座りである。
「スカアハって誰だい?」
「まほーと戦いの先生ホね。生徒も沢山居るって聞いたホよ」
今度はイザベラが首をかしげた、魔法の先生とは、ヒーホーのような存在なのだろうか?
ヒーホーがヒーホーに魔法を教えている光景を想像して、またもやイザベラはにやにやと顔をほころばせた。
「…と、ところで、そいつは何ができるんだい?」
「う~ん……毒消をしたり、竜巻を起こしたり、ヒーホーよりおっきな氷を作ったりするホね」
そう言われて、ヒーホーが作った氷と、かき氷を思い出した。
ヒーホーより一回りか二回り程度大きな氷を作るぐらいなら、メイジ全体で言えばたいしたことはない。
「ふぅん…まあいいか、機会があったら教えて貰うよ」
イザベラは子供をあやすように呟きつつ、ヒーホーを抱き寄せた。
「弟子にしてもらえるよう、ボクからもお願いしておくホね」
「はいはい」
二人はいつものようにベッドに入ると、杖を降りランプを消す。
イザベラは、ヒーホーを抱きしめている間だけ、王位争奪の争いによる不安を忘れることができる。
ここ数年得られることの無かった安眠を、イザベラは心の底から喜んでいた……。
ーーーーーーーー
今回はここまでです。
281:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:16:07 uxRoGdyr
乙っしたー!
頭痛くなって来たので、起きたらありがたく読ませてもらいます
282:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 03:42:37 R9qi9NuD
寝ようとした瞬間待ちわびていたアクマの人が来てどうしてくれるんだ乙!
最早厨レベルの強さを誇る人修羅なのに、マジックアイテム作成で評価されるという力の見せ方が良いですね~
イザベラも可愛いよイザベラ。そしてさりげにもうすぐ発売日のライホーくん吹いたw
カトレアは果たして治るのか。次回も期待しています!
283:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 05:51:01 HJio3QBU
寝る前にいいもの見れたー
284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 06:16:50 AInCsnju
乙っでぇ~す♪
あああああ~~っ イザベラが可愛くなってるョ~~^^
癒~さ~~れ~~~る~~~~っっ!!
285:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:42:10 yeCWLqRx
>>280
お疲れ様ですー。
って、スカアハ様ー!?まさか、スカディ様になったりしないよね?ね?
クランの番犬みたくゲイボルグ振り回すイザベラ様が見たいです。はい。
投下よろしいならこのままさせてもらいます。
286:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:42:56 yeCWLqRx
14,閃光のジャン・ジャック
姫殿下からの依頼を受けた翌日はとても良い天気だった。
未だ朝もやが残る中、マーティンとルイズは馬に鞍をつけている。
内容があまり人に知られるべきでない事もあって、
皆が動き出す前に行こうという話になったのだ。
「ここから、アルビオンまでは遠いのかい?」
地理の事はタムリエルからどの辺かを探す辺りでだいたい覚えたが、
距離的にどの程度かまではそれほど調べていなかった。
内陸よりもどこかタムリエルと関係が無いかについて調べていたのだから、
ある種当然かもしれない。
「そうね。まずは港町のラ・ロシェールに早馬で二日、そこから船に乗って何日か掛かってあっちの港に着くから、
早ければ三、四日程で行けると思うわ」
希望的観測で語るルイズ。五日後には全て終わって帰路についていることを望んでいた。
考えてみれば、結構えげつない事を安請負したかもしれない。
後悔は無いが、しかしもし失敗したらどうしよう。
ああああ、私ったら姫さまを窮地に立たせるような真似をしているんじゃないかしら。
ルイズは決して考えずに行動するタイプではない。
目先の事で一時的に思考能力が無くなるだけなのだ。しかしそれは常習化してしまっている。
無二の友人。しかも自身が慕う姫殿下の頼みとあらばそうなっても仕方ないが、
癖としてはあまりよろしくない物である。
治したくてもなかなか治せないのは辛いものだ。
「ルイズ?どうかしたのかい」
一人妄執を頭の中で繰り広げ、どこかの斧を振り回す狂エルフの様に、
ブツブツ何かを言い始めたルイズにマーティンは声をかけた。
「え、いや、な、なんでもないのよ?む、むむむ武者震いよ!」
震えてすらいなかったが、まぁいいかと出発の準備を進めるマーティンだった。
緊張しているのだろう。そっとしておいた方が良い。
生暖かい目で見守られるルイズは、ああああと頭を抱えた。
よく姉達や親にされた目であった。
最近はツェルプストーにその目で見られる事が多い。
またやってしまった。そう後悔してさらにブツブツ言いながら、
出発の準備を始めるルイズだった。
「お二人とも、どこへ行かれるんですか?」
そんな今から戦場へ行くなど考えられない穏やかな雰囲気をぶち壊すかの様に、
二人の背後から声が聞こえた。驚いて振り向くと黒髪のシエスタがいた。
「あ、ああ。君だったのか、シエスタ。しかし、驚いたな。急に現れるなんて」
妄想でワンテンポ遅れているルイズに代わり、マーティンが言った。
シエスタは笑っている。
「気配を消して仕事をするのも使用人の仕事の内ですから。それより、こんな朝早くからどこへ行くんですか?」
「すまないが、言えないんだ」
287:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:43:44 yeCWLqRx
正直に言う。シエスタはそうですか。と言って笑う。
彼女の手にはバスケットがあり、それをマーティンに渡した。
昼食に食べてくださいとサンドイッチ等が入っていた。
「もし遠出されるのでしたら、スヴェルの月が近いのでそれを考えて動いた方が良いですよ?」
「何日後なのかしら。シエスタ?」
含みを持って笑う彼女にルイズは聞いた。気配を消すのも仕事と言ってのけたのだ。
おそらく昨日の話を聞いていたのだろう。
だが、それを二人に言う訳でもなく助言を呈す彼女に、
ルイズは使用人としての職務を全うしようとする、職業人の誇りを見出した。
決して口に出すべきでない。しかし感謝しなければ。彼女はそう思い、
おそらく聞かれたがっている事であり、自分達にとっても重要な事を聞いた。
まさか彼女が姫さまから聞くよりも先にこの件に関して知っているなんて、
そんな事思ってすらいない。さらに言うなら間諜とかもありえないと思っていた。
マーティンと医務室で話をしていたこのメイドの事を覚えて、
その後ある程度親しげに話したりしていたのだ。つまり信頼している。
「ええ、今日を入れて三日後ですわミス・ヴァリエール。どうかお気をつけて…」
シエスタはそう言って頭を下げた。
「なら、このまま普通に行けば良い訳だね。ちょうど良いタイミングだ。これこそ始祖のご加護とか、そういうのかな?ルイズ」
幸先の良さに安心した風にマーティンは言った。
「問題はアルビオンに着いてからよ。それに何があるか分かった物じゃないわ。
早く行けるならそれに越した事ないわよ。さ、準備も出来たし早く行くわよ。じゃあね、シエスタ。」
御武運を、そういってまた礼をするシエスタを残して二人は学院を後にした。
「ああ、心配です。あの二人大丈夫でしょうか」
見送ってシエスタは小さな声で言った。
今回の仕事から担当を外されたので、ここで普通に仕事をしている事となっていた。
『お前は、今回の件で一悶着やらかすかもしれんからな。
確かに、王は非道だったと俺も思うが、しかしそれを殺すのは俺達の掟に反する。分かるな?』
痛い程分かっている。だが、確かにやらかしてしまうかもしれない。
暗殺のやり方は曽祖父から教わった。最後の手段としてだ。
罪の無い彼女らの親達を殺した王の話を聞き、つい、
懐のダガーに手をのばしたのがグレイ・フォックスにバレてしまった。
『お前は闇の兄弟達でなければ、モラグ・トングでもない。
技術の出自がそれらだったとしても、今は盗賊ギルドのメンバーだ。
掟破りは許されない。特に殺しは取り返しがつかんのだ』
優しく諭すように言う灰色頭巾のフォックスに、彼女は従うしかなかった。
288:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:44:30 yeCWLqRx
「影よ、夜の女王ノクターナルよ。どうか困難に向かう二人をその闇で包み、彼らに災いもたらす者達から隠してくださいますよう…」
Shadow hide you.そう言ってシエスタは祈りを奉げた。
じっとその様子を眺めている赤い髪に気づかずに。
考えてやらないでもない。夜の女王は笑って言った。
影の声は誰にも聞こえてはいない。
同じように始祖へ祈りを奉げるアンリエッタにも。
そんなこんなで馬で走って一日過ぎ、二日目の昼過ぎ、
予定より早めにラ・ロシェールに着きつつある。
急ぎよ。と、泊まった宿駅でルイズが言うと、
ならばこいつを。と赤い馬を用意された。ありえない速さだった。
一体この馬は何なのかを聞くべきだっただろうか?
まぁ、速いから良いか。二人はそう思って馬を走らせる。
「おお、あれがラ・ロシェールか。あそこから空を飛ぶ船が出るのだね?」
当然ながら、マーティンがいたタムリエルには空に浮かぶ島など確認されてない。
北方地方スカイリムに住む、白い人間族ノルド達は、
自分達を天空から来たと自称する事もあるが、
それも伝説で語り継がれるだけの話。
酒の席での笑い話(彼らは酒飲みである事が多い)で言うくらいなものだ。
元いた世界、ニルンをくまなく探せば一つか二つあるかも知れないが、
今まで見たことのない空に浮かぶ島への期待で彼は一杯だった。
「ええ。船の予約に行かないと。夜までに来れて良かったわ」
無駄使いしていなくて良かった。そうルイズは思う。
金貨はまだそれなりに残っていたが、毎月来る仕送りが少し前に来たところだった。
両方を合わせればおそらく指輪を金に変えなくても問題はない。
姫さまからもらった物を金に変えるなんてバチ当たりな事をせずに済んで良かった―
そんな思考を遮るかの様に爆音が鳴り響く。火の秘薬が発したその音は、
戦の訓練を受けていない馬達を驚かせるには十分だった。
足を止めた馬へ向けて弓矢が、穏やかな風を裂いて飛んで来る。
「奇襲か!」
すんでの所で当たる前に馬から放り出され、
彼はルイズと共に逃げ出そうとする。
しかし、数が多い。タムリエルの『破壊』の火魔法で、
いくつかの矢を、こっちに当たる前に燃やしたが身を隠す所も無い。
まさかトリステイン内で襲われるとは思っていなかった。
シロディールに比べ衛兵なんぞが辺りを周っていなかったから、
ここらの治安は良い方だと思っていたのだ。
マーティンはそんな自身の甘い考えを呪った。
相手がどこから矢を射っているのか全く分からない。
ならば逃げるしかないが、しかしどこから来るか分からない以上、
どこへ逃げれば良いというのか。絶体絶命である。
弓矢が二人へ殺到する。ルイズの前にマーティンが立つ。
289:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:45:16 yeCWLqRx
さて、どうしたものか。炎を手から出そうとした。
一度これらを燃やしてから、範囲の広い魔法で敵の位置を特定するか。
分からないなら全て倒せばいい。
問題は弓矢をその時まで食らわずに済むかどうかだ。
そんな時、一陣の風と凍てついた吹雪が矢を吹き飛ばし、炎が全てを燃やした。
「ハァイ!二人とも大丈夫?大丈夫ね。良かった良かった」
空を見上げれば、青い竜に乗る赤き髪のキュルケと青き髪で制服姿のタバサが、
そして、あの時初めて見たグリフォンと呼ばれる幻獣に乗る男がいた。
「わ、ワルドさま!?」
「久しぶりだね僕のルイズ。だが、話は後だ。まだやるべき事が残っている」
二匹の獣が空に舞う。主を乗せたそれらは、息を合わせて敵陣へと突っ切っていく。
今度は襲ってきた盗賊達が驚く番だった。
「危ない所を助けていただいて、どうもありがとう。ミス・ツェルプストーにミス・タバサ。それと、ミスタ・ワルド?」
先ほどルイズが言った名前でマーティンは言った。
賊は近くで転がっている。タバサとワルドの風でここまで運ばれたのだ。
賊達の戦う意思はもう無いようだ。空から来るメイジ三人を相手に勝てる平民など、
普通はいない。ワルド、と言われた男は笑って握手を求める。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドです。僕の婚約者がお世話になっているようで」
「マーティンです、マーティン・セプティム。姫殿下から伺っているとは思いますが。
タムリエルと言う国で司祭をしています。なるほど、婚約者でしたか」
マーティンの手を握るワルドは、喜色のある笑みを浮かべている。
キュルケは何故こいつにこんな良い男が?とした風で呆然となり、
タバサは誰にも分からない様にふぁぁと欠伸をしながら本を読む。眠かった。
ルイズは顔を真っ赤にした。
「姫殿下が学院の寝室から抜け出した後、どうも様子がおかしくなったので、
それとなく聞いてみると僕のルイズに任務を与えたと聞いたものですから!
その後僕とルイズの関係をお聞きになられると、僕に彼女と貴方を守れと命じられたのです」
「ワ、ワルドさま。それは親が決めた事で…」
顔を真っ赤にして、後ろの方は消え入りそうな声で言うルイズ。
それを無視するかの様に、彼はルイズを抱きかかえた。
「久しぶりだな!ルイズ!相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」
ルイズは頬を染めてされるがままになっている。満更でもないようだ。
「ミスタ・ワルドがここにいる理由は分かったが、では君達は?」
お互い使い魔使いの荒い主人で大変なのね。俺使い魔違うけどな。
とでも話しているのだろう二匹をよそに、
マーティンはキュルケに聞いた。ルイズとワルドは放っておく。
人の恋路を邪魔する奴はというやつだ。
290:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:46:04 yeCWLqRx
「昨日、たまたまあなた達とメイドが話していたのを聞いたのですわ。
スヴェルの月。何て言ったらアルビオンに行くと言っているような物だと、
行った事の無い私にも分かるもの。そんな訳で今まで着いて来たって訳ですわ。ミスタ・セプティム」
その子の説得が面倒でしたけれどね。そう言って彼女は艶やかに笑う。
そう言われたタバサは無表情で本を読み続ける。いや、読んだまま寝ているようだ。
「一日中飛びっぱなしでしたから。それに行く必要ないと言ってほっとけと聞かなかったのですわよ?
こんなおもしろそうな事を放っておけだなんて、ツェルプストーには無理な相談ですわ。
先に着いてルイズを驚かせようかと思いましたの。もちろん、あなた様方に気づかれない様にして。
それで空の上で後を追っている内に、後からあの素敵な殿方がやって来たと言う訳ですの」
どうにも好みからは少しはずれていますけれどね。と彼女はつけ加える。
格好の良い男だが、良く見れば何か嫌な感じがした。
彼女は日々の日常より、時たま来る刺激的な非日常を愛しているらしい。
そうだったか。マーティンは礼を言って後盗賊達の方へ行き、
賊の長らしき風貌の人間と向き合った。
「やぁ。私が言うのもなんだが、災難だったな」
「ははは、仕方ねぇわ。こんな日もあらぁね。ここで終わりってなぁ残念だが」
やってる事がやってる事だ。今更命乞いなんざできねぇわな。
平民で傭兵家業や盗賊やらをやっている彼らは、
平民が貴族に歯向かえばどうなるかは良く知っている。
命を狙われたのだ。自分達を殺すのは目に見えている。
「変な事を聞くが、私達以外が通ってもここで誰かを襲ったのかい?」
運が向いているらしい。こいつは話が分かる方のようだ。
賊の長はあえて知らない風に言った。
「ん?あーどうだろうな。何か忘れている様な気がするが、思い出せねぇなぁ」
へっへっへと笑う。ふむ、とマーティンは先ほど出掛けに、
ルイズから雑費としてもらったエキュー金貨をいくつか握らせる。
すると小さな声で話し始めた。
「頼まれたんだよ。白い仮面の貴族にな。あんた達が何するかは知らねぇ。
聞いちゃいけねぇ、俺達の事教えちゃいけねぇ、逃げちゃいけねぇ、代わりに金は言い値を払う。
そんな話だったって訳よ。ありがとうよ。んじゃ、あっちの人らにはよろしくな。
ああ、それとこっから先には、俺らみたいなのはいないと思うぜ?少なくても昨日はいなかった」
たまには始祖も良い仕事しやがる。そういって賊は笑った。
291:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/15 06:46:49 yeCWLqRx
「彼らはただの物取りのようです。捨て置きましょうミスタ・ワルド」
盗賊達から離れ、マーティンはワルドへ言った。
「そうですか、分かりました。今日は休んで明日の朝一番の便でアルビオンへ渡りましょう」
ルイズを抱えたまま彼はにこやかに言う。彼女をグリフォンに乗せようとしたところで、
わ、わわわたしには馬がありますから。と言われたので彼は高速の赤い馬に乗せた。
「じゃ、出発ね?ほら、タバサ起きて。ラ・ロシェールへ行くわよ」
キュルケはぶんぶん揺らしてタバサを起こす。ぱちりと目を開け、青い竜に乗った彼女達は空に舞った。
「では、ラ・ロシェールで!」
グリフォンも飛ぶ。また二人となった。
「私達も行くとしよう、ルイズ」
「え、ええ。その、さっきの事なんだけど」
ん?と、まだ顔を赤くしているルイズをマーティンは見た。
「あ、あの時私の前に立ってくれた事。その、守ってくれて…」
マーティンは優しく笑った。
「使い魔は主人を守るものだ。前もそう聞いたが?それに大人は子どもを守るものだ」
「こ、子どもじゃないもん。16だから。立派なレディなんだからね!」
またマーティンは笑った。
「子どもくらいなものさ。大人になりたがるのはね」
大人は子どもになりたがる。そんな物だと彼は言う。
う~とルイズは唸るが、どうしようもないので黙った。
そうして、二人もラ・ロシェールへ向かう。空に舞う二つの幻獣の後を追って。
投下終了。次回夜のラ・ロシェールです
ワルドと書くよりジャン・ジャックと書いた方が強さ四割り増しに見えるのは私だけでしょうか。
ジが二つもあるんですよ?きっとそっちの方が強いと思うんです。
赤い馬はあれです。東方より更に東にある三国で争っている所の名馬です。たまたま来たということで。
んじゃまた次の投下まで。フォージエンペラー
292:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 07:37:46 oFevwjPa
乙だ市民よ。
飛空艇は、モロウィンのクエストで少しだけ出てきた。
後はセカンド・エイジにデイゴンが帝国の空中戦艦を襲ったらしいから、
一般には、知られてないだけで存在はしている。
ちなみにデイゴンは天罰の金槌で殴られてオブリまで領地に引きこもる生活を送ることになった。
293:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 12:01:12 lb/Sj/1B
アクマの人来ないかな
294:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 12:26:05 7Jb55zzz
アクマの人ぐっじょぶ!
今から次回が楽しみです!
295:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 13:35:49 imFxabZw
あくまの人とマーティン乙
オブリの世界は矢が脳天に刺さっても何故か致命傷にならない不思議な世界なんだよな
296:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:31:39 O8PT3UQ/
>>295
しかも体に刺さった矢を回収して使えるしな・・・
297:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:34:06 S/IPnrZz
問題点があって小ネタを投下できないかもしれないので、教えて欲しい。
1 ルイズが登場しない
2 タルブ戦が舞台だけど、理由により指揮官変更
3 使い魔じゃない
4 話しがやや長い
教えて欲しいここで投下OKなのか?避難所か?
298:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:41:09 ddw+EPdT
>>297
それはそもそも、ゼロ魔である必要があるのか?
299:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:42:37 S/IPnrZz
途中で気付いた・・・
300:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:48:18 pFGPg9pg
さようなら
301:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 14:59:51 S/IPnrZz
アンリエッタを主人公に持ってくると、結構キツイ・・・
プロットを組み直して、出なおしてくる
302:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:05:59 IWATGXg8
ルイズとその使い魔が主人公というゼロ魔の物語の大前提から変えるわけだしな。
しかしアン様にはどんな使い魔を召喚させたら面白いかな?
個人的には暗殺・諜報に長けたキャラがいれば心強いかと。例えば青い瞳の忍者とか。
303:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:07:38 uaDgkJIa
>>301
少なくとも此所には投下するなよ
304:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:09:02 IcgA4PnX
>>303
イザベラが主人公でルイズがほとんど出てこない
長編SSもあるし投下するのはいいんじゃないですかね。
ゼロ魔の話なら。
305:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:13:25 S/IPnrZz
>>304
問題点を解消出来たら、また問いたいと思う。現状ではキツイ
306:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:15:49 Ep9WKfyF
ぜろろ見てみた。
かなり出来いいな。削除を惜しむ声が出るのも分かる気がする。引き込まれたし続きが読みたい。
ルールさえ守ってくくれば言うことないよ。
307:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:16:41 ddw+EPdT
そもそも>>297の書き方だと、誰が主人公かさえ明記してくれりゃ問題がなかったような。
とりあえずアンアン期待。
308:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:23:51 IcgA4PnX
>>305
作品が投下されたわけでもないのに
何が問題か作者じゃないのにわからないでしょう。
なんでもだめだめ言うのはよろしくないかと。
309:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:28:43 POM3rCxd
>>308
同感です
とりあえず投下して見られよ
面白ければ皆が支持するだろうし面白くなかったら問題点を指摘しつつフクロにするでしょう
310:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:31:21 lb/Sj/1B
アクマの人来てた、乙です。
311:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:32:25 S/IPnrZz
あと、1週間ほど時間欲しい。書き直す
312:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 15:41:11 POM3rCxd
>>311
了解しました
期待してますから頑張ってくれさい
313:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 16:18:35 JGKkIVQ+
祭りの後だからか
普通の流れのはずなのに投下が少なく感じるとは…
社長の人、待ってるよー!頑張ってくれー
314:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 16:56:05 71ydcwGl
アンアンが主人公だとすると鳥の骨や銃士隊長も登場させないと。
筋書き次第ではどうとでもなるけど登場しない方がへん。
315:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 16:56:36 yeCWLqRx
>>292
うあーバトルスパイアの件忘れてるとかどんな思考形態だったんだ私は。
飛空挺の件どうもです。また調べますね。
朝早くに読んで、突っ込みどころ探してくれて本当にありがとう。
出来る限りこういうことは、無くしていきますので今後ともよろしくお願いします。
ただ、ジャガーさんの件でデイゴンさん一枚噛んでませんでしたっけ?10年前の。
316:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:09:59 Dct1F/Ti
アンアン→喪黒福造
とか見たいな
317:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:26:26 TMnjme/V
アンアンの使い魔か・・・
成功例は某・ヤドカリかな?
318:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:27:16 uaDgkJIa
>>316
客として選ばれたらソッコーで「ドーン!」されてしまうなw
319:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:29:35 uxRoGdyr
ジョゼフはシャルルが生きていたら的な世界でも味合わされるんだろうかw
320:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:34:39 yaZK1JDj
アンアンの使い魔に王女を召喚するという話がずっと前からあったような気がするけど
誰が良いかな
321:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:55:29 ITMd9qrr
デビロット姫一行を召喚して悪の帝王学を教え込まれるとかw
まあ普通にストーリーを展開するなら、グラドリエルかクラレットとかかな。
322:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 17:56:30 +imtlo+m
知るか
避難所いけ
323:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:02:41 rztM1ibX
>>322
とろろ芋喰いてえ。
324:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:03:12 4HHx8A/i
デビロット姫はむしろイザベラ様じゃね?
デコに親近感がわきそうだなw
325:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:06:34 LXyCxBp9
アルトリア・ペンドラゴンこと、セイバー召喚とか
王女じゃなくて王だけど
326:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:09:00 guCd7fu7
漆黒の騎士を召喚するとか
327:零☆幽☆白書
08/10/15 18:14:05 XqqRIYlo
この後、幽☆遊☆白書より浦飯幽助が召喚されるSS「零☆幽☆白書」 01話を
投下します。
328:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:14:34 uxRoGdyr
ローマの休日から
329:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:15:33 xWJAy2kC
そういえば幽助ってルイズよりも年下だっけ?支援
330:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:19:30 rztM1ibX
第一話の交通事故の後に召還なら絶賛する。
331:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:24:17 k9G9hR8A
>>329
どの時点かにもよるけど、開始直後は中学生だったはず。
332:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:26:08 6EzTq+NU
覚醒後だったらいいのに
333:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:26:40 zKaJvMqX
>>325
残念!型月作品のキャラクターは別スレだ!
王女といえばやっぱヨヨかアリシアでしょう
っつーワケで支援
334:マロン名無しさん
08/10/15 18:27:08 RWDD8keP
幽☆遊☆白書なら桑原くんでしょう。ルーンの力で能力アップ
次元刀使いこなして元の世界に帰る。
335:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:29:38 CrVJMoeP
個人的には霊界探偵なりたての頃が良いな
霊界探偵七つ道具大活躍がみてえw
336:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:35:32 R9qi9NuD
ユウレイ白書の方が語呂が良いような気がした支援
337:零☆幽☆白書 01話 1/2
08/10/15 18:39:38 XqqRIYlo
とある草原でなにやら騒がしい音が聞こえてきました。
「バアちゃんよ、しばらく戦ってねえうちに腕が鈍ってきたんじゃねえか。」
「幽助よ、お前もしばらく戦ってないから腕が落ちちゃったんじゃないかのう。」
そこには幽助と幻海が修行を始めていました。
「幽助よ、一休みするかのう。」
「そうだな、バアちゃん。」
休憩している2人の間に『光の鏡』が現れました。
「幽助、早く逃げるんじゃ!」
幻海の言葉も時すでに遅し、『光の鏡』は幽助を吸い込むかのように消えました。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ!私は心より求め、
訴えるわ!我が導きに、応えなさい!」
杖を振り下ろすと爆音と共に光が炸裂した。
彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは昇級をかけた使い魔召喚の儀を行っていた。
が、さっきから起こるのは爆発という名の失敗ばかりだった。
そして煙の向こうに中学生ぐらいの人影が見えた。
「やった!召喚に成功した!」
ルイズの言葉に生徒達は驚きを隠せない。
「あのゼロのルイズが成功したなんて・・・・」
「明日は大雪が降るぜ!」
「いててて・・・・ここは何処だよ・・・・」
ルイズの召喚で呼ばれたのは、どうやらハルケギニアでは見かけない格好だった。
「あんた誰?」
ルイズの言葉に男は動揺した。
「それどころじゃねーよ!幻海のバアちゃんとの修行中に光が現れて
俺を吸い込んでいったんだよ!」
「あんた私の話聞いてるの。あんた誰って聞いてるのに答えないなんで最低よ。」
「あー分かった、答えりゃいいんだろ。俺は浦飯幽助。それよりここはどこだよ。」
「ここはハルケギニアのトリスティン魔法学校よ。」
338:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:41:40 BW8ObZ5l
ごめん、ゼロのレボリューション思い出した
339:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:43:44 rztM1ibX
まさかのババァ召還
340:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:47:05 wGpGuaKQ
もしかして今書いてる?
341:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:51:09 +RZHxw4B
書きながら投稿は帰れ
そうでないなら落ち着いて投稿してくれ
342:零☆幽☆白書 01話 2/2
08/10/15 18:52:36 XqqRIYlo
「そうかここは異世界なんだな」
「そして、あんたは私の召喚魔法『サモン・サーヴァント』で呼ばれた使い魔よ。」
「要するにおまえが俺を呼んだってわけか。」
「それでは皆、席に戻りますよ。」
コルベールは生徒達に号令を出し、生徒は一斉に空を飛んだ。
「ルイズ!お前は歩いてこいよ。」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ。その平民と一緒に過ごしてな!」
生徒のその一言で幽助が指からエネルギーみたいなのを発射し、生徒の一人を直撃した。
「誰が平民だって、俺は浦飯幽助だ!」
「幽助!今何したの。」
「ああ、これは霊丸といってな、霊力を指に溜めて発射するんだぜ。さてもう一発、誰に当てようかな~」
その言葉に生徒達は逃げ出しました。
「幽助!あんたとなら最高のパートナーになれるわ!」
「そうか?照れるぜ。」
343:零☆幽☆白書 01話 2/2
08/10/15 18:53:41 XqqRIYlo
以上で零☆幽☆白書の01話を終わります。
344:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:53:48 37xrxUK/
これは素晴らしく理想郷
345:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:55:20 VjiT38GE
ルイズデレるのはえw
346:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:56:08 pygQ4S5V
とりあえず、全部書き終わってから投下するのを薦める
347:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 18:58:12 aFGSiGOe
ルイズの胸はしずちゃんよりも小さいのか
348:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:01:21 BW8ObZ5l
俺の勘違いかもしれんが、レボリューションの作者じゃね?
349:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:04:08 rztM1ibX
支援
と行きたいが正直ga
350:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:10:15 uxRoGdyr
玄海に対する幽助の呼び方ってさ、婆さんじゃなかったっけ?
351:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:10:15 pFGPg9pg
俺もレボ臭を感じる・・・
352:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:12:16 uxRoGdyr
作者本人が避難所に書き込みをすれば分かる?
IPなり固定なんちゃらなりが分かっていれば
353:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:13:12 zk1Y2MI/
>>337
短いし、内容が薄いし
何より幽助の態度がありえん。
作者幽白知ってる??
354:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:13:45 18ZjDpJL
生徒は幽助を平民だとナメてるなら、不意打ちで一人倒されただけだと
普通に反撃するんじゃないか?平民の癖に、とか言って
355:ぜろろ
08/10/15 19:13:59 kC+g/0A6
失礼 誰も居ないようなら投下したいが
19:15より行きたいです
356:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:14:29 18ZjDpJL
なんてタイミングだ
支援
357:ぜろろ 第十三夜 1/8
08/10/15 19:15:56 kC+g/0A6
ではいきます。以下本文
部屋へ入ってきたのは、先ほどの黒髪のメイド、シエスタだった。胸元に、何が入っているのやら、少し膨らんだ袋を抱えている。
失礼します、と声をかけ、少女がまず初めに見たものは、ずいぶんと奇妙な光景。
百鬼丸と呼ばれる、コルベールの連れてきた客人。そして、この学院の生徒である、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女。実にとりとめも無い取り合わせだ。少なからず驚いた。
第十三夜 名を知る事
シエスタは、ルイズを知っている。『ゼロのルイズ』という言葉も、その由縁も知っている。彼女の起こす、原因不明の爆発は、常に騒動の種であった。
ルイズは平民に対し、それほど偉ぶった振る舞いをしない。といっても、飽くまで理不尽な振る舞いをしないと言う程度にとどまるのだが。
また、厳しく育てられた、と先に述べたが、その賜物か、配膳、用付けを頼んだ使用人には、必ず礼を言った。まだ、幾分幼さの残るその顔で、使用人の顔を見て、可愛らしい声で小さく「ありがと。」と言う。
この、たった一つの何気ない言葉が、彼女に接した使用人達には、実に衝撃的であった。
また、その可憐な容姿もあいまって、学院に働く使用人達の中ではそれなりに人気があったのだ。
そのルイズが、実に楽しそうに、声を上げて笑い転げている様子を、シエスタは初めて目にした。そして隣に居るのは、今日初めて見た、奇妙な来訪者、百鬼丸である。
こちらは笑い転げるルイズを、なにやら恨めしげな目で見ていた。
まるで仲の良い、姉弟みたい。
小さな姉と、大きな弟。
長身の百鬼丸と、小さなルイズを見てそんなことを考えてしまった。
しかし、目の前に居る少女の持つ雰囲気が、余りに普段とかけ離れていたため、思わずシエスタは、こう聞いてしまった。
「ミス・ヴァリエール?」
「なぁに」
と涙を指で拭いながら、ルイズは顔を向けた。
358:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:16:09 18ZjDpJL
支援
359:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:16:18 rztM1ibX
支援。
幽白の気まずさを何とかしてくれ。
360:ぜろろ 第十三夜 2/8
08/10/15 19:17:24 kC+g/0A6
「あ、いえ、失礼しました。ミスタ・ヒャッキマルに用があったものですから、まさかミス・ヴァリエールまでいらっしゃるとは思わず、少し驚いてしまいました。」
丁寧に頭を下げる。
それを聞いてルイズが首を傾げた。ふと隣に立つ男に目を向けた。
「あんた、ヒャッキマルっていうの?珍しい名前ね?」
「そんなに珍しいか?いや、まぁ、そうなのかもな。」
百鬼丸も、この国に限らず、自分の名前は多少珍しいということに気付き始めた。よくよく考えて見れば、自分の国でも、あまり馴染みの無い名前の様な気がする。それと共に、聴きなれぬ言葉に、隣に立つ、彼にとっては物知りな少女に尋ねた。
「なぁ、『みすた』ってなんだ?」
「男の人につける敬称よ。男なら『ミスタ』。女なら『ミス』か『ミセス』。結婚してたら『ミセス』ね。だからあたしは『ミス』。」
へえ、とそこで百鬼丸もふと気が付いた。
「そういえば、お前、名前なんていうんだ?ばりええる、っていうのか?」
少し拙い感じで、ルイズの名を呼ぼうとした。
入り口で、ぴんと背を伸ばし佇む少女の事は完全に放っていた。もちろん二人に悪意は無い。忘れているだけだ。シエスタの方も別に不満げな様子ではない。
ただ、部屋に入ると目に入った、思いもかけぬ組み合わせの二人が、突然自己紹介を始めたというこの状況に対し、多少戸惑っているだけのようだ。
「『バ』じゃなくて、『ヴァ』よ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」
流暢にそう言う。立て板に水が流れるとはこのことかと、すらすらと述べる少女に、百鬼丸は場違いな感想をもった。自分の名前でつっかえる人間なぞ、そうそういるものか。
「何だ、それ?全部名前なのか?えらく長いな。」
長い、と本当に驚いているようだ。だが、自己紹介した人間に対し、言うに事欠いて、それは無いだろう。
361:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:18:07 BW8ObZ5l
そもそも魔法使いって霊見えた?霊丸見えるとなると・・・
362:ぜろろ 第十三夜 3/8
08/10/15 19:18:40 kC+g/0A6
ルイズは不機嫌そうに返す。分かりやすく、腰に手を当て、口先を尖らせて百鬼丸を見据えた。
「もう、せっかく名乗ったのに、人の大事な名前に、何だとは何よ。あんたこそ変な名前の癖に。」
確かに少女の言うとおりだ。自分の名前も、育ての親、寿海が一生懸命に、願をかけて考えてくれた、たった一つの自分のものだ。しかし、変とは何事だ。いや、今のは、先に言った自分が悪いか。
「あぁ、すまん。そうだな。悪かったよ。えぇと、るいずふらんそわー…ええと、すまん。なんだったか。」
そう謝り、少女の名前を必死に覚えようと、諳んじるも、ただでさえ長い名前は、馴染みの無い百鬼丸にとっては、寿海に聞いた経文よりも難しい。
百鬼丸が謝罪をしたことに満足したルイズは、彼女の名前を必死に覚えようと、拙いながらも口に出す百鬼丸を見て、許すと微笑んだ。
「もう。いいわよ。ルイズでいいわ。でも、いつかちゃんと覚えてよね。」
そういって、長い、という百鬼丸の反応が少し気になり続けた。
「ところで、あんたも、ヒャッキマルの外に何か無いの?」
あたしは覚えられるわよ。そんな顔で聴いてきた。
ルイズ、魔法は使えないが、その分を取り返そうと、かなりの努力家でもある。実技、つまり実際に魔法を扱う事はともかくとして、座学に関しては、学年首位を誇っているほどだ。記憶力には自信が有る。
百鬼丸はすまんと軽く頭を下げ、答えた。
「いや、ただの『百鬼丸』だけだ。でもルイズ、変って言うなよ。」
少し困ったように言う。
確かに短い。変、と言ったことには彼も多少根に持っているのだろう。そう、彼にとっても、大事な名前なのだ。
「あははっ、そうね、ごめんなさい、ヒャッキマル。」
こちらも謝り、朗らかに笑う。
シエスタは、そんな二人のやり取りを少し羨ましそうに見つめながらも、自分が何故ここに居るのかを思い出して、この穏やかな時間に横槍を差すことに、申し訳なさを感じつつも、声をかけた。
363:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:18:43 ITMd9qrr
よっし、支援だ
364:ぜろろ 第十三夜 4/8
08/10/15 19:20:03 kC+g/0A6
「あの、」
完全に蚊帳の外に置かれているが、用を済まさない事には、彼女もどうしようもない。
「あら、ごめんなさい。何か用事があったのよね。」
今までのやり取りを、見られていたという事を思い出し、ルイズは少し気恥ずかしくなった。
「シエスタ、でいいよな。すまんな。で、どうしたんだ?」
百鬼丸もどうやら同じようだ。恥ずかしそうにシエスタに先を促した。
へえ、あの娘、シエスタっていうんだ。
ルイズは少し、この異邦人の交友関係に驚いた。コルベール、教師の次に出てきた名前は女中のものだ。先の名前のやり取りや、しっかりと彼女の名を覚えている辺り、結構誠実なのだろう。ふと気が付いた。
ルイズはシエスタと呼ばれた女中の顔を覚えてはいたが、名前はたった今、初めて知った。興味が無かったのだ。なんて傲慢。貴族に見下される落ちこぼれの自分は、無意識ながらも、たかが平民と、更に彼女達を見下していたのではないのか。
忌むべきは、持たぬ己を見下す者のみではない。守るべき対象と考えてきた者達を、守る力すら持たぬ己が、何故見下すのか。守るべき者達に何故興味を持てぬのか、愛せぬのか。
だが、今それに気付くことが出来た。このヒャッキマルという男に、どうやら自分は助けられているばかりだ。苦しみを和らげてくれた。己の傲慢に気付かせてくれた。もっとも、事今回に関しては、百鬼丸は全くもって、意図していない。
これで魔法が使えるようになりでもすれば、ルイズは何も言うことは無いのだが、それは本当に己の問題である。他人に期待する方がどうかしているし、生まれてこの方解決の糸口一つ、見つけられない。
今日の出来事を経て、魔法に関しては、半ば諦めの気持ちも出来てしまっていた。また少し、暗い気持ちに囚われ、俯くと、頭を振って、今度は上を見た。部屋を照らす照明が、百鬼丸の滑稽な姿と、怒った顔を思い出させる。
いけない。こんなことでは駄目だ。今は少しでも彼とのやり取りを、共に楽しもう。彼の
滑稽な姿を笑おう。時々呆れられ、怒られ、謝って、そしてまた笑おう。そうだ、シエスタも一緒に。
そうすれば少しだけ、ほんの少しだけだが、それでも前へと、進める気がした。
365:ぜろろ 第十三夜 5/8
08/10/15 19:21:53 kC+g/0A6
話は百鬼丸とシエスタのやり取りに戻る。
「ミスタ・コルベールより、お召し物をお渡しする様に仰せつかりました。宜しければこちらの服にお着替えするようにと。長旅のようですので、大分汚れているように見受けれたものですから。」
そう言うと、手に抱えていた袋から、白いシャツと黒いズボン、黒い靴下。袋に隠れてよく見えなかったが、もう一つ、包みから、これまた黒く光る、革の靴を取り出した。
「宜しければ、今お召しの服の洗濯、修繕も致しますよ。」
にっこりと恥ずかしそうに加えた。彼女が手ずからするのであろうか。
顎に手をやり、考える素振りを見せる百鬼丸を尻目に、何故かルイズが先に答えた。
「へえ、いいじゃない。着てみましょうよ。ねぇ?」
百鬼丸はそこそこ背が高いし、見栄えもいい。それに、着替えた百鬼丸がどんな反応をするかを、何よりルイズは見たかった。
言われて見れば、確かに長旅で服はぼろぼろだ。時折洗うとはいえ、二年も同じものを着通しなのだ。塵も汚れも目立つし、そろそろ洗おうかと百鬼丸も考えていたところだった。
「そうだな、着てみよう。でもその前に体を拭きたい。シエスタ、何か持ってきてくれるか?」
はい、とシエスタは微笑んで、部屋を出ると、一緒に持ってきていたのだろう、桶と大きなタオルを一つ、部屋へ運び込んだ。年頃の少女の腕には些か荷が重そうだ。
桶からは緩やかに白い湯気が出ている。わざわざ沸かしてくれたのだろうことが見て取れた。
用意のいいことだ、と思いながらも、この部屋に居る二人の少女に、外に出るよう促す。百鬼丸としては自分の、継ぎ接ぎだらけの歪な体を見られたくは無かったのもあるが、男として、年頃の女の前で体を拭い、服を着るのもどうにも恥ずかしい。
彼もまた年頃だ。
少女達も、多少顔を赤らめながら出て行こうとする。と、ルイズがドアの手前で振り返って尋ねた。
366:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:22:27 18ZjDpJL
支援
367:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:22:31 4Gxh/PbK
調支援
368:ぜろろ 第十三夜 6/8
08/10/15 19:23:02 kC+g/0A6
「ねぇ、着方、わかるの?」
「分からんが、まあ、大丈夫だろ。たかだか服だ。」
たかだかドア一つで四苦八苦していた人間が何を言うか、とも思ったが、年頃の少女が、裸の大の男を相手に服を着せるなんて、出来よう筈も無い。
心配しながらも、ドアを開けたときの百鬼丸の姿をあれこれ想像し、楽しそうに部屋を出た。
部屋を出た二人は、ドアの横に立つ。ルイズは後ろに手を組み、壁に背を預け、何かのリズムを取るように、時折背中で壁を弾いていた。手持ち無沙汰な様子だ。
シエスタは、前で手を組み、直立不動。女中が貴族の前で寛ぐ訳にも行かない。
突然
「ねぇ、シエスタ。」
そうルイズが声をかけると、シエスタは凄い勢いで首をルイズに向ける。
黒い艶やかな髪が、宙に舞った。
「え?」
「あら、ごめん。間違ってたかしら?」
「い、いえ、わわ、私、シエスタで合ってます!!」
口早に、大きな声でそう答えた。
いきなり名前を呼ばれたことで驚いたのだ。この学院で、使用人の名前をいちいち覚え、名前で呼ぶものなど、教師、生徒を含め、コルベールくらいのものだ。
「ふふ、ごめんね、驚かせちゃって。やっぱりあんまり名前で呼ばれないのね。」
「え?いえ、その…。」
やはり、貴族とは皆そういうものらしい。そんなことを考えたが、聞きたかったことは本当は違う。貴族の事はひとまず置いて、ルイズは尋ねた。
「ねぇ、シエスタ、ヒャッキマルのこと、どうして知ってるの?」
にっこりと笑い、目を合わせる。
シエスタはまだ、緊張した様子だ。所々詰まりながら、コルベールと百鬼丸の、対面していた様子を語った。その話によると、どうやら百鬼丸はコルベールの知己ではなく、今日初めて対面したようである。
「へぇ、そうだったんだ。ありがと。」
369:ぜろろ 第十三夜 7/8
08/10/15 19:23:53 kC+g/0A6
聞き終えた後、また、目を見てにっこりと笑う。
シエスタも少しそれを見て、緊張がほぐれたようだった。
シエスタも少しばかり、百鬼丸とルイズの関係が気になった。が尋ねることは出来ない。自分はしがない使用人だ。貴族にそんな、自分と関係ない事を詮索するなんて、恐れ多くて出来るものか。
少しの間、沈黙が流れ、それに耐えかねたかのように、ルイズがまた喋りだした。
「あいつね、面白いのよ。」
そう言うと、百鬼丸が、このドアの前で苦戦していた様をつぶさに語りだす。シエスタは、正直、面白くて仕方が無かったが、百鬼丸は客人だ。
それに、いくら優しくしてくれようと、貴族の前で声を上げて笑うなどと、出来るはずも無く、必死に声を殺して、肩を震わせていた。
そんな様子を、百鬼丸は部屋の中から感じ取り、嘆息していた。彼は気配に聡い。
やれやれ、と恥ずかしさを打ち消すように首をふる、がその顔は、優しく笑っている。
部屋の外、シエスタのその反応を見て、ルイズは、今度は自分しか知らないことを自慢するように、部屋に入ってからの百鬼丸の行動を語りだす。シエスタの方も、これには挫けそうになった。
あわや、もう駄目か、と思ったその時、部屋の中から声が聞こえた。
「どうぞ。」
さっきよりは自然だ。少し面白くない。そんなことを思いながら、ルイズは扉を開けた。シエスタは後ろに付いてきている。口元を無理に真一文字に結んでいるが、少し涙目だ。
足を踏み入れ、百鬼丸の姿を確認する。
「あんたねぇ…。」
溜息。
「たかだか服、じゃなかったの?」
ズボンは、はけている。形を見れば一目瞭然だから、これはまぁ、予想通りともいえる。股間のボタンも最初から掛かっていたのだろう、不埒なものは覗いていない。だが、シャツのボタン、閉じ方が分からなかったのだろうが、前をはだけたままだった。
370:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:25:17 18ZjDpJL
支援
371:ぜろろ 第十三夜 8/8
08/10/15 19:25:34 kC+g/0A6
じと目で見られていることを感じ、ルイズの言葉に、ぐっ、と百鬼丸は唸った。
シエスタは、俯いて、ぷるぷると震えている。
それにしても、
とよく見てみると、なんだか少し、いや、かなり官能的だ。
白いシャツの隙間から、少し傷のあるが、逞しい胸元が露になっている。
後ろに縛られた長い黒髪と、黒いズボンとの対照が、一層シャツの白さと、そこから覗く、男らしい肌を、少女達に見せ付ける。
強烈に、男を意識させた。
今度はルイズが、むぅっ、と頬を染めながらも、百鬼丸を眺めていた。
隣で笑いを殺していたシエスタも、それに気付いたようで、先程までと違った理由で赤く染まった顔を上げている。顔は百鬼丸のほうを向いてはいるが、目はあらぬ方向を見つめていた。
また溜息をつくと、頬を染めたまま、百鬼丸に歩み寄り、少し背を伸ばしながらボタンを掛けてやる。
「もう、仕方ないんだから。」
「む、すまん。」
恥ずかしそうに謝り、百鬼丸は、ルイズがボタンを掛けやすいように、少し屈んでやった。
本当に仲の良い姉弟みたい。
小さいけども、しっかり者のお姉さんと、体は大きいけども、少し抜けた弟。
少し抜けた兄としっかり者の妹でもいいのかな。
シエスタはまた、羨ましそうに、だが微笑みながら、二人を見ていた。
372:ぜろろ 第十三夜
08/10/15 19:28:22 kC+g/0A6
以上、投稿終了です。
今回にて、百鬼丸異文化コミュニケーション編は終了です。
少しだれた気もしないでも無いですが、まぁ布石という事で。
ルイズの変化、ルイズと百鬼丸、ルイズとシエスタの関係が主題。
そろそろ百鬼丸君に暴れてもらいたいと思いつつも、なかなか進まない話でした。
支援サンクス
373:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:28:59 cqB7V896
乙
374:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:29:49 18ZjDpJL
百決まる乙
ギーシュとの決闘で剣抜いたら色んな意味で悲鳴が上がる気がする
375:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:30:17 ITMd9qrr
乙ー。
さて異文化交流となれば、夢で相手の記憶を見ると言うイベントでルイズが何を見るのかも期待期待。
376:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:31:54 0WyHKf0n
これは良いルイズ
続きを期待せざるを得ない
377:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:33:08 BW8ObZ5l
乙!
378:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:34:27 pFr5tQES
乙ー
手塚絵のルイズが想像できないが乙ー
379:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:35:22 /OUmX+SA
うおぉ! ぜろろ来てた!
今しがた避難所見たらあの時より増えてて嬉しいな~なんて思ってたら!
いきなり綺麗なルイズでかなりいい感じ。
シエスタとのほほえましい会話も見てて安心できるし。
心理面の描写も細かくていい。
百鬼丸は出来れば使い魔にならないまま進んで欲しいな……。
380:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:40:09 rztM1ibX
なにwwwこの温度差www
381:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:40:45 Ep9WKfyF
ぜろろ面白い。作者氏は投下を焦らずじっくり書いてほしいな。続き期待。
382:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:46:07 he3B+/4t
その言葉に俺等は逃げ出しました。
どうせ、これあれだろ?
1年後にもっかいこの文とか見て。
「あうぎゃおあー、」
になったりするんだろ?
悪い事言わないからもう投下するのやめなよ…。
幽白さん…。
自分の心を核でまっさらにしちゃっていいのかい?
383:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 19:58:59 nZq0uIFz
ぜろろの方乙です!
次回も期待しています!
384:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:00:21 daOYHIDL
手塚絵のルイズって…
PS2版の百鬼丸が、ゼロ魔版の顔になってる方が頭に浮かぶんだけど、少数派?
385:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:03:21 nZq0uIFz
んーどうなんだろ?
どろろを知ってる=手塚絵を知ってる=ゲームを買うってのがセオリーかな?
あの絵を知ってても原作知ってれば普通に手塚絵を想像しちゃったけど、それも俺だけかな?
386:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:09:21 xWJAy2kC
ゼロロまとめで一気読みしたけど面白い!
次も期待
387:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:12:25 yeCWLqRx
>>385
どっちが頭に残ってるかじゃないか?
手塚絵は妙に艶かしいから頭に残りやすい。
ゲームのはゲームので良い感じだと思うけどなぁ。
ともあれ、ぜろろ様お疲れ様です。
どういう展開になるか楽しみです。
388:Persona 0 第十五話(代理)
08/10/15 20:19:38 EegMlzzh
これより、Persona0の代理投下を開始いたします
389:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:20:17 GBnlbKzD
幽白がレボの作者かどうかは知らんが
とりあえず小説の書き方を勉強してから出直せ
「小説 書き方」とかでググればアホみたいに出てくる
参加したいって気持ちはわからんでもないが
今のままだとずっと総スカン食らってやる気がなくなるだけだ
もし参加することに意義があるとか馬鹿みたいなことを考えてるんなら即刻出て行け
390:Persona 0 第十五話(代理)
08/10/15 20:20:35 EegMlzzh
「これでいいんだね?」
泣きながらギーシュは唇を離した。
その口の端から零れるのはサファイアのような蒼い輝きを湛えた液体だった。
誰が知ろう。
それが一瓶で立派な家が一軒建つほどの価格の、水の秘薬だと言うことに。
「いい、なんとか一命は取り留めた」
そう言って杖を掲げるタバサの額にはうっすらと脂汗が滲んでいる、慣れない〈治癒〉の魔法は、タバサから容赦なく精神力と体力を削り取っていた。
「しかし危険な状態には変わりがない、すぐに医務室に運ぶ必要がある」
「それじゃああたしが行ってくるわ!」
そう言ってキュルケが杖を一振りするとコルベールの体が浮かび上がった。
コルベールの体が地面から離れるか離れないかと言うその刹那、瞬きほどの時間に何かが変わった。
「何っ!?」
時が粘りついたような、世界が凍りついたような錯覚を覚えルイズたちは空を見上げた。
蒼い瘧火のような燐粉の舞う夜の学舎、そこから見上げた空はどこまでも遠く、暗く、そして深い。
その空には二つの月が冴え冴えと輝いている。
まるで影絵のように色を失った、白い白い二つの月が。
「おい君たち周りを見たまえ!」
ギーシュの言葉にあたりを見回したルイズ達が見たものは―棺桶。
コルベールや周囲を逃げ惑っていた生徒たち、平民や貴族問わずその場にいた人間が棺桶へと入れ替わっている。
奇妙な、あまりにも奇妙な事態だった。
だがそれに惑う時間はルイズたちには与えて貰えなかったのだ。
「あぢぃぃぃ、あぢぃぃぃぃぃ!」
真っ黒な炭の塊となった人型が、炎を纏わりつかせながら暴れ狂っている。
メンヌヴィルは生きていた。
その姿は例えるならまるで炎の魔人、何故生きているのかすら分からないほどの火傷を負いながらも、まだ彼は生きていた。
だがその命はすぐにでも燃え尽きようとしているのは傍目にも明らかで……
しかしいまにも死にそうなその姿にすさまじいほどのおぞ気を誘うのはなぜなのか?
「死にだぐない、もっど焼きだい、やぎだぎだい!」
ケロイドの手が追いすがる、ルイズたちは気圧されたように一歩後ずさる。
だが焼けた大地の上を炎の魔人に向かって歩みよる少女が一人。
391:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:21:04 l2AybXU8
名作のどろろを描くきっかけが当時大人気だった水木さんへの嫉妬だというあたり
手塚先生はやはりただ者じゃない
392:Persona 0 第十五話(代理)
08/10/15 20:21:33 EegMlzzh
「そうか、焼きたいか」
蒼い髪を靡かせ、豪奢な青いドレスを翻し、氷のような凍てついた碧い瞳をしたその少女は、まるで夜の女王のごとく。
その左手には死者を繰る紫の指輪を嵌め、右手にはおもちゃ染みた形をした蒼い銃を構えている。
「だがこのままでは無理だな、お前は死ぬ」
くすくすと少女が笑う。
「あああ、ああぁぁぁ」
少女は―イザベラ・ド・ガリアは、その白魚のような指で黒く焼け焦げた男の顎を掴み。
「もしも生きたいなら、焼きたいなら唱えるがいい。この世界でならばそれが出来る!」
男の口腔に銃をこじ入れ、イザベラは叫んだ。
「ペルソナ!」
メンヌヴィルの背後に一瞬だけ炎の剣を持った巨人の像が浮かぶ、だがすぐにそれは溶けるようにメンヌヴィルの体へと戻り……
「ああああアアアAAAAAAAAAAAGGGGAAAAAA!」
「なにっ!? 何が起こっているの!?」
ぼこりぼこりとメンヌヴィルの体が沸騰するように別のものに変わっていく、その光景はかつて此処でない何処かで見たものと酷似していた。
すなわちテレビのなかの世界と。
「私の時と、同じ……?」
タバサの言葉を裏付けたのは彼女の隣をすり抜けた一匹の異形の姿。
黒い塊に仮面がついたようなその存在はこちら側の世界にはけして存在してはならない筈の存在だ。
「な、なんでシャドウが“こちら側”にいるんだい!?」
いずこからか湧きだしたシャドウたちはまるで吸い込まれるようにメンヌヴィルへと向かい、その体へと飛び込んでいく。
黒く黒く肥満していく体はまるでパンパンに毒を詰めた風船のよう、事実その印象に間違いはなかった。
「ペルソナ制御剤と影時間を使ってもこの程度か、ペルソナと言うものも案外大したものでもないな。まぁいいたとえ城塞<ルーク>が倒れても我が虚無とそして女王〈クイーン〉で……」
王手〈チェックメイト〉だ。
メンヌヴィルははじけ、イザベラの最後の言葉は闇の色をした閃光にかき消された。
393:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/15 20:21:42 Iwuh/o90
なんか最近SS読むのも書くのも飽きてきた。冷めてきたんだろうか。
394:Persona 0 第十五話(代理)
08/10/15 20:22:20 EegMlzzh
アニエスは走っていた。
さきほど奇妙な感覚が全身を貫いたかと思うと、急に隣に居たイザベラがいずこかへと消えたのだから。
しかも自分の部下や副官たちは棺桶へと変わり、スヴェルの夜のはずの外にはあるはずのない二つ目の月。
まるで趣味の悪い恐慌劇の登場人物になってしまったみたいだなと、アニエスは思いその感想を打ち消した。
もし脚本家が一流ならばともかく、二流だったならそう言うことを考えた者が真っ先に怪物の犠牲になるのだ。
たとえば今自分の目の前にいるような……
「なんだっ、こいつは!?」
何時の間に忍び寄っていたのか、アニエスのすぐ側には神話にある天使の羽と弓を持ち嘆くような表情の仮面をつけた小人が一匹佇んでいた。
慌てて剣を構えたアニエスだが、小人はアニエスになど気付かないとばかりとアニエスを追い越していずこかへと走って行く。
あまりにも奇怪な出来事にほっと息をついたアニエスは、気を緩めてしまった己を恥じた。
自分のすぐ背後には天秤と剣を持ち、全身を石で作られた二メイルほどの大きさのゴーレムが佇んでいたのだから。
「貴様!学院を襲撃した者たちの仲間か!」
ゴーレムに向けて、ひいては操っているであろうメイジに向かって裂帛の気合いを放つ。
だがゴーレムはその石仮面の顔に無表情を刻んだまま、アニエスの隣をすり抜けていた。
こと此処に至って、アニエスはようやくこの怪異が自分に害を及ぼそうとしているものでないことに気づく。
そしてゆっくりと観察してみれば、この化け物たちは皆自分を追い越してどこかへと向かっているのだと言うことにも気がついた。
「一体どこから、何処へ……」
ふと考えて自分のやってきた方向にある奇妙な物体に思い当たり、アニエスは僅かに逡巡して元来た道を引き返しだした。
道を戻るごとに増える仮面の怪物たちが、その推論を結論づける。
やがてアニエスはルイズの部屋、そこで輝きを放つ奇妙な箱の前までたどり着いた
「やはりこれなのか?」
また一匹魚のような怪物がその枠を超えて外へと這い出した、それを見ながらこれは一体なんなのか?とアニエスは考える。
先ほどは自分が望み続けた”仇”の正体を映し出し、今度はその枠からいくつもの怪物たちを吐きだす使い魔のルーンが刻まれた謎の箱。
「どちらにせよ、トリステインに害を為すのなら破壊するだけだ」
そうしてアニエスは剣を振りあげ……
「やめた方がいい、きっと後悔するぞ?」
テレビの中に現われたもう一人の自分の声に、思わず剣を取り落とした。
愛用の剣の替わりの替わり、急ごしらえの鉄の剣が木の床に落ちて濁った音を立てる。
その隣で、少年は未だ昏々と眠り続ける。
深い深い眠りの奥底で少年は見ていた、かつて自分と一人の情けない一人のメイジが決闘したあの場所で。
今、一匹の巨大な化け物に一人の貴族が震えながら立ち向かっているその様を。
―お、おお、女の子を矢面になんて立たせられないじゃないか!
そう言って七体のワルキューレを従え杖を構える勇敢なる友人を、手出しできない遠い出来事として夢に見ている。
高い高い塔の上、落ちてきそうな月に慄く獣の、瞳のなかの夢を見る。
395:Persona 0 第十五話(代理)
08/10/15 20:23:22 EegMlzzh
「くっ、来るよ」
「AAAAAAGAAAAAAA!」
メンヌビィルは、かつてメンヌビィルだったモノは生物があげるとはとても思えぬ奇怪な叫び声をあげながら、ルイズたちに襲いかかってきた。
おぞましいその姿に一番近いものは、黙示録の神話に現れる地獄の王だろうか?
火傷でケロイド状に爛れた皮膚は飴のように長く伸び、血のような液体でテラテラと濡れ光る真紅のウロコを纏い白く燃え上がっている。
鉄杖を構えた腕は何故か此処だけ生前と変わらず、しかし下半身と上半身から一対ずつ蠢いている。
足は千切れるようにして喪われ、溶けて形を失ったその顔は付けていた仮面が同化して人と獣の二つの顎を持つ白い獅子の相好を作り出す。
「ニズヘグか、なる程世界の破滅にすら己の暴虐を貫いた彼の伝説は、確かに貴様に相応しい」
そうしてイザベラは、イザベラの姿をした何者かは声をあげて笑った。
「さぁ、いつまで寝ているガンダールウ、早くしないと貴様の大切な大切なご主人様が哀れな肉片に成り果てるぞ!」
そう叫ぶと、イザベラはばったりとその場に倒れた。
なにかに攻撃されたと言う感じではない、まるで操り人形の糸が切れたような動きだ。
もっともそんなことにルイズたちは気づく余裕などなかった。
「しつこい男は嫌われるわよ、マハラギオン!」
「決める、ブフダイン!」
炎の竜に向かって炎の竜巻とすべてを凍らせる氷の柱がほとぼしる、見事な連携だった。キュルケの炎が目を眩ませ、ウインディアイシクルの呪文を上乗せしたタバサの氷が必殺の一撃をして致死を狙う。
事実その一撃はメンヌヴィル、いやニズヘグのどてっぱらを抉り黒い炎の血を噴き出させた。
「やったわ! この調子で……」
もう一度魔法を唱えようとした途端、ニズヘグがその口から空に向かって炎を吐きだした。
冴え冴えとした月に挑むように噴き上がる溶岩のような炎の洪水、ともすれば幻想的にも見えるその炎はすぐに近くにあるものすべてを焼き滅ぼす炎の雨となった。
しかも一体どうやっているのか、炎はその熱さをそのままにまるで刃のように固まりとなって降り注いだのだ。
“凍える炎” 例えるならそんな言葉相応しい。
「危ないっ!」
逃げ場のない攻撃に一番早く反応したのはギーシュだった。
ワルキューレたちが二人の壁となって炎刃の雨を防ぐ屋根となる。
そしてその隙に地面に錬金を施し、即席の防空壕が完成した。
「早く!この中へ」
その言葉に一も二もなく全員が穴の中に飛び込む、もし炎の刃に掠りでもしようものならおぞましい結果になることはぐずぐずに沸騰しながらも炎を防ぎきった四体のワルキューレがはからずも証明してくれた。
だが一人だけギーシュの防空壕へ飛びこまなかった少女が一人。