あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part175at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part175 - 暇つぶし2ch400:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:15:11 6vBANv1P
「フフフ、つまり私はあなたの使い魔ということですネ!」
「まだ何も言ってないわよ! あーもうっ!」
 ルイズは本を読んでいたが、岩田の声に、いつもなら挟む栞を挟まずにドンッと閉じて盛大に悪態をついた。
 本を閉じる音に合わせて岩田が踊る。真面目に考えているのが馬鹿らしくなってきて頬杖をつく。
「……えーと……あんた、イワタって言ってたわよね。変わってるけど、それが名前?」
 岩田は机にルイズに向き合うと、しっかり360度回転してみせた。
 それから身体全体をくねらせ、尖らせた口の前で長い人差し指を左右にひらひらさせる。
「ノンノンノン。私は岩田裕。ワタマンとお呼びを。いや、イワッチでもイィ! スゴクイィ!」
 岩田は何が嬉しいのか、足を絡ませながらまた踊りだした。
 その一挙動が癇に障る。無性に腹が立ったルイズは頭を掻いて席を立つと、ベッドに向かって大股で進み始め
た。あの平民の形をしたタコだか蛇だかなんだか分からないやつの名前について考える。
 イワタヒロム、イワタが名前? でも違うって言ってたから、ヒロムの方かしら?
 ワタマン、とイワッチは愛称か何かか、きっとそんなもんだろう。どちらにせよ平民に変わりない。
「まぁいいわ。平民、使い魔になったからには使い魔として働いてもらうわよ」
「イイでしょう。で、具体的には何をすれば?」
 片足を肩の高さまで上げて回転する岩田を無視してベッドに腰掛ける。
「はぁ……まず、使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられる―らしいけど、何も見えないわね」
「のようデスね」
「ですねじゃないわよ……あと、主人の望むものを持ってくるの。例えば秘薬とか―聞いてる……?」
 岩田は右手を突き上げたかと思うと、左手でその右手を掴んだ。身体を左右に揺らし、長い手足をくねらせる。
「フフフ、ハハハハ……ククク……イーッヒィーッヒッヒ! フフフ……アーッハッハッハ!」
 高笑いに近い笑い声をあげ始めた。そして、ゆっくりとその右手をベッドに腰掛けているルイズに向けて、人
差し指で指す。
「その通り、私がこのゲームのラスボスです! さぁカモンカモンぅ!」

 ルイズは無言で立ち上がると、俊足で岩田に駆け寄り鳩尾に正拳を叩き込んだ。
 悶絶して倒れる岩田の頭を踏みつけながら、怒り心頭といった面持ちのルイズがゆっくりと口を開く。
「へっ、平民の使い魔がなーに私の部屋で騒いでるのかしら……!? 納得の行く説明が欲しいわ!」
「ククク……フフ、あなたの望むもの、それはすなわち心を震わせるようなスバラシィギャグです! ああイィ! スバラシィ!」
「ギャグはこりごりよ。それと使い魔は主人を守る役目があるけど、あんたには無理ね。掃除洗濯雑用よろしく」
「イイでしょう、ですので足を退けてもらえると嬉しいのですが」
「あら、悪かったわね」
 最後にルイズは思い切り踵で岩田の頭を踏みつけると、ブラウスに手をかけた。
 とっととボタンを外して下着姿になり、ネグリジェを頭から強引に被る。
 行儀や品性の欠片も無かったが、岩田のせいで半ば自棄になっていたルイズは気にも留めない。
 伸びている岩田にパンティを投げつける。
「それ、洗っときなさい。あと朝になったら私を起こしなさいよ。ちなみに寝床は床!」
 ぴしゃりと言い放つと、ランプの灯りを消してそそくさと寝に入る。疲れていたのか、眠気はすぐにやって来た。

401:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:16:45 6vBANv1P

 ランプの灯りが消えた部屋を、窓から差し込んだ二つの月の光が照らしている。

 その光の中心に裕は居た。肩にかかったパンティを無視して目を閉じ、音もなく踊る。
 小波のような、一定で規則正しい寝息を立てるルイズを起こさないように息を潜める。
 音を立てずに窓に近づき、裕はゆっくりと目を開いた。
 視線の先には、暗い夜空の中で赤と青の幻想的な二つの月が光り輝いている。
 まるでおとぎ話に出てくる月のように、爛々と。
 ふっと薄く笑ってから、次の瞬間には音もなくパンティを放り投げる。
 それから軽く息を吸い込み、窓の外に軽く跳んだ。
 手を伸ばして二つの月に少しだけ近づいた後、真っ逆さまに落下する。
 顎を高くして地上に目を凝らす。口を開いた。
「重力に逆らえず落下する感覚はイィ! スバラシィィ!」
 岩田は、見る人が見れば凍りつくような笑みを浮かべて地上に激突した。
 
 ルイズが寝息を立て、岩田が笑みを浮かべて跳んで転がっていた頃。


 頭頂部がお寒いと生徒たちに笑われているコルベールは、寝る間も惜しんで図書館の中の本を片っ端から読み
漁っていた。図書館と言っても、建物自体が図書館と言うわけではなく、魔法学院の複数ある塔の内の一つの塔
の内部に位置する。
 とはいえ、三十メイル以上の本棚がずらりと並んでいるのだから、それはそれで壮観だ。
 なお、図書館はいくつかの区画に別けられており、今彼がいるのは教職員専用の区画、フェニアのライブラリー。
 区別するのにはいくらか理由があるのだが―それは置いておこう。
 コルベールは対象を浮遊させるレビテーションを応用したフライを使って本の場所まで浮かんだ。
 そしてある程度目星を付けていた本を何冊か抜き取り、その場でおずおずと読み始める。
 表紙を開き、字面を追ってはページを捲り、字面を追ってはページを捲る。
 既に数百、数千は繰り返しているであろうその作業を、彼は当たり前のようにこなす。
 戦場で戦っていた彼にとってそれは苦ではない。
 ましてやそれが、見たことも無い謎のルーンの研究のためならば。
 寝る間を惜しむだけの価値はある。
 時折聴こえる、ぷっくぷーという間の抜けた呼び出し音や、明日のギャグは転校生ネタで決まりですネ!など
という奇声にも似た声をBGMにコルベールの読み漁りはまだまだ続く。

青にして灰白の使い魔 第6回

 朝、ルイズは身体を揺すられて目が覚め、自分を呼ぶ声を聞いてその身を起こした。
 まだぼやける視界の中に、くねくね動く物体を捉える。
「……なによ、あんた」
「フフフ、それはギャグですね!? あなたの使い魔ですが」
 ようやく焦点が合い始める。くねくね動く物体は、岩田だった。
 昨日と同じ奇妙な白い服に、変な化粧を塗りたくった顔。タコのように長い手足。
 ルイズはあからさまに嫌そうな顔をした。欠伸をしながら目を手で擦った。
「服」
「用意してあります」
 岩田は一回転するとどこからか服を取り出した。
「……下着」
「三つほど用意してありますが、どれです?」
 岩田は裾からルイズのパンティを取り出しながら言った。
「なんでそんなところにあるのよ……じゃあこれ! にしても、やけに手際がいいじゃない」
「これでも家来ですので……元、ですが。ククク、終わりましたよ。」
 ベッドから立ったルイズに衣服を着せながら、岩田は昔を懐かしむように目を細め、自嘲気味に呟いた。
 それを無視して、ルイズは背筋を伸ばして目を見開き、改めて自分の姿をよく見た。
 普段自分で着るよりも上手に着せられている。明らかに慣れた者の仕業だ。
 そのことを怪訝に思うも、まぁどんな馬鹿にも一つぐらい取り柄はあるものかと結論付ける。
 結論付けてから、窓から差し込む明るい日の光を見て不機嫌になった。太陽に同情されているように思ったのだ。

402:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:18:11 6vBANv1P
 木で作られたドアを開けて、まず最初に目に飛び込んできたのは……
「はぁい、おはようルイズ」
 大きくて、大きくて大きい……胸胸胸―!
「あっ、朝からなんてものをー! そんなに私が憎いっていうのー!?」
「ちょっ、なによルイズ!?」
 そこにいたのはキュルケだった。燃えるような赤い髪は、相当手入れしているのだろう。艶々して自発的に光
輝いているように見えなくもない。わざとらしくブラウスの一番二番ボタンを開けているので、まるで胸が飛び
出ているような画だ。
 ルイズはキュルケのことが嫌いだった。嫌悪のそれとは違う、苦手というか、いや、そこまで嫌いじゃないか
も、でも好きじゃないしうーん……
 少し考えて、髪を振ってそのことを忘れた。キュルケはキュルケで、私は私。大して変わりは無い。
 キュルケの方から妙に熱気を感じるが、それを無視してキュルケと視線を交わした。
 仕切り直しとばかりにキュルケが咳払いする。
「あら、今日はずいぶんと早いのね。それになんだか服装も良いじゃない? おはようルイズ」
「そうね、そうよ……おはよう、キュルケ」
 元気が無いルイズを見てどう受け取ったのか、キュルケが心配そうな顔で首を傾げた。
「ちょっと、なによ元気ないわね……どうかし、た……あー、後ろの平民が原因ね」
「その通り、すべての事象は私が引き起こしたものです! 私が原因ー! すなわちラスボスでぇーす!」
 岩田はクケーと奇声をあげた。

 無視する。

「あー、それもあるけど、なんの用よ?」
 ルイズの不機嫌な声を聞いて、キュルケは微笑といっていいような笑みを浮かべた。
 キュルケはルイズの事が嫌いではなかった。それどころか、小さくて勤勉でからかいがいのあるルイズの事を
それなりに気に入っていた。同じ小さいでも、タバサと違ってからかいがいがあるというのは大きい。
「え? あー、こほん。べっつにぃ、平民を召喚するだなんて、流石ゼロのルイズよねぇー? 普通のメイジじゃ出来ないわよ?」
 言葉を聞くや否やルイズの顔が見るからに歪んでいき、次第に紅くなる。
 この子もこの喧嘩っ早さがなくなればモテると思うんだけどねぇ……
「悪かったわね! 召喚したくて召喚したんじゃ―」
 その二人の間に、岩田が身体を天に反らしながら割って入ってきた。
「ストォーップゥー! 私の素晴らしいギャグを無視するとはなかなか笑えませんね!?」
「あんたのギャグよりは笑えるわ! 空気が汚れるから黙りなさい!」
 岩田は壮絶に血を吐いて倒れた。動かなくなった……。
 ルイズが頭を抱え、キュルケが冷や汗を流し、通りがかりのメイジが腰を抜かして這いずりながら去っていく。
 窓もないのに風が吹いた。燃えるような長い髪が顔に張り付く。鬱陶しそうに髪をかきあげ、上を見て、左右
を見る。
 遠くから見ても分かるほど肩を震わしながら、ルイズが頭を抱えて口を開いた。
「……お願いだからじっとしててちょーだい!」
 操り人形のように妙に不自然な動きで岩田は立ち上がった。醒めた目でこちらを見ている。
「フゥ……あなたはどうやら私の嫌いな常識人ですねぇ? あーもう、常識人過ぎます。せっかくのファンタジーなのに損ですね!」
「黙りなさい!」
 ぴしゃりと言い放ってから、ルイズまだなにか言っている岩田を無視して冷や汗流しまくって三歩退いている
キュルケに向き合った。
「気、気にしないで!」
「えっ? あ、ええ、うん、気にしないよう努力するわ、ええ、大丈夫、任せて、気にするわよ、あら? えっとー」
 動揺しまくりのキュルケ。ハイテンションな男と会ったことが無いと言えば嘘になるが、それはそれ。
 その素振りを見て何を思ったのか、ルイズはすまし顔で言った。
「落ち着きなさいよ、みっともない」
「……ずいぶんと慣れてるのね、ルイズ」
「どこが!?」

403:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:18:24 SRVulTOR
書符「支援」

404:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:18:39 76uphG63
>>387
やあ、俺w
お互い厄いなww

405:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:19:23 EZtLSfde
しえん

406:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:19:31 6vBANv1P
 今日は最悪な日だとルイズは思った。いや、この平民を召喚したのは昨日だから最悪な昨日か。
 その平民はといえば、キュルケの後ろにいたやたら大きい火トカゲを興味津々といった目で見つめていた。   
 しかし……大きい。なるほど、先ほど感じた熱気の正体はこれか。尻尾の炎からして分かるが良質のサラマン
ダーだ。だとすれば、キュルケはこのサラマンダーを自慢しに来たのだろう。 
「フフン、この大きな生き物は何ですか? 見たところ爬虫類系のようですが……」
「ああ、それは私の使い魔のフレイム。えっと……その、なんでもないわ」
 岩田の疑問にキュルケが答え、更に何かを言おうとしたが―こちらを一瞥すると口をつぐんだ。
 ああ、また同情されたと思った。ルイズはぎゅっと手を握り締める。

 その様を横目で見ながら、岩田は難しい顔。
 聞き覚えの無い言葉でフレイムに話しかける。
「……なによ、今の?」
「いえ……どうやら神族ではないようですね。まぁ、それもまたしかりというべきか……」
 その言葉により一層欝になるルイズ。この使い魔がまともな時は、服を着せたときだけだった。
 キュルケが冷や汗を拭いながらこちらに視線を向けてくる。
「えーと、今の何かしら? お芝居?」
「……どーせギャグでしょ!」
 それを聞いて岩田は嬉しそうに笑った。自分の右手を押さえつけるようにして回転した後、顔を天に向ける。
 微笑と言っても良いような笑いを浮かべ、明後日の方向を見つめた。
「はっ、電波受信! 笑いが私を呼んでいるぅー!」
 高速スキップ。止める間もなく、顎を突き出して廊下を突っ切って行く。
 居心地悪そうにしていたキュルケは、岩田が突っ切っていった方向を眺めながら呟く。
「……止めなくていいの?」
「私は関係ないし、どうでもいいわよあんな平民!」

 一方その頃。

 寝る間も惜しんでひたすら本を読み続けていたコルベールは、ついにダウンした。
 集中力が途切れてフライの呪文が解けて真っ逆さまに落ちる。
 はっとし、慌ててもう一度フライを唱える。なんとか間に合ったようで、かろうじて床と激突することは避け
られた。着地してからみっともなく床に腰を下ろす。それから同じ目線の高さにある本に目を向けた。
『始祖ブリミルの使い魔たち』
 コルベールはその本を一度だけ目にしたことがあった。図書館の本をチェックしている時に一度だけ見かけた本だ。
 あの時は時間が無かったので読めなかったが―ふむ。
 幸か不幸か、集中力が途切れたことで再び出会えた。
 即座に思考を切り替え、スケッチしたルーンのことなど忘れてその本を抜き取り読み始める。
 一つの事に集中すると他の事に気が回らないのがコルベールの欠点だった。

 ―もっとも、今回はそのおかげで当初の目的に辿り着くのではあるが。

407:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:20:45 6vBANv1P
 場面と時はまたも飛ぶ様に移る。
 昨晩、メイドに岩田の分の硬いパン二つとスープを注いだ皿を床に置いておくよう指示したルイズは、岩田を
自由にしたことを後悔していた。このままにしておくわけにもいかないのだが、しかし貴族としての体面もある。
 ただでさえ不機嫌なルイズはさらに不機嫌になって膝を揺する。腹が立つ。
 とりあえず近くにいたメイドを手招きして呼んだ。
 慌てて近づいてくるメイドは、ルイズより背丈が大きい。10サントは上だろう。
 大人しそうで、少し怯えて見える。何かあったのか?
 カチューシャで留めた髪の色は黒すぎて青く見えないことも……いや、やはりそんな風には見えない。ルイズ
は頭を何度か振った。
 疲れているせいだ。
「はっ、はい、なんでしょうか」
「これ、片付けておきなさい」
 メイドは困惑した様子で口を開いた。
「はっ、ですが、使い魔の分の食事では……?」
「……どうしてあんたがそれ知ってんのよ?」
「あっ、すっすいません! 昨日、同僚から聞きました……」
 じろり。ルイズがメイドの姿を上から下まで舐めるように見る。メイドが若干涙を浮かべて肩を震わした。
「あんたには関係ないじゃない。ただのメイドの癖に。いいからこれ、片付けて頂戴!」
「わわ、分かりました! すいません、すいません!」
 そう言うと、メイドは何度も頭を下げてから皿を抱えて走り去った。
 少し悪いことをしたかな、とも思ったが、相手はメイド。メイドで平民。あのくねくねした使い魔と同じ。
 そう考えれば少し気が晴れた。というか、どうでもいい。
 周囲を見て、祈りの言葉を唱和する時間だと気がついたルイズは今のことを忘れて目を閉じた。

 そのメイドは、皿を厨房に戻してから、今にも溢れ出そうな涙を手で拭った。
 やっぱり貴族の人は怖いと考える。
 だがそれよりも、メイドは下げた皿に乗っていた食事を与えられるであろう使い魔に思いを馳せた。
 あの貴族の人は確かミス・ヴァリエール。周囲の人からゼロのルイズと馬鹿にされている―魔法の使えない貴族。
 彼女が召喚したと噂になっている白いくねくねした平民は、今頃お腹を空かせているのではないだろうか。
 そう考えると居ても立っても居られなくなってくる。どうしよう、どうしよう。
 だけど仕事を休むわけにもいかないし……
「おーい、シエスタ、ちょっと来てくれー!」
 コック長のマルトーにシエスタと呼ばれたメイドは、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。

   <続く>

408:青にして灰白の使い魔 ◆WENsur1z9M
08/10/04 20:22:44 6vBANv1P
えー、次は一週間後ぐらいには作れてればいいなぁと考えています。
では……

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:22:50 SB0BFs6s
バカじゃないの!?(いい意味で)
絵がギリギリアウトセーフだよ!
具体的に言うと少年誌で言う銀魂みたいな位置。

410:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:26:46 SB0BFs6s
うわ失礼した。
409はゼロガーさん宛です。


岩田さん乙です。
フレイムに話しかけるシーンは誰がやってもシュールだなあ。
シエスタがどうなるかも気になる。

411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:30:51 EZtLSfde
イワッチ乙
鎖外した猛獣状態じゃないですか

412:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:31:34 8ZMpZnFm
飛ばしてるなあイワッチw
しかし、パンツを投げつけたのはちょっとした幸運だな
これが靴下だったら……

それはそうと、家令じゃなかったっけ?
あれは違うイワッチなんだっけ?

413:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:47:04 bNRjMpOH
イワッチGJでしたー!
アリアンやら大家令やらイワッチは謎多い。リタガンも停まってて設定はっきりしてないし。

414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 20:52:32 Xxq/q3vz
>>386
wiki見てみたが見あたらないぞ

415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 21:17:28 NoRVVU84
>>414
悪い、別のところだった

416:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 21:22:21 3Czr+3Qv
今週はついに社長がきたのか。待ってたぜ。社長のデッキに
ブラックマジシャンガールがないのがざんねんだ。


417:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 21:25:22 JVm6wgb7
投下多いなー
>>412
神楽の家来は辞めたんじゃなかったか?

418:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:26:22 sYb7DnDO
すいません。投下よろしいでしょうか。
予約入ってなかったら9時半辺りに投下したいと思います。

419:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:30:04 sYb7DnDO
時間なので投下しますね。
11、死霊術師と姫と王
父上に言われたの。今のお前は優秀とは言えないが、
このクスリを飲めば、とっても優秀になれるんだって。
本当にそうだった。飲んだら眠くなって、
気が付いたら、とっても凄い魔法がたくさん使えるようになったの!
とても速く空が飛べるし、飛びながら魔法が使えるし、
それに炎も、氷も、風系統の「ライトニング・クラウド」まで使えちゃう!
それ意外にも、変わった呪文をたくさん教わったわ!
しかも先住魔法らしいから全部杖がいらないの!ゴーレムも創りたかったけどね。
全部父上が呼んだマニマルコから教えてもらったの。嬉しいなぁ。
これでもう誰も私を馬鹿にしない。これで誰も私を嘲ったりしない。
これでもう誰も私を能なしと言わない。これで誰も私に逆らわない。
これでもうシャルを嫌いにならない。これでシャルを好きになれる。
これでこれでこれでこれで―
え、なんですか父上?はい。分かりましたわ。
羽の亜人を殺してくればよろしいのですね?いってきまーす。

「お前はどうしようもないな。ジョゼフ」

自分の娘にあんな事をさせるのを許すのは、人間とは言えなかろう。
そう、王の対面で座っている、明らかに人の事が言えなさそうな女が言った。
かすかに死臭が漂っている。自身からではない。服からだ。

ニルンの地では、生まれた月の星座によって、皆何らかの特殊能力を宿す。
本来、黄昏月(11月)生まれの精霊座以外なら、
誰もが出来る能力、大気中の魔法力(マジカ)を吸収し、
それを自己の魔法力として使用する事が、この世界の連中は出来ない。
代わりに体内で代用の『精神力』なる物を生成し、使いすぎれば気絶する。
精霊座の生まれは、何らかの薬品を使うか、相手から魔法を掛けられて、
それを吸収するか以外回復の方法は無い。また、魔法力が切れて気絶等誰もしない。
そんな風に、全く違う魔法の術式とそれらの使用方法に、最初は少々とまどったが、
こちら側の技術で色々と体をいじれば、意外にこちら側の魔法が使える様になった。
体そのものは、どこかの神が我々を真似て創ったのだろう。女は今の所そう考えている。

「何を言うか余のミューズよ。お前が出来の良い素体が欲しい。そう言ったのだろうが?」

まるで散歩中、のんきに世間話でもしているかのように言う。
二人は飲み物を脇に置いてチェスをしていた。
すっかり自分の娘がどうなるか気になって、
ジョゼフは余所に置いた姪の事をあまり考えていなかった。
一応王家の血族だから、おそらくそこらのデクよりはマシかと思っていたが、
よもやこれほどの逸材になるなど、彼は思ってもみなかったのだ。
しかし、なったのだから本人の希望通りに役に立ってもらうべきだろう。そう考えていた。

420:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:31:01 sYb7DnDO
「たしかに、素晴らしい。あそこまで良いのに何故こちら側で無能扱いなのか、
まるで分からん。しかし、これで念願の夢だった事の一つが叶った」

恍惚とした口調で女は言った。
即ち、死霊術師が目指す最終形態であるアンデッド、リッチ。
それに、人工的に古代エルフ族、アイレイド並の魔法力を持たせ、
しかも見た目が人間と変わらず死臭もしない物―の作成。
できれば、筋組織の増強と圧縮による、見た目の変わらぬまま筋力の増強も。
以前、自分自身にもこれらの術式を施したが、
少々頭の方までカバーできるかどうか不明だったので、色々と削った。

その結果、あの忌々しい『メイジギルド』の現会長、
(アークメイジ)ハンニバル・トレイブン。
あいつに、あいつのお気に入りに殺されてしまった。
まさか、こちらの死霊化の呪文の対抗策を練っているとはな。
もしもの時の為に新しい体を創っておいて良かった。そう、男だった女は思う。
ガレリオンの時もそうだが、連中は学習をしない。
これで真理の探究者を自称するのだから笑い話だ、とも。

「『あれ』は量産できるのか?」

ジョゼフが聞く。女は少し憂鬱そうに答える。

「素体の質次第だな。しかしあれと同じ物をまた創ろうとするには、
時間も手間も金もかかる。お前の娘をあの状態に持って行くのに、
1年かかったのだぞ。エルフの地にヒストが生えていて良かった。
あれのお陰でお前の娘は痛みを感じない」

他人を無自覚にリッチにしようとすると、どうしても拒絶反応が出てしまう。
故に、ヒストと呼ばれる主に麻薬等に使われる木の、特殊な成分の樹液を利用し、
彼女は本来とは違う器にある為に起こる、魂の痛みや体の痛みを感じなくなった。
しかし定期的に投入しないと、痛みどころか気分まで躁から鬱になる。困った物だ。
結果、少々頭の方がお花畑のようだが、言うことは良く聞くので問題ない。

「ふむ、アルビオンが落ちればある程度質は下がるが、どうにでもなる訳か」

死体の山が手に入るからな。そう言って、ジョゼフはあくびをしながらコマを進める。
チェックだった。久しぶりに、これとやるチェスはおもしろい。彼はそう思った。

「全く、俺がメイジの為に働くとはどういうことだろうな」

「ナメクジ人間よりはマシかと思うが?マニマルコよ」

そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

421:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:31:50 sYb7DnDO
虫の王マニマルコ。ガレリオンと同じ時期に、
サイジック会で魔法を学んだエルフであり、
禁忌とされていた死霊術を新しい学問として概念を創りだし、
初めてリッチとなった男。
その後、メイジギルド創設者ガレリオンがサイジック会を抜け、
山を震わせる程の魔法合戦の末にマニマルコを倒したが、
新しく創っておいた体によって彼は復活した。
その後、メイジ達や帝国の支配圏外のサラス諸島に住みついた彼は、
スロードと呼ばれる亜人達の下で死霊術の研究をしつつ、
シロディール地方のメイジギルドの動きを見ていた。

そして、ついにその時だと約4年前にシロディールに現れ、
奪われていた魔法具を取り戻そうとしたが失敗。
自身の力を増幅させていた魔法具が無いため、
実力が出せぬまま、現在のメイジギルドの腕利きに倒された男である。

だが、彼の目的は達成された。
それは、シロディール内での死霊術師達の掃討と、
サラスとタムリエルの関係悪化である。

そもそも、シロディール地方の死霊術は遅れている。
タムリエル東部地域のモロウウインド地方の様に、
ちゃんとした死霊術の研究機関が存在しないため、
独学でしか学ぶ事が出来ないのだ。故に未だに死霊術を、
ただの死体いじりと勘違いしているメイジが多い。
残念ながら、死霊術師内ですらいたずらに死体を切り刻んで遊ぶ者が、
かの地にはいるのだ。証拠に死霊術師が潜んでいる砦には、
ご丁寧にも人の切り刻まれた死体が吊されていることが多い。
その様なまがい物を「死霊術師」と呼ぶ訳にはいかないので、
マニマルコはサラスから誰も配下を連れずに、
はなからシロディールのまがい物を全て駆逐するつもりで、
メイジギルドの面々と戦いを始めたのだ。
残念ながら全てとは言えなかったが、
しかしある程度は消せたことに満足していた。

また、マニマルコはスロード達から、サラスの英雄とも呼ばれている。
と言うのも、サラスに住まうスロードはナメクジの亜人である。
故に、水辺以外の場で生活が出来なかったが、
死霊術によって生まれたアンデッドを利用することにより、
比較的水気の無いところでも、生活が出来るようになったのだ。
生活範囲を広げたマニマルコや死霊術は、
スロード達にとって無くてはならない存在である。
それを倒したとなると、タムリエル帝国とサラスの関係が悪化するのは、
明白な事である。メイジギルドは帝国の庇護下だから言い逃れは出来ない。
元々敵対関係だったが、これを期に一気に攻め入る予定なのだ。

422:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:32:41 sYb7DnDO
ただでさえ、現在タムリエル帝国は末期状態なのだ。
現在、各地方とは緩やかな支配関係(モロウウインドのみ同盟関係)
が形成され、シロディールを中心とした帝国として成立していた。
しかし、それを利権拡大の為に中央シロディールが、
派兵による各地域の占領強化を行ったのである。
それにより起こる北方地方スカイリムの反乱。
オカートが、デイドラ達との決戦時に援軍を派遣できなかったのは、
これを鎮める為であった。利権確保も視野に入れていたが。
モロウウインドも反帝国の勢いが盛んになりつつあり、
南西のサマーセット諸島では、
シロディールの輸出商品の不買運動が始まっている。
貿易で利益を上げる中央からすれば相当な痛手であり、とてもまずい。

その他の地方も次々と、
今までの鬱憤やらなにやらを吹き出し始めようとしている。
マーティンは帝国を救ったが、
残念ながら、その以前から滅亡は秒読みだったのだ。
これらは、シロディール内では噂でしか広まっていない為、彼は知らなかった。
惜しむらくはマーティンの父上であるユリエル7世が、
もう少し武帝としてではなく、まともな治世を施すべきだったのかもしれないが、
しかし、もうどうしようにも無かったのかもしれない。
帝国は、戦争によって領地を増大させる方法でしか、
今の状態を維持できなくなっていたのだ。

そんな帝国に、マニマルコは自身が倒された時のことを想定し、
自分が死んだ件をトドメとして国ごと、
メイジギルドを潰そうとしたのだ。
少々時間はかかるが確実性のあるやり方であった。
まさか自身がシロディールに来たのと同じタイミングで、
オブリビオンの門がタムリエル全域に開くなんて想定外だったし、
それに死んで魂が別の体に入り込んで後、
こんな異世界に来るなどとは夢にも思っていない。
様々な想定外すぎる要素が絡み、
現在タムリエルがどうなっているか、
マニマルコには分からなかった。
壊滅している事を願っているのは違いないが。

「まぁ、お前の頭がスロードよりもマシである事を願うぞ?」

半分、負け惜しみだ。チェス如きで頭の良さなど分かる物か。
自分を否定するメイジ達が、この世で最も嫌いなマニマルコ。
この世を破壊して感情を震わせたい男と組むのに、
これ以上最高で、最悪の組み合わせはないだろう。
高笑いするジョゼフと、それを見てほくそ笑むマニマルコ。
その姿は、別の世界ではシェフィールドと呼ばれるだろうが、
たまたま創った時に、最高の素体がそれだっただけである。
彼にしてみれば、姿形等どうでもいいのだ。良い素体か、
または悪い素体か。それだけであり、たまたまその時に手に入り、
最も質の良かった体が人間の女なだけである。

ただ、彼女はジョゼフも嫌いである。無能王に協力する理由は、
メイジは権力者である、というこの世界の理が気にくわなかったのと、
スポンサーとして絶大なバックアップをしたからである。
今はその時ではない、いずれ必ず葬り去ろう。これも「メイジ」なのだから。

423:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:33:30 sYb7DnDO
「では、イザベラが戻ってきたら、アルビオンの方へ戻ってくれ。戦果など、期待しなくても期待できるから、な。」

ジョゼフは、新しくおもちゃを買ってもらう子供のような笑顔を作り出す。

「ああ、待っていろ。すぐに終わらせてくる」

あのアンドバリの指輪は便利だ。あんな犬ですら死体が操れる。
それに水の精霊―言うことを聞かせる為に色々やったが、
あれはあれでおもしろい研究対象だ。デイドラらしいが少し違う。とマニマルコは思う。

彼に恐怖など、ない。自身の真理の探究の為なら何だってする。
例えそれの為に墓場から遺体を盗もうが、
人が死のうが、疫病で村が潰れようが関係ないのだ。
それで人が助かる研究をしたり、延命治療等に活かせるなら、
発展のちょっとした犠牲という奴になる。そういうものだ。
それを、良しとするかどうかは、その人次第と言うことだ。
良しならば、本来の意味での死霊術師に、無理ならば、メイジというわけである。
少なくても、タムリエルのシロディール地方では。

数時間経って、髪の毛や体が真っ赤に染まったイザベラが帰ってきた。
何らかの化け物と勘違いされて、亜人にも村人にも抵抗を受けたらしい。
面倒だから両方とも始末してきたそうだ。可哀想に。
体に着いた血を、何も言わなくなった侍女達に洗わせ綺麗にしてから、
マニマルコは、またアルビオンへイザベラと共に旅立つのだった。
テストは上々。ついでに村人までいなくなってしまったが。
まぁ、後で手の者が取りに行ってくれる、とジョゼフが約束してくれた。
まともなのがあると良いが。そう、思いながら。

行ってきます、父上。戦争なんて、すぐに勝って帰ってきますから―
もはや一歩間違えれば何が敵で、何が味方すら分からない狂戦士の様相を示して、
マニマルコと共に戦場へ赴き、全て壊しかねないイザベラだった。
これが、だいたいマーティンが来た辺りの、ガリア王国の状態である。

424:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:34:41 sYb7DnDO
時と場所が戻る。オスマンからの話も終わり、自分がガンダールブだと知るマーティン。
どこかで聞いた事ある話だなぁ。と思いながら、
何か伝説の戦士みたいじゃないですか。と言う伝説的英雄行為をした彼に、

「いや、そうなんじゃよ。マーティン君。伝説っぽいのぅ」

とのほほんと答える、伝説の何かを持っていたオスマン。
そして、ああ、駄目だこいつら。と思う伝説の剣だった。
伝説ずくめである。大安売りすると価値が下がらないか心配になる。

先ほど、疾風のギトーに吹き飛ばされたり、
馬を代わりに引いたりして疲れたから、
マーティンは深いところまで考えたくなかったのだ。
後でそれについての本をもらえますか?とオスマンに尋ね、
ついでだからコルベール君に色々そっちの事教えておくれ。
君と話合いそうだから。と古そうな本の代わりに頼まれた。

ちなみに、フーケはおそらく死んだだろうと言うことになり、
ギトー教諭に、シュヴェリエの爵位が送られることとなった。
フーケ本人からしてみたら、棚ボタである。
表での死人ほど、仕事がしやすい者はいないのだ。この業界は。
衛兵にバレない様にやり口を変えれば、賞金首の取り消しになるから、
今後の仕事も精神的に楽になる。そんなわけでロングビルは辞表を提出。
本格的に泣きそうになるオスマンであった。


少し経って、フリッグの舞踏祭は現在終わりつつある。
ギーシュは二人とかわりがわりに踊り続け、幸せそうだったと言う。
マーティンも麗しいご主人様と踊って、場違いではないか、と心配になったようだ。
ギトー先生と踊りたがったキュルケだったが、未だに気絶しているようだ。
一日一回というのは伊達では無かったらしい。
ふと、オスマンが会場から離れる。そこには着飾った衣装のロングビルが居た。

「どうしても、行くのかね?」

寂しくなるのぅ。と言った。

「ええ、ついでですから、グレイ・フォックスも捕まえて見せますわ」

笑って言う。オスマンは気負いしないでかまわんよ。と言った。

「えーとフォックスと言えば、何じゃったか、し、ああ、しゃどーはいちゅーだったかの?」

何かそういうのが巷で流行っているらしいと聞いた。とオスマンは言う。

「へぇ、そうなのですか」

「うむ。綺麗な娘さんに教えてもらってのー。フード被ってたからどんなのかは分からんかったが。
しかし、あの、くぅ、今思い出してもたぎる物が―」

ゴーレムの腕がオスマンの背後の外壁から現れ、そのまま床にたたきつぶす。
妹をそんな風に見たのか、お前は。修羅の顔だった。
何故怒られたのか、よく分からないオスマンであった。

425:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:35:30 sYb7DnDO
数日過ぎたある日の午後、んんん…とマーティンは悩んでいた。
主にアミュレットが何なのか、について。
左手の事はコルベールからも聞いたが、
どうにも情報が少ないのだ。
ベリナルの伝説も昔の話だから、
本当に光っていたのか知っている者はいない。

「それが、前着けていた『王者のアミュレット』?」

夢で見たのと形違うけど。とルイズは言った。こちらの方が小振りである。

「ああ、そうなんだが―しかし、オスマンさんは着けられなくて、私には着けられる」

ちょっと貸して、とルイズがマーティンから、
小さな赤い石が着けられたアミュレットをもらい、首に掛けた。

「着けられるじゃない」

「と、言うことは―ええと、確か、ルイズの家と言うのは」

「ヴァリエール家よ。トリステインの王家に連ねる名門公爵家なの」

なるほど。と言ってマーティンは続ける。

「すると―、そこは始祖ブリミルと血が繋がっているとか?」

「ええ、3つの王家、アルビオン・ガリア・トリステインは始祖から血がずっと続いているって話よ」

「おそらく、そのアミュレットは始祖ブリミル由来の物だろう。確信はないけど、君が着けられたんだ。着けておくと良い。」

少々私には似合わないしね。とマーティンは笑った。
ルイズは笑ってありがとう、と言った。贈り物をもらって嬉しくない女性はいない。
少なくともそれらがちゃんと好みに合っているのなら、だが。

「と、言うことは、それをアカトシュが創ったとして。ふーむ…」

普通、エセリウスの神々は、オブリビオンの事について口出しすることはあり得ない。
そう言う物だ。死ぬかもしれない神が、いちいち死なない神に文句を言うだろうか?
しかも、不死のデイドラ王達が、オブリビオン内に持つ自分たちの国、
通称『領域』と呼ばれる世界では基本的に、
領域の主が誰にも負けるはずの無い強さを得る。
ここがオブリビオンだとした場合、
このアミュレットがアカトシュ由来で無くなるから、
それだと私が着けられる理由が無い。ならばここは、ニルンと言う訳か。
マーティンはそう結論付けた。

426:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:36:19 sYb7DnDO
最初の八人いたエイドラの一人、
創造を司るロルカーン(またはロークハン)
が創りだしたとも言われる、
何らかの神が創りし定命の世界、ニルン。
ある神話では、それを創った事で他の神から罰せられ、
ロルカーンは死んだと言う。
そして後に、人間から神になった二人を入れて、
現在それらは九大神と呼ばれる存在となった。

全く知られていない新しい大陸。
そう考えてみると、なかなか凄い発見である。
とりあえずはここの事を調べて、東方に行くとしよう。
そして、どこかでタムリエルの噂を聞くだろうから、
それからひょっこり戻って、皆を驚かせばいい―

ルイズが卒業してから、何をしようか着々と計画を進めるマーティンだった。
ちゃんとルイズには許可を取ってある。
というより、むしろ今からそうするべきだと勧められたのだ。
何度説明しても、未だにマーティンが死んでからここに来たと思ってくれない。
どうにかデイゴンを倒して、何かが起こってしまってこっちに来たと思っているのだ。

できれば、その時事情をちゃんと説明していただけるとありがたいのだけれど。
そう言ってしでかした事に縮こまるルイズは、
マーティンに笑みを浮かばれつつ、君は末代まで語られる聖女になれるよ、と言われ、
そんなこんなで、いつもの調子に戻るのであった。
彼女はまだ知らない。幼なじみが近々学院に来ることを。

427:ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
08/10/04 21:37:04 sYb7DnDO
投下終了。というわけで、始祖リッチマニマルコ死して尚ここにあり。です。
死体操るならこの人いないと始まりません。ガリアが死霊術師の巣窟になりました。
ウェールズさん生きているかな。後犬分補給。魔改造しすぎたでしょうか?だって姫好きだもの。
君は誰とキスをする?始祖リッチ。それとも姫リッチ。私は姫のデコに。
ちょいと帝国の黒い話出ました。結構事実です。帝国なんてどこもこんなもんです。グッディ。また次の投下まで。

428:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 21:43:50 +toWV89S
>>334
もしもボックスは使った本人は変わらないんだ…

429:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 21:47:50 8s/sHjsk
マーティンの人乙
イザベラキャラ変わり過ぎ。てゆーか怖っw
次回にwktk

430:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 22:03:23 VIb7t3jP
乙だ市民よ。
マニマルコはやってることはともかく、帝国以外では英雄扱い。
個人的にはメイジギルドもメルコも気に食わないですがね

431:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 22:53:05 50fJQY7N
マイナーな所で『不死者あぎと』から柩あぎとを召喚とか考えたんだが……
間違いなく避難所向きというかキュルケやシエスタが食われる展開しか思いつかねぇ。
ギフト受け取って壊れるキャラも出てくるだろうし…うーむ。

432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:06:14 50fJQY7N
『水夏』よりお嬢召喚…ってのを考えてみたが、
あの世界の死神ってもうすぐ死ぬ者か、近しい人や愛しい人が遠からず死ぬ者にしか見えないんだっけ。

…原作展開の場合、アンアンしか見えねーじゃん。

433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:11:55 7ZFs1pYU
ルイズに見えたら、つまりちぃねえ様が死兆星を見えるってことか

434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:23:14 jh6LmlIP
23:30頃から第一話を投下したいのですが、よろしいでしょうか?
魔法陣グルグルより、ニケ&ククリ召喚です。
プロットを考えるのに手間取ってたら、本家が再開してしまった…

435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:23:59 50fJQY7N
>>433
その通り。
つーかその場合、原作展開にならずヴァリエール家の家族物語になる可能性が極めて高い。
ちぃねえ様の死を看取る為、ルイズの側にいるお嬢。
ちぃねえ様を死の運命から救おうとし、ありとあらゆる手を尽くそうとするルイズ&ヴァリエール一家。

恐らくはそんな感じ。

436:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:24:15 21w97BSC
>>432
お嬢が見える人達
アンアン、タバサ、イザベラ、リュシー、メンヌヴィル、エルザ、ジョゼフ、シェフィールド、クロムウェル、ウェールズ及びニューカッスル城のみなさん
学院の生徒で親兄弟が軍人の者達の幾人か


437:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:25:39 NoRVVU84
アドバーグ・エルドルクルー?
ベームベームのアレにルイズは耐えられるのだろうか
支援

438:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:30:08 jh6LmlIP
1 新たな旅立ち

 勇者とグルグル使いが魔王ギリを封印し、世界中の空に祝福の花びらが舞い踊った。
 世界を覆っていたギリの魔力は消滅した。かつてギリの魔力により支配されていたモンスター達の多くは、今は魔境の住人たちのように平和に暮らしている。
 しかし、モンスターの脅威が無くなったわけではなかった。

 かつてギリの魔力が世界を覆っていた頃に、モンスターの個体数が大きく増加していた。
 その中には、ギリとは関係なく人間を襲う者が少なからず存在し、いまだに各地で人々を苦しめていた。
 さらに困ったことに、ギリの支配によるタガが外れたため、逆に活動を活発化させた者まで存在した。

 闇魔法結社には、そんなモンスターを退治して欲しい、という依頼がしばしば届けられる。
 それを聞いたニケとククリは依頼を横取りし、モンスター退治のために再び旅を始めた。
 平和すぎるアナスタシアで刺激に飢えており、「いっしょに旅を続けたい」という願いをもつ二人にとっては、悪いモンスターの存在は好都合だったのだ。


~~~

 
「あ~、疲れた。それにしても、さっきのやつは強かったなあ」
「でもニケくん凄かった! 土の剣で真っ二つだもん」
「あれは、ククリが新しいグルグルで動きを止めてくれたからできたんだ。ククリのおかげだよ」
「ふふ、どういたしまして」

 薄暗い森の中。
 苦悶の表情を浮かべる風の精霊に先導されて、ニケとククリは、次の目的地までの道を歩いていた。

 ククリの右手には、旅の途中で手に入れた新しい杖が握られている。
 ククリ自身の魔力が向上したため杖の魔力に頼る必要はないが、適当な杖があったほうが魔法陣を描きやすいからだ。
 アナスタシアのミグミグ族から貰った魔法陣の杖もあるけれど、もう一度冷静に見てみると、やっぱりあの杖のデザインはイヤだった。

「ねえギップルちゃん、次の町までどれくらい?」
「あと1時間ほど歩けば、この森を抜けられます。そしたらすぐですよ」

 二人は手をつないで、森の中の道を進む。
 以前なら、このような森ではしばしばモンスターに出くわしていたが、現在はエンカウント率が大幅に下がっている。
 今回も、何事もなく歩き続けられていた。

 しかし、もう少しで森を抜けようという時。突然目の前に大きな鏡が出現した。
 横を向いてニケと話しながら歩いていたククリは、鏡に気づかず歩き続ける。
 ニケはあわてて、ククリの手を強く引っ張った。

「きゃっ! な、なに!?」
「前見ろ、前!」
「え? ……なにこれ、鏡?」
「鏡、だな。でも、なんでいきなり出てきたんだ?
 前に時々出てきてた、ガルニエの予言板とは違うし……。ククリ、わかるか?」
「ううん、さっぱり」

 ククリが杖で鏡をつついた。杖の先端は抵抗なく鏡の中に沈み、二人のククリが長い杖の両端を持っているように見えた。

439:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:31:10 jh6LmlIP
「ククリさん、気を付けてください。鏡の中から未知の魔力を感じます。うかつに触るのは危険です」

 ギップルに警告されて杖を引っこめると、鏡も杖も何事も無かったかのように元に戻った。
 鏡に近寄ったギップルがウネウネと触角をのばし、鏡を調べる。

「これは―どこかにつながってるようですね。恐らく、これを通じて遠くまで移動できるのでしょう」
「遠くまで移動……。
 まさか、総裁たちがまた変なものをこっちに送ろうとしてんのか?」
「いえ、違います。これは闇魔法によるものではありません」

 誰かがこちらに来ようとしているのかと思い、少し待ってみる。だが、何も変化はなかった。

「ねえ、もしかしたら、あたしたちに来て欲しいんじゃない? 入ってみようよ!」
「え~? どっちにしろ関わると面倒そうだから、無視して先にいこうぜ。日が暮れるまでに町まで行ければ、宿に泊まれるし」
「そうね、そうしましょ」
「おや、そこにいるのは勇者殿にククリちゃんではないですか? お久しぶりですな!」

 背後からの懐かしくもおぞましい声に、先を急ごうとして足を踏み出した二人は一時停止した。そして、恐る恐る振り向く。
 アラハビカで見かけて逃げ出して以来、数ヶ月ぶりのキタキタオヤジがあらわれた。

「それでは再会のキタキタ踊りをとくと見てくだされ! わしの踊りもかなりレベルアップしましたぞ!」

 ギリとの最終決戦の時、オヤジはギリの空間に進入し攻撃を受けていた。
 そのためオヤジはパーティーの一員としてカウントされ、少なくない量の経験値が入っていたらしい。

 踊りは以前よりもテンポが上がり、キモさが加速していた。手足が千手観音のような残像を残して高速動作するたびに、風が起こり土煙が舞いあがる。
 腰みのだけで飾られた腰は、一般人の可動範囲を遥かに超えてクニクニとうねっている。BGMも豪華になっていた。

 二人はオヤジから離れようと後ずさりした。目の前に広がる悪夢のような光景に怯え、鏡の存在も忘れて。
 そして―

「うわああぁぁ!」「きゃああぁぁ!」

 数歩下がったところで、鏡の中へ消えてしまった。次の瞬間には鏡も消え、オヤジとギップルだけが残った。


「おや、お二人とも消えてしまいましたぞ? ここからが見所なのですが」
「どちらに行かれたのでしょうか―あれ? どこにもいらっしゃらない!?」

 ギップルの能力をもってすれば、風のつながる限り地球の裏側であろうと、勇者たちの存在を感知できる。しかし、鏡が消えた際に全く気配を感じなくなってしまった。
 となれば、彼らが行った先は地面の奥深くか、異世界か、魔力が遮断された領域か。あるいは、移動先で完全に消滅してしまったのか。

「これは、大変なことになってしまいました……」
「うむ、そうですな。せっかくの特別なキタキタ踊りを、ほんの少ししか見れなかったのですから」

 ギップルは姿を消し、闇魔法結社に急ぐ。

(ギリの残党の仕業でしょうか? それとも、まさかギリが復活を……?)



440:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:32:12 jh6LmlIP
~~~


 学院の生徒達が冷ややかな目で見つめる中、ルイズはサモン・サーヴァントの呪文を詠唱した。
 何回もの失敗のため、辺りにうっすらと黒煙がたちこめていたが、その煙をさらに濃くする結果となった。
 しかし、強烈な爆発とともに、ルイズは今までの数多の失敗とは違う手ごたえを感じていた。
 煙の中に、何かが見える。

(やった……ついに魔法が成功したわ!
 まだよく見えないけど、このルイズが召喚したんだから、きっと強力な使い魔よね!)

 ゆっくりと煙が晴れていく。そこには、金髪の少年が横たわり、いびきをかいていた。
 頭に布を巻き、安っぽい服を着ている。腰には短剣を帯びている。

「あの格好、どう見ても平民……」
「ああ、平民だね。どこからどう見ても間違いなく。
 おや? あそこにもう一人いるみたいだね」
「ホントだ。それにしてもひどい煙だよ、まったくゼロのルイズには困るなあ」

 太った生徒が文句に続けて呪文を唱え、杖を振る。草原に風が吹き、完全に煙が晴れた。
 そこに現れたもう一人は、三つ編みの少女だった。彼女も寝息をたてている。
 二人とも、学院の生徒たちより少し年下に見えた。

「おい、女の子の方は、貴族じゃあないか?」

 少女の着ている服は、黒地に白い線が入った妙な模様のローブだ。すぐそばには、長さ1メイルほどの杖も落ちている。
 貴族とその従者を召喚してしまったのだろうと、ルイズを含めそこにいた人々は考えた。

「ミスタ・コルベール、もう一度召喚させてください! これは何かの間違いです!」
「それはだめだ、ミス・ヴァリエール。この儀式は神聖なものなのだ。やり直しは認められない」
「でも、人間を使い魔にするなんて、聞いたことありません! それに、この子は貴族じゃないですか!」
「確かに人間を、しかも二人も召喚するのは異例のことだな。しかし、使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する。
 この二人の少なくとも一人に、使い魔になってもらわなくてはならないのだよ。」
「そんな……」
「その少女は貴族に見えるが、少年は平民のようだね。貴族を使い魔にしたくないのであれば、こちらの少年とコントラクト・サーヴァントを行えばよいだろう。
 君が最後なのだから、早くしたまえ。次の授業が始まってしまう」

 コルベールにせかされたルイズは、召喚された二人をもう一度眺め、そして考える。

(こんなデザインのローブ見た事ないし、外国の貴族かも。そんな貴族を使い魔にするのは、色々と面倒なことになりそうね。
 そうすると、こっちの平民と契約するしかないのかしら……。
 まあ、仕方ないか。せっかく初めて魔法が成功したのだから、これで手を打ちましょう。
 貴族ならば儀式の重要性は理解してるはず。平民の一人ぐらい、事情を話せば手放してくれるわよね)

 ルイズは、平民の少年を使い魔にすることを決心した。



441:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:33:48 jh6LmlIP
以上、終了です。支援ありがとうございました。

442:魔法陣ゼロ
08/10/04 23:34:52 jh6LmlIP
ああ、タイトル入れるの忘れてた…
申し訳ない。「魔法陣ゼロ」です。

443:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:38:12 NoRVVU84
ククリのニケの呼び方って勇者様じゃなかったっけ?
アニメ版しか見てないから違ったらスマン

444:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:42:02 21w97BSC
そーいやカップル召喚ってネタは初めて見るかなあ
耕一と楓みたいに別々のメイジにそれぞれ召喚はあったけど

445:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:42:03 K3MrIdyt
アニメ版のED後のさらに後日?
てかギップルいないと…………クサッ!

446:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:42:22 /5ob9Vb8
原作だと魔王封印後に「ニケ」に直したので間違っていない。

447:ゼロと双子の使い魔 1/3
08/10/04 23:44:39 D8L5kwq6
本日トリステイン魔法学院では、使い魔召喚の儀式を行っていた。
毎年行われる伝統的な行事であり、ここで召還された使い魔とは一生を過ごす大事な行事である。


「見てみて、あれサラマンダーじゃないの?」

するとそこには、
人間の赤ちゃんよりも大きい大体5歳児くらいの大きさの尻尾には大きな火で真っ赤な体のトカゲ____
トカゲというにはあまりにも大きすぎる、生き物がいた



「やったわ!!まさにこの私にふさわしい使い魔ね!!」
とやや興奮気味に話している少女がいた
この少女も先ほどのサラマンダーに負けないくらい赤い髪をした褐色の少女でキュルケいう少女だ


「さて次は、ルイズ君の番だね」
と話すのは頭がだいぶ淋しいことになっている男性で名前をコルベールという
この中で彼だけ年齢が上であり、話しぶりからここの責任者だと思われる


「...はい」
そう答えたのはピンクの長い髪が特徴的な少女である
彼女はいつも呪文を失敗するため"ゼロ"の二つ名を持つ少女ルイズである



448:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:45:07 0gU8wG9t
熊乙

ゼロガーはよくわからん

グルグル乙

449:ゼロと双子の使い魔 2/3
08/10/04 23:45:19 D8L5kwq6
「どうせまた失敗なんだろ?」
「頼むから誰もいない所でやってくれーーーーーーー!!」



周りのありとあらゆる罵声を一身に浴び唇を噛み締めながらルイズは思った

「絶対に...ぜぇぇったいにキュルケよりもすごい使い魔を召還してやるんだから...」
ルイズは深呼吸をして目を瞑り、意識を集中させ呪文を唱えた。

「宇宙の果てのどこかにいる,私の使い魔よ!私は心より訴えるわ、誰よりも美しく誰よりも強い使い魔よ、我が導きに答えなさい!」





どっかーーーーーーーーーーーん!!!!!!



大爆発を起こした
なるほど他の生徒たちはこれを恐れていたのか
ルイズは爆発により発生した土煙も見ながら肩を落とした

何度も見慣れた爆発風景である「ああ、また失敗してしまったのね」そう心の中で思ったときである



「なんか召還されたみたいだぞ!!」

450:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:45:59 21w97BSC
グルグルの魔方陣は土メイジと相性悪いかなあ
ギーシュ、フーケ戦ならゴーレム出すより、ククリが地面に描く魔方陣を片っ端から土いじって消した方が早い?

451:ゼロと双子の使い魔 2/3
08/10/04 23:46:05 D8L5kwq6
それを聞いた瞬間にルイズはバッと顔を上げだんだんと収まりつつある土煙を見つめた

「何か...いる...」

しかし彼女はまたがっくし肩を落とした
正確には落とそうとしたがあまりのショックにそれすらもできなかったのである


「あれって人間...よね?」


先ほどまで土煙があったところには喪服のような真っ黒の服に身を包み銀色の髪に透き通るように肌の子供がいた
先ほど召還されたサラマンダーより2周りほど大きいがやはり子供だ
それも二人もいる


「ミスバリエール。さ、使い魔の契約を」
コルベールはルイズに使い魔の契約を促した
尤もこの儀式は召還をした使い魔と契約をして始めて意味をなす儀式だから当然といえば当然の事である


「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させてください!人間をそれも二人も使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
一気に現実に引き戻されたルイズはそう叫ぶしか思考能力が残っていないほどに混乱していたが


「それは出来ない」
「どうしてですか!?」
「なぜならこの儀式は神聖なもので、
好むとも好まざるにもかかわらず使い魔にするしかない」
「そんな…」



そんな当人たちとは一切関係ないところで召還された二人は
「――ここはどこかしらね?兄様」
「うん、どこだろうね?姉様」
「ねえ姉様。僕たち死んでしまったのかな?」
「うふふ。兄様は面白いことを言うのね、私たちは死なないわ―決してね」


そう言い終わると二人はキスをし始めた
お互いがお互いを確認しあうように――

452:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:46:58 4OYRui8u
ままままさかあああああの双子かぁぁぁぁぁ!?

453:ゼロと双子の使い魔
08/10/04 23:47:36 D8L5kwq6
つい書いてしまった...
BlackLagoonより双子を召還してみた

好評を頂ければ続きを書かせてもらいます

454:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:52:22 d/9d+FOA
投下予告ぐらいしろ

455:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:55:38 8s/sHjsk
まずは投下前に予告しなさい。話はそれからだ。


456:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:55:47 NoRVVU84
ブラクラのヘンゼルとグレーテルか!?
銃弾どうすんだろ・・・
あとデルフ涙目決定くせぇw

457:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/04 23:56:53 mcbZJq2c
投下予告しない人が多いね、今日は

458:ゼロと双子の使い魔
08/10/05 00:01:41 v8JUEtyi
>>445 457
申し訳ない次回からは予告します

>>457
デルフは使おうかと思っているんだがそこは構想中

459:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:06:25 6/0yEbPL
>>450
一応空中にも魔方陣はかけるから無問題だ

460:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:20:37 40JrF1qe
水夏登場キャラ召喚で、ゼロ魔原作とは変わった展開を求めるとしたらやっぱお嬢か白河さやかのどっちかかな…。

まぁさやかの場合、ルイズとかタバサとかエルザ辺りが、さやかの格好の遊び相手(いぢり相手ともいう)になりそうな気もするが。

461:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:28:04 AELvMe6d
30分から小ネタをひとつ投下OKでしょうか?
召喚キャラについては最後に、ということで

462:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:28:40 tEIDErtb
OK支援

463:空と君のあいだに
08/10/05 00:30:09 AELvMe6d
 その年は、ガリアという国にとって激動と混乱の年であった。
 長らく病に臥せっていた王がついに崩御し、長兄のジョゼフが玉座を継いだ。
 新たなる王が誕生したわけである。
 しかしながら、それは平穏無事に運んだものではなかった。
 何故ならば、戴冠のその前後には多くの血が流されたからだ。
 その最大のものは、次男のシャルルの死。
 まず間違いなく次の王となるだろうと考えられていた英才である。
 王族の仲でも誉れ高い魔法の才能と、多くの人望を持つその英才は、毒矢によって命を奪われた。
 暗殺であった。
 誰がやったかは定かではない。
 わかるのは、確実にジョゼフがそれに関わっているということだ。
 証拠はないが、状況証拠というものはいくかあった。
 何よりも、ジョゼフは母である王妃さえに暗愚と呼ばれる男だったこと。
 長兄でありながら、玉座はもっとも遠い男だと嘯かれるほどの無能者だったからだ。
 始祖ブリミルの流れを継ぐ王族に生まれながら、彼は魔法の才能がゼロだったからである。
 ジョゼフの戴冠に際して、シャルル派への粛清が、血の雨となってガリア中に降り注いだ。
 多くの者が排斥され、屍が重なっていく中で、暗愚の王子ジョゼフはガリアの王となった。
 無能王の誕生である。
 戴冠式が終わって間もなくことだった。
 ジョゼフの娘、今や王女となったイザベラ・ド・ガリアは部屋の中でじっとしていた。
 脱ぎ散らかした衣服がそこら中に散乱し、イザベラ自身も長く美しいはずの髪の毛がボサボサになり、まるで病人のようだった。
 青い髪のプリンセスは、ベッドの上で膝を抱え、しきりに親指の爪を噛んでいる。
 そして時折怪鳥のような悲鳴を上げるのだ。
 死人のように血の気の失せた顔だった。
 ガチガチと歯の鳴る音が部屋の中に響いていた。
 抑え難い恐怖が、イザベラの心を蝕んでいた。
 怖い。
 どうしようもない恐怖だった。
 何故、どうしてこんなことになっている。
 王女という輝かしい立場にいるはずの自分が。
 思えば、あの時に父に会ったせいだ。
 イザベラは数日前の、戴冠式の日を思い出していた。
 あの日、あの選択をしなければこんな恐怖を味あわなくて、すんだ。
 少なくとも、知らずにすんだのだ。
 何も知れずにいれば、そうすれば、これほど脅えることもなく、平穏に暮らせていたのだ。
 でも、イザベラは知ってしまった。
 戴冠式が始まる前、青いドレスに身を包んだイザベラはすっかりと準備を整えていた。
 後は従者がお時間でございます、と知らせに来るのを待つばかりだった。
 この時、イザベラは父の顔を思い出した。
 ほとんど顔を合わすことのない親子だった。
 こういった公式の場でしか、まず会うことがない。
 もとから家族のコミュニケーションは希薄だったが、イザベラにとってそれはもう慣れっこになっていた。
 母が死んでから、その傾向はさらに強くなっていた。
 だが、それでもこの時のイザベラは王女といっても、十五にもならない少女にすぎなかった。
 父の顔を見たいと思うのは、当然であった。
 いくらかの逡巡をした後で、父に会っておこうと考えたのも、別に不思議ではない。
 父も戴冠を前にして、色々思うこともあるのだろう。
 二人だけで会って話すのも、たまには悪くはない。
 もしかすれば、機嫌よく優しい言葉のひとつもかけてくれるかもしれないと思ったのだ。
 だから、父のもとへと向かった。
 しかし、すぐにイザベラはそれを後悔した。
 とても痛烈に。
 その時、彼女は触れてしまったのだ。
 父の、ジョゼフという男に巣食った狂気を。
 そして、理解してしまった。
 父にとって、自分の存在は欠片ほどの価値もないのだということに。
 あの淀んだ、闇の塊みたいな眼。
 あれが本当に自分の父なのか? あの得体の知れないバケモノが!?
 この日から、イザベラの心から安寧というものは消え去ってしまった。

464:空と君のあいだに
08/10/05 00:31:16 AELvMe6d
 部屋に閉じこもり、ほとんど人を寄せ付けなくなった。
 夜も満足に眠れなかった。
 眠れば確実に恐ろしい夢を見た。
 父の狂気を知ったあの時からだ。
 イザベラの中で何かが砕けてしまったかのように。
 解けることのないおぞましい呪いをうけたかのように。
 見るのは父が死ぬ夢だ。
 ジョゼフが死に、ガリアは再び鳴動する。
 そして、あの呪わしい、イザベラの持とうとしても持てない、あらゆる善いものを生まれながらにして与えられた従妹が、女王となる。 
 イザベラはどうなったのか。
 ある時は、断頭台で首を落とされた。
 首が切断され、血が噴き出す感触で眼を覚ました。
 ある時は魔法で八つ裂きにされた。
 ある時は野に放り出され、野犬に食い殺された。
 悪夢は、夢の中だけではなかった。
 イザベラは起きている時も悪夢は襲ってきた。
 窓の外を、いくつもの人間が泳いでいくのを見た。
 血まみれになって、その瞳に憎悪をみなぎらせた人間が。
 ある時は臓腑をしたたらせ、ある時は窓に張り付き、イザベラを威嚇した。
 戴冠式の前までは、こんなものは一度だって見ることはなかったのに―!!
 地獄だった。
 生き地獄だった。
 頼れるものは何ひとつなかった。
 父は化け物だ。
 母はとうの昔に死んでいる。
 家臣にしても、いざとなればイザベラを裏切るに決まっている。
 誰に助けを求めればいい?
 懊悩でやつれ果てたイザベラは、その時天啓ともいうべき考えに至った。
 「そうだ…。使い魔だ、使い魔を召喚すればいい……」
 ふらふらと、イザベラはベッドから立ち上がった。
 イザベラの思い立ったもの。
 それは、自らの使い魔を召喚するということだった。
 溺れる者は藁をもすがる、という。
 この時のイザベラは、自分の魔法の才能というものを、ほとんど忘却していた。
 いや、無理やりに忘れ去っていた。
 そんなことを考えれば、瞬間に絶望のために杖を振るうことさえできなくなるかもしれない。
 イザベラはすぐに杖をとり、呪文を詠唱した。
 「五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ―」
 必死の思いをこめて、呪文を唱え、杖を振り下ろす。
 杖から放たれた魔力を迸りによって空間が歪み、何かがイザベラの前に出現した。
 「やったの、か?」
 イザベラは必死で眼を凝らす。
 何か、黒い塊のようなものがイザベラの前にある。
 それはぶるりと身震いをして、膨れ上がった。
 不気味なスライム状の生き物が形を変えるみたいだった。
 「ひぃ」
 イザベラは声にもならない声をあげる。
 それは、人間の男だった。
 膨れ上がって見えたのは、うずくまっていたのを立ち上がっただけにすぎない。
 見たこともない装束を身につけているが、マントをつけているところを見ると、メイジなのだろうか?
 両手にはめた白手袋、その甲に刻まれた紋章がその推測を確信に近づける。
 手袋には、五芒の星が不気味に黒く光って見えたからだ。
 ペンタゴン。
 それは魔法の象徴。
 地火水風、そして失われた虚無を加えた五つの属性を表すものだ。
 異形の男が、イザベラを見た。
 不気味な男だった。
 つんをとがった、長い顎をしている。
 長身痩躯で、頬はこけ、落ち窪んだ眼窩の下には、灰色の眼が殺気を放っていた。

465:空と君のあいだに
08/10/05 00:32:27 AELvMe6d
 ぞっとするような、死の匂いを漂わせる男だった。
 「―娘」
 男が唇を開いた。
 不思議な磁力を発する眼が、イザベラを見据える。
 「俺をここへ呼び寄せたのは、貴様だな?」
 圧倒されたイザベラは声を発することができない。
 何度か小さくうなずくだけで精一杯だった。
 「そうか」
 男は薄い唇を吊り上げた。
 それは笑みという言葉がまったく噛み合わぬ冷たいものだった。
 人ではない。
 地獄の魔物の表情だった。
 「ここは、どこか?」
 「あ、ああ……」
 イザベラは必死でしゃべろうとするが、言葉が出ない。
 「答えよ!」
 男が低い声で返答を求める。
 「が、ガリア…。リュティス……」
 イザベラは辛うじてその二つの単語を口にする。
 ただそれだけのことで、疲労がどっと噴き出した。
 そのままへたりこんでしまいたくなるような、まったく未経験の疲労だった。
 男は鋭い眼で部屋の中や窓の外を睨んだ。
 やがて、微かに表情を変えて、
 「ほう。面白い、俺が、異界に召喚をされるとはなぁ……。まるで地下世界にくだった甲賀三郎のようではないか」
 言いながら、男はくっくっくと喉の奥を鳴らした。
 獣がうなっているような笑い声だった。
 「では、娘よ。何故俺を呼んだ? ただの遊びというわけではあるまい。何しろ、お前は―」
 〝鬼〟を呼んだのだからな、と男は冷笑した。
 オニ。
 オーク鬼やトロル鬼の鬼と、同じような言葉だったが、そこに込められた意味はまるで違っているのがわかった。
 吐き気を催すほどの、底暗い響きのある言葉だった。
 「うああ…………」
 イザベラは震えたが、この時男の背後―すなわち窓の外を見てさらに青くなった。
 また、幻が見えた。
 獅子頭のような人間の首が窓に張り付いている。
 首は黄色い歯をむき出し、舌を突き出して部屋を覗き込んでいた。
 「こんなものまでいるとはな……。ところは変わっても、人は同じか。異界でも同じとはまったくもって面白い」
 男は口角を吊り上げて、窓に向かってゆっくりと手の甲をかざした。
 五芒星をかざされ、幻の首は転がるように消え去った。
 「娘―貴様、死人が見えるらしいな?」
 男はすぐにイザベラを振り返った。
 「し、にん? あれは、まぼろし……」
 糸の切れた人形のように、イザベラは男を見た。
 「そうではない。常人の眼には見えぬが厳然たる真実だ。貴様が見たのは死人よ」
 「じゃ、じゃあ、幽霊!?」
 「そうとも言えるか。なるほど、死人を見る女だから、俺を呼んだということか」
 男は納得したように腕を組み、イザベラを睨みつけた。
 「不幸だな、死人が見えるのは不幸なことだ」
 なぶるような視線だった。
 イザベラは邪眼ともいうべき瞳に睨みつけられながら、奇妙な安心感を抱いていた。
 あの、父に感じた恐怖がどんどんと薄らいでいく。
 目の前に、本当の化け物がいるからだ。
 この男の底知れぬ妖気に比べれば、父ジョゼフの狂気など……!!
 男の凄まじい妖気が、父からの呪いを打ち砕き、かき消していくような気分だった。
 「あ、あなたは、メイジ?」
 平常時の高慢な表情を全て捨て去り、イザベラはすがるように男に問うた。
 「メイジ? 魔法……妖術を使うという意味では、そうだ」
 男は微かにうなずいた。
 「そうだな、陰陽師といってもおそらく貴様らにわかるまい。ここでは、その言葉が適当なのかもしれぬ」

466:空と君のあいだに
08/10/05 00:34:36 AELvMe6d
 「やっぱり。ペンタゴンをつけてるし……マントだって」
 「ペンタゴン? 違うな。これは俺の国で生まれたものだ。俺たちはドーマンセーマンと呼ぶ」
 男は首を振った。
 「どーま、せいまん?」
 不思議な響きの言葉だった。
 「古代の、二人の偉大な陰陽師の名前を組み合わせたものだ。芦屋道満と安倍晴明のな」
 男は唇を歪める。
 (おんみょうじ……)
 この男の住んでいた土地では、メイジをそのように呼ぶのだろうか。
 「話を戻そうか。ここはどこで、貴様は何者だ? 何故俺を呼んだのだ」
 男に促され、イザベラはたどたどしくも事情を説明した。
 自分の置かれている状況。
 父のこと、この国のこと。
 「ずいぶんと手前勝手な話だな?」
 男は冷笑を強める。
 「貴様、〝鬼〟を呼び寄せておいて、無事に事が運ぶと思っているのか?」
 「ひ……」
 男に威圧され、イザベラは身を硬直させる。
 まるで邪視を受けた哀れな生贄のように。
 「だが、それもいい。俺はいずれ俺の国に帰るが……貴様の言うとおりならばすぐというわけにかいぬようだ」
 イザベラはうなだれる。
 「貴様ら、呪われた王族と、この国にも多少の興味がわいた。おい、小娘、イザベラとか言ったな?」
 男の灰色の眼がイザベラをのぞきこんだ。
 「一つ教えてやろう。貴様の見る夢は予知夢だ。遠い未来を、夢を通して見聞きしているのだ」
 「え!?」
 「父親が死ぬのも、貴様が処刑されるのもな……」
 「嘘だ……」
 「嘘ではない。貴様の持つ霊感がそれを見させているのだ。言っただろう、不幸なことだとな」
 男の呪いのような言葉に、イザベラは声を失った。
 絶望だった。
 「―貴様、生きていく覚悟はあるか?」
 イザベラを見据え、男は言った。
 「そんなものないよ……!」
 イザベラは小さく、悲鳴のような声をあげた。
 「母上は死んだ。父上は狂っている。私は、私には誰もいない。一人ぼっちだ……!!」
 「それでいい。死人が見えるのもいい。これは―運命だと思え」
 「うん…めい」
 イザベラの声に、そうだ、と男はうなずいた。
 イザベラの瞳には、手袋の五芒星が映っていた。


       ☆


 気配を感じて、イザベラはゆっくりと眼を開いた。
 とても、懐かしい夢を見た。
 あの男と出会った時の夢を。
 自分にとっては、師であり―
 あるいは父とも呼べる男の夢を。
 船は、どうやら到着したらしい。
 部屋を出て甲板まで上がると、リュティスが見えた。
 喧騒が街を包んでいる。
 「ふん」
 イザベラは唇を歪めて、街を見下ろした。
 その表情は、彼女が昔から異界から召喚した男と同じものだった。
 下船したイザベラは、崩壊したグラン・トロワを横目に風のような速さで歩いていく。
 王宮の主が、現在の仮宿舎としている迎賓館を目指して。
 「父上!」
 部屋に入ると、王は古ぼけたチェストを、寝ぼけたような目で見つめていた。

467:空と君のあいだに
08/10/05 00:35:54 AELvMe6d
 「この騒ぎは一体何事ですか? ロマリアといきなり開戦したかと思えば、リュティスはまるでゴミダメ。おまけに国の半分が寝返ったという話ではありませんか」
 「それがどうした?」
 ジョゼフはうるさそうに娘を見やった。
 そこには愛情など欠片も見えない。
 道端に転がる石ころでも見るような視線だった。
 しかし、娘はそれに罵声で返した。
 「それがどうした? のんきですこと。エルフと手を組むわ、ハルケギニア中を敵に回すわ、一体何をお考えかしら!」
 「誰と手を組もうが俺の勝手だろうが」
 「へええ! ええ、そうですわね。この国は父上のものですからッ」
 「気に入らぬというなら、どこへでも出て行け」
 「父上」
 イザベラがさらに言葉を口にしようとしたが、
 「さっさと失せろ。お前を見ていると自分を見ているようで嫌になる」
 イザベラは何も言わなかった。
 言われるままに、黙って父王のもとを辞した。
 父に背中を見せた後ろで、イザベラの口元にゾッとするような嘲笑が浮かんでいたことに、ジョゼフは気づきもしなかったが。
 「自分を見ているようで、だと?」
 扉を閉めた後、イザベラはカラカラと軽蔑を込めて笑った。
 「笑わせるなよ」
 吐き捨てた後、裾の長いドレスを着ているとは思えない速度で、イザベラは歩き出した。
 混乱する王宮内を駆けて、プチ・トロワの自分の部屋と向かう。
 そこでドレスを脱ぎ捨てると、軽装に着替えて上からマントを羽織った。
 最後に両手に手袋をはめる。
 甲に五芒星を刻み込んだ白い手袋だった。
 「ドーマンセーマン」
 あの男は、この紋章をそう呼んでいた。
 おそらく、イザベラもそう呼び続けるだろう。
 イザベラは蹴破るようにしてドアを開き、廊下を歩き出した。
 プチ・トロワを出てすぐに、イザベラは足を止めた。
 ふところに右手を差し入れ、
 「誰か」
 冷たい声で言った。
 物陰から、複数の男たちが現れた。
 いずれも手に杖を持っており、目つきが尋常ではなかった。
 「イザベラ様、お部屋にお戻り願いますよう」
 慇懃な口調とは裏腹に、まるで命令でもするように男たちは言った。
 「何故だ?」
 イザベラは唇の端を吊り上げて男たちを見返した。
 「今は非常時にございます。お部屋でおとなしくしていただきたい」
 「ほおお。で、それはいつまでだ?」
 イザベラは道化のように眼を見開き、男たちを嘗め回すように見た。
 男たちの顔に、不快の念が浮かぶ。
 それにイザベラは嘲笑をぶつけた。
 「私の首を手土産にシャルロットに願えるつもりか? 今さらあまり意味はないと思うけれどね」
 「おとなしく部屋に戻れ」
 男たちはせっぱつまった表情で杖を突き出し、イザベラを威嚇する。
 「嫌だね」
 イザベラは舌を出し、にたりと笑った。
 瞬転、男たちの杖から風と炎が飛んだ。
 イザベラはふところから出したものを投げつける。
 それらが宙でぶつかり合った時、炎と風は一瞬で消えうせた。
 イザベラの放ったものは、数枚の白い紙だった。
 真ん中に、黒字で五芒星が描かれている。
 「犬どもが!!」
 イザベラは歯をむき出して笑った。
 「よりにもよって、私のところにくるとはな。ならば望みどおり地獄へ送ってやる!」
 嘲笑と共に、五芒星の描かれた紙が宙に舞い上がった。
 それは歪みながら膨張し、不気味な獣へと姿を変えた。
 獣はあっという間に男たちに襲いかかり、その急所に喰らいついていった。

468:空と君のあいだに
08/10/05 00:38:06 AELvMe6d
 「ぎゃああ!」
 「なんだ、これは!?」
 絶叫が響き渡り、赤黒い血が周辺を染めていく。
 「騒ぐな。私の式神がお前たちを喰い殺すだけのことだ」
 男たちが絶命するまで、イザベラは冷たい眼でその光景を見ていた。
 地獄で亡者が炎に焼かれるのを見る、鬼の目だった。
 男たちが死ぬのを見届けると、イザベラはマントを翻して、風のように王宮から去っていった。
 異形の獣たちも従順に主の後を追う。
 王宮を後にしながら、イザベラは思い出していた。
 自分にことの術を教え込んだあの〝鬼〟のことを。
 陰陽道。
 真言。
 卜占。 
 風水。
 式神。
 護法童子。
 不老長生の秘術。
 召喚されてから数年間の間、男は密かにイザベラをプチ・トロワから連れ出し、数々の異界の魔法を教え込んだ。
 男のことも、イザベラの密かな修行も、誰にも知られることはなかった。
 何故なら、イザベラはあらゆる意味で何者の眼中にもなかったからだ。
 父ジョゼフは気づかなかったのは、ある意味で当然だった。
 彼は【自分に似ていると思い込んでいる娘】をあえて、見ようとはしなかったから。
 「どうして私にこれを教えてくれるの?」
 度々イザベラはそうたずねた。
 「貴様が鬼だからだ。つまり、俺の同類だからだ」
 そう答える男の言葉を、イザベラはすぐには理解できなかった。
 その男は、〝カトー〟という不思議な響きの名を持った男は、もうこの世界にいない。
 自力で異界の扉を開く術を見つけ、去っていった。
 だが今ならば理解できる。
 ヤマトという国を永遠に呪い続けるあの男と同じく、イザベラはハルケギニアを―
 ブリミルを始祖とするメイジたちの支配するこの大地を永久に呪うものとなった。

 なぜならば―

 ……………。


       ☆


 多くの祝いの言葉が飛び交う中、ガリアは歓喜に溢れていた。
 無能王ジョゼフが滅び、亡きシャルル・オルレアンの遺児、シャルロットが冠をかぶる日がやってきたのだ。
 新たなる決意と怒りを胸にシャルロットは式にのぞむ。
 けれど。
 どれだけの人が知っているのだろう。
 狂王と呼ばれた男は、結局のところ臆病で傷つきやすい、大人になることのできない哀れな少年でしかなかった。
 あるいは、シャルルも同じであったかもしれない。
 ましてや、
 何とも厄介な、本物の〝鬼〟が一匹、ハルケギニアの大地を闊歩し出したことを、誰も知らなかった……。

 「みんな、壊してやる」

 〝鬼〟のつぶやきに、ハルケギニアの精霊たちはぞっと身を震わせていた。

 。。。
 というわけで、「帝都物語」から加藤保憲を召喚でした
 タイトルは特に意味はありません

469:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:47:38 tEIDErtb
GJ
原作にある部分は殆ど変えてない辺りが上手いと思ったよ
この先のイザベラ様はどこまでやっちゃうのか気になるなw
うん、面白かった

タイトルを見て、即座にプロジェクトXという単語が頭に浮かんだのは俺だけじゃないと信じている

470:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:48:49 l1Awu7EH
あのアゴが凄いひとかw

471:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:49:21 jqH8hFj+
か、加藤ォォォォォォォォォォォォ!!

GJ、面白かった。
呼び出されたものが召還者に技術を教えて帰ったのはヘルミーナ以来久しぶりかな。
とにかく面白かった。
出来ればもう少し続きが読みたいけど、乙!

472:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:53:33 Tbg7X2VN
加藤と同等の技量なら事実上不老・転生して不死化だしなあ
加藤にあった弱点も無いからもう誰も止められないぜ

473:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 00:54:58 tEIDErtb
それでも虚無なら、虚無なら何とかしてくれる……かもしれない

474:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 01:04:23 BO/b3L0J
加藤って小豆に弱いんだよね

475:ゼロの社長 06
08/10/05 01:19:02 wFfkTa3T
短篇投下乙です
このスレで知ってから元ネタを読もうと思える作品が多くて楽しみです。

06話完成したので10分後くらいに投下します。


476:ゼロの社長 06
08/10/05 01:29:59 wFfkTa3T



「さて…ルイズを預けたは良いものの、寝床を確保せねばならないか。」


ルイズを医務室に預けた海馬は、学園をうろうろしていた。
とはいっても、勝手に建物の中をうろうろしているわけにも行かず、警備員がいる以上学院の外に出ることも駄目。

(ふむ、モンスター召喚のほか、これについて色々と調べておきたい事はあるが、ここでまたやたらに騒ぎを起こすわけにもいかん。
しかたがないが、それは後に回すとして…)

ドンッ

などと考えていると、後ろから何かにぶつかられた。

「あいたぁ…うわ、洗濯物がっ!」
「ぬぅ、人にぶつかっておいて先に洗濯物の心配とは…」

海馬が振り返ると、そこには凄い量の洗濯物が散乱し、それを拾っているメイド服の少女がいた。
少女は海馬の声を聞き、しまったという顔をしながら慌てて立ち上がり頭を下げた。

「もっ申し訳ございません、前がよく見えなくて。失礼しました、ミスタ…あれ?」

そこで少女は海馬のほうを見たが、少女にとって海馬は見覚えの無い相手だった。
だが、出で立ちや全身からあふれ出る威圧感。そして何よりその眼差しから、貴族に間違いないだろうと判断した。
見覚えの無い相手だろうと貴族は貴族。
平民である自分が貴族に不快な思いをさせた。
その事に恐怖した少女は必死に謝罪をした。

「申し訳ございません!平民風情が貴族の方にとんだ失礼を!どうかお許しください!」

目に涙をため海馬に許しを請う少女。



477:ゼロの社長 06
08/10/05 01:31:16 wFfkTa3T

「何を勘違いしているかしらんが、俺は貴族などではない。確かに貴様の不注意ではあるが、そこまで気にするような事ではない。」
「貴族じゃない?え?だって…」

確かに良く見ると、羽織っているのはマントっぽくはあるが実際はコートである。

「それでも、すみませんでした。でも…あれ?おかしいなぁ、私、この学院の人の顔は大体覚えているのですが…。」
「知らなくても無理は無い。俺は昨日ここに呼びだされた、使い魔だからな。」
「使い魔!?え?だってあなたは人間で…」

と、少女が言い終わる前に、海馬は左腕のルーンを少女に見せた。

「あっ!もしかして。ミス・ヴァリエールが平民の使い魔を召喚したって言う噂をさっき耳にしたのですが、あなたが?」
「そうだ。俺の名は海馬瀬人。今はルイズの使い魔をしている。」
「あ、申し遅れました。私はシエスタ。この学院でメイドとして働かせて頂いてます。」

礼儀正しく頭を下げるシエスタ。

「ところで、瀬人さんはどうしてこんなところへ?もう時間も遅いですし、ミス・ヴァリエールのところに戻られたほうが…。
それに、さっきなんか凄い音がして、何でもドラゴンが学生寮につっこんだとかで、大騒ぎになっていましたよ。」
「ふむ…そのドラゴンが突っ込んだ部屋というのが、ルイズの、つまり俺もいた部屋でな。
ルイズは気絶してしまったので医務室に運んだは良いものの、あの半壊した部屋に戻るわけにも行かず、どうしたものかと思ってな。」

もっとも、部屋を壊したドラゴンを呼び出したのは他ならぬ海馬であるのだが、もちろん口にはしない。

「ええっ!?良くご無事でしたね?…あっ、そう言うことでしたら…少し待っていただけますか?」

そういうとシエスタは、ぱぱっと落ちている洗濯物を拾い上げ桶に詰めこみ、持ち上げた。

「よいしょっと…。瀬人さん、もしよろしければ、私の部屋にいらっしゃいませんか?
ちょっと狭いですけれど、外で寝るよりはましかと思うんですが?」
「ふむ…寝所を貸してもらえるのは願っても無いが、迷惑ではないか?」
「大丈夫ですっ。それに、困ったときはお互い様ですよ。それじゃあ、私はまずこれをおいてきますので、少し待ってていただけますか?」

そういってよたよたと重い洗濯物を持って行こうとするシエスタ。
流石に量が多すぎるのか、見るからに危なっかしい。
これでは先ほどのように誰かとまたぶつかりかねない。
海馬は無言でシエスタから桶を奪い取った。


478:ゼロの社長 06
08/10/05 01:32:43 wFfkTa3T

「えっと、瀬人さん?何を…」
「困ったときはお互い様なのだろう?それで?これはどこへ運べば良いんだ?」
「そんなだめですっ!これは私の仕事ですし、貴族の使い魔さんにそんなことをさせるわけには…」
「勘違いするな。俺は早く寝床に就きたいだけだ。」

シエスタに目を合わせず、先へどんどん進もうとする海馬。

「あぁっ!そっちじゃないです。…すみません、じゃあお願いします。」




洗濯物を片付けた後、海馬はシエスタの部屋へと招かれた。
その後どちらがベットで寝るかで一悶着があったりするのだが、結局シエスタがベットで、海馬は毛布だけを受け取り床で寝ることになった。








翌朝、海馬は何かカチャカチャという音で目がさめた。

「ぬ…?朝か…?」
「あっ、起こしちゃいましたか?」

シエスタは朝食の用意をしていたようだ。

「瀬人さんの分もいっしょに作っちゃったので、よろしければ食べてください。」

小さな机の上には、二人ぶんの朝食が用意されていた。
海馬は椅子を引き腰掛ける。
その向かいにシエスタが座る。

「大した物じゃないですが…お口に合えば良いんですけど。」
「わざわざすまないな。頂くとしよう。…ほぉ、これは。」

そういえば、これが海馬がハルキゲニアに来て最初の食事となる。
一口口に入れただけで海馬は感嘆の声を上げる。

「あの…口に合いませんか?普段どおりのものしか作れなくて…」
「いや、なかなかの味だ。そんなに謙遜する事は無い。」

(食事の姿もなんていうか…あれ?こういう時どう表現するんだっけ?
整ってる…?ん~なんか違うなぁ。あぁ!あれだ!)



479:ゼロの社長 06
08/10/05 01:34:00 wFfkTa3T
「ふつくしぃ」
「?あまりじろじろ見られるのは、愉快ではないのだが…?」
「はえっ!?あっ、すみません。」

気づかないうちに、シエスタは海馬のことを見つめていたようである。
慌ててごまかすように朝食を取るシエスタ。



「うむ、なかなかの味だったぞ。礼を言う。」
「いえいえ、お粗末さまでした。」

そういって食器を片付けるシエスタ。

「しかし、起床の時間が早いのだな。まだ日が登ってそうたってなさそうだが?」
「私たちはまず、貴族の方々の朝食の時間までに、食堂でその準備などをしなくてはなりませんから。
ですから、普段からこのぐらいの時間に起きているんですよ。
…って、まっずーい!急がないとお仕事に遅刻しちゃいます!」

空模様を見て時間を察すると、シエスタは慌てだした。

「まだ時間はありますけれど、もう少ししたら貴族の方々の朝食の時間なんです。

「ふむ、そうか。仕事ならば邪魔してはまずいな。
それにルイズの様子も見ておかなければならないしな。
世話になった。この借りは必ず返させてもらう。」
「そんな、借りだなんて思わないで下さい。困った事があったら、いつでも言ってくださいね。」
「ならばシエスタ。貴様が困ったことがあれば、俺にも声をかけろ。
できる限り力になってやる。」
「はいっ、ありがとうございます。瀬人さん。」



480:ゼロの社長 06
08/10/05 01:35:51 wFfkTa3T



シエスタの部屋を後にし、海馬はルイズが眠る医務室へと向かった。
医務室の扉をノックしてみたものの、中からは返事が無いため、勝手に入ることにした。
そのとき、廊下の向こうから見覚えのある顔がこちらに向かってきているのに気が付いた。
コルベールである。
コルベールは海馬の姿を確認すると、こちらへ駆け寄ってきた。

「瀬人君。ミス・ヴァリエールの容態はどうなんだい?」
「いや、俺も今ここに来たばかりだ。ノックをしたが返事がないのでな。」
「そうか。いや、ミス・ヴァリエールに部屋の修理ことについて連絡してくるようにと、オールド・オスマンに命じられてね。
しかし大変だったね。君は、怪我は無いのかい?」
「問題ない。とりあえずルイズの様子を見に行く。」

そう言うと医務室にずんずんと入っていく海馬。
ベットの上にはぶつぶつと寝言を言いながら寝ているルイズがいた。

「うにゅ~…もう食べられない…」
「…みたところ重症というわけではなさそうだね。」
「そのようだな。」

そう言うと海馬は気持ちよさそうに寝ているルイズの頭をガシッ!っと鷲づかみにし、そのまま数度シェイクした。

「うぼあっ!?なっ!なにごと!?」

予期しない謎の攻撃に慌てて目を醒ますルイズ。

「目はさめたか?」
「ちょっ…瀬人君。元気そうに見えても一応怪我人なのだから、あまり無茶な起こし方は…」
「醒めるに決まってるでしょう!!!!ああああんたはご主人様を何だと思って…って、ミスタ・コルベール!?」
「おはようございます。ミス・ヴァリエール。」

怒りを海馬にぶつけようとしたとき、ルイズは海馬以外に意外な人物が部屋にいる事に気が付いた。


481:ゼロの社長 06
08/10/05 01:37:02 wFfkTa3T
よく見るとここは自分の部屋ではない。
そうだ、医務室だ。なぜ自分はこんなところに?
などと考えているうちにコルベールから口を開いた。

「昨日のドラゴン騒ぎで気絶した君を、彼がここまで運んだんだそうだ。
しかし災難だったね。ドラゴンに部屋に突っ込まれるなんて。」

そうだ、昨日!
ルイズは昨日の惨劇(主にルイズの部屋が)の事を思い出した。

「なにぶん急なことでしたが、あなたの部屋の修理は今日中には終わるとのことです。
体調に問題がなければ安心して授業を受けなさい。それじゃ、お大事にね。」

用件を伝えるとコルベールは医務室から退室しようとする。

「あっ、ミスタ・コルベール!お聞きしたい事が…」
「うん?なんだい?」
「あのドラゴンは…その…」
「あぁ、確かに不思議な話だね。この付近にはドラゴンが生息しているような場所は無いのに、一体どこから現れたのか。
そもそも目撃者は君と君の使い魔である瀬人君。そして飛び出す瞬間に部屋に入ったというミス・ツェルプストーの3人だけだ。
もしかすると、いまだ発見されていない新種のドラゴンかもしれない!
そう考えたらわくわくしないかい?」

教師と言うより、未知の生物に心躍らせる少年のような笑顔の禿げたおっさんがそこにいた。
コルベールはドラゴンそのものに興味を抱いているようで、事件そのものの不審点には気がついていないようだった。

「それでは、ミス・ヴァリエール。お大事に。」

そういうとコルベールは医務室から去っていった。



482:ゼロの社長 06
08/10/05 01:38:13 wFfkTa3T

「……なんかややこしい事になっちゃっているような気がするわ。」
「ふむ…それで、これからどうする?」
「とりあえず着替えて朝食に行くわ。制服の代えは大丈夫かしら…」
「そうではない。俺がどうすると聞いたのは、俺の力の事だ。」

的外れな解答を返すルイズに呆れながら、海馬は自分の左腕のデュエルディスクを指差しながら尋ねた。

「うん、そうね。正直このままでもいいような気がするわ。」
「と、言うと?」
「そのままの意味よ。結果的にばれなかった物を、わざわざ公表する事も無いでしょ?」
「ふむ…意外だな。珍しい力を持った使い魔として表沙汰にすれば、自分の評判につながるとでも言い出すかと思っていたのだが。」
「確かに、そうしたいって少しは思ったわ。でも、ものには限度がある。」
「強力すぎる力は、安易に晒すものではないと?」
「ええ。ミスタ・コルベールの話を聞いている間に少し考えたの。
あんたは無作為にあのドラゴンを召喚したわ。
そしてあの時あんたは言った。
『モンスター、魔法、罠の3種類のカードを組み合わせた40枚のカードのデッキを
これに装着し、知恵と勇気をもって戦う、それがデュエルだ!』
つまり、40枚のカードがそこにはセットされている。
40種類の、私たちには未知の『魔法』をあなたは使えるといって差し支えないはずよ。」

このルイズの洞察力に、そして何よりも、未知の事を自らの常識の殻で否定せず受け入れる柔軟な思考力に海馬は素直に感心した。

「ふむ、なかなかの洞察力だ。」
「あんたの力はまだ未知だけど、故に下手に知られればアカデミーなんかにつれていかれちゃう可能性だって否定できない。
だから今はこのまま。無理してばらさなくてもいいと思うの。」
「ふっ、なるほど。見た目などよりは意外とモノを考えられるようだな。」

微笑を浮かべて医務室を後にしようとする海馬。
心なしかその表情は満足げだ。

「ちょっと!見た目よりとは何よ!見た目よりとはーっ!」
「朝食の時間に遅刻するぞ、ルイズ。」
「話を変えるんじゃないわよ!」



廊下をにぎやかにしながら、珍しい使い魔とその主人は、医務室から去っていった。


483:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 01:40:03 4TJB9rJY
全速☆前進☆支援!

484:ゼロの社長 06
08/10/05 01:41:52 wFfkTa3T
以上です。
やっと初日が過ぎ2日目を迎えられます。
さくさく筆が進めばいいなぁ

485:ゼロと双子の使い魔
08/10/05 01:49:35 v8JUEtyi
続きができました
2時くらいに投下します

486:ゼロと双子の使い魔
08/10/05 01:58:55 v8JUEtyi
たった今召還された二人はキスをしていたのである
それも濃厚なデープキスである

「近親相姦」
少しはなれたところにいた青い髪をした少女がつぶやいたのを隣にいたキュルケは聞き逃さなかった

「ちょっとタバサ!!あんた何言い出すのよ」
「あれ」
「あれって言たって何があるっていうのよ?って、ええええええ!!!」
今まで押し問答をしていたルイズとコルベール、
そしてそれを見ていたキュルケをはじめとしたクラスメートたちは召還された二人を一斉に注目し始めたのである

「え?って何してるのよあなたたち!?」
"えっ何々?召還できたと思ったら人間でしかも二人?"
"その上いきなりキスをし始めた?ってよく見たらあの女の子杖を持ってるじゃないのまさかメイジ?"
そんな考えが頭の中でぐるぐる回っていたときである

「何ってキスをしているんだよ」
「そうよ。キスをしているのよ」
「まさかお姉さんはキスしたことないの?」

ッボン
目の前の子供に言われた内容にルイズの思考は一気に吹き飛んだのである
「ああああんた達には、かっかん関係ないでしょ!!それにあなた杖を持っているじゃないの?まさかメイジなの?」

「「めいじ?」」
「そうよ」
「姉様メイジって知ってる?」
「さぁ、知らないわ兄様」
「知らない?だってその布でくるまれたのは杖じゃないの?魔法は使えないの?」

二人が首を横に振ったのを見てルイズは少し冷静さを取り戻した
よくよく見れば珍しい服装ではあるがそこらへんの平民に比べればすごく上等な服である
万が一メイジとなれば外国貴族のかなり上位の位だと思ったからである


「まぁいいわあんた達を使い魔としなくちゃいけないのよ」
コルベールと話していても一向に埒があかないと判断したのかそう二人に切り出したのだ
尤もルイズもコントラクトサーヴァントが失敗してしまえば何とかこの二人を家に帰してすぐにでも新しい使い魔を呼ぶつもりなのだ

「まっ、平民の子供に説明しても無駄だと思うから勝手にやらせてもらうわ」

そういうと契約の呪文を唱え二人にキスをした
といっても先ほど二人がしていたような濃厚なキスではなく軽く唇が触れる程度のキスだったのである
よたよたと後ずさりながら
「こんな子供とのキスはノーカンよノーカン」
呪文のように繰り返すルイズを二人は真っ直ぐに見つめていたのである
「なっ何よ、文句あるわけ?あんたたちだってしていたから一回位いいじゃない!!」

「兄様以外の人に無理やりキスをされてしまったわ」
「そうだね姉様。許せないね」
そういって二人は笑った、確かに笑っているしかしどことなく恐怖を覚えるような恐ろしい笑みだった

「マカロニの後にメインディッシュのボルシチを食べる予定だったのに、仕方ないわ先にデザートを食べましょう」
「うん。そうだね姉様。ボルシチは食べれなかったからね」
「そうよ兄様。この人たちには天使を呼んであげなくちゃ」

487:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:02:58 JG6zaz9q
gkbr支援

488:ゼロと双子の使い魔
08/10/05 02:04:46 v8JUEtyi
以上投下終了です
明日また来ます感想とか要望とかあったらカキコよろしくお願いします

一応双子は姉御に殺された後に召還されたものとしています


489:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:12:20 2aVDKz5i
いや、いいと思うが短すぎる・・。

490:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:16:16 d2sbXIFH
スーパー双子タイムをやってしまうのかしら

491:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:24:21 rPycBwht
せめてこの10倍は書いてから投下してくれ

492:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:36:47 JG6zaz9q
せっかく支援したのに、1レスSSとかマジ鬼畜すぎるw

493:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:39:09 hgGU7YWm
デュエルモンスターのデッキって40枚までだっけ?
40枚以上だった気がするけどそのあたりどうなの?

494:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 02:47:13 s8tHOn33
>>486
スレの空気読んでください、これが要望です

495:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 03:08:59 SGecZwtm
>>493
現行のルールだと40~60枚
以前は40枚以上だったけどルールが変わった

496:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 03:09:55 4VAqNLyx
>>493
デッキは40~60枚、エクストラデッキ(融合・シンクロモンスター)が最大15枚まで、これが現行のマスタールール。
社長現役時代のルールだと、デッキは40枚以上、融合デッキは枚数制限無しになるのかな。
サイドデッキと言う物もあるけど、アニメではマッチ戦が無かったはずだから、社長が組んでるかどうかはわからん。

だから、デッキの枚数は融合除けば40で合ってるはず。社長の場合、40枚以上で組むメリットが特に無いデッキのはずだし。

497:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/05 03:55:43 CW9BYXfM
>>495-496
なるほど


498:"IDOLA" have the immortal servant 0/8 ◆GUDE6lLSzI
08/10/05 04:30:40 WHP91BI2
皆様お疲れ様です。
例によってこんな時間ですが、予約が無ければ
4:35から11話目の投下をしたいと思います。

499:"IDOLA" have the immortal servant 1/8 ◆GUDE6lLSzI
08/10/05 04:35:29 WHP91BI2
「おお……始祖ブリミルよ……なんという……」
 ルイズにラグドリアン湖での顛末を聞かされたアンリエッタは、青褪めた表情で言葉を失っていた。
『アンドバリ』の指輪の能力と、それを操る者。それらを繋ぎ合せれば、アルビオン貴族派の破竹の勢いの裏側にある物が見えてくる。
「――以上です。指輪の能力故に、姫さまに直接お話するのが最良と判断しました」
「……よく話してくださいました。『アンドバリ』の指輪をクロムウェルが所有しているとなれば、これは……」
 脅威以外の何物でもない。ただ、実際に対峙する前に知ることができた。これは大きなアドバンテージだ。
 少なくとも、ゲルマニア皇帝とガリア王の耳には入れるべきだろう。
 その上で善後策を練るべきだ。このことが明るみに出れば、クロムウェルの求心力は大幅に低下する。
「姫さま。わたしはこの事を何とか逆手にとって、アルビオン王家の人々を救えないものかと思案していました」
 フロウウェンの言う通り、ここまで傾いた天秤を一朝一夕で覆すのは難しい。
「死して後、意に反して顎で使われるなど屈辱の極み。このことをアルビオン王家に知らせ、亡命を勧めてみるということも考えたのですが……」
 アルビオン王族の死体ですら、貴族派……いや、クロムウェルに利用される可能性が高い。というよりも間違いなくそうするだろう。
「亡命……ですか」
 アンリエッタは泥を吐くように言葉を紡いだ。ルイズもまた理解していた。アルビオン王家の者を匿ったとあらば、貴族派は大義名分を得てトリステインを次の標的と定め、意気揚々と乗り込んでくるだろう。
 アンリエッタの決断一つで、ともすればトリステインを戦争に導くことになる。懐かしい旧友との思い出話から一転。とんでもない話になったものだ。
 アルビオンの貴族派はハルケギニアの統一と聖地の奪還を謳っている。実際は戦うのが早いか遅いかの違いでしかないが、そこがトリステインの命運を別けるのだ。
 各国と連携して迎え撃つにせよ、アルビオンに封じ込めるにせよ、準備の時間はどうしても必要だった。だからこそのゲルマニア皇帝との婚約なのだ。
 ただ、アルビオンに封じ込めておくというのは、『アンドバリ』の指輪のことを考えると不安が残る。クロムウェルを打倒し、その手から指輪を奪わねばならないだろう。
「わたくしは……」
 何のかんのと理屈を捏ね回しているが、自分の心の内は解っているのだ。王党派が敗れれば、皇太子ウェールズの亡骸と心は、指輪の力によって涜神されるだろう。そんなことをされても、自分は今しているように静観できるだろうか。
 元より、指輪のことがなかったとしても、アルビオン王家……いや、皇太子ウェールズを助けたいというのが偽らざる本音なのである。
 それは、国家の大事と己の恋心からくる執着を天秤にかけているということだ。それにもとっくに気が付いていた。
 アンリエッタはそんな自分の矮小さを呪っていた。それでも尚、愚かしいと知ればこそ想いは強くなっていく。
 自分は公平にも冷静にもなれないという理解も手伝ってか、アンリエッタには亡命を勧めることを諦めるでも決断するでもなく、ただ答えを出すことを留保してきたのである。
 だが、追い詰められたアルビオン王家には時間そのものが無い。そして、時間が無くなったのは自分とトリステインも同じだ。
 マザリーニの献策は客観的に見れば上策だろう。ただ、それには一つ障害になるものがあった。自分がウェールズに送った恋文だ。
 だから――
(だからわたくしは、自分の決断が齎す結果が怖くて、マザリーニに全てを任せてしまうというの? トリステイン王家には杖が無い? それは他ならないわたくしが、マザリーニに頼り切っているからではないの?)
 アンリエッタは唇を噛む。
「……ルイズ。わたくしはゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのです」
「ゲルマニア! あんな野蛮な成り上がりどもの国に!?」
「仕方が無いのです。アルビオンの貴族派からトリステインを護る為には、早急にゲルマニアと結ぶ必要があった。トリステインは単独で貴族派と戦うのは難しい情勢なのですから」
「そう、だったんですか……」
 優しげな笑みを浮かべるアンリエッタだったが、それが余計にルイズの目には悲しそうに見えた。
「アルビオンの王家に亡命を勧めるのは、時間的な猶予をトリステインから奪い去ってしまう。ですから、彼らを見殺しにするしかないのかと諦めていました。けれど……」
 アンリエッタの表情から笑みが消える。何かを決意したかのような表情だった。

500:"IDOLA" have the immortal servant 2/8 ◆GUDE6lLSzI
08/10/05 04:36:35 WHP91BI2
「指輪のことを知っていると、あの恥知らずで卑怯者の司教に伝えてやりましょう。
彼個人への揺さぶりで、判断を遅らせ、幾らかの時を稼ぐことができると思います。恐らく、彼らの掲げる貴族議会すらもクロムウェルの傀儡でしょうから。その間に、各国にこれを知らせ、軍事連合を組みます」
「……姫さま。それでは、姫さまの御身に危険が」
 ルイズの顔が青くなる。
 それもルイズは手の一つとして考えてはいたのだ。確かに多少の時間は稼げるだろう。しかし、そうした時にクロムウェルがどういう手に出るだろうか。
 クロムウェルも馬鹿ではない。こちらが何時指輪の情報を得ていたか判らない以上、まずは既に各国諸侯に知れ渡っているものという仮定するだろう。
 だが実際は、噂という形ですら指輪のことが自分の耳に届いてこない。であるなら情報を入手したばかりで公表されていない段階と判断し、情報の拡散を防ぐ意味で早急にアンリエッタの暗殺か誘拐という手に出るはずだ。
 何せ、暗殺の対象となるアンリエッタでさえ、殺しさえすれば火消しに利用できるのだ。『アンドバリ』の指輪はそんな後ろ暗い使い方をするのにも、非常に有用だった。
 それはそのまま、誰であれ、おいそれと信用はできないということも意味する。生前のその者に二心は無くとも、死者になれば、もうその意思は関係が無い。
 アンリエッタは暫し黙考した後に、言った。
「そうですね。わたくしの身辺警護には平民の者を用いることにしましょう」
「平民……ですか?」
 目を瞬かせて、ルイズはアンリエッタの言葉を反芻する。
「そうです。平民にディティクトマジックをかければ、普通は何の反応も示さないでしょう。
しかし、指輪の力で動いているならば或いは……いえ、先住の力を感知できなかったとしても、いざと言う時は、このわたくしの身一つでも抵抗できるでしょうから」
「なるほど……」
 ルイズは素直に感心した。
 指輪の力で護衛そのものを刺客としたとしても、メイジであるアンリエッタには抵抗の手段が残されている。直接手を出しにくいという状況を作れる。
 元より、近衛の護衛は時間をほんの少し稼げれば良いのだ。それだけで他の味方が駆けつけ、暗殺や誘拐の成功率は格段に下げることができる。
「後は、誰をアルビオン王家に亡命を勧告する大使として遣わすか、ですね……」
 アンリエッタは独りごちた。
 諸侯に指輪の存在をすんなりと信じさせる為にはアルビオン王党派の協力が必要であった。誰がどのように裏切りをしたか、その不自然さを説いてもらう必要がある。
 その点から言えば、当事者たる王党派には心当たりがある。それ故、彼らに指輪の実在を信じさせるのは苦労しないであろう。
 いずれにしても指輪の存在を大義名分として各国で反貴族派の軍事連合を組むならば、王党派の協力は不可欠と言えた。
 つまりアンリエッタの策は、王党派の亡命と協力が前提となっている。
 昼間会話をした、ワルドという貴族はどうだろう。すぐにでも命を下して動かすことができる。その力量はマザリーニも認めるところだ。
「ヒース……」
 ルイズは困ったようにフロウウェンに視線をやる。
 フロウウェンは静かに頷いた。彼女がそう言い出すであろうことは既に予想がついていたからだ。
「ルイズの思うようにするといい」
 少し意外そうな顔で己の使い魔の顔を見返すも、やがてルイズも大きく頷き返した。そして、アンリエッタに向き直り、言う。
「姫さま。その役目は是非、このわたしに」
「何を言い出すのです! アルビオンは内戦の只中なのですよ!」
 ルイズが実力者だというならアンリエッタも手放しで任せただろう。しかし、アンリエッタはルイズのメイジとしての力量を耳にしたことが無い。ルイズが自分から申し出るまで候補になどとは考えていなかった。
「危険は承知の上です。姫さま。『アンドバリ』の指輪がある以上、誰が敵と通じているとも分かりません」
「それは、確かにそうですが……」
 その点で言うならルイズには確かに問題がない。
 まず、脈絡なく『アンドバリ』の指輪などという突拍子のないマジックアイテムを持ち出して、ルイズが自分を騙す理由が無い。現実味の薄い話だからこそ、彼女の言っていることに偽りは無いと思えた。
となれば、その忠誠にも偽りが無いということだ。
 そして指輪の話が真実であったとするなら、ルイズが操られている可能性は限りなく低い。そうであるなら「指輪をクロムウェルが所有している」という、貴族派最大の弱点を自分に明かす必要性がないからだ。
 ともあれ、ルイズは腹芸の類を一切使っていない。

501:"IDOLA" have the immortal servant 3/8 ◆GUDE6lLSzI
08/10/05 04:37:54 WHP91BI2
 それは宮廷で育ち、必要とあらば自分も行使することを厭わないアンリエッタにしてみれば、俄かには信じられないことだ。
 困難な任務ということを百も承知で、自分から志願するというのは驚きと共に尊敬と信頼に値するものだった。
 そういえばそうだった。昔からこういう真っ直ぐな子だったはずだ。アンリエッタは眩しいものように、ルイズを見やる。
「……わかりました。あなたの忠誠を信じます。わたくしの為……いえ、トリステインとハルケギニアの安寧の為に、アルビオンに向かってくださいますか?」
「一命にかえても」
 ルイズは再び恭しく跪いて答えた。
「失礼ながら、少々よろしいか」
 その時、フロウウェンが静かな声で言った。
「何でしょうか?」
 フロウウェンはアンリエッタの問いかけに答えず、そっと壁沿いに部屋の中を進むと、おもむろにドアノブに手をかけ、勢いよく内側へと開け放った。
「うわあっ!?」
 身体の支えを失って、何者かが部屋に転がり込んで来る。
「……何かと縁があるな」
 鍵穴から漏れる廊下の明かりが遮られていた。誰かが扉の前で聞き耳を立てていると判断したのだが、正解だったらしい。
 しかし、その者を見るなりフロウウェンの緊張は解けて、苦笑いを浮かべていた。部屋の中に転がり込んできたのがギーシュ・ド・グラモンだったからだ。 
「ギーシュ!? あんた今の話を立ち聞きしてたの!?」
「ふっ。薔薇のように見目麗しい姫殿下をお見かけしたが、共の者を連れていなかったから、これは大事があってはいけないと、陰からお守りしようとしていたのだ。いや、僕のことよりも……」
 ギーシュは立ち上がると、芝居がかった口調と仕草で言う。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけくださいますよう」
「え? あなたが?」
「姫殿下のお役に立ちたいのです」
 またモンモランシーと揉め事の種になるだろうな、と、ルイズとフロウウェンは揃ってそう思った。だがギーシュは女にだらしないが信念には正直だ。そういう点では信頼していい人物と言える。
「グラモン? あのグラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも力になってくださるの?」
「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう望外の幸せにございます」
 ギーシュの言葉にアンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるのね。ではお願いしますわ。ギーシュさん」
 その言葉と笑みだけですっかりギーシュは舞い上がってしまったらしい。
「姫殿下が! 姫殿下が僕の名前を呼んでくださった! トリステインの可憐なる花が! 薔薇の微笑みの君が僕に! この僕に微笑んでくださった!」
 そのままギーシュは後ろに倒れてしたたかに頭を打ち、幸せそうな顔を浮かべたまま失神した。
 ルイズはギーシュの奇行も見慣れているのか、咳払いを一つすると真剣な声で言う。
「では明日の朝、アルビオンに向かって出発することにします」
「王室の方々はアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前姉たちとアルビオンを旅したことがございますので、地理には明るいかと存じます」
「どうかくれぐれも気をつけて。アルビオンの貴族たちは、貴女方の目的を知ったらどんな手を使ってでも妨害しようとするでしょう」
 アンリエッタは机に向かうと、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って手紙をしたためる。
 そして手紙を巻くと、杖を振るった。たちまち封蝋がなされ、花押が押された。
 その手紙は二通。片方をルイズに手渡し、言う。
「これをウェールズ皇太子に」
「プリンス・オブ・ウェールズ? あの凛々しき王子さまにですか?」
 ジェームズ一世ではないのだろうかとルイズが首を傾げると、アンリエッタが答える。
「ウェールズ皇太子はわたくしが以前したためた手紙を所有しているのです。あの手紙はゲルマニアとの同盟の妨げになるもので、それも手元に取り返さねばなりません。ですから、この手紙はウェールズ皇太子に。
もう一通のこちらは、その件の手紙の代わりに、クロムウェルが見つけるであろう手紙ですわ」
 悪戯っぽくアンリエッタは笑う。
「少しは卑怯者への意趣返しになるでしょうか。吉報のつもりで人の秘密を覗き見たつもりが、そこには自分の秘密が記されていた、なんて」


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