あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part172at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part172 - 暇つぶし2ch19:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 18:40:08 GhlzJslE
えっと…投下なら名乗って下さい。


20:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 18:43:13 mOSqSGjg
>>19
上のは只の荒らしだ。
っつーかどれだけヒマなんだよID:+NzzO4qH は。

21:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 18:48:10 r+fqghhw
3次禁止もテンプレ載せた方が良いのかね

22:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 18:51:07 my8IFanT
だんだん質が悪くなってきた・・・。

23:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:14:12 TwJ7wjdE
オスマンコルベール覗き見

ここにときめきを感じた。

24:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:16:04 2uR+1lpz
キチガイは病院に監禁すべきだな。迷惑を被る人数が多すぎる。

25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:29:56 F8YKMnlF
氏賀氏賀うるせえキチガイ。死ねばいいよ。

26:子守唄
08/09/21 19:35:39 KJmI3cDB
空いてるようなので最終話+蛇足、投下します。

27:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:35:55 6cO9f+XD
>1乙

28:白き使い魔への子守唄 1/7
08/09/21 19:36:35 KJmI3cDB
かつて、私はお父様の望みをかなえようとした。
―我ヲ滅セヨ。
うん、いいよ。私はお父様の願いをかなえる。
でも、私の力ではお父様を滅ぼす事はできなかった。
だから眠らせた。深い地の底に。お父様の願いをかなえられないまま……。


   最終話 白き使い魔への子守唄


「再ビ我ト契約シ、自ラ契約ヲ断チ切リ、終止符ヲ打テ。
 ウタワレルモノ、ルイズ……」
そう言うとハクオロは、ルイズを乗せてない方の手を自身の胸に当てて続けた。
「魔法トハ精神力……汝ガ不本意ナガラモ十六年間溜メ続ケタソレヲ、
 今マデノヨウナ小出シデハナク、スベテヲ解放シ……其処ニ契約ガ加ワレバ……」
他にどうしようもない事が、使い魔のルーンから得られる感情や情報で解ってしまうから、
ルイズはうなずくしかなかった。
ハクオロが平穏を望んでも、分身が消える訳ではない。
そしてウィツァルネミテアの本能が、必ず禍を呼ぶ。
だから。
「……ええ。結ぶわ、その契約!」

高らかにルイズは答え、高らかにハクオロは応じた。

「今、ココニ契約ハ成立シタ」
「汝、虚無ノ魔法ヲ行使シ」
「我ヲ滅セヨ!」
「我ヲ滅セヨ!!」
「我ヲ滅セヨ!!!」

楔は―大神(オンカミ)に逆らった時、その五体を引き裂く。
しかし契約の内容は、大神(オンカミ)ウィツァルネミテアを滅する事。
ゆえにルイズは滅さねばならない。
再び黒く染まってしまう前に、己の白き使い魔を。

ルイズは自身に宿った契約の力を感じ取り、その威力を理解した。
虚無の魔法を最大の力で行使すれば、いかに神とはいえ……。

―お父様を眠らせて上げて―

「ええ、ムツミ。あなた達、親子の願い……確かに聞き届けたわ」
白き巨人となったハクオロの手の上で、ルイズは杖をかざす。

29:白き使い魔への子守唄 2/7
08/09/21 19:37:31 KJmI3cDB
ハクオロの、もう一人の娘、ムツミ。
もっとも色濃くウィツァルネミテアの力を受け継いだマルタ。
その危険性から肉体を分解、破棄処分されたロストナンバー。
しかし脳だけの存在となりながら、テレパシーによってアイスマンに語りかけ、
名を授かり、親子の情を深めていった哀れな娘。
アイスマンが他のマルタ達と逃亡した時も、ムツミだけは連れ出せなかった。

しばらくして、アイスマンは地下へと連れ戻された。
アイスマンはミコトを殺された怒りと憎しみから、
ウィツァルネミテアとして覚醒し暴虐の限りを尽くした。
しかし人類を滅しようとしながらも、自分を止めてくれと彼は願った。
止める事ができぬなら、我を滅せよと。

その願いに答えたのがムツミだった。
ムツミは超能力を使い衛星兵器に意識を介入させ、
人類が暮らしていた地下施設ごとウィツァルネミテアを焼き尽くした。

しかしウィツァルネミテアは滅びなかった。

やむを得ずウィツァルネミテアを封印し眠らせたムツミは、
翼を持つ種族オンカミヤリューの始祖となって、その血と魂を残した。

本来白い翼を持つオンカミヤリューの中に生まれる、黒い翼のもの。
それは始祖の生まれ変わりであり、
ムツミが持つ数多の人格が表面化しているにすぎない。
そして必要とあれば、ムツミとしての人格を覚醒させ、現世に再臨する。

それがムツミという娘だった。
ルイズとムツミは声がとてもよく似ていると、ハクオロは思い出していた。

ムツミと同じ声で、ルイズが虚無の詠唱を始める―。

30:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:38:16 Ml6FNo11
支援

31:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:38:21 89eL9Jgm
あ、くぎゅかw

支援支援

32:白き使い魔への子守唄 3/7
08/09/21 19:38:21 KJmI3cDB
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ」

虚無の詠唱は、虚無の使い魔にとってかけがえのないもの。

「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド」

それは赤ん坊が母親の子守唄(ユカウラ)を聴き安堵するのにも似ている

「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ」

だからこの詠唱は、ルイズとハクオロの別れを告げるこの魔法は。

「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル」

白き使い魔への子守唄―。

「エクスプロージョン」


白き閃光がハクオロを、そしてルイズを包む。
タルブの村の真ん中に、天空にまで届く光の柱が立つ。

虚無の光。
原子に直接働きかける虚無の魔法は、衛星兵器でさえ滅せなかったものを滅していった。

虚無の使い魔、記すことさえはばかられるもの。
神の元凶、ウィツァルネミテアを永久に眠らせるための輝き。

うたわれるもの、ルイズの起こす奇跡。


ルーンが教えてくれる。
ハクオロに痛みはない。
母に抱かれる赤子のように、優しいぬくもりに包まれている。

何もかもが白く染まる世界の中、ルイズは目を開いた。

33:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:38:24 6cO9f+XD
支援

34:白き使い魔への子守唄 4/7
08/09/21 19:39:13 KJmI3cDB
「ハクオロ……」
そこには異国の衣装に白い仮面の、人間の姿のハクオロがいた。
彼は優しい笑みを浮かべて、とても嬉しそうだ。
「伝説の虚無の力に目覚めたんだ……もう誰にも"ゼロ"などとは呼ばれないな」

ううん、とルイズは首を横に振る。
目頭が熱くなって、視界が歪み、服の袖でそっと拭う。
「そんな事……ない。私はやっぱり"ゼロ"のままよ。
 だって、だって自分の使い魔一人、満足に護れない。ハクオロを救えなかった」

いいや、とハクオロは首を横に振る。
さみしげだが、大地を包み込むような慈悲に満ちた表情だ。
「目を覚まし禍を大地に振りまくか、あるいは禍を孕んだまま永久に眠り続けるか。
 それしか選択肢の無かった私が、ようやく人としての最期を迎えられる」

「……ハクオロ…………!」
ルイズはハクオロの胸に飛び込むと、涙で濡れた顔を押しつけた。
「本当なら、大封印の中で眠り続けていられたはずのハクオロを、
 私が……召喚なんかしたせいで……目覚めさせてしまったせいで……」
「いいんだ。我を滅せよという願い、ようやくかなった。
 これでもう、二度とこの世に禍(わざわい)を振りまく事なく……。
 永久(とこしえ)に……眠れる……だから……」
「また、逢えるわよね?」
「ああ。もし……生まれ変われるのなら……。
 ミコトと再びめぐり逢えたように……。
 デルフと、シエスタを連れて……ルイズ、また君と……。
 刻を越えて……再び……」
二人の姿が白い世界に溶けていく。
しかし互いに、進むべき場所は違っていた。
これが、二人が交わす、最後の言葉。

「おやすみ……ルイズ……」
「……おやすみ、ハクオロ」

虚無の白光が消えると、そこに白い巨人の姿はなく、
ルイズは一人でタルブの村にに立っていた。
胸に穴が空いてしまったようなさみしい気持ちと、小さな希望のぬくもり。
きっとまた逢える日が来る。
その時、ルイズはルイズではなく、ハクオロはハクオロではないかもしれない。
けれどいつか、魂がめぐり逢う日を、二人は信じていた。

35:白き使い魔への子守唄 5/7
08/09/21 19:40:57 KJmI3cDB
こうして、うたわれるものと白き使い魔の物語は終焉を迎えた。
ハクオロの姿が消えてすぐ、アルビオン兵は投降し捕虜となった。
謎の巨人を倒した虚無の後光のおかげかもしれない。
けれど戦争までは終わらなかった。

タルブの村は戦争が終わるまで復興の目処が立たない。
シエスタのお父さんはすっかり塞ぎ込んでしまっている。
魔法学院でも、メイド達がシエスタの死を悼んでいて、ルイズも隠れて泣いた。

土くれのフーケは逃げ延びたようだが、ルイズに復讐する気はなかった。
だが戦場で出会った時、どうなるかは解らない。
殺したくはないが、償いはさせたかった。

ウェールズ皇太子は今度こそ護るための戦いをするとアンリエッタに誓い、
トリステイン王国に留まり平和のために尽くした。

タバサは―母親を連れてゲルマニアに亡命。
ツェルプストー家に面倒を見てもらっているらしい。
けれどいずれ、真の平穏を手に入れるため、ガリアと戦う覚悟がある様子。
ハクオロだけでなくルイズにも恩義を感じているらしく、
ルイズを助けにトリステインへ戻ってくる事もあった。

トリステイン王国の、いや、ハルケギニア平和は遠い。

タルブの村で壊滅的な打撃を受けながらも本国に多大な軍隊を残すアルビオン。
レコン・キスタを裏から操るガリアの影。
聖地を目指すためすべてを利用しようとするロマリア。
それぞれの国の思惑が交差していく中、歴史の表舞台へと現れる四人の虚無と四人の使い魔。

元凶たるものがいなくとも、人は争う。
己の欲のため、大切なものを護るため。様々な理由で。

左手にルーンを刻んだ少年が、小さな村を護るために青き光沢のアヴ・カムゥを駆る。
右手にルーンを刻んだ青年が、聖地を奪回すべく白毛をなびかせる猛虎に騎乗する。
額にルーンを刻んだ美女が、主命に従い両腕にはめられた腕輪の白光珠と黒闇珠をきらめかせる。

そんな中、ルイズは使い魔を自ら滅した悲しみに屈せず、強く生きている。
虚無の担い手として相応しい行動を取ろうと、一生懸命に考え、
ハクオロが望まなかった戦争という悲劇を止めようとしても、やはり戦争に身を投じるしかなく、
傷つきながらも、ハクオロがくれた強さと優しさを今も胸に抱きしめて。

虚無の担い手という肩書きではなく、
ルイズという名前こそが戦いの終えた未来に伝わり"うたわれるもの"となる日まで。


   白き使い魔への子守唄―完

36:白き使い魔への子守唄――蛇足 6/7
08/09/21 19:41:50 KJmI3cDB
時は折り重なり、数多の試練を越え、さらなる試練を越えるために―。


二度と使うまいと思っていたその魔法を、使わざるえない状況に追い込まれてしまった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
その魔法がもたらした出会いと別れは、今もルイズの心に深々と刻まれている。
「五つの力を司るペンタゴン!」
再び禍を呼び出してしまうかもしれない危険はあった。しかし。
「我の運命に従いし」
そうならないという確信があった。
「"使い魔"を召喚せよ!」

呼ばれている。
必要とされている。
お父様の遺志を感じる。

だから、彼女は、そっと別れを告げた。
―さようなら、もう一人の私。
「えっ……!?」
銀髪黒翼の少女は、確かにもう一人の自分の声を聞いて、
その気配がこの世界から消え去るのを感じた。


今一度、唄おう。
虚無ではない彼女自身の名が歴史に刻まれ、うたわれるその日まで。

始祖の遺志を正しく継ぎ聖地を真の敵から奪回するために。
こちらの世界のすべての元凶に決着をつけるために。

―後に【黒き使い魔との夢想歌】と呼ばれる伝説が生まれる。
伝説を操り英雄としてうたわれるものと、黒翼の使い魔の物語。
それを伝える文献は数多く残されている。
その中の一冊に【白き使い魔への子守唄】という一節が在った。
それはうたわれるものが歴史の表舞台に立つ前の短い物語だという。

【白き使い魔への子守唄】は娘へと伝えられたという。
しかしいくら調べてもヴァリエール家にそのようなものは残されていない。

37:白き使い魔への子守唄――蛇足 7/7
08/09/21 19:42:56 KJmI3cDB
とある時代、とある場所。
双月の輝き、星々がまたたく、黒き大空の見える窓の一室で。


「この本を受け取って」
「……これは……?」
「私達の成した事は歴史に記されるでしょうけど、
 貴女のお父様との出来事はあまり知られてないし、吹聴する気もない。
 けれど伝えたい人達がいる。
 だから、この本は娘の貴女が持って行って」
「……そうする」
「……これで、私の役目はおしまい。
 ねえ、あなたの故郷の子守唄、聴かせてくれない?
 昔、聴かせてもらった事があるの。お願い」
「うまく歌えるか解らない。それでもいいのなら」
「それでもいい。ありがとう、ムツミ」


 ―静かに訪れる 色なき世界


振り返れば、いなくなってしまった人々が微笑んでいる。
いつか自分も其処へゆくのだろう。
その刻こそ彼女が契約を終え、門を開き故郷へと還り唄を伝えるものとなる。
永久の別れではない。

いつかめぐり会うために。


     すべての時を止め 眠りにつく―


「おやすみなさい、ルイズ」



38:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:42:56 TwJ7wjdE
お疲れ様

さぁ、次のSSを書くんだ。
君が"うたわれるもの"となる日まで。

39:子守唄
08/09/21 19:44:08 KJmI3cDB
投下終了、連載終了。

うたわれ本編の美しいエンディングに横槍入れて召喚したんだから、
うたわれ本編よりいい終わり方をしたら駄目だろうと、ウィツ様完全殺害を決意。
ハクオロさんがいなくなった先はトンデモオリジナル展開にしかないので幕引き。
というか「白き使い魔(ハクオロさん)への子守唄(契約強化エクスプロージョン!死ねぇ!)」を完遂したから、
例えその先の構想が半端にあろうとも、ここで終わらずいつ終わるのかという。

実は虚無四人使い魔四人そろって聖地に行って化石を発見し虚無=聖地ウィツというルーツを知り、
「それが虚無を操る者の宿命なら!」
「出たわねウィツァルネミテア!」※聖地ウィツは金王、白金王、黒王のどれか。
というゼロ魔世界の設定を根底から覆しつつ、某アークのパロENDという没案あり。
虚無=聖地ウィツという没設定よりも、虚無だけに虚無りたかったという思考が先にあった。
虚無るほどではないが結局最後の最後に放り投げてるから困る。

黒き使い魔、ガンダールヴのヒエン専用アヴ・カムゥ、ヴィンダールヴのムティカパは蛇足。
ミョズが持ってるのは光属性闇属性の腕輪。ゲーム中に登場しない妄想アイテム。
必要ないけど趣味で入れた。虚無るよりタチが悪い。
後書きまでgdgd。では虚無ってきます、さよーならー。

40:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:45:27 Vtkjc6uh
支援?

41:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:45:36 89eL9Jgm
虚無りすぎワロタ

いや、もう大好き、

42:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:46:06 VAxkQ7H0
乙でしたー
今までハクロオとかハオクロとか間違えてスマンw

次回作wktk

43:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:48:32 /XH+18XD
ハクオロ
ハオクロ
ノラクロ
オフクロ
ユニクロ

いったいどれが正解なんだ

44:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:52:28 7ckhyae/
>>43
ユニクロ

45:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:58:52 Vtkjc6uh
白皇の人乙でした!



召喚に応じて頂きありがとうございました

46:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:59:56 Q16cfaKw
>うたわれ本編の美しいエンディングに横槍入れて召喚したんだから、
>うたわれ本編よりいい終わり方をしたら駄目だろうと、ウィツ様完全殺害を決意。
ひでぇ。

47:伝説のメイジと伝説の使い魔 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:07:10 loRXwhyH
予約がないみたいなので、第三話を投下しようと思います

時間は20:15頃です

48:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 1/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:14:11 loRXwhyH
第三話 使い魔の朝

春の朝は、どうしてこうも、心地がいいのだろうか。
滑らかでふんわりと被さる毛布の感触は、最高級のドレスを纏うように、肌を優しく包んでいる。
部屋の温度と毛布の暖かさのマッチ加減は最高である。体の芯から来る気持ち良さ。まるで憧れの騎士に抱かれているようではないか。
ああ、春眠こそ神が人に与えた祝福。
以上、暁を覚えないルイズの詩である。
ルイズが気分良く朝のまどろみを満喫していると、誰かが腕を掴んできた。しかもかなり強く。
ルイズはリラックスムードに水を差された気分になる。朝の恵みを邪魔するのはどこの誰だ?ルイズは体を傾け抗議しようとしたら、ものすごい振動が全身に襲い掛かる。
最初は地震と思ったが、そんな生易しいものじゃない。表わすなら、直下で大爆発でも起きたような衝撃。
ベッドが軋んで豪快な音を立てる。脳と内臓が体の中を跳ね回る。呼吸することも困難になっていた。このままではやばい方向で意識を失いかねない。
ルイズは、生物の根源たる危機回避本能を全開にして、思いっきり叫んだ。
「や、や、やめな、やめろ……やめろって言ってるでしょー!!」
隣室の住人を一発で叩き起こすほどの大音響が部屋内外に響き渡る。
全身全霊をかけた甲斐があったのか、体の内という内をシェイクする衝撃は収まる。
同時に、左腕を痛いほど掴んでいた、ごつい手の感触もなくなった。状況から推測するに、朝っぱらから貴族の機嫌を損ねる真似をしたのはこいつである。
貴族に非礼を働くことがどれだけ罪深いか教えてやる、と見上げた先にいたのは男。上半身は裸。
ベッドで眠る少女。裸の男。つまりこれは、所謂、アレなシチュエーションか?
恥ずかしさと女の防衛本能がルイズの頭までを完熟トマトのように真っ赤の染める。
「ひ、へ、い、いいい、いやぁあああああああああああああああああああああああ!」

春の日差しが心地よく降り注ぐ中、学院生徒は、可愛い女の子の悲鳴という、ある意味羨ましい目覚ましで起床することになった。

49:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 2/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:14:47 loRXwhyH
「ああああ、あんた誰?わ、わわ、わ、私に何しようっていうの!」
「ブロリー、です。朝ですよ」
名前を聞いて初めて、ルイズはこの男が昨日召喚した使い魔だと思い出す。
「ぶ、ブロリー。使い魔なんだから主より先に起きてくれてたのはいいけど、何よ!あの起こし方。乱暴すぎてびっくりしたじゃない!」
ルイズがブロリーに使い魔及び貴族の従者の責務とは何たるかを説いたのは就寝直前の話だ。
洗濯、掃除などの日々の雑用から、朝と夜に主の身支度を整える下僕としての役目を教鞭したと記憶している。
使い魔としては、主の目となり耳となること、入手困難な秘薬を見つけること、そして、最も重要である主の守護を命じたのだ。
その中に、主よりも早く起床し、主を眠りから覚ますこと、と確かにルイズは言っていた。
しかし、自分をシェーカーのように扱え、など天にも地にも始祖ブリミルにも誓ったことはない。
「いい、ブロリー。私を起こす時はもっと優しく紳士的にしないとご飯抜きだからね」
「ゴハン……」
召喚してからずっと変化の乏しいブロリーの瞳が、途方もないほど遠くを見るように、虚ろになる。
「私の言ってることわかる?つまり、何も食べさせないって言ってるのよ」
感情を表に出さないタイプ、と思っていたブロリーの表情がまた変わる。今度はこの世の終わりを宣告されたような顔をしている。
ルイズは謎が多い記憶喪失の使い魔ブロリーの弱点を一つ発見。どうも、こいつは食いしん坊らしい。それのかなりの。
ブロリーは性格に反して相当筋肉質だ。だから、ほかの人より多くのエネルギーが必要なのだろう、とルイズは勝手に想像した。
召喚翌日に効果のある罰則候補ができたのは好材料。相手の弱みを握れば、主人として手綱を握るのが容易だからである。
「ま、いいわ。私は寛大だからね。最初のミスくらい許してあげるわ。それより朝の支度よ。昨日言ったこと覚えてるわよね」
「はい」
珍しくいろいろな色を見せたブロリーの表情は、もう元の陰のある心の中を覗けない、元の無表情に戻っていた。
ブロリーは昨日教えたとおりにクローゼットから下着を、椅子からは制服を持ってきた。
記憶に障害があるブロリー。ちゃんと命令どおりにできるか、という不安はもちろんあった。どうやらそれも杞憂に終わってくれるらしい。
ルイズは下着を身に着け、ブロリーに合図を出して制服を着せる作業に入らせる。
「ちょっと、ボタンを掛け間違えてるわよ。しっかりしなさいよ」
「すみません」
全てを安心して任せられるレベルにはまだ遠いらしい。経緯がアレなのでルイズは大目に見ているが。
着替えも終わり、貴族の、メイジの証であるマントを羽織ったルイズは、朝食に向かうため、部屋の扉を開けた。

50:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:14:52 Ml6FNo11
支援

51:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 3/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:15:22 loRXwhyH
地上に熱をもたらす太陽の光を浴び、炎のように燃え上がる真紅の髪を掻き分ける。
そこらの男と肩を並べる長身。常に余裕と自信を失わない眼。学院の視線を一手に集める美貌。褐色の肌は己に活力を与え、伸びる四肢は男を妖しく惑わす。
ぴっちりと胸に張り付くブラウスをはだければ、男は皆彼女の奴隷。
出身は、長きに渡りトリステインの貴族と争った歴史を持つ、勇猛盛んで知られるゲルマニアの国。
女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
社交の場ならば男の恋心を燃え上がらせ、戦場ならば敵も味方も焼き尽くす、トリステイン魔法学院でも屈指の炎の使い手だ。
キュルケは化粧をばっちり整え、今日は誰を虜にしようか、とターゲットを定めながら扉に手をかける。そこで、キュルケは動きを止めた。
彼女には何をする前にやらなければならないことがあるのだ。隣で寝起きする、家自体が犬猿の中であるヴァリエール家の三女、ルイズにささやかな復讐をするために。
朝っぱらから大絶叫とは、ヴァリエール家に常識の文字はないらしい。
キュルケは誰でも一発で起きる大音響で耳がキンキンしている。
おまけに、跳ね起きた衝撃と壁が壊れそうなほどの絶叫第二派のおかけで、彼女の使い魔、サラマンダーのフレイムがパニックになって大暴れ。
さすがは私の使い魔、惚れ惚れする力ね。なだめるためには私の部屋を飾る調度品をいくつか灰にしなきゃいけなかったわ……、とキュルケは不気味な笑みを浮かべる。
キュルケにとって、ヴァリエール家の人間に振り回されるなど屈辱以外の何物でもない。借りは必ず返せ、とキュルケに流れる血が訴える。
隣室のドアが開く音がする。ここが機会とばかりにキュルケはゆっくりと手に力を込める。
薄暗い部屋の中に廊下から眩しいほどの光が入り込む。扉をあけた隙間から、キュルケはルイズの背中を捕らえる。
さて、なんてからかってやろうか、と言葉を選んでいたキュルケの視界に恰幅のいい男の裸身が現れる。
上半身に服を身に着けず、足腰をどこかの民族衣装で包んでいる平民の男。昨日ルイズが召喚した使い魔だ。
これは使える、とキュルケはルイズを笑いものにする計画をパズルのように組み立てる。
準備完了。キュルケはいやみたっぷりな笑みでルイズの前に躍り出た。
「あら、おはよう。ルイズ」
こっちを見たルイズは最も会いたくない仇敵に遭遇したように顔をしかめた。わかりやすい性格である。
同じ表情を内に隠すキュルケとは雲泥の差がある。もちろん、体つきも、女としての魅力も、キュルケが圧倒している。
「おはよう。キュルケ」
「おはよう。爆音を響かせるしか能がないようね、ルイズ。素敵な目覚めをありがとう」
ルイズの顔が真っ赤に変わる。トマトみたいで少しかわいい。
キュルケはそこで間を置く。しかし、期待に反してルイズから何の反論も来なかった。先制パンチは相当効いてるみたい。
キュルケは獲物を捕らえた狩人の瞳をルイズに向ける。チャンスは逃さない。このままラッシュでノックアウトだ。
「人の迷惑になるのは魔法だけにしてね、ゼロのルイズ」
「う、うっさいわね」
ノーガードで打ち放題、なんて見込みは楽観しすぎか。と言っても、ルイズのガードなど高が知れている。
「こちらのお兄さんがあなたの使い魔?」
キュルケは、秘宝でも紹介するような丁寧な仕草で、かつ、相手を最大限馬鹿にした口調で、聞いてみた。
「そうよ」
ルイズからそっけない返事が返る。面白いほどにわかりやすい性格。平民の使い魔なんて、誰だって願い下げだしね。
「ダメよ~、そんな態度。見なさいよ、この平民の体格。相当なものよ。すっごく強そうだと思わない」
「うっさいわね」
ボキャブラの少なさも結構なこと。ルイズはクモの巣にかかった哀れな蝶々。後は牙を立てて美味しく頂くだけ。
「あら、ゼロのルイズは使い魔がお気に召さないようね。もしかしたら、あなたはこういうのがいいのかしら?来なさい、フレイム」
キュルケは、マントの端をつまみ、仰々しく頭を下げる。自慢の騎士を紹介する姫のように。

52:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 4/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:15:58 loRXwhyH
本日の主演の登場である。灼熱の地、火竜山脈に住まう強力な幻獣にして「微熱」のキュルケを象徴する存在、サラマンダーのフレイムが重厚な体躯を揺らしルイズの前に現れる。
ルイズは、フレイムを見たらすぐにそっぽを向いて、悔しそうな顔を隠している。
ルイズのしかめ面を拝めないのはとても残念。でも、ルイズは背中で雄弁に今の感情を語っているので、気にすることではない。
キュルケがルイズの反応を楽しんでいたら、急に視界が遮られた。何だと思い見上げると、そこにいるのはルイズの使い魔。不思議そうな顔でフレイムを眺めている。
「あなた、火トカゲを見るのは初めて?」
人の言葉が耳に入っていないのか、男はまったく無反応。陰のある表情からはほとんど感情が読み取れない。
なんだ、と不快感を覚えていると、男の瞳がわずかに見開いた。フレイムと目が合ったのだろか。
キュルケは、男のことをつまらなくて変な男、と評す。
何だか気分を削がれたと感じたキュルケは、もういい、とばかりにこの場を後にしようとフレイムに向き直る。まさか、次に瞳が見開くのが自分、とはさすがのキュルケも予測できなかった。
フレイムが激高している。
眉間にしわが寄る険しい表情。己の敵と判断した相手のみに向けられる双眸。今にも飛び掛らんと、地に足を吸いつけている。口から漏れる炎と唸り声は獰猛な野性の本能が溢れるさまだ。
フレイムが警戒している、それも最大級に。その相手は誰か?ヴァリエールの使い魔……
「ちょっ、ちょっと。あんたの使い魔、何か危ないわよ」
ルイズの間の抜けた声でキュルケは我に返る。
もう一度フレイムを見ると、すぐにでも襲い掛かりそうなほどのオーラが出ている。今暴れたら、押えつける労力は先ほどの比でないことは明白だ。
「ルイズ、もうそろそろ朝食の時間じゃない。早く行かないと遅れるわよ」
普段のキュルケでは考えられないほど声が硬い。彼女も、フレイムの異様な雰囲気に飲まれていた。
「あ、あっそう。それじゃ、行くわよ。着いて来なさいブロリー」
そう言って、ルイズとその使い魔はこの場を後にする。
徐々に小さくなってゆく、ルイズの使い魔の背中。キュルケはそれに突き刺すような視線を向ける。
「遅刻」
腕を組んで警戒心をあらわにしているキュルケの耳に、場違いなほど感情の見えない静かな声が入り込む。
キュルケは、誰であるかをわざわざ目で確認する、など愚かなことはしない。今では学院一の親友となったタバサが、空気のように、キュルケの真横に立っている。
「あ、た、タバサ。いたのね。おはよう」
今日のキュルケはらしくない。声が震えるなど、普段では絶対に考えられないことだ。
常に優位を保ってきたルイズに、ここまで心を乱されるとは思ってもみなかった。
この借りは必ず返さねばならない。しかし、それは後回しだ。やろうと思えばいつでもできるし。
それよりも気になるのが、ルイズの使い魔のことだ。フレイムほどの幻獣をああも殺気立てた事実は無視していいものではない。
キュルケは男の正体を推理してみる。
見慣れぬ衣装。鍛え抜かれがっちりとした体。幻獣の警戒心を煽る何か。そう簡単に回答は得られそうにない。これは自分より知識がある者の協力が必要だ。
キュルケは知っている。物知りで、こういったことに興味を持ちそうな少女を。
「遅刻」
「タバサ。あんたに相談したいことがあるんだけど」
いつ何時も本から目を放さない少女、そして学院でキュルケと互角の実力を持つ優秀なメイジである雪風のタバサは、何、とばかりに首を傾げた。

53:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 5/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:16:38 loRXwhyH
人間、死にそうな顔した男が隣にいては飯がまずくなる。ついでに気分も悪くなる。
食事を楯にしたらあの落ち込みようだ。食い意地が張るだろうとは思っていた。しかし、貴族でない者がテーブルの料理に手を付けていいわけがない。
ここは常識的に考えて、使い魔としての食事を与えるのが道理。私は間違ったことはしていないのだ。
だから、その顔はやめてくれ。悪いことしたんじゃないか、と思うから。罪の意識って結構つらいんだぞ。お願いだから無表情に戻れ、ブロリー。

ブロリーは死にそうである。何でこんなに苦しいのか本人にもわからない。わかる事と言えば、目の前の貧相な食事が原因であるくらい。
小さな肉のかけらが浮いたスープと硬そうなパンが二切れ……
少なすぎると、自分をここに呼び出したという少女、ルイズに抗議を試みた。帰ってきたのは、テーブルの食事は貴族のものだからダメ。
貴族とか、平民とかわからない。でも、ダメと言われたら諦めるしかない。
それでも、腹は減る。自分は記憶がない。だから、以前どの位食べていたかわからない。この分だと、相当な大食感なのだろうか。
ルイズは祈りを捧げると、目の前の直時に手を伸ばし始めた。ブロリーにはひどく羨ましい光景。
無意識に、ブロリーの口から涎が垂れる。腹が減って仕方がない。腹の虫が、飯をよこせ、とがなり立てる。
空腹で死にそうだ。本当に死ぬかもしれない。ブロリーの意識が徐々に闇に飲まれていく。
ああもうだめだ、と意識を失いかけた時、ブロリーの鼻腔にご飯の匂いが入ってきた。
最初は、この食堂から漂ってきたと思えたが、どうも違う気がする。意識を集中して、もう一度匂いの軌跡を辿る。
食いしん坊万歳的なすさまじい集中力。数刻もしない内にブロリーは匂いの元を発見した。
食堂の奥、人が出入りしている扉の向こうからここに辿り着いている。
犬も真っ青な恐ろしい嗅覚、というより怨念に近い執念の賜物である。
ブロリーは、夢遊病患者のように、扉の方面へ四肢を導く。

ここは学院の食を一手に引き受ける厨房の中。朝、昼、夜には、貴族への食事の準備で、戦場と化す。
朝の時間帯は眠気を打ち払う熱気に包まれるこの場の空気が、今、固まっている。
「あの……どうされたのですか?」
厨房のアイドル的存在、黒髪とそばかすを持つ可愛らしい女の子、メイドのシエスタは困り果てた顔でそう聞いた。
状況を説明してくれる人は誰もいない。皆が皆、固定化でもされたようにピクリとも動かない。
注意してみればわかることがある。それは、厨房の人間全員がシエスタを見ていないことだ。
じゃあ何を見ているのかというと、シエスタの背後に立つ獣を見ているのである。
姿形は間違いなく人間。しかし、それは飢えに飢えた獰猛な肉食獣と変わらぬ殺気を放っている。
誰が見ても危険な存在。故に、誰もが指一本曲げることができない。
男が、一歩前に出た。気配を感じたシエスタが後ろに振り返る。化け物につけられた事実を今さら知って、シエスタは驚愕する。目じりに涙を浮かべながら。
男が前傾姿勢をとる。殺る気だ!厨房内に緊張感が一瞬にして伝染する。
「た……助けて!」
誰かが耐え切れないように叫ぶ。もう、手遅れ。男はさらに姿勢を低くし……そのまま木の葉みたいに倒れこんだ。
「はぁ?」
間抜けな声が食堂内の空気を解していく。

54:伝説のメイジと伝説の使い魔 第三話 6/6 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:17:39 loRXwhyH
「はっはっは!すまんな若いの。動けないほど空腹だったとはな。あんまり怖いんで野獣かと勘違いしちまったぜ」
この厨房をまとめるコック長のマルトーは、両手を広げて大笑いしながら、そう言った。
ブロリーは、取り憑かれたように、木製の机に所狭しと並ぶ料理を口に運んでいる。
「いい食いっぷりだな、おい!お前確か貴族に召喚された使い魔だってな。本当に人間とは驚いたぜ。しかし、お前の主人は酷い奴だな。こんなになるまで飯を与えねえとは」
厨房の隅から隅まで響くマルトーの野太い声などどこ吹く風、ブロリーには目の前の食材しか見えていないようだ。
「食いっ気がありすぎて聞いてねえか。お前のような奴は好きだぜ。こっちも作り甲斐があるってもんだからな。じゃんじゃん食ってくれよ!」
秒単位で皿から消えていく料理。この時、誰かが気づけばあんなことにはならなかっただろう。
でも、誰も疑問に思わなかった。あいつどれだけ食うのだろうか、とは。

料理人にとって、作った料理をうまそうに頬張ってくれる客は嬉しい存在だろう。残さず食べてくれとさらに嬉しい。
ブロリーのように豪快に皿を平らげる客は手放しで喜んでいいはずである。なのに、ニコニコする人間は誰もいない。
変わりに、唖然とした顔、青ざめた顔があるのは如何にしてか。
世の中には限度という言葉がある。人間、これを超えられると不快にしかならない。
ブロリーの胃袋は、限度なんて言葉を宇宙の彼方に消し飛ばすほど、すさまじいものなのだ。
『胃袋革命』(Stomach revolution)である。
でかい、でかすぎる。いや、底なしだこれは。こいつは腹の底に異世界へのワープゾーンでも抱えているに違いない。まさか、瞬間消化器官でも搭載しているのか。
でなきゃこの量はありえない。もう体積以上なんてレベルじゃない。化け物がここにいる。
これは、あれだ。神の力を得た始祖ブリミルに逆らう悪魔だ。間違いない。神がこの姿を見たら天罰が下るだろう。
いや、確実に下る。下して欲しい。お願いだから下してください、飯抜きはいやです……

ただ今、ブロリーの姿を、正面以外から、捉えることはできない。四方を巨大な壁が囲んでいるからだ。
何かと言うと、残りカスで汚れたバベルの塔が鎮座している。全て男の頭より高く聳える雄大な白き巨塔。
これを数分足らずで築いたんだから驚きだ。それだけ食べてもペースが一向に落ちないのは恐怖に値する。
このままだと食料庫が空になる。貴族の分は別に管理しているのでそっちは安全だ。危険なのは厨房で働く職人と貴族に奉公するメイドの分。
危機を察知し、止めに入った者も当然いた。無理に止めたのがいけなかった。彼は睨まれ魂を抜かれたように気絶してしまった。
ああ、哀れマイカル=カリック。誰よりもチェスが強かった。お前の作る前菜は見事だったよ。あれほどメインディッシュを生かせる料理は見たことがない。
放たれた猛獣を止めることはできない。人間の弱さを噛み締めながら、厨房の職人たちはうなだれる。
もう何皿目になるのか、数えるのも面倒だ、ブロリーはぺろりと平らげる。そして、食器を置いた。
歓喜の待ちに待った瞬間が到来したのだ。トリステイン魔法学院厨房はこの辛く苦しい戦いを耐え切った。神が、始祖ブリミルが彼らに祝福を授けたのだ。
厨房は、自由でも勝ち取ったかのように、開放感で満ち溢れていく。まだ彼らの分は残っている。ひもじい思いをしなくて済む。
「これ、おかわり。後、これも欲しい」
信じた者に裏切られる。栄光から転落へ。おいでませ世界洞窟・空洞紀行。本日の料理は虚無でございます。
厨房を突き破らんほどの悲鳴が学院全体に響き渡った。

「ブロリー、食堂抜け出してどこ言ってたの?」
「優しい人に助けてもらいました」
「はぁ、意味わかんない。ま、いいか。授業が始まるからこっち来なさい」

55:伝説のメイジと伝説の使い魔 ◆VOYDsokLyw
08/09/21 20:20:19 loRXwhyH
投下終了です

食事中の方、見苦しい描写をしてしまい申し訳ありません
悪いのは木曜6時放送のアニメの再放送です

戦闘民族サイヤ人恐るべし

56:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:24:26 7qOztCV+
>>43
クロモリ

57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:29:29 GhlzJslE
ブロリーの人乙
記憶を取り戻す事があったらハルケギニア終了のお知らせだなw


58:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:33:31 /XH+18XD
素のブロリーの防御力ってどんなもんなんだろ
超サイヤ人状態だと悟空たちの攻撃に傷一つすらなかったけど

59:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:37:51 qWG2y4no
>>58
ワルキューレの攻撃ぐらいなら蚊に刺されたぐらいにも感じないだろうなw

60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:38:27 N3c94G65
子守唄の人乙です
しかし完全殺害エンドっすか…?
私はまたいウィツ様だけ殺害抹消
晴れて自由の身になったアイスマンが元のトゥスクルに戻ってうたわれのエンディングに続いていく流れかと…

61:大使い魔17
08/09/21 20:54:01 Zha3wx6A
投下予約。

今回の注意事項です
・アトミック魔女
・きゅいきゅいくっ付く。HRもあるよ!
・電波ED

では、55分頃に投下しまっす。

62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:54:55 ALEHGcOu
大支援

63:大使い魔17
08/09/21 20:56:13 Zha3wx6A
アーマーゾォォォォォン!!

タバサに聞け 俺の名は
アマゾンライダーここにあり~

来るなら来てみろ シェフィルード
やるぞ 今こそ 命がけ

体が変わる緑色
正義の怒りの極彩色

イルククゥよお前のためならば
アマゾンライダーここにあり~


第十四話「祝福されし男」

ヴェストリの広場。
ワンエイトが、キュルケに話しかけていた。
「キュルケちゃん、どうだった?」
「……ワンセブンは、超生産能力とロボターのおかげで、一晩じっとしていれば装甲とグラビトン以外は完全に直るけど。ルイズは……重傷よ。目が死んでいたわ」
「お姫様が、王宮の連中を抑え切れていればこんなことには……」
「ワンエイト!」
「だってそうじゃないか!」
口ゲンカに発展しそうな空気を換えるため、魔天郎が空気を読まずに割って入った。
「二人とも、止めたまえ。過ぎたことで言い合って何になる?」
「マテンローの小父様……」
「魔天郎さん……」
「今は、座して待つんだ」

64:大使い魔17
08/09/21 20:57:06 Zha3wx6A
女子寮近くの広場。
要塞ワンセブンが待機していた。
内部では、ロボターの作業を見学しつつ、コルベールが手伝っていた。
「これは酷いことになっていますな」
「冷蔵庫とかは奇跡的に無傷だったけど……。やっぱり装甲とグラビトンの方はボクたちだけじゃ完全な修理は無理みたい」
「アカデミーの面々でも修理できるかどうか……」
「たとえ出来るとしても、ワンセブンが首を縦に振るかどうか。……うわ、妙に静かだと思っていたら、言語機能までイカレてる」
「なんと……」
「こっちは……。よかった、自力で修復中だよ」

ルイズの部屋。
廃人状態のルイズを、シエスタが甲斐甲斐しく世話していた。
「ミス・ヴァリエール……」
虚ろな目でワンセブンの名を連呼したり、いきなり舌を噛み切ろうとするルイズに、シエスタは悪戦苦闘していた。
気のせいか、ルイズがワンセブンの名を連呼するたびに、シエスタは室内の空気が重くなっていくように感じた。
「ワンセブンワンセブンワンセブンワンセブン……」
「ワンセブンさんならきっと大丈夫です。ロボターくんがいますから」

65:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:58:41 6cO9f+XD
しえん

66:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 20:58:46 ALEHGcOu
勢いをつけて支援

67:大使い魔17
08/09/21 20:58:48 Zha3wx6A
ガリアのある施設。
ハスラーとジョゼフが、ルーン文字が印刷された紙をまじまじと見ていた。
「アレから一ヶ月弱でようやく判明したのか」
「まあ、ここでロボットを生産する合間にやっていたからな」
この数週間、ハスラーは施設にこもり、ロボットの生産に腐心していたためルーンの判別が遅れに遅れたのだ。
「……フム、思ったとおり、ワンセブンとやらも俺のミューズ同様、虚無の使い魔のようだな」
「良く分かったな、王様」
軽く驚くハスラーに対して、ジョゼフは何故か勝ち誇るかのような顔をしていた。
本質は子供同然であることの、表れなのであろうか?
「ミューズと契約した際、虚無の使い魔のルーンが記されている本で調べたからな。このルーン、『神の笛』のものだな」
「神の笛……。あらゆる幻獣を思いのままに操るというアレか?」
「そうだ。しかし、俺に言わせれば、ワンセブンは『神の笛』では無く、『神』そのものとしか思えんがな」
「どういうことだ? 王様」
ハスラーの疑問に、ジョゼフは満面の笑みで答える。
いつものような狂気は見られず、まるで子供のような快活な笑みであった
「陸海空、果ては宇宙でも自在に動き回り、その気になれば世界を焼き尽くせるだけの力を有し、ましてやあらゆる物を造り、それの応用で自分を修復する。神と言わずして何と言う?」
「……神、ねえ」
「そう、神だよ、ハスラーさん。さしずめ、鉄の最高神(ゼウス)と言ったところか」

そこに、イザベラの使い魔、ハグルマンがやって来た。
イザベラの命令で、この施設に来たのである。
突如来訪した娘の使い魔に、ジョゼフは少しだけ面食らった。
「キング・ジョゼフ、主からの伝言だ。「シャルル派の動きが怪しいから、そろそろ戻ってきてくれ」、だそうだ」
「あれにはお前だけでなくデルザー軍団もいる。彼らに任せてもいいのではないか?」
「主はあのような性格だが、もし奴らに始末させたら余計騒動が大きくなると分かっている。所詮、弟殺しを後悔する様な軟弱者には子の心は分からないか」
ハグルマンの言い草が癪に障ったのか、ジョゼフは眉をひそめる。
そこに、物陰で待機していたシェフィールドが近づいてきた。
ハグルマンの言い草に瞬時に激昂したらしく、憤怒の表情と共に額のルーンが光っていた。
「貴様、陛下を愚弄したな!」
「正直な感想を言って何が悪い?」
「死にたいようだな」
この一言と共に、ルーンの部分が金属板状に変化。
次にシェフィールドの顔の皮膚が歪に盛り上がり、変色&変質して機械の部品になっていく。
そこにいるのは、顔だけが機械の部品の塊と化したシェフィルードであった。
ハスラーによる強化改造も兼ねた減量手術の末に、体重を2割弱にまで軽量化させた神の頭脳、シェフィールド。
本名、「アトミック魔女」!!
対峙するハグルマンとアトミック魔女
「俺を倒したければ、唯一俺より優れたロボットを、世界最高のロボットであるKを呼んで来い!」
「自惚れるな、歯車案山子如きが!」
しかし、いざ激突というところで、ジョゼフが二人の間に割って入った。
「やめんか。この建物を瓦礫の山にする気か?」
この一言で、ハグルマンとアトミック魔女はしぶしぶ戦闘態勢を解いた。


68:大使い魔17
08/09/21 20:59:32 Zha3wx6A
次の日、再び学院の女子寮近くの広場。
装甲とグラビトン以外の修復が終わったワンセブンは、ロボターとシエスタの手引きで、まだ寝たままのルイズを掌に乗せていた。
「むにゃ……? ワンセブン」
目を覚ましたルイズは、精神的なダメージのせいか、やつれていた。
「大丈夫、なの?」
イエス。
ワンセブンはいつもの声ではなく、効果音のような声を出した。
「ひょっとして、喋れなくなったの!?」
イエス。
「また、喋れるようになるの?」
イエス。
「ごめんなさい……私があの時……」
ワンセブンはルイズが言おうとした事を、空いた方の指をルイズの口に近づけることで遮った。
「謝る必要はないっていうの?」
イエス。
「でも……」
「ルイズちゃん」
そこに、ワンエイトが現れた。
朝靄のせいか、ルイズの目には、ワンエイトの姿が少し曇って見える。
「ワンエイト……」
「ルイズちゃんが自分自身を責めれば、一番辛い思いをするのは他ならぬ兄さんだ。だから、もう自分を責めないで」
「……」
ルイズは無言で頷いた。
そして、ワンセブンはルイズを部屋に戻して、要塞形態に変形した。

一方、タルブ村の草原。
草原には、ジロー、一文字、イチロー、茂がいた。
「……お姫様も怒っただろうな」
「……王宮では既に頭から血を流して倒れたやつが出始めている。死人が出なければいいが」
イチローとジローは、昨日のアカデミーによるワンセブン捕縛未遂事件に関して話していた。
あの一件で、ワンセブン接収を強行したアカデミーと、それを後押しした高等法院に対してアンリエッタが激怒。
既に、アカデミーの職員と高等法院のメンバーの両方に負傷者が出ていた。
なお、ジローたちがこの草原に集まっているのは、イチローと茂が持参してきた次元跳躍装置に、第二陣が来るとの連絡が入ったからである。
「誰が来るんだ?」
「……すぐに通信が切れたからな。聞く暇がなかった」
一文字と茂が草原を見渡す中、風の流れが微妙に変わった。
そして異常な風の動きは激しくなり、閃光が走るのと同時に止んだ。
代わりに、いかにも使い込まれたことが分かる「てんとう虫」と珍妙な改造を施された「フェアレディZ」が残された。

69:大使い魔17
08/09/21 21:00:31 Zha3wx6A
再び学院の、女子寮近くの広場。
フレイムとシルフィードを始めとするほかの使い魔たちが、要塞ワンセブンを心配そうに見ている。
そしてルイズがシエスタに連れられて来たのと同時に、ワンセブンは戦闘形態へと変形した。
「ワンセブン……」
「ルイズちゃん」
「本当に、謝る必要はないの? 貴方をボロボロにしたのよ。殺しかけたのよ」
「私が勝手にあの女を庇っただけだ。君に落ち度はない」
まだ亀裂が所々残っているワンセブンのボディを見ながらルイズは表情を曇らせる。
そこに、シエスタが不意にルイズの両肩に手を置いた。
「ミス・ヴァリエール、ワンセブンさんが謝らなくていいって言っているのですから、それでいいじゃないですか」
「……そうね」
ようやくルイズが納得したせいか、ワンセブンは妙に安心した。
と、そこに、タルブ村に現れた2台を引き連れ、ジローたちがやって来た。
驚くルイズは、ジローに問いかけた。
「殿下。どうしたのですか?」
「いや、ワンセブンとワンエイトに会わせてくれって頼まれてな」
ジローがそう言った直後、てんとう虫の後部座席のドアが開き、二人の中年男性が出てきた。
ワンセブンとワンエイトはキョトンとしていたが、中年二人は、嬉しさのあまり声を張り上げた。
「ワンセブン、生きとったかー!」
「ワンエイトー!」
姿は大きく変わっていたが、二人はその声に聞き覚えがあった。
岩山鉄五郎と、矢崎勇である。
「ガンテツなのか!?」
「勇、勇ー!」
大喜びする四人。
ルイズとシエスタはそれを呆然と見ていた。

「そうか、二人とも何で生きとったのかまでは分からんかったか」
「ああ」
ワンセブンは、手短に応えた。
ブレインに特攻し、核爆発でブレインを完全破壊した直後、気がついたら無傷の状態でハルケギニアにいた。
ワンエイトは爆発した直後、いきなり視界が真っ白になり、気がついたら砂漠にポツンと立っていた。
その際、聖地を占拠する「ガイマン」なるエルフの集団に襲われたが、自力で蹴散らした直後に偶然偵察に来ていたロマリアの密偵に助けられ、ロマリア本国に運ばれたのである。
教皇の勧めに従い、しばらくの間眠っていたら、いつの間にかレコン・キスタに強奪され、「協力してくれたらワンセブン捜索を手伝う」と騙された。
ワンエイトは、最も気になることを勇に聞いてみた
「勇、三郎やレッドマフラーのみんなは、元気か?」
「みんな元気だ。三郎なんか今は都知事だぞ」
「そっか……」
それを聞いて、ワンエイトは安堵した
そしてワンセブンに勇は尋ねた。
「ワンセブン、三郎に会いたくないか?」
禁断の質問である。
ワンセブンから召喚される前の出来事を聞いていたルイズは、一気に固まった。
「会いたい。だが、元の世界に戻るわけにはいかない」
「……ルイズがいるから、か?」
「そうだ」
それを聞いて、心なしかルイズは安心していた。

70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:00:40 xjtkUB2T
sien

71:大使い魔17
08/09/21 21:01:52 Zha3wx6A
学院長室。
ジローと、来客の内の一人が、オスマンと面会していた。
そのうちの一人は、スーツを着こなしてはいる。
しかし、その顔は明らかに人外と分かるものであった。
彼らがガンテツたちと共にこの世界に来た理由を聞き、何となくオスマンは納得した。
「なるほど。殿下を探しにこの世界まで来たのか」
「はい。しかし、ワンセブンが召喚される前のこの世界に来ていたとは」
来客の一人は不思議そうにそう述べる。
それに対し、ジローはこう言った。
「ワンセブンが召喚された後のこの世界にたどり着くとは限らない、ということだ」
「ケイ殿、殿下の言う通りじゃよ」
元ロボット刑事、現ロボット警視総監K(ケイ)はとりあえず納得することにした。

使い魔たちの溜まり場。
ルイズがワンセブンを連れて女子寮に戻ったため、シルフィードたちもここに戻ってきた。
タルブ村の決戦以降、ハヤブサオーはシエスタに同行し、学院に住み着いている。
ワンセブンのお墨付きのせいか、学院の使い魔たちとも簡単に打ち解けていた。
そして、来客の最後の二人、服部半平と黒樹洋を加えてみんなで和気藹々としていた。
“マサカ俺ト話セル奴ガ他ニモイタトハナ”
「我輩の方こそビックリしましたぞ。関東大震災で行方不明になったはずのあなたがこの世界にいたとは」
“アレカラ数十年、スッカリコノ世界ニ馴染ンデシマッタヨ。”
「住めば都、というやつでしょうな。ジローさんとまた会えただけでなく、あなたと顔を合わせることが出来た。我輩、祝杯を上げたい気分ですぞ」
一応忍者であるせいか、ハンペンはハヤブサオーだけでなく、他の使い魔たちとも普通に会話していた。
「ハンペンさんって凄いな。動物たちと簡単に会話できるなんて」
「いやあ、我輩はこの子達が「使い魔」だから会話できるだけに過ぎませんぞ」
「そんなものかな……」
しきりに首をかしげるヒロシだが、すぐにそれどころではなくなった。
シルフィードが急に倒れたと思ったら、いきなり人間の姿になったのである。
「きゅいい……。この姿になってないと、気分が悪すぎて動けないのね……」
無論、慌てたのはハンペンたちである。
大慌てでハンペンがシエスタを呼びに行った直後、ヒロシはシルフィードの異変の原因に気付いた。
ヒロシは微妙に膨らんだシルフィードの腹に手をあてた。

タバサの部屋。
何処に連れて行けばいいのか分からず、ハンペンとヒロシはシエスタから飼い主が誰かを聞き、人間バージョンのきゅいきゅいをタバサの部屋に運んだのである。
室内には、ベッドで横になっているシルフィード、ハンペンにヒロシにタバサにシエスタだけでなく、騒ぎを聞きつけ同行したキュルケもいた。
不意に、キュルケが大声を出す。
「はあ? 妊娠してる!?」
ヒロシが、シルフィードが妊娠していることを告げた直後、ハンペンとシエスタは腰を抜かし、タバサは絶句。
キュルケは前述の通り思わず叫んだ。
ヒロシは首を縦に振り、説明した。
「お腹の膨れ具合から見て……、召喚される前には既に妊娠していたと思う」
「この子、全然話してくれなかった」
「たぶん、何らかの理由で自分が妊娠したことや、赤ちゃんの父親のことを忘れてたんだ」
コントラクト・サーヴァントでルーンが刻まれた痛みが原因であることに、タバサたちが気付くのはもう少し後である。
ようやく抜けた腰が元通りになったハンペンが、首を捻り始めた。
「しかし不思議ですな。竜は確か卵生のはず。オマケにつわりがひど過ぎやしませんか?」
「言えてるわね。てか、韻竜ってこんなものなの?」
キュルケのこの一言に、ベッドで横になっているシルフィードが、やっとの思いで口を開いた。
「違うのね……。シルフィ、こうなった原因に心当たりがあるのねー。お腹の赤ちゃん、混血なのねー……」
シルフィードの爆弾発言に、全員がまた凍りついた。
心なしか、部屋の気温が5度ほど下がった気がするシエスタであった。

72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:02:57 xjtkUB2T
sien

73:大使い魔17
08/09/21 21:03:03 Zha3wx6A
その頃、女子寮近くの広場。
ハヤブサオーやフレイムたちがパニックになったのを聞きつけ確かめに行ったガンテツが、大慌てで戻ってきた。
何事があったのか気になったルイズたちは、戻ってきたガンテツの報告を聞いて絶句する。
数秒後にルイズが開口した。
「あの竜が倒れた!?」
「ああ。急に倒れて人間の姿になってな。ハンペンさんも洋君もパニックになってたぞ」
昨日、ショットガン片手に追い掛け回したのは何処へ置いたのか、ルイズはシルフィードのことが心配になった。
一方、ワンセブンは何故か違う方角を見ている。
それに気付いたワンエイトは、その理由をすぐに悟った。
野性的なバイクに乗った野生児が、誰かの名前を叫びながらこちらに近づいていたのである。
「イルククゥー、どこだー!!?」

再びタバサの部屋。
広場の方が妙に騒がしくなったことに気付いたタバサが、何事かと気になって窓を開けた。
「イルククゥー!」
野生児の絶叫が、タバサたちの耳にも入った。
この絶叫を聞いたシルフィードは気合で起き上がり、叫び返した。
「アマゾーン! ここにいるのねー!! きゅいきゅい~!!」
直後、野生児、山本大介ことアマゾンが壁を登り窓から室内に入り込んだ。
「イルククゥ……、その腹、どうした!?」
ほのかに膨らんでいるシルフィードのお腹を見たアマゾンは、思わず問いただした。
「アマゾンの赤ちゃんがいるのね。る~るる~♪」
アマゾンに再会できた嬉しさからか、すっかり元気を取り戻したアホ竜がそこにいた。
それを聞いて嬉しくなったアマゾンは、シルフィードに抱きつこうとしたが……。

74:大使い魔17
08/09/21 21:03:46 Zha3wx6A
「ウインド・ブレイク!!」
女子寮近くの広場に、タバサの咆哮が響き渡った直後、暴風と共にアマゾンが窓から吹き飛ばされる光景を、ルイズたちは目に焼き付けてしまった。
「何事かしら?」
「何となく、分かるような、分からないような……」
シルフィードの怒号と、キュルケ、シエスタ、ハンペン、ヒロシの悲鳴が聞こえる中、ルイズの疑問にワンセブンは言葉を濁した。


「エ、エク、エクスプロージョーンッ!!」

いつも側にいて! 私のすぐ側 ずっと私を いつも いつも 愛してちょうだい♪
私に任せて 邪魔者なんて 全部根こそぎ 手当たり次第皆殺しよ♪

Touch Me! 突付いて欲しい その指で
Please Kiss! あなたにそうよ、もう一度したいの 

スキよ それは当然 キライ そんな訳ナイ
ないないない 破局なんて

だから「スキよ」そう言えるの Non Non Non どっかへ行ったら
私 壊れちゃうからね!

だって、あなたを誰より愛しているの
愛の基本よ オンナにしてね☆(ヘイ!)

ちゃんと分かってね! 私の気持ちを 敵が接近 誰よ? 誰よ? 泥棒猫は?
誤解しないでね 狂っていないわ 二人の愛は そうよ最強 絶対無敵よ!

Touch Me! 突付かれちゃうと とろけるの
Please Kiss! あなたの唇、どんな味がするかな?

スキよ それは当然 キライ そんな訳ナイ あるあるある 特別なキモチ

だから「スキよ」そう言えるの Non Non Non もしも死んだら
私、後を追うからね!

そ~よ、あなたが誰より大切だから
愛のマナーよ 優しくしてね☆(ヘイ!)

Touch Me! 突付いて欲しい その指で
Please Kiss! 辛い時は……その両手で包んで

スキよ それは当然 キライ そんな訳ナイ ないないない 破局なんて

だから「スキよ」そう言えるの Non Non Non どっかへ行ったら
私 壊れちゃうからね!

スキよ それは当然 キライ そんな訳ナイ
あるあるある 特別なキモチ

だから「スキよ」そう言えるの Non Non Non もしも死んだら
私、後を追うからね!

そ~よ、離れ離れは耐えられないの
愛の宿命よ♪ 子作りしましょ☆(ヘイ!)

「私、赤ちゃんが欲しいの、……ワンセブンの☆」

75:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:04:06 xjtkUB2T
sienn

76:大使い魔17
08/09/21 21:05:36 Zha3wx6A
投下終了。
アマゾンが決闘するとこまで書こうと思ったけど、次回に持ち越し。
ちなみにアトミック魔女の元体重は300kg.です。

77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:13:58 Ct3qUO/r
乙です。

>ちなみにアトミック魔女の元体重は300kgです。
2割弱でも60kgか…
人間の女性としては普通だが、萌えの範囲からは逸脱したなw

78:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:14:38 6cO9f+XD
17の人乙
選りによっておとんが大自然のアレですかい

79:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:26:35 xgx2TGuh
タバサはきゅいのおねえさまだから
タバサはおばさn


早かったな俺の死も

80:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:52:32 6ztp8Qbj
大使い魔って言うタイトル見てたらなんか
大魔法峠のぷにえ召喚とか妄想してしまった
分家のバレッタなみにやばい気がした

81:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:53:47 N3c94G65
産まれて来た子は一代雑種だから子孫は残せないな

82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 21:53:56 +E720UpH
>>79
Tスレ住人乙

83:画像化されたことのない使い魔
08/09/21 21:54:16 5KEW7Vo9
1レスのネタ

ルイズはサモンサーバントをとなえた
ルイズはとてつもなくおそろしいものをよびだしてしまった。
サイトはにげだした

タバサはきぜつした

ギーシュはにげだした

フーケはにげだした

ワルドはにげだした

7まんはにげだした

ビダーシャルはにげだした

スカロンはなかまになりたそうにこちらをみている

ちぃねえさまはにげだした

ルイズはおいかけた

そしてだれもいなくなった

以上、ドラゴンクエストでパルプンテを使ったときにくる『とてつもなくおそろしいもの』を召喚
ほかパターンあったらお好きにどうぞ
あとブロリーの人 乙 練金で飯作らないと足りないな

84:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 22:00:08 GhlzJslE
>>83

何故スカロンwwwスゲー気になるwww


85:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 22:11:17 XMuANWFl
呼ばれたのは 某 貂蝉 とか・・・

しかし、しっかりサイトがいるところがw

86:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 22:17:05 ALEHGcOu
スカロンの仲魔なのか、あれは・・・それは実におそろしいが

87:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 22:29:57 UjWVo/6W
恋姫†無双のキャラがルイズに召喚されました
というレスが立ててあった

88:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:05:46 UNg5jXXU
>そしてだれもいなくなった

待て、タバサがw

89:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:21:53 xNifW9tK
>>87
レスじゃなくてスレですね

90:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:28:08 4h8l00Ui
anichara:アニキャラ総合[レス削除]
スレリンク(saku板:64番)

91:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:33:46 667AXqfW
>>14
ついでに15巻までまとめてくれんかなあ
いまさら原作読むの面倒だし

92:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:41:16 G9r4Crw6
原作に敬意を払えないやつが二次創作などかたはらいたいわ

93:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:45:31 xNifW9tK
今日はアニメが最終回だから見るんだぞ

94:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:50:41 xIN3Np8h
「さあう"ぁんといろいろ」の人まだかな。
楽しみに待ってますよ。

95:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:51:07 XwirOdJt
>>91
ツネ

96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:51:42 667AXqfW
>>92
いやぶっちゃけ原作って2度も読み直すほどのものか?
アニメでさえ釘が出てなかったら1期の3話まで見れなかったぞw

97:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:54:27 667AXqfW
>>94
あれ元ネタ知らん人多そうだからキャラ特性つかむ前に読むの投げ出す人多そう
複数召喚ってよほど自信ないと無理だわ

98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:54:34 yzOCE0nD
>>96
そんなレベルの思い入れの奴がSSなんて書けるのか?

99:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 23:59:43 nKSLmVXJ
まあ、普通に読む分には何度でも読めるんだけど
資料として見る場合、どの巻のどのへんに目的の記述があったか
覚えてないと探すのが結構大変だよね、小説って

100:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:14:32 sqODvRtq
>>94
すまん、疲れて今まで寝てたw

ッてことで予約がなければ投下。



101:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:17:07 sqODvRtq
どうにかルイズに自分はロリコンでないと納得させた後、ワルドは居たたまれなくなったのか任務の続きと称して姿を消した。

「なーんか、見張られてるみたいで落ち着かないわねぇ」
「ずっと覗き見されてたと思うとぞっとしませんね」

キュルケのぼやきにショウが相槌を打つ。

「それじゃ、例の翻訳の続きをやっちゃいましょ。そんなに長くいられるわけでもないんだし、時間が惜しいわ」

言い出したルイズに視線が集中した。

「な、何よ?」
「いや・・・いいのか? 気分が乗らないのに無理にやる事はないんだぞ?」

むっ、とルイズが唇を尖らせる。

「大丈夫よ。リリスやタバサが疲れてるって言うなら休むけど」
「問題ない」
「ルイズがやる気になってるならこっちとしては望むところよ」
「しょうがないな、付き合うか」

笑み―中には苦笑も混じっているが―を浮かべつつ腰を浮かす四人に対し、それを笑って見送るものも存在する。

「頑張ってねー」
「魔法が使えない俺には応援しか出来ないからさぁ」
「そうそう、俺たちゃ三人で仲良くおしゃべりでもしてるんだね」

あら、と漏らしてリリスがヤンの手の中のデルフに気付く。

「何だデルフ、いたの?」
「いたよっ!?」

ちょっぴりショックなデルフリンガーはともかく、キュルケはまるっきり手伝う気はないようであった。

102:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:17:38 WmI5No1c
ワルド哀れ支援

103:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:18:15 yEPE6nos
原作に敬意を払ってないSSね…
避難所の雑談スレで褒められてるのにもあるねぇ。
クロス先に微塵も敬意を払ってないのがなんとなく感じ取れるSSが。更新止まってるけど

104:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:18:57 sqODvRtq
「ちょっと、ヤンとデルフは役に立たないからいいとして、キュルケ。あんたは手伝いなさいよ、一応トライアングルでしょ!」
「ひでぇよ娘ッ子!」
「そりゃそうだけど、そんなにはっきり言わなくたって・・・」

傷ついている一人と一振りはスルーして、キュルケが無意味に艶やかな笑みを浮かべた。

「残念、私実践派なの。テキストが完成したら写させてもらうわ」
「キュルケは頭はいいけど座学は余り得意じゃない。いてもらってもペースは余り変わらないと思う」
「むー」
「そういうことね」

下手をすれば侮辱とも取れるタバサの発言に、けらけら笑うキュルケ。
ルイズはまだ不服そうだったが、ショウに肩を叩かれて不承不承に客間のほうへ移っていった。
場に二人だけが残った所で、キュルケがヤンに囁く。

「ね、ダーリン。久々に二人っきりなんだし、歩かない?」
「う、うん? そうだね。シエスタが教えてくれたけど、花で一杯の綺麗な草原があるんだって。そこにいかないか」
「・・・なによぅ、いつの間にあの娘に手を出してたの?」

拗ねたような上目遣いで、キュルケがヤンを見やる。

「いや、その、そんなんじゃなくて、どこかでそんな話をしてたってだけだよ!」

面白いように動転するヤンに、キュルケは心の中だけで苦笑した。
それはまぁ、ヤンは流されやすくはあるが、どう考えても自分から他の女に手を出すような甲斐性はない。
おまけにこんな見え見えの引っかけを容易く真に受けて泡を食うなど、何ともうぶな事である。
まぁキュルケとしてはその辺りが新鮮で好もしいのだが。

二人が手に手を取って、微妙にほほえましいデートに出かけた後、デルフリンガーはテーブルに無造作に放置されていた。
さすがにデルフリンガーも、あそこで自分も連れて行けというほどには空気が読めないわけではない。
だが一人でぽつんと放置されると、やっぱり寂しい物は寂しいのであった。
あの武器屋にはしょぼくれた親父がいたが、今はそれすらいない。

「あー、誰か話し相手になってくれねぇかなぁ。デルフ、寂しいと死んじゃうんだよ。伝説の剣たるこの俺さまを寂しがらせるなんて、相棒達は重罪人だね! 本当、ハルケギニアの大損失だよ!」

ひとりごちてみる。
もちろん、どこからも返事はない。
窓の外には爽やかな初夏の風が吹き、時折小鳥のさえずりと牛の鳴き声が聞こえている。
溜息(?)をついてデルフは口を閉ざす。
一人で喋るのは果てしなく空しかった。

105:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:21:13 WmI5No1c
デルフの真の力さえあれば! 支援

106:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:22:03 sqODvRtq
しばし後。
がやがやと甲高い喧騒がデルフの耳に飛び込んできた。
言葉遣いと声の高さからすると、変声期前の男の子のようである。

「ただいまー」
「「「「おじゃましまーす」」」

意外と礼儀正しく挨拶して玄関から入ってきたのは、はたして七歳から十二歳と思われる男の子ばかり十人ほどであった。
その中にはシエスタの弟たちのうち年少の二人も混じっている。
彼らはきょろきょろとあたりを見回し、デルフを見つけた。

「あれー、剣だけだぜ?」
「っかしーなー、剣士の兄ちゃんが赤毛の貴族様と残ってたんだけど」
「なんだよ、折角話聞かせて貰おうと思ってきたのに」

どうやらこの子達は、昨日ヤンが語ったラグドリアン湖の冒険譚を聞かせて貰おうと思って集まってきたらしい。

「なぁ、ヤンさんたちどこに言ったか知らないか?」
「何やってんだよジェローム。剣に話し掛けたって返事するわきゃねーだろ」
「ばっかだなぁ。これはえーと、イッテルゴゼンサマ・・だっけ。とにかく喋る剣なんだよ!」
「何言ってんだよ、剣が喋るわけ」
「このデルフリンガーさまに用かね、ガキんちょども。ちなみにヤンとキュルケは手に手を取って逢引中なんだな」

次の瞬間、子供たちから上がったどよめきは凄まじい物だった。
シエスタの母親とショウが揃って様子を見に顔を出した位である。

「すげー、喋る剣だぜ!?」
「な? 本当だったろ!?」
「すげーよ、これって悪い貴族からリュシアンとジェロームのねーちゃんを助けてくれた剣士様の持ち物なんだよな?」
「えー、魔法の剣なんだろ? だったら貴族様のじゃないの?」
「バーカ、貴族様が剣なんか持つかよ」
「そりゃそーか」

さすがに触りはしないが、取り囲んで好きな事を言っている。

「ったく、ガキンちょは遠慮がないんだね、これが。で、この俺様デルフリンガーに何用よ?」

おおおおおっ、と再びどよめきと歓声が起こった。
デルフにしてみれば喋るだけでこれほど驚嘆されるのは新鮮どころか、ちょっとした感動ものであった。
折角数百年ぶりに目覚めてみたのに話し相手もいないこの状況ではなおさらである。
一方、食堂の入口脇ではシエスタの母親が苦笑するショウを前に恐縮していた。

107:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:23:10 WmI5No1c
やったね!デルフ(非陶器の悪魔)は子供たちの人気者!支援


108:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:24:12 sqODvRtq
「あの、あなた様の剣を、よろしいんですか?」
「構いませんよ、どうせ今はあいつも暇だし。むしろ話し相手になってもらって感謝してるくらいです。
 ただ、錆びてるとはいえ危ないから触ったり抜いたりしないように言って下さい」
「はい、分かりました・・・あんたたち! お許しが出たからお話はしてもいいけど、それは貴族様の持ち物なんだから触ったりするんじゃないよ!」

歓声が上がった。
無邪気にはしゃぐ様子に、自然とショウの口元にも笑みがこぼれる。
ルイズたちが見たら驚くだろう優しい笑みで子供達に頷き、ショウはそのまま奥に戻っていった。
子供たちはショウから冒険譚を聞きたがったが、シエスタの母親に一喝されたので諦めてデルフの元に戻る。
群がる子供たちを代表して、シエスタの弟が質問する。

「なー、デルフー。お前ってすげーの?」
「口の利き方を知らないお子様だな。もちろんすげーに決まってるじゃねーか」
「じゃーなんで錆びてるんだよう」
「知らね。幾ら落そうとしても落ちねんだから、まぁ仕方がないだろ」

微妙に白けた雰囲気が漂った。それはそうだ、幾ら魔法の剣といっても錆だらけでは威厳に欠ける事おびただしい。
ついでに言うと、子供は熱狂するのも早いが、冷めるのも早い。

「ひょっとして中まで全部さびてるんじゃねーのか?」
「このクソガキ! 何てこといいやがる! 俺様はガンダールヴの左手、デルフリンガーさまだぜ!?」
「ガンダールヴってなんだよ?」
「えーと・・・・忘れた」

子供たちからブーイングが巻き起こる。

「なんだよ、それじゃ本当に喋れるだけのただの錆び剣じゃないか!」
「馬鹿野郎、剣を外見で判断するんじゃねぇ! 俺はこう見えてもスゲえんだぞ!」
「だからどう凄いんだよ」

もはや冷め切った疑いの眼差しだけを向けてくる子供等に、デルフリンガーは己の名誉を守るべく必死でアピールを繰り返す。

「えーと・・・そう、そうだ。俺は6000年は生きてるんだぜ! なんせ元々ガンダールヴの愛刀だった俺をインテリジェンスソードにしたのはブリミルその人だからな!
 あいつが俺の前の相棒を嫁さんごと異世界から呼び出して、ガンダールヴにしたんだ!」

しん、と場が静まり返った。
どうだまいったか、とデルフが胸を張る。
が、子供たちの反応は彼の望むようなものではなかった。

「嘘吐き!」
「え、えぇぇぇぇっ!?」

驚く暇もあらばこそ、子供達による厳しい糾弾がデルフに雨あられと浴びせ掛けられる。

109:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:25:38 WmI5No1c
事実を語っているのに信じられないこのジレンマ!w
……ワルドの人血相変えて話を聞きに来そう。……立ち直ってれば 支援

110:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:26:22 sqODvRtq
「こんな錆び剣が、始祖様の作ったもんなわけねーじゃねーか!」
「ウソつくならもっとマシなウソつけよ!」
「始祖様の名前を軽軽しく口にしちゃいけないんだぞ!」
「お前が貴族様の持ち物じゃなければ鍛冶屋のパオリさんの炉で溶かしてもらうところだぞ!」
「ちょ、ちょっと! ホントだ! ホントなんだって! 俺の前の相棒と現相棒に誓ってもいい、本当なんだ、信じてくれ!」
「行こうぜ。こんな嘘吐き剣もう相手にしてやるもんか!」
「ちぇっ、ヤンの兄ちゃんが居ればもっと冒険の話をしてもらえたのになー」
「リュシアン達はいいなー、昨日話してもらったんだろ?」
「喋った時は驚いたけど、こんな錆び剣なんて見かけどおりのガラクタに決まってらぁ」

口々に失望と怒りを吐きだし、少年たちは去っていく。
ナイーブな心を傷つけられた一振りの剣を残して。

「違うよう・・・本当なんだよう・・・ウソじゃねぇってばよぉ・・・」

しくしくしくと鬱陶しく泣くその言葉に耳を傾けるものはもういない。
いや、ただ一人だけ居た。
姿を隠して翻訳作業を行うルイズたちを観察していたワルド、正確に言えばその遍在である。
ショウがルイズの手元を覗き込んだり、二人の顔が接近したり手が触れ合ったりするたびに、憎しみの炎を滾らせていたのだが、その彼の耳に、デルフリンガーの「ガンダールヴの左手」というフレーズが飛び込んできたのである。
しばしルイズのことも忘れ、無言で考え込むワルド。
やがて顔を上げた彼の顔中に、人を不快にさせるような笑みがべったりと張り付いていた。



「それじゃ、お世話になりましたわ」
「いえいえ、あなた方は娘の恩人です。またいつでも遊びにいらして下さい」
「ねーちゃーん!」
「今度は夏に帰ってくるから、おとうさんとおかあさんの言う事を聞いて、いい子にしてるのよ」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」

翌日、一行はタルブの村を発った。
時ならぬ里帰りをシエスタは存分に満喫したようで、その表情は晴れ晴れとした物だった。
シエスタの曽祖母リィナの呪文書を発見・解読できたリリス達もその表情に曇りは無い。
呪文書の解読には参加しなかった物の、ヤンとキュルケは久々に二人きりの時間を作れて、ヤンはタルブのワインも存分に楽しんで、概ね満足な旅であったようだ。
二日目の午後には男の子たちの襲撃を受け、慣れない調子で夕方までの間ずっとこれまでの冒険譚を開陳させられる羽目になったが、それはそれで満更でもなかったようである。
ちなみにデルフはあれ以来シクシク泣いて鬱陶しいので鞘に収めて布でグルグル巻きにされた挙句、馬の鞍に突っ込まれていた。


111:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:27:57 WmI5No1c
ってか、初代ガンダはスカルダか!? 支援

112:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:28:45 sqODvRtq
だがただ一人、ショウだけは翻訳作業の折に時折思いつめたような顔をしていたのをルイズとタバサ、リリス達に目撃されている。
三人とも気を使って口にはしなかったが、意外に鋭いキュルケあたりは気付きながら黙っていたかもしれない。
恐らく、いや間違いなく原因はケイヒと名乗ったあの女侍。
明らかにショウを越える実力を誇る、鳳龍の剣術の使い手。
はっきりとショウに対する殺意を口にした以上、また彼女は現れるだろう。
それを思えば、ルイズ達も安穏とはしていられないのもまた確かだった。
とは言え四六時中それを思い煩っている事も出来ない。どちらにせよ、有効な対抗手段は無いも同じなのである。
何せ相手は転移(マロール)の呪文でテレポートすることができる。
いつどこで襲ってくるか分からないと言う事であるし、同時に最強の攻撃呪文である爆炎(ティルトウェイト)を修得している可能性も高いと言う事、つまり数を頼みにするやり方は難しいと言う事だ。
囲んでも爆炎の呪文一つで全員丸焼きになってしまったのでは意味がない。
ショウ達の世界の集団攻撃呪文は、術者やその仲間を傷つけないように発動と同時に術者の周囲に結界を張るようになっている。
つまりケイヒは四方を取り囲まれても、自分を中心に爆炎を発動させてそれら全員を同時に攻撃することが出来ると言う事だ。
レベルドレインと引き換えに巨大な力を発揮する呪文『大変異(マハマン)』、せめて『変異(ハマン)』が自分に使えればとリリスは思うのだが、大変異は魔術師系7レベル、それより効果の弱い変異も魔術師系6レベルに属する高位呪文である。
呪文の覚えが遅い司教(ビショップ)であるリリスにそうそう手が届く物ではなかった。

「ともかく、あれが出てきたら私が呪文を封じた上で集中攻撃をかけるしかないわね。
 鳳龍の剣術だってタイムラグなしに連発できるわけじゃないんだし」
「・・・まぁ、それはそうですが」
「何を気にしてるのよ。私たち全員でかかればどうにかなるって」
「だから頭をなでないで下さいよ」

ケイヒがいかに恐るべき敵か分かっていて、なおこういうセリフが吐けるのもキュルケのしたたかな所である。
ショウもそれがわかっているから、今はキュルケに黙って頭を撫でられていた。
もっとも、キュルケがこういう事をすると本人以外に激発するのがここにひとり。

「ちょっとキュルケ! あんた人の使い魔に何してるのよ! リリスも! ショウも振り払いなさいよ!」
「あら? やきもち?」

間違いなく狙ってやっているな、とショウやヤンですらわかる笑みである。

「むぐっ!?」

そのままキュルケがショウを抱き寄せてその頭を自分の胸に埋め。
しばらくして爆発音と悲鳴が昼下がりの街道を揺らした。

(何故だルイズ! なんでそんな使い魔なんかのことをいちいち構う!?)

そしてワルドも、ルイズ達から見えないどこかでハンカチを噛んでいたのは言うまでもない。
彼はこの日以降もルイズ達がキュルケにちょっかいを出されるたびに嫉妬の炎に悶え苦しみ、宿で翻訳の続きをするたびに歯軋りをして悔しがり、ショウとルイズが隣の席で食事をするたびに血の涙を流す事になるのであった。




113:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:30:09 WmI5No1c
ワルド、もう落ち着いてデルフをおだてる作業に行くべきだw 支援

114:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:32:07 sqODvRtq
数日後のトリステイン魔法学院。
またもや姿を現した仮面の男に、フーケはうんざりを通り越してもはや無感動になってしまった目を向けた。
なにせこの数日という物、この覆面の男は用もないのに現れては怒鳴り散らして帰っていくものだから(全くひまな事だ)、フーケの我慢もいい加減限界に来ている。
しかも授業中で人気のないときならともかく、食休みや授業の合間、或いは就寝前を狙ったかのように現れるので余計に神経を使う。
結果として加速度的にフーケのストレスは上昇していた。

「今日はまだ3回目だね。なんかいい事でもあったのかい」

それでも軽口を叩くフーケを―軽口の一つもなければやってられない精神状態に追い込んだのはこいつなのだから、それくらいは許されるだろう―仮面の男は無言で眺めやった。

「なんだ、だんまりかい?」
「今夜、実行だ」

短く、要件のみを告げる。
しばしフーケも沈黙を保った後。

「そぉうかい」

にまり、と満面の笑みを浮かべた。

「・・・・?」

仮面の男が怪訝そうにその顔を見やるが、フーケの顔に浮かんだ笑みはますます深くなる。

「とにかく、今夜決行だ。抜かるなよ」
「わかってる、わかってるともさ」

にたにた笑うフーケを内心無気味に思いながら、仮面の男は去った。
彼には、自分のここ数日の行動が多大なストレスをフーケに与えたという認識は全く無い。

そして深夜。
トリステイン魔法学院に時ならぬ大音響が響き渡った。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラー!」

巨大なゴーレムが本塔の裏手、宝物庫のあたりを両の拳で乱打する。

「ブレイクブレイクゥ!」

通常ゴーレムは大きければ大きいほど動きが鈍くなる物だが、怒りが魔力を増幅したか、30mのサイズでは通常ありえないようなスピードであった。人間と比べても遜色ない。
無論、拳は鋼鉄に錬金済みだ。

「家を壊すぞ橋を壊すぞ宝物庫壊すぞー!」

宝物庫の分厚い石壁が、拳が当たるたびに大きく抉られ、石材が削れていく。
あの口の軽いハゲから、宝物庫の壁は固定化以外の防御は施されていないと聞き出しておいたのは正解だった。
こんなにも容易く穴が空くのなら、あの疫病神が来る前にさっさと盗んでトンズラこくんだった、とわずかに苦い思いが胸をよぎるが、気を取り直して目前の破壊作業に集中する。
その途端、ゴーレムの腕がぽっかりと空いた空洞を突き抜けてゴーレム本体がわずかにバランスを崩した。


115:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:32:23 WmI5No1c
あれ?ケイヒはひょっとして核撃斬も使える可能性もある? 支援

116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:32:27 Nq4q904j
ワルドがかわいい……?いやそれは単なる醜い嫉妬だった支援w

117:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:34:03 WmI5No1c
ブレイク工業自重w支援

118:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:34:32 sqODvRtq
「なんだ、もう空いちまったのかい・・・物足りないねぇ。いっそこの本塔丸ごと潰してやろうか」

まるっきり冗談に聞こえない、物騒な口調で物騒なことを呟きながら、フーケはゴーレムの腕を軽やかに伝い、宝物庫の中に下りたった。
この日のために数ヶ月を費やしたというのに、感慨めいた物が欠片も浮かんでこないのは腹に溜まった怒りのせいだろうか。
それでも何度も確かめたお宝の位置を素早く確認し、危なげない足取りですたすたと歩み寄る。
「それ」は記憶のとおりの位置にあって、小さな『破壊の剣』と記されたプレートの下で鞘に収まったまま安置されていた。

「ふん・・・『破壊の剣』なんてご大層な名前の割に、ちゃちい代物だこと」

フーケの言葉どおり、『破壊の剣』はごく慎ましやかな外見の剣であった。柄にも鞘にも装飾の一つもなく、そこらへんの武器屋にでも置いてありそうである。
ただ、抜いてみた刃にはフーケが今まで見たことも無いような凄みがあった。

「まぁいいさ、魔法の品なのは確かなんだし、何かとんでもない魔法がかかってるんだろう」

自分を納得させるように呟くと、フーケは『破壊の剣』を左手に持ち、軽やかにゴーレムの拳に飛び乗る。

「おっと、忘れてた」

振り向いたフーケが杖を振ると、壁に燐光を発する魔法の文字が浮かび上がった。

"破壊の剣、確かに領収いたしました。土くれのフーケ"





119:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:36:09 mXf6YOqr
…何でだろう…、スレ読んでたらグレンラガンのロージェノムが召喚される風景が浮かんだ…


120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:37:21 7Wi/Hnrb
マチルダブレイク工業自重

121:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:37:31 WmI5No1c
エクスカリバーかはたまた、オーディンソードか 支援

122:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:37:31 sqODvRtq
翌日、トリステイン魔法学院は蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
コルベールは青い顔をしながら立ち尽くし、シュヴルーズは自分の当番の日でなかったことを神と始祖ブリミルにこっそり感謝していた。
昨夜当直の当番であったギトーは衛兵達に門を守るようにいいつけ、自分は逃亡するゴーレムを「フライ」で追ったのだが、ゴーレムは途中で土の塊に戻ってしまい、結局手がかりを見つけることは出来なかった。
そして一夜明けた今、学院の全教員は宝物庫でオールド・オスマンが来るのを待っているのだが、そこはギトーによる時ならぬ独演会、あるいは早口言葉演芸会の会場になっていた。

「この世の理は即ち速さだと思わないかね諸君物事を速く成し遂げればその分時間が有効に使える遅い事なら誰でも出来る二十年かければバカでも傑作論文をものせる有能なのは月一回より週一回週一回よりも一日一回つまり速さこそ有能が文化の基本法則!
そしてそれと同じ事が戦闘にも当てはまる速く相手を見つけたほうが有利速く呪文を唱え始めたほうが有利呪文を唱える時間が速いほど有利発動が速い魔法が有利速く届くほうが有利速ければ相手の攻撃も当たらないいやそもそも魔法を打てない!
その速さの中でも特に重要なのは呪文の詠唱速度だ何故って呪文そのものの長さやエアハンマーファイアボールウィンディアイシクルゴーレムの拳そうした物の速度はどうやっても変えようが無いしかし呪文詠唱の速度であればどの系統であろうとも高速化しうる
そう言うなれば素早い詠唱つまり早口こそ実戦における最も重要な能力アビリティオブコンバットポテンシャル私は常々思っているのですよ軍務が貴族の尊い義務であるならば魔法学院においても軍事教練を課すべきでその最も重要な項目は早口言葉だと!
話は変わりますが全く残念ですな噂のフーケを取り逃がしてしまったとはもしフーケが逃げ隠れせずに私の目の前に現れたならばわが風を以ってゴーレムごと切り刻み吹き飛ばしてやりましたものをいや全く口惜しい恐らく彼奴めはそれを知って逃げたに相違ない
あのゴーレムは30メイル程もありました確かに土のメイジとしては噂通りの高位の術者しかしそれですら我が風の前には児戯に等しい何故なら戦闘における唯一絶対の要素は速さ速さ速さ速さ速さ一に速さ二に速さ三四も速さ五も速さ即ち速さ以外の要素などゴミだ!
土の系統にはゴーレムがあるから風の呪文では削りきれないだろうってそれはあさはかというものだ大は小を兼ねるのか速さは質量に勝てないのかいやいやそんなことはない速さを一点に集中させて突破すればどんな分厚い塊であろうと砕け散るっ!
そして決定的な差として風の系統の魔法に存在して土のメイジが操るゴーレムにない物があるゴーレムに足りないものそれはァ情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そしてェなによりもォーーーーーッ!

 速 さ が 足 り な い ッ ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

123:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:38:02 WmI5No1c
クーガー兄貴自重w 支援

124:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:40:08 sqODvRtq
元はといえば、実力こそ高いながら陰気で無気力といってもいい、風の系統の優位性を声高に唱えるだけの教師だったギトーであった。
それが、春の使い魔召喚が終った少し後にいきなり「私は風の真髄を、否、速さの真髄を見たァァァァッ!」と叫びだし、以降ずっとこのような状態である。
「向こう側の世界を見た」のだとまことしやかに囁かれてはいたが、実際のところどうなのかは誰も知らない。
ただ変人が別のベクトルの変人になったと言う点では教師と生徒を含め概ね意見が一致していた。好感度が上がったかどうかは微妙な所であろう。
それはともかく周囲の教師は彼の長広舌を止めようにも止められず、半ば諦めてそれを聞き流していた。
正確に言えばギトーの演説がまったく途切れないために口を挟むタイミングが見つからないのだ。正直いつどこで息継ぎをしているのかさっぱりわからない。

「私はかつて軍人になって戦いを経験してから気付いたことがある確かに文化も忠誠も貴族の誇りも素晴らしいしかし人間は本来争う生き物なのだよ故に戦いは避けられぬならば戦いにおいて最強の系統である風こそ四系統の中でも最高最強の系統!
私はこう思っているんだよ愛はすばらしいものだと愛する対象への献身心の支え心と心の触れ合いそれらがみな人生の経験になり得難い自分の一部として昇華する!しかし愛の目的を遂げるまでの時間は正直面倒だ前の男などさっさと忘れろと思う聞いてるかね諸君
いいかね人の出会いは先手必勝だどんな魅力的な女性でも出会いが遅ければほかの男と仲良くなっている可能性もあるなら出会った瞬間に自分が相手に興味があることを即座に伝えたほうがいい速さは力なのだ
興味をもった女性には近付く好きな女性には好きと言う相手に自分を知ってもらう事から人間関係は成立するのだ時にそれが寂しい結果を招くこともあるとしてもだそうとも先に告白したのに返事を保留されていつの間にか他の男とくっついていたなどありえない
そしてこうも思うのだよ男子たるもの旅を人生を歩むならその隣に女性がいるべきだと二人だけの空間物理的に近づく距離美しく流れる愛の調べ体だけでなく二人の心の距離まで縮まっていくナイスな二人道中だが他人にやられるととてもムカツク!
しかし自分でやる分にはまったく最高だ早く目的地に行きたいでもずっとこうしていたいこの甘美なる矛盾簡単には答えは出てこないしかしそれにうもれていたいと思う自分がいるのもまた事実!ウヒョーッ!ファンタスティーーーーック!!
いいか私はこうも考えているのだ人間は自由だと無理な命令や願いには拒否権を発動することができる嫌なことは嫌だと言い切る悩んでいる時間は無駄以外の何ものでもない即決即納即効即急即時即座即答!それが残りの時間を有意義に使うことに繋がる
加えて拒否権が無いのは他人に運命を左右されていると言う事他人に運命を左右されるとは意志を譲ったということで意志なきものは文化なし文化なくして人間はなし人間なくして私でないのは当たり前故に人間は自由であるべきであり私もまた自由であるべきだ
いい加減真面目に読んでいる読者も少ないとは思うがそれでも私は語り続ける何故ならば風こそはドラマチーック!エスセティーック!ファンタスティーック!ラーンディーングー!な系統でありそれゆえに全てを凌駕するつまり」
「サイレンス」

突然沈黙が落ち、ついでざわめきと拍手がそれにとって代わった。
部屋に入ってきたオールド・オスマンが杖をつい、と動かしてギトーと周囲の音の伝達を断ったのである。


125:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:41:22 WmI5No1c
……ケイヒの疾風斬でも見たのか? 支援

126:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:43:13 sqODvRtq
「まずはギトーくん、昨夜起こった事を報告してくれたまえ」

返事が無いのをいぶかしみ、自分がかけた呪文を解除していなかったことに気付くと、オスマンは再び僅かに杖を動かした。

「おお感謝します、オールド・サンコン。これでようやくご報告ができるというもの」
「なに、礼はいらんぞ。後わしゃオスマンじゃ」
「それではご報告いたします、オールド・サンコン」

オスマンのツッコミを華麗にスルーし、ギトーが報告を始める。
内容は先ほどギトーが得々と語っていたものと概ね変わらないが、そもそも先ほどのあれをまじめに聞いていたものなどいなかったので問題ない。
一通り報告し終わったところで、このような場では珍しくコルベールが口を開いた。

「何故衛兵たちを門に残したのですか、ミスタ・ギトー?」
「陽動である可能性を考えたからだよ、ミスタ・コッパゲール」
「なるほど。それと私はコルベールです」
「それに、平民の衛兵では30メイルのゴーレムを相手に何も出来まい、ミスタ・コッパゲール」
「コルベールですってば」

まぁ確かに、と大方の教師が頷くのをよそに別の教師が口を開く。

「ミスタ・ギトー。あなたはゴーレムを追いかけたと言った。だが、途中で土の塊に戻ってしまったと言う事はゴーレムこそ陽動だったのではありませんか? だとしたらこれは責任問題ですぞ」
「誓って言うが、あのとき宝物庫の周辺には動くものは全くいなかったのだ。対してゴーレムの肩には黒いローブ姿の影が乗っていた。
勿論これが陽動である可能性は考えたが、ゴーレムも馬が全力で走る以上の速度で移動しており、そのまま逃亡しようとしていた可能性は低くは無かった。
 どちらかを選ばなければならないなら、門を衛兵達に警備させていたのだからゴーレムのほうを優先するのは誤った判断とはいえまい、ミスタ・ピグモン」
「マルモンだ!」

マルモンの難詰は退けた物の、他の教師からもぽつぽつとギトーの責任を問う声が上がり始めた。このような盗難事件で自分も巻き込まれてはかなわない、という集団心理である。

「ふむ、おぬしらの言葉にも一理ある。だが30メイルのゴーレムを操る、最低でもトライアングルの土のメイジに正面から挑んで阻止できた、と断言できるものはこの中に何人おるかの?」

が、オスマンの柔かくも毅然とした一言で彼らは皆黙り込んでしまった。
いるのならば挙手を、と求められて手を挙げたのがギトーだけだったのはともかく、他にギトーの責任を追及する声はもう上がらなかった。


127:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:43:35 WmI5No1c
全部読んだよギトーせンせいw 支援

128:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:46:31 sqODvRtq
「さて、これが現実じゃ。責任があるとするなら、我々全員じゃ。この中の誰もが―もちろん私を含めてじゃが―まさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っていなかった。
 何せ、ここにいるのは、ほとんどがメイジじゃからな。誰が好き好んで、虎穴に入るのかっちゅうわけじゃ。しかし、それは聞違いじゃった」

オスマンの杖が、壁に空いた大穴を指す。

「このとおり、賊は大胆にも忍び込み『破壊の剣』を奪っていきおった。つまり我々は油断していたのじゃ。責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい」

教師達が唇を噛む。
オスマンが視線を隣のコルベールに移した。

「コルベール君、宝物庫の被害は調べてくれたかの?」
「大雑把に調べただけですが、少なくともめぼしい物は無くなっておりません。断言は出来ませんがやはり被害は『破壊の剣』のみかと」
「ふむう」

と、オスマンが考え込むような顔になってヒゲをしごく。
それが大抵ろくでもないことを考えているか、何かをごまかす時の癖だと知っているコルベールなどは露骨に嫌な表情をしていたが、この時のそれはまるきり無意識の動作であった。

「ご苦労じゃったの、コルベール君。ミス・ロングビルがいればこのような事を君に頼む必要も無かったのじゃが・・・」
「あ、いえ。そう言えばミス・ロングビルはどこに? 朝から姿が見えませんが」
「それなんじゃよ・・・まぁそれはいい。さて、皆の衆。幸いにも盗まれたのは剣一振り、しかも王室から預かった宝物や学院の所有物ではなく私の個人的な持ち物じゃ。
 今回の件は将来の警備や我々に対する戒めとするにしても、私の個人的な問題として片付ける事もできるじゃろう。諸君はいつも通り授業に戻ってくれ。ああ、ミセス・シュヴルーズ」
「は、はい!?」

ほっとしたのも束の間、いきなり名前を呼ばれて動転している中年女性に、オスマンは宥めるように柔かく語りかける。

「あーいやいや、そう緊張せずとも良い。確か貴女は今日は午前中授業がなかったの。この大穴を、外見だけでいいから錬金で直して置いてくれるかの?」
「は、はい、わかりました、オールド・オスマン」
「頼みましたぞ」

ほっほっほ、と笑ってオスマンは教師達に解散を告げる。
そして自身はコルベールを伴い、学院長室に戻った。
執務机についたオスマンの表情が滅多に見られないそれ―つまり、真剣な物へと変わる。

「さて、ミスタ・コルベール」
「はっ」

思わず、かつての軍隊時代に戻ったかのように背筋を正すコルベール。
いい加減でちゃらんぽらんで女にだらしないセクハラ爺であっても、オールド・オスマンがあらゆる魔術師から等しく―或いは不承不承の―尊敬を受けているのにはそれなりの理由があるのだ。

129:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:48:13 WmI5No1c
さすがにロングビルは疑われそうだなぁ 支援

130:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:49:54 sqODvRtq
「虚無の使い魔についてはどこまで調べが進んだかね」
「ミス・ヴェリエールとミス・ツェルプストーの使い魔が、虚無の使い魔ガンダールヴであることはほぼ確実と思われます。彼らは武器を持つとルーンが光り、身体能力が増強されます。これは古書にあった記述と一致します。
 ミス・タバサのエルフの使い魔は額にルーンがありました。観察する余裕がありませんでしたので確認は出来ませんが、虚無の使い魔ミョズニトニルンである事はほぼ確実と思われます」
「確か始祖の使い魔は全部で四体おったのじゃの」
「はい。あらゆる武器を用いるガンダールヴ、あらゆる動物を操るヴィンダールヴ、あらゆるマジックアイテムを操るミョズニトニルン、そして存在だけが確認される謎の一体です」
「ふむ、ふむ。ひょっとして始祖の使い魔は全て人間であったのかな」
「エルフだったのかもしれませんがそれは分かりませんね」

しばしオスマンは口を閉じた。コルベールもそれにならい、学院長室に沈黙が下りる。
時計の長針が二回ほど時を刻んだころ、オスマンが口を開いた。

「ワシも色々とコネを使って王室の書庫やあちこちの貴族の秘蔵の文献を覗いて見たんじゃよ」

無言でコルベールが続きを促す。

「『虚無』とは、本来王家に伝えられるべき力だったようじゃの。始祖は己の三人の子と弟子に一つずつ、計四つの虚無を与えた。それを継ぐのが現在のガリア、アルビオン、ロマリア、そしてここトリステインの王家なのじゃ。
 じゃが、いつの頃からか虚無の知識は失われた。どうもこれは貴族とロマリアがかかわっておるらしいの」
「王家に伝わる力ですか。そうか、ヴァリエール公爵家は元々トリステイン王家から王女が降嫁して出来た家でした!」
「その通りじゃ、コルベール君。つまり王家の血を受け継ぐミス・ヴァリエールは虚無の系統の魔術師であるという可能性が高い。それならば彼女が通常の系統魔法を一切使えない事にも説明がつくというものじゃ」
「しかし、ミス・ヴァリエールはともかく他の二人は? ミス・ツェルプストーもミス・タバサもトライアングルですし、王家とはまるで関係ないはずですが・・・」

ちかりとオスマンの目が光った。

「コルベール君、君は馬鹿かね」
「は?」

この、頭は切れるがどこかうっかりしたところのある部下に冷たい視線を浴びせつつ、オスマンは説明を始めた。

「ミス・タバサはどこの出身だか知っとるかね」
「はあ、確かガリアから来たと・・・髪が青いのはガリアの貴族によく見られる特徴ですし」
「いいかね、ハルケギニアで青い髪といったら本来はガリアの王族のみが持つ特徴なのじゃよ。ガリアの貴族に見られるのは王族の降嫁や臣籍降下で血が広まった結果に過ぎん。
 そして、青い色が鮮やかであればあるほどそれは王家の直系に近い証拠なのじゃ。ミス・タバサの髪がそうであるようにの」

ぽかん、と口をあけるコルベール。

「で、では・・・しかし、家名すら分からないのでは・・・」
「だからおぬしは馬鹿じゃと言うておる。隠すからには隠すだけの理由があると言う事じゃろうが」
「は、はぁ」
「まぁこの先は軽軽しくは言える事ではないが、ともかく彼女が王家の血を引いていることは間違いないじゃろう」

131:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:51:06 WmI5No1c
やべー、オスマンが怪しすぎるwww 支援

132:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:52:56 sqODvRtq
唸るコルベールであったが、ふと気付いたように話題を転じた。

「ところでオールド・オスマン。ミス・ツェルプストーのほうはどうなのでしょう?
 こう言っては何ですが、新興国であるゲルマニアに王家の血が伝えられているとは思えませんが・・・確かトリステインやガリアの王族が輿入れしたことも無いはずですし」
「そちらはわからん。が、何せ先祖代々のああ言う家じゃ。どこかの王女をさらって駆け落ちするようなつわものが過去にいたとしても、驚くには当たらんの」
「確かに」

今度は苦笑して首肯するコルベールである。

「まぁ異性であれば王女でも酒場女でも分け隔てなく扱うのは、ある意味あの一族の美徳かもしれませんね」

彼としては珍しいユーモア感覚の発露であったが、学院長は真剣で冷徹な表情のまま、またちかりと目を光らせた。

「コルベール君」
「は?」
「我がトリステイン魔法学院に下品な男は必要ないぞ」
「気、気をつけます」
「まぁそれは冗談じゃが」

一転して悪戯っぽくウィンクするオスマンに、コルベールの全身からどっと力が抜けた。この学院長はこれだから付き合いづらいのだ。
というか、それを言うならいの一番に粛清されるのは学院長本人ではなかろうか、と真剣に考えるコルベールである。
そんな彼の内心も完全に分かっていて遊んでいるのだろうオスマンは、悪戯っぽいそれからまたも表情を変え、深く溜息をついた。
そう言えば盗まれたのは学院長の個人的な持ち物だったと今更ながらにコルベールは思い出す。

「ところでまた話は変わるが」
「はい」
「ミス・ヴァリエールたちが帰ってくるのはいつ頃だったかね?」

コルベールが少し考えるような表情になった。

「タルブを発ったという手紙が一昨日の昼頃にフクロウで届きました。片道三日ですし、恐らく今日のうちには帰ってくるのではないかと」
「そうか、帰ってきたらわしの所へよこしてくれ。ちと彼らに話がある」
「わかりました」

頷くとオスマンは退出するように促した。
コルベールが一礼して授業に向かい、オスマンは窓際に立ってまだ帰ってこない生徒たちを見つけようとするかの様に遠くの草原に目をやる。

「どうも様々な事がいっぺんに動き出しておるようじゃのう。若い頃ならともかく、この老体には些かきついわい」


133:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:53:48 WmI5No1c
支援

134:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:53:50 LSZKhQKc
破壊の剣は村正かな支援

135:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:54:51 WmI5No1c
デルフが村正、破壊の剣の最大候補はやっぱ、ハースニール? 支援

136:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 00:55:40 sqODvRtq
ちと短いですがこれにてひとまず終了。
正直、今回ほど字数制限を恨めしく思ったことはありませんでした。
字数制限さえなければ、ギトーの演説を全部改行なしで行けたのに・・・・っ(ぉ

1時になって予約がなければ続き行きます。

137:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 00:59:39 WmI5No1c
とまれ乙! デルフの正体も材料がそろってきたし、フーケのはっちゃけぶりと凄いギトーせンせいも面白いぜ!
支援体制は整ってる!

138:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 01:00:41 sqODvRtq
では1時になったので続きを。

結局ルイズ達が帰って来たのは午後の最初の授業が終わった頃だった。
職員室に報告にいったルイズ達は、たまたまその時限に授業がなかったコルベールによってそのまま学院長室に連れて行かれた。

「おお、お帰りミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、ショウ君とヤン君、リリス君も。それでタルブの村で収穫はあったかね」

中に入るなり好々爺の笑みで出迎えられ、ルイズ達は戸惑ったように顔を見合わせる。
やがて恐る恐る、と言った感じでルイズが口を開いた。

「あの、オールド・オスマン。それは一体どう言う・・・」
「何、特に深い意味はないぞ。わざわざ出向いただけの事はあったかなと聞いただけじゃ。例えば一般には知られていない系統の呪文とかの」
「えっ!? え、ええまぁそれなりには」
「そうか、それはよかったの」

と、ルイズの動揺など気に止めていないかのように頷いた後、オスマンが笑みを消した。

「さて、諸君等は帰って来たばかりだが、昨夜何があったかは聞いておるかね・・・ふむ、その様子では知らんようじゃの。
 かいつまんで説明すると、昨夜トリステイン魔法学院に賊が、知っとるかも知らんが『土くれのフーケ』が侵入し、宝物庫の壁に穴を空けて秘宝『破壊の剣』を盗んで行きよった」
「破壊の剣って・・・宝物庫を見学したときに見ましたけど、あの秘宝なんて言う割にショボいあれですか?」

身も蓋もないキュルケの表現に、苦笑しつつオスマンが頷く。
一方肩をすくめてそれに異を唱えたのはルイズだった。

「馬鹿ねキュルケ、そんな大層な名前がついているんだから何か凄い魔力が秘められているに決まっているじゃないの」
「あら、世の中見掛け倒しや名前倒れって事もあるわよ」
「例えばあなたの胸みたいな?」
「私の胸には愛情と情熱がたっぷり詰まってるのよ。毎晩ダーリンがもみ心地を確かめてくれてるんだからぁ」

そう言って誇示するかのように胸を突き出し、自分の手でそれをもみしだくキュルケ。
ダイナミックに形を変える双丘にヤンとリリスとルイズ、ついでにコルベールが頬を染め、ショウが礼儀正しく視線を外す。
そしてオスマンの目は鋭く輝き、そのゴムマリのような変形ぶりを一瞬たりとも見逃すまいとキュルケの胸元を貫いていた。
タバサとショウとコルベールの冷たい視線にさらされているのに気付き、咳払いして真面目な表情を作り上げたが、勿論後の祭である。
幸いにしてこの方面では今更失墜するほどの威厳もないのだが。
冷たい視線を向けたまま、ショウが話を元に戻す。

139:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:01:21 WmI5No1c
支援するぜ

140:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 01:03:09 sqODvRtq
「・・・で? わざわざ俺達を呼びつけたのはその破壊の剣とやらとどう言う関係があるんです?」
「いや、まったく関係ない。単なる世間話と言う奴じゃ」

しれっというオスマンに冷たい視線や呆れた視線が突き刺さったが、もとよりその程度でどうにかなるほど彼の面の皮は薄くない。

「わしが聞きたいのはじゃな、おぬしらが持ち帰った呪文書。それを残した夫婦が一体何者であったかなんじゃよ」

静かな衝撃が走りぬけた。
ルイズ達は無言で視線を交わしあい、コルベールはその言葉が引き起こした効果に戸惑ったように彼らの顔を見比べている。
オスマンは何も言わず、ただルイズ達が口を開くのを待っていた。
やがて頷き合って互いの意思を確認すると、リリスが一同を代表して口を開いた。

「学院長のご推察どおり、彼らは私たちの世界から来た人たちでした。武具も、呪文書に記されていた呪文も私たちの世界のものです・・・どうして分かったのか、よろしければ教えていただけませんか」
「何、簡単な事じゃ。わしゃ彼らと面識があったんじゃよ」

再びさざなみのように走った驚きが静まったのを見計らい、オスマンが再び口を開く。

「リィナ殿が魔法を使うところも見せてもらったからの。彼女は水魔法だと言っておったが、そうでない事は一目見れば分かる。
 ただ、このハルケギニアで下手に系統魔法以外の魔法を使ったらどうなるか・・・わかるじゃろ?」

リリス達が僅かに目を見張ったのを見て取り、オスマンが頷く。

「そう、下手をすればブリミルの教えに背く存在として異端審問行きじゃ。実際リィナ殿も一度は背教者呼ばわりされて危ない所じゃったんじゃ」
「それがどうやって助かったんですか?」

リリスの質問にぱちり、とウィンクしてオスマンが答える。

「簡単じゃよ。『リィナ殿の魔法は特殊ではあるが水魔法である』と教会の連中に言っただけじゃ」
「・・・それだけで?」
「なに、わしゃこう見えても魔法に関してはトリステイン一の権威じゃでな。そのわしが系統魔法だと言いはれば、連中にそれをひっくり返すことはできん」

ほっほっほ、と好々爺の笑みを浮かべるオスマンに対して、再び呆れたような―ただ、今度は好意的な―視線が突き刺さった。

「悪党ですわねぇ」
「褒め言葉と受け取っておこうかの、ミス・ツェルプストー」

艶やかな笑みを浮かべたキュルケの賛辞に、変わらぬ好々爺の表情で返すオスマン。全くもって狸爺いと呼ぶに相応しい。
ノックとほぼ同時に、息せき切ってミス・ロングビルが部屋に入ってきたのはそんな時だった。

141:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:03:21 zuA3orAZ
オスマン自重しろよww

142:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:05:11 WmI5No1c
手ぐすね引いてる所に飛び込んできた蝶々 支援

143:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 01:06:34 sqODvRtq
「オールド・オスマン、只今戻りました」
「ミス・ロングビル? 今までどこにいたのかね」
「遅れまして申し訳ありません。朝起きましたら土くれのフーケが魔法学院に侵入したことを知りまして、今まで調査をしておりました」
「おお、さすがじゃのう」
「それで、結果は?!」

鷹揚に頷くオスマンとは対照的に、息せき切ってコルベールが続きを促す。
ただその時、刹那オスマンの目に走った雷光に気付いたものがいたかどうか。

「はい、アジトらしき場所でフーケと金髪の女剣士が・・・」
「「「「「何ーっ!?」」」」」

この場にいていいものかどうか思案していたルイズ達が、タバサを除き一斉に叫んだ。
余りの反応に、ロングビルが驚いて口をつぐむ。
唯一冷静さを失わないタバサが、オスマンに向き直った。

「ひょっとしたら私たちに関係のある話かもしれない。傍聴の権利を要求する」
「ふむ。ま、いいじゃろう。ミス・ロングビル。続きを」
「は、はい」

彼女が語ったところによれば、フーケのアジトではないかと推察される廃屋で、フーケらしき黒いローブの人影と、大剣を背負った金髪の女剣士がなにやら会話しているのを見たものがいたのだという。

「細身で軽く湾曲した、変わった剣だったそうです・・そう、丁度彼が背中に背負っているような」

と、ロングビルはショウを指した。
ショウ達が互いに視線を交わす。

「知っておるのかね、その女剣士を」

オスマンの問いに、僅かに逡巡した後ショウが頷いた。

「随分と危険な相手のようじゃな」
「正直勝てる自信はありません。しかしこのまま見てみぬふり、という訳には・・・」
「いかないんでしょうね、やっぱり」

144:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:07:22 LSZKhQKc
しえん

145:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:07:43 z/exKeZa
いや、ウィズで「破壊の剣」っていったらネメシスのあれだろ。
ドクロに刺さってるやつ。最初は呪われてるけど。

146:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:07:52 2dxzMjBf
しえn

147:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:07:54 WmI5No1c
バレてるな 支援

148:さあう"ぁんといろいろ
08/09/22 01:08:41 sqODvRtq
リリスが深い深い溜息をつく。
それに激烈に反応したのはルイズだった。

「駄目よ!」

回りが呆気に取られるのも構わず、ルイズが言葉を続ける。

「あちらのほうが圧倒的に強いんでしょう? この前だって私の目の前で死にかけたじゃない! そんなの絶対に駄目よ!」
「しかしな、ルイズ・・・」
「駄目ったら駄目!」

取り付く島も無いとはまさにこのことだった。
かといって、ショウとしてもロングビルの言うことが本当であるなら放って置く訳には行かない。
複雑な表情をしていたリリスが、渋々という感じで妥協案を出す。

「んー、今回はその『破壊の剣』さえ取り戻せば戦う必要はないでしょ?
 破壊の剣を見つけたら取り戻してそのまま逃げる。見つからないままケイヒに会っちゃったらその場合も逃げる。これでどう?」
「・・・・」

ルイズは決めかねているのか、口をつぐんでリリスとショウの顔を交互に見ている。
ショウのほうもだんまりだが、積極的に反対する意思はないようだった。
やがてルイズが口を開き、控えめに反論する。

「でも、あの女剣士相手に逃げられるとは限らないでしょう? その時はどうするの?」
「大丈夫よ、万が一の時は私の呪文で皆で逃げ出せるから」
「・・・本当?」
「ケイヒが使った呪文に似たやつを私も使えるのよ。だから、逃げる分には大丈夫なの」

と言いつつも、内心リリスはそれを使わないことを心底願っていた。
なぜならその呪文、『帰還(ロクトフェイト)』は、パーティの仲間全員を窮地から救う代わりに、それ以外の物は何も救わないからである。例えば、身につけていた装備とか、金銭とか、服とか服とか服とか服とか服とか。
あんな呪文を使うくらいなら死んだほうがマシ、とまではさすがに言わないが、それでも可能な限り使いたくないというのはうら若き乙女の心理としては当然であろう。




149:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 01:09:08 CYsC+48f
支援


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