08/09/14 20:19:07 ZtNFDPDE
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
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・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
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前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
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著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
3:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 20:19:54 ZtNFDPDE
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。
【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪
【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部)
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用
【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用
【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作
【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪
4:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 21:31:33 QzwTJX1S
>>1乙
5:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 21:34:40 aURwsmi6
>>1乙です。
6:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/14 23:55:29 4uHrgg6b
では、失礼致します。
魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者
第10話
・次元世界
二人の騎士の技が激突し砂漠の大地に巨大なクレーターを作って尚、騎士達の剣舞は続いていた。
互いに魔力を大幅に使い切った今、残る攻撃手段は己の剣による剣術のみ。
砂を踏みしめる音、互いの剣がぶつかり合う音、バリアジャケットが切り裂かれる音、
甲冑が火花と共に削れる音、そして
「はぁああああ!!!」
「おぉおおおおおお!!!」
互いの叫び声が響き渡る。
「「っ!!」」
互いに一撃を見舞おうとした斬撃を、互いの剣で防いだ後、二人は後ろへと飛び、
剣を構えなおすと同時に、互いの様子を伺う。
先ほどまで響き渡っていた金属が激しく叩きつけられる音、互いの叫び声は聞こえなくなり、
変わりに吹き荒れる風の音、そして互いの荒い息遣いが聞こえる。
「(・・・・強いな・・・・・)」
レヴァンティンを構えなおすと同時に、荒くなった呼吸を整えながら、数メートル先で、
自分と同じ事をしているナイトガンダムを見据える。
あの騎士と剣を交えてから数十分が経過してる。だが、互いに決定打を与える事はできず、
ただ時間と体力と魔力を消費し、ダメージに関しても相手の鎧を傷つけるだけに終っている。
いや、ダメージなら自分の方がが大きい。
主であるはやてが戦う事を拒み、自分達が戦う必要が無いという事で与えてくれた甲冑とは違う戦闘服。
動きに関しては問題ないが、防御に関しては甲冑と比べるとすこぶる悪い。
それを証明するかのように、傷つけられた騎士服からは肌が露出しており、そこからは多少なりとも血が出ている。
正に主の優しさが仇となったと言っても間違いではない。だが、シグナムはその様な考えは微塵も持ち合わせてはいなかった。
むしろ申し訳なく思っている。主が与えてくれた騎士服を傷つけてしまった事に。
「(剣術はほぼ互角・・・・・だが、所々で使ってくる強化魔法が厄介だな・・・・その上向こうには盾があるから
防御に関しても分がある・・・・・どの道時間をかけ過ぎた、早めに決めないと・・・・まずいな)」
「(・・・・強い)」
剣を構えなおすと同時に、荒くなった呼吸を整えながら、数メートル先で、
自分と同じ事をしているシグナムを見据える。
あの騎士と剣を交えてから数十分が経過している。だが、互いに決定打を与える事はできず、
ただ時間と体力と魔力を消費し、ダメージに関しても相手の服を傷つけるだけに終っている。
だが、浅いとは言え、剣の直撃を受けた回数は自分の方が多い。
それに比べてダメージが少ないのは自身の鎧の耐久性と盾のおかげ。
戦闘に関しても、所々で使用している強化魔法でのゴリ押しで誤魔化しているに過ぎない。
7:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/14 23:56:30 4uHrgg6b
「(剣の腕は互角・・・・・だが、スピードは多少なりと向こうに部がある・・いや、何よりリーチの差が一番の問題点か。
強化魔法での誤魔化しも魔力的にそろそろ限界・・・・・時間も思った以上にかけ過ぎた、早めに決めないと・・・まずいな)」
一瞬、脳裏に三種の神器が過ぎったが、その考えを直に捨てる。
サタンガンダムとの戦いで身を持って知った。あの武具は今の自分には過ぎた力だったと。
あの時は仲間を守るために、悪を倒すために我武者羅になって使った。
だが結果は有り余る力に自身の体が持たず、奴の最後の魔法を受けるという失態を晒してしまった。
「(修行不足という事か・・・・・まぁ、無いものねだりをしてる暇など無い)」
こちらの世界『地球』に飛ばされた時に、石版も再び二つに砕け、その内の一つが未だに見つからない。
だが、ナイトガンダムは石版の行方に関してはあまり関心は無かった。
確かに石版は強大な力を与えてくれるが、それは石版が選んだ者のみ。仮にその様は人物が現われても、
欠けた石版ではただの石の固まりと同じ、全く意味が無い。
だからこそ、彼は石版の捜索を率先して行わなかった。
「「(あの騎士、シグナム(ガンダム)も勝負を仕掛けてくるはず」」
「(ソーラ・レイ・・・・・時間が稼げれば・・・・・)」
「(シュツルムファルケン・・・・・・当てられるか・・・・・)」
互いに決め手を考えながらも、構えを変えずに互いを見据える。そして
二人の騎士は時間を稼ぐため、隙を作るため、再び剣舞を再開させる。だが、
「そこまでにしてもらおう」
互いが地面を蹴った直後に響き渡る声、二人は直に反応し、踏み込みを中断する。
「っ!誰だ!!」
直に辺りを見回したが、姿が見つからないため、シグナムは大声で声の主に向かって叫ぶ。
その声には剣舞を中断された事への怒りが含まれており、並みの相手ならそれだけで戦意が喪失するほど、だが
「ふっ・・・・・・そう大声を出すな・・・・・」
声の主は、微動だにせずに上空から、二人の間に降りたった。
8:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/14 23:57:46 4uHrgg6b
「(・・・何者だ?)」
体系からして男、だが、仮面を被っているため正体は全く分からない。
一瞬シグナムの仲間かと思ったが、彼女の態度からして違う事は直に分かった。
無論自分も、このような男は知らない。
管理局の武装局員かと思ったが、仮にそうなら自分に何か言って来る筈。その可能背は低い。
「何者ですが・・・・・貴方は・・・・・」
正体が分からない以上、警戒をするに越した事は無い。
再び剣を構えなおしたナイトガンダムは、多少強い口調で目の前の男に尋ねる。
すると男は、ゆっくりとナイトガンダムの方へと体を向け、
「はじめまして・・・・・・異世界の騎士」
胸に手を当て、恭しく頭を垂れる。そして
「さっそくだが・・・・・・剣を収めてもらおう」
ナイトガンダムのみに、剣を収めるように言い放った。
「(っ!彼女達の仲間か?)・・・・・すまないが、それは出来ない・・・」
静かに否定の言葉を呟きながらも、内心では湧き出る焦りを隠すので精一杯だった。
仲間ではないにしろ、この男に見覚えがあるのだろうか、先ほどからシグナムは黙って行方を見守っている。
それだけなら、自分と同じく様子見をしているだけと考えられるが、仮面の男は自分にのみ剣を収めるように言った。
シグナムの様子から彼女の仲間ではない事は予測できた。だが、自分に敵意があることは予測ではなく確定と言っても言い。
そうなると、この疲弊している状態で二人の手誰と戦わなければならないことになる。
正に絶体絶命、だが剣を収め、投降する気など微塵もない。
「・・・成程。だが、これを見ても同じ事が言えるか?」
そんなナイトガンダムの様子を予期していたのか、仮面の男は不意に右腕を開け、指を鳴らす。
すると男の真上に転送魔法陣が出現する。そして
「フェイト!(テスタロッサ!!)」
転送魔法陣からゆっくりと出現したのは、ガラスのような透明な正四角錐、『クリスタルゲージ』に閉じ込められたフェイトだった。
気絶しているのか、目を閉じグッタリとしており、こちらの呼びかけには全く反応も無い。
「っ、人質か!!」
「見ての通りだ・・・・もし断るのなら・・・・・こうだ」
仮面の男の言葉に反応したかのように、クリスタルゲージはゆっくりと縮まり、中にいるフェイトを押しつぶさんとする。
その光景に、ナイトガンダムは無論、様子をうかがっていたシグナムも、顔を険しくし、仮面の男に切りかかろうとする。だが、
「やめといたほうが良い・・・・・今の疲弊してるお前達では、私に刃を振り下ろす頃には、あの少女はただの潰れた肉片になっているのがオチだ」
かわらない静かな口調。だが二人には明らかな自信が現れている事がありありと理解できた。
「卑怯者が!!」
シグナムは大声で仮面の男を罵った後、隠す事無く顔を顰め剣を下ろす。
ナイトガンダムは一度仮面の男をにらみつけた後、剣を盾にしまい、砂の大地に放り投げた。
「・・・良い判断だ・・・・では」
今度は誰にでも分かるほどに満足げに呟いた仮面の男は、手品の様に高々と上げた右腕からナイトガンダムに見えるようにカードを出現させ、
直にまた消す。その直後、ナイトガンダムの回りに光りの輪が出現し、彼を縛り付けた。
9:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/14 23:59:35 4uHrgg6b
「・・・・・・さて、次はお前だ」
ナイトガンダムが拘束されたのを確信した仮面の男は、ゆっくりと体をシグナムの方に向ける。
あの時はシャマルを助け、今は外道な手段ではあるが、宿敵である騎士ガンダムを取り押さえた相手。
無論、このような男など知らないが、行動からするに自分達に利を与えてくれている。だが、やり方が気に食わない。
「・・・貴様の目的は知らんが・・・・・やり方が気に食わんな・・・・・・」
「やり方が気に食わんか・・・・・滑稽だな。そんな事を気に出来るほど余裕があるのか?お前達には?」
何もかも知っているような口ぶりに、シグナムは歯を食いしばり仮面の男をにらみつける。
確かに、今の自分の台詞は事態を知っている者から見れば滑稽という言葉がお似合いだろう。
自分達は一刻も早く闇の書を完成させなければならない。それこそ手段を選んではいられないほど。
だからこそ『卑怯』『汚い』そう言われる行為も率先してやらなければならない。
だが、自分の中の騎士としての誇りが、それらの行動を自然と制限していた。
「ふっ、プログラム風情が騎士道精神に忠実とはな・・・・・・・・まぁいい。先ずは受取れ」
仮面の男は此処に現れてから握られたままの左腕をシグナムに向けて突き出す。
身構えるシグナムを無視し、ゆっくりと掌を開く。そこには黄金色に輝く魔力の光、フェイトから抜き取ったリンカーコアが光り輝いていた。
「さぁ・・・・・奪え・・・・・」
目の前には高魔力のリンカーコアがある。もし収集すれば20ページ以上は稼げるだろう。
まさに絶好のチャンス。だが、シグナムは迷った。これで良いのかと。このような手段で手に入れてもいいのかと
『やり方が気に食わんか・・・・・滑稽だな。そんな事を気に出来るほど余裕があるのか?お前達には?』
否、今という時にその様な考えはあの男の言う通り滑稽だ。
自分達は主であるはやての願いを踏みにじり行動している。そんな自分達が己の誇りや騎士道精神にすがり付いているなど、自分勝手にも程がある。
俯き、拳を力の限り握り締める。あまりの強さに血が滴り落ちるが、今は痛みを感じる事など出来なかった。
そしてゆっくりと顔を上げ、仮面の男ではなく、拘束されているナイトガンダムを正面から見据える。迷いの無い瞳で。
「言い訳をする気は無い・・・・軽蔑をしても良い・・・・罵ってくれても言い・・・・すまない。闇の書」
シグナムの声に反応し、彼女の右肩の付近に闇の書が突如出現する。そして仮面の男が握っているフェイトのリンカーコアから、魔力を吸収し始めた。
瞬く間にページに文字が刻まれ、中身を埋めてゆく。そして23ページ目の途中で文字の刻みは終了し、闇の書も再び何処かへと消えていった。
「・・・・・なぜ、全て奪わない・・・・以前の貴様達なら顔色一つ買えずに実行していただろう?」
「確かに、貴様の言う通り、我々には時間が無い・・・・・迷う私を滑稽と罵ったのも間違いではない。
だが、これ以上主の願いを踏みにじる事は出来ん・・・・・・・」
今までは人に限ってはリンカーコアを丸ごと奪うのではなく、蓄積されている魔力を奪う事で闇の書のページを埋めていた。
それならば、ページも埋まり、リンカーコア消失によるショック死で相手も死ぬ事はない。
主であるはやての未来を人殺しという汚名で汚さずに済む。彼女の未来を血で汚さずに済む。
「だからだ、残ったリンカーコアはテスタロッサに返してくれ・・・・・・頼む」
「・・・・彼女なら仮にリンカーコアを抜かれても死ぬ事は無い。邪魔な芽は機会がある内に積んでおく方が得策だと(返せといった!!」
射殺さん勢いで睨みつけながら言い放つシグナムに、仮面の男は一度わざとらしく溜息を吐いた後、
小さくなったリンカーコアを上空で囚われているフェイト目掛けて放り投げる。
ボールの様に放り投げられたリンカーコアは、フェイトを閉じ込めているクリスタルゲージをすり抜け、彼女の体に収まった。
「・・・・さて、次はあの騎士だ。彼女ほどではないが、高い魔力を秘めている・・・・・ああ、そうだったな」
何かを思い出したかのように頷いた仮面の男は再び体を拘束されているナイトガンダムの方へと体を向ける。そして
既に下ろしていた右腕を再び肩の高さまであげ、掌を向けると同時に足元にミッド式の魔法陣を展開、魔力を収束させ、
「弱らせた方が・・・・収集はしやすいのだったな・・・・」
拘束されているナイトガンダム目掛けて収束砲を放った。
10:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/15 00:01:12 4uHrgg6b
ナイトガンダムは仮面の男によって体を拘束されている。だが、体を縛られているだけであって地面に縛り付けられているわけではない。
そして体系からか、拘束されているのは腕のみであり、両足の自由は利く。だからこそ避ける事も出来る、だが
『やめといたほうが良い・・・・・今の疲弊してるお前達では、私に刃を振り下ろす頃には、あの少女はただの潰れた肉片になっているのがオチだ』
今はフェイトが人質に取られている。もし、自分がおかしな行動をしたら、あの仮面の男はフェイトに何をするか分からない。
ならばやる事は一つ。奴が望んでいる事を行えば良い。
仮面の男が放った砲撃は何の抵抗もせず、ただじっと立ち尽くしていたナイトガンダムに直撃した。
着弾による爆発の後、立ち込める爆煙から吐き出されるようにナイトガンダムは吹き飛び、砂の大地に叩きつけられる。
「利口だな・・・人質の事をちゃんと理解している。これで十分だろう・・・・・さぁ、奪え・・・・・・」
あの砲撃を正面から受けて尚、あの騎士はゆっくりとではあるが立ち上がり、自分を睨みつけてる。
だが、そんな威嚇など問題ではない。奴のリンカーコアを奪えば闇の書のページは更に埋まり完成に近づく。
本当なら自分があの小さな魔道師の様にリンカーコアを抜き取っても良かったのだが、あの守護騎士の態度がどうにも気に入らない。
プログラム風情が騎士道精神や誇りなど、馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
だからこそ奴にやらせる。武器も持たず拘束され、傷つき、人質まで取られている相手を攻撃するなど、
騎士道精神や誇りなどに酔いしれている奴には耐え難い屈辱だろう。
「(だが、そんな屈辱も・・・・・直に感じなくなる・・・・・・永遠にな)」
今は闇の書を完成させるために強力してやろう。だが、時期が来ればお前達も餌となる。そして貴様が慕っている主も・・・・・
「(そう、全ては父様のために)」
今仮面の男はナイトガンダムの方に体を向けている。だからこそ気が付かなかった、シグナムの表情が怒りを通り越して冷めている事に。
「・・・レヴァンティン・・・・」『Schlangeform 』
レヴァンティンに残ったカートリッジをロードし、レヴァンティンをシュランゲフォルムへと変形させ、拘束されたナイトガンダム目掛けて振るった。
鞭状連結刃となった刃は凄まじいスピードでナイトガンダムに迫る。
二人の間にいる仮面の男を通りすぎたレヴァンティンは、目を閉じ、立ち尽くしているナイトガンダムに容赦なく直撃した。
刃と鎧がぶつかり、激しい金属音が響き渡る。
「ふっ、所詮プログラム風情の誇りなど、目の前の餌には勝てぬほど薄っぺらいもの」
ナイトガンダムがレヴァンティンの餌食になる光景を仮面の男は満足げに見ていた。心の中でシグナムを貶しながら。
これであの騎士は完全に戦闘不能、奴から魔力を収集すれば今回の任務は完了する。
だが今回は、臨時ボーナスとしてあの騎士のプライドをズタズタにしてやることが出来た。対した実りではないが、満足感なら断然こちらの方が大きい。
後はこの少女を此処へ放置し撤退すればいいだけ。全ては上手くいった・・・・・・かに見えた。
仮面の男が異変に気が付いたのは、ナイトガンダムを攻撃した鞭状連結刃が、シグナムの元には戻らず、上空へと上がった事だった。
だが直に理解できた。おそらくあの守護騎士は上空で囚われているフェイト・テスタロッサを助けるつもりなのだろう。
「(まぁ、いいさ・・・・・好きにするが良い・・・)」
この少女の人質としての価値は無い。今更手元にいなくなろうがどうという事はない。もう作戦は成功したからだ。
ふと、仮面の男は後ろでレヴァンティンを振るっているシグナムの表情が見たくなった。
おそらく・・・いや、ほぼ確実に屈辱に打ちひしがれた顔をしているに違いない。自分自身で誇りを踏みにじったのだ、
悔し涙を流しているかもしれない。それを考えると愉快で仕方が無い。
早速確かめるために、仮面の男はシグナムの方へと顔を向ける。
だが、これらの作戦を計画通りに遂行していた仮面の男の推測は、此処に来てはじめて外れた。
11:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/15 00:02:35 eGqd+Kl6
シグナムの表情は、予想していたものとは違った。屈辱に打ちひしがれているわけでもなく、獰猛に微笑んでいたからだ。
同時に背中から突如発生した魔力反応。仮面の男は咄嗟に後ろを向く、そこには
「騎士・・・・・ガンダムだと!!?」
奴は確かにレヴァンティンの直撃を受け行動不能になった筈、だが、実際は行動不能にはなっておらずに
自分目掛けて突撃している。
「・・・・・奴め、バインドのみを斬り裂いたのか」
良く考えれば不審な点は幾つもあった。
なぜ、あの守護騎士は普通に斬りかからずに鞭状連結刃という面倒な武器を使ったのか。
ナイトガンダムは拘束され、ダメージも負っている。
そんな相手にカートリッジを無駄使いするほど、奴らは備蓄しているとは思えない。
普通に近づき、剣を叩きつける・・・・いや、ダメージを負っている以上ただ収集すれば良い。
そして鞭状連結刃が直撃した時に聞こえたのは金属音のみ、音からして奴の鎧に当たっただけにすぎない。
もし普段の自分だったらそんな事など気付いていただろう。だが、自分は少なからず作戦の成功に酔いしれていた。
完璧に事が運んだと信じきっていた。その油断が、今の状況を作り出してしまった。
「ホバー!!」
仮面の男がシグナムの方へと体を向けた瞬間、ナイトガンダムは体を起こすと同時に強化魔法で自身のスピードを上げ、
投げ捨てた盾の所へと向かう。
彼には確信があった。シグナムが自分を攻撃しないという確信が。確かに自分の魔力が目的だろう。そして自分が拘束されている今は正に絶好の機会。
だが、主に忠誠を誓っているとは言え彼女も騎士、拘束され、人質を取られ、ダメージを負っている自分を堂々と攻撃できるとは思えない。
フェイトの魔力を奪った時の彼女の表情から感じ取れた。彼女は苦しんでいる。自身の騎士道精神や誇りと主への忠誠心に。
ならば答えようと思う。フェイトを助けた後、再び一対一で剣を交える事で。
無論負けるつもりは無い、だが堂々と自分を打ちのめし手に入れた魔力なら彼女も満足はする筈。だからこそ
「だからこそ、先ずは貴様を倒す!!」
仮面の男はようやくナイトガンダムの存在に気付き、咄嗟に右腕を翳し直に撃てる魔力弾を連射、弾幕を張る。
だが、その魔力弾をナイトガンダムは高速移動しながらも全て避けきり、砂の大地に置かれている盾の元へと到着、収まっている剣の柄を掴み、
「はぁあああああ!!!」
力の限り横薙ぎに振るった。力の限り振るったたため、盾が遠心力により剣から離れ吹き飛ぶ。
剣から離れた盾は、振るったときの遠心力も加わり、一つの回転する鉄の固まりとなって仮面の男に迫る。
「ふっ、何かと思えば?」
ナイトガンダムが接近して来た時はさすがに焦ったが、その後の攻撃方法は正に幼稚、
自分にそんなあてずっぽうな攻撃が聞くと思っているのだろうか?
それを証明するかのように空いている左腕で、迫り来る盾を難無く払い落とす。その直後
魔力刃が仮面の男に直撃し、豪快に吹き飛ばした。
ナイトガンダムは、盾が防がれる事は承知していた。いや、そもそも盾は攻撃手段ではなかった。
本当の攻撃手段は剣を振るうことで発生させる魔力刃『ムービーサーベ』、振り投げた盾はただの囮に過ぎない。
咄嗟に考えた戦法だが、見事に通用した。
12:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/15 00:04:00 eGqd+Kl6
「・・・・・貴様・・・・・」
仮面の男は怒りで声を震わせながらゆっくりと起き上がる。直にでもあの騎士に報いを与えてやりたい。
だが、不意打ちで受けた攻撃が思った以上のダメージを自分に与えている。
それが原因なのか、自身に施した強化魔法と変身魔法も維持するのが難しくなってきている。
あの騎士はクロノ達と顔見知りなのは調査で把握している。この一件が進むにつれ、否が応でも本来の姿である自分と顔を合わせる可能性が高い。
だからこそ、此処で自分の素顔を知られるのはマズイ。
「まぁ・・いいさ・・・・目的は・・・・・・達成された」
仮面の中でほくそ笑んだ男は、足元に転送魔法陣を展開、ナイトガンダムが斬りかかるより早く、その場から撤退した。
「撤退したか・・・・・」
周囲を念入りに確信はしたが、気配も魔力反応も自分を含め3つしか確認されない。
一度息を大きく吐いた後、正面にいるシグナムを見据える。
「安心しろ・・・・テスタロッサは気絶しているだけだ」
彼女は既に助け出したフェイトの症状を見ており、ナイトガンダムに命に別状が無い事を告げた後、彼女体を優しく砂漠の大地に横たえた。
「・・・・・・一つ聞かせて欲しい・・・・・」
フェイトの容態に心から安心した後、戦う事を放棄したかの様に剣を下ろしたナイトガンダムは、正面からシグナムを見据え尋ねる。
彼の話を聞くことにしたのだろう、黙ってはいるが、シグナムもまた、剣を構えるような事はしなかった。
「・・・・・君達が闇の書を完成させようとしている理由だ。君からは悪意が感じられない。
だが、己の誇りを汚してまで完成させようとする・・・・・何故だ?良かったら話して欲しい、協力できるかもしれない」
一時は傲慢な主に言いように使われているのではないかと思った。だが、資料で見せてもらった前回の事件とは違い、
人を殺さないで収集してる事が、その考えを否定している。そしてあの仮面の男の言葉
『やり方が気に食わんか・・・・・滑稽だな。そんな事を気に出来るほど余裕があるのか?お前達には?』
これは完成を急いでいると考えてよい。だが、人から収集した場合はリンカーコアその物を残しておくという手間を取っている。
そう、まるで人殺しを避けているかのように・・・・否、
「・・・・・・主に・・・・殺人という汚名を着せたくないのか・・・・・・」
図星だったのだろう、シグナムの表情に明らかな驚きが現われた。
そして一度息を吐くと、観念したかの様に自嘲気味に笑いながら話しだす。
「ああ・・・・その通りだ。我々は主の未来を殺人という汚名で汚したくは無い。だが一つだけ言わせてくれ。
今回の収集は我々が勝手に行っている。主は全く関係ない・・・いや、主は私達が収集を行っていることすら知らない」
「なっ・・・・それは・・・・・・・、いや、ならば・・・・・」
シグナムの言葉をヒントとし、ナイトガンダムは咄嗟に考える。資料で見た限りでは闇の書は強大な力を主に与える。
それには他者から魔力を奪う必要があり、それらの行動をするために守護騎士達が存在する。
だが、シグナムは『主が収集のことを知らない』と確かに言った。
守護騎士である以上、彼女達が闇の書の効力を主に言わない筈がない。だからこそ主は知っている筈、強大な力が手に入ると。
それなのに、シグナム達は主に命令された所か、主に内密で収集を行っている。
これは主が闇の書の力を必要としてないと考えて良いだろう。そうすると彼女達は主の思いを無視して収集を行っていることになる。
彼女ほどの騎士だ、主の命に背いてまで行動するなど、耐え難い屈辱だろう。その屈辱を自分の意思で受け止めて尚行動するからには、
それ相応の理由がある筈・・・・・いや、考えられる可能性は殆ど無い。
「・・・・・・主に必要不可欠なのか・・・・・・闇の書の力が・・・・・・・」
それなら、今までの考えに辻褄が合う。
13:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/15 00:05:27 eGqd+Kl6
おそらく今回の闇の書の主は心優しい人物なのだろう。それならば、他者を犠牲にする事で手に入れる事が出来る強大な力を否定する筈、
彼女達守護騎士も戦う事などせずに、平穏に暮らしてれば良い。おそらく主もそれを望んでいた筈。
だが、その主の願いを破ってまで闇の書を完成させようとする理由、主にその力が必要不可欠だと言う事しか考えられない。
主に内密にしているのは、もし知られたら止められるから。もしそんな事になったら彼女達は本当に今度こそ行動する事が出来ないだろう。
だからこそ主に知られずに内密に行動している。
「・・・・ふっ、心を見透かされている様で・・・いい気分ではないな・・・・」
溜息を吐いた後、観念したかのようにシグナムは呟く。だが、構えを崩そうとはしなかった。
正直驚いている。僅かなヒントであの騎士は我々の目的を、思いを当てたのだから。
だが、戦う事を辞めるつもりは無い。仮に管理局に真実を話したところで、主が助かるとは思えない。
むしろ、『闇の書の主』という事でどんな扱いをされるのか、想像するだけで恐ろしくなる。
だからこそ我々は、守護騎士ヴォルケンリッターは、誰にも頼らずに収集を行う、誰にも頼らずに主を助ける。
『汚い』と罵られても、自身の誇りを踏みにじってでも。
「(・・・・・話は・・・聞いてくれそうには見えないな・・・・)」
今の彼女の瞳は、正に己の決意を再確認し、確固たる物とした力強い瞳。
己に覚悟が無い限り、このような瞳は決して出来ないだろう。
ならば、自分も受けて立つのみ、それが彼女への礼儀でもあり、思いを伝える唯一の方法。
ナイトガンダムもゆっくりと剣を構える。再び砂漠の大地に剣舞が開始されようとしたその時、
「(ガンダム!ガンダム!!)」
ナイトガンダムの頭の中に聞き覚えのある声が響き渡る。その声がアルフだということ気が付くにはそう時間は掛からなかった。
構えを崩さず、シグナムからを話す事無く念話に答える。
「(アルフか?)」
「(ああ、今そっちに向かう、あの犬っコロはバインドで何重にもふん縛っておいたから暫らくは動けない筈さ、そっちはどうだい!?)」
「(・・・・・・・・すまない、戦いの最中にフェイトを人質に取った未確認の敵と戦う事になり、その敵と守護騎士には逃げられてしまった。
フェイトは命に別状は無いがリンカーコアから魔力を奪われ体力の消耗も激しい、至急救援の手配を頼む)」
『フェイトを人質に取った』という言葉に目に見えてアルフは慌てたが、主人を救いたいという気持ちが彼女を突き動かした。
簡潔に今の場所を聞いた後、力強く返事をし念話を切る。
「救援か・・・・・どうやら運はお前に味方したようだな・・・・」
シグナムの言葉に、ナイトガンダムは目に見えて驚きを露にする。
一瞬会話内用を口に出してしまったのではないかと思ってしまう。
「どうやら思念通話・・・・念話が使えるようになったのは最近らしいな。素人が使う場合は盗聴されやすい、気をつけることだな。
だがどう言う事だ?私が逃げたというのは?」
念話を盗聴されたのは純粋な失敗だった。使い方のみを聞き、注意事項を聞かなかった自分を責めたい気分になる。
だが、今回に関しては説明の手間が省けたので良しとしようと思う。
「(このような場合・・・・確かアリサが言っていたな・・・『結果オーライ』と)聞こえていたのなら話しは早い。
どうか我々を見逃して欲しい」
戦闘の意思がない事を証明するため、持っていた剣を静かに地面に置く。
「・・・どういうことだ?貴様の仲間が来れば形勢は逆転する。なぜその様な事を言う?」
「私にはもう、戦闘を出来るほどの体力も魔力も残ってはいない。仮に戦っても数分と持たないだろう。
だがそれは君も同じ。仮に私が勝てなくても、足止めを、もしそれすら出来なくても更に体力を消費させる事が出来る。
そうなれば貴方も逃げ切れる事が難しくなる筈・・・・・違うか?」
彼の言い分は半分は当たっている。確かにこのまま戦えば、自分は逃げ切る事が難しくなる。
だが他は違う。先ずはナイトガンダムの状態、確かに体力も魔力も消費はしているが、数分と持たないという事はありえない。
足止めや時間稼ぎは無論、自分が負ける可能性もある。
14:高天 ◆7wkkytADNk
08/09/15 00:07:09 eGqd+Kl6
なのになぜナイトガンダムは嘘をついたのか。同情?情け?いや違う。
「・・・・・テスタロッサを助けた礼か・・・・・」
「それもある。だがこの勝負、邪魔が入ったため互いが全力を出し切る事無く、未完で終ってしまった。
だからこそ再び剣を交えたい。全力で・・・死力を尽くして」
地面に置いた剣を再び広い、切っ先をシグナムに向ける。
「今回は重要な情報を引き出すことが出来たが、それは私の推測が正しかったにすぎない。だからこそ、
今度は勝負に勝ち、本当のことを、君の口から聞きたい」
目の前の騎士に、シグナムは純粋に好意を抱いた。同時に残念に思う。
もし、今の立場が味方同士だったら、自分達はよい友に、良い好敵手になっていたに違いないと。
「ああ、良かろう、騎士ガンダム!!再び剣を交えよう!正々堂々と!!力の限りに!!!」
シグナムもまた、レヴァンティンの切っ先をナイトガンダムに向ける。互いの剣が自然とぶつかり合い交差する。
騎士として、互いの再戦を誓い合うために。
シグナムが転移した事を確認したナイトガンダムは、フェイトの様子を見るため近づこうとするが、突然の立ち眩みに襲われ、
足をもつれさせ転倒してしまう。いや、これは立ち眩みなどではなかった。
「・・・・・・思った以上に・・・ダメージが・・・大きかったな・・・・・」
先ほどまでは、自然と気を張り詰めていたため普通に会話や行動をする事ができたのだろう。だが、
今はシグナムも、仮面の騎士も撤退し、救援ももう直到着する。そんな安心感が支配した瞬間、体は正直になった。
どうにか力を振り絞り顔を上げる。目もかすんでよく見えないがぼんやりと見える人影、
自分の名を必至に呼んでいる事から、おそらくはアルフだろう。
その救援が到着したという更なる安心感が彼を襲い、意識を奪っていった。
・24時間後
:アースラ内救護室
「・・・・・ん、ここ・・・・は・・・・・」
小さい唸り声を上げながら、ナイトガンダムはゆっくりと目を開ける。
最初に目に入ったのは真っ白な天井ではなく、天上一面を覆う照明の光り。
特殊な光りなのだろうか、明るい割には目覚めたばかりの瞳が痛くなるような事は無かった。
「・・・・・ここは・・・・どこだ・・・・・」
ベッドから上半身を起こし辺りを見回す。隣には自分が寝かされているベッドと同じ物があり、
窓から見える景色は夜の様にほの暗い。
「あれは・・・・次元空間内の景色・・・・そうなると・・・・」
「此処は本局か次元航行艦の中か?」そう呟こうとした瞬間突然扉が開き、リンディが入ってきた。
「ガンダム君!!良かった・・・目が覚めたのね」
心から安心した笑みを浮かべたリンディが小走りでナイトガンダムの元へと近づき、彼の体を支える。
「ああ、すみません。リンディ殿・・・・ここは・・・・」
「ここはアースラの艦内、貴方は砂漠での戦闘でダメージを負って気絶していたのよ」
リンディの言葉を聞きながら、あの時の事を思い出す。
シグナムとの戦闘、謎の仮面の男、人質になったフェイト
「っ!フェイトは!!フェイトは無事ですか!?」
「安心して、そして落ち着いて。フェイトさんならリンカーコアを吸収された以外、怪我は無いわ。さっき目覚めたばかりよ。
むしろ貴方の方こそ大丈夫、回復魔法で傷は塞がったけど・・・・・疲れや痛みはない?」
身を乗り出しながら尋ねるナイトガンダムに、リンディは安心させるように微笑みながら彼の肩に優しく手を乗せる。
自信の落ち着きの無さを恥じると同時に、リンディの母親としての暖かさに、心が自然と癒されていく。
「・・・・いえ、大丈夫です。それに申し訳ありませんでした、取り乱してしまって」
「いいのよ、それよりお腹すいてない?何か軽い食べ物でも持ってくるわね」
笑顔で手を振り部屋空でていくリンディを、ナイトガンダムは笑顔で見送る。そして
「・・・・・大人しく待とう・・・・・話はそれからでも出来る」
再びベッドに体を横たえ、体を休める事にした。
こんばんわです。投下終了です。
>>1乙 です。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
職人の皆様GJです。
次は何時になるのやら・・・・orz
15:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 00:21:58 fs4nhZjO
>>高天氏
GJでした!!
ナイトガンダムvsシグナムの決着は一先ず先送りという形になりましたか……
でも、その後の二人のコンビネーションによる仮面の男へと攻撃はとても良かったです!!
(正直気持ちがスカっとしましたww)
徐々に真実に近付きつつあるナイトガンダム達、次回も楽しみに待っています!!
16:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 16:33:57 itY8Y1J1
高天氏GJでした!
騎士同士のバトルは熱いぜ!
と、あまり関係ないんだけど、岡田芽武なリリカルなのはというのをちょっとだけ妄想した。
夜 天
乃 王
とか書き文字で登場するはやてとか出そうだなーと。
いや、それだけだが。
その者は、叢雲(くも)を従えやってくる。
その姿は王のように気高く
その瞳は死のように冷たい
その閃光は闇を切り裂く―
…うん。無理。
17:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 17:18:41 C5Nj+54x
>>14
かっこいい戦いです。GJ!
18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 18:50:36 AvQFFB2P
仮面男の外道度が上がってる…!
騎士対騎士の戦いってなんかいいね。かっこいい。
19:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 19:25:44 XjOFS/Lr
間に合えば、22時50分に投下予約を。
20:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 19:35:10 EHmb0Hrv
>>19
間に合えばって。
確実な時間にすることをお勧めしますが、大丈夫ですか?
21:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 20:11:41 8AxjxrNm
>>19
まだ書き上がってないなら書き終えてから予約することをお勧めします
22:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 20:18:26 t/QjJZ3u
推敲はすべきだろ・・・jk
23:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 20:42:21 tfs/reLk
まあ落ち着け
24:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:43:45 IVK7hRFT
ではそれまでに時間の余裕もあるようですし、魔法殺し屋☆ピノッキオの代理投下を行いたいと思います。
今は大丈夫でしょうか?
25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 20:49:25 iqVXGQp5
OK!
26:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:50:25 IVK7hRFT
了解しました! では代理投下、行かせていただきます
======
時空管理局 本局上層部直轄である特務監査部の朝は早い。
しかし夜は早く寝れるという事も無い。ようは睡眠時間を極限まで削らなければ職場だと言う事だ。
「……あのヒゲ大将が……いてこますぞ、ワレ……」
とある本局の一室でその女性は、あまり品の無い寝言を呟きながら盛大に寝ていた。
暗い執務室兼私室で、書類が散乱する仕事机に座ったまま、上半身を机の上に投げ出す体勢でだ。
彼女の名前は八神はやて。彼女の名前は管理世界の一部では有名である。
胸元まで盛大に開け放たれたワイシャツ姿だったり、周りには空の酒瓶が落ちていたりするが……
「好きでお前におべっかなんぞ……」
寝言は続く……しかし八神はやては有名人である。
管理外世界の出身でありながら、類稀なる魔法の才能に恵まれた少女にして、最悪と呼ばれた闇の書最後の主。
若くして部隊運営を任され、緊急対応のモデルケースとして作った部隊は、あの奇跡の機動六課として大成功。
そして今は……『血の特務監査部』の主任である。
「あぁ……お好み焼きが食べたいなぁ~」
特務監査部は古くからある部署ではない。かのJS事件後に作られた新しい部署だ。
しかしその特性 本局内部に対する徹底的な綱紀粛正や、噂の域を出ないとはいえ裁判無しでの殺害権限から恐れられている。
後にも先にもこのような部署が設けられた事は無く、それだけこの時期に管理局全体がどれだけ混乱していたのかを推し量る事ができるだろう。
そして八神はやてと言う人物の経歴を後の歴史家が振り返った時、この時期の彼女 つまり特務監査部主任の評価はハッキリ分かれる。
一つは『管理局のために身を粉にして働き、後に続く要職歴任の礎とした』と言う意見。
もう一つは『人道的な配慮に欠け、己の利益の為に何でもした』と言う意見。
だがどちらの意見もその期間を『現在』とする八神はやて本人には知りえないし、関係の無い事だ。
今彼女にとって重要な事は……朝一の会議に遅刻しそうだと言う事だろう。
「はやてさん……はやてさん?」
そんな大絶賛遅刻危機なはやてに扉越しに掛けられるのは救世主の声。
しかし何時も通り寝酒を深酒した彼女はその声にも耳を貸さず、起きる気配が全く無い。
「もぉ……入りますよ」
ピッと軽い電子音が正規の方法を用いて開かれた事を示す。
入ってきたのは金紗の髪をツインテール、浅黒い肌に整った容姿をした少女だった。
手にはスペアに当たるこの部屋のカードキー、身を包むのは管理局の制服。
迷わず壁際のスイッチを叩き、灯された照明の下で飛び込んでくる風景に彼女はタメ息。
なぜならば部屋の主は居眠り学生よろしく机に座ったままグースカ寝ていたのだから。
「起きて下さい。会議が始まりますよ」
27:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:51:33 IVK7hRFT
言葉を掛けられながら肩を揺らされたとなれば、流石の酔っ払いも目を覚ますだろう。
しかしはそれも『目を覚ます』というだけの事。
「むぐぅ……誰やぁ~こんな朝っぱらから会議をセッティングしたのわぁ!」
「昨晩、やる気満々でセッティングしたのは……アナタです」
現在進行形で寝ぼけている。勢いよく上げられた頭、薄っすらと開いた瞳は何時も以上に濁っていた。
不意にガバッと上げられた頭を含め、八神はやての全てが停止する。何事か?と少女が首を傾げれば……
「…頭が痛いんよ…」
「水でも飲んでください」
「連れてって」
省略しまくっているが、その言葉の言わんとするところは『水を飲むので飲む事が出来る場所まで連れて行け』と言う意味だ。
『はやてよりも小柄な少女がそんな事を出来るはずが無い』
それが普通の人々が普通の人間に抱く感想。
「しょうがないですね……うっ!」
だが少女は容易くはやてを持ち上げたのだ。所謂お姫様抱っこ……から誠意を抜いたような形で。
そして近づいてみれば他人様よりも利く彼女の鼻は、猛烈なアルコール臭に顔を顰めた。
そこでふと考える。
『コイツをこのまま会議に出していいものか?』と。本人は全く気にしないだろう。
他の会議のメンツも『本気になれば次元航行艦とタイマンを張る』と恐れられる特務監査部主任に文句を言うまい。
だけど……私は気になる。しばらく会っていないルームメイトからも、『面倒見が良い』と評される性格のおかげだろう。
連れて行く先は決まった。
「ほわぁ? お風呂やん」
「シャワーを浴びてきてください。薬と水を用意しておきますから」
大きな欠伸をしながら首を傾げるはやてを、テキトウな感じで下ろして少女は言う。
「ほんまに甲斐甲斐しい娘やな~トリエラは。よ~し、私のお嫁さんになるんよ」
「ヒルシャーさんを見つけて許可を取ってくださいね」
背後から聞こえる脱衣の音、ソレに続くシャワーの水音を聞きながら少女 トリエラは会議が開かれる場所を思い返す。
どうして自分が……『武器』でしかないはずの自分がこんな事をしているのだろう……と。
それでもやっぱりトリエラはそういう人なのだ。会議がある部屋を思い返して呟く。
「主任は遅れますって……謝っておかないと」
『血の特務監査部』とか『虐殺部隊』と恐れられる部署の構成メンバーが送る平和な朝。
28:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:53:43 IVK7hRFT
ゲンヤ・ナカジマは忙しい人物である。どれくらい忙しいかと言えば、クラナガン1忙しいだろう。
なぜならクラナガンの治安など多岐に渡る分野を統括する、時空管理局地上本部の実質的なトップに彼は居るのだから。
「この件についてだが管轄区域の再配分も踏まえて……」
そんな言葉で始まった会議は数分のインターバルを挟みながら、何度も名前を変えて継続されること数回。
JS事件により露見した陸と海の様々な格差を是正するという名目で、この地位に着かされたゲンヤには仕事と敵が多い。
ある意味海と陸の両方から睨まれていると言って良いだろう。
どちらにもコネクションを持つと言うのは、どちらにも気を使わなければ成らないと言うこと。
「だが海の連中はこのプランじゃ呑まねえぞ?」
「しかしそれでは根本的な改善の……」
一つの案件でもお互いの利益が錯綜する場合、海と陸ではどうしても隔たりが出来てしまうもの。
片方だけ突っぱねるような事は出来ない以上、どちらにも配慮と譲歩をした案で通すしかない。
ゲンヤはその調整役兼……いざと言う時の生贄。責任を取って辞めて貰うために責任者は存在するのだから。
「もうこんな時間か……」
会議を終えた後、淡々とデスクワークを積み上げていたゲンヤは、すっかり冷め切ったコーヒーを口に含みながら呟いた。
大きな窓から一望できるクラナガンの町並みは世闇に染まり、人工的な地上の星が輝き出す。
そんな光景を見下ろすこの場所を揶揄する言葉に『王の椅子』と言うものがあった。
これは以前この場所で強権的に地上の治安を守ってきた人物 レジアス・ゲイズ元中将に対する皮肉なのだろう。
だがこの部屋の主になってしまったゲンヤには、そんな皮肉が全く的外れなものである事は直ぐに解った。
「アンタはすげえや……レジアス中将」
座ったからこそ解る王の椅子の重さ。優秀な人材は海から引き抜かれ、限られた戦力でこんなに広いクラナガンを守ると言う事。
それがどれだけ大変な事か、見ているだけだった者たちにはきっと解らない。
「俺なんてもう挫けそうだってのに……ここをずっと一人で」
確かにゲンヤが着任してからは管理局全体が忙しい時期だ。レジアスよりも一日の仕事量は多いのかもしれない。
だが彼が感服するのはその期間の長さ。今は陸と海の戦力差見直しが表向きとは言え進んでいる。
つまりこの忙しさやプレッシャーも何れは改善するだろう。だがレジアスの時はそうではなかった。
もちろん改善要求や予算編成は提出したのだろう。しかしそれも却下され続けたのだから、先の改善など見込めない。
それでも長い期間、地上の平和を守り続けてきた。その果てに辿り着いてしまったのが、戦闘機人計画だったのだろう。
29:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:55:28 IVK7hRFT
「そう言えばギンガはダウンしてねえかな?」
仕事の忙しさが『公』の問題だとしたら、愛しい娘の心配が『私』の問題。
発端は血のアフター5と呼ばれる無差別テロ事件。彼の娘 ギンガはその事件に偶然居合わせて、犯人達と交戦・負傷したのだ。
だが問題はその後だろう。負傷は彼女の特殊な事情を考慮し、もぎ取った技術権限で速やかに治療できた。
その後に開かれた状況説明会と言う名の取調べも、大きな負担にはなっただろう。
「しっかし運が良いんだか悪いんだか……」
問題はゲンヤの裏の行為が全くの偶然で露見してしまった事。
確かに子飼いの殺し屋を諜報員として、娘に紹介するゲンヤも問題だといえばその通り。
しかし親密な関係になったギンガと殺し屋がデート?何ぞしていたからこそ、ゲンヤは娘を失わずに済んだし、テロも早期に解決できた。
だが残念な事に殺し屋はやっぱり殺し屋であり、管理局員の目を考慮してターゲットを生かして捕まえる……何て事は選択しなかったのだ。
迅速かつ確実、永続的に対象を無力化する方法は何だろうか? 答えは簡単『殺す』こと。
本人の報告と全てが終わってから突入した陸士部隊、どちらからもその成果の報告は受けている。
犯人グループは鮮やかな手際で皆殺しだったらしい。つまりギンガもその惨状を目撃してしまった。
『父親に雇っていると紹介された人物が、テロリストとは言え容易く人を殺した』
そんな事実から一端の捜査官であるギンガならば辿り着ける推測は……
『父親は殺し屋を雇い、暗殺を行っている』というものだろう。殺し屋から事の顛末を聞いてから、ゲンヤは彼女に会っていない。
心配じゃないといえば嘘になるが、それよりも会って問い詰められる事が父親的には恐ろしい。
「必要なこと何だがな……おっと噂をすれば……」
据えつけられ通信端末が電子音を立ててチカチカと明滅。ディスプレイに並ぶ文字が示すのは秘密回線だと言うこと。
つまり公に連絡をとる事が出来ない相手。
「俺だ。トラブルか?」
「いや、仕事は滞りなく終わったんだけど……」
名前を出すことも無い会話だが、ゲンヤは訝しげに首を傾げた。
有能な殺し屋、人間味に些か欠ける樫の木で出来た人形、ピノッキオが言い難そうにするとは……
「電話を貰ったんだ……ギンガさんから」
その言葉にゲンヤが慌てる事に成る。
「これから会わないか?って言われけど、明確な返答はしていない。場所と時間を言われただけ。
僕は……行くべきかな? 雇い主と父親の意見を聞きたい」
普通に考えれば行くべきではない。だがそれは地上本部を纏める者としての言葉。
思い出すのはピノッキオの話をしているときの娘の顔。父親、ゲンヤ・ナカジマとしては、こう言わざるえない。
「勝手にしろい」
30:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:56:46 IVK7hRFT
ギンガ曰く『デートの続き』である本日の予定はディナーから始まる。
場所はあの日の予定通り、ショッピングモール最上階に設けられたレストラン。
事件が直接的に起こったフロアは閉鎖されたままだが、他の階は元気に営業している事から、商売人の心意気を感じる。
値段もソコソコするが、味も良い。オシャレでありながら、堅苦しさを感じさせない。そんな何処にでもあるお店だった。
「やぁ」
「来てくれたんだ」
先に予約したテーブルについていたギンガは、あの日と同じく若干遅れてやってきたくすんだ金髪の青年 ピノッキオを迎える。
その顔は決して喜びだけで輝いては居らず、不安を筆頭にした不の感情がチラホラと顔を覗かせる。
そんな彼女の様子を気にした風もなく、前回と同じサングラスを外しながらピノッキオは席に着く。
だが一つだけ違うところがある。それは……
「その服……」
「ん? あぁ、この前に買ってもらった服だよ」
ヨレヨレのモノではなく、真新しいノリが効いてパリッとしたジャケット。
適度に着崩しているがソレを下品と感じさせない着こなし。どれ今までのピノッキオではありえないことだ。
「着てくれてるのね?」
「服だからね。着なきゃ意味が無い」
「……」
そういう事ではない! アナタが着てくれたからこそ嬉しいと思うのだ!!……なんて考えが通じる相手ではない。
ふとギンガは思い出してしまう。電話越しにした質問。それに重ねて自分の選んだ服を着ている事で生まれる複雑な感情。
「お仕事……してきたの? その服で?」
「いや、仕事をする時はバリアジャケット。処理が楽なんだ、血とか」
適度に落とされた照明の店内には落ち着いたBGMが流れ、会話が他に届くことはない。
しかし簡単に出てくる「血」と言う単語がピノッキオの感性や仕事柄に再認識させていた。
「……そう」
意識すると目の前の人物 好意さえ抱いていたはずの青年ですら、酷く恐ろしいものだとギンガは感じてしまう。
呆然と見ていることしか出来なかった鮮やかな手捌き。料理をするかのような手軽さ、職人のような正確性で命を奪う。
ここは既にピノッキオの間合いだ。背筋を駆け抜ける寒気。ギンガは待機状態のブリッツキャリバーを握り締めた。
31:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:58:28 IVK7hRFT
しかし緊張の相手が口にするのは意外な言葉。何時ものやる気の無い表情にわずかに見える安堵の色。
「良かった」
「え?」
運ばれてきた前菜を落ち着いた動作で口に運びながら、ピノッキオが呟いたのはそんな言葉。
「本当に元気みたいで……反応も早いしね」
「っ!?」
ギンガはドキンと心臓が高鳴り、加減を失った手からブリッツキャリバーが滑り落ちそうになる。
慌ててキャッチすれば体が動き、椅子とテーブルの上に食器がカシャリと音を立てた。
周りから集まる視線にカッと赤くなる顔。その様子にもフォークの動きを止めない相席者。
「不意討ちの時に闘志や殺気を表に出しちゃダメだ」
「精進します……」
ちょっとムスッとした顔のまま、ギンガは料理に手をつけた。そこからは何時も通りの二人。
決して弾むような会話では無いが確かに紡がれる優しい空気。ギンガの言葉にピノッキオも端的ながら答えていく。
そんな時間だからこそ本当の問題が忘れられてしまうそうで……だけどしっかりと諍いの種は残っていた。
「貴方にとって人殺しってどういうこと?」
運ばれてきたメインディッシュ 若鶏のソテーを前にして、今までの会話と変わらない口調でギンガは聞いた。
『人殺しはダメ!』と言う解り易い意見をギンガは持っているが、それを直ぐ口にするような事はしない。
それを言ってしまえば意見が一切噛み合う事無く、喧嘩別れになるビジョンが簡単に予測できたからだ。
「普通な事かな……」
『例えば』と前置きをして、ピノッキオはナイフとフォークを手に取る。
まずはフォークがソテーに突き刺さり、ソレを支点にして固定する事で安定。
続けてナイフを当てて前後の動かす事で鶏肉を食べるのに適した大きさにする。
この一連のアクションは錬度により美しさなどの差があるとはいえ、誰もが自然に行える行動だろう。
「若鶏のソテーを出されたら、フォークで押さえてナイフで小さく切る位に」
斬るならば最良の場所は首の動脈。突くのならば体の中心よりも若干左の心臓。
そうすれば人の命を簡単に奪う事が出来ると言う事を、本当に当たり前のように考えているし、簡単に実行する事ができた。
32:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 20:59:28 IVK7hRFT
「ギンガさんはどう?」
「え?」
「人殺しをするってどう言う事?」
ギンガは驚く。それは実に珍しい事。このディナーの中だけでも、ピノッキオが鸚鵡返しとは言え質問を返してきた事は無かったから。
相手から聞かれたのならば、感じるままに思いをぶつけても大丈夫だろう。
そんな計算に裏打ちされて、彼女は思い切って真意を告げた。
「いけない事だと思うわ。人の命を奪うっていう事は……罪よ」
そんな回答にも、自分の答えを否定される形になったピノッキオは動じない。
それどころか満足そうに頷き、彼にしては珍しく饒舌に続けて二つの目の質問。
「言うまでもないと思うけど、僕とギンガさんの間には大きな意識の違いがある。
でも……ギンガさんが僕と同じような場所に居たら、きっと違いは生まれない」
「どうして?」
「人格や意識はどうやって作られると思う?……環境だよ。
僕の生きて来た場所はそれこそ……『鶏肉のソテーをナイフで切るように人が死ぬ』ような場所だった」
ピノッキオは自身の生まれを知らない。ただ色々あってギャングだかマフィアの商品になっていたような気がする。
そんな暗い穴倉から連れ出してくれた人物もやはりソチラらの人であり、役に立つ方法を考えれば……人殺しは最良の手段だった。
「本当に簡単に死ぬんだ……僕の師匠も抗争先で銃弾を受けて、あっけなく死んだ。
おじさんだって、何時死んでしまうか解らない。ライバルのファミリーや警察、下手を打てば仲間にだって殺される。
少しでもおじさんに降りかかる危険を払う。それが僕の恩返しだった」
会ってから初めて、これほど饒舌に語るピノッキオを目撃したギンガは、その驚きとは違う驚愕が体を駆け巡っていた。
命を奪う事自体を忌避してきたが、その理由が恩人に対する恩返し。確かに自分から話すような事ではないにせよ……
「じゃあ私も! そんな場所に居たら……人を殺すようになる?」
「僕が言ったのはそんな場所での常識だけ。殺すかどうか自分が決める」
確かにピノッキオが言ったのは『環境によっては人殺しが大した意味を成さなくなる』と言う事だけ。
それだけではピノッキオが人を殺す直接的な理由にはならない。しかし彼は既に口にしているのだ。
『恩返しの為に……』と。
33:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 21:00:41 IVK7hRFT
「僕は人殺しが好きなわけじゃない」
ピノッキオが殺すのは何時だって他人の為。命の恩人であるクリスティアーノ為であり、今は次元遭難者である彼を拾ったゲンヤの為。
「それが大事な人の為に有効な方法だから殺すんだ」
その言葉でギンガはふと思い出す。自分がピノッキオの真実を知り、恐怖して軽蔑とも取れる感情を抱いた事件。
そうだ……あの時だって。
「私のために……殺したの?」
テロ事件が起きた時、ピノッキオは何もアクションを見せなかった。鎮圧するような動きすらしなかった。
つまりその時点では彼がテロリストを殺す理由は存在しない。殺した理由はギンガを危険にあっており、殺される事も考えられたからだ。
命が軽い物と知っているから、下手に危険に飛び出すようなマネはしない。
しかし大事な人の命の軽さも知っているから、そのためなら命を危険に晒すし、人も殺せた。
「どうかな? 僕は人を殺す悪い奴だからね、全部信じない方がいいかもしれない」
グラスに注がれていたワインを飲み干して、ピノッキオは立ち上がる。
未だに状況を整理できていないギンガは下を向いたまま。その場を離れる間際に彼女の耳元で小さく、しかしはっきりと呟いた。
「でも……父親くらいは信じてあげたら? そうとう参ってるよ、ゲンヤさん」
去り際に残すのはそんな言葉。解っていたんだ!とギンガは内心で叫ぶ。
ゲンヤが暗殺なんて依頼する理由くらい! 解っていたんだ! あの人は何時だって……私やスバルの為に……
「感謝するべきだ。人の命が重い物だって……認識させてくれた環境と、それを作ったあの人に。
それじゃ……」
それだけ言って去っていこうとする背中。それを見送りそうになって……ギンガは急に腹を立てている自分に気がつく。
口にするのは他人の事ばかりで自分を全然省みない大バカ野郎。
何時だって興味の無いように目をしているくせに、お父さんの心配までして……
「待って!」
他人の好奇の目など関係ない。ギンガは立ち上がり、去ろうとしていたピノッキオの肩を掴んだ。
意外そうに振り向いた顔に張り手を一つ。それでも揺るがない顔に更に腹が立ち……強く抱きしめて……
「貴方は……もう少し自分を大事にするべきだわ。お父さんの心配をするより……」
「僕は孝行息子だから」
「バカ」
ギンガはピノッキオを抱き締めて……キスをしていた。そこから先の事を彼女はあまり良く覚えていない。
翌朝 着替えもせずに寝ていたベッドの上で、彼女が最初に思い出したのは……ファーストキスはタバコとワインの味だったこと
34:魔法殺し屋☆ピノッキオ(代理)
08/09/15 21:02:24 IVK7hRFT
と言う事で、魔法殺し屋の最新話をお送りしました。
魔法も殺しも無い平和なお話でしたねw
ギンガとピノッキオの会話が長くなって微妙だな~といまさら思う。
う~む、精進が必要だな……それではまた~
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以上で代理投下終了いたします。
ギン姉ったらだいた~ん
35:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 21:30:17 XjOFS/Lr
先ほどは曖昧で申し訳ありません。
ちゃんと書き上がっていますので、22時50分に投下させていただきます。
36:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 21:35:06 lmIT/UfY
GJ!
ゲンヤも苦労してるなあ、中将みたいに心臓悪くなっちゃいそう。
37:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 21:40:35 AnGvnzCf
GJでした!
実際レジアスは大変だっただろうな。
決して勝つ事のできない戦いを頑張ってたんだから。
光が見えない暗闇だ。
それでも投げ出さなかったんだから、
強い人だったと思う。
38:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 22:04:19 C5Nj+54x
乙っす。
それにしても、はやても凄いのう。
トリエラもペースに巻き込まれているようだ。
39:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 22:12:33 iqVXGQp5
初めて~のチュウ~♪ 君とチュウ~♪
いやぁ、なんかキテレツやゼロ魔の歌を思い出してしまったよ。
ってか、まさかギンガからするとは思わなかった。
寝ぼけはやてと良い、バトルはないけど良い感じに萌えました、GJです!
40:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:50:44 XjOFS/Lr
それでは、時間になりましたので投下します。
41:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:52:03 XjOFS/Lr
機動六課壊滅。
その事実を真っ先に受け入れたのは、フェイト・T・ハラオウンだった。なの
はと共に帰還した彼女は、市街の有様と六課の惨状に動揺はしたものの、激し
く取り乱すような醜態は見せず、隊長として自己を保ち、現場の指揮を執り始
めた。
スターズ分隊のヴィータ副隊長も、新人達三人を引き連れすぐに帰還した。
地上本部周辺にてガジェット部隊と奮戦を繰り広げていた彼女らであるが、突
如として敵が撤退を開始したことで通信機能が復活し、そこでヴィータらは初
めて市街のみならず六課までもが襲撃を受けていたことを知ることになる。
帰り着いた六課の隊舎は、一部を残して崩壊していた。
遅れて帰還した機動六課総隊長八神はやては、残骸と化したその姿に、思わ
ず地べたに膝をつき、シグナムに支えられなければ立つことさえ出来なかった。
「シャマルは……ザフィーラはどうした!」
二人の反応が途絶えていることを危惧したはやては叫んだが、前者は司令室
があったと思われる瓦礫の下から発見された。
シャマルはクラールヴィントによる結界で司令室にいた隊員達を守り抜き、
司令部の人的被害は最小限に抑えられた。だが、彼女に守れたのはそこまでだ
った。多くの隊員が傷つき、倒れていった。ザフィーラも、それに含まれる。
彼は、隊舎にある非常用シェルターの付近に倒れていた。いつもの獣の姿では
なく、人の姿を取り……敵と戦ったのだろう、腹を貫かれて意識を失っていた。
生きてはいたが、いつ死んでもおかしくはない状態だ。
病院送りとなったザフィーラや、運び出される負傷者、死傷者を見ながら、
はやては一言も口を発しなかった。
彼らとは逆に、奇跡的に軽傷で済んだ者もいる。医務室にて拘束中であった
セインである。彼女の脱走を防ぐために結界が張られていた室内であるが、崩
壊による衝撃でそれが解かれ、セインは間一髪能力を発動して脱出することが
出来た。しかし、逃げ出す気はなかったらしく、襲撃に現れたルーテシアやナ
ンバーズとは合流を避け、騒動が終わった後に戻ってきた。フェイトは意外に
思ったが、セインとしては自分が捕らえられている場所にかつての仲間が襲撃
してきたわけで、自分ごと隊舎を破壊しに掛かった仲間に対しての不信感が強
まったのである。
負傷者と死傷者は、ともに二桁の数に上る中、行方不明者も存在した。
それは誰か? 確認したフェイトは、思わず息を呑んだ。そして、傍らに立
っている親友の顔を見る。
「なのは……」
戦場で一度も怯えを見せたことのない親友の表情が、恐怖で凍り付いていた。
ヴィヴィオが、敵によって攫われたのだ。
第15話「悪夢を映す鏡」
42:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:53:20 XjOFS/Lr
ゼロが発見、いや、救助されたのは襲撃から一夜明けた昼過ぎだった。崩れ
落ちたビル、その瓦礫の下から助け出されたのだ。彼までもが敗北したという
事実は、六課全体に強い衝撃を与えた。損傷自体はそれほどではなかったのだ
が、生き埋めとなって救助されるまで身動きが取れなかったらしい。
六課へと戻ったゼロは、見るも無惨な隊舎の姿を見た。しかし、無口で無表
情は変わらず、フェイトに状況を確認したときも極めて冷静であった。
「負傷者、死傷者が多すぎる。行方不明者は、一人減ったけど」
全部で三人いた行方不明者、その内一人はゼロであったが、彼はこうして発
見されて帰還することが出来た。次にヴィヴィオだが、敵がヴィヴィオを攫っ
ていったことを、ザフィーラが消えゆく意識の中に止めていたので、生死はと
もかく敵の手の中にいることは間違いない。
そして、最後の行方不明者は……
「シャマルの話では、ギンガは敵の戦闘機人、つまりナンバーズ二人と戦闘中
だったらしい」
戦闘記録も残っていたのだが、隊長及び副隊長以外は見ることを禁じられた。
だが、これは妹であるスバルにとって、あまりに凄惨な映像だったからと判断
された故だ。
ギンガは壮絶な戦闘の結果、左腕を切断され、敵に捕らわれてしまった。
ゼロは、ギンガと別れたときのことを思いだした。自分が出撃し、彼女が六
課に残った。彼女は妹を頼むと自分に言って、だが、自分はそれを果たすこと
も、彼女を守ることも出来なかった。
「もっと早く、敵の狙いに気付くべきだった」
スカリエッティは、ゼロと、そしてその背後にある機動六課とゲームをして
いた。つまり彼が狙うのは、あくまでゼロと六課だったのだ。市街地への攻撃
も、地上本部の封じ込めも、ナンバーズ移送計画を邪魔したことも、全部陽動。
機動六課の壊滅、スカリエッティの狙いは初めからそれだけだった。考えて
みれば、セインもろともゼロを殺そうとした男が、積極的にナンバーズの奪還
をしてくるわけがなかったのだ。
ゼロとフェイトの視線に、なのはが写った。焼けて、ボロボロになった人形
をその手に持っている。彼女は虚脱したように、暗い表情をしていた。
そんな姿を見て、なんて声を掛けてやればいいのか、フェイトには思いつか
なかった。どんな言葉も、気安めにすらなりはしないと判っていたから。
「……ゼロ」
声は、ゼロとフェイトの背後からした。振り返ると、そこにはやてがいた。
顔を伏せ、表情を見せようとしないが、声は酷く冷たくなっていた。
「はやて、何か用―!?」
ゼロに代わって声を掛けたフェイトの前で、はやてはデバイスを起動、その
先端をゼロに突き付けた。魔力が解放され、辺りにいた隊員達がすぐに異常に
気付いた。リミッターを施されているはずのはやての魔力であるが、それを感
じさせない力が周囲に波動を伝えていた。
「なんで……守ってくれなかった」
顔を上げたはやてに、フェイトは息を呑んだ。怒りに満ちた瞳と、その瞳か
ら流れる涙。刃物よりも鋭い視線で、ゼロを睨んでいる。
43:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:54:21 XjOFS/Lr
「何で守ってくれなかった!」
怒りで爆発する魔力の波動からゼロを守るため、フェイトが防御魔法を張っ
た。だが、防ぎきるには至らずゼロ共々吹き飛ばされた。
「痛っ―なんて、力」
フェイトが唖然としながらはやてを見るが、既に守護騎士達によって取り押
さえられていた。それでも気持ちが収まらないのか、はやては泣き叫んでいた。
その姿を、悲しそうにリインが見つめていた。
「はやてちゃん……」
誰もが今、はじめてしまった。はやての弱さと、そして―
はやてが一番、ゼロの力に期待をしていたという事実に。
機動六課を壊滅させたスカリエッティ一味であるが、大勝利という美酒に酔
ってなどはいなかった。それどころか、今回の戦果に対してノーヴェが不満を
訴えていたのだ。
「あれだけのガジェットを投入して、みんなで戦った結果が旧式のタイプゼロ
とガキ一人だと!? 納得できるか!」
言葉は汚いが、無理からぬことだ。確かに六課の隊舎を崩壊させはしたが、
隊長や隊員達は健在であり、ゼストによって撃破されたゼロも救助され、健在
だという。壮大な作戦が成功したのは事実だが、隊舎を破壊したという以外に
目立った戦果がないのだ。
しかも、敵の首を幾つか持って帰ってきたというならまだしも、トーレとセ
ッテが連れてきたのは片腕をもがれた古くさい戦闘機人、ルーテシアが持って
帰ってきたのは彼女よりも小さい幼女だ。捕らわれたナンバーズの奪還を諦め
てまで行った作戦なのに、この程度でしかないのか。
「口を慎め、ノーヴェ。ドクターのことだ、考え合ってのことに違いない」
トーレはこのように言うが、彼女自身なにか確信や根拠があるわけではない。
単に忠誠心からドクターの擁護をしているだけである。
不満をくすぶらせるノーヴェだが、ドクターは壊れたタイプゼロを見ると愉
快そうに笑いながら研究室に閉じこもり、それきり出てこなくなった。ウーノ
ですら入室を禁じられてるといい、一体中で何をやっているのか。不満をぶつ
ける相手が居らず、ノーヴェの苛々は溜まるばかりだった。
一方、幼女ヴィヴィオのほうであるが、スカリエッティは彼女をすぐにどう
こうするつもりはないらしく、クアットロに「丁重に扱ってくれ、ただ、すぐ
に目を覚ますこともないように」と注文を加えていた。子供のお守りなど趣味
ではない、とクアットロは呟き、如何にも面倒くさそうにしていたので、ディ
エチが代わって役目を果たしていた。
それから、丸一日が経過した。研究室から一向に出ようとしないスカリエッ
ティに痺れを切らしたノーヴェが、扉をぶち破ってでも引きずり出そうかと考
え始めていたとき、スカリエッティは一日ぶりに彼女らの前に現れた。
「みんな、揃ってるかね?」
いつになく嬉しそうな表情で、スカリエッティは笑っていた。その笑顔を見
て、何故かノーヴェは怒りが冷めていくのを感じた。ヘラヘラしやがって、と
思うはずが、玩具を買い与えられた子供のような無邪気さに、何も言えなくな
ってしまったのだ。
44:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 22:54:58 r9gN96Fj
支援
45:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:55:34 XjOFS/Lr
「さて……何から話そうか?」
ノーヴェのほうを見て軽く笑いながら、スカリエッティは口を開いた。達成
感、とでもいうべき表情を浮かべ、ナンバーズの姉妹らを見回している。
「あのガキ、あいつは一体なんなんだ!」
口火を切ったのはノーヴェであるが、実は全員が同じことを考えていた。タ
イプゼロを回収した理由はまだ判るが、あの幼女は一体なんなのか。ただ一人、
クアットロだけは不敵な笑みを浮かべている。
「ガキとはまた恐れ多いことを。彼女こそ、我々が探し求めていた王様だよ」
言葉に、衝撃が走った。
王、スカリエッティは今、王と言ったか?
「あれがアタシたちの……王様?」
ポカンとして、ノーヴェが尋ね返した。
あんな自分が軽く小突いただけで死んでしまいそうな子供が、王だというの
か。信じられないが、ドクターが嘘を言うはずはないし、その理由もない。
「見た目で判断してはいけないよ、ノーヴェ。君が敬愛していたチンクだって、
君より幼い姿をしているが、君より強かっただろう?」
この例えは、ノーヴェを納得させるに効果的だったらしい。そういわれてみ
ると、それもそうだと思った。
「では、我々が回収してきたタイプゼロは?」
トーレの質問に、スカリエッティは一段と笑みを強めた。
「トーレ、それにセッテ……君たちは素晴らしい功績を挙げてくれた。無論、
ルーテシアも同等の働きをしてくれたが、セッテなどは初戦闘にもかかわらず
良くやってくれた」
「いえ、それほどでもありません」
謙遜するセッテであるが、これは本心である。
「王を手に入れた我々の計画は、更なる段階へと進む。このゲームの勝者は、
決まったようなものだ」
自信を見せるスカリエッティに対し、ナンバーズらは半信半疑だった。確か
に人は見た目ではないとは思うが、ヴィヴィオはどこからどう見ても無力な幼
女にしか見えない。
「更なる段階って、具体的にはどんなことするの~?」
クアットロが尋ねるが、スカリエッティは即答をしなかった。
「その前に、君たちに紹介しおこうか……さぁ、こちらへ」
驚愕による動揺が、辺り一面に広がった。
トーレが愕然としながら、何とか口を開いた。
「お前は……お前は……!?」
襲撃事件から三日、負傷者の救助と死傷者の運び出しが終了した起動六課隊
舎では、瓦礫の撤去がはじまりつつあった。相変わらず指揮を執っているのは
フェイトだが、ティアナも彼女の補佐に付いた。
「スバルの側に、居てあげなくて良いの?」
その問いに、ティアナは小さく首を振った。なのはと同じく、スバルもまた
虚脱していた。キャロを側に付けているが、自分は痛ましくて見ていられなか
った。フェイトがなのはに声を掛けられなかったように、ティアナも友人に声
を掛けられなかったのだ。
戦い終わって、犠牲はとても大きいものだった。ナンバーズらは大した戦果
ではなかったと思っているが、六課が負った傷は想像以上に酷い。
46:ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:56:44 XjOFS/Lr
「まさか、ザフィーラがやられるとはな……」
崩れた隊舎内を見て回りながら、ヴィータが静かに呟いた。鉄壁の守護獣で
あった彼がやられたという話し、俄に信じることが出来なかったヴィータだが、
事実は事実だ。
敵はそれほどまでに強いのか、それとも―
「我々も、ただのプログラムでは居られなくなっていると言うことだろう」
ヴィータの呟きに、シグナムが真剣な声と表情で返した。
「……どういう意味だよ」
「お前も気付いているはずだ。我らが、この十年で守護騎士というプログラム
から変化しつつあることに」
シャマルと、ザフィーラがやられた際、シグナムとヴィータはそれをすぐに
察知することが出来なかった。以前までなら、騎士間におけるリンクシステム
によってすぐにでも気付けたはずなのに。
「ザフィーラの容態は、重い。だが、あの程度の傷もかつては無限再生能力で
回復できたはずだ」
それが今では、普通の人間や動物と大差ない回復速度にまで落ち込んでいる。
恐らく、自分たち守護騎士が人間という存在に近づきつつある影響なのだろう。
「でも、だからってあいつが負けるなんて!」
「……ザフィーラは前線に立つ機会が、減っていた」
「それは、だけど修練や鍛錬をかかしちゃいなかった!」
どちらも事実であるが、ヴィータは否定をしたかっただけかも知れない。
「ヴィータ、お前はこの十年で、自分が強くなったと思うか?」
「えっ?」
「いいから、どうなんだ」
言われて、ヴィータは考えた。十年一昔と言うだけ合って、十年間は長いと
思う。自分は容姿こそ変わらないが、はやてやなのはは普通に成長し、時の流
れを感じさせる。そして、彼女らと歩んできた十年、自分は確かに強くなった
と確信が持てる。
「私も、自分は強くなったと思う。だが、強くなることがあるのなら、その逆
もまた然り……衰えること、弱くなることだってあり得るんだ」
プログラムであったときは、一定の強さというものが常に約束されていた。
しかし、その全体が崩れたことによって、『一度の生』という確かな命を手に
入れたが故に、守護騎士は人と同じ制約を受け始めたのだ。
「無論、ザフィーラが弱かったとは思わん。だが、今まで不老不死、無限に再
生を続けてきた我らだ、いきなり生命という名の制約を抱いてしまい、キレが
鈍ったと言われても、否定は出来ない」
以前ならば、どうせ再生されるのだからと、かなり無茶な行動や攻撃、戦闘
を繰り広げることが出来た。だが、これからは必ずしもそうではないと、シグ
ナムは心を戒めざるを得なかった。
47:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:57:58 XjOFS/Lr
なのはは、所在なさげに隊舎近くの森の中、木の幹に身体を預けてへたり込
んでいた。木漏れ日が暖かな光りと空気を伝えるが、なのはには心地よくも何
ともなかった。
「ヴィヴィオ……」
人形を、力を込めると崩れてしまいそうな人形を持ちながら、なのはは呟い
た。
「ここにいたか」
そんな彼女の前に、ゼロが現れた。
なのはは、はやてと違い、ゼロを詰ることはしなかった。全ては自分の至ら
なさから来たと、悔やみ続けていたのだ。はやてとて、やり場のない気持ちを
ゼロにぶつけたに過ぎないのだが、なのははヴィヴィオの安否を気遣うことが
優先的でゼロになど気が回っていなかった。
「……何?」
惚けた声で、なのはが尋ねた。精神の抜け落ちたような、姿だった。
「お前を呼んでこいと言われた」
「フェイトちゃんに?」
頷くゼロに、なのははため息を付いて起ち上がった。
自分は魔導師であり、六課の隊長だ。いつまでも、こんなことはしていられ
ない。判っている、判っているのだが……
「ヴィヴィオ、大丈夫かな」
その問いは、その場にいるがゼロに向けられたものではない。彼にしたとこ
ろで、答えられるわけもない問いだ。
「敵は目的があって攫ったんだろう。必要ないなら、他の隊員のようになって
いたはずだ」
率直な意見を告げるゼロだが、そんなことはなのはも理解している。
「あの子がレリック持っていたときから、スカリエッティとの繋がりは考えて
いた。だけど、私はそれを調べることを怠っていた」
拳を握りしめ、歯を食いしばる。悔しさと涙を、必死で堪えようとして、
出来ることもなく泣き出した。
「私はいつもそうだ! 依存して、甘えて、縋り付くことしかしない。ヴィヴ
ィオは確かに私を求めてくれた、だけど……私もあの子を必要としていた!」
心の支えか、精神安定のためか、なのははヴィヴィオを、自分でも驚くほど
大切な存在にしていたのだ。
居なくなってみて、初めてそれに気付いたが。
「母親に……ママになってあげるべきだった。ちゃんとあの子のママに、私は
なるべきだったんだ。なのに、私は!」
悔やんでも悔やみきれず、血が出るのではないかと思うほどの強さで、なの
はは唇を噛んだ。
ゼロは、そんな彼女に背を向けて、呟いた。
「悔しいなら、行動をしろ」
なのはが、顔を上げた。
「悔しいんだろう、心配なんだろう、なら、取りかえして見せろ」
ハッと、なのはは驚いたものを見るかのように、ゼロを見ている。
そう、悔やんで、落ち込むことなら、誰にだって出来る。
「……勿論、当たり前だよ!」
48:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 22:59:11 XjOFS/Lr
八神はやてに対する周囲の視線は冷めつつあった。原因は、言うまでもなく
ゼロへの暴言と、醜態を晒したことにある。忠実であった守護騎士でさえも、
しばらくはそっとしておくべきだろうという判断の下、距離を置くようになっ
てしまった。
ただ、はやての気持ちもわからないではない。特にリインは、その心情を深
く理解していたようで、周囲にはやてを責めないようにお願いして回っていた。
機動六課、はやての夢。理想の舞台。
それが音を立てて崩れたのだ。
しかも、はやては最近になってやっとゼロのことを認めるようになってきた。
前向きに、強い味方であると期待を寄せるようになったのだ。
その矢先の、この事件。はやてが期待した強いはずのゼロは、敵の騎士に敗
北してビルの下に埋もれ、そうしている間に六課は壊滅。期待はずれも甚だし
いではないか。
八つ当たりだと言うことは、判っている。だが、シャマルが負傷し、ザフィ
ーラが病院送りとなった現状に、行き場のない気持ちをぶつける相手がはやて
には必要だったのだ。
「まだや……機動六課は、まだおわらへん」
崩壊した隊舎で、何故か崩れ落ちずに残った執務室に、はやてはいた。
自分の暴挙を反省こそしなかったが、ゼロには謝るべきだと思っている。思
ってはいるが、ああいう行動をしてしまった今、どう謝罪していいのかが判ら
ない。
はやては、不器用だった。
執務室の椅子に座りながら、はやては積もった瓦礫の一部を払いのけた。引
き出しを開け、紙とペンを用意する。
報告書作りである。魔法関係の機器は全て壊れてしまい、使用不能だ。前時
代的だが、紙に書くしかない。
「全て、私の責任……か」
認めたくないが、自分の判断ミスだ。
なのはやフェイトなど、各々が自己を反省しているようだが、六課の総隊長
は自分なのだ。自分が責任を取って、ケジメをつけなくてはいけない。
「師匠にも、顔向けできないな」
ギンガの父、ゲンヤ・ナカジマはかつての上官である。師匠と呼んでいるが、
彼に頼み込んでギンガを引き抜いたのは他でもない、はやて自身だ。今のとこ
ろ、何の連絡もないが、責任を感じざるを得ない。
「これから、どうするか」
先ほども言ったが、このまま終わるつもりはない。
隊舎はなくなった。犠牲者も多く出た。だが、それで諦めてどうする。やら
れたなら、やり返せばいいのだ。
49:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 23:00:14 XjOFS/Lr
「見てろ……スカリエッティ」
気合いを入れ直し、はやてはペンを握って報告書を書き始めた。持ち直しも
一番早いのが彼女の取り柄だろう。
この報告書を提出すれば、自分は処分を受けるだろう。降格か、解任か、い
ずれにせよ、この事件からは外される可能性がある。
だが、それは杞憂に終わった。何故なら、はやては―
「たい…ちょう……」
聞き違えかと、思った。
聞こえるはずのない声が、はやての耳に響いた。はやてはペンを取り落とし、
ゆっくりと顔を上げた。
「ギン、ガ―?」
攫われたはずの、戦闘に敗北し、捕まったはずのギンガがそこに居た。ボロ
ボロのバリアジャケットに、血と泥で汚れた身体。
身体を引きずりながら、ゆっくりと歩いてくる。
「ギンガ!」
慌てて、はやては椅子から飛び出し、ギンガの下に駆け寄った。倒れ込む彼
女の身体を支え、膝を突きつつ抱き留めてやる。
「まっ、まってな、今すぐ人を……」
ダメだ。通信機器は全て壊れているし、シャマルは負傷してこの場にはいな
い。なら自分が、応急処置程度の回復なら自分にだって、いや、それともすぐ
に誰でもいいから人を呼ぶべきか!?
動揺で混乱するはやてに対し、ギンガがその身体を強く掴んだ。
「隊長に、はやてさんに伝えなければ、いけないことが……」
弱り切った声、肩で息をしながら、絞り出すようにギンガは言葉をはき出す。
喋るなと叫びたかったが、彼女が何か重要なことを言おうとしているのは明ら
かだった。
「今まで、どこに?」
「スカリエッティの、研究所に……だけど、私は逃げ出して」
予想外の発言にはやては驚愕が隠せなかったが、同時に天運を感じた。ギン
ガがスカリエッティの研究所にいたというのなら、そこから逃げ出したという
のなら、彼女はその場所を知っているはずだ。
「ギンガ、詳しい話を―」
はやてはギンガの左手を掴もうとして、
違和感を、憶えた。
「あっ、れ?」
肉の潰れた感触が、はやての身体に伝わった。はやては無言で、感触のした
位置を見る。
脇腹だ、脇腹に手刀が刺さっている。
「がっ……ぐっ……」
どうして? そう尋ねようと口を開き、代わりに出たのは言葉ではなく血塊
だった。口元から触れだしたそれは、はやての胸元と床、そしてギンガの顔に
も跳ねた。
50:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 23:01:24 XjOFS/Lr
グチャグチャという生々しい音を響かせながら、ギンガが手刀を抜いた。
血に濡れた左腕を、あるはずのない左腕を、引き抜いた。
冷めた目で、はやてを見つめている。
はやては起ち上がると、脇腹を押さえながら、後ろ足で窓辺に下がった。何
かを発しようとする度に血が溢れだし、言葉にならない。
デバイスを起動するどころか、魔力を解放することも、出来なかった。
だけど、はやては無理矢理、血塊と共に言葉を叫んだ。
「なんで――!?」
血と涙に濡れた顔で、はやてはギンガに向かって叫んだ。
しかし、そんな彼女の目に飛び込んできたのは、左手に魔力を集中させるギ
ンガの、凶悪な笑みだった。
執務室が、爆発した。
爆発音に、外にいた隊員達はすぐに気付いた。
フェイトやティアナ、シグナムやギンガ、近くで休んでいたスバルやキャロ
も勿論、なのはとともに戻ってきたゼロも、その爆発音を聞いた。
「はや、て―?」
爆発が起こった執務室の窓辺から、吹き飛ばされるようにはやてが落ちてき
た。瞬間的に、フェイトが落下位置まで飛んでそれを助けた。
生暖かい感触が、すぐに伝わった。脇腹が抉れ、血を吹き出している。
ヴィータが悲鳴に近い叫び声を上げ、シグナムも声こそ上げなかったが青ざ
めた顔をしている。なのはは駆け寄ると、跪いて回復魔法の発動に掛かった。
フェイトもまた、それに習う。
スバルはオロオロと動揺しながら、爆発が起こった執務室を見た。一体何が
起こったのか。何が爆発したのか、それを確認するつもりだった。
そして、見た。
51:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 23:03:23 XjOFS/Lr
「ごきげんよう、皆さん」
声に、その場にいた全員が顔を上げた。
そして驚愕の表情が、ゼロを除いて、広がっていく。
「ギン、姉―?」
ギンガ・ナカジマが、立っている。
ボロボロだったバリアジャケットがいつの間にか直っており、顔や身体にあ
った汚れも綺麗に消えている。
ただ、バリアジャケットの色は白ではなく、紫色だった。
「本当に、ギン姉なの……?」
雰囲気が違うことに、気付いたのだろう。信じられないものを見るかのよう
に、スバルが問いただした。
「あらスバル、お姉ちゃんの顔を忘れちゃった?」
微笑むギンガに、スバルは何か言おうとして、言えなくなった。姉の姿を見
ながら、スバルはあるものに、気付いてはいけないものに気付いた。
「ギン姉、手! 左手!」
言葉に、ギンガの微笑みが消えていく。
「手? 左手が、どうかした?」
「血が、血が付いてる!」
距離があるので叫ぶように声を出すスバルに対し、ギンガはつまらなそうな
表情を見せた。
「あぁ、これ……これはね」
笑いながら、ギンガは視線を、なのはとフェイトによって回復魔法を施され
ているはやてに向けた。
「この血は、そこに転がってる人のものよ」
瞬間、シグナムが動いた。
「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
52:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 23:03:30 fAhWx/B8
支援
53:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 23:05:25 XjOFS/Lr
レヴァンティンを抜き放ち、バリアジャケットを纏ってギンガへと斬り掛か
った。スバルが止める間もなく、斬撃はギンガへと振り下ろされた。
だが、しかし……
「怒り狂って斬り込むなんて、結構お熱い性格なんですね?」
ギンガはその斬撃を左手で、片手で掴み、受け止めた。レヴァンティンが、
軋み始める。
「でも、不意打ちでこの程度なんて……弱すぎよ」
左手に力を込めると同時に、ギンガはレヴァンティンの刀身をへし折った。
いや、砕き折ったと言うべきか、握力だけで破壊したようにも見える。
驚愕に包まれるシグナムの背後に、声が響いた。
「どけっ! シグナム!」
ヴィータだった。グラーフアイゼンのギガントフォルムを起動し、鉄槌の一
撃をギンガに叩き込んだ。
「それが、なにか?」
冷めた目と、冷めた声で、ギンガは構えを取った。構えて、そして左の拳を
迫り来る鉄槌に突き出した。
ヴィータが愕然とする中、グラーフアイゼンが砕け散ってゆく。全てを砕く
鉄槌が、逆に砕かれたのだ。
「二人とも、邪魔よ」
魔力を、紫色と赤色の混じり合った魔力を解放させ、ギンガはシグナムとヴ
ィータを吹き飛ばした。二人は地面に上手く着地するが、デバイスを破壊され
たショックからか、放心したように動けなくなっていた。
「さて、と」
ギンガは改めて、下にいる隊員達をみた。誰もが誰も、彼女を見ている。
「今日は挨拶だけだから、そろそろ帰ります」
微笑みながら、凶悪で冷たい笑みを浮かべながら、ギンガは言う。そしてま
ず、妹のスバルに顔を向ける。可哀想に、スバルの表情は恐怖で支配されてし
まっている。
「また会いましょう、スバル……それに、ゼロ」
最後にゼロの方を見ると、ギンガの周囲に魔力の粒子が舞った。
そして、それが消えたとき、ギンガの姿はどこにもなかった。
つづく
54:ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- ◆1gwURfmbQU
08/09/15 23:06:57 XjOFS/Lr
第15話です。
この作品を書くに当たって、やはり26話もある中で、
特別これは書きたい、という話はいくつかあります。
一般にもここを書きたいからこの小説を書いた、
なんて話があるように。
ここから先は、流れるように進んでいくと思います。
それでは、感想等ありましたら、よろしくお願いします。
55:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 23:21:28 fAhWx/B8
GJ!
さて困った、『イレギュラー化』したらゼロが助けたやつはいないぞw
ギンガ姉さん逃げてー!
56:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 23:34:03 mfNBmwaP
GJ!
はやて株が上がった瞬間ギン姉による暗殺未遂とかw
ギン姉はタイプ「ゼロ」だけに強化度も段違いなのかな?
スバルが頑張らないとゼロは手加減しないんだろうな、やっぱりw
57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 23:47:44 usS/hs6q
>>54
GJです!はやてが実は一番ゼロを信頼していたってのがなんとも、
てかギン姉強いぜ!道楽じゃなくてマジに弄ったなスカリエッティ!
>>55
確かに『イレギュラー』と認識したら人間ですら斬るからな
ギン姉ピンチだwww
58:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 00:02:53 HoE0TTVo
GJでしたー。
それにしても、スカリエッティのラボにいた人物が気になる。多分ゼロに関係あるキャラなんだろうけど、基本的に撃つか斬るかされてるはずだしなあ。
59:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 00:17:57 aA5371TK
もしやまさかのワイリーorシグマだったりしてw
ゼロは騙されてたとはいえ幼いベビーエルフも容赦なく叩き斬るからなぁ。
ギンガマジやばいwwwスバルの説得が効くようなチャチな改造してないぞありゃ。
60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 00:19:27 RodLYorl
>>58
流れ的にギンガだろ?
61:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 00:34:06 2wu0LySE
どう考えてもギンガだろ
なぜワイリーやシグマが沸いて出る
>爆発音に、外にいた隊員達はすぐに気付いた。フェイトやティアナ、シグナムやギンガ
ギンガじゃなくてヴィータだな。まとめに載せる時に直せば済む話だが一応
62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 01:57:34 FP3jrHNd
ゼロが処分してしこりに残っているのってアイリスだけじゃないか?
63:名無しさん@お腹いっぱい
08/09/16 03:13:53 IHLu14LN
何か強化されてますがSランクオーバーレベルじゃないですかね?
まぁ、良い機会なので無謀と慢心の精霊に取り付かれてくだされ。
ゼロに真の恐怖と破壊を教えて貰えばいいかと。
まぁ、今は『上げ』の時期ですね。
あの余裕と冷めた顔がなのはさんにロックオンされたクアットロのような断末魔の恐怖に歪むのが楽しみや……。
64:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 09:57:16 ZA17RKLL
>>54
GJでした!
はやて重傷、ギンガ凶悪化と超展開で楽しみな限りで。
さてセインもこれで一層仲間化フラグが立ったワケこの先どうなるのか。
>>62
いやゼロ4でクラフト倒した時もかなり悩んでたぞ。
結局自分は闘うことしかできなかったとか何とか。
65:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 13:12:49 X8+JqfdW
GJ
無限再生と言えばゼロも死亡フラグほぼないな
大破がいつものことになってる程の戦闘タイプ
戦うことしかできないと自認してる彼に救うことか期待
66:一尉
08/09/16 14:30:41 QhMJOOUC
なるぼと無限再生と破壊なら良い
67:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 18:26:24 S6kHrG11
ゼロ氏GJ!
物語も折り返しを越えて、中々ハードな展開になってきましたね。
本日19時半くらいに天元突破第11話の投下予約をさせて頂きます。
整数話の更新って何ヶ月ぶりだろう……(汗
68:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:34:17 S6kHrG11
ではそろそろ時間ですので、投下を始めたいと思います。
69:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:37:13 S6kHrG11
新暦0075年5月13日、密輸ルートで運び込まれたロストロギア〝レリック〟をガジェットと呼ばれる魔導兵器が発見、輸送レールを襲撃するという事件が発生。
今回確認されたガジェットは三種類、いずれの機種もAMFを搭載していた。
件のリニアレールの周囲には数体のムガンも確認されたが、ガジェットとの関連は不明。
ムガン出現による出撃要請を受け、機動六課前線部隊が正式稼働後初の緊急出撃、隊員一同の活躍もあり事件は無事に解決。
同日、ベルカ自治領の市街地に大量のムガン出現を確認、別件で現場に偶然居合わせた八神はやて部隊長及びフェイト・T・ハラオウン隊長が迎撃活動に参加。
敵の物量に押され一時危機的状況に陥ったが、ロングアーチ管制班の搭乗する新型魔導兵器〝ガンメン〟の投入により戦局は好転、無事殲滅を完了。
戦闘終了後、刻印ナンバー44のレリック及びコアドリルを回収、両者は機械的に接続されており、今回のムガン大量発生の人為的事件性が指摘されている。
なお、今回確保した二つのレリック及びコアドリルは、現在中央のラボにて保管・調査中。
―機動六課部隊長補佐、リインフォースⅡの勤務日誌より抜粋。
「……と、ここで綺麗に終わっとけば万々歳やったんやけどなー」
「ですー」
数日前の勤務日誌を読み返しながら、はやてとリインフォースⅡは揃って息を吐いた。
スバル達前線部隊の初陣は、確かに初任務としては上々の形で幕を下ろした。
併行して発生したベルカ自治区のムガン出現事件も、隊長格二人や聖王教会騎士団の奮闘、更に途中参戦したガンメン軍団の活躍により壊滅の危機は免れた。
新設部隊としては悪くない滑り出し、しかし問題が全く無い訳ではなかった。
鉄道会社や一般乗客による、車両の破壊や運航ダイヤの遅れによる各種損害への苦情や賠償請求。
ベルカ市街地での戦闘における情報伝達ミスによる被害の拡大や、八神部隊長の越権行為。
更に魔力資質の低い内勤職員の前線投入や、それによる質量兵器保有の疑惑等々、浮上した問題を挙げればきりが無い。
これらの問題に対し時空管理局地上本部は八神部隊長を緊急召喚、部隊の管理責任を追及した。
そして、その結果―、
「―降格してもーた」
あははははーと呑気に笑う部隊最高責任者に、なのは達は思わず嘆息を零した。
今回の失態へのペナルティとして、はやての一階級降格の他にガンメンのデータ提出と査察の受け入れ、そして近々開催される骨董品オークションの警備への人員派遣が通達された。
中々に手痛いペナルティではあるが、しかしこの程度の追及で済んだことは機動六課という組織としては寧ろ僥倖と言える。
充実した人員や潤沢な予算などの本局の各種優遇措置、それに聖王教会との関係など、余所から疎まれる要素には事欠かない。
最悪の場合、部隊解体という洒落にならない事態も十分あり得たのだ。
それなのにこの緊張感の無さ、こいつは事態の深刻さを解っているのだろーか……ジト目で睨む隊長陣一同に、はやて二等改め三等陸佐の笑顔が引き攣る。
「ま、まぁアレやな! 終わり良ければ全て良しと……」
「いや何も終わってねーだろ」
「はやてちゃん、実は何も考えてないでしょ?」
強引に話を終わらせようとするはやてにヴィータが容赦なくツッコミを入れ、なのはも疲れたように息を吐いた。
他の面々も二人と似たり寄ったりな表情を浮かべて呆れている。
70:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:39:51 S6kHrG11
なのはの右手には白い包帯が巻かれている、その下には列車奪還任務の際に負った傷が今でも生々しく残っている。
デバイスとはいえ刃物を素手で握るという無茶の代償は、消えない傷跡としてなのはの右手に深く刻み込まれた。
傷は深く、シャマル曰く一歩間違えていれば指や掌の神経を切断し、最悪の場合二度とデバイスを握れなくなっていた程だという。
ある意味管理局の広告塔とも言えるエースオブエースに致命傷一歩手前の傷を負わせたという事実も、なのはの上司であるはやてへの風当たりを強くしていた。
治療の際、なのはは魔法による負傷の完全治癒を拒否、自身への戒めとして傷跡を残すことを選んだ。
この右手の痛みが、生涯肌に残る醜い傷跡が、誓いを忘れ、間違えてしまった愚かな自分を思い出させてくれる……未だ傷の塞がらぬ右掌を、なのははぐっと握り込む。
握った拳の中を、鈍い痛みが電撃のように走った。
「ところで、前線部隊の訓練の方はどんな塩梅なんや?」
唐突に話題を変えたはやての問いに、なのはは一瞬反応が遅れた。
代わりに隣のヴィータが口を開く。
「順調も順調、怖ぇ位に快調だ……デバイスの第二形態のリミッター解除を急遽繰り上げようかって、なのはとマジ顔突き合わせて話し合わなきゃならねー程にな」
ヴィータの科白に、はやて達は唖然と目を見開いた。
スバル達の新型デバイスには幾重にもリミッターが組み込まれ、訓練の進度や成長の度合いによって順次解除していくという教導方針を採っている。
新人達の訓練開始から一ヶ月強、第二形態解放は時間の問題だとは思っていたが、どうやら四人の成長は自分達の予想を大きく超えていたらしい。
「……異常なまでの成長速度だな」
「そうね。これがロージェノムさんの言う〝螺旋力の覚醒〟だとしたら……あの子達が一体どこまで伸びるのか、空恐ろしくなるわ」
硬い表情で呟くシグナムに、シャマルも同意の声を漏らす。
「スバル達は強くなるよ」
二人の言葉に、なのははそう言って鈍痛の走る右拳を握り締めながら天井を見上げた。
教官というものも因果な役職だ……自分と空を隔てる冷たいコンクリートの塊を見上げながら、なのはは薄く自嘲する。
己の全てを教え授けようと意気込んで、厳しくも大切に丁寧に育ててきた筈の教え子達は、しかし気がつけば自分の手を離れて己の道を一人で歩き出している。
教導を始めて一ヶ月強の今の時点で、この科白は早過ぎるかもしれないが、それでもそう思わずにはいられなかった。
「わたし達を超えて、限界という天井すらも突き抜けて、どこまでも……」
天井を見上げたまま淋しそうに呟くなのはを、はやて達は無言で見詰めていた。
71:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:42:21 S6kHrG11
轟、轟轟―雲の壁を突き破り、蒼穹のサーキットを鋼の巨人達が縦横無尽に駆け抜ける。
人型汎用魔導兵器グラパール、それが三体。
轟くエンジン音の咆哮は不可視の刃となって地上に降り注ぎ、衝撃波の斧が朽ちた街に止めの一撃を見舞う。
崩れ落ちる廃ビル、抉れる地面……だが刃金の覇者達はそのような〝路端の石ころ〟など気にも留めず、空色の舞台で闘争のダンスをひたすら踊り続ける。
『うおおおおおおおおおおっ!!』
額にブレードアンテナの一本角を装備した青色のグラパール、エリオの駆る機体が腕のブレードを引き抜き、背面スラスターを爆発させるような勢いで噴かして加速する。
同時に左右の側頭部から獣の耳のようにアンテナを生やした桃色基調のグラパール、キャロの専用機がハンドガンを構え、エリオ機を援護するように魔力弾を撃ち出した。
『シューティングレイ!!』
凛としたキャロの声と共に放たれた二発の魔力弾が、漆黒の機体色以外は特に特徴の無い三機目のグラパール―区別上、以後〝プロトグラパール〟と呼称―に迫る。
更にエリオ機の握るブレードの切っ先に紫電が迸り、まるで鞘を被せるように電撃の膜が刀身全体を覆う。
『メッサーアングリフ!!』
エリオの怒号と共に、電光を纏う鋼の刃がプロトグラパールへと鋭く突き出される……が、
「……ふん」
漆黒のグラパールのパイロットシートに窮屈そうに身を納める巨漢、ロージェノムは、迫り来るエリオ機の突撃を鼻で笑う。
プロトグラパールが緩慢な動作で右腕を突き出し、そして親指と人差し指、二本の指先で挟み込むようにエリオ機の切っ先を受け止めた。
瞬間、掴まれた切っ先からまるで毒に侵されるように、ブレードを覆う電撃の「鞘」が霧散していく。
死角に回り込みながらプロトグラパールを襲うキャロの射撃魔法も、着弾の直前に粒子レベルに分解されてしまう。
AMF……エリオは忌々しそうに表情を歪めた。
先日のリニアレール襲撃事件の後、サンプルとしてレリックと共に回収されたガジェットの残骸。
スクラップ同然の残骸からサルベージしたAMF発生システムを、ロージェノムはグラパールの防御システムに組み込んだのだ。
対物理バリアとAMFという二重の楯に護られたプロトグラパールに、エリオ達の攻撃は切っ先一つ、弾丸一つとして通せなかった。
「その程度か? 魔導師よ……」
気だるそうなロージェノムの声と共に、プロトグラパールがブレードを掴む指先を弾いた。
直後、まるで見えない壁をぶつけられたかのようにエリオ機が吹き飛ぶ。
『エリオ君!』
キャロ機に受け止められ何とか体勢を立て直す青い同型機をつまらなそうに一瞥し、プロトグラパールは姿の見えない〝四機目〟を探して視線を彷徨わせる。
正面から左右、背後に頭上、そして足下……いた。
眼下に広がる瓦礫の山、廃棄都市のなれの果て、その一角に確かに見つけた。
倒壊しかけた廃ビルの屋上で右腕を突き出し、掌の中に橙色に輝く大粒の魔力弾を生成集束させている、今は紅蓮色に塗り替えられたかつての愛機―ラゼンガン。
72:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:45:39 S6kHrG11
否……モニタースクリーンを眺めるロージェノムの双眸が、怪訝そうについと細まった。
あそこにいるのはラゼンガンではない、肝心の頭が分離している。
ラゼンだけか、ではラガンはどこへ消えた?
索敵の網を蜘蛛の巣のように張り巡らせるプロトグラパールの周囲を、まるで道のように幅広な光の帯が突如幾重にも取り巻いた。
これは確か、ウィングロードとやらだったか……まるで周りの空間ごと捕らえるかのように球形に機体を取り囲む光の檻を、ロージェノムは興味深そうに眺め遣る。
その時、プロトグラパールの頭上で何かが光った。
雄叫びを上げながら漆黒の巨人に急速接近する、額と両腕からドリルを生やした「顔」……ラガンだ!
「不意を衝いたつもりだろうが……甘いな」
欠伸交じりなロージェノムの呟きと共に、プロトグラパールが右腕を持ち上げ……その時、空色の光の鎖が鋼の右腕を絡め取った。
バインド……モニタースクリーンを走るロージェノムの瞳が、掌から魔力の鎖をのばす青いグラパールを捉えた。
『うおおおおおおおおおおおっ!!』
スバルの声で怒号を轟かせながら、ラガンは着実にプロトグラパールに近づいている。
ウィングロードの監獄に囚われ、その上バインドの鎖に繋がれた今、迫り来るラガンの一撃を躱すことは不可能だろう。
だが対抗策が無い訳ではない……躱せないならば正面から打ち砕けば良い、それだけだ。
「この程度で王手を掛けたなどと」『思ってる訳ないでしょうが!!』
怒号するロージェノムへの返答の声は、即座に、それも背後からもたらされた。
廃ビルの屋上に仁王立ちするラゼンが蜃気楼のように消え失せ、代わりにプロトグラパールの背中の向こうに〝頭の生えた〟ラゼンガンが突如出現する。
『クロスシフトC、征くわよ!!』
ティアナの怒号と共にラゼンガンが尻尾を引き抜き、渾身の力を籠めて刀のように振り下ろした。
同時にエリオ機もブレードを構え、バインドの鎖を巻き取りながら弾丸のようにプロトグラパールに突撃する。
『テールサーベル、脳天唐竹割りぃ!!』
『シュペーアアングリフ!!』
挟み撃ちにするように前後から迫るラゼンガンの偃月刀とエリオ機のブレードを、二条の刃金の煌めきが受け止める。
いつの間にかプロトグラパールの左右の手には、エリオ機と同じブレードが握られていた。
二刀流……瞠目するティアナの前に通信ウィンドウが展開し、不敵な笑みを浮かべたロージェノムの顔が映し出される。
『まさか尻尾にそんな使い方があったとはな、些か驚いた。だが戦とは敵の裏の裏を衝くもの……詰めが甘かったな』
いけしゃあしゃあと……ロージェノムの挑発に激昂しかける感情を、ティアナは理性で無理矢理抑え込んだ。
頭を冷やせティアナ・ランスター、戦いの必需品は熱いハートとクールな頭脳だ。
「アンタが裏の裏を衝くって言うんなら、アタシは裏の裏の裏を攻めるまでよ! ギガドリル―」『遅い』
左腕をギガドリルに変形させるラゼンガンの一瞬の隙を衝き、プロトグラパールがブレードを滑らせた。
鈍色の軌跡を虚空に描きながら横薙ぎに振るわれたブレードの切っ先は、ラゼンガンの首筋に正確に吸い込まれ―次の瞬間、まるですり抜けるように〝首の中を素通り〟した。
手応えは無かった。
まるでそこに何も無いかのように、まるで幻でも見ているかのように。
73:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:48:01 S6kHrG11
幻術……驚いたように目を見開くロージェノムの前で、ラゼンガンの頭部が陽炎のように揺らめきながら消え去った。
更に残る首から下の部分も、まるで肉体の成長が退行したかのように一回りサイズが縮み、左腕のギガドリルも霞のように消滅した。
そしていつの間にか周囲を取り囲むウィングロードの檻さえも、まるで幻のように魔力光の残滓すらも残さずに消え失せている。
ただ一つ、雄叫びと共に頭上から流星の如く突進するラガンだけは、消え去ることなく未だ存在していた……恐らくあれは、あれだけは本物なのだろう。
全ては幻、空の上のラガンを如何に〝偽物らしく見せる〟かという一点だけに徹した道化芝居……この時になってロージェノムは漸く全てを理解した。
「敵に裏の裏の裏まで読ませておいて、実は裏の裏の時点で正面突破! クロスシフトCの〝C〟はCheat(詐欺)のC、深読みに溺れて沈んでなさい!!」
ロージェノムの思考を読んだかのようなタイミングで、この企てを演出した策士―ティアナがラゼンのコクピットで高らかに笑う。
エリオのバインドを引き千切り、プロトグラパールが背面スラスターに火を点す……が、
『逃がさない……クロスファイヤーシュート!!』
ティアナの怒号と共に生成された無数の魔力弾が、離脱しようとするプロトグラパールに四方から襲いかかった。
怯む漆黒の機体を橙色と薄桃色に光る新たな鎖、ティアナとキャロのバインド魔法が拘束し、更にエリオも鎖を再構成して、三方向からプロトグラパールの動きを封じ込める。
「スバル! やっちゃいなさい!!」
声を弾ませるティアナに応えるようにラガンのドリルが、バインドの鎖に拘束されたプロトグラパールに真っ直ぐに迫る。
『ラガンインパクト!!』
スバルの声で蒼穹を震わせるラガンの咆哮を、ロージェノムは愉快そうな笑みと共にモニタースクリーン越しに見上げる。
そして、次の瞬間―、
「ぜーったいに、納得出来ない! 認めたくない!!」
モニタースクリーンの一面に表示される「YOU LOSE」の二単語を怨敵でも見るような目で睨みながら、ティアナはシミュレーターの筺体を力任せに殴りつけた。
74:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:50:01 S6kHrG11
エリオとキャロは落ち込んだように表情を曇らせ、スバルは精魂尽き果てたような顔で床に座り込んでいる。
策は完璧だった。
逃げ場は封じ、隙も潰し、万が一必殺のラガンインパクトが躱された時のための次なる一手も用意していた。
常識的に考えて、並の人間ではティアナの策略の檻から抜け出すことは不可能、その筈だった。
ティアナ達の敗因はただ一つ……敵が「並の人間」でも「常識の通じる相手」でもなかった、ただそれだけだ。
正面の大型モニターでは、模擬戦の決着の瞬間―つまりティアナ達の敗北の瞬間―が、まるで嫌味のように何度もリピート再生されている。
モニターの映像を苦々しそうな目で見上げながら、ティアナは屈辱の瞬間を反芻した。
それは一瞬の出来事だった。
重力をも味方につけて垂直降下したスバルのラガンは、プロトグラパールの額から突如飛び出したニードル状のドリルに突ら抜かれてあっさりと撃沈、断末魔の絶叫と共に爆破四散した。
スバル撃墜のショックを引きずりながらも即座に反撃の刃を振り上げるエリオのグラパールとティアナのラゼンを、プロトグラパールは身を縛る三重のバインドごとブレードで一刀両断。
返す刃でキャロのグラパールのコクピットを貫き、シミュレーションは終了。
まさに瞬殺だった。
「機体性能は互角って言ってるけど、アレ絶対嘘よ! 詐欺よチートよインチキよ!!」
憤慨するティアナに便乗するように、モニター越しに模擬戦を観戦していたメカニック達も騒ぎ出す。
「そうだ! 幾ら何でもアレは酷いぞ!?」
「子供に華持たせる優しさはねーのか、あの髭親父は!!」
「大人げねーぞ所長! ガキ共に賭けた俺の食券返せーっ!!」
好き勝手に野次を飛ばすメカニック達だったが、当の本人が筺体を軋ませながら顔を出した瞬間、まるで時が止まったかのようにブーイングの嵐は消え去った。
エリオとキャロも、何かを言いたそうな顔でロージェノムを見つめていたが、結局何も言わずに視線を逸らした。
先頭を切って不満を爆発させていたティアナでさえも、いざ本人を前にすると流石に委縮してしまい、顔を強張らせながら自然と後退りする。
そしてスバルは……いつの間にかシミュレーターの筺体に背を預けて舟を漕いでいる、論外だ。
このオッサンに正面から文句を言える奴がいたら見てみたい……メカニック達の顔に浮かぶ畏怖の表情が、この場の支配者が誰かを雄弁に語っていた。
だが―、
「もう……駄目ですよ、ロージェノムさん。あんまり虐め過ぎちゃ……」
王の横暴に真っ向から異を唱える勇者もまた、確実に存在した。
「この子達はこれからが伸び盛りなんですから、成長の芽を潰すような真似は困ります」
そう言って困ったような、それでいてどこか怒ったような表情でロージェノムを見上げるのは、教導隊の白い制服に身を包む隊長陣筆頭、誰もが認めるエースオブエース。
75:天元突破リリカルなのはSpiral
08/09/16 19:52:31 S6kHrG11
「なのはさん……?」
思わぬ人物の登場に思わずたじろぐティアナ達を振り返り、なのはは顔の前で人差し指を立てながら口を開く。
「途中からわたしも皆のシミュレーションを観てたんだけど……駄目だよ、四人共? 幾らガンメンに乗ってるとはいえ、あんな綱渡りな機動は教官として認められないな。
わたしはガンメンのことはよく分からないし、皆が頑張ってるのは解るけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだから。
シミュレーションだから、仮想空間だからって好き勝手に暴れちゃ駄目……折角魔法も戦い方も毎日一生懸命練習してるんだから、模擬戦でも練習通りにやろうよ?」
眉を寄せながら説教するなのはに、ティアナは居心地悪そうに視線を逸らし、エリオとキャロは俯き、そしてスバルは幸せそうな顔でいびきをかいている。
だが、その時―、
「確かに模擬戦は喧嘩ではない。だが子供のお遊戯という訳でもあるまい」
なのはの訓戒に異を唱える者が現れた……ロージェノムだ。
「実戦は不測の事態と不確定要素の集合体だ。幾ら練習を繰り返したところで、その思惑通りに事が運ぶことはあり得ない。
ならば互いの今持てる知恵と力の全てを惜しみなく出し合い、己の限界を以てぶつかり合うことこそが模擬戦の真髄ではないのか」
「それで味方同士潰し合ったら元も子もないでしょう!?」
「その程度で潰れるならば元より芽など無い」
「それは強者の理屈です、皆が貴方のように強い訳じゃない!」
ロージェノムの紡ぎ出す言葉の全てを、なのはは噛みつくような勢いで否定する。
普段の穏やかな姿とは似ても似つかぬなのはの剣幕にティアナ達が唖然とする中、ロージェノムは眼前の小娘を悠然と見下ろし、そして薄く嗤った。
「……若いな」
ロージェノムの呟きが格納庫に木霊し―その瞬間、空気が凍った。
まるで能面を被ったかのように、なのはの顔から表情が消える。
あのオッサン、地雷を踏みやがった……!
なのはの変貌にメカニック達が声無き悲鳴を上げ、ティアナが顔色を失い、エリオとキャロが怯え、そしてスバルが爆睡する中、いよいよ二人は険悪なオーラを爆発させる。
「わたしの言ってること、わたしの教導……そんなに間違ってますか?」
「無知とは恐ろしいものよ。お前は自分を正義と信じているのかもしれんが……それは違う」
捻じり渦巻く二人の言葉は、しかし決して交わらぬ平行線を辿っていた。
螺旋の光を宿すロージェノムの視線と、不屈の焔を灯すなのはの眼光が中空で激突し、バチバチと火花を飛ばしながらせめぎ合う。
まさに一触即発。
全員が固唾を呑んで二人の舌戦の成り行きを見守る中、まるで最後の決着をつけるかのように同時に口を開いたなのは達の言葉は―けたたましく鳴り響く非常警報に掻き消された。
天元突破リリカルなのはSpiral
第11話「スバル達は強くなるよ」(了)