17/05/06 17:55:16.04 CAP_USER.net
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桐野さんは連合赤軍の当事者への取材が進むにつれ、ストーリーも変えたという
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桐野夏生著「夜の谷を行く」
作家・桐野夏生さん(65)の最新刊「夜の谷を行く」(文芸春秋、1620円)は、1972年の連合赤軍事件の「元女性兵士」の現在を描いた長編小説だ。
あさま山荘での警官隊との銃撃戦が収束した後に発覚した、メンバー12人のリンチ殺人事件は、なぜ起きたのだろうか。
山岳地帯で凶行されていた「総括」から脱出して生き延びた女性の半生を通じて、知られざる一連の事件の実像に迫っている。
中略
「編集者の方から連合赤軍について書きませんか、という提案は震災前からありました。でも、私に生々しいリンチが書けるだろうか、という躊躇(ちゅうちょ)がありました。
また中野判決文【注】に対するトラウマもあって、なかなか書く意欲が湧かなかった。しかし、11年に永田洋子が亡くなり、3月に大震災、原発事故が起きて、これから大変な時代に変わっていくのだろう、と思った時にようやく、連合赤軍事件が私の中で過去の出来事として感じられたのです。
それで、これまで全く触れられなかった人たち、つまり山岳ベースにいた『女性兵士』たちについて書きたいと思い、『月刊文藝春秋』で連載を始めたのです」
主人公にはモデルとなった特定の人物はなく、生き残った『女性兵士』数人の総体をイメージした。
架空の人物でありながらもリアリティーがあるのは、山岳ベースがあった跡地に足を運び、事件の当事者への取材で、知られざる実像に迫ろうとしたからだろう。
桐野さんは関係者を通じて、連合赤軍の救援対策(後方支援など)をしていた女性からも話を聞くことができた。
「その方は当時妊娠中で、永田洋子に『山岳ベースに来ないか』と誘われたけど、行かなかった。永田たちの思想には、山岳ベースで子供を産んで育てて、革命戦士にするためのコミューンを作ろうという計画もあったのだそうです。それを聞いて、大変驚きました。初耳でしたから。
だから、山岳ベースには、看護師さんや保育士さん、リンチで殺害された金子みちよさんという妊婦や赤ん坊もいたのだと納得しました。
なのに、この計画については、資料にも全く出てこない。だったら、女性である私が書くべきではないかと思いました」
事件から45年。彼らの行為が肯定されないのは当然だとして、現在の日本をみつめる上で、連合赤軍が起こした一連の事件について考えることには意味があると桐野さんは考えている。
「今はナショナリズムが台頭し、きな臭くなってきました。連合赤軍の頃より、今の方が排外主義的になっています。事件を知らない若い人にも、なぜ20代前半の若者同士が殺し合わなくてはいけなかったのか、考えてみてほしいですね。
なぜ彼らの間に亀裂が入ったのか。なぜリンチという事態が起きたのか。あまり語られてきませんでしたが、そこには男性の『軍隊』としての赤軍、女性たちの地道な活動による革命左派。その2つの党派の軋轢(あつれき)があったように思います」
【注】1982年6月18日に永田被告に下された一審判決。中野武男裁判長は「自己顕示欲が旺盛で、感情的、攻撃的な性格とともに(中略)女性特有の執拗(しつよう)さ、底意地の悪さ、冷酷な加虐趣味が加わり」とリンチ事件を永田被告の個人の資質が原因かのように断じた。
◆桐野 夏生(きりの・なつお)1951年10月7日、金沢市生まれ。65歳。成蹊大法学部卒。
93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞。パート主婦が犯罪にのめり込むプロセスを克明に描いた「OUT」で98年、日本推理作家協会賞を受賞。海外でも評判が広まる。
99年「柔らかな顔」で直木賞。2008年「東京島」で谷崎賞。11年「ナニカアル」で読売文学賞。近著に「抱く女」「バラカ」「猿の見る夢」などがある。
2017年5月6日12時0分??スポーツ報知