06/12/06 21:24:35 hE/B2skD
一瞬、遙か上から俺を見下ろしているこの国の王と目が合ったような気がした。
王は微笑んでいた。それは絶体絶命の死地に立つ異邦人への哀れみの微笑みか、それとも…。
だが今の俺にはその事を考える余裕は無かった。闘いはまだ終わっていない。
敵の中に身を置く俺は、既に立っているのがやっとだった。満場の観衆が俺を呪う
言葉を叫んでいるのは、彼らの言葉が解らずとも容易に感じることができた。
さっき倒した男が彼らの英雄なのだから無理もない。
正面に立つ図体のでかいハゲが、掛かって来いと盛んに挑発してくる。
フン、この間倒したライオンに比べればお前なぞはネコ以下だ。
俺が奴に侮蔑の笑みを送ると、ハゲは目を剥き悪鬼の形相で俺を睨んだ。
その時、俺は背後にいた敵が見せた僅かな隙を見逃さなかった。俺はすばやく
体を後ろに捻り男を刺した。男は呆然とした表情のまま死んだ。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」そろそろ限界が来たようだ。息が荒くなる。
観衆はますます興奮し、声を上げ、足を踏み鳴らしている。
俺は残った気力を振り絞ると、ハゲの胸の辺りを鋭く攻めた。
ハゲは仰け反ったが、却ってそれが奴の不幸だった。一瞬後、ハゲは頭を押さえ
地面をのた打ち回っていた。
その途端怒りに駆られた何十人もの敵が一斉に襲い掛かって来た。
俺は先頭の男に膝蹴りを食らわして顎を砕いたが、後に続く男達に押さえ込まれてしまった。
指ひとつ動かすことのできない状態で、俺は奴らの怒りと憎悪を一身に―。
鼻血を押さえながらベンチに戻ると、ボスが通訳を通じて俺に言った。
「馬鹿野郎!折角の勝星フイにした上に天覧試合まで台無しにしやがって。
元メジャーでも容赦しないからな。暫くファームで頭冷やして来い!」