07/01/26 18:29:21 6oPtfhDA
ストーン ヒート クレイジー 三上康明
天空の城ラピュタ……もはや説明のようがないといえる名作中の名作である。
可憐な少女が天空より舞い降りるシーン、誰しも一度は見たことがあるだろう。
完璧なカット割りとすばらしいテンポで疾走するこの冒険活劇は、
見た人の記憶に深く刻まれるジブリの名作である。
プロジェクトX……もはや説明のようもない、名番組中の名番組である。
中島みゆきの地上の星とともに始まり、田口トモロウの語りに乗せてつづられる、
日本のもっとも輝いていた時代の記録。
人々は努力し、夢を見、そしてそれらをかなえるために全身全霊を傾けて邁進した、
まさに日本という国そのものの青春の記録。
涙せずして見られない、感動のドキュメンタリーである。
両者とも、広い年齢層に絶大なる支持を得た名作である。
これらを超える名作をものにするには、どうすればよいか?
その答えの一つが、この「ストーン ヒート クレイジー」なのである。
この小説は、実のところけなすべき点が非常に少ない。
軽快なラピュタ的冒険の前半から一転、プロジェクトX的職工の活躍へと転換する見事さは、
読むものすべてが驚嘆する以外の手だてを見いだせないであろう。
賢明な読者をしてすら取り残される意外性あふれる展開は、読者をけして飽きさせない。
途中で挟まれる寸劇や、人によっては下ネタととられかねない小ネタの数々は、
いかなる年齢層、いかなる人種であっても理解可能な汎人類的な行為を扱っており、
底知れない心配りを感じることができる。