06/01/11 00:50:34
静かな海辺の町に佇む我が家を襲った突然の怪異。そして私は狂気の如く泣き叫び続ける娘を
抱きかかえて逃げ出す事、これがあの時、私に出来た全てだった。妻は異形の物に姿を変え
家の蠢く影の一部として永遠に嗚呼
嗚呼思いだした。私の曽祖母の父はドイツ小侯国の公爵の息子だったが、地位を捨て身分を偽り
一兵卒としてフランス外人部隊に入隊しイタリア戦役を戦った。理由は誰にも分からなかった。
後にアルジェリアのゲリーヴィル病院で病歿した時、遺品の中にあった陳腐な鉄の鍵が
曾祖母によって日本へ齎され、我が家系に伝えられた事を。ああの鍵、あの鍵は何処にある。