03/06/11 23:17 8KGA/3kL
けらいのひとりもいない王様が草原を行く
王国を一度も持ったことのない王様が馬に乗って行く
浜辺では魚たちが騒いでいる
王国はいつも王様の入って行けないところにある
月は線路橋の柵を照らしている
男の子の親たちは家の中で晩御飯を食べている
ねぇ、君だけどうして晩御飯を食べないの
家族はいつも男の子の入って行けないところにある
汽車は坂道を上り山を下る
旅人はドアのところで外の景色を見ている
おじいさんやおばあさんたちが膝をおりお茶を飲んでいる
旅はいつも旅人の入って行けない場所にある
ケーキのろうそくに火をともし
友だちはニワトリにナイフを入れる
電気が消され大人たちは友だちの誕生日を祝うけど
友だちはいつも友だちの入って行けないところにある
学校の中で男の子と女の子が知り合い
二人は印刷機の匂いのする部屋で抱き合った
女の子の体はあつく男の子の体はふるえていた
女の子はいつも男の子の入っていけないところにあったから
ある日新聞記者が男の子にこう聞いた
君はどうして街の中で歌うの
誰もが本当に街の中で暮らし始めるべきだ
街の中は街の人たちの入って行けないところにある