『読みました』報告・海外編Part.3at MYSTERY
『読みました』報告・海外編Part.3 - 暇つぶし2ch250:名無しのオプ
07/01/01 15:36:00 HrTtkK4O
下劣なコテハン叩きはルール違反ですよ。


251:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/01 21:52:44 xXMhNOYc
「ポケットにライ麦を」
一般のミステリファンには十分にマイナー、エルキュール・シリーズと比較して作品数が
圧倒的に少ないジェーン・シリーズということもあって、
アガサファンには、結構、読まれているのがこの辺の作かと思う。
アガサ作品にありがちな若い男女の安手なラブロマンスが無く、
横溝風のいずれも一癖ある人物たち(一族)が集う館ものという設定は、
謎解きミステリのお膳立てとしては申し分が無いものがあるのだが、
いかんせん「売り」であるマザー・グース絡みの見立て殺人に無理が有り過ぎで、
必然性が感じられない点が弱い。


252:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/02 22:04:15 jv2425Sn
「ヒッコリー・ロードの殺人」
アガサファンでないと読んでいなさそうなエルキュールもの。
日本で例えれば、学生下宿(本作では入居者全てが学生というわけではないが)を
舞台にした奇妙な盗難、そして殺人が描かれる。
読者の興を惹き易い「館もの」等でも書けそうなストーリー
(アーヤならそうしてしまうかも(w )ながら、
殊更に怪奇な設定はしないアガサは、ロンドンの大通り裏のハウスを舞台に巧みな
ストーリーテリングで事件に広がりも持たせた上で、それなりに満足がゆくミステリに
仕上げているのはさすがである。

253:名無しのオプ
07/01/02 22:43:45 YldQyTb1
快調なペースで読書してるね。
その調子その調子。

254:名無しのオプ
07/01/03 19:56:47 fZM/ErZo
「最上階の殺人」 アントニイ・バークリー
素人探偵ロジャー・シェリンガムのシリーズ作品。
簡素な問題編とそれに対する多重解決という、いかにもバークリーらしい内容。
全編に渡って炸裂するロジャーの推理(というか妄想)が楽しく、そこが一番の見所だろう。
ただ、セイヤーズ言うところの典型的なロジャー・シェリンガム式の作品なので、着地点が
マンネリ気味という気がしなくもない。
最後の一行で思わず吹いたし、十分に面白い作品だとは思うのだけど。

255:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/03 21:12:46 GYptbuIY
スティーブン・キング「ミザリー」を読んだ。
正式にはホラーはSF板の担当なのだが、本作は恐怖小説ではあるが超自然現象が
描かれた怪奇小説ではないため、作品全体に仕掛けられた趣向は勿論のこと、
アニーの犯罪工作など見ても、キング作品中でもSFやホラーの好き読者よりも、
ミステリファン好みの一編と言い得る。
ヒーローは交通事故で重傷を負った寝たきりの中年作家、
ヒロインは人三化七を絵に描いたようなナース上がりのキティなオバン、
メインキャラはこの2人のみであり、この設定で、一読巻を置かせぬ面白い長編を書いてしまうのは、さすがのスティーブンである。空想力が逞しいこと、極限状態でさえ創作意欲を抑えられないこと等、
主人公のキャラが説得力を持って十分に活きているのも本作に精彩を与えている因である。

256:名無しのオプ
07/01/03 22:03:03 E9YqkwBn
>>227
的確な批評だね。
いつもさんくすこです。

257:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/04 21:35:27 aui0jNTG
「ロリータ」の新訳(文庫版)を読んだ。
大久保康雄氏の訳書は、端整で読み易いものであったが、
(この点は、新訳を担当した若島正先生(京大院文学研究科教授)も認めている
ようである。
大久保先生の筆による(?)ロリータが主人公ハンバート・ハンバートが
評する「ニンフェット」そのものの印象なのに対して、若島先生描くところ(?)の
ロリータ像は、話し方ひとつにもフィッツ作品に描かれるフラッパーの後裔ていうか、
不良性を帯びて読めるのが面白い)
それゆえに、「言葉」に凝る傾向が強いウラジミールらしさが感じられないという評
もあった。
今回の若島版ロリータは、原文の雰囲気を重視したものとなっているため、
時には読者サイドにとっては多少の読み難さとなっている点は否めない。
内容的には、「ミステリとして読める作」ていうか、訳者あとがきに記されているとおり、
「ミステリそのもの」かもしれぬという作品全体に「謎」が仕掛けられている
やもしれぬ作なのである。
この辺の事情も十分に意識して新訳されている27章以降の展開は熟読吟味する必要が
あろう。特に普段から低俗な新書ミステリに耽溺しているミスヲタは、
この世紀の名作に取り組むに当たって、この点は十分に心しておけ。

258:名無しのオプ
07/01/05 00:21:49 pcDRbWp+
ナンシー・ピカード『恋人たちの小道』(ハヤカワ文庫)

市民財団長ジェニー・ケインシリーズの第1作。
財団のせいで息子が死んだ、とジェニーをなじった男が、港開発のセレモニーに車で突っ込んでくる。
自暴自棄の行動と思われたが、ブレーキに細工がされてたらしい……。
ユーモラスなタッチのライトなミステリ。婉曲的な表現が多いため慣れるまで読みづらいかも。
はた迷惑なジェニーの父親など、キャラがしっかり書き分けられており面白い。
ただしタイトルで損をしているような……。
ジェニー&ジェフの恋の行方と、作中の地名ラヴァーズ・リープに引っ掛けた邦題と思うのだが、全体の印象からすると微妙。

259:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/06 00:12:45 g68scssk
アガサ・クリスティ「蒼ざめた馬」を読んだ。
テレフォースによる連続遠隔殺人の謎に挑むひとりの青年学者、
古ぼけた館「蒼ざめた馬」に住むマクベスの魔女を想起させるような女たちの登場・・
アガサ長編には珍しい怪奇探偵小説風のノンキャラ作品であり、
J・Dならここぞとばかりに怪奇性を強調してゆき、登場人物たちもどっぷりと
このムードに呑み込まれてゆくところであろうが、
本作の登場人物たちは事件の怪奇性に途惑いながらも常に懐疑的であるのが
アガサ作品らしいものがある。
脇キャラながら作者本人の投影と思われるオリヴァ夫人が、
呪法による殺人を書くことを薦められた時の返答、
「わたしはごくありふれた殺人しか扱わないのです」という言葉に
アガサの基本的執筆姿勢が顕著に読み取れるやに思う。
(訳者も、あとがきで「ありふれた殺人を神秘化させるところにこの作家の才能がひそんでいるのだろう」と述べている)
本作はエスピオナージではないが(英国作家らしくアガサはこの手のものも書いている)殺人方法は、偶然にもタイムリーそのものであり、あらためてこの作家の着眼点の良さに
感心したが、ストーリーには御都合主義による偶然性の不自然さが目立ち過ぎ、
アガサ作品中でも、ミステリとしても中の下レベルの域を出ないものに止まっている
のは、いささか(注 伊佐坂先生ではない(w )残念な感はある。

260:読後感
07/01/06 18:33:39 IQZ8TVgG
「マイアミ弁護士ソロモン&ロード」ポール・ルバイン(講談社)

仕事を選ばないお陰で成功とは程遠い弁護士ソロモン。彼は今
若き新米検事ヴィクトリアに心を奪われていたが彼女はソロモンに
負けたせいでクビになってしまう。その後彼女は弁護士として
知り合いの富豪の怪死に関する裁判を担当しようとするが、
甥の親権を守るため金が必要なソロモンはそこに強引に割り込む。
果たして彼等は勝訴することが出来るのか?そして二人の関係は―。

シリアスなリーガル・サスペンスではなく、
ロマンティック・ユーモア・サスペンスといった感じ。笑える。
裁判よりもロマンスに力点が置かれているからその辺好みが別れるかも。
でも「弁護士は奇策で勝負する」とか好きなら大丈夫だと思う。
あと「アリー・my・ラブ」とか。

ロマンスに関して言えば引っ張り過ぎだし、障害児を餌にするのも
あざとくてマイナスかな。でも続編邦訳されたら読むと思うw

261:名無しのオプ
07/01/07 00:24:33 9lRLGMTe
R.D.ウィングフィールド
『クリスマスのフロスト』(創元文庫)【8.5点】

クリスマスの直前、町の幼女が行方不明になった。
指揮を執る警部フロストは多発する大小の事件に奔走するが・・・

世評高いがなぜか長期間積読状態だった本作に挑戦。
赤川次郎の大貫警部みたいなキャラかと思っていたが、
もっと親しみある人柄でしたね。事件は派手でないが、展開が上手く
あれよあれよという間に一気読み。ラストにもうひとひねり有るかな、
と思ったが、充分に面白かったです。

262:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/07 21:27:33 PPp8uhL+
ノーマン・ベロウ「魔王の足跡」を読んだ。
世界の不思議といった類の書籍に取り上げられることが多い実話「英国における
雪上の謎の足跡」をネタとし、
(有名どころではフランク・エドワーズの「世にも不思議な物語」に採録され、
同名のテレビ番組によりこのエピも映像化されオンエアされている)
ミステリ・サークル的な解決の呈示を試みた、まさにジョン張りのコテコテな
怪奇探偵小説である。
本格ミステリ倶楽部ではある程度の評価を受けた作とはいえ、結局、この程度の謎解き
を読んで喜んでいるのは、毎週お茶の間で欠かさず「名探偵コナン」を手に汗握って
鑑賞し、稲垣金田一シリーズのオンエアを心待ちにして、
「稲垣メンバーの金田一キター!」と正月早々から絶叫した末、御近所から不審者として
通報されてしまうようなレベルのミスヲタに過ぎないという感がある。
この奇想天外とは言わぬまでも奇抜なトリックを看破するのはそれこそ不可能事だと
しても、(先に翻訳されたタルボット作品を想起させる面があるのも気にかかる)
普通に読んでゆくと犯人の目星は割りと簡単に付くのも難、
とにかく本作の評価は、否定的な意味合いを強く込めた漫画ちっくの一言に尽きる。
森英俊氏のあとがきによると、本作と同じ主人公の警部が登場する作品が他にも
4作(未訳)あり、この作者の代表作とされているらしいが、
記されたあらすじを読む限りでは、いずれも本作より面白そうに見えるのは皮肉である。

263:名無しのオプ
07/01/08 19:13:16 n0hPrNC7
M.J.トロー『霧の殺人鬼』(ハヤカワ文庫)

切り裂きジャック事件後のロンドンで、レストレイド警部が、殺人を見立てた詩を送りつける無差別殺人鬼を追う。
彼を主役にしたパスティーシュのアイデアが面白い。
オスカー・ワイルドやデュー警部など、同時代の著名人が次々に現れるさまは、まるでキム・ニューマン『ドラキュラ崩御』のよう。
ただ作品としては微妙である。
連続無差別殺人なので、事件がブツブツ途切れてしまうし、謎解きの興味も薄い。
作者は、ホームズ作品中の警官が腰抜けに書かれてあるのに憤慨しこれを書いたそうだ。
なるほどホームズはコカイン狂、ワトスンは駄目医者として、チョイ役で登場する(ちなみに別にドイルも出る)。
だが、こんなホームズファンに喧嘩を売るような書き方より、「会話には出てくるけど登場はしない」というような演出の方が、スピンオフっぽくて面白かったのではないか。
(なお訳では、ホームズもワトスンも、自分のことを「わし」と言う……あかんやろ)

264:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/10 06:40:29 GcKz2KGv
マックス・アフォード「魔法人形」を読んだ。
おなじみ国書刊行会の世界探偵小説全集の1冊だが、なんとなく積ん読していた作。
呪いの人形の謎、いわく因縁付きの館、ここに集ういずれも一癖ある人物等、
森英俊氏はオージーのジョンと評しているが、むしろ前半部分は本邦の横溝作品を
想起させるような作品だが、警察が動き出し犯人探しが本格化する後半に入ると、
一転、怪奇性は影を潜め出し、緻密な捜査と論理的な推理が中心となる。
内容的には作者がラジオ作家ということもあってか、御都合主義な偶然性が目立ち過ぎるのが難、また、丁寧に読めば犯人を当てることは難しくはない。
あとがきでアウトラインが紹介されているこの作者の他の作品の方が面白く
感じられるのは、前述した「魔王の足跡」と同様であった。
(奇しくも、「魔王の…」の元ネタとなった英国における雪上の謎の足跡が本作の最後の方で簡単に紹介されている)


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