04/08/07 14:46 5jc4L3rO
「一寸法師」新聞連載の経緯については、大乱歩のエッセイや松村氏の著書等にも
詳しい。どちらにしろ表面に出ている事だけ見ていても駄目である。
最近の2ちゃんねるが、全体的にレベルダウンして面白くなくなっている要因も
この辺にあるのだ。
「踊る一寸法師」と「一寸法師」を読み比べてみると、前者の主人公である一寸法師
緑さんの玉乗りお花に対する倒錯した愛、後者に登場する一寸法師の山野夫人に対する
偏執的な愛、いずれも拠ってたつところの根源は同じなのである。
前者で内なる残虐性をブレークさせた一寸法師緑さんのその後を示唆したのが、
後者で生き腕を抱えて登場する怪物であると読み込むことは可能なのである。
(「…おそらく曲馬団にでも勤めているのだろうが…」との記述が後者の第一章にあり)
当時のミステリ(探偵小説)の社会的地位の低さを思えば、キャラ使い回しまでしても、
大乱歩が大朝日紙上に書きたかったのはわからないではない。
売れっ子ミステリ作家に大新聞の担当者がバウムクーヘンを持って三顧の礼を尽くすような
現代とは事情が大きく異なるのである。
江戸川乱歩、手塚治虫等、かっては裏文化であったジャンルにおける優れた先人の苦労は、
2ちゃんねらー如きに計り知れないものがあったのである。