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『青葉君とウチュウ・ジン2』 松野秋鳴
まずは、前スレでの約束―二巻がより多くの人の手に取られるように買わない―を反故にした事をわびたい。
しかし、数日前に『くるくるリアル』があまりの人気のためか、
市場の循環に還されてしまう様をリアルタイムで目撃してしまった私は、
この本までもが消え去ることを恐れ、気づいたらレジへ持っていってしまっていたのだ。
(その店ではくるくるリアルを3冊仕入れていたのだが、自分が発売日に買ったのが1冊、
返本もとい市場原理によって奪い去られたのが2冊だったことなど、言うまでもない。)
話を戻すが、今作もまた素晴らしい「伏線の回収」であった。
まるで、一つのオチから無理矢理そのエピソードを作ったとも見紛うほどに、終始一貫としたストーリーであった。
4話構成でありながら、第4話を読んである程度推察すればほぼ全部読んだ気になれる、
時間の無い現代人にも把握しやすいストーリーテリングである。
その特徴は「1宇宙人1話」という、非日常を描ききるには物足りないものであるが、
作者はそれを難なくこなしている。
また、風味付けや隠し味にほど尖らない、水のような日常描写にも、
前回同様に豪華な設定の使い方がなされている。
その美貌を褒め称える描写だけで半ページを使って、
会話シーンが10ページ続いた後は背景程度となってしまう妹や、
登場人物が一切面白がらない(当然読者としても面白くない)コントが6ページも続くなど、
まさに神業でもって、宇宙人との接触という非日常とのバランスを取っているのだ。
最後に。
この小説の本当の主張は、川上稔作品によって生じた厚さ崇拝的な考えに一石を投じるもので、
同時に薄さの記録をも否定するものではないかと思われる。
厚さにしても薄さにしても、この作者なら難なくこなせるという、可能性がこの本にはある。