06/02/22 02:51:33 IIq+jYeW
「パートタイムプリンセス3 トリプルラヴァーズ」 神代創 (MF文庫J)
主人公はごく普通の高校生。だがある日突然、異世界のお姫様と精神ががたびたび入れ替わるようになってしまう。
お互いの意思を伝え合う手段は書置きのみ。その交換日記にも似たやり取りを交わすうちに、二人は心惹かれあっていく。
出会うことのない二人の交流を描いたパートタイムプリンセスは、心躍るけれどどこか切ない物語だった。
続いて出た2巻では、恋のライバルと精神が入れ替わってしまう。
姫と会えることはうれしいが、その姿で姫に近づくことはライバルを利することになってしまう。葛藤を抱える主人公。
さらにこの巻では、姫だけでなく空手少女な幼なじみや幼い容姿の侍女とも良い雰囲気となり、複雑な恋愛模様となっている。
そして、全ての決着の期待を受けて出たのが第3巻「トリプルラヴァーズ」である。
最終巻であるこの巻では、今まで主人公を苦しめてきた敵との入れ替わりが起こる。
事件の黒幕との入れ替わりである。普通にやっても盛り上がること請け合いだ。
しかし作者は手を抜くことはなかった。
その敵が老人である事をいかし、主人公に腰痛や、思うように動いてくれない体を体験させるのだ。
そして主人公は感じる。あいつもつらかったのかな?
なんと老人介護の精神にあふれた小説だろう。
さらに見所なのが、主人公と姫の恋の行方である。2巻で複雑に絡み合った関係をどう解いていくのか?
ここでも作者は大胆だった。なんと何も進展させなかったのである。
そう、1巻、2巻とつみあげてきた二人にはもはや何も必要ない。そのことを暗に示しているのだ。
そしてそれは異世界の存在についても言える。
戦闘状態に突入していた2巻のライバルや、その戦闘中に主人公をかばい傷つき倒れた侍女がどうなったのか?
全ては読者の想像に託されている。これ以上の自由な表現方法があるだろうか。
そして事件の幕は下りる。1巻のときに感じた寂寥感はもはやない。