06/02/17 01:06:07 mvoq8Aur
だがしかし、並の作家ならば、前述のようなギミックで現実感の崩壊を描いただけで満足するだろうが、
本作の作者は、その文章技巧によって、さらなる現実感の崩壊を、読者の前に現出させてのけた。
その酩酊感に溢れた文体は、それを読む読者の現実感すらをも喪失させるかのごとくである。
本文から、象徴的な一文を抜粋しよう。
「結局は光也の行いがこのゲームに自分がハマっていることになることを彼は自覚していない―」
我々は日本語であらゆるものを認識し、理解する。我々の「現実」は、日本語の上に成り立っているものだ。
作者が挑んだのは、まさにそれを土台から崩壊させることであった。
この幻惑の文体は、我々読者の言語感覚を麻痺させ、我々の認識する「現実」をも揺るがしかねない。
新人にして、言語というものを魔術的に操るこの才能に、我々は感嘆するしかないだろう。
まっこと、恐るべき新人である。