06/02/16 04:37:48 EycvPFHb
「ぼくと魔女式アポカリプス」 (著:水瀬葉月/イラスト:藤原々々) 電撃文庫
>>74-75 >>118-119にて語りつくされた感がある本作ではあるが、その物語は
まだまだ語るに足るものとして不肖私めもここに書評させていただく。
まず、すでに形式的でもあるが本作の簡単な説明をすると、
普通《ツマラナイ》の現実に無理矢理逆らい生きていた少年が、空気のようなクラスメイトの少女から
告白を受けるところから、少年が求めた『普通』でない非日常が始まるのである。
しかし、その非日常は少年が求めていたものとは異質のものだった。
作中の言葉を借りて言えば「逃れられない終焉」が始まるのである。
そう、この物語は終焉に向かって突き進むばかりの悲劇、しかし、その渦中で
必死にもがき苦しむ少年・少女の生き様《死に様》の哀しくも熱い壮大にし深遠な物語なのである。
なぜここまで生と死や、鬱や哀しみを前面に押し出した物語になったのかと聞かれたら、
私なら「まずあとがきを読め」と答えるであろう。
あとがきには、あまりに高尚・深遠な物語を手にとってしまった時の我々が衝動的にするであろう
奇行の数々を行った著者の記録が記されている。それも著者曰く「あまりの鬱っぷり」故のことだそうである。
新シリーズの立ち上げに苦労・苦悩し、一時は没原稿製造マシーンになってまで得た本書の刊行。
私は読了後にあとがきを読み、この作品のネガティブな現状の中で前進する主人公達が著者に重なって見えた程である
。
つまり、本作は著者の心情と深くリンクした作品故に、登場人物の心情もよりリアルに描かれた結果、
深遠にして壮大、生と死に直結した物語となっているのである!