06/02/02 00:55:53 AXzS6ZGY
くるくるリアル
当スレにおいて二度も賞賛されたかのこんであるが、
文化人の明日を担うMF文庫では、以前からも"現実"というものを問いかける本を世に放っていた。
それがくるくるリアルである。
話は唐突に、主人公が姉から女性を紹介されるところから始まる。
その女性は「<現実>から来た」「この世界は非現実のゲームだ」
「この世界で魔法を使いきったら帰らなくてはいけない」などと口走るぶっちゃけデンパであり、
<現実>や魔法を認めたくない主人公、<現実>に依存する彼女とでは、
まさにハリネズミのジレンマのごとく、互いを傷つけあっていくことにしかならない。
主人公はその女性との生活において、大いにアイデンティティを揺らがされるのだが、
それは彼女のアイデンティティをも揺るがせていくのであった。
そうして過ごす日々に、二人は自己と現実に向き合うことを決意する。
爽やか過ぎて読み終えたということすら感じさせない、切ない終わり方である。
テーマパークでのデート、ラストはあまり理由もないままなし崩しに不良と対決など、
ベタ過ぎてかのこんとネタが被っているが、このベタさ、ありがちな展開の踏襲こそは、
まさに同じことを繰り返しながらも前に進む"現実"と言えよう。