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「フェリシエラと、わたしと、終わりゆく世界に1 ~ゆき、ふりつむ~」 今田隆文 富士見ミステリー文庫
終わりゆく世界。タイトルにある通り哀しい世界の物語。
まず世界観から説明しましょう。
25年ほど昔、ある快楽物質が開発されました。
それは副作用を伴わない化合物で「きれいな麻薬」と呼ばれました。
その効能を極限まで引き出す装置「ダイモニオン」
はじめはフィーリングとして数時間程度利用されるようなものだったのですが、
次第に利用期間を延ばす人が現れ、そして寿命が尽きるまでダイモニオンに入る人が現れました。
そして、あちこちに専用の設備が建設され、人々はこぞってそのダイモニオンに入っていきました。
そうして、人類全ての人間がダイモニオンの中に入ってしまいました。
登場人物は、人々がまだ生産活動を行っていた時代に発明された人造人間「フェリシエラ」達です。
彼女たちの役目は、ダイモニオンの中で寿命を終えた人間を葬ること。
これは、この終わりゆく世界で淡々と日常を過ごしていく物語です。
静かに問い掛けるような文体が、水上カオリ嬢の柔らかなイラストが
そして無口な登場人物たちが、この物語を優しくそして哀しく包み込んでいます。
ちなみに、タイトルに 1 とありますが、次巻は出ることはないでしょう。
それが、哀しさをさらに演出しています。
さぁ、あなたもこの物語という名のダイモニオンに身を委ねてみませんか?