05/12/11 07:56:06 fd2z5Dig
「飛行機の話」 ―TORA! TORA! TORA!―
トラヴァス:「―そもそも、その飛行機は設計者によれば双発爆撃機の護衛機とし
て設計されていてね… それで非常識なほどの航続距離が与えられてい
たらしいんだ」
アリソン:「ふーん それじゃ爆撃機のエスコートが第一義で、CAP(上空直援)は二
義的な任務として設計されたワケね… だけど単発機がそんなに長く飛べ
るものなのかしら? 1000馬力級のエンジンと言ったわよね?
それじゃムリよ、やっぱり… 飛行機でもっとも重い部分は燃料が詰まったタ
ンクだもの そんな非力なエンジンでたくさんの燃料を積んだら、とても戦闘
機としては使い物にならないわ」
トラヴァス:「そう思うだろ… 設計者はその無茶な要求を、物理法則にすがって解
決したんだってさ」 アリソン:「というと? ―具体的になにをしたの?」
トラヴァス:「簡単さ 軽くしたんだよ 軽量化を徹底して、その飛行機はコクピット内
までが至るところが穴だらけだ 防弾鋼板も付いていないし、おまけに燃
料タンクの防弾もしていないらしい」
アリソン:「それはコワイわね…… タンクの防弾なんて、ゴムで内張りすればいいのに」
トラヴァス:「その国ではガソリンやオイルで溶けない合成ゴムの生産ができないんだ」
アリソン:「……冗談でしょ? エンジンのパッキングはどうしてるのよ
それで、よく飛行機の生産ができるわね」
トラヴァス:「パッキングは皮や膠化ラミネート紙をつかっているらしい
まあ、軽量化のおかげでその飛行機は運動性能がよくてね 戦争初期
はだいぶ活躍したらしいよ …乗ってみたい?」
アリソン:「遠慮しとくわ 首の後ろに防弾してない飛行機なんてまっぴらよ
たとえ落とされても、弾にあたらなければもう一度チャンスがあるもの それに
しても変わった国ねえ… パイロットはそのあたりをどう考えてるのかしら」
トラヴァス:「そうだね おそらく…」 アリソン:「おそらく?」
トラヴァス:「…なにも考えてないんじゃないかな」