05/07/23 23:57:55 sZhkfF9g
「ところで賀茂よ、一つ疑問なのだが―」
「？ どうしたんだアブデル」
「この国には三国志ってあるよな」
「それは隣の国の話なんだけどな･･････」
「ええい馬鹿者！ 最後まで聞かんか。おかしいとは思わんか。最初の場面のところでだな、酒場で喧嘩してた大の大人がひょっこり現れた第三者の言うことなど聞くと思うか？」
「だいたい酒が入ってりゃどんなヤロウでも見境がなくなるものだ。神に最も忠実な天使であるこの俺ならいざ知らず、凡人の酔っ払いにそんな自制心があるはずなどない」
「ああ･･････たしかその後、有名な『桃園の誓い』があったんだっけ･･････」
「それがおかしいというのだ。お前が酔っ払いの喧嘩の仲裁になど入ってみろ、ボコボコにされてケツの毛まで毟られるのが関の山だ。なのにヤツらはボコボコはおろか『義兄弟の契り』まで結んでしまうんだからな。･･････ん、まてよ。義兄弟―そうか！」
雷に打たれたかのごとく「ぬはああああああああっ！」と悶絶するアブデル。
「義兄弟―つまりそれはあくまで義兄弟なのであって兄弟ではない･･････。俺としたことがこんな初歩的なことに気づかんとは―」
「おいアブデル･･････」
「よく聞け賀茂よ。張飛と関羽がなぜあんなにもすんなりと劉備のしもべとなったか分るか？ なぜ『義兄弟』という設定にこだわったのか」
「設定って･･････」
「張飛と関羽は劉備に神を見たのだ。だから抗うことかなわずに平伏したのだ。そして『義兄弟』というポジションに置くことでソフ倫の規定から逃れ、しかも常に一緒にいられるというおいしい役どころをゲットしたのだ！」
「ぬううう。これは是が非でも！ 三国志、買わねばならん！」
闘牛が赤マントを追うがごとく、土煙を上げて本屋へと走るアブデルを見て、賀茂はいつものようにため息をつくばかりだった。