03/07/12 16:55
>>884
リライトはいかんらしいけど
ついつい
木登りの上手なラッコに出会った。ラッコは全身ずぶ濡れで、歩道のポプラの
幹にしっかりしがみついている。おかしい。この辺りには海どころか水族館さ
えないのに。あまりじろじろ見ても失礼だろうとは思いながらもちらちらと見
ている俺の視線を気にする風でもなくラッコはふかふかした毛むくじゃらな手
で俺に林檎をまっすぐに差し出したから
「どうも」
とにっこりぎこちなく微笑んで、俺は林檎を受け取ってしまう。ラッコはする
すると木を降りてくると、ぶるぶると体を振るわせたから俺の固まった笑顔は
飛んできた水滴でひどく濡れてしまう。ラッコは見送る俺を振り返りもせず四
つの足でとっとと立ち去ってしまう。俺は水を滴らせたまま間抜けに見送る。
そこへ俺の恋人がやってくる。きっかり二時間遅れているのに、いつもの優雅
な足取りだ。俺はもちろん腹を立てているがいざ女を目の前にするといつも何
も言えなくなってしまう。
「何なの、その馬鹿みたいな笑顔は?」
と言い放つ。俺が手にしている林檎を見ると女の機嫌は見る見る悪くなる。
「あんた、あたしが林檎大っ嫌いなの知ってんでしょ?」