06/05/26 20:15:15
例えば源氏物語や夏目漱石の作品なんかでも
「時代が違うなあ」と思う部分は幾らでもありますよね。
前者で云うとなんで顔観られただけでそんな恥ずかしがるの?とか、
後者で云うとえぇ?女の人ってこんなに女らしいしとやかな口の利き方しないよ
とか、
つまり
物語における時代の隔絶というのは寧ろ、『味わい』なんですよね。
難しい言い方をすれば「社会的関係の文化相対視」に繋がる様な物語の重要な構造なわけです。
もしそういった世の中の様子を書いた部分がカンタンに古びてしまうなら、
たぶんあまり重厚深遠ではない観点や思想のほうに問題があるのではないでしょうか。
もののあわれを解さぬ人には事物は衰えていくばかりのつまらないものでしかない。
Journalisticな作風しか取れないのならば、それが『文学』の本質から離れてしまうのは必然でしょう。
時代のなかで生きる人間の尊い有り様を描くことこそ、かつても今も、物語文芸の目標でした。
単に事実を報道するのではなく、
精神の髄に触れるような人間の普遍的様相に触れる真摯な描写をしなければ
長い歴史の風雪に耐えうるような堅牢な文体は生み出し得ないでしょう。