04/06/30 01:01
ゼロは多勢の人間から憎まれていた。俺だって同じだ。俺達を殺したいと思っているやつらは何百
万人といるだろう。ゴミのようなやつらだ。一人では発言できないやつら、一人では生きていけない
やつら、原始社会ならすぐに淘汰されてしまうやつら、本来なら繁殖からも切り離されているような
やつら、無能な貧乏人、組織や情報の奴隷となることで命を永らえた未熟児共だ。
俺とゼロはやつらを攻撃した。
ゼロの死因は心臓麻痺だった。酒と興奮剤と過激な性行為による心臓麻痺。
ゼロは殺されたのかも知れない。目に見えないブワブワとした気味の悪い無名の者達の圧力に潰さ
れたのかも知れない。ゼロだけは違うと思っていたのだが、結局はあいつも「向こう側」の人間だっ
たのかも知れない。
俺は人間を二種類に分ける。向こう側とこちら側だ。グリズリーベアの黄金色に輝く毛先がその二
つを分ける。
・この後一行空けて単行本の冒頭の<俺は二十七年前、造船所の正門の向かいにあるペットショップ
で生まれた。>という文章が続く。