03/07/09 12:07
民話の影響が実際のところどういうものかは分からない。
しかし、「土地の神話性」には大地礼賛、民族礼賛とは異なる要素もあって、
それが民話には結晶されていると私は思っている。
民話は民族の「魂」だとか「ふるさと」だとか言われるけれど、「礼賛」だけで
なく、自分たちの置かれた境遇のみじめさを笑い飛ばすような点があったり、
知り尽くせない自然に対する畏怖、そこに潜む異形の物(化物)を描きながら、
権力や体制に対する無力感をも表現して、からり諦める点などがカタルシス
として機能する。
このように書くのは、莫言たちルーツ派の感動とは違う方向性だろう。
だけれども、民話的な乾いた笑いは、礼賛とは異なるもうひとつの民族の
尊重の仕方であり、言うなれば「新しい民話」として、作家的「霊感」に満ちた
文学の在り方なのかもしれないと、ちらと考えた。