03/07/07 23:31
『現代中国の輪郭』という藤井省三氏の本、1993年に出たものだけれど
情報が豊富で、つまみ喰いしていて面白い(と言うには不謹慎な内容もある)。
『人民文学』に長編が掲載されたときの莫言の略歴に思わず笑った。
こんなユニークな略歴って、見たことない。
「…暮らしが厳しかった時期に、餓えのため彼の頭はおかしくなり、
神経系統は余り正常でなく、好んででまかせを言うが、口に出すと
すぐに忘れてしまう。…」
高行健が戯曲「バス停」で『ゴドー待ち』を意識したとか、鄭義『古井戸』
邦訳刊行後、逃亡中の本人から訳者宛てに序文が寄せられて再版時に
それを掲載したとか。
母国の言葉を剥奪され、チベット語での読み書きはできないザシダワに
ついても言及されている。文革のチベット文化破壊については、ミステリ
『頭蓋骨のマントラ』でショックを受けた。ラサの町に異民族を強制移住
させたり、寺院を破壊する政策に…。
チベット文明って、西欧合理主義に対峙する老荘思想以上に突き抜けた
ものがあるだろうから、宗教を介してでなく小説を介して知りたいものだ
と思う。