09/11/23 01:42:38 XPKrHL5v
「じゃあね。ゆみ。彼女によろしく」
笑顔で去っていく竹井の背中を見送っていると、背後から抱きつかれる。
「モモ」
名前を呼んで頭を撫でてやると猫のように甘えてくる。
「先輩。また悪待ちさんに会ってたんすか?」
「ああ。黙っていて悪かった」
「別にいいっすよ。先輩があの二人の事を心配しての事だってのは、分かってるっすから」
少しむっとした表情をする。
「怒ってるじゃないか」
「怒ってるんじゃなくて心配してるんす。正直福路先輩が先輩とあってる事を知ったら、何かするんじゃないかって」
「それは幾らなんでも心配しすぎだ。福路はそんな事は」
「悪待ちさんは酷い怪我を毎日してるっす」
「……」
「先輩にはあの二人の事は理解できないっすよ。あの二人は、今の関係が幸せなんす」
モモの腕に力がこもり、少し息苦しくなる。
「福路先輩には感謝してるっす」
「モモ?」
「もしあの二人が狂ってくれてなかったら、私と先輩がああなっていたかも知れないっすから」
目があったモモは無表情。だけど本気だと言う事は分かる。
「先輩。お願いだからあんまり関わって欲しくないっす。でないと、私が狂いそうです」
モモの瞳に福路と同じ狂気が揺れている。
「でも、きっと私と先輩ではあの二人見たいにはなれないっすね」
だってと続けるモモは今にも泣きそうだ。
「私がそんな事をしたら先輩は離れて行ってしまうっすから」
ああ、そうか。
少しだけ竹井が理解できた。
気がした。それが竹井の福路への愛し方なのだと。
もし私は、同じ立場になったらどうするのだろう?
離れるのだろうか?
それとも竹井のようにずっと傍にいて、最愛のその人にいつか殺される日を待つのだろうか?
だけどこの問いは何の意味もなさない。
私とモモはあの二人にはなれないのだから。