09/10/25 17:21:16 mEPulWey
名前もロクに分かってないキャラをSSに登場させるとか
151:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 17:37:31 dDq//fOM
「加治木ゆみです。
普段はヘタレな私ですが
今日はお酒の力を借りて、普段言えないことを言いたいと思います」
『どうしたんだモモ。
まだ触ってもいないのに、お前の果汁がどんどんあふれ出てくるぞ
モモは本当にエッチな子だな』
「言ってみてぇ~!
でも実際はいつもかじゅの果汁を搾られてるんですけどね~・・・」
152:130
09/10/25 19:00:23 GZtXnGc9
ごめ、完全俺得だと思ってたから続きなんて全く考えてなかったよ…
部咲はどうもエロというよりも、よくてキス止まりのさわやか百合展開しか思いつかん。
153:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 19:24:02 ypo1JtsG
グゼとかどう考えても読みにくいと思うんだがw
154:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 20:25:35 GZtXnGc9
>>152は>>137へのレス
155:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 20:46:52 NOJBSdmH
毎度ながら流れを読まず行きます
前スレの照咲の後編です
相変わらず長ったらしいけど、生暖かい目で見てやってください
5レス予定
156:照咲 1/5 南場
09/10/25 20:48:20 NOJBSdmH
気が付けば、小鳥の鳴き声が聴こえる。
カーテンの隙間から差し込む日射しに、しぱしぱと瞬きをし、朝の空気を感じ取る。
「ん…朝か」
今日は日曜であり、わざわざ早起きをする必要もないが、二度寝は苦手なので起きることにした。
「ん?」
意識がはっきりし始めて、どこかから聞こえる物音に気付く。
咲かな。
恐らく、お父さんは昼過ぎまで起きることはないだろうから。
部屋を出て、洗面所へ向かう。
ちなみに、この部屋は以前私が使っていた部屋だ。
当時の家具も未だに残されたままで、大した代わり映えもないまま、ただただ時間だけが過ぎていった。
そんな雰囲気を感じる。
多分、あの子のことだから、あえて変えてなかったのだと思う。
あの子は、自分で言うのも変だけれど、私のことが大好きだったみたいだから。
家族の前で改まる必要もないと、寝間着のまま洗面所で顔を洗い、リビングへ行く。
「…」
「……」
前者が咲で、後者が私。
咲は、実に良い姿勢でソファに腰を置き、本を読んでいた。
どうやら、読み耽っているらしく、こちらに気付く気配がない。
それにしても、本なんて読むのか、この子は。
まあ、私の知らない時間があったのだから、それこそ趣味の一つや二つ、あっても当然なのだが。
…ちょっぴり切なかったり。
真剣な読書を邪魔するのも気が引けたのだけれど。
挨拶はしたかった。
「おはよう、咲」
出来るだけ、自然に。
「…あっ、おはようお姉ちゃんっ!」
とりあえず安心。
気を悪くしたりしないか、若干心配だったから。
しかし、
「こらこら」
朝から抱き付かれてしまうとは、予想外。
「えへへっ」
にへらと笑って、私の胸に顔を埋める。
うーん…こんなにコミュニケーションの激しい子だったかな…?
まあ、悪い気はしないのだけれど。
157:照咲 2/5 南場
09/10/25 20:49:52 NOJBSdmH
「本なんて読むんだね。ちょっと意外」
そう言うと、咲はちょっとだけ頬を膨らせた。
「むー…それって私が本も読めないダメな子って意味?」
なんて抗議してくる。
そんなつもりで言ったわけではないけれど。
「ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃって」
主に、その横顔に。
普段は体型もさることながら、幼い顔立ちをしているからまるっきり子供に見えるのだ。
しかし、読書中の咲は、驚くほど神秘的で、私の目には綺麗な何かに見えた。
この子の新たな一面が見られて嬉しいと思う反面、またまた切なかったり。
あえては口にしないけれどね。
「やっぱりバカにしてるでしょー」
頬を膨らせているけれど、本気で怒ってはいない。
現に咲は、既に笑顔だ。
ちなみに現在進行形で抱き付かれていることをお忘れなく。
ついでに頭を撫でておいた。
笑ってる。
「それより、お腹空いちゃったな。何か食べたいものはある?」
埒が明かないので強引に話題転換。
「あ、ちょっと待って。私が作るよっ」
「ん、そう?じゃあお言葉に甘えようかな」
「うんっ、腕に縒りをかけて作るから待っててね!」
「ん、期待してる」
本当は私が作ろうと思っていたけれど、わざわざ咲が申し出てくれたのだからありがたく甘えよう。
しかしまあ…
「~♪~~♪」
鼻歌まで歌って、相当気分が良いらしい。
その様子はまるで、新婚当初の新妻みたいだ。
…そういえば、前に咲が私のお嫁さんになりたいとか言ってたな。
あの子がまだまだ幼かった、遠い記憶だけれど。
158:照咲 3/5 南場
09/10/25 20:52:07 NOJBSdmH
――
―
程なくして、私の目の前には、可愛らしい楕円形の黄身がご飯の上にポンと乗せられたお皿が並べられた。
いわゆるオムライスである。
「…驚いた」
「えへへっ」
「すごいね、咲。私の知らないうちに、すっかり出来る子だ」
そう言うと、あの子は私に寄ってきて、控え目に自分の頭を指差した。
「?」
一瞬、私は両目をぱちくりさせたけど、すぐに理解出来た。
「うん、良い子良い子」
手を伸ばして、この子の頭へ。
咲は"んー"なんて、気持ち良さそうに喉を鳴らしている。
まるで懐っこい仔犬だ。
自意識過剰かもしれないけれど、この甘えん坊な咲は、私だけが知っている咲なのだと思った。
お姉ちゃんの特権というやつだ。
そういう意味では、この子の姉に生まれたことを感謝しなくっちゃ。
ありがとう、お母さん。
ちなみにそのオムライスは絶品で、私の舌を蕩けさせた。
それにお袋の味というか、お母さんの味付けに少し近かった。
将来は良いお嫁さんだね、咲。
…私のお嫁さんってのは、さすがに忘れてるよね?
――
―その晩。
「ね、ねぇ、お姉ちゃんっ」
「なぁに?」
「今日一緒に寝てもいい!?」
なんと、というほど意外でも
159:照咲 3,5/5 南場 またしくじったorz
09/10/25 20:53:44 NOJBSdmH
なかったけれど、驚いた。その勢いに。
何度も言うけれど、この子は甘えん坊なのだ。
今さら不思議には思うまい。
だから、何となく挙動不審なのも気のせいだろう。
まあ、断る理由もないのだし。
「うん、いいよ」
「やったっ。えへへ…」
ただ、
「何で昨日は言わなかったの?」
「え…あ、えと、来たばっかりだし、疲れてるかなって…」
…はは、気を遣われたのか。
ちょっとくすぐったいなぁ。
「別に、気にしなくて良かったのに」
「だ、だってっ…その」
もごもごと、口を濁した。
ん?
これは、違う意味で不意を突けたのかな。
「…恥ずかしかったし…」
「今は?」
「恥ずかしい…」
多分、私はにやけていたと思う。無意識に。
160:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 20:56:02 NOJBSdmH
――
―
かくして、私と咲は一緒に寝ることに。
私は普通にベッドの上で、咲は下に布団を敷いて、という形になった。
「何か、久しぶり…だね」
数年と、数ヶ月ぶりかな。
昔はよく、怖い番組を見た日とか、寂しくなった日は一緒に寝ていたものね。
「うん…咲は、すっかり大きくなったね」
互いにベッドの上に腰掛けて、思い出話に花を咲かせて。
「身長は伸びなかったけれど」
「ちょっ…それ気にしてたのにー」
「あはは」
笑っている。
私たちは、笑っている。
昔のように、自然に、他愛のないことで、幸せに満たされる。
待ち焦がれていた、幸福感だった。
そこで、ふと思う。
「そういえば、あのお下げはやめたんだね」
可愛かったのに。
「あ、その…短くすれば、お姉ちゃんみたいに綺麗にかっこよくなれるかなぁ、って」
あれ、真っ赤になっちゃった。
そんなに恥ずかしいことだったかな。
むしろ頬を赤らめるべきなのは私じゃないかな。
嬉しいのだし。
「あ、あはは…それは買い被り過ぎだよ、咲」
「ううん、そんなことないよ!」
「私にとってお姉ちゃんは格好良くて、綺麗で、私のことを見守ってくれるもう一人のお母さんでっ…その、私の憧れで…それから、それから…」
かぁ、と頬が朱に染まるのがわかった。
照れ臭いのか、私も。
「も、もういいよ咲っ。こっちの方が…恥ずかしい」
「お姉ちゃん…」
「…ありがとう、咲。私のこと、そんなに想ってくれて」
互いに互いが、林檎みたいに紅くなっていた。
何だろう、この初々しいカップルみたいなやり取り。
「…」
「…お姉ちゃん」
この沈黙を打ち破ったのは、咲だった。
恥ずかしいので、ちょっとだけ視線を逸らして言葉を返す。
「何、かな」
「…一緒のベッドで寝ても、いい?」
私は、何も言わずに微笑んだ。
161:照咲 5/5 南場
09/10/25 20:58:21 NOJBSdmH
――
―
咲は、私と一緒の毛布に包まれて、向かい合いながら横になっていた。
手を繋いで、見つめあって。
笑っていた。
囁くように、咲は口を開く。
「…言った通りだったね」
「何が?」
と私。
構わず咲は続ける。
「…姉妹の縁は―そう簡単に切れたりしなかったよ」
思わず息を飲んだ。
…覚えて、いたんだ。
だから、私は
「お姉ちゃんの言うことに、間違いはないんだよ、咲」
なんて、悪戯っぽく笑ってみせた。
「大好きだよ、咲」
「…うん、私も」
今宵の月は、きっと笑っていただろう。
私たちが、笑っているように。
――
―
そうして、私たちは姉妹としての絆を再び結んでゆくのだけれど。
この二日間以降を語るか語らないかは、私の気まぐれ次第である。
御愛嬌。
了
162:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 21:02:09 NOJBSdmH
以上です
SS作者の皆さま、GJ!
楽しませて頂いております!
えー、とりあえず、しくじりすぎorz
今さらですが、携帯打ちで見辛かったらすいません
照咲大好きだよ照咲!
では
163:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 21:19:58 8tzjTfcP
>>147
>神奈川県、大矢海星高校
>東東京のガイエルさん、宮城の田中さん
この辺で吹いてしまった俺は汚れてるんだろうか
164:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 22:01:47 tU6HX8lQ
>>152
さわやか百合展開で良いと思うよ
まあなんか思いついたら書いて欲しい
165:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 23:38:59 5QvGj2Mg
個人の解釈だけど
レズ・百合萌えが18禁にあるのは「エロも扱える」他に
同性愛嗜好が青少年に悪影響を及ぼすとされているからかと
つまり何が言いたいかというと>>530好きなように書け
エロの有無はそんなに重要じゃない
166:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 23:40:33 5QvGj2Mg
>>152宛だった
167:名無しさん@秘密の花園
09/10/25 23:44:43 ZAEtqtGY
話変わるが、久保コーチと藤田プロって高校時代に面識がある気がするんだよなぁ
年近そうだし、一方は名門風越のOGでコーチ、一方は地元出身のプロ
なんか因縁ありそう
そんな感じでだれかss書いてくんないかなぁ
168:モンプチ壱
09/10/26 00:09:19 0tT9vafJ
コソコソ… つSS 透華様 出演:モンプチーズ、ちょっと照菫&咲和ほか
百合分:やや薄なれど、いちゃいちゃアリ エロ質0% ばか度大 3レスほど
スタート↓
***************
「粗忽の系譜」
穏やかに晴れたある秋の日―
「書庫の古記録の虫干し?めんどくせえ、なんで俺たちが」純が不満そうに言った。
ここは龍門渕家、透華がミーティングルームと呼ぶ部屋である。他の者たちは「居間」と呼んでいるが。
「しかたないよ。人手が足りないんだって。とーかもやる気になってるし」
「あいつは面白がってるだけだろ。好奇心旺盛なお嬢にも困ったもんだ…はぁ」
龍門渕家には巨大な古い書庫がある。巷間では「龍門文庫」と呼ばれ、中には膨大な量の文書が保管されている。
鎌倉時代から続くとされる龍門渕家代々の蔵書だ。古記録、古文書、文学書、思想書等々、その種類も豊富である。
無論、写本の類も多いが、中には貴重な原本もあると伝えられている。
古来、龍門渕家当主は情報に重きを置いた。
戦国の小大名であった龍門渕が、今川、武田、織田といった大勢力に飲み込まれずに来れたのは、武勇もさることながら
情報戦に長けていたことが、最も大きい要因である。
ただ明治期以降の当主たちが余り関心を待たなかったこともあり、歴史的に見ても貴重な文献が死蔵された状態だった。
第二次大戦後の混乱で、目録を紛失してしまったのが痛かった。昭和30年代から再調査が開始されたが、現在に到るまで
に分類・解析が済んだものは、全体の三分の一に満たない。時折数名の学者が入るだけで、調査は遅々として進まなかった。
「さあ、みんな準備はいいかしら?始めますわよ!」透華が居間に入ってきた。頭に三角巾、そして割烹着を着ている。
「うわ、その格好…気合入ってんなあ」 「と、とーか、かわいい…(新鮮だぁ)」
「わー、かっぽうぎだー。衣も着るー」 「とーかお嬢様、お似合いです!きまってますぅ」 「…おかあさん」
「ふふん、ありがと。もっとほめてもかまわなくってよ」
くるりんっと一回転してポーズを決めた。アホ毛が三角巾を押し上げている。
「なあ、とーか、俺パスしていいか?」純がため息混じりに言った。
「何をおっしゃいますの!紙って意外と重いんですから、男手は必要です!」
「ぐっ、俺は女っ……はぁ、とーか、ちょっとこっちへ」 「?、なんですの?」近寄る透華。
と、突然、純が透華の頭をむぎゅっと抱きしめた!「うぶぶぶっ、もがーーっ!」奇態な声をあげる透華!
「こいつめっ、どうだ!この純様の豊満な胸は!これでもまだ俺を男呼ばわりするかーー!」 「ふむーーっ!!」
「きゃーっ、お嬢さまあ!だだだ駄目ですぅ!はなしてくださーい!」
あゆむが駆け寄り、どうにかこうにか二人を引き離す。 「ぷはぁっ」透華が大きく息をついた。
「ハァハァ、思い知ったか!この俺様の魅惑のボディを!!」
「ハァハァ、じゅ、純のくせに!やわらかいとか気持ちいいとかっ!どーゆうつもりですのっ!!」パニクっている。
「くせにってなんだ、くせにって!このやろっもう一回…」 「じゅんのくせにってことですわー!きゃーっやめー!」
「だ、駄目ですーっ!だーめーー!!」あゆむが純に抱きついて必死に止める。
「はいはい、そこまで。早く始めないと日が暮れちゃうよ」ポンポンと手を叩き、はじめが二人を止めた。
「そ、そうですわっ。さ、早く始めますわよ!」そう言って透華がそそくさと部屋を出た。衣が楽しそうに続いた。
「それにしても、純ったらいつの間にあんなおっぱいを…」透華は赤い顔でブツブツ言いながら、書庫へ向かった。
「はー…、やれやれ」後に続こうとした純に、はじめが声をかけた。「あ、純。あとで、話、あるから」ニッコリ。
「うっ、は、はじめ…いや国広サン?…怒ってらっしゃる?」
「いや、別に。ただ、ちょっと、あとデ、”話”、あるカラ」ニッコリ。(お、俺はしくったのか…?)
涙目で立っていたあゆむに、ともきがそっと近寄った。トントンと軽く肩を叩き、訊いた。「…どっち?」
「と、ともきさん?え、どっちって?」 「…じゅんととーか、どっちに妬いてるの?」
「えぇっ///!い、いえ、妬くとか私そんな、私はただお二人を…えっと…その…?…ど、どっちなんでしょう?」
「…なかなか複雑w…」そうつぶやき、クスッと笑いながら、ノートPCに何かを打ち込むともきであった。
169:モンプチ弐
09/10/26 00:11:41 0tT9vafJ
* * *
全部はとても無理なので、限られた冊数を虫干ししたが、それでも結構な重労働だった。全員へとへとになって
作業は終了した。で、話は翌日に跳ぶ。いつもの居間でのこと―
「あー…、体中痛え。あんなミミズののたくったような字の並んだ文書なんざ、全部燃やしちまえばいいんだ」
「wふふっ、そーゆう訳にはいかないでしょ」 「でもなんだかんだいって純さんが一番働きましたよね」
「べ、べつに俺は…。それにしたってだ、あんなもん後生大事に取っておいたって、何のメリットもねえだろ?」
「メリットなら大アリですわ!」バァンッと、とーか様の登場である。手に古臭い和綴じの本を一冊持っている。
後に続いて、衣とともきが入ってきた。
「偶然とても興味深いものを発見しましたわ!これを見て頂戴」中央のテーブルに本を置く。
「えっと…『三代龍門公透子記 巻之三』…でいいのかな?」はじめが手に取り、付箋の貼ってある頁を開く。
「…読めないよ」 「衣は読めるぞっ、ほめるがいい!」 「すげえな、衣こんなもん読めんのか?」
「もちろんだ!すごかろうっ!特別になでても良いぞっ」 「こいつめ自慢げにっw」ぐりぐり「痛っもっと優しく!」
「衣に読んでもらって、ともきが入力したものをプリントアウトしたのが、これですわ」全員にペーパーが配られた。
「なになに…、…にひゃくさんじゅうだん、みやながなにがしの…、みやなが?」
プリントには、以下のように記されていた。
~写本 三代龍門公 龍門渕透子記 巻の三 弐百参拾段 宮永某の娘のこと ※( )は虫食い
( )の郷の( )宮永の姓を名乗る( )に( )娘一人ありて側女として透子卿に仕えるものありけり
名を( )といふ そのもの 粗忽にて なにほどもなき平らかなるところにて転びたることたびたび
使ひの道行において惑いたること幾十を数えたりといふ( )……
内容は大体こうだ。三代目女当主 龍門渕透子に仕える者の一人に、宮永某の娘がいた。かなりのドジで、転ぶ迷うは日常茶飯事
だったが、透子に妙に気に入られ側女として仕えるようになった。透子は夜伽の相手にいつもこの娘を指名した。
とてもおとなしい小娘であったが、他の者にはない特徴があった。囲碁、双六等の勝負事に異常なほどの強さを発揮したのである。
「その強さ鬼神の如く也…とーか、これって…」「ふふっ。話は後で。取合えず全部目を通してみてくださる?」
あるとき、領地の山のひとつに鬼が住み着いた。時折、近隣の村々を襲っては略奪等を繰り返した。かなりの手練な上に
無類の博打好きとの噂だった。討伐に当たった者達が二度に渡り撃退され、透子自らが討って出ようとしたところ、例の
側女が進み出て言う。「私めにお任せください。鬼に勝負を持ちかけ、退治てみせましょう」
単身山に乗り込んだ側女は、賭け事で散々に鬼を叩きのめし、約束どおり出て行けと鬼に迫った。逆上した鬼が側女を殺めようと
したところ、潜んでいた透子が勇躍躍り出て、一刀のもとに鬼を切り伏せた。
その晩の睦み事のあと、床で透子が何故それほどまでに賭け事に強いのか問うたところ、この娘は次のように答えたという。
「むつみごとってなんですか?」「ん?この場合はセックスのことだなっ」衣がしれっと答えた。あゆむは真っ赤になって黙った。
その昔、今回と同じように賭け事好きな鬼に苦しめられていたご先祖が龍神に祈願したところ、賭け事の場を支配する力を
与えられたという。ただし、その代償として、一族の女はすべからく粗忽者となる運命を担わされてしまったとのことであった。
…本の話はここまでだった。その後のことは、頁の欠損がひどく、判読不能であった。
「…とーか、まさかとーかはこの宮永某の娘のこと」 「察しの通り、この娘は宮永照、咲姉妹の先祖に違いありませんわ!」
「ばかばかしい、御伽噺だろー?」
「あら、御伽噺がすべて架空の話だとでも?これって妙に生々しくありません?例えばそう、酒天童子のように」
「あー、そう言われれば確かにな…。はじめはどう思うんだよ?…?…おいはじめ、聞いてんのか?」
「ブツブツ…とーかの…とーかのご先祖様と…、夜伽とか…ゆるせない…ブツブツブツ」 「は、はじ…国広サン?もしもし?」
「え?あ、ああごめん。で、とーかは何故これを?この話が本当だとしてそれがどうしたって言うのさ?」
「ふっふっふ、私は!この説話にこそ、宮永姉妹攻略のヒントが隠されていると看破したのですわ!」
170:モンプチ参
09/10/26 00:13:36 0tT9vafJ
* * *
一方その頃、清澄高校 ―
「あ、あちっ、あわわわっ」 「危ない!咲さん!」
お茶を運ぼうとした咲が転びそうになり、和がそれを受け止めた。ポヨヨン。
「ご、ゴメン、のどかちゃん。だめだね私ドジばっかり…直さなくっちゃね」
「いいんです。咲さんは、そのままで」 「え、でも」
「いいんです。お茶なら私が入れますから。これから先も、ずっと、ずっと…」
「のどかちゃん…」 抱き合った体勢のまま、見つめ合う二人。
「ほほう」
「あー…、ふたりともー、お茶冷めちゃうわよー」
「きっともう激甘紅茶になってるじぇー」
「のどかちゃん…」 「咲さん…」 外野そっちのけで見つめあう二人であった。
一方その頃、白糸台高校 ―
ぺちょっ
弘世菫はあきれていた。視線の先には、廊下に突っ伏す宮永照がいる。
「………」 「何故だ、照…」
「………」 「何故、何もないところで転ぶんだ…」
「…違う」 「違う?…何が?」
「こ、これは、…そう、罠だ」
「………」 「………」
「も、もう行くぞ」すくっと立ち上がり、照が歩き出そうとした。「…照、そっちは反対方向だ」
菫は、ピタッと立ち止まった照の手を握り、引っ張って歩き出した。照は俯いてムスッとしている。
ときたま見せる表情だ。とたんに子供っぽくなる。
「照、お前さ、あんまり私から離れるな…」 「………」
返事の代わりに、少し強く手を握ってきた。抗議なのか、恭順なのかはわからなかった。しかし、
(あーもう、なにコイツ!なんなの!かわいい、カワイイッ、かわいいっっ!!)内心、胸きゅんきゅんの菫であった。
* * *
「宮永咲は言わずもがな、ともきの調査によれば、姉の照も相当のドジだとか。先の説話と合わせて考えれば、これは、
そう、いわば ”呪われしドジっ娘の系譜 ”ですわ!!」
「の、呪われしって…」 「すごいんだか間抜けなんだか、よくわからん…」はじめと純は半ばあきれていた。
「…つまり、とーかはこう考えたと…もし仮に宮永姉妹のドジを矯正することができれば…」ともきが言った。
「その通り!逆に、あの魔王、宮永姉妹を弱体化できるかもしれませんわ!!」
「…どーやって?」純が訊いた。 「へ?」 「だから、どーやって?」 「そ、それはこれから考えるんですわ!」
「正直言って、難しそうだよねえ」はじめが言った。「ううっ」
「さ、お茶にしよーぜ。あゆむー、お茶淹れてくれー」 「あ、はーい」 「うううっ」へこむ透華を見て、衣が言った。
「らしくないぞ!そんな落ち込むなとーか!あっちはドジかも知れぬが、おっちょこちょいならとーかの方が上だ!!」
「おお、 そーだな、おっちょこちょいならとーかだよな!」純が同意した。
「そ、そうだよ!おっちょこちょいならとーかが一番だよ!だから元気出して、とーか」はじめが励ます(?)。
「そ、そうですわねっ。おっちょこちょいならこのわたくしが…ってこら!誰がおっちょこちょいですって!!」
最近覚えた乗りツッコミである。
「とーかお嬢様、完璧です!乗りツッコミきまってますー!」 「…GJ」ともきが親指を立てる。
「ふふん、ありがと。もっとほめてもかまわなくってよ!!」 「はは、一瞬ホントに心配した僕が馬鹿だったよ…」
透華はくるりんっと一回転してポーズを決めた。アホ毛がぴゅんぴゅん回っていた。…うららかな秋のある日の出来事であった。
(…とは言うものの、ドジっ娘矯正計画!あきらめませんわよー!!)
*************** 以上 読了感謝
171:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 00:48:44 ixmRW4Rb
>>170
オモローww
門渕のアットファミリーさは以上だなww
GJ!
ところで、読んでいる途中に何故か、朝起きたら小さくなっている純を想像してしまった……
絡み所としてはともきーか衣かな、と思うのだが
小さくなる、ぬこになる――というシチュをそれぞれのカプで妄想してしまうオレは終わっているかもしれないな
172:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 00:51:34 iaGHnV4T
一と池田の続編SS書いたので投下します。
終盤は百合百合してるので、このカプで百合描写が苦手な方はご注意下さい…
173:「くにひろマジック」1
09/10/26 00:52:13 iaGHnV4T
ある日、はじめと電話をしていたらこんなことを言われた。
「今度、華菜の家に行っても良いかな?」
えっ…
なんだってえーっ?!
「べっ別に良いけど…てゆうか、ぜひ!」
あっでも…
ふと、悲しい現実を思い出す
「…」
「華菜?どうかしたの?」
「…うちは親が仕事で居なくても、あたしが学校休みの日は、もれなく妹達も一緒に居るんだ…」
「ああ、なんだ。そんなこと…」
はははっと、電話の向こうから笑い声が聞こえる
にゃっ?そんなこととは…?
「僕は、別に妹さん達が一緒に居ても気にしないよ」
「え…いいのか?」
「うん。まぁ、二人きりになれないのは少し残念だけど、華菜に会えるってだけで僕は嬉しいから…。」
ずっきゅーん!
見事に華菜ちゃんのハートはこいつに打ち抜かれてしまった。
そうゆう恥ずかしい台詞はほんと、反則だし…
「じゃっ、じゃあ次の土曜あたりにでも…」
「うん、了解。」
「待ち合わせ場所はどうするんだ?」
「うーん。そうだねぇ…こないだ、教えてもらった住所でなんとなくは、どの辺に家があるのか分かるけど…」
「やっぱ、ちゃんとどこかに待ち合わせた方が良いんじゃ…」
「いや、少しの間とは言え、妹さん達だけを家に残すわけにもいかないよ。逆に待ち合わせ場所まで連いてきてもらうのも悪いし」
「う、うん…」
「まぁ…そのへんは、うちのハギヨシさんになんとかしてもらうよ。だから華菜は家で待ってて?」
「ハギヨシって、こないだ言ってた例の、執事か?」
「うん、そうそう。あの人は出来ないことなんか何一つ無いってゆうくらい、何でも出来る万能な執事さんだから、華菜の家まで行くのに絶対に道に迷わない完璧な地図くらいは作ってくれるよ」
「へ、へえ…何だか凄いんだな…」
「はははっ。とゆう訳だから、華菜は家で待ってて。ねっ?」
「うんっ分かったし!」
174:「くにひろマジック」2
09/10/26 00:54:43 iaGHnV4T
そして当日。
ピンポーン。家のチャイムが鳴った
「はいはいはいはいっ♪今行きますよーっと」
ガチャリと、玄関の扉を開ける
「やぁ」
そこには、ニコッと天使のような笑顔の、あたしの可愛い恋人の姿がっ。
「ようこそっ!さぁ、あがってあがって」
「うん。じゃあ、お邪魔しま…」
ダダダダダダダッ
ああ…三人分の賑やかな足音が近づいてきた…
「おねーちゃん!誰がきたのっ?」
「あっこのまえの!」
「はじめだし!」
わぁいわぁいと妹達が騒ぎだす…
はぁ。うるさい…
「あははっ。こんにちは。今日も君たちは元気いっぱいだねぇ」
「はじめっ!こっちこっち」
「あそぼーっ!」
「はやくおいでだし!」
三人の妹達が、はじめの腕や足にしがみついてズルズルと部屋まで引っ張ってゆく。
くっ…
いくら妹でも、あんなにベタベタとはじめに触るのは見ていて面白くない…
しかし、すぐにいけないけない!と、あたしは頭をぶるんぶるん振って冷静さを取り戻すよう、自分に言い聞かせる。
いくら何でも妹に嫉妬するのは、華菜ちゃん子供すぎだし…
「まあ、狭い家だけど適当に座ってね。今お茶いれるから」
「うん。ありがとう」
台所に向かい、冷蔵庫からウーロン茶が入っているポットを取出しコップ二つ分注ぎ、続けてオレンジジュースを三つ分、プラスチックの小さなコップにコポコポと注ぎ入れる。
「はじめ、これなあに?」
「うわぁ!おもちゃがいっぱいだし!」
「飴もある!」
ん?なんだ?
後ろの方から妹達の興奮する声が聞こえてきた。
トレーに五つコップを乗せ、居間に戻ると、はじめと妹達がテーブルに沢山のオモチャらしきものを広げて、それをみんなで囲みワイワイと楽しそうにしていた。
テーブルにコトッとトレーを置き、どうぞとお茶を差し出す。
「ありがとう、華菜」
「はじめ、それはなんだ?」
「ああ、今日はみんなに僕の手品を見せて楽しんでもらおうと思ってね。それで、色々と用意してきたんだ」
え、手品…?
「お前、手品なんて出来るのか?」
「まぁ、簡単なものしか出来ないけどね。実は…」
そのまま続けて、はじめが話し始める。
175:「くにひろマジック」3
09/10/26 00:57:00 iaGHnV4T
「僕のお父さんはプロのマジシャンなんだ。いろんな地域を回って、出稼ぎに行ってるんだよ」
「へえ、そうだったのか!初めて聞いたしっ。すごいなぁ」
「まあ、あんまり上手くはいってないみたいだけど…」
「そうなのか…」
「うん。まぁ、そんなことは置いといて、早速始めても良いかな?」
「喜んで!」
うわーっ…
目の前に広がる光景を見てただただ、凄いの一言に尽きる。
はじめの手品は見る者をどんどん虜にしていくのだ
「はいっ。ここに、一つ飴玉があります」
そう言って、はじめは自分の手のひらに飴をちょこんと乗せてあたし達に見せつける。
「今から、この飴玉を君たち三人のうち、誰かの服のポケットに移動させてみせますっ」
にっこりと笑い、はじめは妹達のポケットを指差す。「3・2・1」
カウントが始まり、ゼロ!と言った瞬間にギュッと飴を握り締め、すぐにパッと手を開く
「えええっ?!」
ついさっきまで、そこにあったはずの飴が姿を消していた。
「うわーっ!飴が無くなってるよ!」
「どこっ?どこにいっちゃったのっ?」
「あーっ!あたしのポケットに入ってるしっ!」
わぁーっ!と妹達から歓声があがった。
そんな、妹達の姿を見つめ、はじめもニコっと微笑む。
「次は…」
それからも、はじめの手品はどんどん続いてゆく。
ハンカチをステッキに変えてみせたり、びー玉を手の中で一個から二個、二個から三個へと増やしていったり。
そして、何時間か経った頃…
「すぴーっすぴーっ」
はしゃぎ疲れたのか、妹達はみんな、パタパタと床に寝転がり、眠りについていってしまった。
やれやれ、と思いながら一人ずつ抱えて、寝室へと運んでゆく。
「ふぅーっ重かったぁ…」
「ふふっ。ご苦労様」
「それにしても、はじめ。お前…本当に上手だったな!生の手品なんて、初めて見たし…」
「あははっ。ありがとう。これでも小学生の頃から色々とお父さんに教えてもらってたから、あれくらいのものならいつでもお披露目出来るよ」
「にゃーっ。凄いなぁ…」
「それはそうと…」
じりじりと、はじめの顔があたしに近づいてくる…
その距離、わずか10センチってところだろうか…
当然、華菜ちゃんの心臓はドクドクドクッと大きな音を立て始める。
176:「くにひろマジック」4
09/10/26 01:01:43 iaGHnV4T
「はっ、はじめ?ち、近いよ…」
「ふふっ。二人きりになれたね?華菜」
はじめの、少し企み事をしているかのような意地悪な、でも天使のように可愛い笑顔があたしにどんどん迫ってきた。
「うっ、うわぁ!そんなとこに乗るな!」
「ええー。良いじゃない…僕、そんなに重いかな?」
「いや、重くはないけど…むしろ軽すぎだし…」
首の後ろに腕をまわされ、足を延ばして座っていたあたしの上にはじめが乗っかってきたのだ。
向かい合わせになり、ジッと見つめられる…
いつもは上目遣いになることが多いはじめが、今は少しだけ、あたしより高い位置からこちらを見下ろしている。
「うう…はじめ。…なんのつもりだよっ」
「んんー?華菜はこうゆうことされるの嫌い?」
意地悪な台詞でチクチクとあたしを攻撃してくるはじめ。
「嫌いってゆうか…」
「うん?」
「さすがにこんなことされるのは恥ずかしいというか…」
「ふふっ。華菜、顔が真っ赤になってるよ?」
「お、お前がそうさせてるんじゃないかっ」
「あははっ」
「はぁ…恥ずかしい」
「ねえ、キスしちゃっても良い?」
うっ。だから、可愛いってば…その顔!
「ど、どうぞ…」
ちゅーっ
ああ…
はじめの唇が華菜ちゃんの唇に重なってる…ん?んんっ?!
「痛っ!」
「あっ、ごめん。噛んじゃった♪」
「ちょっ、お前今のわざとだろ!」
「ええー?違うよぉ」
「うそつけ!あ、あんまり意地悪なことすると、さすがにあたしも怒るしっ」
「あははっ。怒った顔も可愛いけどねっ」
「うっ、うるさいしっ」
まあ、本当はちょっぴり…いや、かなり嬉しいんだけどね
でもそんなこと言ったら、ますますこいつの思い通りになってしまう気がする…
「かーなっ。かわいーよっ」
「ふにゃあ…」
はじめに頭をスリスリと撫でられた。
華菜ちゃんは今日も、こいつにいじられまくりだしい…
でも…。
妹達を喜ばせるために、わざわざ道具を持ってきて手品を披露してくれる、そんな優しいはじめの事があたしは大好きだっ!
―終わり―
177:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 01:25:03 XWrwnrDZ
>>168
GJ!
こういうの好きだw
それにしてもマコのセリフが「ほほう」だけなのは違和感がまったく無いな
178:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 01:25:48 VBetIorT
>>162
照咲があるかとこのスレを見るのが一日の楽しみだ。
この二人といえばどろどろしたのがうかぶけど
こういうほのぼのしたのもいいな……GJ!
179:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 03:09:46 EN2lTv3E
>>147
結構良かったよ
というか続きがめちゃくちゃ見たい
>>162
すごく良かったよ
これは続編はあるかもしれないってことかな
それはそうとこれ前スレ122以降の続編?
>>170
先祖の話は何だこれって感じだったけどおもしろかったよ
はじめと井上の話と歩の件が気になる
井上には何事もなかったみたいだけど
>>176
GJ
やっぱりこの組み合わせも結構良い
180:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 06:29:43 vx+E69TM
>>179
そうですね
前スレの>>122→>>471→>>841は全部繋がってたりします
実を言うと前々スレから繋がってたりします
自己主張失礼しました
181:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 07:57:37 iaGHnV4T
早朝から失礼します。
前スレからの
菫→照咲シリーズの続きです。
投下の前に、ちょっとこのSSの説明を失礼します
これは、照の誕生日のお話で、前スレではまず始めに菫視点から、次に照視点。
最後に今、咲視点を完成させたので投下します。
そして今回の咲視点で書いたこの話は、咲が照の元へ行くまでの道程の様子を中心に書いたもので、照の家に着いてからの話はほとんど書かれていません。
なので、前作の照視点を読まないと少し話が分からないシーンがあります
菫視点は読まなくても大丈夫かと思いますが…
そして、一応3人の視点から見た、この物語が今回の投下で完結になります。
終盤は少しシリアスになる一万字越えのロングSSになりますが、次レスからスタートです。6レスほどお借りします
182:菫→照咲 1
09/10/26 07:58:32 iaGHnV4T
部活が終わって、みんなが次々と帰宅していく中、わたしは帰り支度をしながら、あることで悩んでいた。
「うーん…どうしようかなぁ」
「どうかしたんですか?咲さん」
「うわぁっ?!和ちゃん…っ?わたし、今何か言ってた?」
「ええ…。どうしようかなぁ、と私には聞こえましたが…」
「えぇっ!知らない間にわたし、独り言喋ってたんだ…うぅ。恥ずかしい…」
心配そうに和ちゃんがわたしを見て、こう言った
「何か悩んでいるんですか?私で良ければ、お話を聞きますよ。」
「あ、ありがとう!和ちゃん」
「実はね…」
わたしは和ちゃんに、今悩んでいる事について、説明をした。
「そう…。明後日はお姉さんのお誕生日なんですか」
「うん!だからね、内緒で東京まで一人で行って、お姉ちゃんをびっくりさせたいんだあ…
名付けて、お姉ちゃんびっくり大作戦!
まぁ、そのままなんだけどね…
その作戦の計画はほぼ全部、わたしの頭の中で完成していた。
でも、一番肝心な『何をプレゼントするのか』
これだけが二日前になった今日でも、まだ決まっていなくて、わたしはかなり焦っていた。
最近は、放課後に毎日お店に寄って、雑貨や文房具などあれこれ見て色々と考えるんだけど、いまいちピンと来るものが見つからず、何も収穫が出来ないまま家に帰る度に肩を落としていた。
「咲さんっ!」
「ひゃうっ?!」
急に、和ちゃんに手を握られてびっくりした
「それなら、今から一緒に街までプレゼントを選びに行きましょう!」
「えっ?いいの?和ちゃん…今からそんなとこまで行ったら家に帰るの遅くなっちゃうよ?」
「もちろんです!時間なんて気にしません。そうと決まれば、すぐに出発ですよ」
「う、うんっ!」
183:菫→照咲2
09/10/26 07:59:38 iaGHnV4T
そのまま、わたしは和ちゃんに手を引かれて学校を飛び出す。
このままじゃ、当日になってもプレゼントが買えないんじゃないかと不安になっていたところだったので、今の和ちゃんは、わたしにとって凄く頼もしかった。
電車に乗り、和ちゃんに質問をされる。
「プレゼントの参考までに聞きたいんですが、お姉さんは趣味か何かありますか?」
「うーん…趣味かぁ。何かあったかなぁ…。東京のお姉ちゃんの家に遊びに行っても、お部屋の中は必要なものしか置いてない感じだったし…」
「お姉さんが好きなものとかは?」
「やっぱり麻雀かなぁ…?高校を卒業したらプロを目指すんだって。だから、大学に入ったら本格的に麻雀の勉強をするから忙しくなるみたい。」
「そうなんですか。じゃあ、これから忙しくなるんでしたらスケジュール帳とかはどうでしょう?きっと、役に立つと思いますよ」
「スケジュール帳かぁ…うんっ!それだっ。今わたし、なんだかピンと来たよ!それにしようかなっ」
「ありがとう。和ちゃん!」
「いいえ。お役に立てて良かったです」
――――――――
「ここなら、雑貨や文房具など色々揃っていますから」
和ちゃんに言われて、わたし達は街の中心部にある大きなデパートに入った。
「うわあっ。ほんとだ!品揃え豊富って感じだね!」
「ええっ。文房具はあちらみたいです」
文房具コーナーに着くと、来年用のカレンダーや手帳、スケジュール帳などが棚にたくさん並んでいた。
「うわぁ…いっぱいあるよ…」
「そうですね…。お姉さんは何色が好きなんですか?」
和ちゃんに聞かれて、少し悩んでしまった。
そう言えば、お姉ちゃんとそんな話したこと無いからなぁ…
「少なくとも、ピンクとか黄色みたいな明るい色は好きじゃないかも…。ハート柄とか星柄とかもちょっと…」
「では、シンプルに白などが良いかもしれないですね」
ふと棚の中に白色だけど、お洒落なデザインのものを見つけた。
手に取り、重さや中身を確認する。
うん。大きさもちょうど良くて使いやすそうだ。
184:菫→照咲3
09/10/26 08:00:41 iaGHnV4T
よしっ。
わたしはこれを買うことに決めた。
「良いのが見つかってよかったよ。ありがとうね、和ちゃん!」
「いいえ。金曜日、お姉さんと楽しんで来てくださいね」
「うん!」
――――――――
そして、当日。
わたしはお泊り用の荷物を詰め込んだバックを持って、朝早くに電車に乗り込んだ。
今日これからの計画はこんな感じだ。
まず、東京の駅に着いたら、駅の中にあるお店でお昼ごはんを食べる。
一人で飲食店に入るのはちょっと勇気がいるけど…
次に、学校に向かう電車に乗り換える。
そして、きっと2時頃には学校に着くだろうから、あとは学校の近くにある喫茶店にでも入って、お姉ちゃんの授業が終わるのを待つ。
金曜は、だいたいいつも3時くらいには終わるって前にお姉ちゃんが言ってたから、その頃を見計らって電話をかけてみようかな。
出なかったら、メールでもいいや。
もし、無事に会えなかったらどうしようと、少しだけ不安にはなるけど、でも。
わたし達ならきっと大丈夫。そんな気がするんだ。
あっ、でも…
ふと去年のことを思い出す。
まだ去年はお姉ちゃんとの間に壁があったから、お姉ちゃんの誕生日の時、こっそりお母さんに電話をかけて、代わりにおめでとうって伝えてもらおうと思った。
そしたらお母さんがこう言ってたっけ
「あの子ったら、私がおめでとうって言うまで気付かなかったのよ。若いのに、本当に自分のことに無頓着なんだから…」
確かにお姉ちゃんって、自分のことなのに無関心なところがあるし、少し天然でもあるから、もしかしたら今日のことも忘れてるかも…
でも、今日はわたしが直接お祝いするからね!
よしっ頑張るぞ。
わたしは一人で静かに、キュッと手を握った。
ところが…
頑張るぞ、と意気込んだのは良いものの、駅で降りてから、ちょっと歩いただけで早速わたしは迷子になってしまった。
185:菫→照咲4
09/10/26 08:01:56 iaGHnV4T
「うぅ…。こっちで良いはずなんだけど…」
持ってきた地図を何回見直しても、なかなか白糸台高校まで辿りつかない…。
周りにある建物も、地図には書いてないし…
「おかしいなぁ…」
そうこうしていたら、あっという間に時間が過ぎていき、気が付いたらもう3時になってしまった。
「うぅ…どうしよう。今お姉ちゃんに電話しちゃったらせっかく内緒にしていた意味が無くなっちゃうしな…」
そう、ここで諦めたら駄目なんだ。
わたしはもう一度、地図を見直す。
すると、あることに気が付いた。
「あれっ?」
うわぁ…どうしよう…
よく見たら、学校とは全然逆方向に歩いて来ちゃってたよ…
あっ。そっか、さっきのお店を右に行くのか…。
わたしは大急ぎで引き返し、さっき見たお店を曲がった。
時間は今3時半。急がなくちゃ…
お姉ちゃん、もう帰ってたらどうしよ…
焦りながら学校に向かって、ひたすら歩き続けていると、道にはチラチラと白糸台の制服を着ている人達が見えてきた。
良かったぁ。きっと学校はもうすぐだ。
その時、前の方からなんだか見覚えのある女の人が歩いてくるのが見えた。
眼鏡をかけていて、私と同じくらいの髪型の…
あっ!そうだ…
全国大会でお姉ちゃんと一緒に戦ってた人だ。
「あのっ!すみません…」
わたしは、その人を呼び止めた。
「…はい?なんですか」
「わ、わたし、宮永照の妹なんですけど…」
「ああ…そう言えば、あなたも大会に出ていましたね。どうしてここに?」
「実は、お姉ちゃんに会いに来たんですけど、お姉ちゃんって今日はもう帰ったかどうか知ってますか?」
「ああ…確か、今日は麻雀部の後輩に指導をする日だだったはずだから、まだ学校に居るはずですよ。ちなみに、あと15分くらいで終わると思います」
「そうですかっ!ありがとうございます!」
「いいえ。それじゃ…」
「はい、失礼します!」
わたしはお辞儀をして、また学校へと歩き始めた。
良かった、お姉ちゃんまだ帰ってないみたい。
186:菫→照咲5
09/10/26 08:03:00 iaGHnV4T
ところで、後輩に指導してるなんて初めて聞いたけど…
引退してからも部に顔を出してるんだ。
やっぱり、麻雀が好きなんだなぁ。
わたしも、お姉ちゃんにもっと教えてもらいたかったかも…
そんなことを考えながら歩いてたら、やっと目的の場所が見えてきた
「あっ。あったよ…。良かったぁ」
あれだ。あれがお姉ちゃんの学校だ
わたしはホッと、胸を撫で下ろす。
無事に着いて本当に良かった…
なんか安心したら、今頃急に緊張してきたよ…
お姉ちゃん、喜んでくれると良いな。
校門の前まで着き、お姉ちゃんに電話をかけようとしたその時。
わたしは、ちょうど遠くの方に、お姉ちゃんと誰かが一緒にこっちに歩いてくるのが見えた。
やったっ
すごいタイミングだ。
「あれ、でもあの人って…」
長い髪の毛…
あ…やっぱり。弘世菫さんだ。
わたしは、とっさにお姉ちゃん達から見えないように隠れてしまった。
そして、前にお姉ちゃんに聞いたことを思い出す。
そうだ、あの人はお姉ちゃんと過去に関係を持っているんだ…
うっ…
別の意味で、また緊張してきた。心臓がドキドキする。
どうしよう。もし今日これから、菫さんと誕生日会を開く予定になっていたら…
何でわたし、計画立てる時にお姉ちゃんが友達に誕生日会に誘われるかもしれないってことが頭に入って無かったんだろ…。
でも、ここまで来たんだ。ちゃんと立ち向かわなくちゃ。
とりあえず、今お姉ちゃんに電話してみよう
出てくれると良いけど…
「プルルル…プルルル」
「ガチャッ」
「もしもしっ、咲?どうしたの?」
あっ、良かった。出てくれた…
わたしは、嬉しい気持ちと不安な気持ちで声が震えるのをグッと、押さえ、いつものように明るい声で会話をした。
187:菫→照咲6 ラスト
09/10/26 08:06:35 iaGHnV4T
「もしもしっお姉ちゃん?実はね…今お姉ちゃんの学校の前まで来てるんだよっ」
「えっ?嘘っ、今こっちに来てるの?」
あ、だんだんお姉ちゃんの声がわたしに近づいてくる。来たっ!お姉ちゃんだ。
「お姉ちゃん!」
わたしは、久しぶりにお姉ちゃんに会えて、すごく嬉しくなり、お姉ちゃん達の前に飛び出した。
咲!と、お姉ちゃんがびっくりしている。
それと…
「菫さん…こんにちは」
「あ、ああ。こんにちは。妹さん」
菫さんとも挨拶をした。
菫さんもちょっとびっくりしてるみたい。
気のせいか、今少し睨まれたような…
なんだか、ちょっとこの人が怖くなってきたよ…
あっ、でも今はそんなことよりも、お姉ちゃんにおめでとうって伝えなくちゃ。と、我に返る
「えへへっ。お姉ちゃん…来ちゃった」
「もう、急にこっちに来るなんて、びっくりしたよ。どうかしたの?学校は?」
あ、この反応は…
お姉ちゃん、やっぱり自分の誕生日忘れてたんだ。
「学校は今日、開校記念日でお休みだったんだよ。っていうか、やっぱり…お姉ちゃん、今日が何の日だか忘れてるでしょ…」
「え?ごめん、何かあったっけ…」
私は、カバンの中からプレゼントを取り出して、お姉ちゃんに渡した。
「これって…」
「今日はお姉ちゃんの誕生日だよっ。おめでとう。お姉ちゃんっ」
「あ、そういえば…すっかり忘れてたよ」
「もう、お姉ちゃんったら…」
あはははっと、わたし達は笑い合う。
そして、菫さんと別れの挨拶をした後も、しばらく校門の前でお姉ちゃんとのお喋りに夢中になった。
やがて、家に行こっか。とお姉ちゃんに言われて、わたし達はやっと歩き始める。
途中でお姉ちゃんに手を繋いでもらえた。
普段人前でこんなことはしないから、少し恥ずかしかったけど、でも凄く嬉しくもあった。
家に着いてからは、わたしがお姉ちゃんにご飯を作ってあげたり、二人で一緒にケーキを食べたりした。
夜寝る前にもお喋りをしたり、とても楽しい時間を過ごした。
明日も、もっと楽しくなりそうだなぁと思うと、なんだか胸が弾んでくる。
お姉ちゃんと過ごす時間だからこそ、楽しくなるんだ。
お姉ちゃん…大好きだよ。――――――――
そう。この時のわたしは、とても幸せだった。
お姉ちゃんも、きっとそう。
でも、まさか…
まさか、お姉ちゃんと菫さんの間にあんなことが起きるなんて…
この時は、これから先のことなんてまだ分かるはずが無かった。
だから、わたしもお姉ちゃも笑っていられたんだ。
もし事前に分かっていれば、防ぐことが出来たかもしれないのに…
お姉ちゃん…
188:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 08:10:40 iaGHnV4T
以上です。長々と失礼いたしました。
前作から、最後までお付き合い頂いた方には感謝いたします。
始めはこんなに長くなるとは思っていなかったのですが、咲視点が一番心理描写を書くのが難しかったのでこんなことになってしまいました。
では、たくさんレスをお借りしたので少しの間は自粛します。
ありがとうございました。
189:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 09:10:55 Rl0q4gRo
>>170
GJ!照様wとーかのおっぱいなら国広君が頑張って大きくするから大丈夫だよ(つ∀`)
190:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 16:29:00 w2yE+dI5
>>73
久まこマダー?
191:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 17:03:16 Rl0q4gRo
>>188
ちょっ、菫はん思い詰めてしまうん?ウッ
192:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:40:52 vx+E69TM
何やら今日は静かな一日でしたね
そんな感じで、みは×かな行きます
エロはないし、百合成分多少
5レス予定
193:『ネコミミと眼鏡は相容れない?』
09/10/26 23:42:16 vx+E69TM
最近、悩み事があります。
眼鏡の度が合わないとか、ちょっと太ったかも…、とかそういった悩みではない。
そう、これはちょっとしたケンカなんです。
華菜ちゃんと私の、果てしなく小さなケンカ。
原因は、多分私のせい。
けど、それを認めたくない。
だって華菜ちゃんが私の言葉を聞かないから!
…まあ、それは置いておいて。
発端は私の一言。
あれは、キャプテンら三年が部を引退して、私たち2年が部の主体となった月のことだった。
――
―
華菜ちゃんはその実力や人柄を買われ新・キャプテンに選ばれた。
そして私は、キャプテンをサポートする副キャプテン。
まさに私に打ってつけの役職!なんて一人浮かれていたんだけど。
実際は、三年生が引退したことで部の活気が削がれ、特打の時もみんなに笑顔が見えない。
どんよりとした空気で、辺りを黒いオーラが包んでいることがわかるほどに沈んでいた。
「みんな!寂しいのはわかるけど、それじゃあキャプテンたちに心配させるだけだし!
来年の全国大会に勝ってキャプテンたちを喜ばせるんだろ!?だったら、今は練習あるのみだし!」
華菜ちゃんの持ち前の明るさは、部の雰囲気を活気づける。
「そ、そうだよ!華菜ちゃんの言う通り、私たちは来年の全国で優勝するの!だから、ちゃんと集中しよう?」
そ、そうです!
頑張りましょう!
元・キャプテンのためにも!
各々、一年生の子が自分に渇を入れていた。
うん、みんなも一緒に頑張ろうね!
そこで誰かが、頑張りましょうね!キャプテン!なんて叫んでる。
でも当の本人はというと。
「へ?」
なんて間抜けな声を出していた。
「もー…今のキャプテンは華菜ちゃんでしょ?」
「あ、そっか、ご、ごめんね~」
まだまだ自覚がないみたい。
それは別に、いいんだけど。
私がちょっと気になっていたのは、華菜ちゃん自身だった。
194:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:43:50 vx+E69TM
休憩の時間、華菜ちゃんに連れ立って飲み物を買いに行った。
聞くなら今だと思って、尋ねる。
「華菜ちゃんさ」
「なぁに~?」
「さっき、みんなに頑張ろうって言ってたけど」
「うん」
「一番落ち込んでるのは華菜ちゃんだよね?」
「え」
「この前部室で一人泣いてるの、見ちゃった」
「…い、いやいやっ、そんなわけないしっ!華菜ちゃん全然のーぷろぶれむ!落ち込むなんてあり得ないしっ!」
「嘘だよ!華菜ちゃんが泣くのは負けた時とコーチに叱られた時だけだもん!」
「あ、あれは目にゴミが入っただけだし!」
「私副キャプテンなんだよ!?相談くらいしてよっ!」
「う、ううっうるさいな!みはるんのくせに!」
「な、何よ!華菜ちゃんのくせにぃ!」
「うるさいうるさい!この眼鏡っ子!」
「うるさいのはどっちなのよ!?華菜ちゃんなんてネコミミのくせに!」
もはや言葉は意味を為さない。
ただの子供のケンカだった。
まるで収集がつかなくて、ぜえぜえはあはあ言って肩を揺らす私たち。
そこへ、一年の文堂さんが、練習再開の知らせを伝えに来た。
「あ、あの…キャプテン、副キャプテン」
「「なにっ?!」」
ひっ、と彼女は肩を縮ませた。
「あ、あ、あのっ…練習始めましょうって、つ、伝えに…」
私と華菜ちゃんは向かい合って、ふん!と互いに顔を背けた。
結局その日から数日間、私と華菜ちゃんは一度として目線を合わそうとはしなかった。
―回想終了
「あ~あ…」
本当は、ケンカがしたかったわけではない。
ただ言いたかっただけなのだ。
もうちょっと頼ってよ、と。
でも、華菜ちゃんは強情で、一人で我慢しようとしちゃうから、拗れちゃう。
そこに私の変な意地っ張りが相まるのだからなおさらだった。
不器用だなぁ…私も、華菜ちゃんも。
…でも、やっぱりこのままじゃだめだ。
仲直りしないと。
華菜ちゃんは福治先輩に憧れているけど…私だって、負けないくらい華菜ちゃんに憧れているんだ!
だから、支えたい。
堪えすぎる華菜ちゃんに、我慢しないで!突き進め!って、背中を押せるような存在に。
私は成りたい。
…決めた。
「謝ろう…明日」
195:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:45:52 vx+E69TM
※ ※ ※
うー。
やっちゃったし…。
みはるんと、ケンカをしてしまった。
「あんなみはるん、初めて見たし…」
あるいは、あたしが見てなかっただけかもだけど。
キャプテンばっかり追いかけて、盲目的になってたから。
それにみはるんとは、もう二年目の付き合いなのに。
何やってんだろ、あたしってば。
「相談、かぁ」
まさか、みはるんに泣き顔を見られてしまうとは思わなかった。不覚。
…って思ったけど、この思考が、みはるんに迷惑をかけた、というか苛々させたのかな。
でも、確かにそうかも。
あたしも、親しい人間が悩んでたら、何か言ってほしいかもしれない。
言ってくれなきゃ、何かすっきり出来ないし、納得も出来ない。
「あたしが、みはるんの立場だったら」
―嫌かも。
……。
………よしっ!決めたっ!
華菜ちゃんは明日!みはるんに謝るんだ!
ちゃんと仲直りして、また全国へ向けて一緒に走りたい!
今度はキャプテンのためだけじゃなくて、みはるんや仲間のためにも!
ファイトだ華菜ちゃん!
※ ※ ※
―翌日
「「あ…」」
授業を終え、放課後に部室へ向かう途中、廊下で華菜ちゃんに出会った。
声を上げたのは二人同時で、何故だか互いに動けなくなった。
とりあえず、口を開く。
「か、華菜ちゃん…」
「…みはるん」
言葉に詰まる。
謝りたいのに、何も思い付かない。
考えは何もないけど、とにかく謝ろうっ。
「「あのっ!」」
また被った。
何でこんな時だけ息が合うんだろう。
「か、華菜ちゃんから…どうぞ」
「い、いやいや…みはるんから」
「華菜ちゃんから」「みはるんから」
なんて言い合って、結局繰り返し。
進歩なさすぎるよ私!
196:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:47:35 vx+E69TM
しばしの沈黙が訪れる。
「じゃあもう華菜ちゃんから行くし!」
痺れを切らしたのか、勢い付いてまたネコミミみたいのがぴょこっと見える。
「みはるん!昨日はごめん!」
意外と、直球だった。
「何か、心配かけちゃったっていうか…感情的になりすぎたっていうか…」
そんなことはないのに。
心配したのは本当だけど、煽ったのは、私の方なのに。
「ともかくごめん!」
あの華菜ちゃんが、頭を下げていた。
…失敗した。
先に謝られてしまった。
「…顔を上げてよ、華菜ちゃん」
ネコミミが、ピクっと動いた(ように見える)
華菜ちゃんは、ゆっくり顔を上げた。
そして私は。
「み、みはるん!?」
華菜ちゃんに、抱き付いた。
「どっどど、どどうしたのみはるん!?」
華菜ちゃんはかなり戸惑ってるけど、何故か私は、非常に落ち着いていた。
「華菜ちゃん…」
「な、なに?」
華菜ちゃんが少したじろいだ。
構わず私は続ける。
「私って…そんなに頼りないかな…?」
「え…」
「私じゃ…華菜ちゃんの支えにはなれないのかな」
「み、みはるん…」
「私ね…一年の頃から、華菜ちゃんに憧れていたの」
「そ、そうなの?」
「うん。先輩たちとの特打で、いつも連勝してた華菜ちゃんが、私にはとても眩しく見えた」
「…」
「強くてかっこよくて、前向きで、ちょっと調子に乗りやすいけど、憧れてた」
抱き付いているから、華菜ちゃんの表情は見えない。
けど、照れてることだけは、触れ合う肌を通して伝わってきた。
197:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:49:30 vx+E69TM
なおも私は続ける。
「それは今も同じ。華菜ちゃんの明るさも、自分の生き方を曲げないその強さも、全部。私の憧れ」
華菜ちゃんはぷるぷる震えて、私を突き放すわけでもなく叫ぶ。
「あ、あたし…そんな憧れたりされるような強い奴じゃないし!」
華菜ちゃんに触れる肌から、だんだん早まる鼓動を感じる。
「あたしなんて…コーチに叱られて泣いちゃうヘタレだし、負けたら悔し泣きしちゃう弱虫だし!
もうとにかく弱っちょろい人間だし!支える価値なんてっ…」
「泣いちゃうことが弱虫なんて、思わないよ」
腰に回していた腕に、少し力を込める。
「それでも、ね」
「みは、るん…?」
「それでも、前を向こうとした華菜ちゃんだから…私は、あなたを支えたいの」
「…っ!」
腕の力を緩めて、華菜ちゃんから身体を離す。
正面にしっかりと、いずれはさらに輝くであろう紅くなった新キャプテンを見据えて。
私は微笑む。
「あ…の」
「それと、もう一つ」
「え…」
「…私は、福治先輩にも負けるつもりはないからね。華菜ちゃん」
「あ……うん」
そして私は、また笑った。
「じゃあ、部室行こっか」
「…う、うん」
華菜ちゃんの手を引っ張って。
部室へ走ったのだった。
――
―
その日の部活は、華菜ちゃんが終始どぎまぎしてたこと以外は、いつも以上に活気のある部活でした。
…あ、また赤くなってる。
了
198:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:52:17 vx+E69TM
以上です
みは×かな良い、すごく
読んで下さった方々に多大な感謝を
では
199:名無しさん@秘密の花園
09/10/26 23:56:52 Rl0q4gRo
GJ!何故だろう今まで池田を虐めて愛でていたのに
池田に怒鳴られるのも良いかもしれないと思った
200:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 02:51:24 a1ma048m
>>188
今回も良かったよ
けどラストのはなんだ?
完結ってことだけど3人視点の話が完結ってだけだよね
まさか続編一切なしってことじゃないよね
というかハッピーエンドが想像できない…
>>198
ナイス
この組み合わせも結構好きだな
あとけんかするってパターンはここ最近なかったからかなんか新鮮に感じる
201:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 03:12:07 bBIVH+rM
良かったよの人キタ━━(゚∀゚)━━!!
202:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 04:05:42 sGXx0oqn
>>198
GJ!!
ですが、一応書いときます
○福路
×福治
です
203:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 13:08:55 CFUGibw1
プライズの咲と和をゲットしてきた。
当然、二人並べて飾る。
見てたらムラムラしてきたから咲和エロ書くわ!!
204:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 13:13:49 sGXx0oqn
息抜きに自分が大好きな白糸台の小ネタを投下します。
あくまでも、自分の妄想を文章にしただけなのでまだ本編にあまり出ていない彼女達なので実際はキャラが全然違うと思いますので、許せる方だけ御覧ください。
1レスのみお借りします
205:「照をめぐって」
09/10/27 13:16:27 sGXx0oqn
――ある日、白糸台高校の麻雀部では四人の少女達が、白熱した戦いを繰り広げていた――
「ツモ!2700オール!」
「ロン!5800です」
「ロン。2000」
「ツモ。8000、3000だ」
最後にツモあがりをしたのは、青くて長い髪の毛の少女だった。
トップを継続したまま、勝負はいよいよオーラスへと突入する。
「このままいけば、今日も菫が勝ちだね」
彼女達の様子を見ていた照がそう言い、足を組みながら紅茶をすする。
静かではいるが、やけに楽しそうな表情だ。
「ああ。今日も私が勝つぞ」
菫も、自信満々に言って、卓のスタートボタンを押す。
「わ、私だって負けないわよ!見ててね、照!」
菫と照の会話聞いていた金髪の少女が声をあげ、キリッと表情を険しくする。
――――――――
オーラスのこの勝負は、16順まで誰もあがらず、流局寸前かと思われた。
しかし、最後の順で奇跡が起きる!
「ツモ!四暗刻!!」
「なんだとっ?!」
「うわー…」
「逆転。」
なんと、最下位だった金髪の少女が最後の最後に役満をあがり、逆転トップになったのだ!!
「やったぁ!照、私が勝ったよ!!」
「うん、見てた。凄いね。まさか、最下位から勝つなんて」
「えへへっ♪」
「くっ…」
菫がガクッと肩を落とし、残念そうにしている。
「よし、じゃあ行こっか」
「うんっ!」
照が金髪の少女の手を引き、二人は部室の隣にある仮眠室まで向かう。
「おまえら、あんまり大きな声は出すなよ?」
菫が、ギッと金髪の少女を睨みつけた。
「出すわけ無いじゃない!負け惜しみはかっこ悪いよ、菫っ」
「なんだとっ!」
「まぁまぁ…二人とも落ち着いて。ほら、行くよ」
「うん!」
パタンと、扉を閉めて内側から鍵をかける音がする。
「くっ…あのままいけば、今日も私が勝ってたというのに…」
ダンッとこぶしを卓に叩きつける菫。
「まぁまぁ…。また明日があるんだし」
「お茶でも飲んだら」
「ああ、そうだな。お前ら、明日も私にうまいこと差し込めよ?」
「はいはい…」
「了解」
――そして、これからも彼女達の熱い戦い(正確に言えば約二名の)は続く。
仮眠室で何が行われているのかは、この五人だけが知っている、誰にも言えない秘密なのであった――
206:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 16:04:56 iy1PDGYC
なんというエロ部
207:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 21:51:27 0o6WyCvY
規制されてて携帯からなのですこし遅いかもですがss投下。
かじゅモモで、もしもモモが目立って見えるようになってしまったらの話。
タイトルは見えても見えなくても。
208:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 21:53:08 0o6WyCvY
気が抜けてなにも手につかない。
やることなすこと色褪せて見えて、深い深い泥土の中をたゆたっているような気分。
インターハイ予選も終わり、もう残すは引退だけとなれば、多分そういった感情に苛なまされるものだろうと思っていた。
時間だけは変わらずに流れ続けて、だのにどこか停滞する。
向かうべき場所を失って、ふわふわと糸の切れた凧のようにぽっかりとただ浮かぶだけ。
そんな状況が簡単に想像できて、それどころか実際に私はそうなりかけていたと言っても嘘ではなかった。けれど…
「ねぇねぇゆみちゃん。今日は彼女さん来てないの?」
「もう口ふさいだ?ふさいだ?」
空気がそれを許さなかった。
‘あの日’以来、ことあるごとにこうだ。
恥ずかしくて、そわそわして、私はやはり机に突っ伏すことになるのだ。
立ち止まろうとする私の背中はぐいぐいと押されて、前のめりにつんのめってしまったみたいだった。
それもこれも悪いのはアイツなのだ。
全ての元凶。私の持て余した怒りの矛先を向けるべき相手。
私がこんなにも困っているというのに、アイツときたら机の上に腰掛けて楽しそうに談笑しているのだ。
私の怒りに合わせたように、腕がわなわなと震えていた。
「蒲原っ!!!!お前のせいで私は!!」
「ワハハ。こりゃ困った。ちょっとユミちんから逃げてくるからごめんねー。」
一睨みすると、蒲原はさっさと談笑を切り上げて遁走を開始する。
いつも通りにワハハと笑っていて、焦る様子も、謝ろうという様子も見えやしなかった。
「逃げるな蒲原!!」
「ユミちんが怒らなきゃ逃げないよー!!」
蒲原は教室から飛び出して廊下を駆けだす。
ハッと驚いている間に、蒲原の姿はちっぽけになっていく。
教室では、まるでいつものことだとばかりに、クスクスと笑い声が響くばかりだった。
ーーーーーーーー
ことの発端はインターハイ予選に敗退したことだった。
いや、正確には私たちが予選決勝まで駒を進めたことがこんな事態を引き起こしたのか。
高校麻雀といえば文化系の部活動においての花形だ。
強豪ともなれば特待生制度やらスカウトによる越境入学までおこなわれ、そんな学校が毎年覇を争っている。
だからこそ、所謂強豪と私たちのような弱小との間には埋まることのない大きな隔たりが存在した。
209:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 21:56:44 0o6WyCvY
私たちの県においては、その強豪は風越女子であり、麻雀に長けた生徒は風越に入学するのが通例だった。
だから、私たちの間にもどうせ風越にはかなわないという気持ちがどこかにはあったのだろう。
ただ漠然とした時間を過ごして、記念にでもするために大会にでる。
4校から1校しか次の試合には進めないこの形式では、私たちのような弱小は緒戦を勝ち抜ければ御の字どころか金星と言ってもいいぐらいで、それが決勝まで勝ち残ったとなれば注目を集めないわけもなかった。
結局のところ優勝することはできなかったが、それでも大健闘。
早い話、勝とうが負けようが新聞部のインタビューには応じることになっていたのだ。
しかし、恥ずかしい話なのだが、すっかりと忘れていた。
大将戦は人知の及ばない事象を多分に含んだ激闘であったし、それになにより、私には答えなければならないことが残っていて、そんなことは記憶からぽっかりと抜け落ちてしまっていたのだ。
試合が終わって。隣にはキミがいて。
舞い上がっているというのとは少し違うような気もするけれど、少なくとも頭の中は一杯で、余裕などなかった。
逃げてばかりいた。頬は火を吹き出しそうなほど熱をもっていた。
だけど、ほんの少しでも卑怯な自分を卒業しようと、私は精一杯の言葉を紡いだ。
それは私たちの始まりの一歩でしかなかったけれど、とてもとても大切な出来事だった。
しばらく二人そろって黙りこくっていると、携帯が振動するのを感じた。
なんとなくこういう時は携帯を見づらい。
しかし、いつまでも二人こうしているわけにもいかなくて、意を決して携帯をのぞくと、着信はどうやら蒲原からだったようだ。
210:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:00:12 0o6WyCvY
「蒲原か、どうした?」
「ワハハ。ユミちんったらインタビューをすっぽかすなんて、いけないんだぞー。」
気の抜けるような蒲原の言葉が耳に響いて、そこでやっとこさインタビューなどというものの約束をしていたことを思い出した。
思わず「あっ。」と間の抜けた声を響かせてしまい、モモが不思議そうに私の顔を覗き込む。
「まぁモモとユミちんの分は私がなんとかしといたからさ。だからもう解散。ユミちんたちも二人で愛の逃避行したってかまわないよー。」
ワハハ、と随分と楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「なっ、なにを言っているんだお前は!!」
叫んだ私の耳には、ツーツーと通信の切れた音だけが響いていた。
あの様子ではもう蒲原たちは逃げ帰っているのだろう。
ポツリと二人だけ残された私たちは、意味もなく顔を見合わせるとそっと手を重ねた。
ーーーーーーーー
慌てて蒲原の背中を追いかける。
掲示板の前を通り過ぎると、私はまた気がどっと重くなるのだった。
掲示板には様々なポスター類に交じって校内新聞が貼られていた。
掲示板の横には机が置かれていて、どうやらそこには自由に持ち帰ることができるように新聞を並べてあったらしい。
しかし現在、その上には一部たりともそれは残っていなかった。
部活動の大会の多いこの時期は部活動特集が組まれているらしく、様々な大会の結果などが掲載されている。
そして、本来なら喜ぶべきことだったかもしれないことに、今回の一面は私たち麻雀部の活動についてであった。
これが貼られた初日。
私は、楽しいものが見れると言う蒲原に連れられてここにきたのだ。
確かにそれは面白い記事だったのかもしれない。
ただしそれは私以外にとっての話だ。
どれどれと記事に目を通した私の頬は、瞬く間に驚くほどに熱をだす。
わらわらと掲示板に集まった生徒たちの視線が、一斉に私に向いたのが分かった。
どうしてこのようなことになったのか。
話は簡単なことだった。
掲示板に貼られた校内新聞。
そこにはなぜだか、部活動特集に交じって、一面にはゴシップ記事が燦然と輝いていた。
わなわなと腕が震えるのが分かって、私は蒲原に視線をやると、もう既に蒲原の姿は消えてなくなっていた。
蒲原のヤツが私たちを売ったのだ。
一面にでかでかと載っていたのは、インターハイ予選決勝のことではなく、私とモモの馴れ初めと決勝後の会話だった。
211:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:02:31 0o6WyCvY
はぁ。今思い出しても頬が熱い。
がくんと重くなった気を無理矢理に奮い立たせて蒲原を追う。
蒲原のヤツは絶対に許さない!!この恨みはらさでおくべきか!!
蒲原が教室に飛び込むのが見えて、私も思わずその後を追った。
「えっ、先輩!?」
「へっ?モモ!?」
ざわざわと教室がざわめく。
思わず飛び込んだその先は、1ヶ月ほど前にも飛び込んだ1年A組。
ふと気づくと、蒲原がモモの後ろに隠れて、ニヤニヤと私を眺めていた。
「ねぇ桃子ちゃん!!旦那様?旦那様?」
「先輩?噂の桃ちゃんの先輩さん?」
モモの頬がボッと桜色に染まる…あれ?
「モモが見えるのか?」
「あっ、それがっすね。あの…。」
モジモジとなにか言いたげなモモの言葉は待ってやりたかったけれど、なんだかどうしても落ち着かなくて、私はモモの手をとった。
「とりあえず逃げるぞっ!!」
注がれる視線に耐えかねて、私はモモの手をひいて逃げ出す。
どう考えても野次馬的なそれは、私には初めての感覚で、頬が燃えてしまいそうだ。
背後では、はやしたてるような黄色いざわめきがきゃあきゃあと響いていた。
ーーーーーーーー
「それで、どういうことだモモ?」
「それが…。」
それは分かるような分からないような話だった。
クラスからも消え去って、誰からも気づかれやしなかった。
気にしてほしいとも思ってはいなかった。
けれど知らず知らずのうちに歯車は動きだしていたのだ。
インターハイ予選決勝。新聞部により撮影された写真。
前者はテレビを通して。後者はカメラを通して。
どちらもモモをうつし出す。
注目度は存外に高かったらしく、誰もがモモという存在に気がついた。
存在を知れば求めたくなり、求めればモモも見えてくる。
気づけばモモは消えていなくて、すっかりと質問責めにあってしまったようだ。
それは主には、私との関係についてだったそうだが。
「あのあの…あのっすね。私、こんなことは初めてだったっすから恥ずかしかったっすけど、なんだか嬉しくて…。」
口ごもるモモに、大丈夫だよと頭をさすって次の言葉を促してやる。
「少し惚気てしまったっす。ごめんなさいっす先輩。」
なんだか申し訳なさそうな表情で、モモがこちらを窺う。
肩を竦めて、それはまるで怯えているみたいだった。
怒ってなどいないよ。なにも悪いことなんてしていないのだから。
私はモモの頭を撫でると肩を抱く。
212:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:05:34 0o6WyCvY
それに、謝らなくてはいけないのは私の方だ。
誰かの瞳の先に立つことは、モモにとっては嬉しくて、私だって喜んでやらなくてはいけないことだった。
モモはもう一人ぼっちなんかじゃなくて、それはとても素敵なことなはずだ。
だのに。だのに私は…
「すまない。すまない…。」
どうしてかぽろぽろと涙が零れてしまう。
恥ずかしくて、なんとか止めようとするのだが、涙は止めどなく溢れてきた。
「なんで先輩が謝るんすか?先輩が泣くと悲しいっすよ…。」
モモの舌がちろちろと私の涙を掬った。
暖かくて柔らかくてなんだかとても気恥ずかしかった。
「私は嫉妬した…。モモは私にだけ見えればいいと願って、誰にも見えなければいいと…。」
醜い独占欲の塊なのだ。
誰にも触れさせたくなくて、私だけのものにしたくて、モモが見えるという事実を喜べなかった。
「私の一番は先輩っすよ。それは変わらないっす。」
ギュッと胸に抱かれて、モモの体温が心地よい。
「だから…だから先輩にも喜んでほしいっす。」
はにかむようにモモは笑って、なんだか私がひどく子供のように思えた。
今までが普通じゃなくて、これからが普通なのだ。
モモは見えない存在なんかじゃなくて、多分私はたくさん嫉妬もすることになるのだろう。
きっと友達だってできるから、独り占めはできなくなる。
けれど、やっぱりそれが普通なのだ。
競争相手のいないレースの一番なんかじゃなくて、たくさん競うべき相手ができる。
それでもやはり私は一番になりたいのだ。
ああ。そこではたと気づいたのだ。
もしかしたら蒲原はモモが目立つようにあんな記事を許したのだろうか。
いや、それはさすがに考えすぎか。
多分なんとなく楽しくなりそうに思えて、そうしたに決まっている。
モモが普通の娘になっても、なにも気持ちは変わらないのだ。
放したくないし、誰にも渡したくない。
抱きしめられるばかりでは悔しくて、私はギュッとモモを抱き返すのだった。
Fin.
213:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:19:46 0o6WyCvY
今スレも皆様GJです!!
携帯からだとどこで改行したら適度なのかよく分からないですね。
変になってないとよいのですが。
かじゅはクラスではゆみちゃんと呼ばれて可愛がられているのが理想。
かっこかわいい人気者だとよいです!!
埋めはどうしようかと悩みつつ、このスレの埋めで使おうかあぷろだ使おうか…めんどくさいので多分そろそろ普通に投下します。
あぷろだ使ったことないですし。
214:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:25:20 jaHzBN+t
>>213
GJ!
かじゅは確かにかっこかわいい系でキャーキャー言われてそうだなw
何言ってはるんですか
とっとと投下しちゃってくださいよー
思い切って投下してくださいよー!
215:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:38:55 8WxMsqQ+
>>213
いつもGJです!
ジャンジャン投下していただけたらかなり嬉しいです主に私がw
216:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 22:56:03 Rb2sfHU/
>>213
30~40文字を目安に改行すると見やすい。
携帯画面の表示文字数を数えて、自分なりの折り返し基準を作ればいい。
この時に注意した方がいいのは、こんな風に完
全に文字数だけでキッチリ折り返してしまうと
、それより狭いブラウザでは逆に見にくくなっ
てしまう。
キリのいい句読点で折り返すのをおすすめする。
217:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 23:08:25 KNOTtjcj
>>213
携帯から見ました。
GJです!
218:名無しさん@秘密の花園
09/10/27 23:18:52 gfzq01le
>>213GJ!やっぱかじゅモモはええわー
219:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 02:26:13 cl9il2Cs
南浦さんとむっきーの続編書いたので投下
エロなし3レス失礼します
220:「ノートに」 1
09/10/28 02:26:57 cl9il2Cs
学校の中間試験が終わった翌日の土曜日。
睦月さんが、久しぶりに私の家へと遊びにやって来ました。
試験期間中はメールのやり取りさえ、あまりしていなかったので、私は久しぶりに睦月さんと会えて、とても嬉しかった。
睦月さんが来て早々、私達はイチャイチャ…
と言うのでしょうか、隣にピッタリとくっついて座り、手を握り合いながらお話をする。
やっぱり、こういったシチュエーションはまだ慣れませんね。
心臓がバクバク鳴りっぱなしです…睦月さんに聞こえてなきゃ良いけど…。
「ねえ…数絵?」
「はい?」
「数絵は、私のどんなところが好き…なのかな?」
「えっ…?」
突然の質問に、私は動揺する。睦月さんの顔を見ると、やはりこちらも頬を赤く染めていた。
それを見て、私も更に恥ずかしくなる。
「い、いきなり何でそんな質問を…?」
「なんとなく…。」
「急にそんな事言われても…っ。は、恥ずかしくて答えられませんよ!」
カァーっと顔が熱くなる。
下を向き、私は目を瞑ってしまった。
「うーん。じゃあ、ちょっとノート貸して?」
えっ?ノート?
「良いですけど、ノートなんか何に使うんですか?」
「まあ、良いから良いから。」
頭に疑問を抱きながら、私はテーブルにノートを広げる。
すると、睦月さんがバックからボールペンを取り出して、何やらスラスラと字を書き始めた。
「何書いてるんですか?」
「あっ!私が良いって言うまで、こっち見ないで」
「はぁ…」
よく分からないまま、私は顔を下に向けて目線をずらした。
そして、5分くらい経った頃、「もう良いよ」と、言われ睦月さんにノートを手渡された。
ノートの文字を読む
そこには…
221:「ノートに」 2
09/10/28 02:28:11 cl9il2Cs
―――――――――
私が数絵の好きなところ
真面目で、ものごとにいつも真剣で完璧って感じがするけれど、実は恥ずかしがり屋さんで、よく顔を赤くしたり、黙っちゃう。
そんなところが、とても可愛くて大好き
―――――――――
と、書かれていた。
ふるふると手が震え、ノートを床にバサッと落としてしまう。
「む、睦月さん…これは一体っ…」
「もう。落とさないでよ」
苦笑いを浮かべ、ノートを拾い、テーブルの上に置き直す睦月さん。
「や、でもこんな恥ずかしいものを急に見せられたらびっくりしますよっ…」
「あ…数絵、また顔が赤くなってる」
「言わないで下さい!」
「ごめんごめんっ…」
もう…この人は突拍子もなく、こういったことをするから困ります。
もちろん、嬉しいのですが…。
「数絵も書いて?」
「やっぱり、書かないと駄目ですか…」
うむ、と彼女が隣でうなずく。
恥ずかしい…
ペンを手にとり、私は考える。
ええと…
睦月さんの好きなところは…ああ。手が震えます。
「数絵…まだ?もう10分以上経ってる気がするんだけど…」
「も、もう少し待って下さい!」
「くすっ。分かりました」
・・・・・・・・。
よし、やっと書けました
「睦月さん、出来ましたよ」
私はノートを手渡しす。
そして、隣で睦月さんが、ノートに目を走らせる。
そして顔を上げた。
「数絵…」
「はい…」
「10分経って、たったのこれだけ…?」
「わ、私はそれだけで書くのが精一杯なんですっ…」
222:「ノートに」 3
09/10/28 02:29:28 cl9il2Cs
―――――――――
優しいところ
です。
―――――――――
さすがに、これだけでは怒ってしまうでしょうか。
と、少し不安になりましたが
「まあ、書いてくれただけでも嬉しいんだけどね。ありがとう」
と、言ってくれた。
「いえ…こんなことしか書けなくてすみません…。頭がいっぱいいっぱいなんです」
「うむ。良しとしましょう」
良かった…と、私はホッとする。少ししてから、「あっ」と睦月さんが言い、続けて
「数絵、もう一個書き足して良い?」
と尋ねてきた。
「はい、どうぞ」
カリカリカリと再び、睦月さんがノートにペンを走らせる。
「はい。読んでみて」
ノートを受け取り、目を通す。するとそこには
「不器用なところも可愛いよ」
と、書き加えられていた。
「なっ!なんですかこれは…っ」
「だって、その通りでしょう?」
くすっと、睦月さんが笑い、私の頭を撫でる。
「あ…ああ…」
恥ずかしくて、声がうまく出ません…
「もう、可愛いなあ。」
隣で睦月さんが笑っている。
いつか、私から積極的になれる日は来るのでしょうか。
223:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 02:34:43 5Eg7EbPC
>>213
GJ
最初かじゅがちょっと気の毒だったしワハハそっとしとけよと思ったけど
全部分かっててやったとしたらワハハすげー
かじゅが思いっきり否定してるけど
おもしろかったし次回も楽しみです
誰も投下してなかったら思い切って投下すれば良いと思いますよ
224:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 02:35:30 cl9il2Cs
以上です。
私的に、南浦さんは普段は静かでツンツンというか、クールな雰囲気だけれど、むっきーの前では緊張して極度の恥ずかしがり屋さんになってしまうイメージですね
最初のうちはむっきーも、緊張していましたが、むっきーはそんな状況にもすぐに慣れて南浦さんを優しくリードしていってくれるっていうのが理想です
むっきーは包容力がありそうなので、この2人のカプは結構お似合いだと思っています
>>213
GJです!泣いちゃうユミちん可愛いなあ
225:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 02:55:31 5Eg7EbPC
>>224
GJ
南浦不器用すぎて可愛い
自分もこの2人のカプはお似合いだと思います
次回も楽しみです
226:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 06:38:20 cl9il2Cs
>>187の続編を書き上げたので、早朝からですが投下します
まず今回のは菫さん視点です。
しかし菫さんが少し怖いことになっていて、終盤は不愉快に思う描写もあるので苦手な方はスルーでお願いします。
一万字越えでロング、微エロ注意。次レスからスタートです
タイトルは「後悔」
227:「後悔」 菫視点1
09/10/28 06:39:22 cl9il2Cs
「菫、今日久しぶりにうちに遊びに来ない?」
学校からの帰宅途中。隣に居る私の想い人から、嬉しいお誘いを受けた。
「え…良いのか?」
「うん。私達、同じ大学に行くじゃない?これからも長い付き合いになるんだし、またお茶でもしようよ」
「そうだな。最近、あまり二人で話する機会も無かったしな」
「うん。あ、いつも通り、誰も居ないから安心して」
誰も居ないから、か。
こいつは、やはり天然というか…。
そういう台詞は、相手にベッドへ誘ってるようなものだってことに、まだ気付かないのか。
彼女はそんなつもりで言った訳では無いんだ。と頭では理解しているが、その言葉に一瞬ドキっとしてしまい、苦笑してしまう。
照は、妹と仲直りをしてから本当に変わった。精神面において、強くなったんじゃないだろうか。
前までは、自ら相手に親睦を深めたい、というような発言は全くといって良いほどしなかった。
なんというか、ここ最近は自分の気持ちを素直に主張をするようになった気がする。
そう言えば、照は私からのプレゼントに気付いてくれたのだろうか…
先週の金曜は、彼女の誕生日だった。
私はもちろん、そのことを知っていた。
だから、事前にプレゼントとして香水を買っておいて、当日に渡そうと思っていたのだが…
まさかのサプライズで、こいつの妹が照に会いに東京まで来てしまい、その日は結局渡すタイミングを失ってしまったのだ。
でも、週が空けた今日。
妹のようにはいかないけど、私も照を驚かせてやろうと思い、こっそりとこいつの机の中にプレゼントを潜ませておいた。
まぁ、さすがに気付いていない訳ではないのだろう。
今日、家に呼んでくれたのは、きっと私に礼を言うためだ。
だから、照から切り出してくるまでその話題には触れないでおこう。
228:「後悔」 菫視点2
09/10/28 06:40:28 cl9il2Cs
家に着き、照の部屋に上がる。
「今お茶入れてくるから、待っててね」
そう言い、照は部屋から出ていった。
「しかし…」
ベッドに腰を掛け、部屋を見渡す。相変わらず殺風景な部屋だな。
この部屋に来るのは、照が妹と仲直りする前…。そうだ、全国大会前に来た以来だな。
「三、四ヶ月ぶりってとこか…」
数字にして考えてみると、かなり久しぶりだったんだな、と一人で思いふける。
まぁ、唯一変わったことと言えば、机の上が少し賑やかになったくらいか。
勝手に人の部屋のものをジロジロと見るのは悪いので、座りながらボーッと机の上を眺める。
おそらく、妹と写ってる写真だな。あれは。
あとは雑誌や本などの類が増えたってところか。
「お待たせ」
照が戻って来た。
「菫はストレートで飲むんだよね?」
ベッドの前にあるテーブルに、コトッと紅茶を二つ置きながら、私に尋ねる。
「ああ。ありがとう」
そして照はテーブルを挟んで私の向かい側に座った。
紅茶をすすりながら、チラッと照のほうに目を向ける。さずがに以前のように隣には座ってくれないか…。
それはそうと、そろそろあの話を切り出してくるはずだ。
「ねえ、菫」
「ん。なんだ?」
さて、なんて言葉を返してやろう。
「菫は大学卒業して、プロになったら、どうするの?東京でやっていくの?」
ん…?
なんだ、全然違う話じゃないか。
予想外の返答に、私は少し戸惑う。
「さあ…どうだろうな。所属する実業団にもよるんじゃないか?」
「そっか…」
「お前は?どうするんだ」
「私はね…」
照が、ティーカップを両手で持ち、少しうつむき気味になりながら、何故か頬を赤らめた。
「長野か東京、どっちでも良いんだけど、プロになったら咲と二人で暮らしたいんだ…」
「そう、なのか…」
「うん。」
229:「後悔」 菫視点3
09/10/28 06:41:25 cl9il2Cs
何で、妹との将来夢の話になるんだ…。
私がまだお前のことが好きなのを、分かってて言っているのか?
いくら天然とはいえ、さすがにこれは酷じゃないか?
それか、あれか?今のは「妹とずっと一緒だから、菫が入る隙間は無いよ」と、遠回しに言ったのか?
彼女のことが好きな故に、私の思考回路はあれこれと複雑に絡まってゆく。
非常に気分が悪い
「なあ、お前…まさか私のプレゼントに気付かなかったのか?」
あまりにも、もどかしくなり私からこの話を切り出すことにした。
「プレゼント…?」
「ああ、そうだ。お前の机の中に小さな箱が入っていなかったか?誕生日プレゼントだったんだが」
「え…やだ、あれ入れたの菫だったの…?」
照の表情がどんどん焦り始めてきたのが分かった。嫌な予感がする。
「おい!照」
「あれ、どうしたんだ!?」
私は苛立ち、口調が次第に荒々しくなっていく。
「ご、ごめん…。あれ、誰かのいたずらかと思って捨てちゃった…。菫からだったなんて分からなくて…」
「…………はっ?」
捨てた、…だと?
「中身も見ずに捨てたって言うのか?」
「うん…」
一瞬、頭が真っ白になった後、沸々と怒りが込み上げてきた。
「なあ。普通、中身くらい確認するだろ!?先週の金曜がお前の誕生日なんだから、自分へのプレゼントかもしれないって思わなかったのか!?鈍いにも程があるだろ!」
カァッと頭に血が昇り、一気に言いたいことを全て吐き出した。
そのせいで、息が少し乱れる。
230:「後悔」 菫視点4
09/10/28 06:42:30 cl9il2Cs
突然私が怒鳴りつけたものだから、照が小さく「ひゃっ」と声を上げ、びくびくしながら私を見ている。
ああ…やってしまった。
今の私は酷く恐ろしい顔をしているんだろうな。こんな自分の姿を照に見せたのは初めてだ。
私は肩を落とし、視線を下の方に向ける。
「菫…」
顔を下に向けたまま、照がこちらに近づいてきたのを、横目で確認する。
「あの…本当にごめん」
私の肩に彼女が手を置く。だが、今の私にはその行為がとても鬱陶しい。
「触るな」
ぱしっと照の手を払い除け、私は続けて言う
「なあ。直接お前に渡さなかった私にも非はあるが…。でも、どうして気付いてくれなかったんだ」
「ごめん…」
「いくらなんでも、捨てたっていうのは酷すぎないか?」
「ごめんなさい…」
はぁ…。と、私は大きくため息をつく。
お前にとって、私は一体なんなんだ…。
「なあ、お前さ…何であの時私と体を重ねたんだ?」
私の言葉に、照が肩をピクッと震えさせた。
「私は今でもお前の事が好きだ。だが、お前は違うよな?あの時だって。何でその気がある訳でも無いのにあんなことが出来るんだ。まるで、私が弄ばれたみたいじゃないか…」
「本当にごめんなさい…」
「どうしたら…許してくれる?」
泣きそうになりながら、彼女が訴えてくる。
「私、菫のことも大切だから失いたくない…」
231:「後悔」 菫視点5
09/10/28 06:44:00 cl9il2Cs
照のその言葉に、頭がグラっとする。
さっきまで、鬱陶しいと思っていたのに…
やはり、私はこいつの事が好きなんだな。
まあ、脅かしてやるくらいの事はしても良いか。
冗談でそんな事をしてはいけない、と頭の中では認識しているが…
「じゃあ…お前を抱かせろ。そうしたら許してやる」
「えっ…」
「私を失いたくないんだろ?」
人の弱みに付け込むのは最低だが、正直にいうと、もう一度照の体に触れてみたいという気持ちもあった。
「わ…分かった、それで許してくれるなら」
その返事を聞いた途端、私は照の手をグイッと引っ張り、ベッドへ体を放り投げた。
「きゃっ」と、小さい悲鳴が上がる。
それから、私は照の衣類を全てはぎ取り、首元や胸に口付けを落としていく。
白くて綺麗な肌に、思わず見とれてしまい、背筋がゾクゾクする。
だが、口付けをしても照はギュッと目を瞑ったまま涙を浮かべ、必死に耐えているようだった。
さすがに冗談でもこれはやり過ぎたか…
やはり、こういったタチの悪い冗談は良くないな。
しかし、これだけだと私の気がまだ晴れないので、あと少しだけ。
あと少しだけ、脅かしたら止めてやろう。
そう思い、指を入れるつもりは全く無かったが、照の太ももの付け根に手を延ばし、寸止めにして
「ここまでだ。安心しろ、これは冗談だから。脅かして悪かったな」
と、謝ろうと思っていた。
しかし…
232:「後悔」 菫視点6
09/10/28 06:45:12 cl9il2Cs
「いやぁああっ」
「えっ?おいっ照!」
思いもよらない自体に、頭が混乱する。
手が下腹部に触れた瞬間に、照が悲鳴をあげ、そのまま失神してしまったのだ。
「おい…しっかりしろ!」
慌て呼吸をしているか確認する。
良かった、息はちゃんとしているようだ。
だが、どうすれば良いんだ。
さすがに救急車を呼ぶわけにもいかないし…。
とりあえず、照に衣服を着せ直し、布団をかけてやる。
ふぅ、ふぅ、と苦しそうに息をして額からは大量に汗が流れ出ている。
「これは困ったな…」
まさか倒れられるとは考えていなかったので、私は後悔した。
まだ時間は夕方の五時だ。確か、母親はいつも八時か九時くらいに帰ってくると言っていたな。
そんなことを思い出しながら私は洗面所からタオルを持ってきて、照の汗を拭き取る。
置き紙でもして、今日はもう帰るか?
だが…もし、母親が帰ってくるまでにこいつが起きてなかったら母親にそのメモを見られる可能性もある。
それは、さすがにまずいな…。
「泣くな…」
私は照の目からつたう涙を人差し指ですくい取る。
今日のところは、もう引き上げよう…
さっきのことは、後でメールか電話でもして謝れば良いだろう。
第一、照のこの辛そうな表情を見ていると、私まで胸が苦しいのだ。
罪悪感でいっぱいになり、頭がガンガンと殴られているように痛い。
早く。早く、この場から立ち去りたい。
233:「後悔」 菫視点7
09/10/28 06:46:48 cl9il2Cs
そう思い、私は荷物を持ち、照の部屋を出た。
家路に着き、時計を確認する。
「六時か…」
きっと、まだ彼女は起きていないだろう。
だが、念のため電話をかけてみる。
「プルルルルッ―」
「プルルルルッ―」
「プルルルルッ―」
5、6、7回とコール音が響くが一向に出る気配が無い。
「くっ…」
15コールくらい過ぎたところで、私は諦めて電話を切った。
気は重いが、明日学校で会ったら面と向かって謝ろう。
そう結論を出し、私は罪悪感と自己嫌悪感に包まれながら眠りについた。
翌日。
私は学校へ行き、驚いた。
何事も無かったかのように、照が話しかけてくるのだ。
「菫、おはよう」
「あ…ああ、おはよう」
その照の姿に私は戸惑う。
「なあ…昨日のことなんだが…」
「ああ、昨日ね。電話くれてたのにごめん。あの時まだ寝てたんだ」
「いや、それは良いんだが…お前、怒ってないのか?」
「え…何が?」
「何がって…お前、まさか昨日のこと覚えてない訳じゃないだろうな?」
「え…。菫がうちに遊びにきて、私が途中で寝ちゃったんじゃないの?あのタオル、菫が置いてくれたんでしょ」
「タオルを置いたのはそうだが…」
待て、こいつ、明らかにおかしいぞ。
確かに寝たと言えばそうだが、あれは失神だっただろう。
「なぁ…昨日私がしたこと怒ってないのか?」
「……。菫、なにか私にしたっけ?」
「えっ…」
嘘だろう…
昨日のあれを、忘れたというのか?
いや、あんなことをたった一回寝ただけで忘れる訳が無い。
これは、もしかして記憶障害というものなのかもしれない。
だが、照には悪いが、昨日のあの出来事を綺麗さっぱりと記憶から消しているのなら、私にとっては都合が良い。
234:「後悔」 菫視点8 ラスト
09/10/28 06:50:10 cl9il2Cs
しかし…
他にも忘れていることがあったらどうしよう。
「なあ、照。先週の金曜にお前の妹がこっちに来たの、覚えてるよな?あの日は本当に良かったな」
かなり無理矢理ではあるが、先週の話を振ってみる。
「うん、咲が来たね。でも急にそれがどうかしたの?」
「ああ…いや、あの時のお前が凄く楽しそうだったのをふと思い出してな」
「そっか」
「ああ…」
その時、チャイムの音が響いてきた。
「あ、チャイムだ。行こう、菫」
「そうだな…」
席につき、私は頭を悩ませる。
さっき照と会話をした分には、どうやら記憶を無くしているのは昨日の事だけのように思えるのだが…。
私は、昨日自分がしでかしたことに対して後悔してる。
本当は正直に謝るつもりでいたが、昨日のことを包み隠さず話して、もし照が記憶を思い出してしまったら…
もう私達はこれから先、会話を交わすことが無くなってしまうかもしれない。
それは、嫌だ。
このまま私が黙っていれば私達は今まで通りの関係でいられるんだ。
私は、自分のことを心底最悪な人間だと思ったが、昨日の出来事を隠し続けることに決めた。
そのほうが、照のためにもなるだろう。
これからも、大学で一緒にやっていく仲間なんだ。
おそらく、この罪悪感が消えることは一生無いだろうが、私は事実を告げることよりも、照とこれからも一緒に居たい、という願いを優先させてもらうことにした。
「照…すまないな」
235:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 06:53:12 cl9il2Cs
以上です
とりあえずこれで菫視点が終わりです
自分は菫さんのことが好きなんですが照とカップリングにしたら、どうしても菫さんが幸せになる話が思いつかなくて暗い雰囲気になってしまいます…
菫さんの方々、すみません。
いつかは菫さんも幸せいっぱいになれる話も書いてみたいです
236:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 06:56:20 7R1zHgFI
>>235
GJ!!
面白かったよ
237:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 08:46:51 eGoLU9RH
>>162
面白いんだけど・・・。誰も突っ込んでないから突っ込むぞ
前スレの別の作者の咲照SSに似すぎじゃないか?
同じカプだから描写がかぶるのは仕方ないと思うが、咲が照にオムライスをつくるところなんてそのまんま・・・。
238:元162
09/10/28 12:09:22 910QNl0c
>>237
すいません、ネタ被ってましたか…
前スレの前編を書き終えた時点で何となくオムライスは頭にありました
あと何を言っても深みにハマるだけですけど、しっかり他の作者さんのSSを読んでなかった自分の責任です
すいませんでした
239:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 12:47:58 X5ZlCiKT
咲「お姉ちゃん…エコーオブデスお姉ちゃん……」
某アニメの四角関係妄想を咲照和+部長全変換できてしまった
照さんのせいで元敵萌えになりそうだ、いやデレると決まってはいないのだが
240:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 13:39:14 cl9il2Cs
照はクールデレだと嬉しいです
241:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 13:54:10 uVoO8wml
照が素クールなら……
いや、なんでもない
242:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 14:13:17 Rh4rV1dY
>>237
二次創作になに言ってんの、お前
243:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 14:27:19 4S5OsGny
>>242
どこを擁護したつもりになっているんだ?
職人減らすつもりか?
244:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 15:11:19 PGAUeRcq
>>213
GJ
245:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 16:33:55 Ixx3Co69
>>238
そういう事もあるよ。あまり気にせずに。
新作期待してます。
246:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 18:12:58 RnrqcyVj
>>243
なにムキになってんだ、あんた
死んできたら?
247:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 18:40:50 Ptc7kB27
お前らそんないがみ合ってると変態SS投下しちまうぞ?
248:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 19:30:04 cl9il2Cs
空気読まずに投下します。
最近、シリアス気味なSSばかり書いてたので、たまには暖かい雰囲気のものをと思い、照咲書きました。
今まで書いてたものから、かなり時系列が飛びますが、照が大学を卒業して、プロになった直後という設定になっています。
ちなみに、これは書いても書かなくてもSSでは分からないと思いますが、照と咲は二人で長野で暮らしているという裏設定も妄想して書きました。
では2レスだけ失礼します
249:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 19:30:23 ++ua2HxX
どうぞどうぞ^^
250:「春」 1
09/10/28 19:38:25 cl9il2Cs
― 春
まだ少し、外の空気は肌寒く感じる。
けれど、桜の木につぼみができたり
次第に木々の緑が濃さを増してゆく。
そんな季節 ―
この春、私は大学を卒業して晴れてプロの麻雀士になった。
まだまだ始まったばかりの新しい生活。
そこには、もちろん咲も居る。
初めて社会に出て、これからどんな試練が待っているのかと、不安になることもあるけれど―
それでも、応援してくれる人が身近に居るから
私は頑張れる。
ピピピピッ!ピピピピッ!
朝7時を伝える目覚まし時計が鳴り響く。
「うう…ん…」
手をのばしてペチッと、時計のボタンを押して音を止める。
眠い…
私は、ふわふわとする意識の中で考える。
あれ…?
そう言えば、今日は日曜で、仕事は休みだったっけ。
アラーム解除するの忘れてたんだな…
昨日は、私が所属している団体の先輩と夜遅くまで飲みに行ってきた。
アルコール類は、あまり得意じゃないので本当は行きたくなかったのだけれど…
「付き合いも仕事のうち」っていうのは、まさに昨日みたいな事を言うんだろうな。
あ…頭が痛い。
これは、完全に二日酔いだ。
気分がすぐれなくて、私はそのまま二度寝しようと決めた。
「んん…寒いよ」
春になったとはいえ、まだまだ朝方は冷え込む。
勝手に体がブルブルと震えて、より一層寒く感じてしまう。
私は、バサッと布団を頭までかぶり、中で体をまるく縮ませた。
少し時間が経ってから、トントンッと部屋のドアがノックされ、外から咲の声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、入るよ?」
ガチャっとドアが開く。
私は布団から顔を出し、薄く目を開けて咲がすぐそこまで来ているのを確認した。
あ…まだパジャマ姿だ。
「んん…おはよ、さき…」
眠いのと、頭がふわふわするのとで上手く喋れない。
「お姉ちゃん、大丈夫?昨日お酒飲んできたんだよね?」
咲がそう言いながら、床に膝をついて、私の肩に手を乗せる。
私はその手を握り締めた。あ、暖かいな…。
251:「春」 2 ラスト
09/10/28 19:40:28 cl9il2Cs
「大丈夫だけど、頭がふわふわするんだ…。まだ完全にアルコールが抜けてないみたい」
「そっかぁ…。大変だったね」
「まぁ、仕事だからしょうがないんだけどね」
心配してくれている咲の顔を見て、私は愚痴を吐かないように気を付けようと思った。
それにしても、咲の手…
暖かいな。
「ねえ咲…」
「ん?なあに?」
「お願い。ちょっとの間で良いから、こっちに来て」
私はそう言い終えてから、咲を布団に入れようと、手を引っ張った。
だけど、力を入れてグイっと引っ張ったつもりだったのに。
いざやってみると全然腕に力が入らず、すぽんっと咲の手が私の手から抜け出てしまった。
「あっ…」
「もう、お姉ちゃんったら…」
ふふふっと、咲が優しく笑い、モゾモゾと布団の中に潜り込んでくる。
そして、私は咲にピッタリとくっついて、キュッと抱き締めた。
「んん…咲あったかいね」
「えへへ…お姉ちゃんはちょっと冷たいね」
「うん。でも咲が来てくれたから、もうだいじょーぶ…」
咲の頬に、すりすりと顔を撫で付ける。
「や…っ、お姉ちゃんくすぐったいよっ…」
「だって咲が気持ち良いんだもん」
「あははっ。お姉ちゃん、今日は何だか甘えん坊さんだねっ」
多分それは、まだ完全に酔いが覚めていないせい。
でも、私はもっと咲とくっついていたかった。
「…もう少し、こうしてて良い?」
「うん、いいよ」
その返事を聞いて、私は心が穏やかになり、再び深い眠りについていくのだった――
252:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 19:42:17 cl9il2Cs
以上です!
あまりにも時系列ぶっとんでるんで、とりあえず短編で書きました。
んで、自分は照も咲も、お酒は弱いと信じています
253:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 21:02:54 910QNl0c
>>252
GJ!
何か気持ちが温かくなった!
254:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 22:24:44 YV7Tfs23
>>252
正直、自重してくれ…他の作者さん達のssを無碍に流さないでくれ、頼むから
255:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 22:44:45 IMKnhb7y
>>203
楽しみにしてるよ
256:名無しさん@秘密の花園
09/10/28 22:54:11 Ptc7kB27
ノリと勢いで書いた。後悔はしていない。
咲和エロ
257:1
09/10/28 22:54:38 Ptc7kB27
「いらっしゃい、和ちゃん」
「お邪魔します」
私が咲さんと正式にお付き合いを開始してから、一週間が経過した頃。
想いを伝え合ったというのに、私たちの関係はいまだぎこちなく、どこかそわそわとしたものだった。
その関係をもっと円滑なものにしたく、私はこの休日、咲さんと二人きりの時間が欲しかった。それは咲さんも同じだったのか、昨日、幸運にも彼女の家に誘われたのだ。私は咲さんの自宅に招かれただけで心は舞い上がり、どこか浮き足立っていた。
そして今、待ちに待った咲さんのお宅へお邪魔したところだった。
咲さんに出迎えられ、私は玄関をくぐる。
お父様は不在、と前日に告げられていたので、私の緊張感はあまり高くない。
「狭いおうちで、ごめんね」
「いえ、そんなことないですよ。とても素敵な所です」
咲さんに誘われるまま、彼女の部屋へと移動した。
室内へ通された時、真っ先に五感が感知したのは、匂いだった。咲さんを近くで感じたときに、香る匂い。その全てが凝縮されたかのように、咲さんの部屋には彼女の香りが充満している。私はそれだけで、身悶えしそうだった。
「何もない部屋だけど、ゆっくりしていってね。あ、今お茶用意するから、待ってて」
咲さんは慌ただしく、部屋から出ていく。
私はゆっくりと、室内を見渡した。
綺麗に整頓された部屋。学習机とベッド、それに本棚が置いてあるだけのシンプルな部屋。咲さんらしい部屋だった。
ここで何年間も咲さんが過ごしていた、そう考えると、感慨深い。
258:2
09/10/28 22:55:06 Ptc7kB27
私の足は、自然とベッドの方へ向かっていた。ここで毎晩、彼女が眠っているのだと想像すると―身体が熱くなる。思わずベッドに飛び込みたくなる衝動を抑え、この室内に広がる彼女の匂いだけで我慢することにした。
ほどなくして、咲さんがお盆を手に、たどたどしい足取りで戻ってくる。お盆の上には、湯気の立つカップとお茶菓子が置かれていた。咲さんは、お待たせ、といって私に微笑みかけてくれる。
私は衝動を止めることができなかった。
この部屋に充満する匂い。恐らく、ベッドの内には更なる甘美な香りが秘められていただろう。それを前にして、何とか自制心を保っていた私だったが、咲さんを前にしたら歯止めが利かなくなっていた。
直接、咲さんの匂いを嗅ぎたい。その欲望は濁流のような勢いで私を突き動かす。
お盆を床に置いた咲さんへ、私は抱きついていた。
咲さんは、わっ、と可愛らしい悲鳴をあげる。
「のっ、和ちゃん、どうしたの?」
「……ごめんなさい。咲さんのこと、もっと感じたくなってしまって」
私は咲さんを後ろから抱くようにしていたので、彼女の耳元に囁きかけた。咲さんは耳元まで顔を真っ赤にしている。多分、私も同じだろう。
私は咲さんのうなじから香る匂いを、存分に味わった。
しかし、咲さんは慌てて私を振り解く。その瞬間、私は頭に上った血が引いていくのを感じ、冷静さを取り戻した。
嫌われてしまったかもしれない―。
先ほどまで身体を駆け巡っていた熱はすっかりなくなっており、むしろ冷えすぎて寒さを覚えるほどだった。
咲さんは、ゆっくりと振り向いてくる。しかし、その顔に嫌悪さはなく、照れているような、戸惑っているような、そんな顔をしていた。
259:3
09/10/28 22:55:38 Ptc7kB27
「わたしも和ちゃんのこと、もっと感じたいから……向かい合って、しよ?」
その愛らしい唇が紡いだ言葉は、私の熱を再び呼び覚ます。頭がくらくらとする。
私は声を出すのも忘れ、ゆっくりと頷いた。
そうして、私たちは向き合ったまま、お互いの身体を抱く。
体温を感じる。吐息を感じる。そして再び、咲さんの甘い香りが私の鼻腔を刺激する。
「和ちゃん、良い匂い」
「さ、咲さんのほうが良い匂いです」
自分の匂いを嗅がれたことに、私は恥ずかしくなった。
しばらくお互いの肩へ顔を預けるような格好のままだったが、咲さんが顔を離してくる。自然と、見つめ合う形になった。
そして引き寄せられるように、唇が触れ合う。
柔らかい感触。
私はそれだけでは満足することができない。さらに咲さんを求めるべく、咲さんの口内へ舌を進入させた。
ぴくり、と咲さんの身体が震える。しかし、抵抗はせず、すんなりと私の舌を受け入れてくれた。そのことがたまらなく嬉しくなり、私は彼女の全てを味わおうと、舌を動かす。咲さんの舌と私の舌が絡まり合い、淫らな音を奏でた。
私はゆっくりと、咲さんを床に押し倒す。そうして唇を離すと、お互いの唾液が混じりあった糸を引いていた。
私がぼんやりとした眼で咲さんを見つめていると、彼女は再び私の唇を求めて口付けをしてきた。それが意外だった私は、何も反応できない。それからは、咲さんのペースだった。
私は、口内へ進入してきた咲さんの舌に抗うことができない。唇で舌を挟まれたりもした。
何も考えられなくなりそうな私の脳へ、一つの刺激が襲いかかる。私の胸に、咲さんの小さくて柔らかな手が触れていた。
「―んっ、ふぅっ」
咲さんの口に塞がれているため、くぐもった声を漏らしてしまう。咲さんはそこでようやく唇を離すと、上下入れ替わるように、体勢を反転させた。私が床に押され、見上げる視界には咲さんが映る。
そして、私の胸に触れたままの手を、優しく動かし始めた。恐る恐る、弾力を確かめるような、優しい手つきだった。
260:4
09/10/28 22:56:01 Ptc7kB27
「和ちゃんの胸、柔らかい……。ずっと、こうしてみたかったんだ」
「……いいですよ。いくらでも、咲さんの好きなように、してください……」
咲さんの手つきは次第に激しくなってくる。私が声を漏らしそうになると、咲さんは勢い良くキスしてきた。私も、貪るように咲さんと舌を絡めあう。
幸せで、どうにかなってしまいそうだった。
「咲さんのこと、愛していますっ……。誰よりも……」
唇が離れた隙に、私は荒い息をつきながら、想いをすべてぶちまける。
「わたしもだよっ……。和ちゃん、好き……」
咲さんはそう言って、私の首筋にキスをした。
咲さんの口から出た、好き、という単語は、私にとって何よりも嬉しいものだった。
大好きな咲さんが、私のことを好きでいてくれる。身体全体が沸騰しているかのように、熱くなった。
咲さんの触れている唇、私の胸を触る手。もはやそれだけでは、満足できていなかった。
もっと、支配されてみたい。という欲求が膨らんできていた。
私は咲さんの空いている方の手を握る。そうして、下半身へと誘導させた。咲さんの手が下着越しに触れる。それだけで、感覚がおかしくなりそうだった。私はより一層荒く息をつく。ものすごい興奮している。
咲さんは驚いたように私の顔を見た。
「和ちゃん……。わたし、初めてだから、どうやっていいか分からないよ」
咲さんは困ったように、それでいてそれでもその先を望むような、そんな目をしていた。私はこくりと頷く。
「わたしも初めてですので、良く分かりませんが……。咲さんのしたいように、してみてください……」
咲さんは嬉しそうに微笑み、私にそっと口づけをする。