09/08/17 19:52:58 XAugmNWt
来週は個人戦だな……。
部長の「ありがとう」の無造作さに涙が出そうだった俺、むしろキャプテンは報われるのか。
ちなみに大将戦終わる前はこんな妄想してたんだぜ。
上埜さん。
風にかききえてしまってもかまわない、そう思って呟いた言葉は、その人の耳に届いてしまった。
「へ?」
呆けたような声を出して、久は振り返った。
「ええと……風越の」
やっぱり、とその瞬間思った。覚えてなかったんだ。
ずるい人、と思う。あんなことを言っておいて、あっさり忘れてしまうなんて。
―私はずっと覚えていたのに。大会のオーダーを見るたび、「上埜」という字がないか、ひとりひとり検めていたのに。
「私に何か?」
「いえ。優勝……おめでとうございます」
「ありがとう。……そっちは、残念だったね」
「……そうですね」
「あなたの対局、よかった」
不意にそう言われて、美穂子は顔を上げた。
「対局って……どの」
「どのって、そりゃ決勝戦のに決まってるでしょう。牌譜ならすこし見たけど」
あっけらかんとした表情で言われ、美穂子は肩を落とした。
そういえば、会話したことはほとんどなかった。もしかしたらあの時一度きりだったかもしれない。そう思うと、急に鼓動が早まった。
だって、今を逃したらもう会えないかもしれない。あの時みたいに。
「あのさ」
緊張している美穂子をよそに、かるい口調で久は言った。
「私たち、どこで会った?」
「え」
「どっかで見た気がするなあって思ってたんだけど、さっき上埜さんって言われたし、どの対局って聞かれたから、やっぱり会ったのよねって」