09/05/26 01:12:29 6icOgJ9B
緑が濃い土手の上を蒼い風が走っていく。舗装された道の先、
軽い足取りで5mほど駈けたゆーきが私の方に向き直る。
「…のどちゃんは惚れっぽいからなー。麻雀に興じる咲ちゃんに
骨抜きなのは見てるだけで分かるじょ」
「な……っ そ、骨抜きだなんて、そんな……」
だめだ。発する言葉と正反対に、頬に血流が集まっていくのが分かる。
どうしようもごまかせず、進む足が止まってしまった。
「咲ちゃんが居ようと居まいと、のどちゃんは私の嫁! だけど無意味な
争いをするほど優希ちゃんは愚かじゃないじぇ!」
「……?」
「咲ちゃんも嫁にしちゃえばいいんだじょ♪」
「……それは、どうなんですか?」
「不可能はない! 咲ちゃんだってタコスの血族にしちゃえば問題なし
なんだじぇ!」
天に向かってテイクアウトしたタコスを掲げるゆーきの姿は、何故だか
とても頼もしく、雄大に見えたものです。
「………負けないじょ」
「えっ?」
吹き付ける風で聞こえづらかったけど、確かに耳に届いた決意の声。
いつも天真爛漫・天衣無縫なゆーきが心に定めた想い……
それがどれほどのものなのかは、今はまだ計り兼ねるけれど、
確実に彼女の中で膨らんでいる。私は…その想いを無碍にするほど
冷酷ではないけれども……気持ちが分かっただけでも今日という日に
意味はあったと思う…
「のどちゃん、絶対に…清澄のこのメンバーで全国に行こうじぇ!」
「もちろん、そのつもりです。中学校の頃からの夢…ゆーきと一緒に
叶えるこのチャンス、逃す訳には…」