09/08/12 01:34:55 qGFIKLqc
「けどねっ、せつな」
「キャッ」
唐突に立ち止まって振り返ったラブに手を握られて、私は思わず声を上げて目
を丸くする。
「な、何?」
「せつなはこれから、アタシとの思い出をいっぱい作れると思うよ」
「え?」
「一番最初は、明日からのお出かけ!!」
あ、と私は思わず呟く。
明日から、私達は夏休みの旅行に出かける。お父さん、お母さんに連れられて、
二泊三日で高原のペンションに。
「いーーーーっぱい写真撮って、美希タンやブッキーに見せて、いーっぱいお話
するつもり。でも」
私の耳元に顔を近づけて、ラブは囁く。
「思い出は、アタシとせつなだけのものだよ」
「......ラブ......」
ヘヘン、と白い歯を覗かせながら笑う彼女に、私の心は解きほぐされる。心の
奥を凍てつかせていた小さな氷は、もう溶けてしまった。ラブという、太陽の光
によって。
そうだ。私達には時間がある。未来がある。
無いのなら、作ればいい。これからの時の中で。
ずっとずっと一緒の、彼女と共に。
「これからたっくさん、思い出を作ろうね、せつな」
「うん、そうね、ラブ」
大きく頷いた私を見て、またラブが笑う。そして私達は、手を繋いだまま歩き
出す。
二人が共に進む、明日へと向かって。