09/02/14 02:25:00 m+gi+TKZ
家に着いて一息つくと、衣玖はテーブルの上に置いた包みを、破いてしまわないように丁寧に開けた。
中には、これまた可愛らしい箱が入っていた。
それを開けてみると、大きなハート型のチョコレートが姿を現す。
きっと彼女の手作りなのであろう、その形は非常に歪である。
台所に立ったことなど無いであろう天子が一生懸命にそれを作ったのが、ありありと想像できた。
「まったく、溶かしすぎですよ。こんなに大きくして」
衣玖は呟きつつ、端の方を一口食べてみた。
「……美味しい」
形こそ歪だが、味は衣玖の好きな甘すぎないものだった。それが決定打だった。
衣玖の目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「こんなに大きな貴女の心、私が頂戴するには勿体なさすぎます」
そして、チョコレートが溶けて衣が汚れることも厭わず、衣玖は自分の心臓に重ねるようにそれを抱きしめた。
「私も同じです……天子様」
大きなハートの中には、いつも素直になれない天子の本当の心が綴られていた。
“衣玖 いつもありがとう 大好き”