09/04/04 15:12:54 ZYQKdYkB
珍しく、八雲紫が白玉楼を訪ねてきた。
正確には、『予告してから』訪ねてきた。
神出鬼没が常で、いつも突然ひょいと顔を出すのがいつものパターンとして広く浸透しているスキマ妖怪が、わざわざ
「お招きの時間に、お伺いしますわ」
と遣い(お手紙を持ってきましたー!と、橙)を寄越した。
迎える白玉楼では、忠実なお庭番である魂魄妖夢が、張り切って上等の茶を用意し、茶請けに牡丹餅をこしらえた。
そして、幽々子が紫を招いた時間。
「おじゃましますわ」
果たして紫は現れた。
いつもどおりのスキマから。(意味ないじゃん!)
★☆★☆★☆★
折りしも八つ時である。
妖夢が丁寧に淹れた茶を両手で取って、一言。
「あら。いいお茶ね」
胡散臭く得体の知れない最強の妖怪が、心から寛いで少女のような笑みを零した。
「でしょう?お茶が美味しいと、何でも美味しくいただけるものねぇ。最近は妖夢もお茶を淹れるのがすっかり上手になったのよ」
更に少女めいて朗らかに笑うのが、主である西行寺幽々子である。
二人の笑顔に挟まれて、妖夢は恐縮した。
いつもたおやかな笑みを絶やさない、ある意味で紫に次いで胡散臭い雰囲気を持つのが、妖夢の主である。その幽々子が、こんなに屈託な
く笑っているのを見ることは、妖夢でさえも滅多にないことだった。
そして、こんな笑みを見ることが出来るのは、決まって八雲紫がいるときだけなのだ。
(なんか…)
(この二人の雰囲気って、すごい)
(幽々子さま、楽しそう)
(紫様が来ると、雰囲気変わるのよね)
(親友、っていうか、気心通じ合ってる空気が…)
二人で楽しげに喋り、笑う様子を、控える妖夢はじっと窺った。