レズカップルを襲ってレイプしたい・・・・ハァハァat LESBIAN
レズカップルを襲ってレイプしたい・・・・ハァハァ - 暇つぶし2ch500:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 18:16:18 j2zZmn1s
やはり埠頭といえばハードボイルドですね
ハードボイルド百合は新ジャンルですw
しかし中川君は良い人ですな

501:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:32:36 ECZeTWDC
>>501
彼は好漢ですね。

実は選択肢を呈示した後、ひとみさんにメアド教えて
貰ってない、ということに気づいてしまって
とても焦ったというのは内緒ですw

502:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:34:28 ECZeTWDC
自分にレスしてどうするorz

501は、>>500さん宛です。

503:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:51:43 hd1epyTZ
>ひとみさんにメアド教えて貰ってない
気付いた作者さんスゴいw
教えてもらってたと思い込んでたw

504:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 20:41:47 ECZeTWDC
>>503
具体的には、>143の選択肢で、③が選ばれた結果、
>148で、黒川さんが自分のメアドを 
「ひとみさんのアドレスは教えたくなかったのだろう」
という理由で、主人公に教えていました。

単純ながら、話の展開としては重要なミスになるところでした。



505:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:51:04 SGwjVbrO
 港を出たばかりの貨物船が鳴らした哀愁を含んだ汽笛と、水面をゆっくりと
進む船がつくり出した小さな波が、コンクリートの壁にぶつかって砕ける音が、
微かに耳朶に届いている。
 夜に入って再びひろがった雲に遮られて、本来であれば天空に瞬くはずだった
無数の星達の存在は隠されている。

 古びたベンチから立ち上がった黒川さんは、ひとみさんの白いブラウスに顔を
押し付けて、子供のように泣きじゃくった。
 ひとみさんは、尊敬すべき先輩が胸元で泣いていることに驚いていたが、暫くは
何も言わなかった。事情をある程度知っている俺も、二人の傍で立ちすくんだままだ。

 沖合いを通った貨物船が完全に闇夜に消えて、黒川さんの嗚咽がようやく
収まりかけた時、ひとみさんはポケットからハンカチを取り出した。
「黒川…… 先輩? 」
 由衣さんは、差し出された白いハンカチを受け取り、熱くなっている瞼を抑えた。
しかし、溢れ続ける涙をとめることはできないでいる。
「私…… わたしね 」
 黒川さんが喉の奥に詰まった重苦しい塊を吐き出すように、言葉を紡ぎ始める。
「あの、あのね…… 」
 懸命に声を出そうと懸命にもがく。そして―
 顔をあげて、ひとみさんをまっすぐと見つめて言った。

「私、あなたの事が好きなの! 」

 黒川さんは、大きく前に踏み出した。

506:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:52:55 SGwjVbrO
「新入社員研修の時、あなたの顔を見た時から気になっていた。あなたのOJT
(教育担当者)になれた時は本当に嬉しかった。佐藤さんという苗字じゃなくって、
ひとみと呼びたかったわ。でも、あなたの隣にはずっと鈴木さやかさんがいた。
 私、本当に嫉妬したわ。
 鈴木さんが何処かに転勤したら、私にもチャンスがあるかもしれない、なんて
馬鹿なことを考えたりもした。
 でもね。鈴木さんの話になると、あなたが物凄く嬉しそうな顔をするんだから
どうしようもなかった。
 私、あなたの笑顔が見られるなら、親しい先輩後輩という関係で満足すべきと、
懸命に自分を抑えつけた。でも、でもねっ」

 冷静という仮面をかなぐり捨てた黒川さんは、ほとばしるような熱い想いを
伝え続ける。
「見守るだけが幸せなんてことは、私の単なる逃げに過ぎなかった。
 だから、私、素直な気持ちをそのままいうわ。
 ひとみ、あなたの事が大好きなの。世界中の誰よりも大好きなの! 」

 黒川さんは、ありったけの想いをこめて、ひとみさんへ恋心を伝えた。
 俺は― 彼女の告白を目の当たりにして、自分自身に対してやり場のない憤りが
わきあがった。
 由衣さんは、泣きじゃくって化粧が落ちてしまって、何度も言葉に詰まりながらも、
全ての勇気を振り絞った。自分の気持ちを大好きな相手に伝える事ができたのだ。
 それに比べて俺は…… いつまでたっても傍観者に過ぎないのか?

 黒川さんは告白を終えると同時に、大きな荷物から開放されたような、晴れやかな
顔つきに変わっていた。
 幾筋かの涙の跡が頬に残ってはいるが、今まで見てきた中でも最高の笑顔だ。
 彼女はぐっしょりと濡れたハンカチを右手で掴んだまま、ただ、答えを待っている。
 そして、先輩から衝撃的な告白を受けたひとみさんは―

507:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:56:50 SGwjVbrO
選択肢です。

① ひとみさんは、黒川さんの告白をことわった。

② ひとみさんは、黒川さんの想いを、その場で拒絶することができなかった。

③ 暗闇の奥から、誰かの足音が近づいてきて……



508:名無しさん@秘密の花園
07/06/08 20:08:10 gUbZZ1zl
黒川さんカッコイイー!
ひとみさんの胸で泣きじゃくる姿も可愛い!

③は修羅場フラグっぽい?
やっぱり②でお願いします 作者さんに感謝!

509:名無しさん@秘密の花園
07/06/08 21:30:17 AxvRYEIt
ここはやっぱり②だろうなぁ。

と言いつつ、どれを選んでもドラマティックな展開が待ってそうで w

510:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:15:12 uj7cOL+O
それでは②でいきます。

511:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:24:13 uj7cOL+O
 佐藤ひとみさんは、先輩からの申し出に、承諾することも拒絶することも
できずに、呆然として立ち尽くす事しかできなかった。
 即座に断られなかったことから、黒川さんは、大いにチャンスありと
判断したのだろう。一気にひとみさんに近づき、耳元で囁く。

「ひとみ。さやかさんと別れなくてもいいのよ」
「どういうことですか? 」
 怪訝そうな表情で、ひとみさんは尋ねる。
「ひとみの自由にして貰えればいいの。もし、私の申し出を受けたとしても、
後になって、やっぱり嫌になったら、いつでも断ってもいいの。
文句なんか絶対言わないことを約束するわ」
「そ、そんなこと…… 」
「それに、このままさやかさんと一緒に住んでもいいのよ」

 黒川さんの言葉はやはり、甘い誘惑と言うべきなのだろう。
 俺は、雲行きが怪しくなっている状況を感じた。由衣さんの言葉を
聞き漏らすまいと、全神経を集中させる。

「ひとみを拘束したり、困らせたりするつもりはないの。もちろん、あなたに
嫌な思いをさせるつもりなんて全くない。私の気持ちを押し付けることも
しない。全ての選択権はあなたにあるわ」
 これは、ひとみさんにとって都合の良すぎる申し出だ。だからこそ、
彼女は困惑したまま動けない。

512:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:25:05 uj7cOL+O
 ついっ―
 黒川さんは更に半歩間合いを詰める。二人の距離は、肌が直に触れ合いそうに
なるまで縮まっている。
「でも、そんなことしたら…… さやかが何というか」
 ひとみさんは、由衣さんの勢いに押されながらも、ようやく反論らしき
言葉を口にする。
「もし、さやかさんに責められたら、全部私のせいにしてくれればいいわ。
強引に迫られて仕方がなかったって言えばいいの。
 ひとみは全く罪悪感なんて感じる必要はない。悪いのはぜんぶ…… 私」

「あ、あの、でも」
 俺は、ひとみさんがはっきりと、黒川さんの告白を断れないことが
不思議だった。
 優柔不断なのか、尊敬している先輩の告白に気持ちがぐらついているのか。
 彼女の揺れる心を正確に推し量ることはできない。
 しかし、ひとみさんの真面目な性格から考えると『ふたまた』なんて
器用な事ができるとは、とても思えないのだが。

513:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:26:18 uj7cOL+O
「ねえ、ひとみ」
「はい…… 」
「少しだけ、あなたに考える時間をあげる」
「え? 」
「もし、私の告白を断るのなら、首を横にふってちょうだい」
 黒川さんは視線を決して逸らさずに言ったが、表情は自信に満ち溢れていた。
 この時点に至っては、明確に断られることなんてありえないことを
確信していたからだ。
 そして、ひとみさんは― 予想通り、首を動かすことが出来なかった。

「ありがとう。ひとみ」
 時計の秒針が二回りした後、無言の承諾を得た黒川さんは優しく微笑んだ。
 同時に、ひとみさんの後ろに腕を絡めて、ゆっくりと顔を近づけ、
唇をあっさりと塞いでしまう。

 ひとみさんは、身体を硬直させて瞼をしきりに瞬かせている。
 信頼している先輩が、いきなりそういう行為に出た事が、信じられないと
いった様子だ。
 それでも、拒絶の仕草を見せる事はなく、黒川さんのなすがままに唇を
許している。

514:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:27:39 uj7cOL+O
「んん…… 」
 ひとみさんの喘ぎ声が夜風に乗って、俺のところまではっきりと届く。
ぞくぞくするような妖艶な声だ。
 黒川さんはゆっくりと、渇いた唇を動かして、ひとみさんの硬くなった
身体を少しずつほぐしていく。
 彼女の右手は、ひとみさんの背中に回っており、綺麗な指先が白いブラウスを
軽くなぞっている。
 暫くの間、黒川さんは、ひとみさんの柔らかい唇の感触を味わっていたが、
拒絶のそぶりさえ見せないことを改めて確認すると、舌を伸ばしてゆっくりと
唇の間に割り込ませていく。

「んぐぅっ! 」
 ひとみさんのくぐもった悲鳴が漏れた。力が抜けて膝が崩れ落ちそうに
なるところを、黒川さんに支えられる。
 すっかりと脱力した後輩を愛おしそうに抱きしめると、ひとみさんの
舌に絡みつかせていく。

515:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:30:33 uj7cOL+O
「ん…… んぅ…… んあっ」
 ひとみさんと黒川さんの唇から、途切れることなく続くあえぎ声は、
俺の心を深くえぐった。
 女性同士のディープキスに背徳感を覚えたわけではもちろんない。むしろ、
百合萌え男としては堪能すべき状況といえる。

 しかし、ひとみさんには、既にさやかさんという恋人がいるのに、
積極的な黒川さんに押しきられる形で、結局は受け入れてしまったことに
形容しがたい、やるせなさを感じてしまったのだ。
 それに、黒川さんの悪魔のような甘い囁きに乗ってしまったひとみさんが、
自ら修羅場を選択してしまったことに対して、強い危惧を覚えざるを得ない。

「んあ…… くぅっ」 
 濃厚なキスを続けながら、黒川さんの右手は巧みに動いて、ひとみさんの
ブラウスの内側に指をもぐりこませる。
 ひとみさんは、反射的に身体を捩って逃れようとするが、黒川さんは
もう離すことはしない。
 俺は―

516:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:43:04 uj7cOL+O
さて選択肢です。

①黒川さんと、ひとみさんの行為を、見ていることしかできなかった。

②彼女達の愛撫をこれ以上、見続けることができなくて、立ち去る事にした。

③二人を見ていたが、マナーモードにしていた自分の携帯が震えて……


>>508-509
ありがとう。感想が貰えるからこそ続ける事ができます。

ちなみに、前回呈示した選択肢では……

 ①は、NORMAL ENDです。ひとみさんとさやかさんは結ばれ、黒川さんはひとみさんを
 すっぱりとあきらめます。

 ③は、たちの悪いナンパ男の登場で、アクションシーンの予定でした。

 今回選択された②は、修羅場となる可能性があります。

517:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 23:14:31 e2+lJ7ba
おおーっ!とうとう本格的な百合がっw
黒川さん口説き上手すぎw 手練だ♪

ウワワワ前回の選択は修羅場でしたか
ええい黒川さんもう突っ走れw ①で!

518:名無しさん@秘密の花園
07/06/12 21:26:29 Ai836KZ8
俺が代わりに抜いといてやるから百合萌え男おまいは見てなさい

519:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 18:40:51 IOoqMClG
保守


520:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 19:18:46 DrCReU48
長い間放置してしまい、申し訳ありません。

①で書くことにします。

521:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:09:29 DrCReU48
 俺は、彼女達から視線を離すことができなかった。二人の愛撫に視線が
釘付けになってしまっていた。
 黒川さんは、もぐりこませた手を器用に動かすと、ひとみさんのブラの
ホックを簡単に外す。
 ブラは簡単にほどけ落ちて、彼女の薄い服ごしから乳房と乳首が見えてしまう。

「ひとみ…… 大好き」
 ひとみさんの耳元で、黒川さんは囁く。
「せんぱい…… 」
 巧みなキスに翻弄されたひとみさんは、ほとんどなすがままにされている。

 黒川さんは、ひとみさんの豊かな胸をまさぐりながら、時折、乳首のあたりを軽く捻る。
「つぅ、せんぱい……だめっ、んんっ」
 綺麗な脚をぶるぶると震わせながら、ひとみさんの艶のある喘ぎ声が夜風に乗って
聞えてくる。
「ひとみは本当に可愛いね」
 眼鏡をかけている黒川さんは、ひとみさんの顎をつまむと、顔を寄せる。
 ひとみさんは、瞼を閉じて唇を上に向けて、黒川さんは期待通りに口を塞いだ。

「ん、んくぅ」
 黒川さんとひとみさんのキス。
 最初は、軽く唇を重ね合わせるだけだ。ふたりの唇が軽く触れ合い、
時折、小さな喘ぎ声が漏れる。
 しかし、すぐにもの足りなくなったのか、黒川さんは舌を伸ばして、
ひとみさんの唇の中に割り込ませていく。

522:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:11:18 DrCReU48
「んんっ」
 ひとみさんは僅かに抵抗するものの、黒川さんの指先が彼女の乳首を軽く
捻っただけで、胸に注意をとられてしまい、口腔内への侵入を簡単に許してしまう。

「ん…… んむぅ」
 黒川さんの舌端が、ひとみさんを捉えて絡みつく。
 とろとろとした唾液が混ざり合い、淫らな音が微かに届く。
俺はどうしようもない程大きな煩悩を抱いたまま、彼女達の痴態を
ただ、見つめている。

 真夜中の埠頭でふたりの交わりは尚も続く。
 星を塞いでいた雲の切れ間から、東から昇り始めた下弦の月が覗き、
ひとみさんと黒川さんを照らし出す。
 激しく濃厚なキスを交わし続ける二人が、月光によって鮮やかに浮かび上がり、
妖しくも幻想的な情景が醸し出される。寄り添うふたりから伸びた長い影が、
俺の足元まで届いた。

523:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:13:26 DrCReU48
 ひとみさんの口内を味わい尽くすと、黒川さんは、乳房の愛撫を続けながら、
もう一方の手を下に伸ばして、スカートの中に入れようとする。
「!? 」
 先輩の淫らすぎる行為に驚いたひとみさんが、唇を離して、身体を捩って
抗おうとするが、黒川さんは、冷徹な口調で言い放った。
「逃げないで。ひとみ」
「で…… でも」
 ひとみさんの、心の迷いにつけこむように黒川さんは、彼女のスカートを
捲くりあげた。
 ひとみさんの健康的な白い太腿と、薄いピンクの下着が視界に飛び込み、
俺は釘付けになってしまう。
 この状況を敢えて止めようとする男は、異性に興味がないごく一部の
例外を除いては、地球上に存在しないと断言しても良い。

 黒川さんは、ひとみさんの小さなレースがついた下着の上から、
丹念な愛撫を始める。
 最初は臀部を、細く長い指を滑らして円を描くように撫でていく。
「くろかわ、せんぱいっ…… やめてくださ…… んっ」
 黒川さんの愛撫に、ひとみさんは形の良い眉を歪めながら、
お尻を左右に振って逃れようともがく。
 しかし、黒川さんの愛撫は極めて上手く、瞬く間にひとみさんの
抵抗は弱まっていく。

524:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:14:28 DrCReU48
「ひとみ。貴方は私に全てを任してくれればいいの」
 謡うように囁きながら、お尻を撫でていた手を前に回す。
 ひとみさんは、女性の最も大切な場所を守ろうと、反射的に太腿をぎゅっと
閉じるが、黒川さんは、ゆっくりと秘められた場所に指先をあてると、
意地悪そうな笑みを浮べて言った。

「ひとみ。ずいぶんと濡れているわ」
「そんな…… 嘘です」
「本当よ」
 狼狽しながらも否定するひとみさんに対して、冷静な口調で断定すると、
彼女の愛液によってつくられた、染みがついた部分を弄ぶ。
「んあっ」
 小さく悲鳴をあげて、ひとみさんは下半身を震わす。
「我慢、しなくていいからね」
 とても甘い誘惑の言葉。
 黒川さんは、ひとみさんの胸を揉みしだきながら、下着の上から
大切な部分を愛撫していく。
 ものすごく巧みに指先が動き、瞬く間にひとみさんの秘所から
噴き出した愛液は量を増していく。下着から漏れだした粘性のある液体が、
健康的な太腿の根元から溢れ出して、とろとろと下につたっていく。

525:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:15:19 DrCReU48
「せんぱいっ、こんなとこで…… んあっ、駄目ですっ」
 絶え間ない刺激に悶えつつも、ひとみさんは顔を紅潮させて、
抗いの言葉を紡ぎだす。
 いくら真夜中とはいえ、夜風がじかにあたる外で、しかも男である
俺の眼前で、黒川さんと立ったままエッチをするという、
凄まじく異常で倒錯的な状況は、真面目なひとみさんにとっては、
とてつもなく恥ずかしいものであるはずだ。
 しかし、黒川さんの愛撫が上手すぎて、弱々しい抵抗をするものの、
絶え間なく与えられる快楽に流され、結局は溺れることになってしまう。

「くぅ…… だめ、だめです…… 」
 強まるばかりの悦楽に耐え切れず、ひとみさんの吐息と喘ぎ声が、
次第に大きくなる。
 頃合い良し、と踏んだ黒川さんは、下着の中に手を潜りこませて、
ひとみさんの秘所を直に愛撫する。溢れる愛液に指先を濡らしながら、
的確にアソコを刺激していく。
「ひとみ。感じてるのね」
「せんぱいが、わるいんで…… ひゃんっ」
 淫らな行為を仕掛けてくる、とても悪い先輩をにらみつけようとするが、
秘所の突起を軽く捻られると、敏感になった身体は反応してしまい、
喘ぎ声しかあげられなくなってしまう。

526:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:16:46 DrCReU48
「素直でない子には、おしおきしないとね」
 黒川さんは意地悪そうに言うと、背後から抱きしめるような態勢をつくる。
ひとみさんの乳房を揉みながら、下着の中に入れた指を細かく動かして、
愛撫によって膨らんだ突起を、軽く押し潰すように揉んでいく。

「んあっ…… せんぱい…… だめ、くぅ」
 激しい刺激にひとみさんは喘ぎ、愛液をかき回す、くちゃくちゃという
淫らな音がはっきりと聞えてくる。
 ひとみさんは、必死に声を抑えようと我慢を重ねるが、黒川さんの
厭らしい責めに耐え切れず、大きな声を何度もあげてしまう。

「ひゃん、だめっ…… ホントにダメっ……んあっ、ああ! 」
 健康的な肢体を細かく震わせながら、ひとみさんは悦楽の階段を
昇っていく。限界はすぐ傍にまで迫っている。
「ひとみ。イキなさい」
 黒川さんが短く命令した。
 ひとみさんは、悪魔のような先輩の愛撫に完全に弄ばれながら、
長い髪を振り乱して激しくよがりまくる。
「んあ、いっちゃう、ほんとに…… いっちゃうのっ」
 なおも懸命に耐えるが、黒川さんの愛撫は、加速度的に早く、激しくなる。
「だめ、ああっ…… んあっ、いくっ、いくのっ…… んあああああっ! 」
 立ったまま全身を硬直させて、ひとみさんは小刻みに震わし、ついに
絶頂を向かえる。そして。

 快楽の頂を超えると、全身の筋肉が弛緩して、糸が切れたマリオネットの
ように崩れ落ちかけ― 黒川さんよって支えられた。 

527:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:22:09 DrCReU48
ちなみに、今回は選択肢はありません。

久々に濡れ場を書いたような気がします。
えろはぬるいかもしれませんが、ご容赦を。



528:名無しさん@秘密の花園
07/06/25 15:24:13 AH6iaQCT
少子化対策は小梨税で:第2ラウンド

小梨、非婚が大嫌い【育児板】
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529:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 00:10:39 g/1EQBUO
 俺は、彼女達の愛撫が終わる頃、背を向けた。
 二人をまともに直視できなかったからだ。
 断じて、愛撫を重ねたひとみさんと黒川さんを軽蔑したわけではない。
 百合萌え男としてはありえない。では、何故?

 俺の脳裏にさやかさんの顔が浮かんだからだ。
 黒川さんが、強引にさやかさんを奪ったとしたら、さやかさんは黙ってはいないだろう。
 いわゆる修羅場に、俺は居合わせたくない。綺麗な百合だけがみたいんだ。
と、思ったところで、自分のあまりの身勝手さに辟易した。

 だれもが、自分の思うとおりに生きられるわけではない。
 黒川さんだって必死の思いで、ひとみさんへの愛を貫きたいと、
果敢に行動したわけだし、ひとみさんだって、黒川さんを
傷つけたくないという「善意」が、あのような結果に
なってしまったのだ。

 どちらにせよ、黒川さんとひとみさんが『ああいう形』で結ばれたからには、
今日の俺は、埠頭にいても仕方がない。 
 腕時計を見れば既に午前1時を回っており、地下鉄は終電を過ぎているが、
大通りに出れば空きのタクシーくらいあるだろう。

 俺は、混乱する思考をまとめられないまま、タクシーを拾い、そのまま家に帰った。
 ただ、タクシーに乗る直前に、ひとみさんの車に立ち寄り、1枚の名刺を挟んでおいた。
 名刺の裏には、「申し訳ありませんが、お先に失礼させていただきます」
とだけ書いておいた。


530:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 15:38:39 +o6ll9WR
ご苦労様です。読み応えがありました。

今回は我々読み手にとっても登場人物にとっても
つらい選択でしたね。
今後どうなっていくのか目が離せません。

531:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 17:33:44 Hq2ZngW6
>530
いつも読んでいただいてありがとです。

更新頻度はごらんの通り、期待できませんが……

今後も読み手の方に選択肢を呈示する場面があろうかと思います。
ただ、私の不徳の極みで申し訳ないのですが、
スレ進行がとまっている状況ですので、場合によっては自動的に進行する
(自分で選択する)場合があるかと思います。

この点、ご理解いただければ幸いです。


532:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 16:05:21 dKvO9Gui
やあ、こんにちわ。>>278です。えっ?知らない?うん、まぁそれは良いや。300レスも前の話だし。
消えた後も時々図書館のパソコンを使って見に来てたんだけど、
自分で出すだけ出して書いてあげられなかったキャラ(バーテンダーさんやパーカ娘のお母さんとか)がいた事がちょっと心残りでね。
で、本編の流れにはついて行けそうもないし、二人のエピソードを保守代りに番外編みたいな感じで投下したいんだけど、ダメかな?
まぁ、完成させる自信もないしダメと言われたら即あきらめるよ。
一応、暫く待って返事が無ければ出来てるところまでで投下するけど、ダメならダメって言って脳内あぼーんしてくれ。

533:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:13:49 dKvO9Gui
えと、じゃあとりあえず置いていきます。
主役はバーテンダーさんです。

534:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:15:20 dKvO9Gui

家は、裕福ではないけれど幸せな家族だった。
 お酒がダメで接待嫌いな父は私が寝る前には帰って来たし、母との仲も良かった……と言っても、本当にそうだったのかは分らない。けれど、平仮名だらけの作文と幼き日のかすかな記憶がきっとそうであったと確信させてくれる。
『中沢すず音』
他の子たちが平仮名を間違えている中で、一人だけ漢字交じりの名前。その理由は思い出さなくても分かっている。
私の中で幼稚園の頃の記憶は三つ。一つは、父や母と過ごした何気ない幸せな家庭の記憶。二つ目は、「私立の小学校を受けないか?」と言われた時の記憶。そして、最後の一つは……

永遠の、初恋。



535:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:16:15 dKvO9Gui

 既に朧げな友人達の顔と夏の空を覆う雲の形が、まるでパステルか水彩画の様にぼやけて浮かぶ。確実なのは晴れていたこと。そして、その日はまるで前日までの暑さが嘘の様に涼しかったと言う事。
 私たちは公園でボール遊びをしていた。それが何だったかは覚えていないけれど、私は逃げるウサギでも追う様に、ただただ白いボールを追いかけていた。
 ポンッ、ボールが道路に飛び出る。こんな時、他の子だと一緒に飛び出しかねないから、ボールを取りに行くのは必ず私の役目と決められていた。
既に走り出していた私が追いつくことを諦めて速度を落とし、向かいの歩道にボールがたどり着いたころ、大きなトラックが交互に、まるで間を縫うように通って行く。
瞬間、ボールを見失う。
「あっ……」
 トラックの覆いが解けると、そこにはスッケチブックを片手に、ボールを抱えた女学生の姿。襟と裾とにフリルのあしらってある純白のブラウス、シックな濃い藍色のベストに肌を隠すロングスカートの組み合わせが、当時の私にはとにかく大人びて見えた。
 フワリ、ウエーブのかかった濡羽色の長髪が振られる。現れたのは透き通るような白い肌と艶やかな桜色の唇、影を落としそうな程に蓄えられた長いまつげ、吸い込まれそうな瞳……その美しさに幼い私は、言い様のない恐怖と感動とが混じった不思議な感覚に襲われた。
 目を離せない……いえ、瞬きさえもできない。


536:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:17:17 dKvO9Gui
 見たこともない美しい生き物が、一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。
「これ、貴女のではなくて?」
 艶めかしさに満ちた声、いえ、艶めかしさの塊が音に直されたもの。聞いただけで、まるで身体を撫でまわされた様な感覚……
「あ……」
 ボールを渡されて、初めて正気に戻った。同時に、甘く柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。香水ではない。この人の、肌自体の香り。
「もしかして、違ったのかしら?」
「い、いえ。あ、ありがとうございます!」
 慌ててお礼を言うと、振り返りざまにボールを友達の方へ投げやった。
「お友達?」
「んぅ、ふぅ……」
 耳元で言われ、背筋をぞくぞくとした物が走る。
「残念ね。お暇なら、手伝って貰いたかったのに」
「あ……」
 手伝う……? 何を……?
 いや、何でも良い、もう少しそばにいたい……
「あ、あの、大丈夫です!」
「本当? でも、お友達は?」
 そっと指が頬を撫でる。まるで、飛切りに上等なシルクの布で頬を撫でられた様な、滑らかで優しい感触……
「いえ、ちゃんと断りますから……」
「そう。じゃあ、もしも手が空いたら向こうの噴水に来ていただけるかしら? あ、あの水が出ているところよ」
 そう言って道路の向かいを指さすと、あの人はその方向へ歩いて行ってしまった。
 その後姿は、見送る私にはまるでダンスのステップにさえ見えた。



537:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:18:25 dKvO9Gui
 私に与えられたのは、絵のモデルと言う役目。言い換えれば、目の前の美しい人と少しの会話を楽しむ喜び。
「お名前は、なんと言うの?」
「す、鈴音です。中沢、鈴音」
「そう。スズネちゃん……きっと『鈴の音』で鈴音ちゃんね。いい名前だわ、貴女の声、とても奇麗ですものね」
 そう言うこの人の声に比べて自分の声が良い物にはとても思えなかったけれど、とにかくお褒めの言葉を授かったのが嬉しかった。
「あ……え……」
 名前を尋ねようとして、自分から話しかけるには何とお呼びして良いのか判らずに口を閉ざす。目の前の人を、他の人達と同じように『お姉さん』『お姉ちゃん』と呼ぶのには、ひどく抵抗があった。
「今日は演劇部……そうね、お遊戯で、お父様やお母様の前で絵本の真似などしなかった?
  あんな事をしているのだけど、今度やる劇のイメージを掴む為に、街で自分の役に役立ちそうな物をスケッチする事になったの。私はお姫様の役をする事になったのだけれど、街中にそんな物が見つからなくて。そうしたら突然、目の前に可愛らしい女の子が現れたものだから」
お姫さま? 私が?
 この人がお姫様なのは分かった。この人はそのまま『お姫様』と呼んでも問題のないくらい奇麗な人なのだから。だけれど、どうしてそんな人が自分を選んだのかが分からなかった。お姫様の絵が描きたいのなら、鏡の中を覗けば良いのに……
「けれど私、本当は王子様の役をやりたかったのよね」
 溜息混じりにそう言ったのを聞いて、私は思わず口を開く。
「そんなの、変です!」
「あら、どうして?」
「だって、どう見てもお姫さまです。奇麗で、華やかで……」
 その台詞には、クスリと笑みが返された。


538:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:18:58 dKvO9Gui

「でもね、物語のお姫様は殆どの場合、いつも幸せを待っているの。『何か素敵な事は起こらないかしら』『私の王子様が早く来ないかしら』って……でもね、私は誰かを幸せにしたいの。例えば、鈴音ちゃんみたいに可愛いお姫様を幸せにする王子様になりたいの」
嗚呼! 何と嬉しい言葉! この美しい人が、自分などを『可愛いお姫様』と呼び、剰え『幸せにしたい』などと言ってくださる!
 身体が―特に太もものあたりが―何とも言えないくすぐったさに襲われる。
「さ、出来たわ。もう少し続けたかったけれど、もう時間が来てしまったみたい」
 そう言って見せられた絵に描かれていた私は……これは、本当に私?
 優しいタッチで描かれた鉛筆画の少女は、可愛らしく悪戯っぽい笑みを浮かべ、それでも失われることがない気品の様な物に満ちていて……その、なんと言うか……
「わ、私、こんなに素敵な人じゃありません!」
 その一言に尽きた。
「あら、貴女はとても魅力的よ。さ、これで端の方にお名前を書いていただける?」
 そう言われて、私は困った。
 目の前にあるのは、完成した一つの美しさ。そこに自分の文字を、どうあがいたところで圧倒的に醜い物を入れてしまえば、それだけが浮いて折角の絵が台無しである。何より、自分の書いた名前がこの絵と一緒に見られるのは、恐ろしく恥ずかしい事だった。
「あの、これは私が書かない方が……」
「これは鈴音ちゃんと出合った思い出なのよ? 鈴音ちゃんに書いて頂かないと、意味がないの。お願いできるかしら?」


539:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:21:02 dKvO9Gui


 嫌です、等とは言えるはずもない。だからせめて、簡単そうな『中沢』ではなく、難しそうに見える『鈴音』を平仮名で書いた。幾ら漢字が書けるはずが無いとは言え、単純そうに見える『中沢』を平仮名で書くのは恥ずかしくて出来なかった。
 その点『鈴音』ならば、特に『鈴』の字は小学生の中学年でも難しいだろう。それならば、少しは平仮名で書いても恰好がつく、そう思ったから。(ただし、実際に小学生になって漢字を習い始めると、『鈴木』という名字のせいで皆すぐに覚えてしまったのだけど……)
 私が絵の美しさと自分が書いた文字の汚さとの落差に恥ずかしさを覚えながらスケッチブックを渡すと、遠くにやはりベストとブラウスにロングスカートの女学生が見えた。
「お姉ぇーさまぁー、そろそろ帰りましょーう」
「はぁーい」
 そう返事をされていた振り向きざま、私は柔らかな匂いに包まれ、頬にそっと何か柔らかで幸せな物が触れたのを感じた。
「次は唇にしてあげるわ。それまでに、もっと素敵なレディになるのよ」
 その瞬間、先ほどの物が頬への接吻だったと気づき、頭にカァッと熱が上がってくる。
「今日はありがとう。御機嫌よう、きっとまた逢いましょう」
 先ほどの接吻で腰を抜かされた私は、地べたにへたり込んでその後姿を見送った後、そのまま暫く幸せの裡に『お姉さま』と、聞いたばかりの素敵な呼び名を口の中で繰り返し続けたのでした……


540:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:22:08 dKvO9Gui


 それから私は奇麗に平仮名を書く練習と、簡単な漢字の勉強を始めた。勿論、もう一度お姉さまに逢えた時のために。
 学が無いと思われたくなくて外国、特にヨーロッパの国々の名前を覚え、常識がないと思われたくなくてニュースや歴史を学び、頭が悪いと思われぬ様に算数の勉強をして、
演劇をしているお姉さまと話をしようとシェークスピアを始めとして国内外の様々な文学作品を読み漁った。
 そんな時に、私は一つの作品と出合う。
 吉屋信子、『花物語』。
 この作品であの『お姉さま』が上級生への呼び名だと知る。そうして、少女達の思いが次第に自分の思いと重なってくる……
 恋。私は自分の気持があの『初恋』と呼ばれている物だとこの時に確信した。
「私があの人と同じ制服に身を包み、一目お会いして『お姉さま』と呼べたならばどんなに幸せでしょう」
 やや言葉の色がうつったまま溜息混じりにそう漏らして、私は窓から外を眺めた。
 季節は疾うに秋を過ぎ、冬さえも流れ、もう直ぐ春を迎えようとしていた。


541:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:23:16 dKvO9Gui

 いつの間にかやって来ていた春も終わりを迎え、漸く待ちわびていた夏が来た。
 去年、お姉さまと出合えた季節。それが夏。だから私は、もう一度出会えるならまた夏だと思っていた。
 晴れの日は友達とあの公園で遊び、友達が帰った後もギリギリまで本を読んであの公園で過ごし、雨の日は、近くの図書館で勉強をしながらチラチラと窓越しにあの公園を眺める。そんな日々がずっと続いた。
 一日、また一日と夏が過ぎていく中で、私はもどかしさと切なさと、悲しさを覚える。
 私が無力感に打ちひしがれた頃、夏は終わりを迎えてしまう。


542:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:23:47 dKvO9Gui

 それから去年と同じように秋を越し冬になり、両親は私に「私立の小学校を受けてみないか?」と一冊のパンフレットを差し出す。そこには、確かに見覚えのある制服。
 まさか、そう思いながらパンフレットに載っている全ての写真を穴が空くほど見つめ続け、あの日のお姉さまと同じ制服に身を包んだ女学生達の写った写真を見つける。
 直ぐに母に問うたところ、高等部の生徒の半数は小・中等部からエスカレータ式に上がってきた生徒らしい。だから、私がもし小等部に受かれば、高等部に入れることが決るのだと言う。
 つまり、この試験に受かれば確実にお姉さまと同じ制服を着る事が出来る。
 勿論、私がこの学校に入れたとしてもお姉さまに逢える訳はない。それどころか、恐らくお姉さまは既に卒業されてしまわれているかも知れない。だけど、あの制服を着ることで少しでもお姉さまを近くに感じる事が出来るのならば……私にはそれだけで十分だった。
 そうして、季節はまた春へと廻っていく……


543:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:26:07 dKvO9Gui
以上です。
需要があれば小学生編~も書きますが、「嫌だ」「そんなスレじゃない」と言われたらこれで終わりますので。


544:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 21:52:08 G7jqpOgT
>532氏

>283だけど。
お帰りなさい、それとも、はじめまして?
ネットへの接続環境はもう大丈夫ですか?

本編といっても、縁あってここまで書いているけれど、
本来は通りすがりにすぎないから、お気兼ねなく。

鈴音さんの話は興味深く読ませていただいたよ。
煩悩にまみれた自分とは全く異なり、凛として、澄んだ話を
書けるのが羨ましかったり。
できれば続きをキボンヌ。

545:名無しさん@秘密の花園
07/07/07 20:08:47 bNhh+giZ
>544氏
いえ、はじめましてではないです。でないとバーテンダーさんの名前が分からないので。
それと、俺も結局は煩悩まみれになので羨ましがる必要はないですw
じゃあ、とりあえず続きを書いてみますが、他の人はそれで良いのかな?
それとも、もしかしてあの頃の人はもういないのかな……

ついでにお姉様の名前とかも募集中。

546:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:41:06 vtGq55I+
 ~鈴音編ーその2~

 小学校に通い始めて2カ月もたったころ、既に学校は私にとって苦痛を伴う場所でしかなくなっていた。
 始めは、いじめだと思っていた。
 五月の初めごろだっただろうか? お気に入りだったピンク色のチェック柄をしたボールペンが筆箱の中から消えたのだ。
初めてのお小遣いで買ったものだったのでそれなりにショックだったけれど、探しても見つからなかったし、残りのインクも少なかったので寿命だと思って諦めた。
 ところが翌日、机の上には奇麗に包装された如何にも高そうな万年筆。
 子供心に理由もなくこんな物を受け取るのが悪い気がしてクラスの子達に聞いて回ってみたのだけれど、誰が置いたか分からないので返しようもなく……結局『きっとボールペンを借りた子が、壊したか何かでお詫びに置いたのだろう』と結論付けて受け取った。
 けれど、似たような事が幾度となく続く。
 その内に、『もしかしたら自分は誰かからいじめられていて、それを知った子が置いてくれているのではないか?』と思い始め、ぼんやりとした不安に包まれるようになった。
 そんな時、私は聞いてはいけない事を聞いてしまう。


547:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:42:21 vtGq55I+

「やっぱり、鈴音様にはあんな玩具よりも、私の送った本物の時計が似合ってらっしゃるわ」
 放課後、教室に忘れ物を取りに来た私は、クラスの子のその言葉を聞いてドアにかけた手を止めた。
「私、鈴音様からハンカチをお借りした時、『洗って返しますから』と言って持ち帰ったの。それから『無くしましたので』と言ってもっと似合う物とすり替えたのですけど、家ではそのハンカチを眺めて、鈴音様の事を思い出すのですわ」
「あら、無くしてしまったと言って、鈴音様は怒りませんでしたの?」
「鈴音様は大人ですもの。笑って許してくださいましたわ」
「流石は私達の鈴音様よね」
 そこまで聞いたところで、私は急いでその場を離れた。
 体育の時間に時計が無くなったのも、貸した物が何時も返ってこないのも、全てクラスの子達が、いえ、もしかしたら違うクラスの子達も……私の周りの人間が組んでしていた事だったのだ。
 確かに、それなら全て納得が行く。誰が何を盗っていこうとも、犯人など見付かるはずもなかったし、周りの子供達は私と違ってお金持ちの子供ばかりだったから、高価な物でも簡単に置いていける。それに、無くなるのは何時も『可愛らしい物』ばかり。
 私がお姉さまに何時逢っても良い様な立ち振る舞いを心がけていたことで、周りの子達の目に私はとても素敵に、大人びて映っていたのだ。そして、その姿に何時しか憧れ、その内に皆で理想の『中沢鈴音』を作り上げる事を思いついた……
 けれど、それが分かったところで何か出来るはずもない。
 一般人が一人とお金持ちが多数では経済差があり過ぎる。幾ら子供用の物を買っても、次の日にはまた別の物に換えられてしまうだろう。私に似合う、黒や銀色をした大人用の物に……


548:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:44:32 vtGq55I+
 だから私は扱いの難しい大人用の物を、それでも当たり前の様に使いこなした。お姉さまに憧れている私に、同じ様に自分に憧れる周りの子達の気持ちを潰す事など出来なかったから。
 そうして残ったのは、恐ろしい程の重圧。
 お姉さまと逢えた時のために早くから勉強を続けていた私は、他の子よりも賢かった。だから、ずっと賢い私でなければならなかった。
 お姉さまに声を褒めていただいた為に歌うのが好きだった私は、他の子より声の出し方が上手かった。だから、音楽でも他の子に、ピアノやヴァイオリンを習っている子達にさえも、負ける訳には行かなかった。
 お金持ちでないが故、他の子達より友達と外で遊んで運動に慣れていた私は、他の子達より体を動かすのが得意だった。だから当然、体育でも負ける訳にはいかなかった。
 そう、家庭科も、図工も、聖書を読む事でさえ負ける訳にはいかず、力仕事を回されても文句一つ言えず、欲しい物は買えず、例え休日用にでも、見られては困るから可愛らしい服も欲しがる訳にはいかない。
 他の子達から『黒薔薇の君』『白銀の貴公子』等と称えられる事で、私は心休まる時を失っていった。


549:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:45:44 vtGq55I+

 そんな時に、私は自分の家に起きていた変化にようやく気付く。
 あんなに睦まじかった父と母の仲が、何時の間にか少しずつ険悪な物となっていた。そしてその原因は、私の学費だったのだ。
 私の学費が公立の小学校に比べ格段に高かった為に、父はこれまで自分の仕事ではなかった接待さえもこなさなくては成らなくなった。その為に帰りも遅くなり、元々お酒が苦手で接待を避けられる今の仕事を選んでいた父だから、抱えるストレスも大きかったのかもしれない。
 そんな生活の中で夏休みを迎えた直後、初めて父と母が大きな喧嘩をする。
 これまで続いてきた物が自分の所為であっという間に壊れてしまった。その事が、これまでの重圧で倒れかけていた私に止めを刺し、限界を超えたところへと追いやった。
 その日、私は家を飛び出した。当てはない、それでも行くところは一つしかなかった。
 お姉さまと出合った、あの公園しか……


550:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:47:38 vtGq55I+

 私が家を出てから一時間ほどして雨が降り始め、そして瞬く間に土砂降りと化した。
 そう言えば、ニュースで台風とか警報とか言っていた気がする。けれどもう、どうでも良かった。
「まるで昨日の暑さが嘘の様……」
 雨に濡れていた所為かも知れないし、あるいは風が強かった所為かも知れない。とにかく、凍てつく様に寒かった。
「このままなら、今夜辺りにはここで凍え死ぬかも」
 夏に凍え死ぬと言うのは自分で言って冗談の様に聞こえたけれど、実際に段々と身体の感覚は痺れて来た気がする。それに、何だかとても眠くなってきた。
「でも、ここでなら幸せに死ねるかもしれない……」
 そう、ここでならお姉さまとの思い出だけを抱き締めて死ねるかもしれない。それならそれで、幸せなことだ。
「死んだら何をしましょう? 先ずはお父様とお母様に謝って、それから、それから……」
 お姉様に逢いに行きたい。
 冷たい雨に身を刺されながら、私はそのまま眠りについた……


551:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:48:29 vtGq55I+

 意識は戻った。けれど体はだるくて動かないし、瞼も開くには余りに重い。
 ただ、体を打つあの感覚は消えているから、雨は止んでいる様だった。いや、もしかしたら死んだのかもしれない。そう言えば花の匂いがする。
 両手いっぱいに抱きしめたブーケの香りを柔らかな風が温かく吹き上げた様な……
ちがう、この香りは花なんかじゃなくて!
 残っていた僅かばかりの力を振り絞って起き上がり瞳を開く。このまま力尽きてもかまわない。
「あ、嗚呼……」
 涙が溢れて、言葉に成らなかった。忘れるはずもない。二年間、瞼の裏に焼きついて離れなかった。その美しい後姿!
「あら、起きてしまったの?」
 そう、この声……この声をお聞きしたくて、私は毎日、毎日、あの公園で……
 そして今、ゆっくりと近づいて来て、私の頬にその手を。
 幻覚でなかった!
 幻聴でもなかった!
 今、私は確かに二年前と同じ温もりに触れている……
「今はおやすみなさい。話は、次に起きた時にしましょう」
 私は死んでしまったのでしょう。そうに決まっています。
 だって、ここはきっと天国ですもの。


552:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 21:19:53 8uLRuhgs
GJ!!
久々に来たら話が進んでてびっくりした


553:名無しさん@秘密の花園
07/07/10 21:52:28 lwrqZME4
こちらが全く予期していない方向性の展開です。
続きに期待しております。

554:名無しさん@秘密の花園
07/07/28 00:19:23 8VBqKC8/
~鈴音編ーその3~


 力尽きて眠ってしまった後、再び気がついた私は、先刻の事が夢でなかった事を確かめ安堵する。確かに先程と同じ部屋、同じベッド。
 ただ一つだけ不安だったのは、その部屋にお姉様の姿が見えなかった事。
「お、お姉……さま……」
 戸惑いがちにそうお呼びすると、何だか不思議なくすぐったさが上がって来た。
「お姉さま、お姉さま?」
 最初はその響きに酔っていたけれど、繰り返すうち、次第に不思議な恐怖心が芽生え始めた。
 お姉さまの返事がない。
「お姉さま! お姉さま!」
 せっかく会う事が出来たのに……『次に起きた時に』と言ってくださったのに……
 もう、眠っている場合ではない。ベッドから飛び降り、とにかく虱潰しに扉を開けて回る。
 いない。いない。いない。
 いったい何度ドアを開けて、幾つのドアが残っているのか分からない。けれど扉を開ける度に、自分がどんどん無力な存在になって行く気がしてくる。
 このドアの先に、お姉さまはいなかった。けれど次のドアを開けると、そこにお姉さまはいるかもしれない。次にいなくても、その次にはいるかもしれない。
 けれどもしこれが最後のドアで、その先にいなかったら?
 お姉さまが、どこにもいなかったら……?
 私はドアノブを両手で握りしめたまま、その場にヘタリと座り込んでしまった。
 どんどん大きくなってくる無力感と、不思議な既視感。
「あっ……あの時と、同じ……」
 お姉さまを待ち続け、そして結局は逢えなかった、あの夏の日に感じた無力感。その感覚が思い出したように襲ってくる。
「違う、私は、私は確かにお姉さまと逢えたの!」
 叫ぶようにそう自分に言い聞かせ、ドアノブをひねった。

555:名無しさん@秘密の花園
07/07/28 00:20:05 8VBqKC8/

 ドアの向こうには、誰もいなかった。
「どうして? どうして……」
 ぽろぽろと涙が零れた。まるで自分の幸せも、夢も、希望も、全てを否定されたような気がした。
 けれど、たとえどんな絶望でさえ―
「どうしたの?」
 ―その一言で、吹き飛んでしまう。
「怖い夢でも見た?」
 背中からぶかぶかのブラウスを羽織らせた手を握りしめ、飛びつく様に振り向いた。
「お姉さま! 私……居なくなってしまわれたのかと……怖くて、怖くて……」
 お姉さまは嗚咽で上手く話す事の出来ない私をそっと抱き締め、頭を撫でてくださった。
「お家に電話をしていたの。ごめんなさい。鞄の中身を勝手に見せて貰って、それから、怖い思いもさせてしまったのね。でもね、鈴音ちゃん」
 お姉さまは目を合わせて悪戯っぽく笑みを浮かべた後、私の額をツンと人差し指で弾いてこう言われた。
「レディがそんな恰好で歩き回ってはダメよ」
 その一言で、私は裸だった事に気づいて赤面した。


556:名無しさん@秘密の花園
07/07/28 00:23:28 8VBqKC8/
急性胃腸炎にかかったり、試験があったりでなかなか書けなくてすみませんでした……
筆は死ぬほど遅い方な上に、話も全く浮かばなかったりで完結するかどうかも危ういので、本当に保守代り程度に思ってください。

557:名無しさん@秘密の花園
07/07/28 20:54:38 DlRtF8SR
ご苦労さまです。
一回一回大切に読ませていただいています。

558:名無しさん@秘密の花園
07/07/28 23:10:33 8VBqKC8/
いやもう何と言うか、色々申し訳ないです。
百合分と切なさが不足しがちな気がするので
どうやってこの二つを保ったまま話を繋げるかが悩みの種……
くそう。せめてクライマックス位は、息ができないほど切なく百合ん百合んにしてやりたい

559:たくま
07/08/01 16:52:52 5RW405xr
やりたい

560:名無しさん@秘密の花園
07/08/16 22:47:20 oI8uTSj9
~鈴音編ーその3……の2~

「で、いったい何があったの?」
 漸く先程のショックから立ち直った頃、お姉さまは私にホットミルクを差し出しながらそうお尋ねなさった。
「こんな日に、まさか日向ぼっこをして寝てしまった訳でもないでしょう」
「あ……」
 お姉さまに出会えてしまった事ですっかり忘れていた。なんと言うか、まるで現実と遠く離れた夢の世界にでも来てしまったような気分になっていて……
「私、もうここからは帰りたくない……」
 もう、辛くて悲しいだけの現実は沢山。
「学校では頑張れば頑張るほど辛くなって、頼れなくなって、だけど他の子達の気持ちを考えたら、頑張る事以外なんて選べなくて……家では、あんなに仲が良かったお母様とお父様が、私の所為で喧嘩をして……」
 言っていて、段々と声が涙声になって行くのが自分で分かる。それはまるで、自分の中でため込んでいた何かが言葉と一緒に零れてしまったように―ぽろぽろと、次から次へ溢れて落ちる。
 もしかしたら、人前で泣いたのなんてこれが初めてかも知れない。特に小学生になってからは、父や母にも迷惑をかけるまいと我慢していた。


561:名無しさん@秘密の花園
07/08/16 22:48:13 oI8uTSj9
「そう。誰かに寄りかかりたいのに、誰にも頼れなかったのね」
 優しく私を抱き寄せ、お姉さまはそっとささやく。
「鈴音ちゃん、貴女は悲しみを一人で背負いこめるほど強くはないの。辛い時、悲しい時、苦しい時、私を頼りなさい。私に全てを預けて寄りかかりなさい。私が貴方を受け止めてみせるから」
「……よろしいの、ですか?」
「もちろんよ。それに……」
 少し口ごもった後、お姉さまはやや悲しげに笑った。
「もう少し大きくなれば分かるかもしれないけど、崖の淵に立っているとね、支える人がいないと、自分から倒れてしまいそうになる物なのよ」
 その言葉に含まれていた意味は分からなかったけれど、とにかくお姉さまが私の事を受け入れてくださるのだと思うととてもうれしかった。
「お姉さま」
 だけど、その前に私には訊かなければならないことがあったのです。
「私は、お姉さまが居てくれさえすれば救われます。どんな辛い事も、どんな苦しい事も我慢できますし、乗り越えることだってできます。ですが……お父様とお母様は、それで元通りになれるのでしょうか?」
 お姉さまは先程の笑顔とは違う優しい微笑みを浮かべられると、信じられない事を……いえ、信じたくない言葉を口にしました。
「私ね、結婚したの」
 ズキリ。


562:名無しさん@秘密の花園
07/08/16 22:48:57 oI8uTSj9
「愛なんてないわ。向こうは良い後継ぎを生む為に、良い畑が欲しかっただけ。私は……大人の事情って奴ね」
 お姉さまが、お姉さまが、お姉さまが……
 誰でも良い、嘘だと言って。
「子供を産んでからは、夫とは一度も顔を合わせた事はないわ。産んだ子供も、英才教育を受けさせるために取り上げられて。こうしてここに一人でいても、困る人間なんてだれもいない。こう言うのを本当の『壊れた』って言うの」
 お姉さまはそう言って、俯いていた私の顎をそっと指で持ち上げた。
「鈴音ちゃんの所は違うでしょ? 鈴音ちゃんが居なくなっても、鈴音ちゃんのお母様が居なくなっても、お父様が居なくなっても……誰が居なくなっても、皆が困るはずよ。大丈夫、きっと今日の事も、まるで他人事のように笑って話せる日が来るわ」
「……お姉さま?」
「なに?」
「もしも、もしも好きな人がいて……その人以外の人を好きになるなんて考えられないくらい好きな人がいて、その人の事をずっと思い続けていたとして、その人が結婚していたと知ったら……その思いも、まるで他人事のように笑って話せる日が来ると思いますか?」
 少しの沈黙の後、お姉さまはふっと微笑んだ。
 それが何を意味するのか、私には分からなかった。


563:名無しさん@秘密の花園
07/08/17 15:04:49 h3QLTz3Y
うーん、加速度的にヘビーになってきてまつね。GJ!
続きが気になります。

564:あたしは何人目?
07/08/18 20:07:19 uPSxxIOS
どうも、初めましてです。
あたしはバイなのですが、いつも楽しみにしています。
特に鈴音編!憧れですw
皆さん頑張ってくださいね~

565:名無しさん@秘密の花園
07/08/18 20:28:36 BNoHpA1u
わーいバイさんがやってきたー♪
バイさんのお墨付きだ~♪

566:バイ1人目
07/08/20 20:57:39 vlAK/DsR
喜んでもらえると嬉しいですw
普段あまり良く思われないことが多いので
正直助かります。ありがとう。

567:名無しさん@秘密の花園
07/08/20 21:27:23 0MUKEiRD
バイさん視点の感想もヨロシクお願いしますね。
もうバイ1人目様もスレ住人さっ♪

568:名無しさん@秘密の花園
07/08/24 09:48:20 RAlqRUAu
へたくそ文章
うんこ以下www

569:2人目
07/08/29 09:42:36 PKphVjgq
ご無沙汰デス
リアルビアン2人目デス
小説、頑張られてますネ♪
小説の進み具合を影ながら応援してるので
中傷に負けず適度に頑張って下さいね~

570:名無しさん@秘密の花園
07/08/29 13:33:21 8S5VtZwS
ビアン二人目さんにも見守られてるっ!
嬉しい♪

571:名無しさん@秘密の花園
07/08/29 19:37:57 EoqYKs0F
じゃビアン3人目。
スレタイだけ見てけしからん!とクリックしたら
・・・・

萌えさせて頂きましたありがとう

572:名無しさん@秘密の花園
07/08/29 23:50:46 h5T0PnEH
このスレタイはビアンホイホイだよなw

573:名無しさん@秘密の花園
07/08/31 22:55:57 IeyyQniC
そんなビアン3人目さんに萌えさせて頂きました
ありがとー♪

574:バイ1人目
07/09/09 14:59:45 IoyyYWTr
うぅ…更新が待ち遠しいですっ…。
急かす訳じゃありませんけどっ(充分急かしてるか…)

575:鈴音編の人
07/09/10 11:32:20 XoSVZwXM
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
先月の終わりまで実家に帰っていて書けなかったとはいえ、お待たせして誠に申し訳ありません。何とお詫びすればよろしいか……
と、言う訳で少しですが投下します。

576:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 11:33:43 XoSVZwXM
~鈴音編ーその4~


 初めて二人で歩くには不釣り合いな、台風で壊れた街並み。それでも楽しいと思える。隣を歩くのが貴女なら。
「さ、ここからは鈴音ちゃんが案内する番よ」
「えっ!? あ……はい」
 初めて貴女と出会った公園が近づいていた事にさえ気づかなかったのは、貴女の横顔に見とれていたから。
 普段は早く自転車が欲しいと思った帰り道、今はもっと長ければ良いのにと思う。
 そんな距離じゃないのは分かってる。だけど、貴方が『休憩しましょ』なんて言ってそこら辺の喫茶店を指さすのを心待ちにしている自分がいる。それがダメなら、せめてこの青信号、赤に変わってくれれば良いのに。今日に限って待ってくれるのね。
 暑い日差しから逃げようともせずに待ってくれいる母の姿を見たとき、他の子はどうしたかしら? 走って駆け寄るなり、手を振るなりしたかしら?
 それでも私は、立ち止まってしまいたかった。
 貴方と再び出会えた事、奇跡だと思ってる。会えないのが普通だと諦めてる。だから、この奇跡に幕を下ろしたくないの。


577:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 11:35:57 XoSVZwXM
 ねぇ、お姉さま。貴女はどうですか?
「あれが、鈴音ちゃんのお母様?」
 どうして、そうやって笑えるのですか?
「良いお母様ね」
「はい」
 私の返す笑顔は、今にも崩れてしまいそうなのに。
「鈴音!」
 最後の数歩を駆け寄ったのは、母の方からだった。
「鈴音、大丈夫? 熱はもうないの?」
「はい」
 私は昨夜、お姉さまの隣で眠りながら母の事をこれっぽっちも考えなかった。そんな少しの罪悪感が混じった返事。もう少し無邪気になりたい。


578:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 11:36:40 XoSVZwXM
「あっ、鈴音の母です。鈴音がご迷惑をおかけしまして……」
「いえ、私は久しぶりにお話できて楽しかったです」
 普段はとても大人びて見えるお姉さまだけど、母と並べばやはり随分と若く見えた。
 私には、この人が母と同じように子供を産んでいる事が未だに信じられなかった。
「宜しければ、お茶でも飲んで行ってください」
「あら、どうしようかしら」
 お姉さまは悩む素振りを見せる。私としては、何としてでも誘いに乗ってもらいたいところ。
「寄って行ってくださいな。昨夜は寝てばかりで良くお話も出来ませんでしたもの」
「それでは、お言葉に甘えて、御馳走にならしていただきますわ」
 お姉さまはクスと悪戯っぽい笑みを浮かべた後、小さな声こう囁きになられた。
「昨夜は頂けなかったものね……」


579:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 11:53:45 XoSVZwXM
今回はここまでで……待たせたのに少なくてごめんなさい……
それにしても、この話がまさかこんなに(期間的に)長くなるとは思わなかった。
本編が止まって、スレ人気一位の黒川さんにさえ触れずに二か月。大丈夫なのかこのスレ?

580:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 19:46:40 PKyBJxeW
バイ様に催促頂いて、すぐさま投下とはサスガです。
吉屋信子リスペクトな文体が素晴らしい。
お姉様が秋津さんに思えてきます。
本筋からそれるのもリレー小説の魅力です。ぜひ頑張って下さい。

581:名無しさん@秘密の花園
07/09/10 20:43:30 867ZXZne
孤独で健気な鈴音タンにキュンキュンしてます。
素晴らしいです。このまま続けて下さい。

582:バイ1人目
07/09/12 22:43:08 2KVHiEcr
嗚呼、本当にありがとうです。。
お忙しいところを催促してしまいましてっ・・・。。
ご迷惑ではなかったでしょうか??

583:名無しさん@秘密の花園
07/09/12 23:25:42 wze++42e
まだあったのかここw
職人様GJ

584:名無しさん@秘密の花園
07/09/13 13:06:03 +cYmcLei
>>580
それるどころか本筋が跡形もなくなってますがwww
そうか、お姉さまの旧姓は秋津にしてしまうと言うのも手かなと思う今日この頃。
>>581
それではこのまま続けます。気力が残っていればw
もう少しだけお付き合いくださいませ
>>582
いえいえいえいえいえ、迷惑だなんてそんな滅相な
夏休みの宿題は最終日に徹夜でまとめてやるタイプなので、しめ切りのないリレー小説はどうしても延ばし気味で・・・
自分でも「流石にヤヴァイな」と思っていたところですので気にする必要は皆無です。ロムからすれば「してやったり」です。GJです。
>>583
本編を続けてくれるGJな職人様、カァァム ヒィィィアァァァ
番外編終了とともにスレ落ちはマジ勘弁



最終話(?)は二か月以上前から出来てるのに、展開で完全に行き詰ってる俺。文才ナサス…

585:名無しさん@秘密の花園
07/09/13 19:55:23 tBGXGKeA
おお、すでに終わり方が決まってるとは楽しみです。
ゆっくりお待ちしております。

586:名無しさん@秘密の花園
07/09/27 11:36:24 R6WBFlYi
~鈴音編ーその4……の2~

 母が紅茶を注ぎに台所へ行っている時のこと、お姉さまはケーキを食べた後、突然深くため息をついた。
「鈴音ちゃんてば、白状ね」
「白状?」
「私、ずっと待っていたのよ。鈴音ちゃんがあの約束を思い出すのを」
「約束?」
 ずっと浮かれっぱなしだとはいえ、あの日の思い出は私の宝物、お姉さまとした約束を私が忘れるはずがなかった。
「もう」
 そっと私の唇へお姉さまの人差し指が添えられる。
「したでしょう? 『次は唇に』」
「んっ……」
 あっという間だった。気がついたら指がお姉さまの顔にかわっていた。
 何だろう……体が熱くなって来た気がする。それに、頭がポーっとしてくらくらする。
「どうだった?」
「ど、どうって、その……」
 頭の中でバクバクと心臓の音が響いて、まともな言葉が浮かんでこない。
「び、ビックリしました」
「ふ~ん」
 もう少しまともな言葉もあるだろうに、よりによって嬉しかった事さえ云えない言葉が出て来た。
「でも私、タチじゃなくてリバなのよね」
「私たちじゃなくて??」
 リバって何だろう? その前に、何が『私たち』なんだろう?


587:名無しさん@秘密の花園
07/09/27 11:37:26 R6WBFlYi
「私も鈴音ちゃんにビックリさせて貰いたいな~、ってこと」
「あっ……」
 これは分かった。要するにその、私からお姉さまに……
「それとも、嫌だった?」
「ち、違います!」
「口で言われても信じられないのよね、大人って」
 覚悟をきめて、大きく息を吸った。
「い、いきます!」
 そう言って目をつぶると、二年前と同じ匂いがした。
 このまま、あの頃に戻りたい。
 お姉さまが誰のものでもなかったあの頃に……
 だけど、それは無理だから、せめてこの人が自分の方を向いてくれているうちに伝えたかった。
 嬉しかった。あの日も、今も。
 お姉さま。私はお姉さまの事が―
「お、オホン。オホン」
 背中から聞こえたわざとらしい咳払いで破裂しそうなほど心臓が高鳴り、その後サァーっと血の気が引いて行くのが分かった。
「おっ、お母っ!」
「あら、お母様。失礼して先に御馳走になっていましたわ」
 今すぐにでも逃げ出したい私と違って、お姉さまはまるで母の反応を楽しむ様に私を抱き寄せて見せた。
 嗚呼、嬉しい、嬉しいけど、物凄く居た堪れない!
「こんなに美味しい物を口にしたのは久しぶりです」
「そ、そうですか……」
 心なしか、カップを運ぶ母の手が震えている気がする


588:名無しさん@秘密の花園
07/09/27 11:38:05 R6WBFlYi
「ホテルでも頂こうと思えば幾らでも頂けますけど……こんなに可愛い娘はいませんもの」
「お、お姉さま!」
「冗談よ、冗談。美味しかったのはケーキの話。ごめんなさいね、ちょっと意地悪しちゃった」
 そう言ってクスッと笑うお姉さまのお顔を見ると、何も言えなくなって諦めてしまう自分がいて……とことん私はこの人には勝てないのだなと、思い知らされてしまう。
 それから、母とお姉さまと三人でたくさんお話しして、たくさんからかわれて……あんなに笑った母を見たのは久しぶりだった。
 それから帰りしな、お姉さまの部屋へ案内してもらえる秘密の言葉を教えてもらった。
 ちなみに、お姉さまを迎えにきた長い車を見た母から「あの人は何者なの?」と訊かれたけど、そんな事を私が知っている筈がなかった。


589:名無しさん@秘密の花園
07/09/27 15:18:49 jbUbqW2f
お姉さまの手管が鮮やかすぎる。凄すぎる。
鈴音タン完全にとりこでつね( ゚∀゚)

あと、>586は「薄情」ですよね?

590:名無しさん@秘密の花園
07/09/28 01:23:54 3WnOsKo3
「白城」って出てきて直したら「白状」になってるorz
って言うかなんで最初に白城なんて出てきたんだ……

591:バイ1人目
07/10/01 01:52:18 WRtQL37F
久々に来てみたら・・・流石ですっ(≧□≦)

母親に見られたら・・・私の場合、身の破滅に繋がりかねないので
鈴音ちゃんが羨ましいかぎりです・・・。。

592:名無しさん@秘密の花園
07/10/01 01:57:38 kDrRwscE
↑どんな母親なの?

593:名無しさん@秘密の花園
07/10/03 00:30:25 3ojoYe53
何故こんなスレタイのスレッドでこんな高レベルの小説が!

今も良いが初期のキモ高いテンションが好きだw
気取れないキモオタ可愛い

594:名無しさん@秘密の花園
07/10/05 22:12:41 jnnZGsjq
たしかに初期おもすー

595:バイ1人目
07/10/14 03:06:08 /MEIM31i
いやぁ・・・差別と偏見に満ちた母親ですよ・・・
好きな人の話すら出来ませんしね。。

596:名無しさん@秘密の花園
07/10/14 11:00:56 zsGP+E1g
ここで話せばいいんですよ

597:名無しさん@秘密の花園
07/10/16 13:15:45 8RHJMfR3
美波と真木よう子が愛し合ってレズってるところを襲いかかる
近藤春菜

598:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 01:19:49 pR52a9sv
~鈴音編ーその5~

 いつもの様に朝が来て、いつもの様に学校へ行き、いつもの様に家に帰り、いつもの様に宿題を終わらせる。以前の私の日課はそれで終わりだった。だけど今は、もう一つ。
「あの……リリー・ビッフェさんの部屋に案内して貰いたいのですけど」
 最初にフロントで言うときは何度も深呼吸したこの台詞も、今では一度の深呼吸で言えるようになった。
「はい。今すぐ係りの人が来ますから、少々お待ちくださいね」
 言うが早いか、フロントに女性が迎えに来た。どうやら私の姿を見て直ぐに来ていたみたいで、私の顔はすっかり覚えられてしまっているらしい。
 『リリー・ブッフェ』は魔法の言葉。
 それを唱えれば、秘密のエレベーターで存在しないはずの最上階と屋上の間へ行く事が出来る。
 そう。私の最後の日課、それは……
「いらっしゃい、鈴音ちゃん」
 毎日こうして、お姉さまのもとに通い詰める事なのです。



599:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 01:22:20 pR52a9sv

「あれから、お母様とお父様の仲はどうなの?」
「喧嘩は一度もしていません。ですけど、溜息を吐いているところはよく見かけます」
「やっぱり、お金の事なの?」
「きっと、そうです」
 『私の学費が』と言おうとして、やめた。
 私の脳裏に、母にどうして私立を受けさせたのか訊いた時の事が浮かんだから。
「私の頃は、女は上司の奴隷でしかなかったの。定年は三十代、私も結婚したら無理やり辞めさせられたわ」
 母は、懐かしむ様にそう言った。
「でもね、今、それを変えようって動きが始まりつつあるの。まだまだ不十分だけど、貴女の頃には変わっているかもしれない。勿論、変わってないかも知れない。だけどね、どんな些細なことでも良い、貴女に可能性があるなら、私はそれを少しでも広げてあげたいの」
 そう言った母の顔は、笑顔だった。
 『私の学費が』と言う泣き言は、その母の好意を批判してしまう気がした。
「ですから私、もっと勉強して偉くなるんです。そうすれば、高等部からは学費が免除されますから」
「そう……鈴音ちゃんは偉いのね。だけど、これだけは覚えておいて」
 ふと、お姉さまの顔から笑顔が消える。
「偉く『なる』ための勉強は、人を豊かにするかもしれない。だけど、偉く『する』ための勉強は、人を不幸にする事もあるのよ」
 そう言って、今度は寂しそうに笑った。
 私がその言葉の本当の意味を知ったのは、ずっと、もっと後の事……


600:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 01:24:07 pR52a9sv

 それから数日した頃、家に帰るなり、母が玄関まで走って来て私を抱きしめた。
「やったわ! 鈴音! やったのよ!」
「えっ?」
「奨学金が貰えるのよ! それも、月にいくらだと思う?」
「……五万円くらい?」
「五十万よ、五十万! しかも返済不要ですって! 返さなくていいのよ!」
「ご、ごじゅうまん!?」
 母は浮かれていて気付いていないけど、幾らなんでもそれはおかしい。
 確かに、うちの学校はお嬢様校で、授業料も目玉が飛び出るほど高い。それこそ、私みたいな一般人はローンを組まないと通えないくらいに。
 だけど、それでも月五十万は高すぎる。だって、それだと一年で六百万、私が中等部に入るまででも軽く三千万を超えてしまう。
 それが、返済不要?
「すごいわ、宝くじに当たったみたい!」
 そう。そんな奇跡みたいなことが本当に―
「あっ……」
 その瞬間、脳裏にある人の事が浮かぶ。
「ちょっと、出かけてきます!」
「今日は御馳走だから、早く帰ってくるのよ」
 玄関に鞄を放り投げて駆けだす。行先は一つしかなかった。
「そう、きっとそう。こんなの奇跡でも何でもない」
 私が思い出したのは、私に起きた最高の奇跡。勿論、あの人の事。



601:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 01:24:59 pR52a9sv
「いらっしゃい、鈴音ちゃん」
 私を迎えたお姉さまは何時も通りの笑顔。まるで何もなかったかのよう。
「お姉さま、何か言う事はありませんか?」
「そうね、今日も素敵よ。食べちゃいたいくらい」
 もう、この人はいつもこう。分かっているのに知らないふりをして、私をからかって、意地悪して、それが生きがいみたいに楽しんでいる。
「そうじゃありません。もっと他に―」
「……他に?」
「―いえ、なんでもありません」
「あら、どうしたの?」
「いえ、どうでも良い事ですから」
 知らないふりをするお姉さまを見て、何だか今回の事が本当にどうでも良い事のように思えてきてしまった。だって、こんな安っぽい奇跡一つあろうとなかろうと、私にとってお姉さまが掛けがえのない大切な存在である事は何も変わらないのだから。
 とはいえ、お姉さまとしては折角の私をからかう機会を失うのが相当ご不満らしく、私を膝の上にのせて「どうしたの?」等と訊くのだけれど、私はその度に「なんでもありません」と、初めての勝利に対する優越感に浸るのでした。



602:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 01:37:57 pR52a9sv
……えーと、考えているエピソードの間を埋めるのが大変で、時間ばっかりかかって全然進んでないので(次回があればですが)次回からいきなり中学編に入るかもしれません。
中学編は短めになると思いますが、それでも今年中に終わらないかも……orz

603:名無しさん@秘密の花園
07/10/26 20:53:55 pohiQ/IF
長くなるの大変結構!
実に読み応えがあるではないですか!

本当に先が読めなくて、楽しみです。

604:名無しさん@秘密の花園
07/11/15 13:11:40 kXK0f47V
新都社で漫画化してもいいか?

605:2人目
07/11/16 19:00:17 pP2YDNM+
(*´∇`)ノ
お久しぶりデス
漫画化の話も出てますね・・・w
素晴らしい♪

>604
ついでに私の経験談も漫画化して頂けますか?w



606:602
07/11/18 01:09:17 AcdyihKC
>604
リレー小説の漫画化って原作は誰になるんだww
他の職人さんが良いなら私はおkですw

607:名無しさん@秘密の花園
07/11/20 17:53:53 Ovt79x66
やった!マジでやっちゃうよ!
年明け以降には新都社の別冊少女きぼんに載せるようしときます

作者のみなさん頑張って下さい。

608:名無しさん@秘密の花園
07/11/21 16:06:25 HUbKxS0A
ちょっと待てそこのVipper
俺は完結してからのが漫画にしやすいと思う

609:名無しさん@秘密の花園
07/11/25 07:21:18 IaIheiz8
うあああああああぁぁああぁおおぉぉあああ
先に言ええええい!

ここと新都社両方の読者を怒らせるとこだったヤベー

610:名無しさん@秘密の花園
07/12/06 15:09:52 lyACvYUu
良い方法思い付いた
お前途中まで漫画にしろ
漫画読んだ人がこのスレ来て続き書いてくれるかも

行って書き手を集めてこいそこのVipper

611:名無しさん@秘密の花園
07/12/06 15:27:32 0yND9j7M
マンガよりマンコをおねだりするあたしがいたりする

612:名無しさん@秘密の花園
07/12/07 11:37:29 om0tQxtk
>>611
いくら亀井信者と言えどVIPPERに絡むような真似するとえらいめにwww

新都社見てきたよ~
百合漫画も結構あって良かった!

613:名無しさん@秘密の花園
07/12/08 20:04:22 P8j1uR5B
283-529 の間、書いていた奴だけど。
久しぶりにのぞいてみたら、まだ生きていたのかと正直びっくりw
現在書いている人がんばって。

>604
えっと原作者って、最初に書いたひとの許可がいるんちゃいます?




614:名無しさん@秘密の花園
07/12/08 20:38:24 EqhPfgXK
お久しぶりです
いつでも復帰を待ってますよ

615:名無しさん@秘密の花園
07/12/08 22:39:02 P8j1uR5B
>614
どもです。他板の百合SSが完結した後、時間的に書くことが可能な状況ならば、
続けたいかなと思います。
百合萌え男の今後には多少未練があるのでw

616:602
07/12/09 03:33:16 Cmt+cIif
>615
どうも、お久しぶりです。
寂しい事に本編の方が止まってしまっているので、
職人さんの復帰は何時でもお待ちしております。

私の方は飛び飛びで書いているのでそんなにたくさん投下できませんが……
一応、中学生編を少しだけ投下します。

617:名無しさん@秘密の花園
07/12/09 03:36:52 Cmt+cIif
~鈴音編ーその6~


「今日は練習が遅くまでありますから、そのままお姉さまの所に行きます」
 食べ終えた食器を流しに置きながら、ふと隣に立つ母と肩の高さが並んでいる事に気づく。
「お母さん、背、幾つだっけ?」
「一六二。まだ私の方が高いわよ」
 言われてもう一度肩を合わせると、確かに私の方がまだまだ低かった。並んだと思ったのは、どうやら気のせいだったらしい。
「今度の舞台もまた王子様役?」
「私より背の高い娘もいるのに、どうしてか、ね」
「一年生の頃からずっと遣ってるからでしょ。あーあ、また私の鈴音が人様の前で唇を奪われちゃうのね」
 母のその冗談に苦笑しながら、何時もの様にかけてある上着を手にとった。
「子供の成長は早いって言うけど、もうボケたの?」
「あっ……」
 言われて、今着ているブラウスが夏服だった事に気がついた。昨日の夜に母に頼んで出してもらったのをすっかり忘れていた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 ドアを開けると、初夏の日差しが眩しかった。
 お姉さまと再開して、八年目の夏。
 私はいつの間にか、中学三年生になっていた。



618:名無しさん@秘密の花園
07/12/09 03:38:54 Cmt+cIif

 学校での私は、相変わらず『黒薔薇の君』であり、『白銀の貴公子』のままだった。
 誰よりも優秀で、誰にも優しくて、そして誰からも愛される、皆の憧れ。その上こうして生徒会室に閉じ込められているのだから、出来すぎた配役だ。
 思えばいつでも『黒薔薇の君』を演じている私が演劇部の部長だと言うのは、軽い皮肉だった。
「鈴音様、そろそろ四時ですから、終わりにして休憩しましょう」
「そうね、そろそろ終わりにしましょう」
 そう言って書類を納めながら、まだこの部屋から出られぬ事に小さく溜め息を吐く。私にはこの後、もう一つ大きな仕事が残っている。
「今日はとても良い葉が手に入りましたの」
「本当? それは楽しみだわ」
 そう笑顔で答えながら、内心は苦笑い。
 何が楽しいのか、誰かが必ずと言っていいほど紅茶を持ってくるのがこの生徒会の決まり事の様になっていて、けれど、私はそんな上等な紅茶より、お姉さまの淹れてくれるコーヒーが飲みたかった。
 お姉さまの出すホットミルクはカフェオレを経て、何時の間にかコーヒーへと変わっていて、私はそれをブラックで飲むのが大好きなのだ。
 そんな私だから、いつもこのお茶会では、幾らするか分からないような奇麗なカップよりも、彼女達の持ちよる歪な形のクッキーにばかり手が伸びてしまうであった。



619:名無しさん@秘密の花園
07/12/11 08:01:41 FxNq11yU
職人毎度毎度GJ!
今の百合萌え男は君で守っているもんだぜ!
鈴音編はとても丁寧な展開でゆっくり読んで楽しめますお( ^ω^)ありがとうございますお

>>612
新都社行ってきたのかw


620:バイ1人目
07/12/25 13:06:16 Q4K/nXB2
鈴音ちゃん可愛いっ!
続き、楽しみに待ってますよ、職人さん♪

621:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 06:37:39 bmqFYp6M
~鈴音編ーその6の2~



 うちの演劇部には、とある決まり事があった。
 それは公演の際、最も舞台を見やすい数列にだけ用意される『指定席』のチケットを部員で分けること。
 チケットはそれぞれ望んだ分だけえる事が出来、それぞれ両親だったり、兄弟だったり、校内外の友人や好きな人、中には内緒で売り飛ばしたり……とにかく思い思いの人に渡すのだ。
 私はと言えば、毎回必ず三枚貰う事にしていた。
 一つは、母。一つは、父。そして最後の一つは……



622:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 06:42:45 bmqFYp6M

「お帰りなさい、鈴音ちゃん」
 そう言って迎えてくれる笑顔は、今でも私を虜にし。
 お姉さまは、相も変わらず、いえ、むしろ月日を重ねるごとにますます美しくなっていた。それこそ、実はお姉さまの正体は天使か悪魔か、あるいは妖怪の類や幻ではないのかとこちらが恐ろしくなるくらいに。
「お姉さま、昨夜はちゃんとお休みになられまして?」
「私、枕が変わると眠れないのよね」
「またですか……」
 お姉さまはこのところ、自分で寝ようとしなくなった。
「お姉さまは唯でさえこもりがちで運動不足なんですから、本当に身体を壊しますよ。第一、枕は変わっていません」
「私の枕は鈴音ちゃん」
「ひゃ!?」
 不意に背中から手を回され、声が出た。
 そっとお姉さまの人差し指が唇を撫でる。唯それだけでゾクゾクとした不思議な感覚が体をかけぬけ、そのままヘタリとお姉さまに凭れかかってしまった。
 背中越しに伝わる柔らかさと温かさ、それに頭に響く自分の心音が妙に心地良い。
「もう、そんな事より、今日は渡す物があるんです!」
「あら、なぁに?」
 背中を向けたままギュッと目をつぶり深呼吸をする。ポケットの中で手が震えて止まらなかった。


623:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 06:44:34 bmqFYp6M

「はい、フロントから預かった手紙。娘さんからでしょ」
 お姉さまは遠慮がちに笑顔を浮かべ封筒を受け取った。
 不思議な沈黙が流れた。
 お姉さまの家について話さないのは、二人の不文律だった。
「今日は早く寝ますから、もうお風呂に入ってきてください」
「背中流してくれる?」
「一人でっ!」
 お姉さまを部屋から追い出し、封筒の無くなったポケットで拳を握った。
 小さく、クシャリと音がした。


624:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 06:46:16 bmqFYp6M

 こうして諦めたようにチケットを破って捨てながらも、本当は望んでいるの。お姉さまが何かの拍子にこのチケットを見つけて、ふと気にかけて繋げてくれるのを。
「本当に諦めたのなら、家に帰って捨てれば良いのに」
 外では『黒薔薇の君』なんて呼ばれても、お姉さまの前ではこうも簡単に仮面をはがされて唯の女の子に戻ってしまう。そんな自分がひどく恨めしかった。
 私が貰う三枚のチケット。
 一つは母。一つは父。そして最後の一つは……
 いつも、空席だった。



625:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 22:55:20 z2M6NZgy
続ききたあーあああぁあああwwwww


ホントにお疲れ様です!
萌えました!

626:名無しさん@秘密の花園
08/01/21 23:12:35 J26aQEKl
さりげなく投下する作者さん素敵!

>「私の枕は鈴音ちゃん」
可愛すぎ!

627:名無しさん@秘密の花園
08/01/22 21:12:48 dCbq3wp0
てか鈴音ちゃんもフクザツなお年頃でつね

健気だよ、鈴音、健気だよ

628:名無しさん@秘密の花園
08/01/22 22:34:08 Clx1Dsio
反応早っww
こんなに筆が遅い俺のこと忘れないでくれてありがとう
俺、がんがるよ


629:名無しさん@秘密の花園
08/01/22 23:50:54 SBZdNmFO
がんがれ
がんがってくれ
ビアンさんもバイさんも応援してるぞ

630:名無しさん@秘密の花園
08/01/26 04:05:59 Ra3sjaP+
百合紳士も見てる

631:名無しさん@秘密の花園
08/02/06 23:11:13 eB5sg5kR
~鈴音編ーその7~


 お姉さまの腕の中で眠る夜は幸せ。特に、子供の中はそうだった。とても、安らかに眠ることが出来たから。
 今は少し変わった。今は『お姉さまの腕の中で過ごす夜は幸せ』だ。だって全然眠ることが出来ないから。
 お姉さまの美しい首筋。鼻腔をくすぐる甘い香りと相まって、見ているだけでむしゃぶりつきたくなる。お姉さまの柔らかな唇。何度だって足りない、甘い口付けがほしい。
お姉さまの細くて白い指。もっと私に触れて、壊れてしまうまで、気の狂うまで。お姉さまのふくよかな胸。……、……。
 お姉さまは、私がこんなことを考えていると知ったらどう思うでしょう。もしかしたら、嫌われてしまうかしら? 幻滅してしまうかしら?


632:名無しさん@秘密の花園
08/02/06 23:13:16 eB5sg5kR
 少し頭を冷やしたかった。お姉さまを起こさない様にそっと隣の部屋へ移り、ベランダへと抜け出した。
 夏の夜と言っても、ホテルの屋上ともなれば流石に涼しい。風も強くて、寒いくらいに。火照った肌にはそれくらいでちょうど良かった。
 夜空を見上げると、星がとても奇麗。まるでお姉さまの瞳の様に。オートロックの所為で屋上を散歩できないのが少し残念だった。
 そう言えば、お姉さまに出会ったのは丁度このくらいの時期だった気がする。
 あれから月日は流れて、私はいつの間にかこんなに変わってしまったのに、お姉さまはずっと美しいまま。もしかしたら、私の方が先に老けてしまうのではないかとさえ思えてくる。
 ふと我に帰って、冷静にそんな自分を振り返ると馬鹿馬鹿しくて笑いが零れた。
「こんなことをいくら考えたところで、私がお姉さまに相応しい女に成れる訳でもないのに」
 その笑みは、『黒薔薇の君』から『中沢鈴音』への嘲笑だった。



633:名無しさん@秘密の花園
08/02/06 23:15:36 eB5sg5kR
今月は色々とキツイので、少量ですが早めに投下です。
余裕があれば、また近い内に追加で続きを投下するかもしれません。

634:名無しさん@秘密の花園
08/02/08 05:35:34 ho7ZSBit
|∀・)マッテルヨ

635:忙しすぎて現実逃避
08/02/10 16:03:17 5chJCV8I
~鈴音編ーその7……の2~



 そろそろ戻ろうか……そう思って窓を開けると、部屋の中は予想以上に騒がしかった。
 駆け回る足音と、部屋中に響く程のどこか悲痛な呼び声が誰の物なのかは考えるまでもない。これが聞こえなかったのだから、ここのガラスは相当な物を使っているらしい。
「   」
 喉まで声が出かかった所で、勢いよくドアが開く。
 急に静けさを取り戻した室内で、お姉さまの息遣いだけが響いていた。
 不思議な時間だった。
 何か言うでもなく。
 何かを考えるでもなく。
 ただ二人、見つめ合っていた。
 刹那の様で、同時に永遠にも感じる。
 本当に不思議な時間だった。


636:名無しさん@秘密の花園
08/02/10 16:05:35 5chJCV8I

「ご、ごめんなさい……私、私……」
 急にお姉さまが何かを思い出した様にうろたえ始め、私は突然の事にどうしたら良いのか分からなくなる。
「お姉さま?」
 ふわりと、甘い香り。
 私の胸の中へ、お姉さまがまるで崩れる様に飛び込んできた。
「また、大切な人が取り上げられてしまったのかと思って、鈴音ちゃんまで何処かに連れて行かれてしまったのかと思って、怖くて、不安で……」
 時には子供の様に無邪気で、だけど、辛い時、苦しい時には常に私を受け止め力づけてくれる聖母のような優しさと温かさに満ちていて、凛としたその立ち振る舞いはとても強そうな女性に見えたお姉さま。
 今、腕の中で震えているお姉さまは、その片手で十分な―今にも折れてしまいそうな腰の細さと相まって、普段からは想像も出来ないくらい弱弱しい生き物の様に思えた。
「お姉さま……」
 私は、そんなお姉さまがとても愛しくて……
「私は、ずっとお姉さまのお傍にいます。きっと、きっと私はお姉さまと添い遂げて見せます」
 この人の為なら、この命さえ惜しくはないと思った。



637:名無しさん@秘密の花園
08/02/10 16:06:33 5chJCV8I



 どんな悲しい夜の後でも日は昇り、相変わらずこの星を照らし温め続ける。どうやらそれは、私の太陽に限っても例外ではないらしい。
「お目覚めいかが、鈴音ちゃん。今日は珍しく寝坊助さんね」
「お、おはよう、ございます……お姉さま」
 お姉さまはまるで昨日のことが嘘のようにいつもと変わらない笑顔で、こちらの方が拍子抜けしてしまうほどあっけらかんとしていた。
「さ、今日は出かけるから、早めに朝食を食べに下りましょう」
 そう言って牛乳とコーヒーを出してくれた。朝のコーヒーに必ず牛乳がついて来るのは、『起きぬけのコーヒーは胃を傷める』と言うお姉さまの心遣いだった。
「今日はどちらに?」
「最近運動不足だし、そこら辺をちょっとお散歩してみようと思って」
 思わず牛乳を吹き出しかけた。気のせいなら良いけれど、とんでもない言葉が聞こえた気がする。


638:名無しさん@秘密の花園
08/02/10 16:07:32 5chJCV8I

「こ、こんな街中を!? お姉さまが?」
「そうよ。どうかしたの?」
「……」
 お姉さまと出かけるのは良くあることだけれど、大抵はホテルのリムジンでお店の目の前まで行くか、長い休みにお姉さまの持っている海だとか山だとかに行くくらいのもので、
人通りの多い場所を歩いた記憶なんて子供の頃くらいにしかなかった。そう、まだ一目なんて殆ど気にしなかった子供の頃にしか。
 今ならわかる。この人と街中を歩くのがどういう意味なのか。
「ダメかしら?」
 お姉さまに上目遣いで『ダメかしら?』と訊かれて『ダメです』と言えるはずもなく。
 私は覚悟を決めた。


639:名無しさん@秘密の花園
08/02/10 17:16:15 kyEA6g1Q

      / ̄ ̄\  レズをレイプするのはたのしくてしかたない!
      | ・ U  |
      | |ι    \ パンパン  
/ ̄ ̄ ̄ 匚      ヽ    
| ・ U    \     ) ))
| |ι        \  ノ
U||  ̄ ̄ ||||
   ̄      ̄   ̄


640:正直、今日一日くらいないと思ってるw
08/02/14 05:06:04 BIgG7dKt
こんなに続くと思っていなかったから今日の為のネタが無い。が・・・・・・
『13時までに他の書き込みがあったら、今日中にバレンタインネタを書いてうpする』と言う企画を行いたいと思う。
じゃ、昼まで寝るわ。お休み。

641:名無しさん@秘密の花園
08/02/19 15:36:06 Fdxb5viO
>>640
(´∀`)

642:名無しさん@秘密の花園
08/02/22 18:39:46 hp5T4hXU
 やっぱりレイプするなら男に限るな!
       ∧∧     ∧∧
      ミ 、|     / , ゙ i  <ああ、全くだ!
   .(( // \_!   o=  ノ
   (( // 、) 、)∩))∧と  ヽ
 ((~((≡γ'⌒(((*T(|  ~))
    し'`Jし'`ーイ_ノ"(ノ^ヽ) 


643:名無しさん@秘密の花園
08/02/23 07:36:19 xuSw8zaa


       .|::::::/ ::////⌒⌒ i.:::::ノ
       .|:::::/       |::::|
        |::/.  .ヘ    ヘ. |::|  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       .⊥|.-(=・).-.(・=)-.|⊥  | 仮にレズだと思ってレイプしたら男だったとして
       l .!:;  ⌒´.し.`⌒  ;:|.   | なにがいけないんでしょうかね?
       ゝ.ヘ         /ィ _ノ
      __,. -‐ヘ  <ニ二ニ>  /─- __ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 _ -‐ ''"   / !\  ̄ /!\     ゙̄ー- 、
ハ       /   |ヽ ̄ ̄//  ヽ        ハ




644:名無しさん@秘密の花園
08/02/24 19:16:40 1OX7ZIJQ
レイプレイプうるさいスレだなww

645:名無しさん@秘密の花園
08/02/27 01:39:31 LKXtNeOu
みずほちゃん逃げてー

646:名無しさん@秘密の花園
08/02/29 21:01:13 75Vprqot

        _,,..,,,,_   _,,..,,,,_
     _,,..,,,_/ 。ω゚ヽ/ ゚ω。ヽ,..,,,,_
    ./。ω゚ ヽ,,..,,,,_ l _,,..,,,,_/ ゚ω゚ヽ  
   |   / 。ω。ヽ/ ゚ω。ヽ    l
    `'ー--l      ll      l---‐´
       `'ー---‐´`'ー---‐´


647:名無しさん@秘密の花園
08/03/29 20:28:18 h/XQtNwe
あー、氏ぬほどすすまねぇ。
時間稼ぎに保守。

648:分かるだろ、やっつけなんだ
08/04/15 09:14:53 ES4A20cY

 土曜日のお昼下がりのスクランブル交差点。
 特別なことなんて何もない日々を、ただ淡々と消化していくことにも慣れ、その事に疑問さえ持とうと思わない。そんな私がいつもの様に俯いたまま、まるで時間に押し流される様に人々の合間を縫って歩いていた時のことでした。
 理由は、ただ、不思議な香りがしたから。何故かは分からないけれど、そっちからだった気がした。足を止めて、振り返ってしまった。
 世界が、止まった。
 その人がステップを踏む様に人の間を抜けていくと、誰もが足を止めて振り向いた。
 十五と言われれば、そう思ったかもしれない。二十五と言われても、そう思ったかもしれない。ただ、その人は……
 少女と呼ぶにはあまりに美しく、女性と呼ぶにはあまりに可愛らしすぎた。
 そんな彼女に呼ばれ俯いたまま恥ずかしそうに駆けて来た少女を見て、私は嫉妬し、そして次の瞬間憧れた。
 彼女達は駆けて行く。私達をこの知らない世界に置き去りにしたまま。
 ただ、この後、けたたましいクラクションの音が私達を見知った世界に連れ戻したあとで、私は先程あの人に呼ばれた少女の名前をまるで忘れられない夢の様に思いだすのでしょう。
 そう、それは……


~鈴音編ーその8~

649:名無しさん@秘密の花園
08/04/15 09:15:22 ES4A20cY

「もう、どうしてあんなところで名前を叫ぶんですか!」
「だって、皆に見せびらかせたかったの。私の可愛い鈴音ちゃんを」
 こうやって人が怒っている時でもサラッと『私の』とか『可愛い』とか嬉しい事を言ってくるのがお姉さまの卑怯なところだと思う。しかも何時だってこんな調子だから、冗談なのか本気なのか分かったものじゃない。
「お姉さまは黙っていても目立つんです!」
「そうなの?」
 呆れた。
 すれ違う人は誰もが足を止め、まるで狐につままれたような顔をして振り返るし、この喫茶店に入る時だってウエイトレスさんが見とれて言葉を忘れてしまった。それにこうして話している今も店中の人が自分のコーヒーそっちのけでこちらの方ばかり見つめている。
 ここまで不自然な状況を『そうなの?』の言ってしまうのだから、開いた口が塞がらないと言うものだ。
 とは言え、ここまではまだ予想の範囲内。当面の問題は、そろそろ増えつつある外の人だまりが、お姉さまのパフェが無くなるまでにどのくらいまで膨れ上がるかだろう。



650:名無しさん@秘密の花園
08/04/15 09:15:53 ES4A20cY

 モーゼは偉大な人だけれど、お姉さまも負けてはいなかった。『通してくださるかしら?』の一言で、人の海が真二つ。ただ残念な事に、それは私が泳ぎ切った後の事だったのだけれど……
 それはさておき、喫茶店を後にした私とお姉さまが廻り歩いて日は暮れて、最後にたどりついたのは二人が出会ったあの公園だった。
「鈴音ちゃん、覚えてる? 最初に絵を描いたあの噴水。あそこで夕陽を見ましょう」
 そう言って噴水の方へ駆けて行ってしまったお姉さまの後ろ姿を見送った後、紅く染まった公園を見まわすと、ほんのりとした懐かしさと寂しさがこみ上げてきた。
 昔は塗装なんか?げてその上砂で真っ白に汚れて色あせていた〈公園の奴〉達は、今では塗り直されてしまって昼間に見ると違和感を覚えるくらいで、思えばこの時間に見るこの光景が一番あの頃の公園に近い姿かも知れない。
 だからだろう、こんなに寂しい気持ちになるのは。
 先に噴水の淵に腰を落としていたお姉さまの隣に腰を下ろし、顔はそのままにちらりと視線だけをお姉さまの横顔へ注いだ。
 お姉さまの瞳は確かに夕陽の方を向いていたけれど、それは夕陽を見つめる人のそれではなく……夕陽の方向へ人形を置いた時のそれに似ていた。きっとお姉さまはここにはない何か別の物を見据えていて、そしてそこにはきっと私は存在していないのだろう。
 そう思うと、なぜか胸が少し苦しくなった。
「あの、お姉さま?」
「なあに? 鈴音ちゃん」
 特にドキリともハッともした様子もなく、真直ぐに夕陽を見つめたそのまま。
「お姉さまは、私の事がどのくらい好きですか?」
「タコ焼きよりも好きよ」
 とびきり間抜けな答えが、とびきりの笑顔とセットで返って来た。
「その……もう少しないんですか?」
「ん~、そうね~……じゃあ、いつも食べてる朝食のチーズオムレツより好き」
 一呼吸置いて、お姉さまは続ける。
「グラタンに、ティラミスに、シュークリームよりも好きよ。アイスクリームだってつけちゃう」
「ぜ、全部食べ物じゃないですか!」
「食べ物じゃダメなの?」
「それでは、質問を変えます。私がどのくらい大切ですか?」
「―私ね、結構自分の事が大切なのよね、何だかんだ言って。世界で三番目くらいね。で、鈴音ちゃんの事は自分よりも上よ。好きも大切も」
 タコ焼きからうって変わって世界で二番以上が確定した事で舞い上がるのと同時に、その二択に多少の期待も抱きたくもなる。
「え、え、ええと、そ、それでは、お姉さまにとって世界で一番大切な人って、その、誰ですか?」
 質問の仕方が可笑しかったのか、内容が可笑しかったのか、とにかく幼い子供を見た時の様にクスリと微笑んで。
「たとえば私と鈴音ちゃんのご両親、どちらかしか助からないとしたら、どちらを選ぶ?」
「それは……」
「本当に大切な物の間に、順位なんてつけられっこないのよ」
 お姉さまはそう言ってまた夕陽を見つめられてしまったので、する事が無くなってしまった私はその時初めて夕陽の方を見た。
 それは、幼い私が来るはずのないお姉さまを待ち続けて見た、あの夕陽だった。



651:名無しさん@秘密の花園
08/04/15 09:48:43 ES4A20cY

予告とか。

先日、最終回『だけ』書き終わりました。でもまだ先の話です。
大分ネタが尽きかけてはいますが、現在の予定では最終回を含めてあと3回の予定で、大体こんな話にしようと決めるところまで漕ぎつけました。
現在のペースだと月一連載なので夏ごろ終了予定で、書き始めてから本当に一年近く経ってしまいますが、皆さまにはもう少しだけお付き合いいただけたらな、と。
本来なら『職人は 黙って投下 すれば良い』なのでお喋りはここら辺にします。うるさい子でごめんなさい。
それでは潜ってきます。



P.S 俺さ、このスレ結構好きなんだ……

652:名無しさん@秘密の花園
08/04/15 14:28:26 XeYy+SOa
このスレ読んでマンズリしてるのですか?

653:名無しさん@秘密の花園
08/04/15 15:28:38 XjGhit+S
素晴らしいです。作者さんGJ!
質問を変えてまでちゃんと愛を確かめたい鈴音ちゃん可愛いw
月刊百合ドラマこれからも楽しみにしています。

654:名無しさん@秘密の花園
08/04/16 04:35:08 x9SL7404
楽しみって
読むのが楽しいというより
マンズリするのが楽しいんでしょ?

655:名無しさん@秘密の花園
08/05/29 17:16:12 y047aTmQ
~鈴音編ーその9~

 夏は過ぎ去り秋もそろそろ終わりを迎え、ハロウィーン記念公演を終えた私達三年生は受験に向けてそろそろ引退……と、言いたいところだけどそうはいかない。なんと言っても家の学校はエスカレータ制だから、本当に一部を除いてここで引退する人など居はしないのだ。
 そう言うわけで三年生は一、二年生主体のクリスマス記念公園を無視して、最後の舞台となるヴァレンタイン記念園へ向けて新たな日々を迎えるのでした。



656:名無しさん@秘密の花園
08/05/29 17:18:35 y047aTmQ

「とうとう次が最後の舞台かぁ……」
 次回の舞台を何にしようか考えていると、どうしてもまだ配られてもいないチケットの事ばかり浮かんできてしまう。
「このまま三年間、一度も渡せずに終わるのかしら」
 とても長い溜息が零れた。
「珍しいわね、貴女が溜息なんて」
 急に後ろからした声に、もしかしてその前の一言を聞かれたのではないかと一瞬ドキリとしたけれど、そこまで届くような声ではなかったし、こんな物言いをする生徒には心当たりはなかった。
「先生がどうしてこんな処にいるのですか」
「顧問が部室に来ちゃ不満?」
「一、二年生達の練習は」
「その事だけどね、来週から三年生も練習を始めてちょうだい。もちろんクリスマス記念公演じゃなくて、貴方達の分をね」
「いくらなんでも早すぎます! それにまだ台本も配役も決まって―」
 言いかけた私にズイと冊子が突きつけられる。
「もう遅いくらいなのよ。貴女達には、いいえ、貴女にはこれを演じて貰います」
 言われてみればそれは劇の台本、それも表紙の文字だけで私を驚かすに十分なとんでもない台本だった。
「これ、毎年高等部のクリスマス記念公園で演っている奴じゃありませんか!」
「そうよ。だけど今年は演らないって言うから、それなら……って貰ってきたの」
 確かに、演らないこと自体は噂で聞いていた。何せこの劇は毎年恒例で行われているために今では学園の名物の一つになっており、
高等部で『この配役で次の部長が決まる』と言われている程だから、例え中等部であっても演劇部の私達が気にかけるのは当然で、この舞台の主役は皆の憧れだった。
「けれどこの舞台が今年中止になったのは……」
 そこから先は言うまでもなかった。この人は分かって持ってきたのだろうから、そこまで言えば意味は十分すぎるほど伝わる。
 この劇は難しすぎるのだ。


657:名無しさん@秘密の花園
08/05/29 17:19:28 y047aTmQ
「だから、よ。言ったでしょ? もう遅いくらいなのよ」
「それならどうしてこの劇を選ばれたのですか?」
 先生はその質問に自嘲気味に小さく笑って、それから見た事もないくらい優しい目で「笑わない?」と微笑んで。
 窓の外を向いた彼女の顔はまるで学友の様に幼く、窓硝子に映った彼女の眼は空を、いいえ、どこかもっと遠くを見つめていた。
「もう何年前になるかしら。私はここの生徒だったわ」
 それはまるで昔のアルバムをそっと捲りながら、あるいは大切な思い出の品が入った宝箱をそっと開きながら、幼い娘に思い出を語る様に紐解かれていく。
「当時、私達は皆ある人の事を想い、憧れ、そして慕っていた。あの方がいるだけで空気が変わった。皆と少しだけ違う特注の制服を着て、けれど私達は勿論、教師まであの方をお慕いしていたから誰も咎めようとはしなかった。
あの方が来る事で学園の朝が始まり、あの方の帰りを見届けて学園は終わりを迎える。私達にとってあの方は青春そのものと言っても良いくらい、それほど特別な方……私達はあの方をこうお呼びしていた」
 何だろう? 何か口では言えな、特別な予感の様の物が私の中で芽生え始めている。
「『白百合の君』、と」
 胸が一瞬高鳴り、何かが弾けた。その時、もはや私の中の予感は確信めいた物へと変わっていた。


658:名無しさん@秘密の花園
08/06/03 02:42:44 XyZOiDrQ
途中から投下出来ていなかった上に、
間違って『切り取り』を選択していただと……
(´;ω;`)

659:名無しさん@秘密の花園
08/06/30 01:29:30 h+eTevoL
ソウスケにまとめてレイプされるミチルとルカ

660:名無しさん@秘密の花園
08/06/30 06:07:32 C05GCkhm
ワシも参加させてくれんか

661:名無しさん@秘密の花園
08/06/30 19:58:35 dlqx+UAE
>>658
いやいや乙、サンクス!

662:名無しさん@秘密の花園
08/07/11 02:16:58 SzqM9eXD




 第9話後編のあらすじ

 鈴音の所属する演劇部の顧問は、自分の勤めているこの学園のかつての生徒であった。
 彼女は『白百合の君』と呼ばれた生徒と、彼女が演じた劇に人生の価値観を左右されるほどの衝撃を受ける。しかしながら、その劇はとても難しい劇であったがために、相手役は決して白百合の君のパートナーとして肩を並べるのに相応しい演技は出来なかった。
 そうして彼女は、いずれ自分の教え子に、あの時の白百合の君の隣に立つのに満足のいく演技を出来る者を出すことを目標としてこの学園に教師として戻り、あの時の劇を自分の手で教え子に教え演じさせることのできる機会と、
白百合の君の相手に相応しい演技をすることの出来る可能性を持つ少女に同時に恵まれた。その少女こそ中沢鈴音であるという。
 その話を聞いた鈴音は、初めてお姉さまと出会った時にお姉さまが演じると言っていた『お姫様の役』と言うのがこの劇のそれであると直感的に確信し、
この劇が、この劇こそがお姉さまにチケットを渡して初めて観にきて貰う劇に相応しいと感じ、一刻も早く集中して目を通すために台本を受け取るなり部室を飛び出してしまったのだった。





663:名無しさん@秘密の花園
08/07/11 02:18:18 SzqM9eXD
~鈴音編ーその10~

 お姉さまと同じ役が出来るのでないかと思ったけれど、よくよく考えれば私にお姉さまが演じたような可愛らしいお姫様なんて演らして貰える訳もなく、当たり前のように王子様役が充てられた。
 とは言え、今はこれが結構気に入っている。お姫様を演じながら『王子様になりたい』と言ったお姉さまに対して、お姫様になり損なった王子様と言うのは私に相応しかった。
「この劇の内容も、まるで皮肉の様にピッタリ」
 王に跡取りの息子が出来なかった為に、王子として育てられた王女。そんな彼女が城を抜け出し隣国のお祭りに出かけた時、アリスと名乗る一人の少女に出会い恋をしてしまう。
 ところがそのアリスは、同じく城を抜け出してきた敵国の王女だった。二人はお互いの正体を知った後もその気持ちは変わることなく、国を捨てて駆け落ちする事を誓うが、アリスは不治の病に侵されてしまう―
 思春期にも入り、レズビアンと言う言葉の意味を知り始めた頃に自分がまさかその役をやる事になるとは思ってもいなかったが、これが運命というやつだろうか。
 そのままほんの少し物思いに耽り、日記帳を開いて栞代わりに挿んでいたチケットを取り出した。
「明日、渡せるかな……」
 明日はクリスマスイヴ。
 お姉さまとお食事の約束をした日。
 私がチケットを渡すと決めた日。
 そして、ほんの少しだけ奇跡を信じたくなる日。



664:名無しさん@秘密の花園
08/07/11 02:19:27 SzqM9eXD

 クリスマス記念公演は終わった。声をかけると同時に泣き出してしまった彼女はとても可憐に見えたけど、舞台の上での彼女は部長の座を譲るのに相応しいと思えた。少なくとも、出番が無いからと言って一日中今夜の事ばかりを考えていた私よりもずっと。
「こんばんは、お姉さま」
「こんばんは、鈴音ちゃん。こんばんは、お父様お母様」
 お姉さまに挨拶を返す父と母は、毎年の事ながら何処か落ち着きが無い……と言うよりは普段から友達やお姉さまに連れまわされている私の方がおかしいのであって、こんな正装限定でメニューも読めないレストランの更には貴賓室と来てはそうそう落ち着けるものではない。
 それに私だって見た目は落ち着いているけれど、そんな物は演劇部部長の舞台根性であって、本当は場所が半分チケット半分で口から心臓が飛び出そうなほど緊張しているのだ。
 それに引き換えお姉さまと来たら慣れたもの。ササッと全員分の注文を頼んでソムリエーヌと合うワインがどうのこうの話している。時々口説いている様に見えるけどそれはきっと気のせい。
 ただ、こんな時はいつも思う。『どうしてこの人は私なんかの傍にいるのだろうか』と。そうして何時も堪らなく不安になる。まるで魔法が解けてしまったかの様に、突然私の目の前からお姉さまが消えてしまうのではないかと。
 そうして私は、後に知る事になるのです―
 ―この時の不安が、決して的外れな物ではなかった事を。



665:名無しさん@秘密の花園
08/07/11 02:20:54 SzqM9eXD

 楽しい時は、過ぎ去るのも早い物。私が手にしていた乾杯の葡萄ジュースは、何時の間にか食後のコーヒーへと変わっていた。
 この頃になるともう私の頭の中はチケットの事でいっぱいで、何時、どんな風にチケットの事を切り出そうかを何度も何度も頭の中でシミュレーションして、
『お姉さまと二人きりだったらすぐにでも渡せるのに』だとか『早く母と父がトイレでも何でも良いから席を立たないかな』なんて事まで考えていた。
 そんなことを考えている内に、到頭お目当ての会計時に。後は別れ際、父と母が店を出た直後にサッとチケットを渡してしまえば良いのだ。恐らく一分も掛からないはず。
 お姉さまが会計を済ませている間に、深く息を吸い込みポケットの中のチケットを撫でて覚悟を決める。
「あっ、あの―」
「あっ、そうそう」
 私が話しかけるよりも先に、お姉さまがパッとこちらを振り向く。
「鈴音ちゃん。明日、とても大事な話があるからホテルまで来てもらえるかしら?」
「明日ですか?」
「どうしても来てもらいたいの。大丈夫?」
「は、はい」
「それじゃあ鈴音ちゃん、私はお母様と二人で大人のお話があるから失礼するわね」
「へっ?」
 言うが早いか、お姉さまは母と二人でリムジンに乗り込み出発してしまった。
「あ、チケット……は、明日でいいかな?」
 予想外の出来事に、あれ程気にしていた当初の目的は果たされず、私の計画は宙ぶらりんのままに。
「きっと、きっと渡せるよね? 今度こそ……」
 小さく呟いたその問いに、答えを返す者はなく……



666:名無しさん@秘密の花園
08/07/11 02:21:32 SzqM9eXD

 クリスマス記念公演は終わり、後輩達への労いを済ませた私はお姉さまの部屋の前まで来ていた。
「ふぅ~~~~……」
 チケットを渡す事だけでも緊張するのに、そのうえ『大事な話』と言われては、普段は楽しみなこの扉を開ける事に気が進まないのも無理はなかった。
 とは言え、何時までもこのままこうしている訳にもいかない。覚悟を決めてインターホンを鳴らす。
「……鈴音ちゃん?」
「はい」
「カギを開けるから、入ってちょうだい」
 そう言ってインターホンが切れるが早いか、ガチャリと音を上げて鍵が開いた。
 こんなことは初めてだった。普段なら私がインターホンを鳴らすと直ぐ、いや、むしろ鳴らす直前に『おかえりなさい、鈴音ちゃん』なんて言いながらお姉さまが扉を開けてくれるのに……
 声は変わりなかったけれど風邪でもひいたのかな、なんて考えながら、お姉さまのいる寝室の扉に手をかけると、突然胸騒ぎがした。
 少し待ってみても止まる気配のない胸騒ぎを無理やり気のせいと決めつけて寝室に入る。
 そこで私を迎えてくれたのはいつものお姉さまの笑顔ではなく、部屋の真ん中に置かれた大きなトランクケースと、静かにベッドへ腰掛けているお姉さまのどこか憂鬱そうな顔。
「お姉さま、どうかなさったのですか?」
「鈴音ちゃん、これから私の言うことを聞いてほしいの」
 胸騒ぎはまだ止まっていない。いや、むしろ『これからお姉さまの言うこと』がその原因だと私に告げている。
 覚悟を決めて、唾を飲む。
「鈴音ちゃん、私ね……」
 それは突然に訪れた―
「ここを去ろうと思うの」
 ―奇跡の、終わりでした。


667:名無しさん@秘密の花園
08/07/20 23:33:03 RTNIYnm9
283です。久しぶりに来ました。
学生時代の鈴音さんと、お姉さまの織りなす話にwktkしながら、>529の話を少しだけ進めてみます。


 俺は、あれから日常の生活に戻り、家と会社の往復を繰り返していた。
 さやかさんが黒川さんの誘惑に流されてしまってからは、彼女達には会っていない。

 彼女達の背徳的な交わりは、あまりにも衝撃的であり、俺の今までの価値観は根底から覆されてしまった。
 簡単にいえばショックだった。
 俺は、百合というものに背徳的ながらも清涼なイメージを持っていた。もちろん、百合であっても、
三角関係にともなう嫉妬という、どろどろとしたものがあることは頭では分かっていたが、
実際に目の当たりにするとやはり違っていた。

 俺の我儘というべきだろう。禁断の園にも桎梏や葛藤があるにも関わらず、右も左もわからない
部外者が勝手に首を突っ込んだ報いを受けたに過ぎない。
 俺は、彼女達とは積極的な繋がりを断って、一度は踏み込んだ世界から遠ざかろうとしていた。

 しかし、道を迷い込んだ者をあっさりと解放してくれる程、この世界は甘いものではない。
 俺は、既に様々な人から存在を認知されており、関係を持ち続けて欲しいと思われていたのだ。
 そして、さやかさん達の交わりを見届けてから、2週間程たった時の週末、会社の仕事を終えて外にでようとした
俺の携帯が鳴った。

 履歴も見ずに反射的に耳に当てる。
「もしもし、山田ですが…… 」
「もしもし、佐藤です」
 聞きなれた女性の声がきこえる。
「えっ!? もしかして? 」
 エルメスという言葉が頭をよぎった。
「はい。佐藤ひとみです。お忙しいところお電話してすみません。まだお仕事でしょうか? 」
「いえ…… 大丈夫です」
 ひとみさんは俺が、彼女が痴漢に遭っているところを助けたひとだ。
 ロングが似合う美人で、鈴木さやかさんと付き合っている…… はずだ。
「あの…… もしよければ今日、お会いできませんか? 」
 ひとみさんの声は微かに震えている。俺はごくりと喉を鳴らし、ともすれば擦れそうになる声を何とか振り絞った。
「ええ。構いませんよ」
「よかった…… それなら7時に駅前の喫茶店『ティアラ』でお会いできませんか? 」
 俺が頷くと、ひとみさんはお礼を言って電話を切った。

 大きく息を吐き出してから、携帯をポケットに仕舞う。
 運命の歯車が軋みながら回り始めた音をはっきりと聞きながら、俺は雑踏の中を歩きだした。

668:名無しさん@秘密の花園
08/07/21 07:02:41 mm6doHTP
283さん帰ってキタ━(゚∀゚)━!!!!
これで私も安心してこのスレを離れられます。
本当は全5部の予定が、私の超遅筆の所為で抜けたり切ったりで中途半端になってしまって申し訳ありませんでした。
それでは、これが私の最後の投下です。

669:名無しさん@秘密の花園
08/07/21 07:05:48 mm6doHTP
~鈴音編ーその11~


「ど、どうして、どうしてですか!?」
 『行かないで』より先にそう訊いていた。とにかくもう頭の中は滅茶苦茶だった。
「私ね、高校を卒業してすぐ、前日まで顔も名前も知らなかった人と結婚したの」
 お姉さまの口調は静かでゆっくりとしていて、だけどとてもはっきりとした物だった。
「相手も家も由緒正しい名家で当然政略結婚と言う意味合いもあったのだけれど、それ以上に私が同性愛者であることを知った両親が、親戚や世間の目を気にして無理やり結ばされた物だったの。
最初に子供が出来たと知った時には一晩中泣きはらしたわ。でもね、それから自分のお腹が大きくなっていくうちにね、『私は好きな人と結ばれる幸せを奪われてしまった。だから、代わりに神様が諦めていた子供を産む幸せをくれたんだ』って思うようになったの。
それから、私は自分の子供にこれから先全ての幸せを注いで、これからはこの子の為に生きるんだって誓って…… 初めて生まれて来た子供の泣き声を聞いて抱きしめた時には、嬉しくて涙が止まらなかった―
だけど、次の日目が覚めたら、私の子供はいなくなっていたの。子供は莫大な財産と幾つもの事業を受け次ぐ跡取りとしての英才教育を受けさせるために、どこか私の知らないところへ連れて行かれてしまった。
幾ら訊いても居場所も教えて貰えず、どれほど頼んでも会わせて貰えず、それから一年もして唯一、娘がクレヨンで描いた手紙だけが届いたわ。それでも私、嬉しかった。それから今日まで鈴音ちゃんの知っている通り、ずっと手紙のやり取りだけは続けて来たの。
その娘がね、このところずっと笑いもしなければ泣きもしないし、ただぼうっとしてご飯もろくに食べなくなったらしくて、とうとう向こうにはどうにも出来ずに私に娘と暮らす許可をくれたの。
だけど、今の私には鈴音ちゃんがいた。遠くでずっと思い続けて来た一人娘との生活と、今までずっと私を支え続けてくれた大好きな鈴音ちゃんとの生活と……」
 お姉さまの手招きに誘われて、そっと隣に腰を降ろした。


670:名無しさん@秘密の花園
08/07/21 07:06:22 mm6doHTP
「どちらが大切かなんて、私には選べなかった。だから私は、『責任』で選んだの」
 お姉さまは私を抱きしめてそう言ったあと、ほんの少しだけ肩を震わせて続ける。
「ごめんなさい、鈴音ちゃん……貴女にはまるで関係のない事なのに。責めてちょうだい、怨んでちょうだい、愛する人を愛してくれる人を捨てていこうとしているこんな馬鹿な私を。ぶってくれてもいいわ」
 顔をあげ、思わず息をのんだ。
 生まれて初めて、お姉さまの頬を流れる幾筋かの光を見た。
「どうして、どうして貴女は生まれてしまったの? どうして私たちは出会ってしまったの? 貴女が生まれてくるのがもう5年遅ければ諦めだって―いいえ、それでも無理かしら。だって私と貴女ですもの」
 もし、私がもう5年生まれてくるのが遅かったとしても、もし、お姉さまがもう5年早く生まれて来ていたとしても、私には諦める事など出来はしないのでしょう。だって、私とお姉さまだから。
 二人が出会ったのが例えお姉さまがもう結婚させられてしまった後だったとしても、例え今私が未だほんの小さな子供だったとしても、あるいは私が既に大人になっていたとしても、それでも、もし二人が出会ってしまったなら。胸を張って言える。私はお姉さまに恋をすると。



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