10/08/25 00:45:00
>>363
妾が無力だったから…九郎は……
(エセルドレーダの言葉はあの敗北は自分が招いたのだと追い詰めてくる)
(大十字九郎は間違いなく強い人間だった。紛い物とはいえ、デモンベインはアイオーンに勝るとも劣らない鬼械神といえた)
(ならば決定的敗因になったのは…自分だと思った)
(最後まで魔に屈しなかった二人に対し、自分は命あるうちに既にエセルドレーダの前に屈し)
(強いられる理不尽と屈辱に、あろうとことか媚を売ってまで保身を図る弱い存在)
全ては…妾の…せいか…
妾がもっと強く…足を引っ張らなければ、こんなことには…
(自責と後悔の気持ちで胸がいっぱいになり、そして空虚な無力感が広がっていく)
委ねる・・・?全てを汝に…・・・
(自分を抱き起こすエセルドレーダは、酷く優しく思える)
(頬を撫でる手つきも、穏やかな声色も、全てが優しく慈悲深く思えた)
(その優しさ、示される希望が全て偽りなのは知っていた。優しさは悪魔が好む最も有効な罠だと知っているから)
(だが、毒と分かっていながらそれを飲み込まずにはいられないほど、自分は乾き、飢えていた)
あ…ありがとうござます、エセルドレーダ様・・・
これからも、愛想を尽かさぬうちは、この奴隷めを使ってやってください。
奴隷としても、玩具としても心行くまでお楽しみ下さい。
う…ううっ・・・!!
(好奇であれ、羨望であれ、侮蔑であれ、それが人の目である以上、視線が身を貫き心まで刺さってくるかのよう思えた)
(元々、人間を取るに足らないと思っているエセルドレーダにとって街の人々など、何人いようが何者であろうが)
(何を思われてもなんとも思わない…精々、アル・アジフを貶める小道具程度に思っているかもしれないが)
(九郎との生活の中で人に対する見方が自然と変わっていた自分にとって、今の状態は羞恥の極みといえた)
(軽やかに足取りを進めるエセルドレーダに対し、震えてぎこちなく四肢をうごかし這い蹲って進む)