09/09/07 18:31:30
「あ、ちょっと、待って、キング」
キングカズマはそれの意味を知らない。
カズマや、人間がそうされるとどう感じるかを知らない。
ただ、キングカズマはカズマを慕う気持ちからそうしているだけだ。
自分のマスター。どんなアバターよりも巧みに動かしてくれる、マスター。
キングカズマはカズマのことが何よりも好きなのだ。
だから、自分に出来る精一杯の感情表現をカズマにしたいのだ。
特に、自分を動かしてくれるそれそのものに対しては、丁寧に扱いたいのだ。
「キング、ゆび、指くすぐったい…!」
キングの口先から出た小さな赤い舌は、ちろちろとカズマの指を舐めて離さない。
顔を軽く舐められたり、ぎゅっと抱きつかたり、そんなこともあるけれど、
カズマが一番困るのが、こうしてキングカズマがカズマの指を舐めたがることだ。
なまじそれがキングの自分への敬慕の気持ち故の行動だとは分かっているから、カズマもそんなに強くは言えない。
けれども毎回、指がふやけるほど舐められたのではたまらない。
くすぐったいし、自分の指を無表情で舐め続けるキングカズマにどう対応すればいいのかもよく分からない。
そうして今日も、パソコンに向かって調べ物をしようとFireFoxを立ち上げている最中に、
キングカズマがつつつと近寄ってきて、ちょこんと隣へ座ってきた。
『俺以外のものを操作しているのか?その指で?そのキーボードで?』
カズマがキングを見やれば、キングの目がそんな風に言っているように見える。
カズマが何かを言う前に、キングのふわふわした白毛に覆われた大きな手が、カズマの浅黒く日焼けした細い手首を握って、
いつものようにキングがカズマの手を口先まで持ってくる。
キングが小さく口を空けて、カズマの指を咥える様を、カズマは口を開きかけたまま、ただ見ているだけだった。
こうなってしまっては、もう怒るに怒れない。
ウサギ独特の出っ張った前歯で指の関節を軽く噛みつかれる。
そんなに力は込められてないから、指を引き抜こうとすれば容易く出来るはずだ。
けれども、カズマはそうする気にはなれなかった。
キングの気持ちは、カズマだって嫌なんかじゃないのだ。
けれどもしつこく舐められるその感触への戸惑いに、キングは気付いていない。
ただキングはそうしてしまえばカズマがなすがままになってくれることを知っている。
そうして口の中にカズマの指を留め続けることに成功したキングは、大切なその指を存分に舌で愛おしむ。
ちゅ…、ちゅぱ…。
「キング、ねえ、もういいでしょ?
僕、宿題が…。お前とは後で遊ぶって…」
目つきの悪いキングの目とカズマの目が合う。
少し困ったようなカズマの目を見ながら、キングはそれでもカズマの指を咥え続けている。