09/02/08 16:43:05 dXJgDObm
婿養子シリーズ第三話(1)
壁の穴 ~愛ゆえに~
俺はある日、オスカルから相談を持ち掛けられた。
夫のアランではなくて、なぜ「俺」なのか。
8歳のころから彼女を知る、俺は言わば幼馴染のようなものだ。
彼女の大概の癖や趣味は他の誰よりも熟知している…つもりだ。
例え夫のアランであっても、それには負けてもらうしかない。
オスカルと二人だけになる時間は久しぶりだった。
紅茶も美味しい。
彼女は今日非番だと言う。
「で、俺に相談というのは?」
俺はおもむろに切り出した。
アランの目を気にしない彼女と二人だけの時間は、俺には嬉しいものだったが
オスカルはもう人妻だ。俺とオスカルの間には太くて大きな川がある。
使用人と、その家の結婚したお嬢様が、婿の留守中に親しくしているのは、
言語道断で、俺はさっさとこの時間を切り上げようと考えたのだ。
彼女は空を仰ぎながらぽつりとつぶやく。
それは、自分には女らしさが欠如している、と言うものだった。
俺はこのお嬢様に開いた口が塞がらなかった。
はあ?なにを言ってるんだ、おまえ。
毎晩あんなに感じて、あんなに乱れているじゃないか。
どこの女よりもおまえは格段に色っぽいよ。
だが、言えるわけがない。覗いてこと知る事実だからだ。
オスカル、頼むからそんな相談はアランにしてくれ。
俺は泣きそうだった。
どうして女はそんなにくだらないことで真剣に悩むのだろう。
ということが偶にある。おまえもそれだ。
愛されていることが、何よりの証拠なんだよ。
やっぱり、俺、苦しいな。