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中国と台湾双方から板挟みにあった両社は7月24日、最終的に前述の通り、中国、台湾、韓国を「東アジア」という地域でひとくくりにして、都市名のみを表記する方法に変更した。
「(各当局を含めて)皆が受け入れやすい表記方法」(ANA広報)であり、7月26日時点で中国民航局も両社の表記方法に対して指摘を行っている様子はなく、「事態は収束していく」(同)とみられる。
JALとANAがこれだけ対応を熟慮したのは、「歴史的、地理的な近さの意味で、台湾と中国に対応する機会が多かった」(ANA関係者)からでもある。
1972年に日本と中国が国交を正常化した際に、日本と台湾は断交。
国交がなく、国家として承認されていない台湾にナショナルフラッグキャリア(国を代表する航空会社)であるJALの機体を飛ばすことは、中国への配慮から難しかった。
JALは台湾路線を運航するため、日本アジア航空という別会社を設立。
1990年代にANAが台湾路線に参入する際も、別会社としてエアーニッポンが乗り入れを実施した。
その後は海外勢がJALとANAの動きに追随。英ブリティッシュエアウェイズが「ブリティッシュアジアエアウェイズ」を、オランダのKLMオランダ航空が「KLMアジア」をそれぞれ設立している。
2014年にはJALの機内誌「SKYWARD(スカイワード)」9月号に掲載された地図で中国と台湾が同じ色で塗られていることに抗議があり、JALは直ちに対応。日本を含めて各地の地図の背景を白色にすることで、中台双方に配慮する形式を取った。
長年台湾政治を研究している早稲田大学の若林正丈教授は、「日本は1972年の日中国交正常化(日台断交)以降、『一つの中国』原則を尊重しながらも、台湾とも緻密な関係を築いてそれぞれ付き合ってきた」と指摘。
航空会社も中台それぞれとの付き合い方を学んできたといえる。
現代台湾政治に詳しい東京外国語大学の小笠原欣幸准教授は、
「今回の台湾表記問題は中国のネットユーザーが外資系ホテルの地名表記を問題視した動きに、当局が呼応したのが始まり。ナショナリズムの高まりに乗って中国当局が民間企業に対し、表記を変えないと営業上の影響が出ると迫っているのが一連の事態の本質だ」と分析する。
台湾では2016年から独立志向の民進党が政権の座についており、中国と対立しやすい状況にある。
今後も航空会社に限らず、中国で活動する企業が台湾問題のあおりを受ける可能性はある。
JALとANAのように中台双方の理解を得られる対応を取れるか。さまざまな試行錯誤が求められそうだ。
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