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日本の批評・哲学総合スレ - 暇つぶし2ch304:考える名無しさん
19/09/10 01:04:05.86 0.net
「出版界に異変 ニューアカデミズム」(朝日新聞1984年1月23日)
“本が売れない出版界。とりわけ社会学書や思想書などの硬派出版物の不振は深刻といわれるが、そうした状況の中で、ごく一部の「硬い本」だけがブーム的に売れる現象が、昨年後半から目立っている。
いずれも、これまでの学問体系や秩序に挑戦する若い研究者の本や、旧来のアカデミズムの外側にいる幅広い知識人の討論などを集めた本で、「新しい知」を求める若い世代の関心を集めているのが特徴。「ニューアカデミズム」という言葉が今年の出版会の一つの目にはなりそうだ。
まず難解なフランス現代思想の紹介書としては「記録的」といっていいほどのブームを呼んでいるのが浅田彰著の『構造と力』(勁草書房)。
ソシュール、ラカンからデリダ、ドゥルーズ=ガタリまで最先端の思想を論じながら、構造主義からポスト構造主義への流れを整理した内容で、著者自身が「教科書のつもりで書いた」という硬い本。
まさかそう売れるとは思わず、出版元も「最初はおっかなびっくり」増刷していたのが、昨年九月から三ヵ月で一万部。その後は、雑誌などが一斉に取りあげたことで話題になり、一月までに十一刷り、二万部を記録した。
「年間七十点前後の本を出しているが、普通、最初は二千部から二千五百部。この種の硬い本としては以上な売れ方」と勁草書房。著者がまだ二十六歳の京大人文科学研究所助手であることを考えれば、まさに出版界の常識をくつがえす現象と言えそうだ。
出版社は違うが、同じく若手の研究者の本では中沢新一著『チベットのモーツァルト』(せりか書房)も話題になっている。
ネパールのチベット人の密教僧のもとで修業を受けた宗教人類学者の著者が、自己の体験を現代思想の最先端にあるクリステヴァやデリダの理論と交錯させながら、西欧的な知からすりぬけていく人間の意識の問題をとらえる方法論を目指した本。
これも難解な現代思想を軽快に論じる従来のアカデミズムとは異なるスタイルが若い世代に支持されたためか、十一月末に出版されて初版の三千部をほぼ売り切り、増刷にかかっている。


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