25/01/23 08:17:53.96 MoeorCoi.net
やっぱり「5%成長」と発表したが
1月17日、中国国家統計局は2024年のマクロ経済統計を発表した。それによると、2024年の実質GDP伸び率は5%だったといわれた。おそらく5%前後と発表されるだろうと事前に思っていたが、実際に5%と聞いてやはり驚きを隠せなかった。IMFなどの国際機関と欧米の投資銀行のアナリストたちの事前予測では、いずれも5%未満の成長だった。
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2024年の経済統計の問題点
経済成長を需要サイドからみると、3つの指標を確認しないといけない。
2024年、中国の国際貿易収支は確かに大きく拡大して21%も伸びた。貿易黒字の拡大に大きく寄与したのはトランプ政権2.0の制裁関税を回避するための駆け込み輸出が大きいとみられる。
それに対して、個人消費を示す小売上高の伸び率は3.5%、投資を示す固定資産投資の伸び率は3.2%といずれも5%を大きく下回っている(いずれも国家統計局の統計)。
なによりも、GDPに占める割合が3割に上るといわれる不動産開発投資伸び率はマイナス10.6%、新築マンションやアパートの販売面積伸び率はマイナス12.9%と大きく落ち込んだ。この一連の指標をみても、どのようにして5%もの成長を実現できたか不思議でしかたがない。
考え方を変えて、百歩を譲って、仮に2024年、中国経済はほんとうに5%も成長したとすれば、2024年の暮れに慌てて経済政策の方針を転換する必要はなかったと思われる。
中国経済にとってこれからもっと厳しい状況となるのは、2024年外国企業の対中直接投資は前年比27%も減少したことである。そのなかで、日本企業の対中投資はコロナ禍をきっかけに急減している。もう一つは2024年総人口が139万人減少した。この二つの指標は長期にこれからわたって中国経済にマイナスな影響をもたらすことになる。
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内憂外患-2025年の中国経済展望
習近平政権にとって2025年は憂鬱の一年になるかもしれない。国内経済は上で述べるように、統計がどんなにポジティブな表現で経済を描写して順調に成長していないのは事実である。消費者物価指数(CPI)はゼロパーセント前後で推移しており、生産者価格指数(PPI)は依然マイナスで推移している。物価のマイナスの状態が続き、失業率が高止まりしている。この動きは経済学の理論(フィリップス曲線)に合致する。中国経済全般をみると、明らかにすでにデフレ状態になっていると判断される。
一方、トランプ政権2.0が発足された。これから中国に対する制裁が強化されるとみられている。習近平政権はトランプ政権に向き合わないといけないが、対抗するためのカードを持っていない。中国にとってアメリカは最重要な輸出市場であり、得意先である。これまでの対米政策で一番の失敗といえば、売られた喧嘩を間違って買ってしまったことだった。とくに王毅外相が主導して戦狼外交を展開していたのはまずかった。戦狼外交によって対米だけでなく、G7を中心とする先進国のほとんどとの関係を著しく悪化させてしまった。
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総括すれば、習近平政権の経済運営はトップダウン型のもので、いったん決められた成長目標が達成できないと、役人は責任を問われるのを恐れるため、統計を「化粧」してしまう。実は2024年9月、統計の不正と水増しを正すために、中国で「統計法」が改正された。それによると、統計の改ざんを厳しく罰せられることになった。しかし、法改正されても、統計の不正を根絶することができない。なぜならばそれに対するガバナンスが機能していないからである。
中国国内にいるエコノミストの高善文氏とスタンフォード大学フェローの許成剛氏のいずれも中国経済の実際の成長率は公式統計の値を3ポイント引いたものであるとの推計を発表している。個人的に彼らの見方が自分の体感温度に一番近いと述べておきたい。
柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員・静岡県立大学グローバル地域センター特任教授)
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